<第1実施形態>
以下、第1実施形態について説明する。
図1は、空調装置1の構成の一例を示すブロック図である。空調装置1は、例えば、車両に設けられる車両用空調装置である。空調装置1は、車両用以外の空調装置、例えば居室などの空調に用いられる空調装置でもよい。図1に示すように、空調装置1は、コンプレッサ11と、室内熱交換器12と、室外熱交換器13と、レシーバ14と、本発明の膨張弁の一例である温度式膨張弁15と、エバポレータ16と、エアコンスイッチ50と、本発明の制御部の一例である制御装置60と、を備える。
コンプレッサ11と室内熱交換器12との間には、第1配管21が設けられ、室内熱交換器12と室外熱交換器13との間には、第2配管22が設けられている。第1配管21および第2配管22には、いずれも高圧高温であり、気液二相の冷媒(以下「二相冷媒」という)が流通する。室外熱交換器13とレシーバ14との間には、第3配管23が設けられ、レシーバ14と温度式膨張弁15との間には、第4配管24が設けられている。第3配管23および第4配管24には、いずれも高圧恒温であり、液相の冷媒(以下「液相冷媒」という)が流通する。
温度式膨張弁15とエバポレータ16との間には、第5配管25及び第6配管26が設けられている。第5配管25には、低圧低温の二相冷媒が流通し、第6配管には、低圧恒温であり、気相の冷媒(以下「気相冷媒」という)が流通する。温度式膨張弁15とコンプレッサ11との間には、第7配管27が設けられている。第7配管27には、低圧恒温の気相冷媒が流通する。
コンプレッサ11は、気相冷媒を圧縮して二相冷媒として排出する。コンプレッサ11は、第1配管21~第7配管27を通じて、室内熱交換器12と、室外熱交換器13と、レシーバ14と、温度式膨張弁15と、エバポレータ16の間で圧縮した冷媒を循環させる。室内熱交換器12及び室外熱交換器13は、車両の室内及び室内において、コンプレッサ11から排出された冷媒と外気または内気との間で熱交換を行い、冷媒を液化させる。空調装置1は、冷房運転時には、室外熱交換器13によって冷媒を液化させ、暖房運転時には、室内熱交換器12によって冷媒を液化させる。
レシーバ14は、コンプレッサ11によって圧縮され、室内熱交換器12及び室外熱交換器13によって液化された冷媒を貯留する。レシーバ14は、冷媒を貯留する際、液化できなかったわずかな気相冷媒を液相冷媒と分離する。温度式膨張弁15は、レシーバ14から流出される液相冷媒を減圧してエバポレータ16に噴出する。エバポレータ16は、温度式膨張弁15を通過した冷媒と内気との温度差によって冷媒を気化し、気化された冷媒をコンプレッサ11に戻す。第1配管21と第2配管22と間には、切替弁が設けられており、この切替弁は、冷房時には、冷媒を室内熱交換器12に流入させず、暖房時には、冷媒を室内熱交換器12に流入させるように流路を切り替える。第5配管25と第6配管26と間には、切替弁が設けられており、この切替弁は、冷房時には、冷媒をエバポレータ16に流入させ、暖房時には、冷媒をエバポレータ16に流入させないように流路を切り替える。
ここで、温度式膨張弁15の構造について説明する。図2は、温度式膨張弁15の一例を示す断面図である。図2に示すように、温度式膨張弁15は、弁31と、仕切部32を備えている。仕切部32により、液体流路33と気体流路34が仕切られており、液体流路33に弁31が配置されている。
仕切部32には、感温部材である感温棒35が貫通しており、感温棒35における気体流路34に配置された部分が感温部35Aとなっている。感温部35Aにおける液体流路33から見た反対側には、ダイヤフラム36および封入部37が設けられており、封入部37には封入冷媒38が収容されている。弁31における感温棒35の反対側には、弁31を感温棒35側に付勢するバネ39が設けられている。
液体流路33の上流側には第4配管24が接続され、下流側には第5配管25が接続される。このため、レシーバ14から流出した液相冷媒は、液体流路33を流通してエバポレータ16に戻される。液体流路33には、弁31が設けられており、弁31の開度によって、エバポレータ16に供給される冷媒の量が調整される。
気体流路34の上流側には第6配管26が接続され、下流側には第7配管27が接続されている。このため、エバポレータ16から流出した気相冷媒は、気体流路34を流通してコンプレッサ11に流入する。気体流路34には、感温棒35における感温部35Aが配置されている。
