JP7018790B2 - パワーデバイスの余寿命診断装置および余寿命診断方法 - Google Patents

パワーデバイスの余寿命診断装置および余寿命診断方法 Download PDF

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本発明は、パワーデバイスの余寿命診断装置および余寿命診断方法に関する。
従来、パワーデバイスの余寿命診断装置が知られている。たとえば、特開2011-196703号公報(特許文献1)には、温度センサによって検出されたパワー半導体素子の銅ベース温度の温度差を用いて、パワーデバイスの寿命計算を行なうパワーサイクル寿命予測装置が開示されている。当該パワーサイクル寿命予測装置においては、動作温度範囲内を複数の領域(パワーサイクル寿命カーブの直線の傾きが異なる範囲)を個別に分けて、それぞれの領域で基準温度を設定して寿命を算出する。全動作温度範囲について近似した直線の傾きを用いて寿命計算を行う場合に生じる丸め誤差が解消されるため、精度の高い寿命予測が可能となる。
特開2011-196703号公報
発熱源である半導体チップの昇降温が繰り返されること(パワーサイクル)によって、接合部材の膨張および収縮が繰り返される。パワーデバイスの故障は、膨張および収縮が繰り返されることによる接合部材の疲労(サイクル疲労)が主な要因でることが知られている。パワーデバイスの余寿命診断においては、実際にパワーデバイスが稼働している期間(供用期間)において、半導体チップの表面温度(接合部温度)が高精度に検出される必要がある。
特許文献1には、パワー半導体素子の製造過程でチップ内に温度検出用のダイオードを作製し、当該ダイオードの熱特性を使って半導体チップの表面温度を検出することにより、発熱源に極めて近い箇所の温度検出が可能となることが開示されている。
しかし、当該ダイオードの熱特性を使って接合部温度を検出する具体的な構成については開示されていない。また、温度検出用のダイオードがチップに内蔵されていない場合、接合部温度を高精度に検出することが困難になり得る。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、パワーデバイスの余寿命診断の精度を向上させることである。
本発明に係るパワーデバイスの余寿命診断装置は、変換部と、評価変数算出部と、疲労度算出部と、判定部とを備える。パワーデバイスは、半導体チップと、ベースプレートとを備える。半導体チップは、電力が供給されて発熱する。ベースプレートは、半導体チップからの熱が放出される放熱面を有する。ケース温度は、ベースプレートの放熱面の温度である。接合部温度は、半導体チップの表面の温度である。変換部は、第1インピーダンス関数および第2インピーダンス関数を用いて、ケース温度を接合部温度に変換する。第1インピーダンス関数は、半導体チップの発熱量とケース温度とを関係付ける。第2インピーダンス関数は、半導体チップの発熱量と接合部温度とを関係付ける。評価変数算出部は、接合部温度の時系列データから疲労評価変数を算出する。疲労度算出部は、疲労評価変数および疲労特性データから、パワーデバイスの疲労度を算出する。疲労特性データは、疲労評価変数とパワーデバイスの余寿命との対応関係を示す。判定部は、疲労度を受けてパワーデバイスの交換時期が到来したか否かの判定結果を出力する。疲労特性データは、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データを含む。疲労評価変数は、接合部温度の時系列データにおいて隣接する極値の差を含む。
本発明に係るパワーデバイスの余寿命診断装置によれば、ケース温度に関する第1インピーダンス関数および接合部温度に関する第2インピーダンス関数を用いて、ケース温度を接合部温度に変換することにより、接合部温度を高精度に検出することができる。その結果、パワーデバイスの余寿命診断の精度を向上させることができる。
余寿命診断の対象であるパワーデバイスの実装構造の断面図の一例を示す図である。 図1のパワーデバイスの実装構造に対応する熱等価回路である。 実施の形態1に係るパワーデバイスの余寿命診断装置の機能を説明するためのブロック図である。 図1のパワーデバイスの供用期間中における接合部温度のタイムチャートの一例である。 パワーサイクル試験によって得られた図1のパワーデバイスの熱疲労特性データの一例である。 図3の余寿命診断装置1において行なわれる処理の流れを説明するためのフローチャートである。 図1のパワーデバイスの供用期間中の接合部温度のタイム―チャートの一例である。 実施の形態2に係るパワーデバイスの余寿命診断装置の機能を説明するためのブロック図である。 パワーサイクル試験によって得られた図1のパワーデバイスの熱疲労特性データの他の例である。 図8の余寿命診断装置によって行なわれる処理の流れを説明するためのフローチャートである。 図1のパワーデバイスに対するパワーサイクル試験におけるサイクル数と接合部温度との対応関係を示すグラフである。 図1のパワーデバイスに対するパワーサイクル試験におけるサイクル数とデバイスチップおよびケース温度の間の飽和熱抵抗との対応関係を示すグラフである。 図1のパワーデバイスの第1はんだ層および第2はんだ層に亀裂がそれぞれ生じている様子を示す図である。 はんだ材料のバルク材の機械疲労特性データの一例を示す図である。 パワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データPc1~Pc3がプロットされたNf-ΔTj平面を示す図である。 図15の熱疲労特性データが図14の機械疲労特性データによって外挿された得られた疲労特性データを示す図である。 はんだ材料のバルク材の機械疲労特性データの他の例を示す図である。 パワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性がプロットされたNf-ΔTj平面を示す図である。 図18の熱疲労特性データが図17の機械疲労特性データによって外挿された得られた疲労特性データを示す図である。 実施の形態4に余寿命診断装置の変換部410の機能ブロック図である。 規格化された第1インピーダンス関数のタイムチャートである。 規格化された第2インピーダンス関数のタイムチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
実施の形態1.
