JP2020132698A - 粘度指数向上剤および潤滑油組成物 - Google Patents

粘度指数向上剤および潤滑油組成物 Download PDF

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和成 安村
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洋平 今泉
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Keiko Izumi
啓子 泉
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Abstract

【課題】マクロモノマー由来の単位を有する重合体を含有し、せん断安定性に優れた粘度指数向上剤を提供する。【解決手段】マクロモノマー由来の構成単位(A)を有し、分子量分布(Mw/Mn)が2.30未満である重合体を含有する粘度指数向上剤。【選択図】なし

Description

本発明は、粘度指数向上剤とこれを含有する潤滑油組成物に関する。
近年、内燃機関用潤滑油は省燃費特性の向上が強く求められており、1つの手段として潤滑油の低粘度化による摩擦損失の低減が挙げられている。しかし、単なる低粘度化では液漏れや焼き付きという問題が生じるため、高温での粘度を高く保持しながら低温での粘度を低く抑える効果を有する粘度指数向上剤の添加が有効となる。粘度指数向上剤を潤滑油に添加することにより、潤滑油の温度による粘度変化が低減され、高温での潤滑性を確保しつつ低温での省燃費特性を向上させることができる。
粘度指数向上剤としては重合体を含有するものが知られており、中でも(メタ)アクリレート系重合体からなる粘度指数向上剤は、高い粘度指数向上効果を示すとされている。一方、(メタ)アクリレート系重合体からなる粘度指数向上剤はせん断安定性が悪いため、長期使用時に省燃費特性が低下する(ロングライフ性が悪い)という問題があった。そこで、粘度指数向上効果とせん断安定性を両立させる手段として、例えば特許文献1〜3には、マクロモノマーを単量体成分として用いたくし形構造を有する重合体からなる粘度指数向上剤が開示されている。
特開2013−133460号公報 特表2012−520358号公報 特表2010−532805号公報
くし形構造を有する重合体を粘度指数向上剤に用いることにより、粘度指数向上効果とせん断安定性を両立させることが可能となるが、よりロングライフ性に優れた粘度指数向上剤とする観点からは、さらなるせん断安定性の向上が望まれる。本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マクロモノマー由来の単位を有する重合体を含有し、せん断安定性に優れた粘度指数向上剤、およびこの粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物を提供することである。
本発明は、以下の発明を含む。
[1]マクロモノマー由来の構成単位(A)を有し、分子量分布(Mw/Mn)が2.30未満である重合体を含有することを特徴とする粘度指数向上剤。
[2]前記重合体の米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)中の100℃における固有粘度[η]100が0.05dL/g以上0.15dL/g以下である[1]に記載の粘度指数向上剤。
[3]前記重合体の重量平均分子量(Mw)が20万以上70万以下である[1]または[2]に記載の粘度指数向上剤。
[4]前記重合体が、マレイミド系単量体由来の構成単位(B)を有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
[5]前記重合体が、アルキル基の炭素数が2〜6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C)を有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
[6]前記構成単位(C)として、直鎖状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C1)および分岐状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C2)を有する[5]に記載の粘度指数向上剤。
[7]前記重合体が、アルキル基の炭素数が7〜40であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(D)を有する[1]〜[6]のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
[8]潤滑油基油と、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
本発明の粘度指数向上剤は、せん断安定性に優れ、高せん断条件下での粘度を長期にわたり確保しやすくなる。
〔1.粘度指数向上剤〕
本発明の粘度指数向上剤は、マクロモノマー由来の構成単位(A)を有し、分子量分布(Mw/Mn)が2.30未満である重合体を含有するものである。マクロモノマー由来の構成単位を有する重合体は、マクロモノマー1つ当たりの分子量が大きいため、当該重合体に含まれるマクロモノマー由来の単位の数が1つ異なるだけで、重合体の分子量が大きく変わる。そのため、マクロモノマー由来の構成単位を有する重合体は、その分子量分布、すなわち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが大きくなる傾向となる。本発明者らが、マクロモノマー由来の構成単位を有する重合体を含有する粘度指数向上剤について、当該重合体の分子量分布が粘度指数向上剤の性能に与える影響について検討したところ、同じような重量平均分子量であっても、分子量分布(Mw/Mn)が小さいほど、粘度指数向上剤のせん断安定性が向上することが明らかになった。そのため、本発明の粘度指数向上剤は、高せん断条件下での粘度を長期にわたり確保しやすくなり、ロングライフ性に優れるものとなる。以下、本発明の粘度指数向上剤について詳しく説明する。
マクロモノマー由来の構成単位(A)は、マクロモノマーを重合させることにより重合体に導入することができる構成単位である。マクロモノマーとしては、重合性官能基を有する高分子であれば特に限定なく用いることができる。重合体がマクロモノマー由来の構成単位(A)を有していれば、重合体の基油溶解性が高まり、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数を高めることが容易になる。また、粘度指数向上剤の基油溶液の常温での流動性も高めやすくなる。さらに、重合体の重量平均分子量を高めつつ、当該重合体のせん断安定性を高めることが容易になる。
マクロモノマーは、重合体の基油溶解性を高める観点から、炭素数50以上の炭化水素基を有することが好ましく、当該炭素数は70以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、150以上がさらにより好ましい。マクロモノマーの有する炭化水素基の炭素数の上限は特に限定されないが、例えば3,500以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。
マクロモノマーの有する炭化水素基は、炭化水素単量体由来の繰り返し構造またはその水素化物を含むことが好ましく、当該炭化水素単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等のモノオレフィン類;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン(別名ジイソブテン)等のアルカジエン類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。中でも炭化水素単量体としては、モノオレフィン類、アルカジエン類などが好ましく、従って、マクロモノマーの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、炭化水素単量体がアルカジエン類である場合、アルカジエン類由来の繰り返し構造には不飽和結合が含まれうるが、その場合は当該不飽和結合が水素化(水素添加)されていてもよい。これらモノオレフィン類およびアルカジエン類の炭素数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
マクロモノマーの脂肪族炭化水素基は、直鎖状または分岐状が好ましく、粘度指数向上剤の低温時の結晶化を抑制し増粘を防ぐ点から、分岐状であることが好ましい。分岐状のマクロモノマーの炭化水素基は、分岐状のアルキレン基を繰り返し単位として含むことが好ましく、分岐状のアルキレン基と直鎖状のアルキレン基の両方を繰り返し単位として含むのが好ましい。分岐状アルキレン基としては、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,2−ヘキシレン基等が挙げられる。直鎖状アルキレン基としては、エチレン、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基等が挙げられる。マクロモノマーの脂肪族炭化水素基は不飽和結合を含まないことが好ましく、従って、脂肪族飽和炭化水素基であることが特に好ましい。
マクロモノマー由来の構成単位(A)としては、マクロモノマーの製造容易性や入手容易性、また他の単量体成分と共重合させることが容易な点から、下記式(1)で表されるものが好ましい。下記式(1)において、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、X1は単結合、アルキレン基、−O−、−CO−、−NH−、−SO2−またはこれらを組み合わせた連結基を表し、R2は炭化水素基を表す。
Figure 2020132698
式(1)のR1の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。R1のアルキル基の炭素数は1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。中でも、R1は水素原子またはメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。これにより、マクロモノマーを重合させる際の重合性を高めることができ、また粘度指数向上剤の基油溶液の溶解性を高めたり、常温での流動性を高めやすくなる、
式(1)のX1が単結合である場合、R2の炭化水素基は式(1)のエステル基に直接結合し、式(1)のX1が連結基である場合、R2の炭化水素基は連結基を介して式(1)のエステル基に結合するものとなる。X1の連結基にアルキレン基が含まれる場合、当該アルキレン基は直鎖状または分岐状であることが好ましく、その炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。X1の連結基には、ウレタン結合(−NH−CO−O−)、ウレア結合(−NH−CO−NH−)、エステル結合(−CO−O−)、アミド結合(−NH−CO−)、スルホン酸エステル結合(−SO2−O−)、およびスルホンアミド結合(−SO2−NH−)等が含まれていてもよく、これらの各結合の方向は特に限定されない。ウレタン結合を例にとると、式(1)中、ウレタン結合は、窒素原子が(メタ)アクリロキシ基由来の構造のエステル基側に位置していてもよく、酸素原子が当該エステル基側に位置してもよい。X1としては、粘度指数向上剤の基油溶液の室温付近での粘度が低下し、ハンドリング性が向上する点から、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合およびアミド結合から選ばれる1種または2種以上が含まれることが好ましい。
式(1)のR2の炭化水素基は、上記のマクロモノマーの炭化水素基の説明が参照される。例えば、R2の炭化水素基は炭素数50以上であることが好ましく、また、炭化水素単量体由来の繰り返し構造またはその水素化物を含むことが好ましく、脂肪族炭化水素基がより好ましい。
