JP2017106016A - 粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物 - Google Patents

粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物 Download PDF

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和成 安村
宇賀村 忠慶
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忠慶 宇賀村
啓子 泉
Keiko Izumi
啓子 泉
洋平 今泉
Yohei IMAIZUMI
洋平 今泉
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Abstract

【課題】
高い粘度指数と良好なせん断安定性を有し、かつ、潤滑油基油に対して十分な溶解性を示す重合体を高収率で製造することのできる製造方法、並びに該重合体を含有する粘度指数向上剤を用いた潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】
窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造含有ビニル単量体((A)成分)由来の単位を有する重合体を含有する粘度指数向上剤、並びに潤滑油と該粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造を有する粘度指数向上剤及びその製造方法、並びにこれを含有する潤滑油組成物に関する。特に、高い粘度指数と良好なせん断安定性を有し、かつ、潤滑油に対して十分な溶解性を示す粘度指数向上剤とその製造方法に関する。
近年、内燃機関用潤滑油は省燃費特性の向上が強く求められており、1つの手段として潤滑油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられている。しかし、単なる低粘度化では液漏れや焼きつきという問題が生じるため、高温での粘度を高く保持しながら低温での粘度を低く保つ効果を有する粘度指数向上剤の添加が有効である。
粘度指数向上剤には重合体を含有するものが知られており、さまざまな種類がある。なかでも、アルキル(メタ)アクリレート重合体からなる粘度指数向上剤は、高い粘度指数向上効果を示す。一方で、アルキル(メタ)アクリレート重合体からなる粘度指数向上剤は、せん断安定性が悪いため、長期使用時に省燃費特性が低下する(ロングライフ性が悪い)という問題があった。
せん断安定性を改善する手段としては、例えば、粘度指数向上剤に含まれる重合体の分子量を小さくすることが挙げられる。一般に、低分子量ほどせん断の影響を受けにくく分子量低下幅が小さくなるため、低分子量の粘度指数向上剤を用いることで、せん断後の粘度低下を抑制することが可能である(特許文献1および非特許文献1)。また、コア部にジビニルベンゼンを用いた星型構造を有する重合体により、せん断安定性の向上を試みた報告もなされている(特許文献2)。
特開2013−104032号公報 特開2012−197399号公報
中田、「高性能エンジン油用粘度指数向上剤」、三洋化成ニュース、三洋化成工業株式会社、2013年、No.476
しかしながら、一般に低分子量であるほど粘度指数向上効果は低い傾向があるため、低分子量の粘度指数向上剤を用いた場合は、粘度指数は低くなるという課題が発生する。さらに、所望の粘度に調整するためには、粘度指数向上剤の使用量を増やす必要があり、コスト面で不利となりやすい。また、コア部にジビニルベンゼンを用いた星型構造を有する重合体を用いた場合でも、粘度指数とせん断安定性の両立には依然改善の余地があり、良好なせん断安定性を維持しながら高い粘度指数を示す粘度指数向上剤が望まれていた。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好なせん断安定性を維持しながら高い粘度指数を示す重合体を含有する粘度指数向上剤、並びに該粘度指数向上剤を用いた潤滑油組成物を提供することである。
本願発明者らは、鋭意検討を重ねたところ、以下の方法によって、上記目的を達成する粘度指数向上剤を見出した。
すなわち本発明は、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造含有ビニル単量体(以下、「(A)成分」と称する)由来の単位を有する重合体を含有する粘度指数向上剤である。
前記重合体は、重合体100質量%に対し、(A)成分由来の単位が0.1質量%以上5質量%以下である重合体を含有するであることが好ましい。
本発明の粘度指数向上剤は、(A)成分由来の単位に加え、炭素数1〜5の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(B)成分」と称する)由来の単位と、炭素数6〜40の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(C)成分」と称する)由来の単位を有する重合体を含有することが好ましい。
該重合体100質量部に対し、(前記重合体100質量%に対し、(B)成分由来の単位が15質量%以上49.9質量%以下であり、(C)成分由来の単位が50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
本発明は上記粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。
本発明の重合体を含有する粘度指数向上剤を用いることで、良好なせん断安定性を維持しながら高い粘度指数を示す潤滑油組成物を提供することができる。
実施例の製造例1で作製したモノマーであるDAMC16BrのH核磁気共鳴(H−NMR)プロファイルを示す図である。 実施例の製造例2で作製したモノマーであるDAMC16BPh4のH核磁気共鳴(H−NMR)プロファイルを示す図である。
以下に本発明を詳述する。これ以降の説明において特に記載がない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
〔1.粘度指数向上剤〕
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造含有ビニル単量体(「(A)成分」)由来の単位を有する。 単量体(A)成分としては、例えば、3級アミノ基または3級ホスフィノ基含有ビニル単量体を、炭素数13〜40の炭化水素基を有する4級化剤を用いて4級化したもの(a1)や、アニオン性ビニル単量体のカチオンが炭素数13〜40の炭化水素基を有する4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩であるもの(a2)が挙げられる。(a1)の具体例としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート系4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩や(メタ)アクリルアミド系4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩が挙げられる。
Figure 2017106016
(R1は水素原子またはメチル基;R2、R3、R4は炭素数1〜40の炭化水素基であり、少なくとも1つ以上が炭素数13〜40の炭化水素基;−W−は−O−、−O(AO)m−または−NH−で表される基であって、Aは炭素数2〜4の直鎖または分岐アルキレン基、Mは1〜20の整数であり、mが2以上の場合にAは同一でも異なっていても良く、(AO)部分はランダム結合でもブロック結合でも良い;Xは炭素数1〜40のC、H、O、Nで構成される基;YはNまたはP;Z1はハライド、ボレート、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェートから選ばれる1種)
