図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態及び変形例を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態及び変形例の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態及び/又は変形例における説明を参照することができる。
(実施形態1)
<運転支援システム1の概略構成>
以下、本発明の実施形態1について図面を用いて説明する。図1に示す運転支援システム1は、車両に搭載されるものであり、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)ロケータ2、ITS(Intelligent Transport Systems)通信機3、周辺監視システム4、HMI(Human Machine Interface)システム5、車両制御システム6、ウィンカレバー7、ウィンカスイッチ8、及び運転支援ECU9を含んでいる。ADASロケータ2、ITS通信機3、周辺監視システム4、HMIシステム5、車両制御システム6、ウィンカスイッチ8、及び運転支援ECU9は、例えば車内LAN10に接続されており、通信によって互いに情報をやり取りすることができる。運転支援システム1を搭載している車両を以降では自車と呼ぶ。
ADASロケータ2は、GNSS受信機、3Dジャイロセンサ等の慣性センサ、地図データを格納するメモリを備えている。GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機は、複数の人工衛星からの測位信号を受信する。3Dジャイロセンサは、例えば3軸ジャイロセンサ及び3軸加速度センサを備える。
ADASロケータ2は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、自車の位置を測位する。ADASロケータ2は、メモリから自車の進路前方の地図データを読み出し、道路形状、車線数、車線幅、車線規制情報、速度規制値、交叉点位置等の道路情報を抽出する。ADASロケータ2は、自車の位置情報と、進路前方の道路情報とを、車内LAN10へ出力する。
なお、道路情報は、自車に搭載されたDCM(Data Communication Module)といったテレマティクス通信に用いられる車載通信モジュールを用いて取得する構成としてもよい。
ITS通信機3は、自車の周辺車両に搭載された車載通信機及び/又は路側に設置された路側機との間で、無線通信を行う。例えばITS通信機3は、車載通信機との車車間通信、路側機との路車間通信により、自車の周辺車両の位置情報及び走行速度情報等を取得する。ITS通信機3は、取得した情報を車内LAN10へ出力する。
周辺監視システム4は、周辺監視カメラ41、ミリ波レーダ42等の周辺監視センサと、周辺監視ECU40とを備えている。周辺監視システム4は、ソナー、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detect ion and Ranging)等の周辺監視センサを用いる構成としてもよい。周辺監視システム4は、歩行者、人間以外の動物、自転車、オートバイ、及び他車等の移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、及び樹木等の静止物体といった障害物を検出する。他にも、走行区画線を検出したり、交通信号の灯色、道路標示、道路標識の表示を検出したりする。
HMIシステム5は、コンビネーションメータ53、CID(Center Information Display)54、HUD(Head-Up Display)装置55、及び電子ミラー56等の複数の表示デバイスを備えている。さらにHMIシステム5は、DSM(Driver Status Monitor)51、後側方カメラ52、オーディオスピーカ57、及び操作デバイス58を備えている。HMIシステム5は、自車のドライバからの入力操作を受け付けたり、自車のドライバに向けて情報を提示したり、自車のドライバの状態を監視したりする。
車両制御システム6は、アクセルポジションセンサ61、ブレーキ踏力センサ62、舵角センサ63、及び操舵トルクセンサ64等の運転操作を検出する検出センサと、自車の走行状態を検出する車速センサ65等とを備えている。加えて車両制御システム6は、電子制御スロットル66、ブレーキアクチュエータ67、及びEPS(Electric Power Steering)モータ68等の走行制御デバイスと、車両制御ECU60とを備えている。車両制御システム6は、運転者による運転操作、運転支援ECU9からの指示等に基づいて、自車の走行を制御する。
ウィンカレバー7は、自車の方向指示器のランプ点灯操作を行うための操作部材である。実施形態1では、このウィンカレバー7が請求項の所定の操作部材に相当する。ウィンカスイッチ8は、ウィンカレバー7に対する左右それぞれのランプ点灯操作を検出するためのスイッチである。ウィンカスイッチ8は、ウィンカレバー7の操作に応じた右左折時のウィンカ信号を車内LAN10へ出力する。
運転支援ECU9は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。この運転支援ECU9が請求項の運転支援装置に相当する。なお、運転支援ECU9が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
運転支援ECU9は、車両制御ECU60を制御することにより、ドライバによる運転操作の支援又は代行を行う複数の運転支援アプリケーション(以下、運転支援アプリ)を実行する。運転支援ECU9については、後に詳述する。
<周辺監視システム4の概略構成>
ここで、周辺監視システム4の概略構成について説明を行う。周辺監視システム4は、周辺監視ECU40、周辺監視カメラ41、及びミリ波レーダ42を備えている。
周辺監視カメラ41は、単眼式若しくは複眼式のカメラであって、自車の周辺を逐次撮像する。以下では、周辺監視カメラ41として、前方カメラを備える場合を例に挙げて説明を行う。なお、周辺監視カメラ41として、自車の後方の所定範囲を撮像範囲とする後方カメラ等の他の方向を撮像するカメラを用いる構成としてもよい。
