以下、図面を参照しながら医用情報処理装置及びプログラムの各実施形態を説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置及びその周辺構成を示す模式図であり、図2乃至図11は各情報の一例を説明するための模式図である。
ここで、施設内システム1は、互いに接続された医用情報処理装置10、施設内の診療録DB21、流行情報DB22、新治療法DB23及びゲートウェイ(GW)装置24を備えている。ゲートウェイ装置24は、医用情報処理装置10を、ネットワークNwを介して医療情報DB31、施設外の診療録DB32、診療報酬改定情報サーバ33、処方実績情報サーバ34、医療ニュースサイト35及び海外医療ニュースサイトに通信可能としている。このような施設内システム1及びその周辺装置のハードウェア構成は、一般的なコンピュータシステムとして実現可能である。なお、施設内システム1は、医用情報処理システムと呼んでもよい。また、医用情報処理装置10は、施設内の診療録DB21、流行情報DB22及び新治療法DB23の少なくとも一つを含む構成に変形してもよい。
ここで、医用情報処理装置10は、メモリ11、ディスプレイ12、入力インターフェース13、通信インターフェース14及び処理回路15を備えている。医用情報処理装置10は、施設内の診療録DB21、流行情報DB22及び新治療法DB23の少なくとも一つを更に備えてもよい。処理回路15は、取得機能151、言語解析機能152、判別機能153及び表示制御機能154を実現する。
ここで、メモリ11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路から構成されている。メモリ11は、疾患特徴テーブル11a及び相反疾患判別特徴テーブル11b等のテーブルや、処理途中のデータ、処理後のデータ、医用情報処理装置10のプログラム等を記憶する。なお、各テーブルの構造は、一様態を示したものであり、テーブルの分割や統合、テーブルのカラムの追加等については様々なバリエーションが可能である。メモリ11は、医用情報処理装置10を施設内システム1に配置する前に予めプログラムを記憶してもよい。あるいは、メモリ11は、医用情報処理装置10となるコンピュータを施設内システム1に配置した後に、プログラムを配信するサーバ装置、又はプログラムを記憶した非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体などから取得したプログラムを記憶してもよい。
ここで、疾患特徴テーブル11aは、各疾患と、その疾患の症状の特徴及びその特徴量とをリスト化したテーブルである。疾患特徴テーブル11aは、例えば図2に示すように、疾患、特徴1、特徴2及び特徴3が互いに関連付けて記述されている。なお、「特徴1、特徴2及び特徴3」における数値「1」、「2」及び「3」は、複数の特徴を識別する番号であり、特徴量の強度(大きさ)とは無関係である。また、特徴が3個であることは、一例であり、特徴は2個又は4個以上の任意の個数に変更してもよい。
ここで、疾患は、各疾患の名称(疾患名)を示している。
特徴1は、1番目の特徴として、疾患の特徴とその特徴量を示している。例えば、特徴1の項目に対し、値が「熱:0.9」の場合、特徴1は、疾患の特徴として「熱」を示し、その「熱」の特徴量である「0.9」を示している。なお、元々数値である特徴量の値は、元の数値の取り得る範囲での値の位置として求める。言い換えると、特徴量の値は、元の数値が0乃至1の範囲内に正規化されている。例えば、熱の場合、特徴量=(体温−35度)/(42度−35度)として求める。
特徴2は、2番目の特徴として、疾患の特徴とその特徴量を示している。例えば、特徴2の項目に対し、値が「関節痛:0.7」の場合、特徴2は、疾患の特徴として「関節痛」を示し、その「関節痛」の特徴量である「0.7」を示している。なお、元々数値でない特徴量の値は、言語解析によって特徴の程度を求める。言い換えると、特徴量の値は、言語が示す特徴の程度が、0乃至1の範囲内の数値に正規化されている。
特徴3は、3番目の特徴として、疾患の特徴とその特徴量を示している。例えば、特徴3の項目に対し、値が「のどの痛み:0.6」の場合、特徴3は、疾患の特徴として「のどの痛み」を示し、その「のどの痛み」の特徴量である「0.6」を示している。
このような疾患特徴テーブル11aは、図2に一例を示すように、インフルエンザという名称の疾患が、特徴量0.9の熱という特徴1と、特徴量0.7の関節痛という特徴2と、特徴量0.6ののどの痛みという特徴3とを伴うことを示している。
相反疾患判別特徴テーブル11bは、各疾患と、その疾患と症状の特徴が比較的類似しているより重篤な疾患とをよりよく区別する特徴(判別特徴)とその判別力を表す数値(判別特徴量)と相対重篤度との群をリスト化したテーブルである。相反疾患判別特徴テーブル11bは、第1疾患の名称と、第2疾患の名称と、第2疾患を第1疾患から判別する複数の判別特徴とを関連付けて記述しているが、これに限定されない。例えば、相反疾患判別特徴テーブル11bは、図3に示すように、判定疾患(第1疾患)、相反疾患(第2疾患)、相対重篤度、判別特徴1、判別特徴2が互いに関連付けて記述されていてもよい。なお、相対重篤度、判別特徴1、判別特徴2は、判定処理の形態によっては使用されないため、適宜、省略可能である。例えば、後述する図12のステップST5、ST6を省略し、ステップST9において、ステップST7の検索結果が条件を満たすか否かを判定する形態の判定処理の場合には、相対重篤度、判別特徴1、判別特徴2を省略可能である。すなわち、相反疾患判別特徴テーブル11bは、一般的な症状の特徴から推定される判定疾患(第1疾患)の名称と、当該一般的な症状に類似する症状をもつ相対疾患(第2疾患)の名称とを関連付けて記述していればよい。相反疾患判別特徴テーブル11bを記憶したメモリ11は、第1記憶部の一例である。「判別特徴1」における「1」は、判別特徴の判別力の順位が1位であり、当該判別特徴が最高の判別力をもつことを示している。「判別特徴2」における「2」は、判別特徴の判別力の順位が2位であり、当該判別特徴が2番目に高い判別力をもつことを示している。なお、判別特徴が2個であることは、一例であり、判別特徴は3個以上の任意の個数に変更してもよい。
