JP7014552B2 - 粘度指数向上剤および潤滑油組成物 - Google Patents

粘度指数向上剤および潤滑油組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7014552B2
JP7014552B2 JP2017180407A JP2017180407A JP7014552B2 JP 7014552 B2 JP7014552 B2 JP 7014552B2 JP 2017180407 A JP2017180407 A JP 2017180407A JP 2017180407 A JP2017180407 A JP 2017180407A JP 7014552 B2 JP7014552 B2 JP 7014552B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
parts
polymer
unit
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017180407A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019023270A (ja
Inventor
洋平 今泉
啓子 泉
和成 安村
大祐 松井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Publication of JP2019023270A publication Critical patent/JP2019023270A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7014552B2 publication Critical patent/JP7014552B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、粘度指数向上剤とこれを含有する潤滑油組成物に関する。
近年、内燃機関用潤滑油は省燃費特性の向上が強く求められており、1つの手段として潤滑油の低粘度化による摩擦損失の低減が挙げられている。しかし、単なる低粘度化では液漏れや焼きつきという問題が生じるため、高温での粘度を高く保持しながら低温での粘度を低く保つ効果を有する粘度指数向上剤の添加が有効となる。
粘度指数向上剤には重合体を含有するものが知られており、さまざまな種類がある。なかでも、アルキル(メタ)アクリレート重合体からなる粘度指数向上剤は、高い粘度指数向上効果を示す。一方で、アルキル(メタ)アクリレート重合体からなる粘度指数向上剤は、せん断安定性が悪いため、長期使用時に省燃費特性が低下する(ロングライフ性が悪い)という問題があった。
せん断安定性を改善する手段としては、例えば、粘度指数向上剤に含まれる重合体の分子量を小さくすることが挙げられる。一般に、重合体の分子量が低いほどせん断の影響を受けにくく分子量低下幅が小さくなるため、低分子量の重合体を粘度指数向上剤として用いることで、せん断後の粘度低下を抑制することが可能である(特許文献1および非特許文献1)。また、コア部にジビニルベンゼンを用いた星形構造を有する重合体により、せん断安定性の向上を試みた報告や(特許文献2)、くし形ポリマーを潤滑油組成物の一成分として用いた報告もなされている(特許文献3、4)。
特開2013-104032号公報 特開2012-197399号公報 特表2010-532805号公報 特表2012-520358号公報
中田、「高性能エンジン油用粘度指数向上剤」、三洋化成ニュース、三洋化成工業株式会社、2013年、No.476
しかしながら、一般に重合体の分子量が低いほど粘度指数向上効果は低い傾向があるため、低分子量の重合体を粘度指数向上剤として用いた場合は、粘度指数が低くなるという課題が発生する。さらに、所望の粘度に調整するためには、粘度指数向上剤の使用量を増やす必要があり、コスト面で不利となりやすい。また、潤滑油組成物には潤滑油基油と各種添加剤や粘度指数向上剤等が含まれるが、このうち粘度指数向上剤は一般に基油に溶解させた基油組成物として取り扱われる。基油組成物中の粘度指数向上剤濃度が高い場合、潤滑油組成物とする際の配合の自由度が高まるだけでなく、粘度指数向上剤中の単位質量あたりの潤滑油基油の使用量が少なくなるために、製造や輸送等のコスト面で有利となる反面、基油組成物の粘度が上がり室温付近での取り扱いが困難になったり、他成分と混合溶解する際に加温や特殊設備が必要となり生産性が低下したりする場合があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い粘度指数と良好なせん断安定性を有し、基油溶液とした場合に室温付近で流動性が高く取り扱いが容易な粘度指数向上剤、およびこの粘度指数向上剤を用いた潤滑油組成物を提供することである。
前記課題を解決することができた本発明の粘度指数向上剤とは、マクロモノマー由来の単位(A)と、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2~6である単位(B)とを有する重合体を含有する粘度指数向上剤であって、重合体100質量部中、単位(A)の含有量が6質量部以上20質量部未満、単位(B)の含有量が40質量部以上74質量部未満、単位(A)と単位(B)の合計含有量が46質量部以上80質量部未満であり、下記の方法で測定した粘度が25Pa・s以下であるところに特徴を有する。
(粘度測定)
米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVE-35H、3°×R9.7ローター)にて25℃で測定。
本発明の粘度指数向上剤は、前記重合体がさらに、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が11~40である単位(C)を有することが好ましく、単位(C)の含有量は、重合体100質量部中、3質量部以上40質量部以下であることが好ましい。重合体はさらに、マレイミド系単量体由来の単位(D)を有していてもよく、単位(D)の含有量は、重合体100質量部中、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。なお、重合体100質量部中、スチレン系単量体由来の単位の含有量は3質量部未満であることが好ましい。重合体の単位(A)は、分岐鎖状アルキレン基の繰り返し構造を有することが好ましい。
本発明はまた、潤滑油基油と、上記の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。
本発明の粘度指数向上剤を用いれば、基油溶液としたときに高い粘度指数と良好なせん断安定性を示すものとすることができる。また、本発明の粘度指数向上剤の基油溶液は、室温付近で流動性が高く取り扱いが容易になるため、潤滑油組成物を調製する際の作業性や生産性が向上する。
製造例1で作製したマクロモノマー1の1H-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを表す。 製造例2で作製したマクロモノマー2の1H-核磁気共鳴(NMR)スペクトルを表す。
〔1.粘度指数向上剤〕
本発明の粘度指数向上剤は、マクロモノマー由来の単位(A)と、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2~6である単位(B)とを有する重合体を含有するものである。本発明の粘度指数向上剤は、所定の割合で単位(A)と単位(B)を有する重合体を含有することにより、基油への溶解性に優れたものとなり、また基油溶液としたときに高い粘度指数を示すとともに、せん断安定性も向上させることができる。そのため、本発明の粘度指数向上剤を用いれば、重合体の分子量との関係で相反する関係にある粘度指数とせん断安定性の両方を向上させることができる。また、本発明の粘度指数向上剤は、基油溶液としたときに、流動性が高く、ハンドリング性に優れるものとなる。
マクロモノマー由来の単位(A)は、マクロモノマーを重合させることにより重合体に導入することができる構造単位である。マクロモノマーとしては、重合性官能基を有する高分子であれば特に限定なく用いることができるが、重合体の基油溶解性を高める点から、炭化水素単量体由来の繰り返し構造を有するものが好ましい。当該炭化水素単量体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-テトラデセン、1-オクタデセン等のモノオレフィン類;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン(別名ジイソブテン)等のアルカジエン類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。なお前記アルカジエン類は、エチレン性炭素-炭素二重結合を1つ余した状態で重合反応を終えるのが好ましく、この未反応のエチレン性炭素-炭素二重結合部分は重合後に水素化されているのが好ましい。炭化水素単量体としては、モノオレフィン類、アルカジエン類などが好ましく、これらモノオレフィン類およびアルカジエン類の炭素数は、2~20程度であるのが好ましく、2~10程度であるのがより好ましく、3~6程度であるのがさらに好ましい。
マクロモノマー由来の単位(A)としては、マクロモノマーの製造容易性や入手容易性、さらにマクロモノマーを単位(B)を形成する単量体等と共重合して、本発明に係る重合体を得ることが容易な点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。下記式(1)において、R1は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、X1は単結合、アルキレン基、-O-、-CO-、-NH-またはこれらを組み合わせた連結基を表し、R2はマクロモノマーの高分子構造部を表す。
Figure 0007014552000001
式(1)のR1の炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。R1のアルキル基の炭素数は1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。なかでも、R1は水素原子またはメチル基であることが好ましい。
式(1)のX1が単結合である場合、R2の高分子構造部は式(1)のエステル基に直接結合し、式(1)のX1がアルキレン基等の連結基である場合、R2の高分子構造部は連結基を介して式(1)のエステル基に結合する。X1の連結基にアルキレン基が含まれる場合、当該アルキレン基は直鎖状または分岐鎖状であることが好ましく、その炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3がさらに好ましい。X1の連結基には、アルキレン基を含むもの以外として、エステル結合(-CO-O-)、アミド結合(-CO-NH-)、ウレタン結合(-NH-CO-O-)等も含まれ、X1としては、粘度指数向上剤の基油溶液の室温付近での粘度が低下し、ハンドリング性が向上する点から、これらの結合から選ばれる1種または2種以上が含まれるものが好ましい。
式(1)のR2の高分子構造部は、炭化水素単量体由来の繰り返し構造を含むことが好ましく、当該炭化水素単量体としては前記で例示のものが挙げられる。高分子構造部は、モノオレフィン類および/またはアルカジエン類の重合体であるのが好ましく、重合後に不飽和結合が残っている場合は当該不飽和結合が水素付加されたものがより好ましい。このような好ましい高分子構造部は、全体として炭素と水素とから形成されることから本明細書ではマクロ炭化水素基と称する。同様に、不飽和結合を含まない場合には、マクロアルキル基と称する。
マクロ炭化水素基またはマクロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、粘度指数向上剤として使用した際の低温時の結晶化を抑制し増粘を防ぐ点から、分岐鎖状であることが好ましい。分岐鎖状のマクロ炭化水素基またはマクロアルキル基は、分岐鎖状のアルキレン基を繰り返し単位として含むのが好ましく、分岐鎖状のアルキレン基と直鎖状のアルキレン基の両方を繰り返し単位として含むのが好ましい。分岐鎖状アルキレン基としては、1,2-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、2,3-ブチレン基、1,2-ヘキシレン基等が挙げられる。直鎖状アルキレン基としては、エチレン、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基等が挙げられる。
重合体には、マクロモノマー由来の単位(A)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
マクロモノマー由来の単位(A)の分子量は、基油溶解性、粘度指数、せん断安定性の観点から、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、2000以上がさらにより好ましく、また50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましい。上記式(1)で表される単位においては、R2のマクロ炭化水素基またはマクロアルキル基の炭素数が35以上であることが好ましく、50以上がより好ましく、70以上がさらに好ましく、100以上がさらにより好ましく、また3500以下が好ましく、1500以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。
重合体中の単位(A)の含有量は、重合体100質量部中、6質量部以上20質量部未満である。重合体には後述する単位(B)が含まれているが、重合体は単位(B)が含まれることにより基油への溶解性が低下しやすくなるところ、重合体に単位(A)がこのような含有量で含まれていれば、粘度指数向上剤の基油溶解性を高めることができる。また、重合体に単位(B)が含まれることと相まって、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数が向上し、粘度指数向上剤のせん断安定性を高めることができる。重合体中の単位(A)の含有量は、重合体100質量部中、7質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、また18質量部以下が好ましく、16質量部以下がより好ましい。
単位(B)は、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2~6である単位である。単位(B)は、アルキル基の炭素数が2~6であるアルキル(メタ)アクリレートを上記に説明したマクロモノマー等と共重合させることにより、重合体に導入することができる。
単位(B)としては、下記式(2)で表される単位であることが好ましい。式(2)中、R3は水素原子またはメチル基を表し、R4は炭素数2~6のアルキル基を表す。
Figure 0007014552000002