具体的には、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムトリフラート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルステアリルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(2−デシルテトラデシル)ジメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルアミノエチルセチルジメチルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
(a2)の具体例としては、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリレート系4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩や(メタ)アクリルアミド系4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩が挙げられる。
Figure 2017106016
(R1は水素原子またはメチル基;R2、R3、R4、R5は炭素数1〜40の炭化水素基であり、少なくとも1つ以上が炭素数13〜40の炭化水素基;−W−は−O−、−O(AO)m−または−NH−で表される基であって、Aは炭素数2〜4の直鎖または分岐アルキレン基、Mは1〜20の整数であり、mが2以上の場合にAは同一でも異なっていても良く、(AO)部分はランダム結合でもブロック結合でも良い;Xは炭素数1〜40のC、H、O、Nで構成される基;YはNまたはP;Z2は、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェートから選ばれる1種)
具体的には、セチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、セチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボキシレート、セチルトリメチルアンモニウム2−(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、セチルトリメチルアンモニウム2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、セチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホネート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルセチルジエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(2−デシルテトラデシル)ジメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、セチルトリメチルアンモニウム2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレートが好ましい。なお、上記単量体(A)成分は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(A)成分を含む単量体成分を重合することにより、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造単位を有する重合体が得られる。
単量体(A)成分の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、また5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。0.1質量部未満であると、本発明の効果である粘度指数向上に効果が見られず、5質量部よりも多い場合には、重合体のゲル化が促進されたり、基油への溶解性が極端に低下したりすることで、基油溶液や潤滑油組成物の濁りや凝集物などの不具合の原因となるため好ましくない。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、単量体成分として、上記(A)成分に加え、炭素数1〜5の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(B)成分」と称する)由来の単位と、炭素数6〜40の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(C)成分」と称する)由来の単位を有する重合体を含有することが好ましい。
単量体(B)成分としては、下記一般式(3)で表される(メタ)アクリレートが好ましい。下記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜5の炭化水素基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)を表す。なお、Rの炭化水素基は直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
単量体(B)成分は、R及びRがそれぞれ単一の単量体であってもよく、R及び/又はRが異なる2種以上の単量体の混合物であってもよい。反応性の点から、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。また、粘度指数向上の点から、Rの炭化水素基は直鎖状または分岐状であることが好ましい。
Figure 2017106016
単量体(B)成分の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、iso−アミル(メタ)アクリレート、t−アミル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、単量体(B)成分として、少なくともメチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。単量体(B)成分がメチル(メタ)アクリレートを含有することにより、粘度指数向上効果が大きく、せん断安定性が高い粘度指数向上剤となる。上記単量体(B)成分は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(B)成分を含む単量体成分を重合することにより、重合体に、炭素数が1〜5の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の単位が導入される。従って、本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造単位に加え、炭素数が1〜5の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の単位を有することが好ましく、下記式(4)で表される単位を有することがより好ましい。下記式(4)において、RとRは上記と同じ意味を表す。
Figure 2017106016