感温部35Aは、ダイヤフラム36に接しており、感温部35Aの熱は、ダイヤフラム36を介して封入部37に収容された封入冷媒38に伝達される。封入冷媒38は、感温部35Aから熱を受けると膨張し、ダイヤフラム36を感温棒35側に押し込む。感温棒35は、ダイヤフラム36を介した封入冷媒の押込みにより、弁31に近づく方向に移動する。感温棒35が弁31に近づく方向に移動すると、弁31が開く。このように、温度式膨張弁15では、コンプレッサ11に戻される冷媒の温度に応じて、弁31の弁開度が調整される。温度式膨張弁15は、弁31が開くと、第4配管24を通じて流入する高圧恒温の液相冷媒を断熱膨張させる。
また、気体流路34内の気相冷媒の冷媒圧力が高まると、弁31から遠ざかる方向にダイヤフラム36が押し込められ、感温棒35に対して、弁31から遠ざかる方向に移動する力が働く。気体流路34内の気相冷媒の冷媒圧力が低くなると、弁31に近づく方向にダイヤフラム36が引っ張られ、感温棒35に対して、弁31に近づく方向に移動する力が働く。
感温部35Aが冷却されて封入冷媒38が膨張した状態から収縮すると、バネ39の付勢力によって感温棒35がダイヤフラム36側に付勢されて感温棒35がダイヤフラム36側に移動し、弁31が徐々に閉じられる。そして、封入冷媒38の温度が低い温度、例えば常温となったときに、バネ39の付勢力によって弁31が閉じる。弁31が全閉となると、エバポレータ16に対する液相冷媒の流通が遮断される。このように構成された温度式膨張弁15は、室外熱交換器13で熱交換された冷媒を減圧するとともに、感温部35Aにおける温度が高くなるほど弁開度を大きくする。
温度式膨張弁15は、エバポレータ16の出口の冷媒圧力と冷媒温度に応じて感温部35A及びダイヤフラム36が動作して弁31を開閉することにより、冷媒の断熱膨張を制御している。例えば、温度式膨張弁15は、エバポレータ16の出口の冷媒圧力が低く、冷媒温度が高いときに弁31を開き、エバポレータ16の出口の冷媒圧力が低く、冷媒温度が低いときに弁31を閉じる。以下に、温度式膨張弁15における弁31の開閉基準について説明する。図3は、温度式膨張弁15におけるp-h線図の一例を説明する図である。
図3に示すように、冷媒は、臨界点CPよりも比エンタルピーが低い状態で飽和液線L11を描き、臨界点CPよりも比エンタルピーが高い状態で飽和気線L12を描く。等エントロピー線L13や冷媒の過熱蒸気の等温線L14は、飽和気線L12よりも高エンタルピー側で描かれる。弁31の開弁線L1は、冷媒の飽和気線L12よりもやや高比エンタルピー(高温)側で、冷媒の飽和気線L12に沿って描かれる。開弁線L1よりも低温または高圧であるときに弁31が開となり、開弁線L1よりも高温または低圧であるときに弁31が閉となる。
第1配管21におけるコンプレッサ11の近傍位置には、温度センサ41が設けられている。第6配管26におけるエバポレータ16の出口部の近傍位置には、温度圧力センサ42が設けられている。第7配管27における温度式膨張弁15の近傍位置には、加熱体43が設けられている。
温度センサ41は、コンプレッサ11から排出される二相冷媒の温度を検出する。温度センサ41は、検出した温度に関する第1温度信号を制御装置60に送信する。温度圧力センサ42は、エバポレータ16から排出される気相冷媒の温度及び圧力を検出する。温度圧力センサ42は、検出した温度及び圧力に関する第2温度信号及び圧力信号を制御装置60に送信する。
加熱体43は、第7配管27内の気相冷媒を加熱する。加熱体43は、第7配管27内の気相冷媒を加熱することにより、エバポレータ16から排出された冷媒であり、第6配管26内及び温度式膨張弁15における気体流路34内の気相冷媒も合わせて加熱する。加熱体43は、例えば電気抵抗による発熱する抵抗発熱体を備える。加熱体43は、制御装置60によって発熱制御(加熱制御)される。なお、第1実施形態では、加熱体43は、第7配管27に設けられるが、第6配管26に設けられてもよいし、温度式膨張弁15の気体流路34に設けられてもよい。加熱体43は、例えば、温度式膨張弁15における感温部35Aであってもよいし、感温部35Aに設けられてもよい。
エアコンスイッチ50は、例えば車室内に設けられる。エアコンスイッチ50は、例えば、車両の乗員の操作によってオンとオフとに切り替えられる。エアコンスイッチ50は、オフからオンに切り替えられると、制御装置60にオン信号を送信し、オンからオフに切り替えられると、制御装置60にオフ信号が送信する。エアコンスイッチ50は、空調装置1を始動させる始動スイッチであり、空調装置1の運転を終了する終了スイッチも兼ねている。
制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが、各種記憶装置に記憶されたアプリケーションプログラム、或いはブラウザなどのプログラムを実行することにより実現される。制御装置60は、エアコンスイッチ50により送信されたオン信号に基づいて、コンプレッサ11を始動させて空調装置1の作動を開始し、エアコンスイッチ50により送信されたオフ信号に基づいて、コンプレッサ11を停止させて空調装置1の作動を終了する。