式(2)のR4の炭素数2~6のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基が挙げられる。R4のアルキル基は、好ましくは直鎖状または環状であり、より好ましくは直鎖状である。R4のアルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐鎖状であれば3~5が好ましく、環状であれば5~6が好ましい。なかでも、単位(B)を与えるアルキル(メタ)アクリレートの入手容易性や、粘度指数向上剤の室温付近での流動性に優れる点から、R4のアルキル基はブチル基またはシクロヘキシル基であることが好ましく、n-ブチル基またはイソブチル基がより好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が2~6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の単位(B)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の単位(B)の含有量は、重合体100質量部中、通常40質量部以上であり、45質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましい。このような含有量で単位(B)が含まれていれば、例えば単位(B)の代わりにメチル(メタ)アクリレート由来の単位を重合体に導入する場合と比べて、粘度指数向上剤の基油溶液の室温付近での粘度が低下して、ハンドリング性を向上させることができる。また、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数が向上し、粘度指数向上剤のせん断安定性も向上する。一方、重合体中の単位(B)の含有量は、重合体100質量部中、通常74質量部未満であり、72質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、68質量部以下がさらに好ましい。このような含有量で単位(B)が含まれていれば、粘度指数向上剤の基油への溶解性を高めることができる。
なお、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数を高めるとともに、粘度指数向上剤のせん断安定性を高める点から、単位(A)と単位(B)の合計含有量は、重合体100質量部中、通常46質量部以上であり、50質量部以上が好ましく、53質量部以上がより好ましく、56質量部以上がさらに好ましく、60質量部以上がさらにより好ましい。また、粘度指数向上剤の基油溶解性を高める点から、単位(A)と単位(B)の合計含有量は、重合体100質量部中、通常80質量部未満であり、79質量部以下が好ましい。
粘度指数向上剤に含まれる重合体はさらに、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が11~40である単位(C)を有することが好ましい。重合体に単位(C)が含まれることにより、粘度指数向上剤の基油への溶解性を高めやすくなる。単位(C)は、アルキル基の炭素数が11~40であるアルキル(メタ)アクリレートを上記に説明したマクロモノマーや単位(B)を与えるアルキル(メタ)アクリレート等と共重合させることにより、重合体に導入することができる。
単位(C)としては、下記式(3)で表される単位であることが好ましい。式(3)中、R5は水素原子またはメチル基を表し、R6は炭素数11~40のアルキル基を表す。
Figure 0007014552000003
式(3)のR6の炭素数11~40のアルキル基としては、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、テトラコシル基、2-デシルテトラデシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。R6のアルキル基は、好ましくは直鎖状または分岐鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。また、その炭素数は12以上が好ましく、14以上がより好ましく、また35以下が好ましく、30以下がより好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が11~40であるアルキル(メタ)アクリレート由来の単位(C)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の単位(C)の含有量は、重合体100質量部中、0質量部以上であればよい。重合体に単位(C)が含まれる場合、その含有量は、重合体100質量部中、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、また40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。このような含有量で重合体中に単位(C)が含まれていれば、粘度指数向上剤の基油への溶解性を高めやすくなる。
重合体が単位(A)と単位(B)に加えて単位(C)を有する場合、重合体中の単位(A)と単位(B)と単位(C)の合計含有量は、重合体100質量部中、49質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上がさらにより好ましい。重合体中の単位(A)と単位(B)と単位(C)の合計含有量の上限は特に限定されず、重合体は実質的に単位(A)と単位(B)と単位(C)のみから構成されていてもよく、重合体中の単位(A)と単位(B)と単位(C)の合計含有量が、重合体100質量部中、98質量部以下であってもよく、95質量部以下であってもよい。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、マレイミド系単量体由来の単位(D)を有していてもよい。この場合、マレイミド系単量体に由来して、重合体の主鎖にスクシンイミド環構造が導入される。このように重合体の主鎖に環構造が導入されることにより、粘度指数向上剤の基油への溶解性を確保しつつ、粘度指数向上剤のせん断安定性や耐熱性を高めることができる。さらには潤滑油組成物としたときに、スラッジ等の清浄分散性の向上や金属表面の摩耗抑制等の効果が期待される。単位(D)は、N位に置換基を有していてもよいマレイミドを、上記に説明したマクロモノマーや単位(B)を与えるアルキル(メタ)アクリレート等と共重合させることにより、重合体に導入することができる。
単位(D)としては、下記式(4)で表される単位であることが好ましい。式(4)中、R7およびR8はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R9は水素原子または炭素数が1~40の有機基を表す。
Figure 0007014552000004
式(4)のR7およびR8のアルキル基は、炭素数1~8が好ましく、炭素数1~4がより好ましく、炭素数1~3がさらに好ましい。R7およびR8としては、水素原子、メチル基またはエチル基がより好ましく、水素原子またはメチル基がさらに好ましい。
式(4)のR9の有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキル基に含まれる-CH2-の一部が-O-に置き換えられた基等が挙げられ、これらの基には、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、アルキル基(アリール基、アラルキル基の場合)、アルコキシ基、カルボキシ基等の置換基が結合していてもよい。R9の有機基は、粘度指数向上剤の基油への溶解性を高める点から、炭素数1~24が好ましく、1~18がより好ましく、1~12がさらに好ましい。
9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。R9のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。R9のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。R9のアルキル基に含まれる-CH2-の一部が-O-に置き換えられた基としては、ポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。なお、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上させることが容易な点からは、R9はアリール基であることが好ましく、粘度指数を向上させることが容易な点からは、R9はシクロアルキル基であることが好ましい。
マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-2-エチルヘキシルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-テトラデシルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-2-デシルテトラデシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシルエチルマレイミド、N-ヒドロキシルフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、マレイミド系単量体の入手容易性や、粘度指数向上剤の基油溶解性を高めることが容易な点から、マレイミド系単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミドが好ましい。なかでも、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上させる点から、マレイミド系単量体としてはN-フェニルマレイミドが好ましく、粘度指数を向上させる点からN-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
重合体には、マレイミド系単量体由来の単位(D)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の単位(D)の含有量は、重合体100質量部中、0質量部以上であればよい。重合体に単位(D)が含まれる場合、その含有量は、重合体100質量部中、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。これにより、重合体に単位(D)を含ませることの効果が奏効されやすくなる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、上記に説明した単位(A)~(D)以外の単量体由来の単位(以下、「単位(E)」と称する)を有していてもよい。単位(A)~(D)は、それぞれ対応するマクロモノマー、アルキル(メタ)アクリレート、マレイミド系単量体をラジカル共重合することにより、重合体の構成単位として導入することができることから、単位(E)もラジカル重合性単量体由来の単位であることが好ましい。単位(E)を形成するラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性基を分子内に1個有する単官能単量体と、ラジカル重合性基を分子内に2個以上有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体の例としては、単位(B)や単位(C)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル、不飽和カルボン酸類、ビニル芳香族化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン類、シアン化ビニル、N-ビニル化合物等が挙げられる。これらの単官能単量体に由来して形成される単位(E)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
単位(B)や単位(C)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和モノまたはジカルボン酸エステルとしては、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、ジイソブテン等が挙げられる。
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルフォリン、N-ビニルアセトアミド等が挙げられる。
これらの単官能単量体のうち、単位(E)としては、単位(B)や単位(C)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートやN-ビニル化合物が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、N-ビニルピロリドンが特に好ましい。
単位(E)を形成する多官能単量体の例としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。これらの多官能単量体に由来して形成される単位(E)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート等が挙げられる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-デシルテトラデシル等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
重合体中の単位(E)の含有量は、重合体100質量部中、0質量部以上であればよい。重合体に単位(E)が含まれる場合、その含有量は、重合体100質量部中、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がさらにより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
なお、重合体にはスチレン系単量体由来の単位が多く含まれないことが好ましい。スチレン系単量体由来の単位の含有量が多くなると、粘度指数向上剤の基油への溶解性が低下しやすくなるとともに、粘度指数が低下しやすくなるからである。従って、重合体100質量部中、スチレン系単量体由来の単位の含有量は3質量部未満であることが好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。スチレン系単量体には、スチレンのみならず、スチレンのベンゼン環やビニル基に置換基が結合したものも含まれ、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレンが含まれる。
また、ビニルエーテル、オレフィン類などは(メタ)アクリレートとのラジカル共重合性が落ちるため、重合体の製造容易性の点から、重合体にはこれらに由来する単位が多く含まれないことが好ましい。例えば、これらの単量体由来の単位(E)の合計含有量は、重合体100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
重合体中の多官能単量体由来の単位(E)の含有量は、重合体100質量部中、0質量部以上5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。多官能単量体由来の単位の含有量が上記範囲を超えると、重合時にゲル化が進行したり、当該重合体を含有する粘度指数向上剤の基油への溶解度が低下したりする場合がある。
ただし、2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-デシルテトラデシルのように、環化しながら重合が進行する多官能単量体の場合は、重合体中の当該多官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。この場合、主鎖に導入される環構造の効果により、粘度指数向上剤の耐熱性が向上するとともに、せん断安定性を改善することができる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、多官能連鎖移動剤や多官能重合開始剤由来の分岐単位を有していてもよい。重合体がこのような分岐単位を有していれば、粘度指数向上剤の基油への溶解性を大きく損ねることなく、粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