単量体(B)成分の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、また49.9質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。また、重合体中の単量体(B)成分由来の単位(すなわち、炭素数が1〜5の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の単位)の含有量は、重合体100質量部に対し、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、また49.9質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。単量体(B)成分の含有量または単量体(B)成分由来の単位の含有量が上記範囲であれば、他の成分との共重合性が良く、重合速度も良好で重合率も高く生産性が良い。また、共重合して得られる粘度指数向上剤の粘度指数や基油溶解性がより良好となる。
単量体(C)成分としては、下記一般式(5)で表される(メタ)アクリレートが好ましい。下記式(5)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数6〜40の炭化水素基(好ましくは炭素数6〜24の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数12〜24の炭化水素基)を表す。Rの炭化水素基は、鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
Figure 2017106016
単量体(C)成分は、R及びRがそれぞれ単一の単量体であってもよく、R及び/又はRが異なる2種以上の単量体の混合物であってもよい。反応性の点から、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
単量体(C)成分の具体例としては、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、入手性や経済性の観点および基油への溶解性が高いことから、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。上記単量体(C)成分は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(C)成分を含む単量体成分を重合することにより、重合体に、炭素数が6〜40の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の単位が導入される。従って、本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造単位に加え、炭素数が6〜40の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート由来の単位を有することが好ましく、下記式(6)で表される単位を有することがより好ましい。下記式(6)において、RとRは上記と同じ意味を表す。より好ましくは、本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造単位に加え、炭素数が1〜5の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の単位と、炭素数が6〜40の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の単位を有する。
Figure 2017106016
単量体(C)成分の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、また80質量部未満が好ましく、78質量部以下がより好ましく、75質量部以下がさらに好ましい。また、重合体中の単量体(C)成分由来の単位(すなわち、炭素数が6〜40の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の単位)の含有量は、重合体100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、また80質量部未満が好ましく、78質量部以下がより好ましく、75質量部以下がさらに好ましい。上記数値範囲の単量体(C)成分を用いて得られた重合体、あるいは上記数値範囲の単量体(C)成分由来の単位を有する重合体を含む粘度指数向上剤は、基油への溶解性が良好なものとなる。
本発明の重合体を合成する単量体成分は、(A)、(B)、(C)成分以外のラジカル重合性単量体(以下、「(D)成分」と称する)を含有することができる。(D)成分のラジカル重合性単量体は、ラジカル重合性基を同一分子内に1個有する単官能単量体と、ラジカル重合性基を同一分子内に2個以上有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体の例としては、(A)、(B)、(C)成分以外のその他の(メタ)アクリレート、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル、不飽和カルボン酸類、ビニル芳香族化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン類、シアン化ビニル、N−ビニル化合物等が挙げられる。これらの単官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(B)成分や(C)成分以外のその他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和モノまたはジカルボン酸エステルとしては、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレート、等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、等が挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、ジイソブテン等が挙げられる。
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
これらの単官能単量体のうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、N−ビニルピロリドンが好ましい。
単量体(D)成分に含まれる単官能単量体の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。また、重合体中の単官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
単量体(D)成分に含まれる多官能単量体の例としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。上記多官能単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多官能(メタ)アクリレート(多官能(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
アリル基含有(メタ)アクリレート(アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシル等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(多官能ウレタン(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
単量体(D)成分に含まれる多官能単量体の含有量は、全単量体成分の合計100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。また、重合体中の多官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この場合、重合体が分岐構造などをとることにより、基油への溶解性を大きく損ねることなく、該重合体を含有する粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