判定疾患(第1疾患)は、一般的な症状の特徴から推定される疾患名を示している。
相対疾患(第2疾患)は、判定疾患の症状に類似する症状をもつ別の疾患名を示している。例えば、総合感冒(判定疾患)の症状に類似する症状をもつ別の疾患名は、インフルエンザと結核である。
相対重篤度は、判定疾患の重篤度を1としたときの相対疾患の相対的な重篤度を示している。相対重篤度は、例えば、相対重篤度の高い相反疾患のみを相反疾患判別特徴テーブル11bに設定するように予め決めていた場合には、省略可能である。
判別特徴1は、判定疾患と相対疾患とを区別する複数の特徴のうち、1番目に高い判別力(最高の判別力)をもつ特徴を示している。例えば、総合感冒とインフルエンザとを区別する複数の特徴は、検体陽性及び熱である。複数の判別特徴のうち、最高の判別力をもつ判別特徴は、検体陽性であり、2番目に高い判別力をもつ判別特徴は、熱である。判別力の高さは、医学的知見や機械学習などによって決定する。「判別力」の用語は、「可能性」又は「優先度」と呼んでもよい。
判別特徴2は、判定疾患と相対疾患とを区別する複数の特徴のうち、2番目に高い判別力をもつ特徴を示している。
このような相反疾患判別特徴テーブル11bは、図3に一例を示すように、総合感冒という判定疾患に対し、2倍の相対重篤度をもつインフルエンザという相反疾患があることを示している。これに加え、相反疾患判別特徴テーブル11bは、インフルエンザの場合には、最高の優先度でインフルエンザ検体が陽性であるという判別特徴1があり、次に高い優先度で、熱という判別特徴2があることとを示している。なお、判別特徴1を満たす場合には、判別特徴2とは無関係に、相反疾患に罹患している可能性が極めて高い。
ディスプレイ12は、疾患候補などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、処理回路15から供給される画像データに付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。ディスプレイ12は、表示部の一例である。
入力インターフェース13は、情報の入力、条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インターフェース13は、例えば、入力操作を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インターフェース13は、処理回路15に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、処理回路15へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース13はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路15へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース13の例に含まれる。
通信インターフェース14は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、図1に示す例では、施設内の診療録DB21、流行情報DB22、新治療法DB23と、ゲートウェイ装置24を介したネットワークNw上の各装置とであるが、これらに限定されない。外部装置は、例えば、モダリティ、画像処理装置、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等としてもよい。
処理回路15は、操作者により入力インターフェース13を介してから入力された指示に基づいて、メモリ11に記憶されたプログラムを読み出し、実行することでプログラムに対応する各機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路15は、通常のコンピュータ機能に加え、図1に示された取得機能151、言語解析機能152、判別機能153及び表示制御機能154などの各機能を有することとなる。但し、必ずしも外部の医療情報を取得する必要はないので、取得機能151及び言語解析機能152は、省略してもよい。また、必ずしも表示する必要はないので、表示制御機能154は、印刷の如き、出力機能としてもよい。なお、図1においては単一のプロセッサにて各機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路15を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、図1においては単一のメモリ11が各機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数のメモリを分散して配置して、処理回路15は個別のメモリから各機能に対応する各プログラムを読み出す構成としても構わない。
ここで、取得機能151は、外部の医療情報を取得し、当該医療情報のフォーマットを、施設内の診療録DB21、流行情報DB22又は新治療法DB23が保存する保存情報のフォーマットに変換して当該保存情報のDBに保存する。外部の医療情報源は、例えば、外部の診療録の情報源と、外部の公開情報の情報源とを含む複数の情報源があることが好ましい。補足すると、1ヶ所の医療情報源だけでは、所望の医療情報を得られない可能性があるので、複数の医療情報源から医療情報を取得して、所定のフォーマットにまとめることが好ましい。また、外部の医療情報の取得方法としては、DB連携をして所望の情報を抽出する方法や、Webサイト等のテキストを言語解析機能152により解析し、解析結果をDB形式に変換する方法等が適宜,使用可能となっている。また、外部の医療情報源は、範囲が不必要に広がる可能性があるので、相反疾患の相対重篤度などの高さに応じて、適切な範囲に制限することが好ましい。また、取得機能151は、海外のWebサイトから医療情報を取得する場合、機械翻訳を実行してもよく、既存の機械翻訳機能(図示せず)を使用してもよい。