単位(A)のR2の炭化水素基の数平均分子量は、基油溶解性、粘度指数、せん断安定性の観点から、750以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましく、2,000以上がさらにより好ましく、また50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい。また、R4の炭化水素基(特に脂肪族炭化水素基)の炭素数が50以上であることが好ましく、70以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、150以上がさらにより好ましく、また3,500以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。
重合体には、マクロモノマー由来の構成単位(A)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の単位(A)の含有量は、重合体100質量%中、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、また30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい。これにより、粘度指数向上剤による粘度指数向上効果を高めたり、せん断安定性を高めることが容易になる。
重合体は、重量平均分子量(Mw)が20万以上であることが好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上がさらに好ましい。重合体の重量平均分子量が小さい場合は、これを添加した潤滑油、すなわち粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数が低下しやすくなるため、所望の粘度に調整するために粘度指数向上剤の使用量が増え、コスト面で不利となる。また、高温高せん断時の粘度が一定以上となるように粘度指数向上剤を潤滑油に添加したときに、低温時の粘度が高くなりやすくなる。一方、重合体の重量平均分子量が過度に大きい場合は、重合体の基油溶解性が低下したり、粘度指数向上剤のせん断安定性が低下しやすくなることから、重合体の重量平均分子量は70万以下が好ましく、60万以下がより好ましく、50万以下がさらに好ましい。特に、分子量分布(Mw/Mn)が小さい重合体を得ることが容易な点から、重合体の重量平均分子量は45万以下がさらにより好ましい。
重合体の数平均分子量(Mn)は10万以上が好ましく、12万以上がより好ましく、13万以上がさらに好ましく、また30万以下が好ましく、25万以下がより好ましく、22万以下がさらに好ましく、20万以下がさらにより好ましい。
粘度指数向上剤に含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.30未満である。このように分子量分布(Mw/Mn)が小さい重合体を粘度指数向上剤に用いることで、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上させることができる。例えば内燃機関用の潤滑油は、シリンダとシリンダヘッドの間で高いせん断力がかかるような状況で使用されるが、本発明の粘度指数向上剤はそのような高せん断条件下でも潤滑油の粘度を長期にわたり確保しやすくなる。重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.25以下が好ましく、2.20以下がより好ましく、2.15以下がさらに好ましい。一方、ラジカル重合による重合体の製造が容易な点から、分子量分布(Mw/Mn)は1.50以上が好ましく、1.70以上がより好ましく、1.90以上がさらに好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により求める。
なお従来は、マクロモノマー由来の構成単位を有し、分子量分布(Mw/Mn)の小さい重合体であって、粘度指数向上剤に実用上適用可能な重合体を、ラジカル重合により得ることは難しかった。例えば重量平均分子量(Mw)を小さくすれば、分子量分布(Mw/Mn)が小さくなる傾向を示すが、一般に重合体の分子量が低いほど粘度指数向上効果が低くなるため、粘度指数向上剤としての性能が低下する。また、低分子量の重合体からなる粘度指数向上剤は、その基油溶液を所定の粘度に調整する際、粘度指数向上剤の使用量が増え、コスト面で不利となりやすい。本発明では、マクロモノマー由来の単位(A)を有する重合体を重合形成する際に、重合開始剤としてアゾ系の開始剤を使用し、かつ開始剤を初期に一括添加して、モノマーに対する重合後半のラジカル残量を少なくすることで、分子量分布(Mw/Mn)の小さい重合体を製造することが可能となる。また、そのようにして得られた重合体は、分子量分布(Mw/Mn)を抑えつつ重量平均分子量(Mw)を大きくすることができ、粘度指数向上剤としたときに、せん断安定性に優れ、良好な粘度指数向上効果を示すものとなる。
粘度指数向上剤は、せん断安定性の指標であるSSIが30以下であることが好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、これにより粘度指数向上剤のせん断安定性や貯蔵安定性が向上する。粘度指数向上剤のSSIの下限値は特に限定されないが、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、さらにより好ましくは5以上である。SSIが0.1未満の場合には、粘度指数向上剤の粘度指数向上効果が低下しやすくなる。SSIは、100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように粘度指数向上剤(重合体)を基油で希釈し、超音波ホモジナイザーによるせん断処理前後の動粘度と基油の100℃における動粘度を測定し、次式により求める:SSI={1−(せん断処理後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断処理前の動粘度−基油の動粘度)}×100。
粘度指数向上剤は、100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように粘度指数向上剤(重合体)を基油で希釈したときの粘度指数が、230以上であることが好ましく、250以上がより好ましく、265以上がさらに好ましく、また350以下であることが好ましく、330以下がより好ましく、310以下がさらに好ましい。粘度指数向上剤の粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れるものとなる。粘度指数は、JIS K 2283(2000)の方法に準拠して測定する。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、マレイミド系単量体由来の構成単位(B)を有することが好ましい。この場合、マレイミド系単量体に由来して、重合体の主鎖にスクシンイミド環構造が導入される。このように重合体の主鎖に環構造が導入されることにより、重合体の基油溶解性を確保しつつ、粘度指数向上剤のせん断安定性や耐熱性を高めることができる。そのため、粘度指数向上剤を潤滑油に添加した際に、高温高せん断時の粘度が長期にわたり確保されやすくなる。さらには潤滑油組成物としたときに、スラッジ等の清浄分散性の向上や金属表面の摩耗抑制等の効果が期待される。単位(B)は、N位に置換基を有していてもよいマレイミドを、上記に説明したマクロモノマー等と共重合させることにより、重合体に導入することができる。
単位(B)としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。式(2)中、R3およびR4はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、R5は水素原子または炭素数が1〜40の有機基を表す。
Figure 2020132698
式(2)のR3およびR4のアルキル基は、炭素数1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。R3およびR4としては、水素原子、メチル基またはエチル基がより好ましく、水素原子またはメチル基がさらに好ましい。
式(2)のR5の有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキル基に含まれる−CH2−の一部が−O−に置き換えられた基等が挙げられ、これらの基には、水酸基、ハロゲン基、ニトロ基、アルキル基(アリール基、アラルキル基の場合)、アルコキシ基、カルボキシ基等の置換基が結合していてもよい。R5の有機基は、粘度指数向上剤の基油溶解性を高める点から、炭素数1〜24が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。
5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。R5のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。R5のアラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。R5のアルキル基に含まれる−CH2−の一部が−O−に置き換えられた基としては、ポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。例えばR5がアリール基であれば、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上させることが容易になり、R5がシクロアルキル基であれば、粘度指数向上剤の粘度指数を向上させることが容易になる。
マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−2−デシルテトラデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシルエチルマレイミド、N−ヒドロキシルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−ニトロフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、マレイミド系単量体の入手容易性や、粘度指数向上剤の基油溶解性を高めることが容易な点から、マレイミド系単量体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドが好ましい。従って、式(2)において、R3とR4は水素原子であることが好ましく、R5はフェニル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基、ベンジル基、ラウリル基またはステアリル基であることが好ましい。
重合体には、マレイミド系単量体由来の構成単位(B)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体が単位(B)を有する場合、重合体中の単位(B)の含有量は、重合体100質量%中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。これにより、重合体に単位(B)を含ませることの効果が奏効されやすくなる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が2〜6である構成単位(C)を有することが好ましい。重合体が構成単位(C)を有していれば、粘度指数向上剤の基油溶液の常温での流動性を高めやすくなる。また、例えば単位(C)の代わりにメチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を重合体に導入する場合と比べて、粘度指数向上剤の基油溶液を高濃度とした際にも低粘度となりやすく、ハンドリング性の点で有利なものとなり、さらに粘度指数が大きくなる傾向を示す。
単位(C)としては、下記式(3)で表されるものが好ましい。式(3)中、R6は水素原子またはメチル基を表し、R7は炭素数2〜6のアルキル基を表す。
Figure 2020132698