制御装置60は、温度センサ41、温度圧力センサ42により送信される第1温度信号、第2温度信号、及び圧力信号に対する第1温度閾値Tα、第2温度閾値Tβ、及び圧力閾値Pαを記憶している。第1温度閾値Tαは、例えば、空調装置1の作動中におけるコンプレッサ11から流出する二相冷媒の適正温度の上限値を示す値である。第1温度閾値Tαは、例えば、40℃~130℃の範囲の中のいずれかの値とされる。
第2温度閾値Tβは、例えば、空調装置1の始動時におけるエバポレータ16の出口側における対象冷媒の適正温度の上限値を示す値である。エバポレータ16の出口側における対象冷媒の冷媒温度が第2温度閾値Tβ以上となっているときには、温度式膨張弁15の弁31が十分に開いた状態となる。第2温度閾値Tβは、例えば、30℃~50℃の範囲の中のいずれかの値とされる。圧力閾値Pβは、例えば、空調装置1の始動時におけるエバポレータ16の出口側における対象冷媒の適正圧力の下限値を示す値である。エバポレータ16の出口側における対象冷媒の冷媒圧力が圧力閾値Pα以上となっているときには、温度式膨張弁15の弁31が十分に開いた状態となる。圧力閾値Pαは、例えば、0.2MPa~1.1MPa(絶対圧)の範囲の中のいずれかの値とされる。
制御装置60は、温度センサ41、温度圧力センサ42により送信される第1温度信号、第2温度信号、及び圧力信号と、これらに対する閾値と、に基づいて、加熱体43の加熱制御を行う。制御装置60は、時間を計測するタイマを備えている。
次に、制御装置60における制御について説明する。なお、エバポレータ16の出口の冷媒圧力及び冷媒温度は、いずれも第6配管26、温度式膨張弁15の気体流路34、第7配管27内の冷媒圧力及び冷媒温度と共通である。以下の説明では、エバポレータ16の出口の冷媒を対象冷媒ということがある。
まず、空調装置1の始動時における制御装置60の制御について説明する。図4は、制御装置60の処理の一例を示すフローチャートである。図4には、空調装置1の始動時における制御装置60の制御の一例を示す。図4に示すように、制御装置60は、まず、エアコンスイッチ50からオン信号が送信されたか否かに基づいて、エアコンスイッチ50がオンとされたか否かを判定する(ステップS111)。エアコンスイッチ50がオンとされていないと判定した場合、制御装置60は、ステップS111の処理を繰り返す。
次に、エアコンスイッチ50がオンとされたと判定した場合、制御装置60は、加熱体43の加熱を開始し(ステップS112)、第7配管27内の対象冷媒を加熱して昇温させる。また、制御装置60は、エアコンスイッチ50がオンされたと判定した場合に、コンプレッサ11の始動を開始させる前の待機状態にする。制御装置60は、コンプレッサ11を5秒間待機状態とし、エアコンスイッチ50がオンされたと判定してから5秒後にコンプレッサ11を始動させる。
次に、制御装置60は、タイマによって加熱体43の作動時間である加熱時間αの計測を開始する(ステップS113)。タイマは、加熱体43の加熱時間αとして、基準時間、例えば30秒を計測する。加熱体43の加熱時間αは、コンプレッサ11に始動前の待機時間である5秒よりも長い30秒である。このため、制御装置60が加熱時間αを計測している間に、停止していたコンプレッサ11が始動する。また、制御装置60は、コンプレッサ11が始動する前に加熱体43を加熱することとなる。なお、基準時間は、30秒以外の時間であってもよい。基準時間は、コンプレッサ11が始動するまでの時間以上の時間とする。
次に、制御装置60は、タイマによって計測される計測時間が加熱時間αを経過したか否かを判定する(ステップS114)。タイマ計測時間が加熱時間αを経過していないと判定した場合、制御装置60は、タイマ計測時間が加熱時間αを経過するまでステップS115の処理を繰り返す。タイマ計測時間が加熱時間αを経過したと判定した場合、制御装置60は、加熱体43の加熱を終了させる(ステップS115)。その後、制御装置60は、図4に示す処理を終了する。
制御装置60は、空調装置1の始動時において、コンプレッサ11が始動する前に、第7配管27内の対象冷媒を加熱する。コンプレッサ11が作動すると、第7配管27内の対象冷媒の温度圧力が徐々に低下する。対象冷媒の温度圧力の低下に伴い、温度式膨張弁15の弁31が徐々に閉じる。