言語解析機能152は、取得機能151及び判別機能153に制御され、Webサイトや診療録(電子カルテ)などのテキストを言語解析する。言語解析の際には、適宜、辞書を参照する。言語解析機能152は、例えば、形態素解析、文節解析、係り受け解析及びDoc2Vecなどの機能を有し、言語解析により、DBに保存される情報の項目に応じた医療情報をテキストから抽出可能となっている。
判別機能153は、患者の症状から第1疾患が推定されると、この症状に類似する症状をもつ第2疾患に患者が罹患している可能性があるか否かを、第2疾患に関する医療情報に基づいて判定する。例えば、判別機能153は、第1疾患が推定されると、第1疾患の名称に関連付けられた第2疾患の名称に基づいて記憶装置(第2記憶部)を検索することにより、当該可能性があるか否かを判定してもよい。判別機能153は、判定部の一例である。「判別機能」は「判定機能」と呼んでもよい。なお、記憶装置(第2記憶部)は、第2疾患の名称を含む医療情報を記憶する装置である。詳しくは、記憶装置(第2記憶部)は、第2疾患に患者が罹患している可能性を判定するための医療情報を記憶する装置である。このような記憶装置(第2記憶部)は、図1に一例を示すように、施設内の診療録DB21、流行情報DB22、及び施設外の診療録DB32であるが、これらに限定されない。
可能性の判定に用いられる医療情報は、医用情報処理装置10が配置された施設内の診療録と、施設の外部の診療録と、施設の外部の公開情報を取得及び変換した情報とのうちのいずれかを含んでいてもよい。施設内の診療録を含む医療情報は、施設内の診療録DB21から検索される。施設の外部の診療録を含む医療情報は、施設外の診療録DB32から検索される。施設の外部の公開情報を取得及び変換した情報を含む医療情報は、流行情報DB22から検索される。
また、判別機能153は、検索して得られた医療情報が第2疾患の一般的な症状の特徴を満たさない第2疾患の事例を含む場合に、第2疾患に患者が罹患している可能性があることを判定してもよい。
また、判別機能153は、検索して得られた医療情報が第2疾患の流行を示す流行情報を含む場合に、第2疾患に患者が罹患している可能性があることを判定してもよい。
表示制御機能154は、各機能による処理に応じて、処理途中のデータや処理結果のデータなどを表示するように、ディスプレイ12を制御する。例えば、表示制御機能154は、判別機能153が判定した結果に基づき、第2疾患に対して注意を促す情報をディスプレイ12に表示させる。ここで、第2疾患に対して注意を促す情報は、第2疾患の可能性の判定に用いた医療情報が外部から取得された情報か否かを示す取得先情報と、当該可能性の判定に用いた医療情報の更新日を含む期間を示す期間情報とを含んでもよい。後述する疾患候補の表示例において、「院内傾向」及び「地域傾向」が取得先情報の一例であり、「全期間」、「今年」及び「今月」が期間情報の一例である。また、第2疾患に対して注意を促す情報は、外部から取得した診療録及び公開情報のいずれかに含まれる治療法の情報を含んでもよい。治療法の情報は、施設内の診療録21aに記載の処方薬と同じ内容の旧治療法でもよく、施設内の診療録21aに記載の処方薬とは異なる内容の新治療法でもよい。この新治療法の情報(新治療法情報)は、新治療法DB23に保存されている。第2疾患に対して注意を促す情報に新治療法DB23内の新治療法情報23aを含める場合、表示制御機能154は、患者の年齢に応じて表示する新治療法情報を変更してもよく、新手法と患者群(年齢層)とを併記してもよい。表示制御機能154は、表示制御部の一例である。
施設内の診療録DB21は、図4に一例を示す如き、施設内の診療録21aを記憶する記憶装置である。施設内の診療録21aは、図4中、カルテID、更新日、所見、処方薬、診断病名、特徴1、特徴2、特徴3、医師ID及び患者情報を互いに関連付けて記述している。患者情報は、ID、年齢、性別、身長及び体重などの、患者についての情報を含んでいる。
流行情報DB22は、図5に一例を示す如き、第2疾患(相反疾患)の流行を示す流行情報22aを記憶する記憶装置である。流行情報22aは、図5中、更新日、診断病名、処方薬及び増加率を互いに関連付けて記述している。
新治療法DB23は、図6に一例を示す如き、第2疾患(相反疾患)の新しい治療法を示す新治療法情報23aを記憶する記憶装置である。新治療法情報23aは、図6中、更新日、診断病名、新手法、旧手法及び患者群(年齢層)を互いに関連付けて記述している。
ゲートウェイ装置24は、施設内システム1の内部ネットワークと、外部のネットワークNwとの間を通信可能に接続する装置である。
医療情報DB31は、図7に一例を示す如き、第2疾患(相反疾患)の処方薬を含む医療情報31aを記憶し、受信した要求に応じて医療情報31aを返信するコンピュータ装置である。医療情報31aは、図7中、更新日、診断病名及び処方薬を互いに関連付けて記述している。
施設外の診療録DB32は、図8に一例を示す如き、施設外の診療録32aを記憶し、受信した要求に応じて診療録32aを返信するコンピュータ装置である。施設外の診療録32aは、図8中、カルテID、診察日、所見、処方薬、診断病名、版、医師ID及び患者情報を互いに関連付けて記述している。患者情報は、ID、年齢、性別、身長及び体重などの、施設外の患者についての情報を含んでいる。
診療報酬改定情報サーバ33は、言語解析可能なテキストで記述された診療報酬改定情報を記憶し、受信した要求に応じて診療報酬改定情報を返信する装置である。なお、診療報酬改定情報サーバ33は、このようなテキスト形式で実現される場合に限らず、診療報酬改定情報を検索可能に管理するDB形式で実現してもよい。
処方実績情報サーバ34は、図9に一例を示す如き、院外薬局の処方実績情報34aを記憶し、受信した要求に応じて医療情報31aを返信するコンピュータ装置である。処方実績情報34aは、図9中、処方ID、診察日、診断病名及び処方薬を互いに関連付けて記述している。
医療ニュースサイト35は、施設内システム1が設置された国の言語(母国語)で記述された医療ニュースを示す医療ニュースサイト情報35aをWebサイト上で公開するサーバ装置である。