式(3)のR7の炭素数2〜6のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基や、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基が挙げられる。R7のアルキル基は、好ましくは直鎖状または分岐状であり、その炭素数は5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が2〜6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体が単位(C)を有する場合、単位(C)の含有量は、重合体100質量%中、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上がさらにより好ましい。このような含有量で重合体中に単位(C)が含まれていれば、粘度指数向上剤の耐熱性を高めやすくなり、粘度指数向上剤のせん断安定性が向上する。また、重合体を形成する際の重合性を高めやすくなる。一方、重合体中の単位(C)の含有量は、重合体100質量%中、75質量%以下が好ましく、72質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、68質量%以下がさらにより好ましく、これにより重合体の基油溶解性を確保しやすくなる。
重合体中の単位(A)と単位(C)の合計含有量は、粘度指数向上剤の粘度指数とせん断安定性を高める点から、重合体100質量%中、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらにより好ましい。また、重合体の基油溶解性を高める点から、単位(A)と単位(C)の合計含有量は、重合体100質量%中、85質量%以下が好ましく、82質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、77質量%以下がさらにより好ましい。
重合体は、前記構成単位(C)として、直鎖状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C1)と分岐状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C2)を有することが好ましい。この場合、構成単位(C1)を与える直鎖状アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は2〜6となり、構成単位(C2)を与える分岐状アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は3〜6となる。重合体が構成単位(C1)と構成単位(C2)を有していれば、粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数をより効果的に高めることができるとともに、粘度指数向上剤の基油溶液の常温での流動性を高めやすくなる。
単位(C1)を与える直鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレートの有するアルキル基が直鎖状であり、当該アルキル基の炭素数が2〜6のものであれば特に限定されず、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単位(C1)は、下記式(4)で表される単位であることが好ましい。式(4)中、R8は水素原子またはメチル基を表し、R9は炭素数2〜6の直鎖状アルキル基を表す。
Figure 2020132698
式(4)のR9の炭素数2〜6の直鎖状アルキル基としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。R9の直鎖状アルキル基の炭素数は5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。特に、単位(C)を与える直鎖状アルキル(メタ)アクリレートの入手容易性や、粘度指数向上剤の室温付近での流動性に優れる点から、R9のアルキル基はn−ブチル基であることが好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が2〜6である直鎖状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C1)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体が単位(C1)を有する場合、重合体中の単位(C1)の含有量は、重合体100質量%中、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がさらにより好ましい。
単位(C2)を与える分岐状アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレートの有するアルキル基が分岐状であり、当該アルキル基の炭素数が3〜6のものであれば特に限定されず、例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、sec−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルプロピル(メタ)アクリレート、1,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、sec−ヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、1,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、1−エチル−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単位(C2)は、下記式(5)で表される単位であることが好ましい。式(5)中、R10は水素原子またはメチル基を表し、R11は炭素数3〜6の分岐状アルキル基を表す。
Figure 2020132698
式(5)のR11の炭素数3〜6の分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。R11の分岐状アルキル基の炭素数は5以下が好ましく、4以下がさらに好ましい。中でも、単位(C2)を与える分岐状アルキル(メタ)アクリレートの入手容易性や、粘度指数向上効果に優れる点から、R11のアルキル基はイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が好ましく、イソブチル基がより好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が3〜6である分岐状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C2)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の単位(C2)の含有量は、重合体100質量%中、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましい。これにより、粘度指数向上剤がより高い粘度指数を示すものとなる。一方、重合体中の単位(C2)の含有量は、重合体100質量%中、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下がさらにより好ましい。これにより粘度指数向上剤の基油溶液の粘度が下がり、常温での流動性を高めることができる。そのため、ハンドリング性に優れた粘度指数向上剤とすることができる。
重合体が単位(C1)と単位(C2)を有する場合、重合体中の単位(C1)と単位(C2)の含有比(質量基準)は、単位(C1)/単位(C2)として、20/80以上が好ましく、25/75以上がより好ましく、30/70以上がさらに好ましく、また90/10以下が好ましく、85/15以下がより好ましく、80/20以下がさらに好ましい。このような含有比で重合体が単位(C1)と単位(C2)を有していれば、粘度指数向上剤の基油溶液の室温付近での粘度が低下しやすくなり、ハンドリング性が向上する。
重合体中の単位(A)と(C2)の含有比(質量基準)は、単位(A)/単位(C2)として、10/90以上が好ましく、15/85以上がより好ましく、20/80以上がさらに好ましく、また70/30以下が好ましく、50/50以下がより好ましい。単位(A)と単位(C2)はともに粘度指数を高めるように作用するが、比較的低価格の単量体から形成可能な単位(C2)の含有比を増やすことで、粘度指数向上剤のコスト低減効果が期待できる。また、このように重合体中の単位(A)と単位(C2)の含有比を定めることにより、粘度指数向上剤の基油溶液の常温での流動性を確保しつつ、せん断安定性を高めることが容易になる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、アルキル(メタ)アクリレート由来であって該アルキル基の炭素数が7〜40である構成単位(D)を有することが好ましい。重合体に構成単位(D)が含まれることにより、重合体の基油溶解性を高めやすくなる。
単位(D)としては、下記式(6)で表されるものが好ましい。式(6)中、R12は水素原子またはメチル基を表し、R13は炭素数7〜40のアルキル基を表す。
Figure 2020132698
式(6)のR13の炭素数7〜40のアルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基や、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。R13のアルキル基は、好ましくは直鎖状または分岐状であり、より好ましくは直鎖状である。また、その炭素数は9以上が好ましく、11以上がより好ましく、また35以下が好ましく、30以下がより好ましい。
重合体には、アルキル基の炭素数が7〜40であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(D)が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体が単位(D)を有する場合、重合体中の単位(D)の含有量は、重合体100質量%中、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、また40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。このような含有量で重合体中に単位(D)が含まれていれば、重合体の基油溶解性を高めやすくなる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、上記に説明した単位(A)〜(D)以外の単量体由来の構成単位(以下、「単位(E)」と称する)を有していてもよい。単位(A)〜(D)は、それぞれ対応するマクロモノマー、マレイミド系単量体、アルキル(メタ)アクリレートをラジカル共重合することにより、重合体の構成単位として導入することができることから、単位(E)もラジカル重合性単量体由来の単位であることが好ましい。単位(E)を形成するラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性基を分子内に1個有する単官能単量体と、ラジカル重合性基を分子内に2個以上有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体の例としては、単位(C)や単位(D)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート、不飽和モノまたはジカルボン酸エステル、不飽和カルボン酸類、ビニル芳香族化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン類、シアン化ビニル、N−ビニル化合物等が挙げられる。これらの単官能単量体に由来して形成される単位(E)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
単位(C)や単位(D)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルフォリノアルキレン(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和モノまたはジカルボン酸エステルとしては、例えば、ブチルクロトネート、オクチルクロトネート、ジブチルマレエート、ジラウリルマレエート、ジオクチルフマレート、ジステアリルフマレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、オクチル酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、ジイソブテン等が挙げられる。
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