図1は、余寿命診断の対象であるパワーデバイスMDの実装構造の断面図の一例を示す図である。図1に示されるように、パワーデバイスMDは、ワイヤボンド部wbと、デバイスチップ(半導体チップ)siと、第1はんだ層m1と、セラミック層m2(はんだ接合層)と、第2はんだ層m3と、ベースプレートm4とを含む。ベースプレートm4は、不図示の放熱部材(たとえば放熱フィン)に載置されている。セラミック層m2とベースプレートm4とは、第2はんだ層m3によって接合されている。デバイスチップsiとセラミック層m2とは、第1はんだ層m1によって接合されている。ワイヤボンド部wbの一端は、デバイスチップsiの表面にはんだによって接合されている。
パワーデバイスMDにおいては、配線構造としてワイヤボンディングが用いられている。パワーデバイスMDの配線構造は、ダイレクトリードボンディング(DLB:Direct Lead Bonding)が用いられてもよい。また、接合部材ははんだに限定されず、たとえば銀焼結ダイ接合(Silver sintering die attach process)における銀ナノ粒子のように、はんだ以外の材料が用いられてもよい。
デバイスチップsiは、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を含む。デバイスチップsiの熱は、第1はんだ層m1、セラミック層m2、第2はんだ層m3、およびベースプレートm4に亘って形成される放熱経路を通過して、ベースプレートm4の放熱面hfからパワーデバイスMDの外部へ放出される。
接合部温度Tjは、デバイスチップsiの表面(放熱経路の始点近傍)の温度である。ケース温度Tcは、放熱面hf(放熱経路の終端近傍)の温度である。温度Ts1は、第1はんだ層m2の温度である。温度Ts2は、第2はんだ層m3の温度である。温度Twbは、ワイヤボンド部wbとデバイスチップsiとの接合部分の温度である。接合部温度Tjは、温度Ts1およびおTwbにほぼ等しい。ケース温度Tcは、温度Ts2にほぼ等しい。
デバイスチップsiのパワーサイクルによって、第1はんだ層m1、第2はんだ層m3、およびワイヤボンド部wbの一端をデバイスチップsiに接合しているはんだの膨張および収縮が繰り返される。パワーデバイスMDの故障は、膨張および収縮が繰り返されることによるはんだ部材のサイクル疲労が主な要因でることが知られている。パワーデバイスMDの余寿命診断においては、供用期間において、パワーデバイスMDの接合部温度Tjが高精度に検出される必要がある。
しかし、パワーデバイスMDが電力機器に実装されている場合、デバイスチップsiは、ベースプレートm4上においてモールドされていることが多く、供用期間中に接合部温度Tjを直接的に検出することは困難である場合が多い。
そこで、実施の形態1においては、デバイスチップsiの発熱量とケース温度Tcとを関係付ける第1インピーダンス関数、およびデバイスチップsiの発熱量と接合部温度Tjとを関係付ける第2インピーダンス関数を用いて、供用期間中においても測定可能なケース温度Tcを、接合部温度Tjに変換する。実施の形態1に係る余寿命診断装置によれば、接合部温度Tjを高精度に検出することができるため、パワーデバイスMDの余寿命診断の精度を向上させることができる。
なお、インピーダンス関数(℃/W)とは、パワーデバイスMDの外部からの電力供給に伴うデバイスチップsiの発熱に起因する或る温度の上昇、およびその熱応答時間の経過特性のことである。
図2は、図1のパワーデバイスMDの実装構造に対応する熱等価回路である。発熱源Pjは、デバイスチップsiに含まれる発熱源に対応する。熱抵抗R1および熱容量C1は、デバイスチップsiの熱抵抗成分および熱容量成分にそれぞれ対応する。熱抵抗R2および熱容量C2は、第1はんだ層m1の熱抵抗成分および熱容量成分にそれぞれ対応する。熱抵抗R3および熱容量C3は、セラミック層m2の熱抵抗成分および熱容量成分にそれぞれ対応する。熱抵抗R4および熱容量C4は、第2はんだ層m3の熱抵抗成分および熱容量成分にそれぞれ対応する。熱抵抗R5および熱容量C5は、ベースプレートm4の熱抵抗成分および熱容量成分にそれぞれ対応する。熱抵抗R6および熱容量C6は、ベースプレートm4と放熱部材(不図示)との間に配置された熱伝導材(たとえばグリース材あるいは伝導性ゴム材)の熱抵抗成分および熱容量成分に対応する。熱抵抗Rexは、外部熱抵抗に対応する。熱抵抗rp1,rp2は、デバイスチップsiの部分抵抗成分に対応する。発熱源Pwbは、ワイヤボンド部wbに含まれる発熱源に対応する。
図2に示されるように、熱抵抗R1~R6は、発熱源Pjと熱抵抗Rexとの間において直列に接続されている。熱抵抗Rexは、熱抵抗R6と基準温度点BPとの間に接続されている。発熱源Pjは、熱抵抗R1と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C1は、熱抵抗R1と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C2は、熱抵抗R2と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C3は、熱抵抗R3と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C4は、熱抵抗R4と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C5は、熱抵抗R5と基準温度点BPとの間に接続されている。熱容量C6は、熱抵抗R6と基準温度点BPとの間に接続されている。発熱源Pwbおよび熱抵抗rp1,rp2は、熱抵抗R1および発熱源Pjの接続点と、熱抵抗R1およびR2の接続点との間において、この順に直列に接続されている。