海外医療ニュースサイト36は、施設内システム1が設置された国とは異なる国の言語(外国語)で記述された海外医療ニュースを示す海外医療ニュースサイト情報36aをWebサイト上で公開するサーバ装置である。なお、施設内システム1が設置された国によっては、地続きで外国がある場合があるので、「海外医療ニュース」の用語を「外国医療ニュース」に読み替えてもよい。
次に、以上のように構成された医用情報処理装置の動作について図12のフローチャート、並びに図13乃至図16の模式図を用いて説明する。
始めに、医用情報処理装置10は、処理回路15が、定期的又は不定期に取得機能151及び言語解析機能152を実行し、ネットワークNw上の各装置から各種情報を取得及び変換する。また、処理回路15は、得られた流行情報22aを流行情報DB22に保存すると共に、得られた新治療法情報23aを新治療法DB23に保存しているとする。
このような状態で、医用情報処理装置10の処理回路15は、言語解析機能152、判別機能153及び表示制御機能154により、以下のステップST1〜ST9の処理を実行する。
ステップST1において、処理回路15は、図13又は図14に示すように、診療録21aの所見に含まれる主訴(S)及び客観事実(O)に記載の文字列を言語解析する。言語解析の結果、処理回路15は、診療録21aから各症状の特徴及びその特徴量を抽出又は作成することにより、各症状の特徴及びその特徴量(強度)を含むベクトルデータを取得する。なお、図13は、診療録21aに一般的な症状が記載された場合を示し、図14は、診療録21aに例外的な症状が記載された場合を示す。
ステップST1の後、ステップST2において、処理回路15は、取得したベクトルデータと、疾患特徴テーブル11aに記述された各疾患の症状の特徴及びその特徴量を含むベクトルとの一致度を評価する。
図13に示す例では、取得したベクトルデータ(熱0.88,関節痛0.74,のどの痛み0.6,…)と、疾患特徴テーブル11a内のインフルエンザのベクトル(熱0.9,関節痛0.7,のどの痛み0.6,…)との一致度が最も高い。
また、図14に示す例では、取得したベクトルデータ(熱0.78,関節痛0.74,のどの痛み0.6,…)と、疾患特徴テーブル11a内の総合感冒のベクトル(熱0.6,関節痛0.7,鼻水0.77,…)との一致度が最も高い。この場合、診療録21aによれば、患者は、インフルエンザに罹患しているものの、免疫力低下の為、体温が上昇しなかった。これにより、診療録21aのベクトルデータは、ある特徴及び特徴量「熱:0.78」が疾患特徴テーブル11aのインフルエンザの特徴1に該当しなかったため、総合感冒のベクトルとの一致度が最も高いという評価結果になった。
ステップST2の後、ステップST3において、処理回路15は、ステップST2の評価結果に従い、疾患特徴テーブル11a内で最高の一致度のベクトルが示す疾患を第1疾患として推定し、当該第1疾患を疾患候補としてディスプレイ12に表示させる。これにより、図13に示す例では、正しい疾患候補が医師に提示される。図14に示す例では、誤った疾患候補が医師に提示される。
ステップST3により患者の症状から第1疾患が推定されると、処理回路15は、この症状に類似する症状をもつ相反疾患(第2疾患)に患者が罹患している可能性があるか否かを、相反疾患に関する医療情報に基づいて判定する(ステップST4〜ST7)。
詳しくはステップST3の後、ステップST4において、処理回路15は、推定された第1疾患(判定疾患)に対する相反疾患があるか否かを相反疾患判別特徴テーブル11bから判定する。この判定の結果、相反疾患がある場合には、当該相反疾患の最高の判別力をもつ判別特徴1が、診療録21aに基づくベクトルデータにあることを確認する(ステップST5)。図15に示す例では、総合感冒の相反疾患であるインフルエンザの判別特徴1「インフルエンザ検体陽性」が当該ベクトルデータに無いことが確認される。なお、判別特徴2の「熱」については当該ベクトルデータにある。ステップST5の確認の後、判別特徴1がない場合(ST5:No)には、処理回路15は、ステップST6、ST7を実行する。一方、ステップST4の判定の結果、相反疾患がない場合にはステップST8に移行する。また、ステップST5の確認の結果、相反疾患の判別特徴1が、診療録21aに基づくベクトルデータにある場合(ST5:Yes)にもステップST8に移行する。ステップST8において、処理回路15は、ステップST3の表示内容を継続してディスプレイ12に表示させる。なお、ステップST6、ST7は、いずれを先に実行してもよい。
さてステップST6において、処理回路15は、相反疾患の特徴を満たさない記録を施設内・外の診療録から検索する。図14の例では、推定された総合感冒に対する相反疾患(インフルエンザ、結核)について、疾患特徴テーブル11a内の特徴1〜3のいずれかを満たさない相反疾患の事例を施設内の診療録DB21及び施設外の診療録DB32から検索する。この相反疾患の例外的な事例は、相対疾患がインフルエンザの場合、特徴1「熱0.9」の有無、特徴2「関節痛0.7」の有無、特徴3「のどの痛み0.6」の有無、の組み合わせである8通りから、全ての特徴1〜3があるときを除いた7通りがある。この検索は、全期間、今年、直近1ヵ月などの期間別に行う。なお、この期間は、固定的でなく、流行情報などに応じて変更して構わない。例えば、流行情報に基づき、直近3ヵ月の期間で相反疾患が流行していることが分かったとする。この場合、操作者の操作に応じて、直近1ヵ月の期間を、直近3ヵ月などの期間に変更してもよい。
ステップST7において、処理回路15は、相反疾患の流行情報を検索する。例えば、処理回路15は、推定された総合感冒に対する相反疾患(インフルエンザ、結核)について、流行情報DB22及び医療情報DB31などを検索する。
ステップST6及びST7の後、ステップST9において、処理回路15は、ステップST6及びST7のいずれかの検索結果が条件を満たすか否かを判定し、否の場合にはステップST8に移行し、条件を満たす場合には、ステップST10に移行する。この条件は、患者が相反疾患に罹患している可能性がある状況を示している。