ここで、空調装置の始動時における対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力の時間変化について説明する。図5は、空調装置1の始動時における対象冷媒の温度圧力の時間変化を示すグラフである。なお、対象冷媒の温度圧力とは、温度式膨張弁15における感温棒35の移動に寄与する対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力を総合した概念である。対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力を個々に見れば、冷媒温度が高いとき、または冷媒圧力が低いときに弁31を開く方向に感温棒35が移動し、冷媒温度が低いとき、または冷媒圧力が高いときに弁31を開く方向に感温棒35が移動する。この関係に対して、対象冷媒の温度圧力が高いときに弁31を開く方向に感温棒35が移動し、対象冷媒の温度圧力が低いときに弁31を閉じる方向に感温棒35が移動するものとして、以下の説明を行う。
従来の空調装置では、加熱体43による加熱が行われないことから、図5に破線で示すように、時刻T1でコンプレッサ11が始動し、時間の経過とともに対象冷媒の温度圧力が徐々に低くなり、弁31が閉じていく。そして、時刻T3となったときに、対象冷媒の温度圧力は、弁31が全閉となる高さとなる。以後、対象冷媒の温度圧力が上昇するため、弁31が全閉状態となる時間が継続する。
弁31が閉じているときにコンプレッサ11が始動すると、エバポレータ16から流出する気相冷媒がなくなりあるいは少なくなり、コンプレッサ11に流入する気相冷媒の量が少なくなる。流入する気相冷媒の量が少ない状態でコンプレッサ11を始動すると、気相冷媒に含まれる潤滑剤がコンプレッサ11に十分にいきわたらず、コンプレッサ11を故障させる原因となりえる。特に、弁31が全閉となっている時間が長いと、コンプレッサ11の故障の原因を助長する。
この点、制御装置60は、コンプレッサ11が始動する前に加熱体43を加熱させ、対象冷媒を加熱して弁31の開度を大きくしている。このため、例えば時刻T1で加熱体43の加熱を開始し、時刻T2でコンプレッサ11を始動させた場合に、コンプレッサ11の始動時には、対象冷媒の温度圧力には変動がないとしても、対象冷媒の冷媒温度は高くなっている。したがって、コンプレッサ11が作動しても、対象冷媒の温度圧力の低下は、従来の空調装置ほど大きくないので、弁31が全閉とはならず、または全閉となったとしても全閉である時間を短くできる。よって、対象冷媒に含まれる潤滑剤がコンプレッサ11にいきわたらせることができるので、コンプレッサ11の故障を抑制することができる。
次に、空調装置1の作動中における制御装置60の制御について説明する。図6は、制御装置60における処理の一例を示すフローチャートである。図6には、空調装置1の作動中における制御装置60の制御の一例を示す。制御装置60は、温度圧力センサ42により送信された第1温度信号及び記憶した第1温度閾値を読み出し、コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いか否かを判定する(ステップS121)。
コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低くない(第1温度閾値Tα以上である)と判定した場合、制御装置60は、ステップS126の処理に進む。コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いと判定した場合、制御装置60は、加熱体43を加熱させ(ステップS122)、第7配管27内の対象冷媒を加熱して昇温させる。
次に、制御装置60は、エアコンスイッチ50からオフ信号が送信されたか否かに基づいて、エアコンスイッチ50がオフとされたか否かを判定する(ステップS123)。エアコンスイッチ50がオフとされていないと判定した場合、制御装置60は、コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いか否かを判定する(ステップS124)。コンプレッサ11の出口における冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いと判定した場合、制御装置60は、ステップS123に戻り、エアコンスイッチ50がオフとされたか否かを判定する。
コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低くない(第1温度閾値Tα以上である)と判定した場合、制御装置60は、加熱体43の加熱を終了させる(ステップS125)。次に、制御装置60は、エアコンスイッチ50からオフ信号が送信されたか否かに基づいて、エアコンスイッチ50がオフとされたか否かを判定する(ステップS126)。エアコンスイッチ50がオフとされていないと判定した場合、制御装置60は、ステップS121に戻り、コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いか否かを判定する。エアコンスイッチ50がオフとされたと判定した場合、制御装置60は、運転終了処理を行う(ステップS127)。制御装置60は、コンプレッサ11の作動を停止させるとともに、加熱体43の加熱を行っている場合には、加熱を終了させる。こうして、制御装置60は、図6に示す処理を終了する。また、ステップS123において、エアコンスイッチ50がオフとされたと判定した場合、制御装置60は、ステップS127に進み、運転終了処理(ステップS127)を行った後、図6に示す処理を終了する。