接合部温度Tjは、発熱源PjとPwbとの接続点の温度である。ケース温度Tcは、熱抵抗R4とR5との接続点の温度である。温度Ts1は、熱抵抗R1とR2との接続点の温度である。温度Ts2は、熱抵抗R3とR4との接続点の温度である。温度Twbは、熱抵抗rp1とrp2との接続点の温度である。
パワーデバイスMDを図2に示される熱等価回路としてとらえた場合、発熱源Pjの発熱量(J/秒)およびケース温度Tcを関係付けるインピーダンス関数Zj-c(第1インピーダンス関数)は、当該熱応答回路から導かれる。発熱源Pjの発熱量およびインピーダンス関数Zj-cを用いた畳み込み積分演算によって、ケース温度Tc(℃)は、以下の式(1)のように表される。
Figure 0007018790000001
同様に、発熱源Pjの発熱量および接合部温度Tjを関係付けるインピーダンス関数Zj-j(第2インピーダンス関数)は、図2の熱応答回路から導かれる。発熱源Pjの発熱量およびインピーダンス関数Zj-jを用いた畳み込み積分演算によって、接合部温度Tj(℃)は、以下の式(2)のように表される。
Figure 0007018790000002
式(1)から発熱源Pjの発熱量は、以下の式(3)のように表される。
Figure 0007018790000003
式(3)を式(2)に代入することにより、接合部温度Tjは、以下の式(4)のように表される。
Figure 0007018790000004
式(4)によれば、インピーダンス関数Zj-cおよびZj-jを用いて、ケース温度Tcを接合部温度Tjに変換することができる。
図3は、実施の形態1に係るパワーデバイスの余寿命診断装置1の機能を説明するためのブロック図である。図3に示されるように、余寿命診断装置1は、変換部110と、評価変数算出部120と、疲労度算出部130と、判定部140とを備える。余寿命診断装置は、たとえばCPU(Central Processing Unit)のようなコンピュータによって実現される。
余寿命診断の対象となるパワーデバイスMDは、電力機器PDに実装されている。温度センサ500は、ケース温度Tcを検出して変換部110へ出力する。変換部110は、式(4)を用いて、ケース温度Tcを接合部温度Tjに変換し、評価変数算出部120へ出力する。
評価変数算出部120は、接合部温度Tjの時系列データ(図4参照)から、現在の判定時刻に最も近い時刻に形成された時刻tk1における極大値Tjmaxおよび時刻tk2における極小値Tjminの温度差(温度振幅)ΔTjを疲労評価変数として算出し、疲労度算出部130に出力する。
疲労度算出部130は、温度振幅ΔTjとパワーデバイスMDの余寿命との対応関係を示す疲労特性データから余寿命を算出し、累積損傷分布則(マイナー則)に従って累積疲労度を算出する。疲労特性データは、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスMDの熱疲労特性データ(図5参照)を含む。なお、パワーサイクル試験とは、パワーデバイスに電流を流す状態と流さない状態とを繰り返すことにより、パワーデバイスの温度を予め定められた範囲(温度振幅)において繰り返し昇温および降温させる信頼性試験である。
図5に示されるように、熱疲労特性データは、温度振幅ΔTjとパワーデバイスの余寿命である残存サイクル数Nfとを関係付ける。温度振幅ΔTjと残存サイクル数Nfとの対応関係は、温度振幅ΔTjの温度振幅をNf回繰り返すと、パワーデバイスMDが故障することを意味する。温度振幅ΔTjxの1サイクル毎にパワーデバイスMDが同程度に疲労していくとした場合、温度振幅ΔTjxに対応する残存サイクル数がNx回である時刻のパワーデバイスMDの故障確率Dxは、以下の式(5)のように、残存サイクル数Nxの逆数として表すことができる。
Figure 0007018790000005
式(5)に示されるように、残存サイクル数Nxは温度振幅ΔTjxによって決定される。そのため、残存サイクル数Nxの逆数である故障確率Dxは、温度振幅ΔTjxを引数とする関数Fとして表現される。
マイナー則においては、以下の式(6)に示されるように、各判定時刻の故障確率Dxが累積加算され、パワーデバイスMDの累積疲労度Dnが算出される。
Figure 0007018790000006
再び図3を参照して、疲労度算出部130は、累積疲労度Dnを判定部140に出力する。判定部140は、累積疲労度Dnが閾値D0(たとえば1)以上であった場合に、パワーデバイスMDが故障して交換時期が到来したと判定し、交換信号Falmをアクティブ値(たとえば1)として出力する。
図6は、図3の余寿命診断装置1において行なわれる処理の流れを説明するためのフローチャートである。図6に示される処理は、判定時刻毎に不図示のメインルーチンによって呼び出される。
図6に示されるように、余寿命診断装置1は、ステップ(以下では単に「S」という。)101において、ケース温度Tcを取得し、処理をS102に進める。余寿命診断装置1は、S102においてケース温度Tcを接合部温度Tjに変換し、処理をS103に進める。余寿命診断装置1は、S103において現在の判定時刻に最も近い極大値の時刻tk1、および当該極大値に隣接する極小値の時刻tk2を検出し、処理をS104に進める。余寿命診断装置1は、S104において隣接する極値の温度振幅ΔTjを算出し、処理をS105に進める。余寿命診断装置1は、S105において残存サイクル数Nfを算出し、処理をS106に進める。余寿命診断装置1は、S106において、マイナー則に従う以下の式(7)に従い、累積疲労度Dnを算出し、処理をS107に進める。