ここで、条件の例としては、以下の場合(i)〜(iii)に示すように、論理的に相反疾患の可能性が残る場合(i)や、高い相対重篤度を有し、且つ事例が多い場合(ii)、高い相対重篤度を有し、且つ流行している場合(iii)などがある。
(i)相反疾患の判別特徴1を否定する症状の特徴が診療録21a,32a及び流行情報22aにない場合。例えば、インフルエンザの判別特徴1「インフルエンザ検体陽性」を否定する特徴「インフルエンザ検体陰性」がない場合。なお、判別特徴1は、複数の判別特徴1、2のうち、最高の判別力をもつ。補足すると、総合感冒が推定された際に、相反疾患の可能性がある場合には、インフルエンザの判別特徴1を否定する特徴「インフルエンザ検体陰性」の有無の2通りと、前述した例外的な事例の7通りとを組み合わせた14通りの状況(i1)〜(i2)がある。なお、インフルエンザの判別特徴1を否定する特徴「インフルエンザ検体陰性」が無い場合が、インフルエンザの判別特徴1を肯定する場合には、総合感冒が推定されないので、以下の状況(i1)〜(i2)には含めていない。以下の状況(i2)の「インフルエンザ検体陰性」が無い場合は、「インフルエンザ検体」が未検査であることを意味する。
(i1)「インフルエンザ検体陰性」があり、一般的な特徴1〜3のいずれかがない場合の7通り。
(i2)「インフルエンザ検体陰性」が無く、一般的な特徴1〜3のいずれかがない場合の7通り。
上記場合(i)は、状況(i1)〜(i2)のうち、状況(i2)に対応する。すなわち、判別疾患「総合感冒」が推定されていても、相対疾患との最高の判別力をもつ判別特徴1を当該推定に用いておらず、過去に例外的な事例がある状況(i2)であれば、論理的に相対疾患の可能性が残る。このように、上記場合(i)は、論理的に相対疾患の可能性が残る条件を示している。
(ii)相反疾患の相対重篤度が閾値より高く、診療録21a,32aの検索ヒット率が基準値より高い場合。なお、検索ヒット率に代えて、検索ヒット数を用いてもよい。
(iii)相反疾患の相対重篤度が閾値より高く、流行度が基準値より高い場合。なお、流行度は、患者の人数の伸び率(単位日数当たりの増加人数)としてもよく、処方薬を処方した件数の伸び率(単位日数当たりの増加件数)としてもよい。
ステップST10において、処理回路15は、ステップST8の判定結果に基づき、相反疾患に対して注意を促す情報をディスプレイ12に表示させる。例えば、処理回路15は、診療録及び流行情報の入手先が施設の内部か否かと、診療録及び流行情報の期間とに応じて、相反疾患を疾患候補に含めるように表示を変更する。具体的には例えば、診療録及び流行情報の入手先が施設の内部の場合には院内傾向とし、入手先が施設の外部の場合には地域傾向としてもよい。なお、院内傾向は施設内傾向と呼んでもよく、地域傾向は施設外傾向と呼んでもよいが、「施設内傾向」と「施設外傾向」との字面が似ているため、「院内傾向」及び「地域傾向」といった視認し易い表記の方が好ましい。また例えば、診療録及び流行情報の期間は、全期間、今年、今月としてもよい。なお、今月は、直近1ヵ月としてもよく、任意の直近nヵ月としてもよい(nは2以上の整数)。図16に示す例では、ディスプレイ12は、判定疾患である総合感冒を今月の院内傾向に表示する。これに加え、ディスプレイ12は、院内の診療録21aの例外的な事例に基づく相反疾患であるインフルエンザを全期間の院内傾向に表示する。また、ディスプレイ12は、外部の医療情報31a(流行情報)に基づく相反疾患であるインフルエンザを今月の地域傾向に表示する。これにより、医師が診断を行う際に、判定疾患である総合感冒の他に、相反疾患であるインフルエンザに対して注意を促すことができるので、例外的な症状に対する判定の誤りを低減することができる。
上述したように第1の実施形態によれば、患者の症状から第1疾患が推定されると、この症状に類似する症状をもつ第2疾患に患者が罹患している可能性があるか否かを、第2疾患に関する医療情報に基づいて判定する。判定した結果に基づき、第2疾患に対して注意を促す情報を表示部に表示させる。
このように、第1疾患に類似する第2疾患に関する医療情報に基づいて、第2疾患に罹患している可能性を判定する構成により、例外的な症状に対する判定の誤りを低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、第1記憶部が、一般的な症状の特徴から推定される第1疾患の名称と、一般的な症状に類似する症状をもつ第2疾患の名称とを関連付けて記憶する。第2記憶部が、第2疾患の名称を含む医療情報を記憶する。ここで、第1疾患が推定されると、第1疾患の名称に関連付けられた第2疾患の名称に基づいて第2記憶部を検索することにより、上記可能性があるか否かを判定する。従って、前述した効果に加え、検索により得られた医療情報の記述や、検索結果のヒット率などにより、第2疾患の可能性を判定することができる。
また、第1の実施形態によれば、医療情報は、医用情報処理装置が配置された施設内の診療録と、施設の外部の診療録と、施設の外部の公開情報を取得及び変換した情報とのうちのいずれかを含む。従って、第2疾患の可能性を判定する際に、施設内・施設外の診療録や、施設外の公開情報といった様々な医療情報を用いるので、より一層、判定誤りの低減を期待することができる。
また、第1の実施形態によれば、検索して得られた医療情報が第2疾患の一般的な症状の特徴を満たさない第2疾患の事例を含む場合に、上記可能性があることを判定する。従って、第2疾患の可能性を判定する際に、第2疾患の例外的な事例を含む医療情報を用いるので、より一層、判定誤りの低減を期待することができる。
また、第1の実施形態によれば、検索して得られた医療情報が第2疾患の流行を示す流行情報を含む場合に、上記可能性があることを判定する。従って、第2疾患の可能性を判定する際に、第2疾患の流行情報を含む医療情報を用いるので、より一層、判定誤りの低減を期待することができる。