コンプレッサ11の出口側における二相冷媒の冷媒温度が低いと、エバポレータ16に流入する冷媒の量が少なく、エバポレータ16における熱交換の効率が低いと考えられる。この場合に、加熱体43によって対象冷媒を加熱することにより、弁31の開度を大きくして、エバポレータ16に流入する冷媒の量を増やすことができる。したがって、エバポレータ16における熱交換の効率を高めることができる。
以上、説明した第1実施形態によれば、制御装置60は、コンプレッサ11が始動する前に加熱体43を加熱させ、対象冷媒を加熱して弁31の開度を大きくしている。このため、弁31が全閉とはならず、または全閉となったとしても全閉である時間を短くできる。したがって、対象冷媒に含まれる潤滑剤がコンプレッサ11にいきわたらせることができるので、空調装置1おける始動時の動作によるコンプレッサ11の故障を抑制することができる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。
第2実施形態の空調装置1では、第1実施形態と比較して、制御装置60における制御が異なる。以下、第2実施形態について、制御装置60の制御を中心として説明を行う。制御装置60は、始動時に、対象冷媒が所定の冷媒温度及び冷媒圧力となる条件を満たしているときに、加熱体43を加熱する制御を行う。以下、第2実施形態における制御装置60の制御について説明する。
図7は、制御装置60の処理の一例を示すフローチャートである。図7には、空調装置1の始動時における制御装置60の制御の一例を示す。図7に示すように、制御装置60は、まず、エアコンスイッチ50からオン信号が送信されたか否かに基づいて、エアコンスイッチ50がオンとされたか否かを判定する(ステップS131)。制御装置60は、エアコンスイッチ50がオンとされていないと判定した場合、ステップS131の処理を繰り返す。
次に、エアコンスイッチ50がオンとされたと判定した場合、コンプレッサ11の始動を開始させる前の待機状態とし、5秒後にコンプレッサ11を始動させる。また、制御装置60は、温度圧力センサ42により送信される第2温度信号及び圧力信号に基づいて、エバポレータ16の出口側の対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力を取得する。次に、制御装置60は、取得した対象冷媒の冷媒温度Te及び冷媒圧力Pについて、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力が圧力閾値Pαより低いか否かを判定する(ステップS132)。制御装置60は、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いと判定した場合、図7に示す処理を終了する。なお、「対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低いか、または冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上である場合」には、「対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低く、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上である場合」も含む。
制御装置60は、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低いか、または冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上であると判定した場合、加熱体43の加熱を開始する(ステップS133)。なお、「対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低いか、または冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上である場合」には、「対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低く、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上である場合」も含む。次に、制御装置60は、取得した対象冷媒の冷媒温度Te及び冷媒圧力Pについて、冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いか否かを判定する(ステップS134)。