多官能連鎖移動剤としては3官能以上の多価メルカプタンを用いることが好ましく、そのような連鎖移動剤を用いて単量体成分をラジカル共重合させると、下記式(5)で表される分岐単位(連鎖移動剤残基)が重合体に導入される。下記式(5)において、L1はm価の有機残基を表し、mは0以上の数を表す。mは、好ましくは0~5である。
Figure 0007014552000005
3官能以上の多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)など、水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物、トリアジン多価チオール類、多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて1分子当たり3個以上のメルカプト基を導入してなる化合物、多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなる1分子当たり3個以上のメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。重合体中には、3官能以上の多官能連鎖移動剤由来の分岐単位が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
多官能重合開始剤としては3官能以上の過酸化物を用いることが好ましく、そのような多官能重合開始剤をラジカル重合開始剤として用いると、下記式(6)で表される分岐単位(開始剤残基)が重合体に導入される。下記式(6)において、L2はn価の有機残基を表し、nは0以上の数を表す。nは、好ましくは0~5である。
Figure 0007014552000006
3官能以上の多官能開始剤としては、例えば、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス(t-ブチルパーオキシ)トリアジン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの3官能以上の有機過酸化物等が挙げられる。重合体中には、3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の多官能連鎖移動剤および/または多官能開始剤由来の分岐単位の含有量(合計含有量)は、重合体100質量部中、0質量部以上であればよく、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。分岐単位の含有量をこのような範囲とすることで、重合体の分子量分布が狭くなり、せん断安定性を向上できる。重合体中には、多官能連鎖移動剤および/または多官能開始剤由来の分岐単位が含まれなくてもよい。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVE-35H、3°×R9.7ローター)にて25℃で測定したときの粘度が25Pa・s以下となるものである。重合体の基油溶液がこのような粘度を有していれば、粘度指数向上剤の室温付近での流動性が高まり、ハンドリング性が向上する。前記粘度は、好ましくは20Pa・s以下であり、より好ましくは15Pa・s以下である。前記粘度の下限は特に限定されず、例えば0.1Pa・s以上であればよい。なお、粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/sを有するグループIII基油は、SK社製のYUBASE4を用いる。また、粘度測定は、ローターの回転数を50rpmに設定して行う。
なお、粘度指数向上剤中には、性能を大きく損なうことがない限り、重合体とともに当該重合体の製造原料が一部含まれていてもよく、例えば重合反応で得られた重合体を特に精製することなく、あるいは高度に精製することなく、粘度指数向上剤を製造する場合は、粘度指数向上剤中に重合体原料(例えば、単量体成分、重合開始剤、連鎖移動剤等)が含まれうる。そのような場合は、上記の粘度測定で用いる重合体の基油溶液の重合体濃度は、重合体に加えて重合体原料も含めた濃度を、重合体濃度と見なすことができる。すなわち、重合体と当該重合体原料の合計20質量%とグループIII基油80質量%からなる溶液を、粘度測定に用いてもよい。例えば重合体原料を含めた重合体濃度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、サンプル中の基油の含有量を測定することで求めることもできる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万以上であることが好ましく、20万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましく、35万以上がさらにより好ましく、また70万以下が好ましく、65万以下がより好ましく、60万以下がさらに好ましい。重合体の重量平均分子量が小さい場合は、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数が低下しやすくなるため、所望の粘度に調整するために粘度指数向上剤の使用量が増え、コスト面で不利となる。重合体の重量平均分子量が過度に大きい場合は、粘度指数向上剤の基油への溶解性が低下したり、粘度指数向上剤のせん断安定性が低下しやすくなる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体の数平均分子量(Mn)は9万以上が好ましく、11万以上がより好ましく、また30万以下が好ましく、25万以下がより好ましい。
重合体のMwとMnから算出される分子量分布(Mw/Mn)は4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。分子量分布が4.0を超えると粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり、潤滑油組成物のせん断安定性が低下しやすくなる。一方、分子量分布の下限は1.0が好ましいが、重合体の合成が容易な点から、分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。なお、重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により求める。
分子量の制御方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、重合開始剤・重合触媒の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整などにより制御できる。分子量分布を制御する方法としてはLiving Radical Polymerizationも使用できる。具体的な方法としては、RAFT法やNMP法、ATRP法などが有名である。詳細については、Aldrich Material Matters,Vol.5,No.1,2010に概説されている。使用例としては、例えばRAFT法の場合、特開2012-197399号公報において、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、重合触媒として、ジチオ安息香酸クミルが用いられている。
粘度指数向上剤に含まれる重合体のガラス転移温度(Tg)は、-50℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、-30℃以上がさらに好ましく、また0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましい。重合体のTgがこのような範囲であれば、粘度指数向上剤の基油溶液としたときに、基油への溶解性が確保され、高い粘度指数を維持したまま、室温付近での流動性を高めやすくなる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体のSP値(溶解度パラメータ)は、8.8以上が好ましく、8.9以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましく、また9.6以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.4以下がさらに好ましい。基油のSP値は一般に8.0~8.5程度の値を示すが、重合体のSP値が8.8以上であれば潤滑油組成物の粘度指数を高めやすくなり、重合体のSP値が9.6以下であれば粘度指数向上剤の基油への溶解性を確保しやすくなる。
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果とせん断安定性を高いレベルで両立できる。せん断安定性の具体的数値としては、下記に示す方法で求めるSSIや分解開始温度が指標となる。
粘度指数向上剤のSSIは、100℃における動粘度が7.0mm2/秒となるように基油に粘度指数向上剤(重合体)を希釈し、超音波ホモジナイザーによるせん断処理前後の動粘度と基油の100℃における動粘度を測定し、次式により求める:SSI={1-(せん断処理後の動粘度-基油の動粘度)/(せん断処理前の動粘度-基油の動粘度)}×100。粘度指数向上剤のSSIは38以下となることが好ましく、36以下がより好ましく、34以下がさらに好ましく、これにより粘度指数向上剤のせん断安定性や貯蔵安定性が向上する。粘度指数向上剤のSSIの下限値は特に限定されないが、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、さらにより好ましくは5以上である。SSIが0.1未満の場合には、粘度指数向上剤の粘度指数向上効果が低下しやすくなる。
粘度指数向上剤は、基油に粘度指数向上剤(重合体)を希釈した際の100℃における動粘度が7.0mm2/秒となる基油中の粘度指数向上剤(重合体)の濃度が高いほど、粘度指数とせん断安定性が高くなる傾向があり、その濃度は、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは3.5質量%以上である。一方、前記濃度の上限は特に限定されないが、例えば10.0質量%以下であればよい。
粘度指数向上剤に含まれる重合体の分解開始温度は、290℃以上であることが好ましく、295℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましく、310℃以上が特に好ましく、また500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、380℃以下が特に好ましい。粘度指数向上剤の分解開始温度が高くなることにより、耐熱性が向上し、熱分解安定性、せん断安定性が良好なものとなる。一方、過度に耐熱性を向上させた場合は、粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり、粘度指数が低下したりする傾向がある。
粘度指数向上剤は、100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油に粘度指数向上剤(重合体)を希釈したときの粘度指数が、200以上であることが好ましく、230以上がより好ましく、255以上がさらに好ましく、また350以下であることが好ましく、300以下がより好ましい。粘度指数向上剤の粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れるものとなる。粘度指数は、JIS K 2283の方法に準拠して測定する。
本発明の粘度指数向上剤は、上述した重合体を主成分として含み、好ましくは粘度指数向上剤100質量%中、重合体を70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含有する。粘度指数向上剤は、上述した重合体のみから構成されていてもよい。本発明の粘度指数向上剤に含まれる上述した重合体以外の成分としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ジエン水素化共重合体、これらのグラフトポリマーやくし形ポリマー、星形ポリマー等が挙げられる。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、単位(A)を形成するマクロモノマーと単位(B)を形成するアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体成分をラジカル重合する工程(重合工程)を有する製造方法により得ることができる。単位(A)を形成するマクロモノマーは、市販のものを用いてもよいし、重合工程に先立ってマクロモノマー合成工程を設けることにより、マクロモノマーを合成してもよい。
重合工程における単量体成分の重合方法は、たとえば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれでもよいが、得られる重合体の粘度指数向上剤としての取り扱い性を考慮すると、溶液重合により重合を行うことが好ましい。なお、分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は、特に制限がなく公知のものが使用できる。
重合工程では、単量体成分として、単位(A)を形成するマクロモノマーと単位(B)を形成するアルキル(メタ)アクリレートを必須的に用い、さらに単位(C)を形成するアルキル(メタ)アクリレート、単位(D)を形成するマレイミド系単量体、単位(E)を形成する単量体を単量体成分として用いてもよい。
重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤や重合触媒の種類や量等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。なお、重合体の溶解度を確保する観点、および重合後に基油への溶媒置換が容易である観点から、重合に使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランが好ましい。また、後述する潤滑油基油も溶媒として好適に用いることができる。この場合、重合後の溶媒置換が不要となり、プロセスが簡略化されるため、より好ましい。これら溶媒は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は特に制限はないが、単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が、全体の40質量%以上100質量%以下となる程度が好ましい。
重合の際には重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては公知の重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等の過酸化物等を用いることができる。また、上記に説明した多官能開始剤を用いることもできる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01~3質量部とすることが好ましい。
重合工程では、連鎖移動剤等を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、分子量分布の小さい重合体を得やすくなる。また、解重合による熱分解も抑制しやすくなる。連鎖移動剤としては、ブタンチオール、オクタンチオール、オクタデカンチオール、ドデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、ドデシルメルカプタン、エチレングリコールビスチオグリコレート等のメルカプタン;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化合物;α-メチルスチレンダイマー等が挙げられる。また、上記に説明した多官能連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01~3質量部とすることが好ましい。