ただし、2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロペノエート、α―アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシルのように、環化しながら重合が進行する多官能単量体の場合は、重合体中の多官能単量体由来の単位の含有量は、重合体100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。全単量体成分の合計100質量部に対する多官能単量体の含有量も同様である。この場合、主鎖に導入される環構造の効果により、該重合体を含有する粘度指数向上剤の耐熱性が向上するとともに、せん断安定性を改善することができる。
多官能単量体由来の単位が上記範囲を超えると、重合時にゲル化が進行したり、該重合体を含有する粘度指数向上剤の基油への溶解度が低下したりする場合がある。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、上述した各種重合性単量体を含有する単量体成分を重合することによって得ることができる。このとき、3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤の存在下にてラジカル重合を行っても良い。
3官能以上の多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)など、水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物、トリアジン多価チオール類、多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて1分子当たり3個以上のメルカプト基を導入してなる化合物、多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなる1分子当たり3個以上のメルカプト基を有する化合物などが挙げることができる。3官能以上の多価メルカプタンは、1種類以上を単独または組み合わせて(例えば、混合して)使用することができる。
上記3官能以上の多価メルカプタンの使用量(添加量総量)は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。なお、基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、3官能以上の多価メルカプタンの使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、また5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、分子量分布が狭くなり、せん断安定性を向上できる。
3官能以上の多官能開始剤としては、例えば、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの3官能以上の有機過酸化物などが挙げられるが、特に限定されない。
上記3官能以上の多官能開始剤の使用量(添加量総量)は、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。なお、重合性、分解物の悪影響、経済性のバランスを考慮し、さらに粘度指数と基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、3官能以上の多官能開始剤の使用量は、単量体成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤の存在下にて、単量体成分をラジカル重合することによって得られた重合体は、中心から高分子鎖が枝分かれした構造を有するものとなる。つまり、本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位および/または3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位を有するものとなる。粘度指数向上剤に含まれる重合体がこのような構造を有することにより、基油への溶解性を大きく損ねることなく、該重合体を含有する粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体が3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位を有する場合、該重合体は、下記式(7)で示される分岐単位(連鎖移動剤残基)を有することが好ましい。下記式(7)において、Lはm価の有機残基を表し、mは0以上の数を表す。mは、好ましくは0〜5である。
Figure 2017106016
粘度指数向上剤に含まれる重合体が3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位を有する場合、該重合体は、3官能以上の過酸化物由来の分岐単位を有することが好ましく、具体的には、下記式(8)で示される分岐単位を有することが好ましい。下記式(8)において、Lはn価の有機残基(開始剤残基)を表し、nは0以上の数を表す。nは、好ましくは0〜5である。
Figure 2017106016
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位と3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位のどちらか一方のみ含んでいてもよく、両方含んでいてもよい。3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位は、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位も、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位の含有量は、重合体100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、また5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。この範囲とすることで、重合体の分子量分布が狭くなり、せん断安定性を向上できる。3官能以上の多価メルカプタン由来の分岐単位の含有量は、3官能以上の多価メルカプタンの使用量を重合体質量で除することにより求める。
重合体中の3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位の含有量は、粘度指数と基油溶解性が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を含有する粘度指数向上剤を得る点から、重合体100質量部に対し、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましく、また10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位の含有量は、3官能以上の多官能開始剤の使用量を重合体質量で除することにより求める。
本発明の粘度指数向上剤に含有される重合体の重合方法は、単量体成分を重合する工程(重合工程)を有する製造方法により得ることができる。重合工程における単量体の成分の重合方法は、たとえば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などいずれでもよいが、特に限定はされない。分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は、特に制限がなく公知のものが使用できる。