N−ビニル化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
これらの単官能単量体のうち、単位(E)としては、単位(C)や単位(D)を形成するアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートやN−ビニル化合物が好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、N−ビニルピロリドンが特に好ましい。
単位(E)を形成する多官能単量体の例としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。これらの多官能単量体に由来して形成される単位(E)は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシル等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレートとしては、例えば、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
重合体中の単位(E)の含有量は、重合体100質量%中、0質量%以上であればよい。重合体が単位(E)を有する場合、重合体中の単位(E)の含有量は、重合体100質量%中、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらにより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
なお、重合体にはスチレン系単量体由来の構成単位が多く含まれないことが好ましい。スチレン系単量体由来の構成単位の含有量が多くなると、重合体の基油溶解性が低下しやすくなるとともに、粘度指数向上剤による粘度指数向上効果が低下しやすくなるからである。従って、重合体100質量%中、スチレン系単量体由来の構成単位の含有量は3質量%未満であることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。スチレン系単量体には、スチレンのみならず、スチレンのベンゼン環やビニル基に置換基が結合したものも含まれ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレンが含まれる。
また、ビニルエーテル、オレフィン類などは(メタ)アクリレートとのラジカル共重合性が落ちるため、重合体の製造容易性の点から、重合体にはこれらに由来する構成単位が多く含まれないことが好ましい。例えば、これらの単量体由来の構成単位(E)の合計含有量は、重合体100質量%中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
重合体にはメチル(メタ)アクリレート由来の構成単位が過度に多く含まれないことが好ましい。これにより、高濃度の粘度指数向上剤の基油溶液であっても、低粘度となってハンドリング性が確保されやすくなり、また粘度指数を高めることが容易になる。例えば、重合体100質量部中、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は、重合体100質量%中、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。
重合体中の多官能単量体由来の構成単位(E)の含有量は、重合体100質量%中、0質量%以上5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。多官能単量体由来の構成単位(E)の含有量が上記範囲を超えると、重合時にゲル化が進行したり、当該重合体を含有する粘度指数向上剤の基油への溶解度が低下したりする場合がある。ただし、2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−デシルテトラデシルのように、環化しながら重合が進行する多官能単量体の場合は、重合体中の当該多官能単量体由来の構成単位の含有量は、重合体100質量%中、0質量%以上30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。この場合、主鎖に導入される環構造の効果により、粘度指数向上剤の耐熱性が向上するとともに、せん断安定性を改善することができる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、多官能連鎖移動剤や多官能重合開始剤由来の分岐単位を有していてもよい。重合体がこのような分岐単位を有していれば、重合体の基油溶解性を大きく損ねることなく、粘度指数向上剤のせん断安定性を改善することができる。
多官能連鎖移動剤としては3官能以上の多価メルカプタンを用いることが好ましく、そのような連鎖移動剤を用いて単量体成分をラジカル共重合させると、下記式(7)で表される分岐単位(連鎖移動剤残基)が重合体に導入される。下記式(7)において、L1はm価の有機残基を表し、mは0以上の数を表す。mは、好ましくは0〜5である。
Figure 2020132698
3官能以上の多価メルカプタンとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキスメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)など、水酸基を3個以上有する化合物とカルボキシル基含有メルカプタン類のポリエステル化合物、トリアジン多価チオール類、多価エポキシ化合物の複数のエポキシ基に硫化水素を付加させて1分子当たり3個以上のメルカプト基を導入してなる化合物、多価カルボン酸の複数のカルボキシル基とメルカプトエタノールをエステル化してなる1分子当たり3個以上のメルカプト基を有する化合物等が挙げられる。重合体中には、3官能以上の多官能連鎖移動剤由来の分岐単位が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
多官能重合開始剤としては3官能以上の過酸化物を用いることが好ましく、そのような多官能重合開始剤をラジカル重合開始剤として用いると、下記式(8)で表される分岐単位(開始剤残基)が重合体に導入される。下記式(8)において、L2はn価の有機残基を表し、nは0以上の数を表す。nは、好ましくは0〜5である。
Figure 2020132698
3官能以上の多官能開始剤としては、例えば、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの3官能以上の有機過酸化物等が挙げられる。重合体中には、3官能以上の多官能開始剤由来の分岐単位が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
重合体中の多官能連鎖移動剤および/または多官能開始剤由来の分岐単位の含有量(合計含有量)は、重合体100質量%中、0質量%以上であればよく、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、また3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。分岐単位の含有量をこのような範囲とすることで、重合体の分子量分布が狭くなり、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上できる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体のガラス転移温度(Tg)は、−50℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましく、−30℃以上がさらに好ましく、また0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下がさらに好ましい。重合体のTgがこのような範囲であれば、粘度指数向上剤を潤滑油に添加したときに、重合体の潤滑油(基油)への溶解性が確保され、高い粘度指数を維持したまま、室温付近での流動性を高めやすくなる。
重合体の熱分解開始温度(Td)は、275℃以上が好ましく、278℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。重合体のTdが275℃以上であれば、耐熱性が向上し、熱分解安定性やせん断安定性が良好なものとなる。そのため、これを潤滑油に添加して使用した場合に、高温高せん断条件下で所望の粘度を長期にわたり確保することが容易になる。重合体のTdの上限は特に限定されないが、過度に耐熱性を向上させた場合は、重合体の基油への溶解性が不足したり、粘度指数向上効果が低下したりする傾向があることから、500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下がさらに好ましく、380℃以下がさらにより好ましい。
重合体の主鎖SP値(主鎖の溶解度パラメータ)は、9.20以上が好ましく、9.22以上がより好ましく、9.25以上がさらに好ましく、また9.50以下が好ましく、9.45以下がより好ましく、9.40以下がさらに好ましい。基油のSP値は一般に8.0〜8.5程度の値を示すが、重合体の主鎖SP値が9.20以上であれば粘度指数向上剤の基油溶液の粘度指数を高めることが容易になり、主鎖SP値が9.50以下であれば重合体の基油溶解性を確保しやすくなる。
重合体の主鎖のSP値は、例えばアクセルリス社製のMaterials Studio(登録商標) Ver.6.1 MS−Synthiaモジュールを用いることにより計算することができる。MS−Synthiaモジュールは定量的構造物性相関(QSPR:Quantitave Structure Property Relationships)を用いて高分子の物性を計算するソフトウェアであり、グラフ理論から得られる結合性指数を用いてモノマー構造から高分子の物性を計算することができる。MS−Synthiaモジュールでは、モノマー構造を作成して繰り返し構造を定義した後、定義したモノマー構造を用いて高分子物性(溶解度パラメーター等)を計算する。詳細な理論は次の文献に記載されており、当該記載が本願に参考のため援用される:Jozef Bicerano, “Prediction of Polymer Properties (3rd Edition)”, Marcel Dekker社発刊。MS−Synthiaモジュールでは、Biceranoが改良したFedors法とvan Krevelen法を用いてSP値(溶解度パラメーター)を求めることができ、このうちFedors法を用いることが好ましい。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)78質量%と、前記重合体22質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVB−10、ローター:SPINDLE No.M3)にて25℃で測定したときの粘度が5000mPa・s以下となることが好ましい。なお、粘度測定の際のローターの回転数は6rpmを基本とし、測定値が測定可能上限値の1/10を下回る場合は、回転数を12rpm、30rpm、60rpmの順に上げ、上限値の1/10を超える粘度のうち最も6rpmに近い回転数での測定値から粘度を求める。重合体の基油溶液がこのような粘度を有していれば、粘度指数向上剤の室温付近での流動性が高まり、ハンドリング性が向上する。前記粘度は、3000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましく、1000mPa・s以下がさらにより好ましい。前記粘度の下限は特に限定されず、例えば1mPa・s以上であればよい。粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/sを有するグループIII基油は、SKルブリカンツ社製のYUBASE4を用いることができる。
なお、粘度指数向上剤中には、性能を大きく損なうことがない限り、重合体とともにその製造原料が一部含まれていてもよく、例えば重合反応で得られた重合体を特に精製することなく、あるいは高度に精製することなく、粘度指数向上剤を製造する場合は、粘度指数向上剤中に重合体原料(例えば、単量体成分、重合開始剤、連鎖移動剤等)が含まれうる。そのような場合は、上記の粘度測定で用いる重合体の基油溶液の重合体濃度は、重合体と当該重合体原料の合計濃度を、重合体濃度と見なすことができる。すなわち、重合体と当該重合体原料の合計22質量%とグループIII基油78質量%からなる溶液を、粘度測定に用いてもよい。重合体原料を含めた重合体濃度は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてサンプル中の基油の含有量を測定し、基油を除く成分濃度として求めることもできる。