重合反応の温度は、重合溶媒の種類や重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また200℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。重合反応の時間は、重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1~48時間(好ましくは3~24時間)行えばよい。
マクロモノマー合成工程を行う場合は、上記に説明したマクロ炭化水素基を有するとともに、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、イソシアネート基、およびスルホ基から選ばれる官能基を有する化合物(以下、「マクロ化合物」と称する)と、前記官能基との反応性基と重合性二重結合を有する化合物(以下、「カウンター化合物」と称する)とを反応させて、マクロモノマーを合成することが好ましい。マクロ化合物とカウンター化合物とを反応(付加反応または縮合反応)させ、得られたマクロモノマーを他の単量体成分とともに重合工程で重合させることにより、重合体中にマクロ化合物に由来したマクロ炭化水素基が取り込まれる。
マクロ化合物の有する官能基としては、製造容易性や入手容易性の点から、水酸基、カルボキシ基、およびカルボン酸エステル基が好ましい。マクロ化合物はこのような官能基を1つのみ有していることが好ましく、より好ましくはマクロ化合物の末端部にそのような官能基を有する。
カウンター化合物の有する反応性基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、イソシアネート基、スルホ基、オキサゾリン基等が挙げられる。カウンター化合物はこのような反応性基を1つのみ有することが好ましい。カウンター化合物としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2,2-ジメチル-2-イソシアナトエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;4-アミノスチレン、4-ビニルベンゼンスルホン酸等のスチレン類;2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
マクロ化合物とカウンター化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とが反応するウレタン化反応、イソシアネート基とアミノ基が反応するウレア化反応、カルボキシ基と水酸基とが反応するエステル化反応、カルボキシ基とアミノ基とが反応するアミド化反応、スルホ基と水酸基とが反応するスルホン酸エステル化反応、スルホ基とアミノ基が反応するスルホンアミド化反応、水酸基とカルボキシ基のエステル化物とが反応するエステル交換反応、オキサゾリン基とカルボキシ基が反応するアミドエステル化反応等が挙げられる。これらの中でも、ウレタン化反応、ウレア化反応、エステル化反応、エステル交換反応、またはアミド化反応が好ましく、反応性に優れる点から、ウレタン化反応が特に好ましい。
マクロモノマー合成工程では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を、金属触媒の存在下で行うことが好ましい。これによりマクロ化合物とカウンター化合物とからマクロモノマーを効率的に製造することが可能となり、反応時間の短縮化を図ることができる。さらに後段の重合工程において、反応液中に金属触媒由来の金属が残存していても、マクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を好適に行うことができる。
金属触媒は、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を促進するものであれば特に限定されないが、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、およびビスマスよりなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含む金属触媒を用いることが好ましく、チタン触媒および/またはスズ触媒を用いることがさらに好ましい。チタン触媒および/またはスズ触媒を用いれば、マクロモノマー合成工程において、マクロ化合物とカウンター化合物との反応が速やかに進行するとともに、これらの触媒に由来する金属が後段の重合工程の反応液中に残存していても、マクロモノマーの重合率を高めることができ、より高分子量の重合体を得ることが容易になる。
金属触媒は、第16族元素を含む基または配位子を有することが好ましい。この場合、当該基または配位子に含まれる第16族元素が、金属触媒の金属原子に結合または配位していることが好ましい。第16族元素としては、酸素、硫黄 、セレン、テルル等が挙げられ、なかでも酸素または硫黄を含む基または配位子が好ましい。このような基または配位子としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシロキシ基、アシレート基、カテコラート基、チオール基、チオシアナート基等が挙げられ、特に酸素を含む基または配位子が好ましく用いられる。
マクロモノマーの合成は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、重合反応で使用可能な溶媒を用いることができ、潤滑油基油も好適に用いることができる。マクロモノマー合成工程における反応溶媒の使用量は特に限定されないが、反応液中のマクロ化合物とカウンター化合物の合計の濃度が5質量%以上70質量%以下となる程度が好ましい。
マクロモノマーの合成を潤滑油基油中で行った場合は、重合工程においても、当該潤滑油基油を反応溶媒として用いることもできる。これにより、マクロモノマー合成工程と重合工程を簡略化できるとともに、重合後の溶媒置換が不要となるため、本発明の粘度指数向上剤を簡便に製造することが可能となる。この場合、マクロモノマー合成工程で使用した金属触媒由来の金属の存在下、マクロモノマー合成工程で使用した溶媒(潤滑油基油)中で、マクロモノマーを含む単量体成分を重合する重合工程を行ってもよい。
マクロ化合物とカウンター化合物とを反応させる際の温度は、反応溶媒の種類や反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また180℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。反応時間は、反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、20分~16時間(好ましくは30分~12時間)行えばよい。
〔2.粘度指数向上剤と基油を含有する組成物〕
本発明は、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。本発明の粘度指数向上剤は、潤滑油基油と配合して、潤滑油組成物とすることができる。潤滑油組成物は、それをさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いてもよく、あるいは、さらに潤滑油基油で希釈したものを潤滑油に用いてもよい。後者の場合、潤滑油組成物は原液として用いられ、以下これを「基油組成物」と称する場合がある。
潤滑油基油としては、公知の潤滑油基油を特に制限なく用いることができ、鉱油系基油や合成系基油を好適に挙げることができる。鉱油系基油としては、パラフィン系やナフテン系等の基油が挙げられる。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製したり、水素化分解または水素化異性化処理したものも含まれる。合成系基油としては、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコーン系、フッ素系等の基油が挙げられる。潤滑油基油は、上述したように、粘度指数向上剤に含まれる重合体の重合反応溶媒として用いることもできる。
鉱油系基油の好ましい具体例としては、以下に示す基油(1)~(7)を原料とし、この原料油及び/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。また(1)~(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)または(9)が特に好ましい。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)~(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)~(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)基油(1)~(4)のいずれかの脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)~(6)から選ばれる2種以上の混合油
(8)上記基油(1)~(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油。
(9)上記基油(1)~(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
合成系基油としては、具体的には、ポリα-オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、なかでもポリα-オレフィンが好ましい。ポリα-オレフィンとしては、典型的には、炭素数2~32、好ましくは6~16のα-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1-オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン-プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。
上記に説明した鉱物系基油や合成系基油等の潤滑油基油の100℃における動粘度は、1~20mm2/sであることが好ましい。
潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上記基油(1)~(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について、上述の処理を行うことにより得られる基油(8)または(9)が好ましい。また、米国石油協会(API)による分類に基づくグループIIIに属する基油を用いることも好ましい。潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上述の合成系基油を用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物においては、上記の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また他の基油の1種または2種以上と併用してもよい。なお、潤滑油基油と他の基油とを併用して混合基油とする場合、当該混合基油は上記潤滑油基油(8)または(9)を少なくとも含むことが好ましい。混合基油中の上記潤滑油基油(8)または(9)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
潤滑油基油の粘度指数は、100以上であることが好ましく、120以上がより好ましく、また160以下が好ましい。粘度指数が上記の下限値未満であると、粘度-温度特性及び熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。また、粘度指数が上記の上限値を超えると、低温粘度特性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283に準拠して測定された粘度指数を意味する。
潤滑油組成物の粘度指数は、200以上であることが好ましく、230以上がより好ましく、255以上がさらに好ましく、また350以下であることが好ましく、300以下がより好ましい。粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れるものとなる。
潤滑油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は特に限定されず、例えば、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、また70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましい。なお、潤滑油組成物をさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いる場合は、潤滑油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。本発明の潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は、潤滑油組成物100質量部中、例えば5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、また70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と潤滑油基油を必須成分として含有し、さらに任意の添加剤等を含有してもよい。潤滑油組成物は、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤が配合されることが好ましい。
流動点降下剤としては、潤滑油に用いられる任意の流動点降下剤が使用できる。流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン-塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール-塩素化パラフィン縮合生成物などが挙げられる。これらの中ではポリメタクリレート類が好ましい。
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。摩耗防止剤(または極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄-リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
金属系清浄分散剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、およびアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩または塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウムまたはカルシウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