重合工程で3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤を用いる場合、それらの種類や使用量等の好適条件は、上記に説明した通りである。重合の際、3官能以上の多価メルカプタンおよび/または3官能以上の多官能開始剤は、一括添加してもよく、分割添加してもよい。また、2官能以下のメルカプタンや2官能以下の開始剤を併用してもよい。
重合工程では、単量体成分として、上記に説明した単量体(A)成分、単量体(B)成分および単量体(C)成分を必須的に用いることが好ましい。単量体成分として、上記に説明した単量体(D)成分を併用してもよい。これらの各単量体成分の種類や使用量等の好適条件は、上記に説明した通りである。
重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤・重合触媒の種類や量等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。なお、重合体の溶解度を確保する観点、および重合後に基油への溶媒置換が容易である観点から、重合に使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。また、後述する潤滑油基油も溶媒として好適に用いることができる。この場合、重合後の溶媒置換が不要となり、プロセスが簡略化されるため、より好ましい。これら溶媒は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は特に制限はないが、粘度指数が高い重量平均分子量が10万以上の重合体を得る観点から、単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が、全体の20質量%以上80質量%以下となる程度が好ましい。
上記単量体成分を重合する際の重合温度としては、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤・重合触媒の種類や量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。重合温度が0℃未満であると、重合反応が非常に遅くなり、200℃を超えると反応が激しく制御が困難となるため、いずれも好ましくない。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万以上であることが好ましく、20万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましく、36万以上がさらにより好ましく、また60万以下が好ましく、58万以下がより好ましく、55万以下がさらに好ましい。重合体の重量平均分子量が上記下限値に満たない場合は、潤滑油組成物の粘度指数が低くなるだけでなく、所望の粘度に調整するために粘度指数向上剤の使用量を増やす必要があり、コスト面で不利となる。重合体の重量平均分子量が過度に大きい場合は、粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりする傾向がある。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体の数平均分子量(Mn)は9万以上が好ましく、より好ましくは9万〜30万であり、さらに好ましくは9万〜20万である。
MwとMnから算出される分子量分布(Mw/Mn)は4.0以下が好ましく、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。分子量分布が4.0を超えると粘度指数向上剤の基油への溶解性が不足したり、潤滑油組成物のせん断安定性が低下したりするため好ましくない。一方、分子量分布の下限は1.0が好ましいが、重合体の合成が容易な点から、分子量分布(Mw/Mn)は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.3以上がさらに好ましい。なお、本発明におけるMwおよびMnは、公知の方法を用いて測定することができる。
分子量の制御方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、重合開始剤・重合触媒の量や種類、重合温度、連鎖移動剤の種類や量の調整などにより制御できる。分子量分布を制御する方法としてはLiving Radical Polymerizationも使用できる。具体的な方法としては、RAFT法やNMP法、ATRP法などが有名である。詳細については、Aldrich Material Matters,Vol.5,No.1,2010に概説されている。使用例としては、例えばRAFT法の場合、特開2012−197399号公報において、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、重合触媒として、ジチオ安息香酸クミルが用いられている。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体の分岐度は1.0以上が好ましく、より好ましくは1.4以上であり、また10.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。分岐度が1.0よりも小さい場合には、重合体の分岐構造が十分ではなく、せん断安定性の改善が期待できない。なお、本発明における分岐度は、重合体1分子あたりの分岐点の数の平均に相当し、論理的には、例えば、分岐のない直鎖の重合体の分岐度は0となり、唯一の分岐点から3本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は1となり、4本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は2となり、5本のポリマー鎖が伸びている重合体の分岐度は3となる。
上述した重合体の粘度指数向上剤中の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲である限り特に限定されないが、本発明の粘度指数向上剤は上述した重合体を主成分として含むことが好ましい。粘度指数向上剤中の重合体の含有量は、粘度指数向上剤100質量部に対して、例えば50質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましい。
本発明の粘度指数向上剤に含まれる重合体のSP値(溶解度パラメーター)は、8.8以上が好ましく、8.9以上がより好ましく、9.0以上がさらに好ましく、また9.6以下が好ましく、9.5以下がより好ましく、9.4以下がさらに好ましい。基油のSP値は一般に8.0〜8.5程度の値を示すが、重合体のSP値が8.8以上であれば潤滑油組成物の粘度指数を高めやすくなり、重合体のSP値が9.6以下であれば粘度指数向上剤の基油への溶解性を確保しやすくなる。SP値は、公知の方法を用いて測定することができる。
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果とせん断安定性を高いレベルで両立できる。せん断安定性の具体的数値としては、PSSI(パーマネントシアスタビリティインデックス:ASTM D 6022)や分解開始温度が指標となる。
粘度指数向上剤のPSSIは、45以下であることが好ましく、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは38以下である。また、前記PSSIは、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、特に好ましくは5以上である。PSSIが0.1未満の場合には粘度指数向上効果が小さくコストが上昇するおそれがあり、PSSIが45を超える場合にはせん断安定性や貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。なお、本発明におけるPSSIは、後述の実施例に記載の方法にて測定した値である。