Figure 0007018790000007
余寿命診断装置1は、S107において、累積疲労度Dnが閾値D0以上であるか否かを判定する。累積疲労度Dnが閾値D0未満である場合(S107においてNO)、パワーデバイスMDがまだ故障してないとして、余寿命診断装置1は、処理をメインルーチンに戻す。累積疲労度Dnが閾値D0以上である場合(S107においてYES)、パワーデバイスが故障しているとして、交換信号Falmを出力し、処理をメインルーチンに戻す。
なお、S101,S102が変換部110によって行なわれる処理である。S103,S104が評価変数算出部120によって行なわれる処理である。S105,S106が疲労度算出部130によって行なわれる処理である。S107,S108が判定部140によって行なわれる処理である。
以上、実施の形態1に係るパワーデバイスの余寿命診断装置によれば、パワーデバイスの余寿命診断の精度を向上させることができる。
実施の形態2.
実施の形態1においては、パワーデバイスの疲労度を算出するための疲労評価変数が接合部温度の隣接する極値Tjmax,Tjminの温度振幅ΔTjである場合について説明した。疲労評価変数は、温度振幅ΔTjに限定されない。評価疲労変数が温度振幅ΔTj以外の値を含むことにより、余寿命診断の精度をさらに向上させることができる。
再び図4を参照して、接合部温度の隣接する極値の温度振幅ΔTj以外の疲労評価変数として、たとえば極大値Tjmax、極小値Tjmin、極値TjmaxおよびTjminの平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dt(隣接する極値間の傾き)を挙げることができる。パワーデバイスの使用環境および動作条件をほぼ一定とすることが可能なパワーサイクル試験とは異なり、パワーデバイスの供用期間中においてはパワーデバイスの使用環境あるいは動作条件が変化する。パワーデバイスの使用環境あるいは動作条件の変化に合わせて、温度振幅ΔTjと同様にこれらの値も変動する。
図7は、パワーデバイスの供用期間中の接合部温度Tjのタイム―チャートの一例である。図7に示されるように、期間Trm1における温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、極小値Tjmin、平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dtは、それぞれ温度振幅ΔTj1、極大値Tjmax1、極小値Tjmin1、平均値Tjave1、および昇降温速度dTj1/dtである。期間Trm2における温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、極小値Tjmin、平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dtは、それぞれ温度振幅ΔTj2、極大値Tjmax2、極小値Tjmin2、平均値Tjave2、および昇降温速度dTj2/dtである。期間Trm3における温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、極小値Tjmin、平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dtは、それぞれ温度振幅ΔTj3、極大値Tjmax3、極小値Tjmin3、平均値Tjave3、および昇降温速度dTj3/dtである。温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、極小値Tjmin、平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dtは、期間Trm1~Trm3毎に異なっている。
供用期間中においては時間経過に伴いパワーデバイスの使用環境あるいは動作条件が変化する。パワーデバイスの使用環境あるいは動作条件の変化に合わせて、温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、極小値Tjmin、平均値Tjave、および昇降温速度dTj/dtも変動する。供用期間中のパワーデバイスの余寿命判断においては、パワーデバイスの使用環境および動作条件の変化が反映されている疲労特性データを参照する必要がある。
そこで、実施の形態2においては、疲労評価変数が、温度振幅ΔTjに加えて、昇降温速度dTj/dt、および極大値Tjmaxを含む場合について説明する。実施の形態2において疲労特性データは、温度振幅ΔTj、昇降温速度dTj/dt、および極大値Tjmaxと、残存サイクル数とを関係付ける。極大値Tjmaxに替えて、極小値Tjminあるいは平均値Tjaveが用いられてもよい。
実施の形態2においては、実施の形態1の図3,図5,図6が、図8~図10にそれぞれ置き換えられる。また、実施の形態2においては、疲労評価変数が3つの値を含むことに伴い、実施の形態1の式(5),(6)が以下の式(8),(9)にそれぞれ置き換えられる。
Figure 0007018790000008
図8は、実施の形態2に係るパワーデバイスの余寿命診断装置2の機能を説明するためのブロック図である。余寿命診断装置2の構成は、図3の余寿命診断装置1の評価変数算出部120,疲労度算出部130が、評価変数算出部220,疲労度算出部230にそれぞれ置き換えられた構成である。これら以外の構成は同様であるため、説明を繰り返さない。