粘度指数向上剤に含まれる重合体は、米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)中の100℃における固有粘度[η]100が0.05dL/g以上0.15dL/g以下であることが好ましい。固有粘度は重合体の溶液中での空間的な広がりを表す指標として用いられ、粘度指数向上剤においては、高温下で重合体がより広がることで、高温下での潤滑油の粘度低下を抑えることができる。一方、粘度指数向上剤は通常、最も油膜が薄くなる高温かつ高せん断時の粘度が所定値以上に維持されるように、潤滑油に配合され、特に内燃機関用潤滑油は、シリンダとシリンダヘッドの間で高いせん断力がかかる状況で使用される。このような高せん断条件下では、空間的に大きく広がった重合体ほどせん断による変形が大きくなるため、高温下での重合体の広がりの程度には最適範囲があると考えられる。このような観点から、粘度指数向上剤に含まれる重合体は、固有粘度[η]100が上記範囲となることが好ましい。これにより高温高せん断条件下での潤滑性を維持しつつ、低温での粘度をより低く抑えることが可能となる。具体的には、最も油膜が薄くなる高温高せん断時の粘度が一定値以上となるように粘度指数向上剤を潤滑油(基油)に添加したときに、低温高せん断時あるいは低温低せん断時の粘度をより低く抑えることが可能となる。そのため、粘度指数向上剤がこのような固有粘度を有していれば、内燃機関用潤滑油の使用環境、すなわち例えば温度150℃以下で、高せん断時と低せん断時の両方において、好適な粘度特性改善効果を示すものとなる。
100℃における固有粘度[η]100は、0.06dL/g以上がより好ましく、0.09dL/g以上がさらに好ましく、また0.14dL/g以下がより好ましく、0.13dL/g以下がさらに好ましい。80℃における固有粘度[η]80は、0.03dL/g以上が好ましく、0.04dL/g以上がより好ましく、0.05dL/g以上がさらに好ましく、また0.12dL/g以下が好ましく、0.11dL/g以下がより好ましく、0.09dL/g以下がさらに好ましい。60℃における固有粘度[η]60は、0.02dL/g以上が好ましく、0.03dL/g以上がより好ましく、0.04dL/g以上がさらに好ましく、また0.09dL/g以下が好ましく、0.08dL/g以下がより好ましく、0.07dL/g以下がさらに好ましい。40℃における固有粘度[η]40は、0.01dL/g以上が好ましく、0.02dL/g以上がより好ましく、また0.09dL/g以下が好ましく、0.07dL/g以下がより好ましく、0.05dL/g以下がさらに好ましい。粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/sを有するグループIII基油としては、SKルブリカンツ社製のYUBASE4を使用することができる。
重合体の固有粘度[η]は、温度が高くなるほど当該値が大きくなることが好ましく、また当該値の増加率が大きくなることが好ましい。例えば100℃における固有粘度[η]100、80℃における固有粘度[η]80、60℃における固有粘度[η]60、40℃における固有粘度[η]40をそれぞれ求めたとき、固有粘度比[η]100/[η]80が固有粘度比[η]80/[η]60と固有粘度比[η]60/[η]40よりも大きくなることが好ましく、固有粘度比[η]100/[η]80が固有粘度比[η]80/[η]60よりも大きく、かつ固有粘度比[η]80/[η]60が固有粘度比[η]60/[η]40よりも大きくなることがより好ましい。これにより、粘度指数向上剤の潤滑油への添加量を少なくしても、高温高せん断時の粘度を一定値以上に確保することが容易になる。その結果、低温高せん断時あるいは低温低せん断時の粘度をより低く抑えることが容易になる。
固有粘度比[η]100/[η]40は、2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましく、また6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、3.8以下がさらに好ましい。高温領域における固有粘度比[η]100/[η]80は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.4以上がさらに好ましく、また3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。また、中温領域から高温領域における固有粘度比[η]100/[η]60は、1.6以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、また4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。
粘度指数向上剤は、HTHS(高温高せん断)粘度が次のように定められることが好ましい。すなわち、150℃におけるUSV(Ultra Shear Viscometer)粘度が2.30mPa・sとなるように粘度指数向上剤(重合体)を基油で希釈したときに、100℃におけるUSV粘度が4.70mPa・s以下となることが好ましく、4.60mPa・s以下がより好ましく、4.55mPa・s以下がさらに好ましい。また同条件で、80℃におけるUSV粘度が8.00mPa・s以下となることが好ましく、7.50mPa・s以下がより好ましく、7.00mPa・s以下がさらに好ましい。HTHS粘度は、実際の潤滑油を想定してパッケージ添加剤が添加された粘度指数向上剤の基油溶液を対象に、高せん断条件下で測定を行うものである。これにより、内燃機関用潤滑油の使用環境により近い条件での粘度を把握することができる。100℃におけるUSV粘度または80℃におけるUSV粘度がこのような値であれば、内燃機関用潤滑油として使用した際に良好な省燃費性を示すものとなる。一方、100℃におけるUSV粘度と80℃におけるUSV粘度の下限は特に限定されないが、潤滑油組成物として使用したときの潤滑性を確保する点から、100℃におけるUSV粘度は3.00mPa・s以上が好ましい。80℃におけるUSV粘度は、例えば4.70mPa・s以上、5.50mPa・s以上、または6.00mPa・s以上であってもよい。
本発明の粘度指数向上剤は、上述した重合体を含み、さらに溶媒(特に基油)を含んでいてもよい。なお粘度指数向上剤は、上述した重合体が粘度指数向上剤の固形分の主成分を占めることが好ましく、例えば粘度指数向上剤の固形分100質量部中、上述した重合体の含有量が80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましい。なお、粘度指数向上剤の固形分とは、粘度指数向上剤の溶媒を除く成分を意味する。粘度指数向上剤は、固形分成分として、上述した重合体以外の重合体を含んでいてもよく、そのような重合体としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン水素化共重合体、これらのグラフトポリマーやくし形ポリマー、星形ポリマー等が挙げられる。
本発明の粘度指数向上剤は、マクロモノマーを含む単量体成分をラジカル重合する工程(重合工程)を有する製造方法により得ることができる。単量体成分としては、構成単位(A)を形成するマクロモノマー、構成単位(B)を形成するマレイミド系単量体、構成単位(C)や構成単位(D)を形成するアルキル(メタ)アクリレート、構成単位(E)を形成するラジカル重合性単量体等を用いることができる。構成単位(A)を形成するマクロモノマーは、市販のものを用いてもよいし、重合工程に先立ってマクロモノマー合成工程を設けることにより、マクロモノマーを合成してもよい。
重合工程における単量体成分の重合方法は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等いずれでもよく、特に限定されない。分散媒、乳化剤、分散剤等を使用する場合は、特に制限がなく公知のものが使用できる。中でも、重合反応の制御が容易であり、粘度指数向上剤を基油溶液として得ることが容易な点から、溶液重合により重合を行うことが好ましい。
重合に使用する溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、重合機構、使用する単量体の種類や量、重合開始剤や重合触媒の種類や量等の重合条件に応じて適宜設定すればよい。なお、重合体の溶解度を確保する観点、および重合後に基油への溶媒置換が容易である観点から、重合に使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランが好ましい。また、潤滑油基油も溶媒として好適に用いることができる。この場合、重合後の溶媒置換が不要となり、プロセスが簡略化されるため、より好ましい。これら溶媒は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量は特に制限はないが、単量体成分、重合開始剤、その他の成分の合計量の濃度が、全体の40質量%以上99質量%以下となる程度が好ましい。
重合の際には重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等の過酸化物等を用いることができる。また、上記に説明した多官能開始剤を用いることもできる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分子量分布の小さい重合体を得ることが容易な観点から、アゾ化合物を用いることが好ましい。また、同様の観点から、高温で分解しラジカルを発生する重合開始剤を用いることが好ましく、例えば重合開始剤の10時間半減期温度が、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。重合開始剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01〜3質量部とすることが好ましい。
重合工程では、重合開始剤を初期に実質的に一括添加することが好ましい。これにより、マクロモノマー由来の単位を有しながら、分子量分布の小さい重合体を得ることが容易になる。重合工程では、マクロモノマーを含む単量体成分の重合開始時に、使用する重合開始剤の90質量%以上を単量体成分と共存させておくことが好ましく、当該割合は95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、重合工程で用いる重合開始剤の全てを、マクロモノマーを含む単量体成分の重合開始時に、単量体成分と共存させることが特に好ましい。
重合工程では、連鎖移動剤等を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、分子量分布の小さい重合体を得やすくなる。また、解重合による熱分解も抑制しやすくなる。連鎖移動剤としては、ブタンチオール、オクタンチオール、オクタデカンチオール、ドデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ドデシルメルカプタン、エチレングリコールビスチオグリコレート等のメルカプタン;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。また、上記に説明した多官能連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01〜3質量部とすることが好ましい。
重合反応の温度は、重合溶媒の種類や重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また200℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。重合反応の時間は、重合反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1〜48時間(好ましくは3〜24時間)行えばよい。