また、第1の実施形態によれば、第2疾患に対して注意を促す情報は、上記可能性の判定に用いた医療情報が外部から取得された情報か否かを示す取得先情報と、上記可能性の判定に用いた医療情報の更新日を含む期間を示す期間情報とを含む。このように、第2疾患に対して注意を促す際に、上記可能性の判定に用いた医療情報の取得先情報と期間情報とを含む情報を表示するので、上記判定の根拠となる医療情報の取得先の傾向と、期間の傾向とを医師に提示することができる。
また、第1の実施形態によれば、第2疾患に対して注意を促す情報は、外部から取得した診療録及び公開情報のいずれかに含まれる治療法の情報を含む。従って、第2疾患に対して注意を促す際に、第2疾患の治療法を表示するので、第2疾患に対する治療計画の立案を支援することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の具体例であり、処理回路15の取得機能151及び言語解析機能152により、外部情報から医療情報を施設内システム1に取得する処理について述べる。
なお、処理回路15の取得機能151及び言語解析機能152の構成は、第1の実施形態と同様である。また、取得機能151及び言語解析機能152に限らず、他の部分の構成も第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成された医用情報処理装置10が外部情報から医療情報を取得する処理の具体例について図17乃至図19を用いて説明する。
例えば図17に示すように、処理回路15は、図示しないネットワークNwを介して施設外の診療録DB32、診療報酬改定情報サーバ33、処方実績情報サーバ34、医療ニュースサイト35及び海外医療ニュースサイト36から医療情報を取得する。なお、海外医療ニュースサイト36については、機械翻訳の手間がかかるため、相対重篤度が閾値より高い相対疾患のみ、医療情報の取得先としてもよい。
処理回路15は、項目を有する外部情報には取得機能151を用い、項目のない外部情報には取得機能151及び言語解析機能152を用いることにより、医療情報を取得する。例えば、処理回路15は、項目を有する外部情報には、項目に応じて外部情報を取得し、当該外部情報を流行情報22aのフォーマットに変換して流行情報22aを作成する。また例えば、処理回路15は、項目のない外部情報には、ダウンロードした外部情報を言語解析し、得られた言語解析結果を流行情報22aのフォーマットに変換して流行情報22aを作成する。流行情報22aのフォーマットは、例えば、互いに関連付けた更新日、診断病名、処方薬及び増加率を含んでいる。但し、増加率は、任意の期間毎に作成する統計情報のため、通常は作成されずに空欄である。いずれにしても、処理回路15は、当該作成した流行情報22aを流行情報DB22に保存する。
同様に、処理回路15は、項目を有する外部情報には、項目に応じて外部情報を取得し、当該外部情報を新治療法情報23aのフォーマットに変換して新治療法情報23aを作成する。また例えば、処理回路15は、項目のない外部情報には、ダウンロードした外部情報を言語解析し、得られた言語解析結果を新治療法情報23aのフォーマットに変換して新治療法情報23aを作成する。新治療法情報23aのフォーマットは、例えば、互いに関連付けた更新日、診断病名、新手法、旧手法及び患者群を含んでいる。但し、患者群は、任意の統計情報であり、省略してもよい。いずれにしても、処理回路15は、当該作成した新治療法情報23aを新治療法DB23に保存する。
続いて、このような流行情報22a及び新治療法情報23aを取得する処理の例について説明する。以下の説明は、項目を有する外部情報からの取得処理について図18を用い、項目のない外部情報からの取得処理について図19を用いて述べる。
始めに、項目を有する外部情報からの取得処理の一例について述べる。ここで、項目を有する外部情報としては、図18に示すように、施設外の診療録32a及び処方実績情報34aを用いる。施設外の診療録32aは、例えば、カルテID、診察日、所見、処方薬、診断病名、版、医師ID、患者のID、患者の年齢、患者の性別といった項目とその値を有し、項目を指定した読出要求により、施設外の診療録DB32から読出可能となっている。なお、施設外の診療録DB32からの読出処理は、適宜、認証技術や暗号化通信技術などにより保護されているものとする。また、処方実績情報34aは、例えば、処方ID、診察日、診断病名、処方薬といった項目とその値とを有し、項目を指定した読出要求により、処方実績情報サーバ34から読出可能となっている。同様に、施設外の処方実績情報サーバ34からの読出処理は、適宜、認証技術や暗号化通信技術などにより保護されているものとする。
まず、流行情報22aを取得する処理の一例について述べる。
流行情報については、ある診断病名(又は処方薬)の件数比較を期間ごとに行う方式を用いる。過去一定期間の診断病名の件数に対し、直近一定期間の診断病名の件数が所定の増加率以上のとき、診断病名の疾患が流行しているため、流行情報22aを取得する。
具体的には例えば、処理回路15は、診察日、診断病名及び処方薬といった項目を指定した読出要求に基づいて、最新の外部情報を施設外の診療録DB32及び処方実績情報サーバ34から読み出す。すなわち、処理回路15は、施設外の診療録32a及び処方実績情報34aのうち、診察日、診断病名及び処方薬といった項目に対応する値を最新の外部情報として読み出す。
続いて、処理回路15は、読み出した外部情報について、集計条件に基づき、統計情報を作成する。例えば、統計情報が、過去の一定期間(例、先月分)の診断病名の件数に対する直近の一定期間(例、今月分)の診断病名の件数の増加率であるとする。この場合、処理回路15は、診察日の一定期間別に診断病名毎の件数(レコードの数)を集計する。処理回路15は、診察日の一定期間別の集計結果として、今月分の集計結果及び先月分の集計結果をそれぞれ得ると、今月分の集計結果を先月分の集計結果で除算し、除算結果である増加率を得る。なお、「診察日の一定期間」及び「診断病名毎の件数」は、集計条件であり、適宜、変更してもよい。例えば、集計条件を「診察日の一定期間」及び「処方薬毎の件数」に変更してもよい。