図8に示されるように、評価変数算出部220は、接合部温度Tjの時系列データから、現在の判定時刻に最も近い時刻に形成された時刻tk1における極大値Tjmaxおよび時刻tk2における極小値Tjminの温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、および昇降温速度dTj/dtを疲労評価変数として算出し、疲労度算出部230に出力する。
疲労度算出部230は、温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、および昇降温速度dTj/dtと、パワーデバイスMDの余寿命との対応関係を示す疲労特性データから余寿命を算出し、マイナー則に従って累積疲労度を算出する。疲労特性データは、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスMDの熱疲労特性データ(図9参照)を含む。図9に示されるように、熱疲労特性データは、極大値Tjmaxおよび昇降温速度dTj/dtが決定されると、温度振幅ΔTjとパワーデバイスの残存サイクル数Nfとを関係付ける直線として表される。極大値Tjmaxおよび昇降温速度dTj/dtの組合せ毎に、図9には複数の曲線が示されている。
図10は、図8の余寿命診断装置2によって行なわれる処理の流れを説明するためのフローチャートである。図10に示されるフローチャートは、図6に示されるフローチャートのS104,S105がS204,S205に置き換えられたフローチャートである。図10のフローチャートのこれら以外の処理は、図6のフローチャートに含まれる処理と同様である。
図10に示されるように、余寿命診断装置2は、S101~S103においてケース温度Tcを接合部温度Tjに変換して、隣接する極値Tjmax,Tjminの時刻tk1,tk2をそれぞれ検出して処理をS204に進める。
余寿命診断装置2は、S204において、隣接する極値の温度振幅ΔTj、極大値Tjmax、および昇降温速度dTj/dtを算出して処理をS205に進める。余寿命診断装置2は、S205において、残存サイクル数Nfを算出し、処理をS106に進める。
余寿命診断装置2は、S106~S108において、累積疲労度Dnが閾値D0を超えている場合に交換信号Falmを出力する。
以上、実施の形態2に係るパワーデバイスの余寿命診断装置によれば、パワーデバイスの余寿命診断の精度をさらに向上させることができる。
実施の形態3.
実施の形態1,2においては、疲労特性データが、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データである場合について説明した。実施の形態3においては、当該熱疲労特性データを、予め実行されたサイクル疲労試験によって得られた、パワーデバイスの構成要素を接合している接合部材(たとえばはんだ)の機械疲労特性データによって外挿する構成について説明する。
疲労評価変数の範囲は、パワーサイクル試験の試験結果の数によって限定される。供用期間中においては、実施の形態2において説明したように、パワーデバイスの使用環境および動作条件の変化に応じて疲労評価変数は変動する。そのため、疲労特性データにおける疲労評価変数の範囲が限定されると、供用期間中の余寿命診断において疲労評価変数をパワーデバイスの余寿命と関連付けられない場合が生じ得る。
ここで、材料のサイクル疲労試験における機械疲労と、パワーデバイスのパワーサイクル試験における熱疲労とは、機械的変位の繰り返しによって蓄積される疲労という点で共通している。また、パワーデバイスが故障するまで一定の温度振幅を繰り返す必要があるパワーサイクル試験と比べて、材料のサイクル疲労試験は当該材料の試験片(バルク材)が破断するまでの時間(サイクル疲労試験に要する時間)が短い。そのため、サイクル疲労試験データの方が豊富に存在していることが知られている。
そこで、実施の形態3においては、パワーサイクル試験によって得られた熱特性データを、予め実行されたサイクル疲労試験によって得られた接合部材の機械疲労特性データによって外挿し、疲労特性データの充実化を図り、疲労特性データにおける疲労評価変数の範囲を広げる。供用期間中に想定される疲労評価変数の範囲が疲労特性データにおいて充分にカバーされため、供用期間中においてパワーデバイスの余寿命診断を安定的に行なうことができる。
実施の形態3と実施の形態1,2との違いは、疲労度算出部が参照する疲労特性データにおいて、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データが、予め実行されたサイクル疲労試験によって得られた接合部材の機械疲労特性データによって外挿されている点である。それ以外の構成は同様であるため、説明を繰り返さない。
図11は、図1のパワーデバイスMDに対するパワーサイクル試験におけるサイクル数と接合部温度Tjとの対応関係を示すグラフである。図12は、図1のパワーデバイスMDに対するパワーサイクル試験におけるサイクル数とデバイスチップsiおよびケース温度Tcの間の飽和熱抵抗Rthj-cとの対応関係を示すグラフである。図11,図12においては、パワーサイクル試験を開始してから、パワーデバイスMDが故障する直前までの対応関係が示されている。
図11に示されるように、接合部温度Tjは、パワーサイクル試験の開始からサイクル数NTj1までは、安定的に変化している。しかし、接合部温度Tjは、サイクル数NTj1において急激に増加した後、パワーデバイスが故障するまで増加する。図11のサイクル数NTj1~NTj4において生じる接合部温度Tjの離散的な増加(ステップ変化)は、デバイスチップsiからのワイヤボンド部wbの剥離(リフトオフ)が生じたことを示している。すなわち、接合部温度Tjは、サイクル数NTj1までは安定的に変化するが、サイクル数NTj1以降は、悪化する。