マクロモノマー合成工程を行う場合は、上記に説明したマクロモノマーに含まれる炭化水素基を有するとともに、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、イソシアネート基、およびスルホ基から選ばれる官能基を有する化合物(以下、「マクロ化合物」と称する)と、前記官能基との反応性基と重合性二重結合を有する化合物(以下、「カウンター化合物」と称する)とを反応させて、マクロモノマーを合成することが好ましい。マクロ化合物とカウンター化合物とを付加反応または縮合反応させ、得られたマクロモノマーを他の単量体成分とともに重合工程で重合させることにより、重合体中にマクロ化合物に由来した炭化水素基が取り込まれる。
マクロ化合物の有する官能基としては、製造容易性や入手容易性の点から、水酸基、カルボキシ基、またはカルボン酸エステル基が好ましい。マクロ化合物はこのような官能基を1つのみ有していることが好ましく、より好ましくはマクロ化合物の末端部にそのような官能基を有する。
カウンター化合物の有する反応性基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、イソシアネート基、スルホ基、オキサゾリン基等が挙げられる。カウンター化合物はこのような反応性基を1つのみ有することが好ましい。カウンター化合物としては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2,2−ジメチル−2−イソシアナトエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;4−アミノスチレン、4−ビニルベンゼンスルホン酸等のスチレン類;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
マクロ化合物とカウンター化合物との反応は、イソシアネート基と水酸基とが反応するウレタン化反応、イソシアネート基とアミノ基が反応するウレア化反応、カルボキシ基と水酸基とが反応するエステル化反応、カルボキシ基とアミノ基とが反応するアミド化反応、スルホ基と水酸基とが反応するスルホン酸エステル化反応、スルホ基とアミノ基が反応するスルホンアミド化反応、水酸基とカルボキシ基のエステル化物とが反応するエステル交換反応、オキサゾリン基とカルボキシ基が反応するアミドエステル化反応等が挙げられる。これらの中でも、ウレタン化反応、ウレア化反応、エステル化反応、エステル交換反応、またはアミド化反応が好ましく、反応性に優れる点から、ウレタン化反応が特に好ましい。
マクロモノマー合成工程では、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を、金属触媒の存在下で行うことが好ましい。これによりマクロ化合物とカウンター化合物とからマクロモノマーを効率的に製造することが可能となり、反応時間の短縮化を図ることができる。さらに後段の重合工程において、反応液中に金属触媒由来の金属が残存していても、マクロモノマーを含む単量体成分の重合反応を好適に行うことができる。
金属触媒は、マクロ化合物とカウンター化合物との反応を促進するものであれば特に限定されないが、チタン、ジルコニウム、亜鉛、スズ、およびビスマスよりなる群から選ばれる1種以上の金属元素を含む金属触媒を用いることが好ましく、チタン触媒および/またはスズ触媒を用いることがさらに好ましい。チタン触媒および/またはスズ触媒を用いれば、マクロモノマー合成工程において、マクロ化合物とカウンター化合物との反応が速やかに進行するとともに、これらの触媒に由来する金属が後段の重合工程の反応液中に残存していても、マクロモノマーの重合率を高めることができ、より高分子量の重合体を得ることが容易になる。
金属触媒は、第16族元素を含む基または配位子を有することが好ましい。この場合、当該基または配位子に含まれる第16族元素が、金属触媒の金属原子に結合または配位していることが好ましい。第16族元素としては、酸素、硫黄 、セレン、テルル等が挙げられ、中でも酸素または硫黄を含む基または配位子が好ましい。このような基または配位子としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシロキシ基、アシレート基、カテコラート基、チオール基、チオシアナート基等が挙げられ、特に酸素を含む基または配位子が好ましく用いられる。
マクロモノマーの合成は溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、重合工程で使用可能な溶媒を用いることができ、潤滑油基油も好適に用いることができる。マクロモノマー合成工程における反応溶媒の使用量は特に限定されないが、反応液中のマクロ化合物とカウンター化合物の合計の濃度が5質量%以上70質量%以下となる程度が好ましい。
マクロモノマーの合成を基油中で行った場合は、重合工程においても、当該基油を反応溶媒として用いることもできる。これにより、マクロモノマー合成工程と重合工程を簡略化できるとともに、重合後の溶媒置換が不要となるため、粘度指数向上剤を簡便に製造することが可能となる。この場合、マクロモノマー合成工程で使用した金属触媒由来の金属の存在下、マクロモノマー合成工程で使用した溶媒(基油)中で、マクロモノマーを含む単量体成分を重合する重合工程を行ってもよい。
マクロ化合物とカウンター化合物とを反応させる際の温度は、反応溶媒の種類や反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、また180℃以下が好ましく、155℃以下がより好ましい。反応時間は、反応の進行度合に応じて適宜調整すればよいが、例えば、20分〜16時間(好ましくは30分〜12時間)行えばよい。
〔2.粘度指数向上剤と基油を含有する組成物〕
本発明は、上記に説明した粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物も提供する。本発明の粘度指数向上剤は、潤滑油基油と配合して、潤滑油組成物とすることができる。潤滑油組成物は、それをさらに基油で希釈せずに潤滑油に用いてもよく、あるいは、さらに基油で希釈したものを潤滑油に用いてもよい。後者の場合、潤滑油組成物は原液として用いられ、以下これを「基油組成物」と称する場合がある。
潤滑油基油としては、公知の潤滑油基油を特に制限なく用いることができ、鉱油系基油や合成系基油が好適に挙げられる。鉱油系基油としては、パラフィン系やナフテン系等の基油が挙げられる。鉱物系基油には、原料基油を溶剤精製したり、水素化分解または水素化異性化処理したものも含まれる。合成系基油としては、炭化水素系、エステル系、エーテル系、シリコーン系、フッ素系等の基油が挙げられる。潤滑油基油は、上述したように、重合体を製造する際の重合反応溶媒として用いることもできる。
鉱油系基油の具体例としては、以下に示す油(1)〜(7)を原料とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。得られる粘度指数向上剤の品質を高めることが容易な点を考慮すると、潤滑油基油として、(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(8)または(9)が好ましく用いられる。
(1)パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(2)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(3)基油(1)〜(2)から選ばれる1種または2種以上の混合油および/または当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる2種以上の混合油
(5)基油(1)〜(4)のいずれかの脱れき油(DAO)
(6)基油(5)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(7)基油(1)〜(6)から選ばれる2種以上の混合油
(8)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油
(9)上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物またはその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油
合成系基油としては、具体的には、ポリα−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でもポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)およびそれらの水素化物が挙げられる。
潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、上記基油(1)〜(7)から選ばれる基油または当該基油から回収された潤滑油留分について、上記の処理を行うことにより得られる基油(8)または(9)が好ましい。また、米国石油協会(API)による分類に基づくグループIIIに属する基油を用いることも好ましい。潤滑油組成物に配合する潤滑油基油としては、合成系基油を用いてもよい。
本発明の潤滑油組成物においては、上記の潤滑油基油を単独で用いてもよく、また他の基油の1種または2種以上と併用してもよい。なお、潤滑油基油と他の基油とを併用して混合基油とする場合、当該混合基油は上記潤滑油基油(8)または(9)を少なくとも含むことが好ましい。混合基油中の上記潤滑油基油(8)または(9)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
潤滑油基油の粘度指数は、100以上であることが好ましく、120以上がより好ましく、また160以下が好ましい。例えば、粘度指数が100未満であると、粘度−温度特性や熱・酸化安定性、揮発防止性が悪化しやすくなったり、摩擦係数が上昇したり、摩耗防止性が低下しやすくなる。一方、粘度指数が160を超えると、低温粘度特性が低下しやすくなる。また、潤滑油基油の100℃における動粘度は、1〜20mm2/sであることが好ましい。
潤滑油組成物の粘度指数は、200以上であることが好ましく、230以上がより好ましく、255以上がさらに好ましく、また350以下であることが好ましく、300以下がより好ましい。粘度指数が上記の範囲内であれば、省燃費性と熱・酸化安定性、貯蔵安定性に優れるものとなる。
潤滑油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は特に限定されず、例えば、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、また70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましい。なお、潤滑油組成物をさらに潤滑油基油で希釈せずに潤滑油に用いる場合は、潤滑油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。本発明の潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物中の本発明に係る重合体の含有量は、潤滑油組成物100質量部中、例えば5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、また70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましい。
潤滑油組成物は、粘度指数向上剤と潤滑油基油を必須成分として含有し、さらに任意の添加剤等が配合されていてもよい。潤滑油組成物は、例えば、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤が配合されることが好ましい。
流動点降下剤としては、潤滑油に用いられる任意の流動点降下剤が使用できる。流動点降下剤としては、例えば、ポリメタクリレート類、ナフタレン−塩素化パラフィン縮合生成物、フェノール−塩素化パラフィン縮合生成物などが挙げられる。これらの中ではポリメタクリレート類が好ましい。
摩耗防止剤(または極圧剤)としては、潤滑油に用いられる任意の摩耗防止剤・極圧剤が使用できる。摩耗防止剤(または極圧剤)としては、例えば、硫黄系、リン系、硫黄−リン系の極圧剤等が使用でき、具体的には、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、亜リン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、MoDTC、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。これらの中では硫黄系極圧剤が好ましく、特に硫化油脂が好ましい。