しかる後、処理回路15は、統計情報が保存条件を満たすか否かを判定する。具体的には、処理回路15は、増加率(統計情報)が基準値以上である等の保存条件を満たすか否かを判定する。判定の結果、保存条件を満たす場合には、処理回路15は、更新日、診断病名、処方薬及び増加率を所定のフォーマットで含む流行情報22aを作成(取得)し、当該流行情報22aを流行情報DB22に保存する。更新日は、集計条件である「診察日の一定期間」に相当する。なお、流行情報22aは、更に、増加率の算出に用いた「診断病名毎の件数」又は「処方薬毎の件数」を含んでもよい。以上により、項目を有する外部情報から流行情報22aを取得する処理が終了する。
次に、新治療法情報23aを取得する処理の一例について述べる。
新治療方法については、ある診断病名に対して異なる治療方法(処方薬)の件数比較を期間ごとに行う方式を用いる。期間ごとの複数の治療方法の件数に有意な差があれば、直近の期間の治療方法を新治療方法とする。有意な差としては、ある治療法(旧治療法)の件数の減少と、他の治療法(新治療法)の件数の増加とを伴う差分が使用可能である。例えば、有意な差としては、インフルエンザの治療法において、薬GGの使用量(件数)が昨年の10分の1に減る一方、薬FFの使用量が10倍に増える等といった場合が挙げられる。なお、有意な差を用いる理由は、ある治療法の増加率が増えたのみでは、流行による件数増加と、治療方法の変更による件数増加とを区別できない為である。また、患者の特性(例、年齢、性別)ごとに治療方法が異なる可能性があるので、患者情報の項目(患者の特性)毎の件数比較を行い、有意な差があれば患者情報毎に治療方法を登録してもよい。
具体的には例えば、処理回路15は、診察日、診断病名及び処方薬といった項目を指定した読出要求に基づいて、最新の外部情報を施設外の診療録DB32及び処方実績情報サーバ34から読み出す。すなわち、処理回路15は、施設外の診療録32a及び処方実績情報34aのうち、診察日、診断病名及び処方薬といった項目に対応する値を最新の外部情報として読み出す。
続いて、処理回路15は、読み出した外部情報について、集計条件に基づき、統計情報を作成する。例えば、統計情報が、過去の一定期間(例、先月分)の処方薬の件数と、直近の一定期間(例、今月分)の処方薬の件数とする。この場合、処理回路15は、診察日の一定期間別に処方薬毎の件数(レコードの数)を集計する。また、処理回路15は、診察日の一定期間別の集計結果として、今月分の集計結果及び先月分の集計結果をそれぞれ得ると、各々の集計結果を更に患者の特性(性別、年齢層)毎の集計結果に分類する。
しかる後、処理回路15は、統計情報が保存条件を満たすか否かを判定する。具体的には例えば、処理回路15は、年齢層別の集計結果において、ある処方薬の件数が減少し、他の処方薬の件数が増加する等の有意な差がある保存条件を満たすか否かを判定する。判定の結果、保存条件を満たす場合には、処理回路15は、更新日、診断病名、新手法(増加した処方薬)、旧手法(減少した処方薬)及び患者群(年齢層)を所定のフォーマットで含む新治療法情報23aを作成(取得)する。しかる後、処理回路15は、この新治療法情報23aを新治療法情報DB23に保存する。更新日は、集計条件である「診察日の一定期間」に相当する。なお、新治療法情報23aは、更に、有意な差の判定に用いた「処方薬毎の件数」を含んでもよい。以上により、項目を有する外部情報から新治療法情報23aを取得する処理が終了する。
次に、項目の無い外部情報からの取得処理の一例について述べる。ここで、項目の無い外部情報としては、図19に示すように、医療ニュースサイト情報35a及び海外医療ニュースサイト情報36aを用いる。医療ニュースサイト情報35aは、医用情報処理装置10が設置された国の言語(母国語)が用いられ、任意のフォーマットで記述された自由記述文である。医療ニュースサイト情報35aは、医療ニュースサイト35から読出可能となっている。なお、医療ニュースサイト35からの読出処理は、必要により、認証技術や暗号化通信技術などにより保護されていてもよい。また、海外医療ニュースサイト情報36aは、医用情報処理装置10が設置された国とは異なる国の言語(外国語)が用いられ、任意のフォーマットで記述された自由記述文である。海外医療ニュースサイト情報36aは、海外医療ニュースサイト36から読出可能となっている。なお、海外医療ニュースサイト36からの読出処理は、必要により、認証技術や暗号化通信技術などにより保護されていてもよい。
まず、流行情報22aを取得する処理の一例について述べる。
流行情報については、前述した項目の指定及び統計情報の算出を行わず、医療ニュースサイト情報35a又は海外医療ニュースサイト情報36aを言語解析し、診断病名の疾患が発生又は流行している旨を検出する方式を用いる。なお、海外医療ニュースサイト情報36aの場合、外国語の記事を機械翻訳及び言語解析してから疾患の流行等を検出してもよく、外国語の記事を言語解析して疾患の流行等を検出してから機械翻訳してもよい。
具体的には例えば、処理回路15は、海外医療ニュースサイト情報36aを海外医療ニュースサイト36から読み出し、機械翻訳及び言語解析を行い、言語解析結果から、日付、診断病名を抽出すると共に、診断病名の疾患が発生又は流行したか否かを判定する。
判定の結果、診断病名の疾患が発生又は流行した場合には、処理回路15は、更新日及び診断病名を所定のフォーマットで含む流行情報22aを作成(取得)し、当該流行情報22aを流行情報DB22に保存する。なお、言語解析結果が外国語の場合には、判定後に機械翻訳を行うことにより、母国語の流行情報22aを流行情報DB22に保存する。更新日は、抽出した日付を含む期間(例、今月、直近1ヵ月)に相当する。なお、流行情報22aは、前述した処方薬、増加率を含まないが、言語解析結果に処方薬の記述があれば、処方薬を含んでもよい。統計情報である増加率は流行情報22aに含まれない。以上により、項目の無い外部情報から流行情報22aを取得する処理が終了する。
次に、新治療法情報23aを取得する処理の一例について述べる。