図12に示されるように、飽和熱抵抗Rthj-cは、パワーサイクル試験の開始からサイクル数NRthまでは、安定的に変化している。しかし、飽和熱抵抗Rthj-cは、サイクル数NRthにおいて急激に増加した後、パワーデバイスが故障するまで増加する。サイクル数NRthにおいては、第1はんだ層m1に発生した亀裂が放熱経路に達してデバイスチップsiから放熱面hfまでの熱伝達が妨げられることで、飽和熱抵抗Rthj-cが急激に増加している。すなわち、飽和熱抵抗Rthj-cは、サイクル数NRthまでは安定的に変化するが、サイクル数NRth以降は、悪化する。
パワーデバイスの保守交換タイミングは、接合部温度Tjまたは飽和熱抵抗Rthj-cが悪化する直前が望ましい。保守交換タイミングは、第1はんだ層の劣化がワイヤボンド部wbのリフトオフよりも先に発生する場合はサイクルNRthであり、ワイヤボンド部wbのリフトオフが第1はんだ層の劣化よりも先に発生する場合はサイクルNTjである。そのため、パワーデバイスの保守交換タイミングは、パワーデバイスMDの使用環境および動作条件に合わせて適宜選択される必要がある。
図13は、図1のパワーデバイスMDの第1はんだ層m1および第2はんだ層m3にそれぞれ亀裂k1,k2が生じている様子を示す図である。デバイスチップsiからベースプレートm4に向けて放熱サイクルが繰り返されるので、パワーデバイスMDの実装構造の各層の界面では,膨張および収縮に伴う応力ひずみが発生する。その結果、第1はんだ層m1および第2はんだ層m2の端部に応力集中が発生して当該端部から亀裂k1,k2がそれぞれ発生する。亀裂k1,k2は、パワーデバイスMDの内部に向かって進行する。デバイスチップsiから放熱面hfに至る放熱経路Sqに亀裂k1,k2が達すると、放熱経路Sqの熱抵抗の急激な増加として亀裂k1,k2の発生が顕在化する。亀裂k1,k2の発生が顕在化のタイミングは、図12のサイクル数NRthにおける飽和熱抵抗Rthj-cの急激な増加に対応する。
パワーデバイスMDの動作寿命は、パワーデバイスMDの使用を開始したタイミングから保守交換するタイミングまでの期間と定義してよい。また、パワーデバイスMDの劣化プロセスでは、ワイヤボンド部wbの接合点、第1はんだ層m1、および第2はんだ層m3のそれぞれの部位の疲労が同時に蓄積されていくことを意味する。そのため、3つの疲労事象の相互作用を総合的に考慮しながら、動作寿命を決定する必要がある。しかし、パワーサイクル試験の実験データが少ない場合、3つの疲労事象の相互作用にはさまざまなパターンがあり得るため、当該相互作用がパワーサイクル試験によって得られた熱疲労特性データに反映されにくい。
そこで、実施の形態3においては、パワーサイクル試験によって得られた熱疲労特性データを、はんだ材料のバルク材に関する機械疲労特性データによって外挿する。
図14は、はんだ材料のバルク材の機械疲労特性データの一例を示す図である。図14における横軸の強制変位量Δδおよび縦軸のひずみ範囲Δεは、熱疲労特性データの温度振幅ΔTjおよび残存サイクル数Nfにそれぞれ対応する。図14においては、強制変位量Δδおよびひずみ範囲Δεの対応関係を示す1つの曲線が示されている。
図15は、パワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データPc1~Pc3がプロットされたNf-ΔTj平面を示す図である。点Pc1~Pc3の各々が、パワーサイクル試験の結果を表している。図15に示される熱疲労特性データに図14に示される機械疲労特性データの曲線を最小二乗フィッティングにより当てはめることにより熱疲労特性データが外挿され、図16に示される疲労特性データが形成される。その結果、パワーサイクル試験に得られたパワーデバイスの熱疲労特性データによっては推定が困難な範囲においても、温度振幅ΔTjと残存サイクル数Nfとの対応関係を形成することができる。
実施の形態3においても疲労評価変数は、実施の形態2と同様に温度振幅ΔTjに加えて他の値をさらに含んでいてもよい。以下では、疲労評価変数が温度振幅ΔTjに加えて昇降温速度dTj/dt、および極大値Tjmaxをさらに含む場合について説明する。
図17は、はんだ材料のバルク材の機械疲労特性データの他の例を示す図である。図17においては、強制変位量Δδおよびひずみ範囲Δεの対応関係を示す曲線F1~F4が示されている。図18は、パワーサイクル試験によって得られたパワーデバイスの熱疲労特性データPc11~Pc14がプロットされたNf-ΔTj平面を示す図である。点Pc11~Pc14の各々が、パワーサイクル試験の結果を表している。
図17に示される熱疲労特性データに図16に示される機械疲労特性データの曲線F1~F4を最小二乗フィッティングにより当てはめることにより熱疲労特性データが外挿され、図19に示される疲労特性データが形成される。図19における曲線F11~F14は、図16の曲線F1~F4が図17にそれぞれ当てはめられた曲線に対応する。その結果、パワーサイクル試験に得られたパワーデバイスの熱疲労特性データによっては推定が困難な範囲においても、温度振幅ΔTj、降温速度dTj/dt、および極大値Tjmaxと残存サイクル数Nfとの対応関係を形成することができる。
以上、実施の形態3に係るパワーデバイスの余寿命診断装置によれば、パワーデバイスの余寿命診断の精度を向上させることができるとともに、余寿命診断を安定的に行なうことができる。
実施の形態4.