金属系清浄分散剤としては、アルカリ金属/アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属/アルカリ土類金属フェネート、およびアルカリ金属/アルカリ土類金属サリシレート等の正塩または塩基性塩を挙げることができる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム等、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、マグネシウムまたはカルシウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
無灰清浄分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰清浄分散剤が使用できる。無灰清浄分散剤としては、例えば、炭素数40〜400の直鎖または分岐状のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノまたはビスコハク酸イミド、炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはこれらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品等が挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、またはイミダゾール系化合物等が挙げられる。
泡消剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000〜10万mm2/sのシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
摩擦調整剤としては、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオフォスフェートなどのコハク酸イミドモリブデン錯体や有機モリブデン酸のアミン塩等の有機モリブデン化合物のほか、基本構造として炭素数8以上30以下の直鎖アルキルと金属に吸着できる極性基を同じ分子内にもつ構造のものが挙げられる。極性基としては、アミンやポリアミン、アミドや、これらを同時に分子内に持つ、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等尿素やアルケニルコハク酸イミドタイプ、エステル、アルコールやジオール、あるいはエステルと水酸基を同時にもつ、例えばモノアルキルグリセリンエステルなどが挙げられる。そのほかアミンと水酸基とを同じ分子内に持つ、例えばアルキルアミンアルコキシアルコール等など様々である。
さび止め剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
潤滑油組成物が、流動点降下剤、摩耗防止剤、金属系清浄分散剤、無灰清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、泡消剤、摩擦調整剤、さび止め剤、抗乳化剤、および金属不活性化剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する場合、それぞれの含有量は、例えば、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上10質量部以下であればよい。
潤滑油組成物が金属系清浄分散剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上30質量部未満であることが好ましい。含有量が0.01質量部に満たない場合には、省燃費効果が短期間しか持続しないおそれがあり、また30質量部以上の場合には含有量に見合った効果が得られにくくなる。
潤滑油組成物が泡消剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.0001質量部以上0.01質量部以下であることが好ましい。
潤滑油組成物が摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物100質量部中、0.01質量部以上3質量部以下であることが好ましい。摩擦調整剤の含有量が0.01質量部未満であると、その添加による摩擦低減効果が不十分となる傾向にあり、また3質量部を超えると、他の添加剤の効果を阻害しやすくなったり、あるいは添加剤の溶解性が悪化する傾向にある。
潤滑油組成物を基油組成物として用いる場合は、基油組成物は実質的に粘度指数向上剤と潤滑油基油からなるものであってもよく、この場合、基油組成物中の粘度指数向上剤と潤滑油基油の合計含有量は、基油組成物100質量部中、例えば95質量部以上であることが好ましく、97質量部以上がより好ましく、98質量部以上がさらに好ましい。特に、本発明に係る重合体と潤滑油基油の合計含有量がこのような範囲となるように基油組成物が構成されることが好ましい。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)分析および評価方法
(1−1)重量平均分子量および数平均分子量
重合体の重量平均分子量と数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、HLC−8320GPC ECOSEC)を用いて求めた。測定条件は下記の通りである。なお、重合体の平均分子量測定において、マクロモノマーが残存している場合は、残存マクロモノマーのピークを除外した上で重合体の平均分子量を求めた。
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン
−展開溶媒の流量:1.0mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μL
(1−2)マクロモノマーを除く各単量体成分の重合率
マクロモノマーを除く各単量体成分の重合率をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC−2010plus)を用いて求めた。具体的には、各単量体とトリデカンをメチルイソブチルケトンに溶解させた検量線溶液を調製し、それらをガスクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合体溶液とトリデカンをメチルイソブチルケトンに溶解させたサンプル溶液を調製し、同様にガスクロマトグラフィーで測定した。内部標準法により、各単量体成分の重合率を求めた。ガスクロマトグラフィーの測定条件を下記に示す。
−カラム:GLサイエンス製 Inert Cap1(液相の膜厚:0.25μm、長さ:30m、内径:0.25mm)
−温度:40℃(5分保持)+40℃〜170℃(10℃/分)+170℃〜210℃(5℃/分)+210℃〜330℃(15℃/分)+330℃(20分保持)
−気化室温度:200℃
−検出器温度:350℃(FID)
−キャリアガス:ヘリウム(カラム流量1.33mL/分)
−注入量:0.5μL(スプリット法、スプリット比:30.0)
−内部標準試料:トリデカン
−希釈溶剤:メチルイソブチルケトン
(1−3)マクロモノマー由来の構成単位の含有量
マクロモノマー単量体の含有量および重合率をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、HLC−8320GPC ECOSEC)を用いて求めた。具体的には、マクロモノマーをテトラヒドロフランに溶解させた検量線溶液を調製し、それをゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、ピーク面積から検量線を作成した。次いで、重合体溶液(反応溶液)をテトラヒドロフランに溶解させたサンプル溶液を調製し、同様にゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。得られたマクロモノマーのピーク面積より重合体溶液中のマクロモノマーの含有量を求め、系中に仕込んだマクロモノマー全量に対するマクロモノマーの含有量を求めた。マクロモノマーの重合率は、重合系中に加えたマクロモノマーの全量とマクロモノマー単量体の含有量より算出した。測定条件は下記の通りである。
−カラム:東ソー社製、TSKgel GMHXL 2本
−展開溶媒:テトラヒドロフラン
−展開溶媒の流量:1.0mL/分
−標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
−カラム温度:40℃
−サンプル濃度:0.5%
−注入量:200μL
(1−4)粘度指数
100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように、基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)に重合体を希釈し、スタビンガー粘度計(アントンパール社製、SVM(登録商標)3000)を用いて粘度指数を求めた。
(1−5)粘度
米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4、粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)78質量%と重合体(重合体原料を含む)22質量%からなる溶液を、粘度計(東機産業社製、TVB−10、ローター:SPINDLE No.M3、回転数6rpm)にて25℃で測定した。測定値が測定可能上限値の1/10を下回る場合は、回転数を12rpm、30rpm、60rpmの順に上げ、上限値の1/10を超える粘度のうち、最も6rpmに近い回転数での測定値を表に記載した。
(1−6)せん断安定性
100℃における動粘度が7.0mm2/sとなるように基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)に重合体を希釈して重合体の基油溶液を調製し、これを100℃に保持しながら、超音波ホモジナイザー(Ultrasonics社製、Hielscher UP400S)にて、Amplitude=70%、Cycle=1の条件で10分間超音波を当てて、せん断処理した。せん断処理前後の重合体の基油溶液と基油の100℃における動粘度をそれぞれ測定し、次式によりせん断安定性(SSI)を求めた:SSI={1−(せん断処理後の動粘度−基油の動粘度)/(せん断処理前の動粘度−基油の動粘度)}×100。
(1−7)固有粘度
重合体濃度が0.25質量%、0.5質量%、0.75質量%、1.0質量%となるように基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)に希釈した重合体溶液と、基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)について、スタビンガー粘度計(アントンパール社製、SVM(登録商標)3000)を用いて、40℃、60℃、80℃、100℃における動粘度および密度を測定した。粘度指数向上剤溶液(重合体の基油溶液)の濃度をc(g/dL)、動粘度をη(mm2/s)、基油の動粘度をη0としたとき、各濃度における{(η/η0)−1}/cをプロットして近似直線を計算し、c=0となるときの値を固有粘度[η]として求めた。
(1−8)高温高せん断粘度(HTHS粘度)
USV高せん断粘度計(PCS Instruments社製)を用いて、せん断速度1×106/sの条件にてHTHS粘度を測定した。基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)に重合体とパッケージ添加剤(Chevron Oronite社製、OAS−55501)を加えた基油溶液を調製した。基油溶液中のパッケージ添加剤濃度は8.9質量%に調整し、150℃でのUSV粘度が2.30mPa・sとなるように、基油溶液中の重合体濃度を適宜調整し(基油溶液中の重合体濃度は表1を参照)、100℃および80℃における粘度を測定した。
(2)重合体の基油溶液の製造例
(2−1)実施例1