無灰清浄分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰清浄分散剤が使用できる。無灰清浄分散剤としては、例えば、炭素数40~400の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000~10万mm2/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo-ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、例えばアルキルアミンアルコキシアルコール等など様々である。
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、またはβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
潤滑油組成物が、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、例えば、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上10質量部以下であればよい。
潤滑油組成物が金属系清浄分散剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上30質量部未満であることが好ましい。含有量が0.01質量部に満たない場合には、省燃費効果が短期間しか持続しないおそれがあり、また30質量部以上の場合には含有量に見合った効果が得られにくくなる。
潤滑油組成物が泡消剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.0001質量部以上0.01質量部以下であることが好ましい。
潤滑油組成物が摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。摩擦調整剤の含有量が0.01質量部未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また3質量部を超えると、他の添加剤の効果を阻害しやすくなったり、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物は実質的に粘度指数向上剤と潤滑油基油からなるものであってもよく、この場合、基油組成物中の粘度指数向上剤と潤滑油基油の合計含有量は、基油組成物100質量部中、例えば98質量部以上であることが好ましく、99質量部以上がより好ましく、99.5質量部以上がさらに好ましい。特に、上記に説明した重合体と潤滑油基油の合計含有量がこのような範囲となるように基油組成物が構成されることが好ましい。
潤滑油組成物は、上記の成分に加えて、本発明の重合体以外の粘度指数向上剤を含有することができる。本発明の重合体以外の粘度指数向上剤は、具体的には非分散型または分散型エステル基含有粘度指数向上剤であり、例として非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、非分散型または分散型オレフィン-(メタ)アクリレート共重合体系粘度指数向上剤、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも非分散型または分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましく、非分散型または分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤であることがより好ましい。その他に、非分散型または分散型エチレン-α-オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン-ジエン水素化共重合体およびポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)分析および評価方法
(1-1)重合率
各単量体成分の重合率をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC-2010plus)を用いて求めた。具体的には、各単量体とトリデカンを酢酸エチルに溶解させた検量線溶液を作製し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合体溶液とトリデカンを酢酸エチルに溶解させたサンプル溶液を作製し、同様にガスクロマトグラフィーで測定した。内部標準法により、各単量体成分の重合率を求めた。ガスクロマトグラフィーの測定条件を下記に示す。
-カラム:GLサイエンス製 Inert Cap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
-温度:40℃(5分保持)+40℃~170℃(10℃/分)+170℃~210℃(5℃/分)+210℃~330℃(15℃/分)+330℃(20分保持)
-気化室温度:200℃
-検出器温度:350℃(FID)
-キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.33mL/分)
-注入量:0.5μL(スプリット法、スプリット比:30.0)
-内部標準試料:トリデカン
-希釈溶剤:酢酸エチル
(1-2)重量平均分子量および数平均分子量
重合体の重量平均分子量と数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、HLC-8320GPC ECOSEC)を用いて求めた。測定条件は下記の通りである。
-カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
-展開溶媒:テトラヒドロフラン
-展開溶媒の流量:1.0mL/分
-標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS-オリゴマーキット)
-カラム温度:40℃
-サンプル濃度:0.5%
-注入量:200μL
(1-3)基油溶解性
重合体2質量部と基油(SK社製、YUBASE4)98質量部とを配合して重合体の基油溶液を調製し、撹拌しながら80℃で30分間加熱した。その後、重合体の基油溶液を室温まで冷却し、目視で析出物の有無を確認した。析出物が確認された場合を溶解性×、析出物が確認されなかった場合を溶解性○と評価した。なお、SK社製のYUBASE4は、米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)である。
(1-4)粘度指数
100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油(SK社製、YUBASE4)に重合体を希釈し、JIS K 2283の方法で測定した。
(1-5)せん断安定性
100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油(SK社製、YUBASE4)に重合体を希釈して重合体の基油溶液を調製し、これを100℃に保持しながら、超音波ホモジナイザー(Ultrasonics社製、Hielscher UP400S)にて、Amplitude=70%、Cycle=1の条件で10分間超音波を当てて、せん断処理した。せん断処理前後の重合体の基油溶液と基油の100℃における動粘度をそれぞれ測定し、次式によりせん断安定性(SSI)を求めた:SSI={1-(せん断処理後の動粘度-基油の動粘度)/(せん断処理前の動粘度-基油の動粘度)}×100。SSIの値が、38以下である場合を○、38を超える場合を×と評価した。
(1-6)粘度
実施例または比較例で得られた重合体の基油溶液を基油で希釈して、重合体(重合体原料を含む)を20質量%、米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(SK社製、YUBASE4、粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)を80質量%の割合で含む重合体の基油溶液を調製し、粘度計(東機産業社製、TVE-35H、3°×R9.7ローター、回転数50rpm)により25℃の条件で重合体の基油溶液の粘度を測定した。粘度が25Pa・s以下の場合を○、25Pa・sを超える場合を×と評価した。
(2)マクロモノマーの製造例
(2-1)マクロモノマー1の製造
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)50質量部、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)1.6質量部、トルエン20質量部、ジブチルスズジラウリレート0.1質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで65℃に加熱しながら6時間撹拌を行った。反応終了後、水50質量部を加えて分液ロートにて上澄み液を回収し、65℃に昇温後、減圧下でトルエンを除去し、表1に示すマクロモノマー1を48質量部得た。
得られたマクロモノマー1を重クロロホルム(和光純薬工業社製)に溶解し、核磁気共鳴分光計(Varian社製、Unity Plus400)を用いて、1H-NMR測定を行った。マクロモノマー1の1H-NMRチャートを図1に示す。原料のアルコール基に帰属される3.9ppm付近のピークは確認されず、生成したウレタン基に帰属される4.9ppm付近のピークが確認された。
(2-2)マクロモノマー2の製造
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)50質量部、無水メタクリル酸3.0質量部、トルエン10質量部、ピリジン2.5質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスを用い100℃で加熱還流させながら16時間撹拌を行った。反応終了後、20質量%炭酸水素ナトリウム水溶液50質量部を加えて80℃で10分間加熱還流し、分液ロートにて上澄み液を回収した。上澄み液を65℃に昇温後、減圧下でトルエンを除去し、表1に示すマクロモノマー2を38質量部得た。
得られたマクロモノマー2を、重クロロホルム(和光純薬工業社製)に溶解し、核磁気共鳴分光計(Varian社製、Unity Plus400)を用いて、1H-NMR測定を行った。マクロモノマー2の1H-NMRチャートを図2に示す。原料のアルコール基に帰属される3.9ppm付近のピークは確認されず、生成したエステル基に帰属される5.1ppm付近のピークが確認された。
Figure 0007014552000007
(3)重合体の基油溶液の製造例
(3-1)実施例1
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、単量体成分として、マクロモノマー1を12質量部、n-ブチルメタクリレート(BMA)67質量部、ラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート混合物(質量比=54/46)(SLMA)21質量部を仕込み、さらに基油(SK社製、YUBASE4)124.2質量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.1161質量部と基油(SK社製、YUBASE4)8.2質量部とを混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)575)0.051質量部を基油(SK社製、YUBASE4)3.4質量部に溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。続いて、そこに基油(SK社製、YUBASE4)97.3質量部を加え希釈することで、重合体1の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体1の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-2)実施例2
実施例1において、単量体成分として、マクロモノマー1を12質量部、BMA60質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)23質量部、N-フェニルマレイミド(PMI)5質量部を用い、t-アミルパーオキシイソノナノエート0.1161質量部を0.0774質量部に、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.051質量部をt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.034質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体2の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体2の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-3)実施例3
実施例2において、BMA60質量部を65質量部に、SMA23質量部を18質量部に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行うことで、重合体3の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体3の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-4)実施例4
実施例2において、マクロモノマー1を用いる代わりに、マクロモノマー2を12質量部用いた以外は、実施例2と同様の操作を行うことで、重合体4の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体4の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-5)実施例5
実施例2において、単量体成分として、マクロモノマー1を12質量部、BMA52質量部、SMA21質量部、メチルメタクリレート(MMA)10質量部を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行うことで、重合体5の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体5の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-6)実施例6
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)11.7質量部、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)0.38質量部、基油(SK社製、YUBASE4)73.6質量部、テトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTA-30)0.024質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで75℃に加熱しながら30分撹拌を行い、表1に示すマクロモノマー1の基油溶液を85.7質量部得た。得られたマクロモノマー1の基油溶液を重クロロホルム(和光純薬工業社製)に溶解し、核磁気共鳴分光計(Varian社製、Unity Plus400)を用いて、1H-NMR測定を行った。原料のアルコール基に帰属される3.9ppm付近のピークは確認されず、生成したウレタン基に帰属される4.9ppm付近のピークが確認された。