実施の形態1~3においては、パワーデバイスの熱等価回路を用いてケース温度Tcを接合部温度Tjに変換する場合について説明した。この場合、熱等価回路の熱回路要素(熱抵抗R1~R7,Rex,rp1,rp2および熱容量C1~C6)の各数値を構造部材の熱物性値および形状寸法から算出する必要がある。
実施の形態4においては、予め行なわれた実験によって得られたインピーダンス関数曲線を形成する時系列データをインピーダンス関数として用いて、実際に検出されたケース温度Tcを内部モデル制御によるシミュレーションによって接合部温度Tjに変換する。実施の形態4によれば、熱等価回路の熱回路要素の各数値を構造部材の熱物性値および形状寸法から算出する手間を省くことができる。
実施の形態4に係る余寿命診断装置の構成は、図3の余寿命診断装置1の変換部110が変換部410に置き換えられた構成である。これ以外の構成は同様であるため、説明を繰り返さない。
図20は、実施の形態4に余寿命診断装置の変換部410の機能ブロック図である。図20に示されるように、変換部410は、デバイスモデル演算部411と、温度電力変換部412と、レギュレータ413と、ケース温度算出部414と、接合部温度算出部415と、一時記憶部416とを備える。
検出されたケース温度Tcの時系列データは、一時記憶部416に記憶される。一時記憶部416には、少なくとも予測時間差Δhの間に検出されたケース温度Tcの時系列データが記憶される。すなわち、時刻tkに一時記憶部416に記憶されたケース温度Tcの検出値は、時刻tkからΔh秒後にレギュレータ413に出力される。
レギュレータ413は、実際に検出されたケース温度Tcを一時記憶部416から受け、デバイスモデル演算部411からモデル温度Tmvを受け、ケース温度算出部414からケース温度Tcの推定値であるプロセス温度Tc*を受けて、操作温度Tovをデバイスモデル演算部411および温度電力変換部412に出力する。
デバイスモデル演算部411は、外乱を考慮しないモデルとして予め定められた独立モデルに基づいて予測モデル制御を行なう。デバイスモデル演算部411は、サンプリング時刻iiより1サンプリング時間前のサンプリング時刻(ii-1)の操作温度Tov、サンプリング時刻(ii-1)のモデル温度Tmv、およびインピーダンス関数R(1)を用いて、以下の式(10)に従って演算し、今回のサンプリング時刻iiにおけるケース温度Tcの予測値であるモデル温度Tmvをレギュレータ413および温度電力変換部412に出力する。インピーダンス関数R(1)は、図21に示される規格化されたインピーダンス関数Zj-cの曲線を形成する時系列データの先頭データである。インピーダンス関数を規格化することにより、パワーデバイスにより異なる電力容量-昇温特性に影響されることなく処理を行なうことができる。
Figure 0007018790000009
温度電力変換部412は、レギュレータ413からの操作温度Tovを操作電力Uに変換する。温度電力変換部412は、操作電力Uをケース温度算出部414および接合部温度算出部415に出力する。
ケース温度算出部414は、サンプリング時刻iiまでに受けた操作電力Uと、図21に示されるインピーダンス関数Zj-cの曲線を形成する時系列データZj-c(k)とを用いて、以下の式(11)に従って、サンプリング時刻iiにおけるケース温度Tcの推定値であるプロセス温度Tc*を算出し、レギュレータ413に出力する。
Figure 0007018790000010
レギュレータ413は、サンプリング時刻iiから予測時間差Δhが経過したサンプリング時刻(ii+Δh)までのモデル温度Tmvの変化量Δmを以下の式(12)に従って算出する。
Figure 0007018790000011
式(12)の第1項は、モデル温度Tmvのサンプリング時刻iiから予測時間差Δhが経過するまでの自然放熱寄与分である。式(12)の第2項は、強制加熱寄与分である。式(12)の第3項は、サンプリング時刻iiのモデル温度Tvである。
レギュレータ413は、サンプリング時刻iiからサンプリング時刻(ii+Δh)までのプロセス温度Tc*の変化量Δpを、以下の式(13)に従って算出する。式(7)においてK(Δh)は制御係数である。
Figure 0007018790000012
レギュレータ413は、実際に検出されたケース温度Tcと、サンプリング時刻iiにおけるケース温度の推定値であるプロセス温度Tc*とを用いて、プロセス温度Tc*が実際に検出されたケース温度Tcのプロファイルに追従するように、サンプリング時刻iiの予測値であるモデル温度Tmvを補正した値をサンプリング時刻iiの操作温度Tovとして算出する。具体的には、レギュレータ413は、変化量Δmと変化量Δpとが一致するように、以下の式(14)に従ってサンプリング時刻iiにおける操作温度Tovを算出する。レギュレータ413は、デバイスモデル演算部411、および温度電力変換部412へ操作温度Tovを出力する。
Figure 0007018790000013
デバイスモデル演算部411、温度電力変換部412、レギュレータ413、およびケース温度算出部414による同時処理が、サンプリング時刻毎に再帰的に実施される。式(10)~(14)による計算は、予測時間差Δh時間経過後のケース温度Tcおよびインピーダンス関数Zj-cの情報を用いた予測モデル制御に基づいている。
接合部温度算出部415は、サンプリング時刻iiまでに受けた操作電力Uと、図22に示される規格化されたインピーダンス関数Zj-jの曲線を形成する時系列データZj-j(k)を用いて、以下の式(15)に従って、サンプリング時刻iiにおける接合部温度Tjを算出し、評価変数算出部に出力する。