制御装置60は、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低いか、または冷媒圧力Pが圧力閾値Pα以上であると判定した場合、ステップS134の処理を繰り返す。また、制御装置60は、取得した対象冷媒の冷媒温度Te及び冷媒圧力Pについて、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いと判定した場合、加熱体43の加熱を終了させる(ステップS135)。こうして、制御装置60は、図7に示す処理を終了する。
第2実施形態の空調装置1では、始動時に、エバポレータ16の出口における対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力を検出し、対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力が所定の始動条件を満たす場合に加熱体43を加熱させる。ここでの所定の始動条件(以下「所定始動条件」という)は、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いことである。例えば、対象冷媒の冷媒温度Teが十分に高い場合、あるいは対象冷媒の冷媒圧力Pが十分に低い場合には、温度式膨張弁15の弁31は開き、対象冷媒の冷媒温度Teが低く、かつ冷媒圧力Pが高い場合には、弁31の開度が小さく、さらには全閉となることがある。
所定始動条件が成立する範囲について、図8を参照して説明すると、対象冷媒の冷媒温度が第2温度閾値Tβよりも低いか、または対象冷媒の冷媒圧力が圧力閾値Pα以上である領域である第1領域Ra1とする。また、対象冷媒の冷媒温度が第2温度閾値Tβ以上であり、かつ対象冷媒の冷媒圧力が圧力閾値Pαより低い領域を第2領域Ra2とする。第1領域Ra1は、所定始動条件が成立する領域であり、第2領域Ra2は、所定始動条件が成立しない領域である。
空調装置1の始動時に対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力が第1領域Ra1にある場合には、加熱体43を加熱させ、対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力が第2領域Ra2にある場合には、加熱体43を加熱させない。また、加熱体43の加熱中に対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力が第2領域Ra2にある場合には、加熱体43の加熱を終了させる。
このような温度式膨張弁15の特性から、所定始動条件が成立しない領域に対象冷媒の冷媒温度及び冷媒圧力がある場合には、温度式膨張弁15の弁31の開度は、エバポレータ16に冷媒を十分に供給できる程度の開度となっている。このため、空調装置1を始動させたときに所定始動条件が成立しなくなっていることにより、コンプレッサ11が始動するときに、冷媒がコンプレッサ11に流入しにくくなることを抑制できる。
また、空調装置1を始動した後に、所定始動条件が成立した場合には、加熱体43を加熱させることにより、コンプレッサ11が始動する前に、所定始動条件が成立しなくなることがある。制御装置60は、空調装置1を始動した後、所定始動条件が成立しなくなったときには、加熱体43の加熱を終了させる。この場合には、コンプレッサ11が始動するときには、温度式膨張弁15の弁31の開度は、エバポレータ16に冷媒を十分に供給できる程度の開度となっている。したがって、コンプレッサ11が始動するときに、冷媒がコンプレッサ11に流入しにくくなることを抑制できる。また、コンプレッサ11が始動した後であっても、所定始動条件が成立しなくなったときには、加熱体43の加熱を終了させる。このため、所定始動条件が成立しているときには加熱体43の加熱を行うので、温度式膨張弁15の弁31の開度を早期に大きくすることができ、冷媒がコンプレッサ11に流入しにくくなることを抑制できる。
次に、空調装置1の作動中における制御装置60の制御について説明する。図9は、制御装置60における処理の一例を示すフローチャートである。図9には、空調装置1の作動中における制御装置60の制御の一例を示す。制御装置60は、温度センサ41により送信された第1温度信号及び記憶した第1温度閾値を読み出し、コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いか否かを判定する(ステップS141)。
コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低くない(第1温度閾値Tα以上である)と判定した場合、制御装置60は、温度圧力センサ42により送信される第2温度信号及び圧力信号に基づいて、エバポレータ16の出口側の対象冷媒の冷媒温度Te及び冷媒圧力Pを取得する。制御装置60は、取得した対象冷媒の冷媒温度Te及び冷媒圧力Pについて、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いか否かを判定する(ステップS142)。
制御装置60は、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβ以上であり、かつ冷媒圧力Pが圧力閾値Pαより低いと判定した場合、加熱体43が加熱中であるか否かを判定する(ステップS143)。加熱体43が加熱中であると判定した場合、制御装置60は、加熱体43の加熱を終了させる(ステップS144)。加熱体43が加熱中でないと判定した場合、制御装置60は、そのままステップS147の処理に進む。
また、ステップS141において、コンプレッサ11の出口における二相冷媒の冷媒温度Tcが第1温度閾値Tαより低いと判定した場合、制御装置60は、加熱体43が加熱中であるか否かを判定する(ステップS145)。同様に、ステップS142において、対象冷媒の冷媒温度Teが第2温度閾値Tβより低いか、または冷媒圧力が圧力閾値Pα以上であると判定した場合、制御装置60は、加熱体43が加熱中であるか否かを判定する(ステップS145)。その結果、加熱体43が加熱中でないと判定した場合、制御装置60は、加熱体43を加熱させ(ステップS146)、第7配管27内の対象冷媒を加熱して昇温させる。また、加熱体43が加熱中であると判定した場合、制御装置60は、そのままステップS147に進む。
次に、制御装置60は、エアコンスイッチ50からオフ信号が送信されたか否かに基づいて、エアコンスイッチ50がオフとされたか否かを判定する(ステップS147)。エアコンスイッチ50がオフとされたと判定した場合、制御装置60は、コンプレッサ11の作動を停止させるとともに、加熱中の加熱体43の加熱を終了させる運転終了処理を行う(ステップS148)。その後、制御装置60は、図9に示す処理を終了する。
コンプレッサ11の作動中においても、コンプレッサ11の出口側における二相冷媒の冷媒温度Tcが低いと、エバポレータ16に流入する冷媒の量が少なく、エバポレータ16における熱交換の効率が低いと考えられる。この場合に、加熱体43によって対象冷媒を加熱することにより、弁31の開度を大きくして、エバポレータ16に流入する冷媒の量を増やすことができる。したがって、エバポレータ16における熱交換の効率を高めることができる。
以上、説明した第2実施形態によれば、制御装置60は、コンプレッサ11が始動する前に加熱体43を加熱させ、対象冷媒を加熱して弁31の開度を大きくしている。このため、弁31が全閉とはならず、または全閉となったとしても全閉である時間を短くできる。したがって、対象冷媒に含まれる潤滑剤がコンプレッサ11にいきわたらせることができるので、空調装置1おける始動時の動作によるコンプレッサ11の故障を抑制することができる。また、空調装置1を作動させる際、対象冷媒が第1始動条件を満たす場合には、加熱体43加熱をさせず、第1始動条件を満たさない場合に加熱体43を加熱させて、対象冷媒を加熱して昇温させる。このため、空調装置1の始動時における適切な場合に、加熱体43による加熱を行うことができる。したがって、加熱体43の意味が小さい加熱を抑制できる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した各実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態において、加熱時間αが経過したときに加熱体43の加熱を終了させる態様に代えて、所定始動条件が成立しなくなったときに加熱体43の加熱を終了させてもよい。あるいは、第2実施形態において、空調装置1の始動時に所定始動条件が成立して加熱体43の加熱が開始された後、加熱時間αが経過したときに加熱体43の加熱を終了させてもよい。
また、上記の実施形態では、空調装置1は、車両に設けられた車両用空調装置であるが、空調装置1は、車両用空調装置ではなく、他の用途に用いられる空調装置、例えば居室内の空調を行う室内用空調装置であってもよい。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。