次に、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、得られたマクロモノマー1の基油溶液を85.7質量部、n-ブチルメタクリレート(BMA)60質量部、ラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート混合物(質量比=54/46)(SLMA)23質量部、N-フェニルマレイミド(PMI)5質量部を仕込み、さらに基油(SK社製、YUBASE4)151.9質量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.0521質量部と基油(SK社製、YUBASE4)5.1質量部とを混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.205質量部を基油(SK社製、YUBASE4)13.7質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに2時間の熟成を行った。続いて、そこに基油(SK社製、YUBASE4)9.9質量部を加え希釈することで、重合体6の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体6の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-7)実施例7
実施例6において、BMA60質量部を62質量部に、PMI5質量部を3質量部に、重合反応の際に加える基油151.9質量部を136.1質量部に変更し、熟成後の希釈に加える基油9.9質量部を30.8質量部に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行うことで、重合体7の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体7の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-8)実施例8
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)9.7質量部、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)0.31質量部、基油(SK社製、YUBASE4)60質量部、テトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTA-30)0.020質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで75℃に加熱しながら30分撹拌を行い、表1に示すマクロモノマー1の基油溶液を71.5質量部得た。
次に、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、得られたマクロモノマー1の基油溶液を71.5質量部、n-ブチルメタクリレート(BMA)65質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)20質量部、N-フェニルマレイミド(PMI)5質量部を仕込み、さらに基油(SK社製、YUBASE4)145.8質量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.0521質量部と基油(SK社製、YUBASE4)5.1質量部とを混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.205質量部を基油(SK社製、YUBASE4)13.7質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに2時間の熟成を行った。続いて、そこに基油(SK社製、YUBASE4)30.8質量部を加え希釈することで、重合体8の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体8の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-9)実施例9
実施例8において、BMA65質量部を67質量部に、PMI5質量部を3質量部に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行うことで、重合体9の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体9の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-10)実施例10
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)14.6質量部、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)0.47質量部、基油(SK社製、YUBASE4)92質量部、テトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTA-30)0.030質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで75℃に加熱しながら30分撹拌を行い、表1に示すマクロモノマー1の基油溶液を107.1質量部得た。続いて、実施例8において、マクロモノマー1の基油溶液の使用量を71.5質量部から107.1質量部に、BMA65質量部を60質量部に、SMA20質量部をSLMA20質量部に、重合反応の際に加える基油145.8質量部を117.7質量部に変更した以外は、実施例8と同様にして重合反応以降の操作を行うことで、重合体10の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体10の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-11)実施例11
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(TOTAL社製、KrasolHLBH-5000M)11.7質量部、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI)0.38質量部、基油(SK社製、YUBASE4)73.6質量部、テトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTA-30)0.024質量部を仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで75℃に加熱しながら30分撹拌を行い、表1に示すマクロモノマー1の基油溶液を85.7質量部得た。
次に、撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、得られたマクロモノマー1の基油溶液を85.7質量部、n-ブチルメタクリレート(BMA)37質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)18質量部、N-フェニルマレイミド(PMI)6質量部を仕込み、さらに基油(SK社製、YUBASE4)89.6質量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.0521質量部と基油(SK社製、YUBASE4)5.1質量部とを混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.205質量部を基油(SK社製、YUBASE4)13.7質量部に溶解させた溶液と、滴下単量体成分としてBMA25質量部、PMI2質量部の混合溶液を、それぞれ4時間、2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに2時間の熟成を行った。続いて、そこに基油(SK社製、YUBASE4)30.8質量部を加え希釈することで、重合体11の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体11の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表2に示す。
(3-12)実施例12
実施例6において、PMI5質量部をN-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)5質量部に、重合反応の際に加える基油151.9質量部を117.7質量部に変更し、熟成後の希釈に加える基油9.9質量部を92.0質量部に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行うことで、重合体12の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。得られた重合体12の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-13)実施例13
実施例6において、BMA60質量部を65質量部に、PMI5質量部をCHMI5質量部に、SLMA23質量部を18質量部に、重合反応の際に加える基油151.9質量部を136.1質量部に変更し、熟成後の希釈に加える基油9.9質量部を73.6質量部に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行うことで、重合体13の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。得られた重合体13の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-14)実施例14
実施例6において、重合反応の際に、単量体成分として、マクロモノマー1の基油溶液を85.7質量部、BMA55質量部、SLMA23質量部、PMI5質量部、CHMI5質量部を仕込み、重合反応の際に加える基油151.9質量部を136.1質量部に変更し、熟成後の希釈に加える基油9.9質量部を73.6質量部に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行うことで、重合体14の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。得られた重合体14の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-15)実施例15
実施例14において、CHMI5質量部をシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)5質量部に変更した以外は、実施例14と同様の操作を行うことで、重合体15の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体15の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-16)実施例16
実施例6において、BMA60質量部を67質量部に、SLMA23質量部をSMA13質量部に、PMI5質量部をCHMI8質量部に、重合反応の際に加える基油151.9質量部を117.7質量部に、熟成後の希釈に加える基油9.9質量部を49.1質量部に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行うことで、重合体16の基油溶液(重合体濃度28質量%)を得た。得られた重合体16の各単量体由来の単位の組成比並びに分析・評価結果を表3に示す。
(3-17)比較例1
実施例1において、単量体成分として、BMA71質量部とSLMA29質量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体17の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体17の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-18)比較例2
実施例1において、単量体成分として、マクロモノマー1を10質量部、MMA40質量部、SMA20質量部、デシルテトラデシルメタクリレート(DTDMA)30質量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体18の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体18の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-19)比較例3
比較例2において、MMA40質量部を60質量部に、DTDMA30質量部を10質量部に変更した以外は、比較例2と同様の操作を行うことで、重合体19の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体19の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-20)比較例4
実施例1において、単量体成分として、MMA30質量部、SMA30質量部、SLMA40質量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体20の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体20の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
(3-21)比較例5
実施例1において、単量体成分として、マクロモノマー1を12質量部、BMA71質量部、ラウリルメタクリレート(LMA)5質量部、スチレン12質量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことで、重合体21の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。得られた重合体21の各単量体由来の単位の組成比ならびに分析・評価結果を表3に示す。
Figure 0007014552000008
Figure 0007014552000009
(4)結果
表2および表3には、実施例と比較例で製造した各重合体の構成単位の組成割合(質量基準)とその分子量、および物性評価結果を示した。なお、物性評価の「測定時重合体濃度」は、せん断安定性を測定する際に、重合体を、100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油(SK社製、YUBASE4)に希釈して調製した、基油溶液の重合体濃度を意味する。
比較例1で用いた重合体は、単位(B)(BMA)を有するものの、マクロモノマー由来の単位(A)を有しないものであったため、基油に完全に溶解しなかった。これに対して、実施例で用いた重合体は、単位(B)に加えてマクロモノマー由来の単位(A)を有するものであったため、基油溶解性に優れるものとなった。また、単位(B)を有さず、メチルメタクリレート(MMA)由来の単位を導入した重合体を用いた比較例2~4と比較して、基油溶解性や室温付近での流動性(粘度)に優れ、粘度指数とせん断安定性に優れるものとなった。比較例5で用いた重合体は、単位(A)と単位(B)の合計含有量が83質量%であったため、基油に完全に溶解しなかった。
本発明の粘度指数向上剤は潤滑油組成物として用いることができ、駆動系潤滑油、作動油、エンジン油等に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるマクロモノマー由来の単位(A)と、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2~6である単位(B)とを有する重合体を含有する粘度指数向上剤であって、
    Figure 0007014552000010