粘度指数向上剤の分解開始温度は、290℃以上であることが好ましく、295℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましく、310℃以上が特に好ましく、また500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、380℃以下が特に好ましい。粘度指数向上剤の分解開始温度が高くなることにより、耐熱性が向上し、熱分解安定性、せん断安定性が良好なものとなる。一方で過度に耐熱性を向上させた場合は、基油への溶解性が不足したり粘度指数が低下したりする傾向がある。
本発明の粘度指数向上剤は、上述した重合体を主成分として含み、好ましくは粘度指数向上剤100質量%中、重合体を70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、100質量%以下含有する。
〔2.粘度指数向上剤と基油を含有する組成物〕
本発明は、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。本発明の粘度指数向上剤は、潤滑油基油と配合して、潤滑油組成物とすることができる。潤滑油組成物は、それをさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いてもよく、あるいは、さらに潤滑油基油で希釈したものを潤滑油に用いてもよい。後者の場合、潤滑油組成物は原液として用いられ、以下これを「基油組成物」と称する場合がある。
潤滑油基油としては、公知の潤滑油基油を特に制限なく用いることができ、鉱油系基油や合成系基油を好適に挙げることができる。鉱油系基油としては、パラフィン系やナフテン系等の基油が挙げられる。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製、水素化分解または水素化異性化処理したものも含まれる。合成系基油としては、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコン系、フッ素系等の基油が挙げられる。潤滑油基油は、上述したように、粘度指数向上剤に含まれる重合体の重合反応溶媒として用いることもできる。
鉱油系基油の好ましい具体例としては、以下に示す基油(1)〜(7)を原料とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。また(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)または(9)が特に好ましい。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)〜(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)基油(1)〜(4)のいずれかの脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の混合油。
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油。
(9)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、又は、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油。
合成系基油としては、具体的には、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、なかでもポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。合成系基油の100℃における動粘度は、1〜20mm/秒であることが好ましい。
潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について、上述の処理を行うことにより得られる基油(8)または(9)が特に好ましい。また、米国石油協会(API)による分類に基づくグループIIIに属する基油を用いることも好ましい。潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上述の合成系基油を用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物においては、上記の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また他の基油の1種又は2種以上と併用してもよい。なお、潤滑油基油と他の基油とを併用して混合基油とする場合、当該混合基油は上記潤滑油基油(8)または(9)を少なくとも含むことが好ましい。混合基油中の上記潤滑油基油(8)または(9)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
潤滑油基油の粘度指数は、100以上であることが好ましく、120以上がより好ましく、また160以下が好ましい。粘度指数が上記の下限値未満であると、粘度−温度特性及び熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。また、粘度指数が上記の上限値を超えると、低温粘度特性が低下する傾向にある。なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283に準拠して測定された粘度指数を意味する。
潤滑油組成物の粘度指数は、200以上400以下であることが好ましく、230以上300以下であることがより好ましい。粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れる。
潤滑油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は特に限定されず、例えば、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%未満がさらに好ましい。なお、潤滑油組成物をさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いる場合は、潤滑油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。本発明の潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物中の本発明の粘度指数向上剤の含有量は、例えば5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%未満がさらに好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と潤滑油基油を必須成分として含有し、さらに任意の添加剤等を含有してもよい。潤滑油組成物は、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有することが好ましい。
流動点降下剤としては、潤滑油に用いられる任意の流動点降下剤が使用できる。流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン−塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール−塩素化パラフィン縮合生成物などが挙げられる。これらの中ではポリメタクリレート類の添加が好ましい。
摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。摩耗防止剤(又は極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤の添加が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