Figure 0007018790000014
以上、実施の形態4に係るパワーデバイスの余寿命診断装置によれば、パワーデバイスの余寿命診断の精度を向上させることができる。
なお、実施の形態1~4に係る余寿命診断装置によれば、はんだ層の劣化のみならず、ワイヤボンド部の接合部分の劣化も高精度に検出することができる。
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 寿命診断装置、110,410 変換部、120,220 評価変数算出部、130,230 疲労度算出部、140 判定部、411 デバイスモデル演算部、412 温度電力変換部、413 レギュレータ、414 ケース温度算出部、415 接合部温度算出部、416 一時記憶部、500 温度センサ、MD パワーデバイス、PD 電力機器、Pj,Pwb 発熱源、hf 放熱面、m1 第1はんだ層、m3 第2はんだ層、m4 ベースプレート、si デバイスチップ、tk,tk1,tk2 時刻、wb ワイヤボンド部。

Claims (6)

  1. パワーデバイスの余寿命診断装置であって、
    前記パワーデバイスは、
    電力が供給されて発熱する半導体チップと、
    前記半導体チップからの熱が放出される放熱面を有するベースプレートとを備え、
    前記パワーデバイスの余寿命診断装置は、
    前記半導体チップの発熱量と前記放熱面の温度であるケース温度とを関係付ける第1インピーダンス関数、および前記発熱量と前記半導体チップの表面の温度である接合部温度とを関係付ける第2インピーダンス関数を用いて、前記ケース温度を前記接合部温度に変換する変換部と、
    前記接合部温度の時系列データから疲労評価変数を算出する評価変数算出部と、
    前記疲労評価変数と前記パワーデバイスの余寿命との対応関係を示す疲労特性データから、前記パワーデバイスの疲労度を検出する疲労度算出部と、
    前記疲労度を受けて前記パワーデバイスの交換時期が到来したか否かの判定結果を出力する判定部とを備え、
    前記疲労特性データは、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られた前記パワーデバイスの熱疲労特性データを含み、
    前記疲労評価変数は、前記時系列データにおいて隣接する極値の差を含む、パワーデバイスの余寿命診断装置。
  2. 前記疲労評価変数は、前記接合部温度、および前記接合部温度の昇降温速度をさらに含む、請求項1に記載のパワーデバイスの余寿命診断装置。
  3. 前記パワーデバイスは、接合部材によって前記半導体チップに接合された構成要素をさらに備え、
    前記疲労特性データは、前記熱疲労特性データが、予め実行されたサイクル疲労試験によって得られた前記接合部材の機械疲労特性データによって外挿されたデータである、請求項1または2に記載のパワーデバイスの余寿命診断装置。
  4. 前記構成要素は、はんだ接合層およびワイヤボンドの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のパワーデバイスの余寿命診断装置。
  5. 前記変換部は、
    操作温度を算出するレギュレータと、
    前記操作温度を操作電力に変換する温度電力変換部と、
    予め定められたモデルにおいて、前記操作温度と、前記第1インピーダンス関数とを用いて、前記ケース温度の予測値であるモデル温度を算出するモデル演算部と、
    前記操作電力と、前記第1インピーダンス関数とを用いて、前記ケース温度の推定値であるプロセス温度を算出するケース温度算出部と、
    前記操作電力と、前記第2インピーダンス関数とを用いて、前記接合部温度を算出する接合部温度算出部とを含み、
    前記レギュレータは、今回のサンプリング時刻から予測時間差だけ経過後のサンプリング時刻までの前記モデル温度の変化量と前記プロセス温度の変化量とが等しくなるように前記操作温度を算出する、請求項1~4のいずれか1項に記載のパワーデバイスの余寿命診断装置。
  6. パワーデバイスの余寿命診断方法であって、
    前記パワーデバイスは、
    電力が供給されて発熱する半導体チップと、
    前記半導体チップからの熱が放出される放熱面を有するベースプレートとを備え、
    前記パワーデバイスの余寿命診断方法は、
    前記半導体チップの発熱量と前記放熱面の温度であるケース温度とを関係付ける第1インピーダンス関数、および前記発熱量と前記半導体チップの表面の温度である接合部温度とを関係付ける第2インピーダンス関数を用いて、前記ケース温度を前記接合部温度に変換するステップと、
    前記接合部温度の時系列データから疲労評価変数を算出するステップと、
    前記疲労評価変数と前記パワーデバイスの余寿命との対応関係を示す疲労特性データから、前記パワーデバイスの疲労度を検出するステップと、
    前記疲労度を受けて前記パワーデバイスの交換時期が到来したか否かの判定結果を出力するステップとを含み、
    前記疲労特性データは、予め実行されたパワーサイクル試験によって得られた前記パワーデバイスの熱疲労特性データを含み、
    前記疲労評価変数は、前記時系列データにおいて隣接する極値の差を含む、パワーデバイスの余寿命診断方法。
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