    [式(1)において、Rは水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、Xはアルキレン基、-O-、-CO-、-NH-またはこれらを組み合わせた連結基を表し、該連結基にはウレタン結合が含まれ、Rはマクロモノマーの高分子構造部を表す。]
    前記重合体100質量部中、前記単位(A)の含有量が6質量部以上20質量部未満、前記単位(B)の含有量が40質量部以上74質量部未満、前記単位(A)と前記単位(B)の合計含有量が46質量部以上80質量部未満であり、
    下記の方法で測定した粘度が25Pa・s以下であることを特徴とする粘度指数向上剤。
    (粘度測定)
    米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVE-35H、3°×R9.7ローター)にて25℃で測定。
  2. マクロモノマー由来の単位(A)と、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2~6である単位(B)と、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が11~40である単位(C)とを有する重合体を含有する粘度指数向上剤であって、
    前記重合体100質量部中、前記単位(A)の含有量が6質量部以上20質量部未満、前記単位(B)の含有量が52質量部以上74質量部未満、前記単位(C)の含有量が10質量部以上40質量部以下、前記単位(A)と前記単位(B)の合計含有量が60質量部以上80質量部未満であり、
    前記重合体がさらに、多官能連鎖移動剤および/または多官能重合開始剤由来の分岐単位を有し、
    下記の方法で測定した粘度が25Pa・s以下であることを特徴とする粘度指数向上剤。
    (粘度測定)
    米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm/s)80質量%と、前記重合体20質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVE-35H、3°×R9.7ローター)にて25℃で測定。
  3. 前記重合体がさらに、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が11~40である単位(C)を有し、
    前記重合体100質量部中、前記単位(C)の含有量が3質量部以上40質量部以下である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
  4. 前記重合体がさらに、多官能連鎖移動剤および/または多官能重合開始剤由来の分岐単位を有する請求項1または3に記載の粘度指数向上剤。
  5. 前記単位(A)が、分岐鎖状アルキレン基の繰り返し構造を有する請求項1~のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  6. 前記重合体がさらに、マレイミド系単量体由来の単位(D)を有し、
    前記重合体100質量部中、前記単位(D)の含有量が1質量部以上20質量部以下である請求項1~のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  7. 前記重合体100質量部中、スチレン系単量体由来の単位の含有量が3質量部未満である請求項1~のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  8. 潤滑油基油と、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
JP2017180407A 2016-09-21 2017-09-20 粘度指数向上剤および潤滑油組成物 Active JP7014552B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016184783 2016-09-21
JP2016184783 2016-09-21
JP2017151983 2017-08-04
JP2017151983 2017-08-04