金属系清浄分散剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、及びアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩又は塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、特にカルシウムが好ましい。
無灰清浄分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰清浄分散剤が使用できる。無灰清浄分散剤としては、例えば、炭素数40〜400の直鎖もしくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤としては、具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、又はイミダゾール系化合物等が挙げられる。
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、たとえばアルキルアミンアフコシキアルコール等など様々である。
潤滑油組成物が、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤及び摩擦調整剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.0001質量%以上0.01質量%以下である。なお、潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物は実質的に粘度指数向上剤と潤滑油基油からなるものであってもよく、この場合、基油組成物中の粘度指数向上剤と潤滑油基油の合計含有量は、基油組成物の全量を基準として、例えば98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましい。
潤滑油組成物は、上記の成分に加えて、本発明の重合体以外の粘度指数向上剤、さび止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤等をさらに含有することができる。
本発明の重合体以外の粘度指数向上剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度指数向上剤であり、例として非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度指数向上剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度指数向上剤及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤であることが好ましく、非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度指数向上剤であることがより好ましい。その他に、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体及びポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は、特に断りのない場合、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
また、実施例では、便宜上、化合物について下記の略称を用いる。
DAMC16Br:メタアクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムブロマイド(製造例1で合成した単量体)
DAMC16BPh4:メタアクリロイルオキシエチルセチルジメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(製造例2で合成した単量体)
MMA:メチルメタクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
SLMA:ラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート=54/46(質量比)の混合物
(1)分析方法
(重合率)
本発明の各単量体成分の重合率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC−2010plus)を用いて求めた。
測定条件は以下の通りである。
−カラム:GLサイエンス製 Inert Cap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
−温度:40℃(5分保持)+40℃〜170℃(10℃/分)+170℃〜210℃(5℃/分)+210℃〜330℃(15℃/分)+330℃(20分保持)
−気化室温度:200℃
−検出器温度:350℃(FID)
−キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.33ml/分)
−注入量:0.5μl(スプリット法、スプリット比:30.0)
−内部標準試料:トリデカン
−希釈溶剤:p−キシレン
各単量体とトリデカンをp−キシレンに溶解させた検量線溶液を作成し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合溶液とトリデカンをp−キシレンに溶解させたサンプル溶液を作成し同様に測定した。内部標準法により、各単量体成分の重合率を求めた。
(重量平均分子量および数平均分子量)
重合体の重量平均分子量と数平均分子量の測定は、下記の条件にて行った。
−装置:東ソー社製GPCシステム HLC−8320GPC ECOSEC
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン
−展開溶媒の流量:1.0ml/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μl
(粘度指数)
100℃における動粘度が7.0mm/秒となるように、基油(SKルブリカンツ製:YUBASE4 粘度指数:130)に重合体を希釈し、JIS K2283の方法で測定した。粘度指数が254以上の場合を○、254未満の場合を×とした。
(せん断安定性)
100℃における動粘度が7.0mm/秒となるように、基油(SKルブリカンツ製:YUBASE4 粘度指数:130)に重合体を希釈し、以下の条件で超音波を照射した。
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UP400S
設定:Amplitude=70%、Cycle=1
時間:10分
温度:100℃
せん断前後および基油の100℃における動粘度を測定し、SSI={1−(せん断後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断前の動粘度−基油の動粘度)}×100の式で計算される値が、45未満である場合を○、45以上である場合を×とした。
(2)重合体の基油溶液の製造例