片末端水酸基含有ポリブタジエンの水素化物(TOTAL社製、Krasol(登録商標)LBH−5000M、数平均分子量8200、ヨウ素価=0.3gI2/100g)11.7質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI(登録商標))0.35質量部、基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)73.6質量部、テトラオクチルチタネート(マツモトファインケミカル社製、TA−30)0.023質量部を反応容器に仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで75℃に加熱しながら0.5時間撹拌を行った。そこに、ラウリン酸(日油社製、NAA−122)0.037質量部と基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)0.52質量部を加え、さらに15分間攪拌し、下記に示すマクロモノマーの基油溶液を得た。
Figure 2020132698
上記で得られたマクロモノマーの基油溶液に、単量体成分として、n−ブチルメタクリレート(BMA)57.5質量部、ラウリルメタクリレート/トリデシルメタクリレート混合物(質量比=54/46)(SLMA)23質量部、N−フェニルマレイミド(PMI)5質量部、酸化防止剤としてトリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)フォスファイト(ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)2112)0.10質量部、および基油(SK社製、YUBASE4)157.4質量部を仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、連鎖移動剤としてペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.07質量部とBMA2.5質量部の混合溶液を加え、続けて重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業社製、V−40)0.146質量部、希釈・洗浄溶媒として基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)1.43質量部を加え、105℃にて6時間の溶液重合を行った。そこに基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)37.0質量部を加え希釈することで、重合体1の基油溶液(重合体濃度27質量%)を得た。
(2−2)実施例2
実施例1において、BMA57.5質量部をBMA27.5質量部とイソブチルメタクリレート(IBMA)30質量部に変更し、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.07質量部を0.015質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合体2の基油溶液(重合体濃度27質量%)を得た。
(2−3)実施例3
実施例1と同様の操作を行い、マクロモノマーの基油溶液を得た。得られたマクロモノマーの基油溶液に、単量体成分として、メチルメタクリレート(MMA)4.5質量部、BMA30質量部、IBMA30質量部、ステアリルメタクリレート(SMA)18質量部、PMI5質量部、酸化防止剤としてトリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)フォスファイト(ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)2112)0.10質量部、および基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)157.4質量部を仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、連鎖移動剤としてペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.015質量部とMMA0.5質量部の混合溶液を加え、続けて重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業社製、V−40)0.146質量部、希釈・洗浄溶媒として基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)1.43質量部を加え、105℃にて6時間の溶液重合を行った。そこに基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)37.0質量部を加え希釈することで、重合体3の基油溶液(重合体濃度27質量%)を得た。
(2−4)実施例4
実施例1と同様の操作を行い、マクロモノマーの基油溶液を得た。得られたマクロモノマーの基油溶液に、単量体成分として、BMA35質量部、IBMA29.5質量部、SMA18質量部、PMI5質量部、酸化防止剤トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)フォスファイト(ADEKA社製、アデカスタブ(登録商標)2112)0.10質量部、および基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)157.4質量部を仕込み、反応容器内に窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、連鎖移動剤としてペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.015質量部とIBMA0.5質量部の混合溶液を加え、続けて重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(和光純薬工業社製、V−40)0.146質量部、希釈・洗浄溶媒として基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)1.43質量部を加え、105℃にて6時間の溶液重合を行った。そこに基油(SK社製、YUBASE4)66.7質量部を加え希釈することで、重合体4の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−5)比較例1
片末端水酸基含有ポリブタジエンの水素化物(TOTAL社製、Krasol(登録商標)LBH−5000M、数平均分子量8200、ヨウ素価=0.3gI2/100g)50質量部、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、カレンズMOI(登録商標))1.6質量部、トルエン20質量部、ジブチルスズジラウリレート0.1質量部を反応容器に仕込み、これを、窒素ガスを導入しつつオイルバスで65℃に加熱しながら6時間撹拌を行った。反応終了後、水50質量部を加えて分液ロートにて上澄み液を回収し、65℃に昇温後、減圧下でトルエンを除去し、上記に示したマクロモノマーを得た。得られたマクロモノマーを12質量部、BMA70質量部、SMA18質量部を反応容器に仕込み、さらに基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)138.7質量部とペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)0.05質量部を加え、これに窒素ガスを導入しつつ撹拌しながら内容物を105℃まで昇温させた。そこに、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.052質量部と基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)5.1質量部とを混合した溶液を添加するとともに、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製、ルペロックス(登録商標)570)0.21質量部を基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)13.7質量部に溶解させた溶液を4時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、さらに2時間の熟成を行った。そこに基油(SKルブリカンツ社製、YUBASE4)140.0質量部を加え希釈することで、重合体5の基油溶液(重合体濃度25質量%)を得た。
(2−6)比較例2
Evonik Industries社から市販されている粘度指数向上剤VISCOPLEX(登録商標)3−201を用いた。VISCOPLEX3−201は、マクロモノマー由来の構成単位を有する重合体を含有する粘度指数向上剤である。なお、比較例2で用いた粘度指数向上剤は、実質的に重合体のみを含有するものとして各物性を測定した。
(2−7)比較例3
三洋化成工業社から市販されている粘度指数向上剤アクルーブ(登録商標)V−5090を用いた。アクルーブV−5090は、マクロモノマー由来の構成単位を有しない重合体を含有する粘度指数向上剤である。比較例3で用いた粘度指数向上剤は、実質的に重合体のみを含有するものとして各物性を測定した。
Figure 2020132698
(3)結果
表1には、実施例と比較例で製造した各重合体の構成単位の組成割合(質量基準)とその分子量、および粘度測定結果を示した。比較例1〜3の粘度指数向上剤(重合体の基油溶液)は、分子量分布(Mw/Mn)が2.65〜3.19であったのに対し、実施例1〜4の粘度指数向上剤(重合体の基油溶液)は、分子量分布(Mw/Mn)が2.10以下であった。その結果、比較例1〜3の粘度指数向上剤のせん断安定性(SSI)は34〜48となったのに対し、実施例1〜4の粘度指数向上剤のせん断安定性(SSI)は9〜18と大幅に改善した。実施例1〜4の粘度指数向上剤は、粘度指数や各種粘度も実用上問題ないものであった。実施例1〜4の粘度指数向上剤は、100℃の固有粘度[η]100が一定範囲内にあることで、100℃のUSV粘度と80℃のUSV粘度がともに低い傾向にあり、低温でも省燃費性の向上が期待できる。
本発明の粘度指数向上剤は潤滑油組成物として用いることができ、駆動系潤滑油、作動油、エンジン油等に好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. マクロモノマー由来の構成単位(A)を有し、分子量分布(Mw/Mn)が2.30未満である重合体を含有することを特徴とする粘度指数向上剤。
  2. 前記重合体の米国石油協会(API)分類におけるグループIII基油(粘度指数122、40℃動粘度19.6mm2/s)中の100℃における固有粘度[η]100が0.05dL/g以上0.15dL/g以下である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
  3. 前記重合体の重量平均分子量(Mw)が20万以上70万以下である請求項1または2に記載の粘度指数向上剤。
  4. 前記重合体が、マレイミド系単量体由来の構成単位(B)を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  5. 前記重合体が、アルキル基の炭素数が2〜6であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C)を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  6. 前記構成単位(C)として、直鎖状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C1)および分岐状アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(C2)を有する請求項5に記載の粘度指数向上剤。
  7. 前記重合体が、アルキル基の炭素数が7〜40であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(D)を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤。
  8. 潤滑油基油と、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘度指数向上剤を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
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