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019023270A JP2019023270A (ja) 2019-02-14
JP7014552B2 true JP7014552B2 (ja) 2022-02-01

Family

ID=65368676

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017180407A Active JP7014552B2 (ja) 2016-09-21 2017-09-20 粘度指数向上剤および潤滑油組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7014552B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020076056A (ja) * 2018-10-12 2020-05-21 三洋化成工業株式会社 粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
JP7467491B2 (ja) 2019-09-24 2024-04-15 出光興産株式会社 粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物
CN114031711B (zh) * 2021-10-25 2023-04-28 上海应用技术大学 一种三元聚合物生物柴油降凝剂及制备方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012529550A (ja) 2009-06-12 2012-11-22 エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 向上した粘度指数を有する流体
JP2014224246A (ja) 2013-04-23 2014-12-04 三洋化成工業株式会社 粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
JP2015086314A (ja) 2013-10-31 2015-05-07 株式会社日本触媒 新規重合体及び粘度指数向上剤、並びに潤滑油組成物
WO2015142482A1 (en) 2014-03-19 2015-09-24 The Lubrizol Corporation Lubricants containing blends of polymers
JP2016053154A (ja) 2014-09-01 2016-04-14 三洋化成工業株式会社 粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE4312715A1 (de) * 1993-04-20 1994-10-27 Roehm Gmbh Kammpolymere
DE102007002295A1 (de) * 2007-01-09 2008-07-10 Gelita Ag Nahrungsmittelprodukt auf Proteinbasis und Verfahren zur Herstellung

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012529550A (ja) 2009-06-12 2012-11-22 エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 向上した粘度指数を有する流体
JP2014224246A (ja) 2013-04-23 2014-12-04 三洋化成工業株式会社 粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
JP2015086314A (ja) 2013-10-31 2015-05-07 株式会社日本触媒 新規重合体及び粘度指数向上剤、並びに潤滑油組成物
WO2015142482A1 (en) 2014-03-19 2015-09-24 The Lubrizol Corporation Lubricants containing blends of polymers
JP2016053154A (ja) 2014-09-01 2016-04-14 三洋化成工業株式会社 粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019023270A (ja) 2019-02-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101850568B1 (ko) 윤활유 특성을 개선하기 위한 폴리알킬 (메트)아크릴레이트
JP5675660B2 (ja) スカッフィング耐荷力を改善するためのコームポリマーの使用
JP6342502B2 (ja) 粘度指数向上剤及びその製造方法、並びに潤滑油組成物
JP6228809B2 (ja) 新規重合体及び粘度指数向上剤、並びに潤滑油組成物
JP2019014802A (ja) 粘度指数向上剤および潤滑油組成物
JP7014552B2 (ja) 粘度指数向上剤および潤滑油組成物
US10982167B2 (en) Viscosity index improver and lubricating oil composition
JP5525478B2 (ja) 粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
JP6781098B2 (ja) 潤滑油添加剤の製造方法
JP2020105295A (ja) 粘度指数向上剤および潤滑油組成物
JP6676381B2 (ja) マレイミド系単量体の共重合体の製造方法、並びに粘度指数向上剤、及び潤滑油組成物の製造方法
JP2016056362A (ja) 粘度指数向上剤、並びに潤滑油組成物
JP2016069446A (ja) 粘度指数向上剤、並びに潤滑油組成物
JP2019151766A (ja) 潤滑油添加剤の製造方法
JP2021101009A (ja) 高粘度指数櫛形ポリマー粘度調整剤及びそれを用いて潤滑剤粘度を調整する方法
JP6682302B2 (ja) 粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物
JP7281426B2 (ja) 潤滑油組成物
JP2017106016A (ja) 粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物
JP2019157047A (ja) (メタ)アクリレート系重合体の製造方法および粘度指数向上剤
JP2020132698A (ja) 粘度指数向上剤および潤滑油組成物
JP2020050754A (ja) 流動点降下剤ならびにそれを含む潤滑油組成物
JP2018162433A (ja) 粘度指数向上剤および潤滑油組成物
JP6742829B2 (ja) 粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物
JP7467491B2 (ja) 粘度指数向上剤組成物及び潤滑油組成物
CN111675786A (zh) 新型粘度指数改进剂

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190708

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200605

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210126

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210311

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210406

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210517

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211026

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211203

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220111

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220120