(製造例1)DAMC16Brの合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管、ガス導入管、および滴下ロートを備えた反応容器にジメチルアミノエチルメタクリレート88質量部、アセトン325質量部、重合禁止剤としてメトキノン0.35質量部を加え攪拌し、均一に溶解させた。続いて、冷却管温度を0℃および上記溶液を35℃に保持し混合ガス(酸素7%、窒素93%)を6mL/分の速度で流しながら、1−ブロモヘキサデカンを15分かけて滴下し、引き続き50時間攪拌した。反応液を室温に冷却し、反応液中の白色固体をろ過により分離した後、酢酸エチルで洗浄した。洗浄後の白色固体を真空下室温で乾燥させることで、175質量部の下記式(9)で示されるDAMC16Brを得た(収率68%)。DAMC16Brの同定はH−NMRにて行った。CDCl(基準物質:テトラメチルシラン)を溶媒としたH−NMR測定の結果を図1に示す。図1に示すNMRプロファイルにおける化学シフト0.8−0.9ppmのピークは(k)に、1.2−1.4ppmのピークは(i)および(j)に、1.7−1.8ppmのピークは(h)に、2.0ppmのピークは(c)に、3.5ppmのピークは(f)に、3.6ppmのピークは(g)に、4.1−4.2ppmのピークは(e)に、4.5−4.7ppmのピークは(d)に、5.7ppmのピークは(a)に、6.1ppmのピークは(b)の水素に、それぞれ対応している。
Figure 2017106016
(製造例2)DAMC16BPh4の合成
攪拌装置を備えた1Lフラスコに、ナトリウムテトラフェニルボレート15.4質量部、合成例1で得たDAMC16Br20.0質量部、メタノール400質量部を加えた後、イオン交換水100質量部を加え、室温で24時間攪拌した。続いて塩化メチレン300質量部を加えさらに室温で1時間攪拌した後に静置し2層に分離させた。下層の溶液を回収し溶媒を除去後、得られた白色固体を冷メタノールで洗浄し真空下室温で乾燥させることで、23.0質量部の下記式(10)で示されるDAMC16BPh4を得た(収率76%)。DAMC16BPh4の同定はH−NMRにて行った。CDCl(基準物質:テトラメチルシラン)を溶媒としたH−NMR測定の結果を図2に示す。図2に示すNMRプロファイルにおける化学シフト0.8−0.9ppmのピークは(k)に、0.9−1.0ppmのピークは(j)に、1.1−1.4ppmのピークは(i)、(h)および(f)に、1.4−1.5ppmのピークは(g)に、1.7−1.8ppmのピークは(e)に、1.9ppmのピークは(c)に、3.5ppmのピークは(d)に、5.7ppmのピークは(a)に、6.0ppmのピークは(b)に、6.8−6.9ppm、6.9−7.1ppm、および7.4−7.6ppmのピークはテトラフェニルボレートのフェニル基の水素に、それぞれ対応している。
Figure 2017106016
(実施例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA30質量部、SMA30質量部、DAMC16Br0.5質量部、SLMA39.5質量部、トルエン53.33質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ内容物を105℃まで昇温させた。重合開始剤として0.0258質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)とトルエン0.46質量部を混合した溶液を添加するとともに、前記重合開始剤0.103質量部をトルエン10.3質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
続いて、冷却管を冷却管および溜出液受器につなげたトの字管に取替え、基油(SKルブリカンツ製:YUBASE4 粘度指数130)233質量部を反応容器に投入した。バス温を150℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて徐々に減圧し、トルエンを除去した。内温が142℃に到達してから30分後に解圧・冷却し、重合体1の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、DAMC16BrをDAMC16BPh4に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合体2の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA30質量部、SMA30質量部、SLMA40質量部、トルエン53.33質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ内容物を105℃まで昇温させた。重合開始剤として0.0258質量部のt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)とトルエン0.46質量部を混合した溶液を添加するとともに、前記重合開始剤0.103質量部をトルエン10.3質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに4時間の熟成を行った。
続いて、冷却管を冷却管および溜出液受器につなげたトの字管に取替え、基油(SKルブリカンツ製:YUBASE4 粘度指数130)233質量部を反応容器に投入した。バス温を150℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて徐々に減圧し、トルエンを除去した。内温が142℃に到達してから30分後に解圧・冷却し、重合体3の基油溶液(重合体濃度30質量%)を得た。結果を表1に示す。
Figure 2017106016
(A)成分由来の単位を有する重合体を用いることによって、良好なせん断安定性を維持しながら高い粘度指数を示す粘度指数向上剤が得られた。
本発明の重合体を含有する粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来の潤滑油組成物に比べて、良好なせん断安定性を維持しながら高い粘度指数を示すことから、今後の自動車の省燃費性およびロングライフ性の要求に対応できるため、駆動系潤滑油、作動油、エンジン油に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 窒素原子またはリン原子上に炭素数13〜40の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩構造または4級ホスホニウム塩構造含有ビニル単量体(以下、「(A)成分」と称する)由来の単位を有する重合体を含有する粘度指数向上剤。
  2. 前記重合体100質量%に対し、(A)成分由来の単位が0.1質量%以上5質量%以下である重合体を含有する請求項1記載の粘度指数向上剤。
  3. (A)成分由来の単位に加え、炭素数1〜5の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(B)成分」と称する)由来の単位と、炭素数6〜40の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(以下、「(C)成分」と称する)由来の単位を有する重合体を含有する請求項1または2記載の粘度指数向上剤。
  4. 前記重合体100質量%に対し、(B)成分由来の単位が15質量%以上49.9質量%以下であり、(C)成分由来の単位が50質量%以上80質量%以下である請求項1〜3いずれか記載の粘度指数向上剤。
  5. 潤滑油基油と、請求項1〜4いずれかに記載の粘度指数向上剤を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
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CN116731057A (zh) * 2023-06-15 2023-09-12 哈尔滨工业大学 一种疏水性复合聚电解质的制备方法及其在制备吸油性凝胶的中的应用
WO2024005185A1 (ja) * 2022-06-30 2024-01-04 出光興産株式会社 潤滑油用添加剤組成物及び潤滑油組成物

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