新治療方法については、前述した項目の指定及び統計情報の算出を行わず、医療ニュースサイト情報35a又は海外医療ニュースサイト情報36aを言語解析し、新しい治療方法を示す記述を検出する方式を用いる。機械翻訳と言語解析の順序が任意であることは、前述した流行情報を取得する処理と同様である。
具体的には例えば、処理回路15は、医療ニュースサイト情報35aを医療ニュースサイト35から読み出し、形態素解析、文節解析、係り受け解析、Doc2Vecといった言語解析を行う。これにより、処理回路15は、新治療法情報に関連する項目の値を医療ニュースサイト情報35aから抽出すると共に、新治療法の記述の有無を判定する。例えば、処理回路15は、図19の上段左側の記事から「項目:値」として、「記述日:2018/1/7(図示せず)」、「診断病名:インフルエンザ」、「新手法:使用を控える,注意深く観察する」、「旧手法:薬GG」、「患者群:6〜12才」を抽出する。あるいは、処理回路15は、図19の上段中央の記事から「項目:値」として、「記述日:2017/12/20(図示せず)」、「診断病名:肺がん」、「新手法:抗がん剤XXX」、「旧手法:抗がん剤YY(図示せず)」を抽出する。また、処理回路15は、新治療法の記述の有無を判定する。
具体的には例えば、処理回路15は、言語解析結果において、診断病名の項目の値と、新手法の項目の値とがあれば、新治療法の記述がある旨を判定する。なお、新治療法の記述がある旨の判定結果は、図19上段中央の記事のように、旧手法の項目の値や患者群の項目の値がなくても得られる。
判定の結果、新治療法の記述がある場合には、処理回路15は、更新日、診断病名、新手法、旧手法、患者群を所定のフォーマットで含む新治療法情報23aを作成(取得)し、当該新治療法情報23aを新治療法情報DB23に保存する。なお、旧手法の項目の値がない場合には、旧手法の項目の値を空欄にすればよい。また、患者群(年齢層)の項目の値がない場合には、患者群の項目の値を「全患者」にしてもよく、空欄にしてもよい。更新日は、医療ニュースサイト情報35aの記述日を含む期間(例、今月、直近1ヵ月)に相当する。以上により、項目の無い外部情報から新治療法情報23aを取得する処理が終了する。
上述したように第2の実施形態によれば、流行情報の項目や新治療情報の項目に基づいて、外部の医療情報を取得する構成により、第1の実施形態の効果に加え、判定に用いる第2疾患に関する医療情報を準備する際に、ユーザの労力を軽減することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る医用情報処理装置について説明する。
第3の実施形態は、第1又は第2の実施形態の具体例であり、処理回路15の表示制御機能154により、相反疾患と患者の年齢(又は性別)とに応じて、A欄の疾患候補に対応するP欄(治療計画、治療法)の表示を切り替える処理について述べる。
なお、処理回路15の表示制御機能154の構成は、第1の実施形態と同様である。また、表示制御機能154に限らず、他の部分の構成も第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成された医用情報処理装置10が疾患候補の表示を切り替える処理の具体例について図20を用いて説明する。
始めに、新治療法DB23は、図20の上段に示す如き、更新日、診断病名、新手法、旧手法及び患者群(年齢層)を互いに関連付けて記述された新治療法情報23aを保存しているとする。この新治療法DB23は、診断病名及び患者の年齢を指定した読出要求により、指定された「診断病名」と、指定された年齢を含む「患者群」との両者に関連付けられた新治療法情報23aのレコード(行)が読出可能となっている。
一方、医用情報処理装置10の処理回路15は、前述した図12のステップST10において、相反疾患(第2疾患)に対して注意を促す情報をディスプレイ12に表示させる。このとき、処理回路15は、相反疾患である診断病名と、患者の年齢とを指定した読出要求を新治療法DB23に送出する。
新治療法DB23は、診断病名及び患者の年齢を指定した読出要求により、指定された「診断病名」と、指定された年齢を含む「患者群」との両者に関連付けられた新治療法情報23aのレコード(行)を処理回路15に送出する。
これにより、処理回路15は、相反疾患である診断病名と、患者の年齢とを指定した読出要求に応じた新治療法情報23aを取得し、この新治療法情報23aに基づいて、A欄の疾患候補に対応するP欄(治療計画、治療法)の表示を切り替える。例えばP欄は、図20の下段左側に示すように、患者が10才の場合には「患者群:8才〜15才」に対応する「新手法:薬FF」と、「患者群:6〜12才」に対応する「新手法:目を離さないよう指導」とを含むようにディスプレイ12に表示される。また例えばP欄は、図20の下段右側に示すように、患者が70才の場合には「患者群:60才以上」に対応する「新手法:薬HH」を含むようにディスプレイ12に表示される。
上述したように第3の実施形態によれば、患者の年齢に基づき、第2疾患に対して注意を促す情報を切り替えて表示部に表示させることができる。なお、第3の実施形態は、患者の年齢に代えて、患者の性別を用い、患者群を年齢層から性別に変更してもよい。この場合、患者の性別に基づき、第2疾患に対して注意を促す情報を切り替えて表示部に表示させることができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、患者の症状から第1疾患が推定されると、この症状に類似する症状をもつ第2疾患に患者が罹患している可能性があるか否かを、第2疾患に関する医療情報に基づいて判定する。判定した結果に基づき、第2疾患に対して注意を促す情報を表示部に表示させる。従って、例外的な症状に対する判定の誤りを低減することができる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ11に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ11にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。