周辺監視カメラ41は、光軸を自車前方の路面に向けて、例えば自車のルームミラーに設置される。周辺監視カメラ41は、例えば約45度程度の水平視野角度で自車から約80メートルの範囲を撮像する。そして、周辺監視カメラ41は、逐次撮像する撮像画像のデータを、周辺監視ECU40へ逐次出力する。
ミリ波レーダ42は、自車の周辺にミリ波又は準ミリ波を逐次送出し、障害物によって反射された反射波を逐次受信する。以下では、ミリ波レーダ42として、自車右側方から後方までの右後側方をセンシング範囲とする右後側方ミリ波レーダと、自車左側方から後方までの左後側方をセンシング範囲とする左後側方ミリ波レーダとを備える場合を例に挙げて説明を行う。なお、自車前方をセンシング範囲とするミリ波レーダ42等の他のセンシング範囲をもつミリ波レーダ42を用いる構成としてもよい。
例えば、右後側方ミリ波レーダは、自車のリヤ部の右に設置される。そして、自車の後方から右後側方にかけての水平走査角度約120度程度の範囲に24GHz帯の準ミリ波を放出し、反射波を受信する。左後側方ミリ波レーダについては、右後側方ミリ波レーダと左右が逆である点を除いて同様である。ミリ波レーダ42の最大検出距離は70~150m程度である。そして、ミリ波レーダ42は、受信信号に基づく走査結果を周辺監視ECU40へ逐次出力する。
周辺監視ECU40は、CPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。なお、周辺監視ECU40が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
周辺監視ECU40は、周辺監視カメラ41から取得した撮像画像のデータから、自車前方に存在する物体について、自車からの距離、自車に対する相対位置、自車に対する相対速度等を検出する。一例として、テンプレートマッチング等の周知の画像認識処理によって、自動車、自転車、自動二輪車といった車両、歩行者等を検出の対象とすればよい。
なお、単眼カメラを用いる場合には、自車に対する周辺監視カメラ41の設置位置及び光軸の向きと撮像画像中での物体の位置とから、自車に対する物体の相対位置及び自車と物体との距離を決定すればよい。複眼カメラを用いる場合には、一対のカメラの視差量をもとに自車と物体との距離を決定すればよい。さらに、自車と物体との車間距離の変化率から自車に対する物体の相対速度を決定すればよい。例えば、検出した物体が車両であって、自車に対する相対位置が自車前方である場合は、この物体を先行車として扱えばよい。
周辺監視ECU40は、周辺監視カメラ41から取得した撮像画像のデータから、自車の進行方向における走行区画線、自車に対する走行区画線の位置等を検出する。走行区画線は、エッジ検出等の周知の画像認識処理によって検出すればよい。自車に対する走行区画線の位置は、自車に対する周辺監視カメラ41の設置位置及び光軸の向きと撮像画像中での物体の位置とから検出すればよい。他にも、周辺監視ECU40は、画像認識処理によって、車線規制を示す看板、車線規制を示す路上設置物等を検出する構成としてもよい。
また、周辺監視ECU40は、ミリ波レーダ42から取得した情報から、自車の後側方に存在する物体について、自車からの距離、自車に対する相対位置、自車に対する相対速度等を検出する。
周辺監視ECU40は、ミリ波レーダ42が送出した準ミリ波が物体に反射して生じた反射波の受信強度に基づいて物体を検出する。また、周辺監視ECU40は、準ミリ波を送出してから反射波を受信するまでの時間から自車と物体との距離を検出する。さらに、周辺監視ECU40は、反射波の得られた準ミリ波を送信した方向から自車に対する物体の方向を検出する。そして、自車と物体との距離及び自車に対する物体の方向から、自車に対する物体の相対位置を検出する。
また、周辺監視ECU40は、送出した準ミリ波と反射波とのドップラーシフトをもとに、公知の方法によって自車に対する物体の相対速度を検出する。なお、自車に対する物体の相対速度は、自車と物体との距離の時間変化率から検出してもよい。周辺監視ECU40は、検出した各種の情報を、監視情報として車内LAN10に出力する。
なお、周辺監視ECU40は、ITS通信機3から取得した周辺車両の位置情報及び走行速度情報等を用いて、周辺車両の存在、自車との距離、自車に対する位置、速度を検出してもよい。
また、周辺監視システム4が備える周辺監視センサの数、種類、種類の組み合わせは実施形態1で示した例に限らない。例えば、自車の前方のセンシングをカメラとミリ波レーダとを併用して行う等、複数種類の周辺監視センサが重複したセンシング範囲を有する構成としてもよい。他にも、周辺監視センサとして、自車の左右斜め前方をそれぞれセンシング範囲とするミリ波レーダをさらに備えたり、自車の左右フロントコーナ付近及び左右リアコーナ付近をセンシング範囲とするソナーをさらに備えたりする構成としてもよい。
<HMIシステム5の概略構成>
続いて、HMIシステム5の概略構成について説明を行う。HMIシステム5は、HCU(Human Machine Interface Control Unit)50、DSM51、後側方カメラ52、コンビネーションメータ53、CID54、HUD装置55、電子ミラー56、オーディオスピーカ57、及び操作デバイス58を備えている。
DSM51は、近赤外光源及び近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニット等とによって構成されている。DSM51は、近赤外カメラを自車の運転席側に向けた姿勢にて、例えばインスツルメントパネルの上面に配置される。DSM51は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御ユニットによって画像解析される。制御ユニットは、例えばドライバの顔向き及び/又は視線方向を、撮像画像から検出する。このDSM51が請求項のセンサに相当する。
一例として、DSM51は、近赤外カメラによってドライバの顔を撮像した撮像画像から、画像認識処理によって顔の輪郭、目、鼻、口などの部位を検出する。そして、各部位の相対的な位置関係からドライバの顔向きを検出する。また、一例として、DSM51は、近赤外カメラによってドライバの顔を撮像した撮像画像から、画像認識処理によって、ドライバの瞳孔及び角膜反射を検出し、検出した瞳孔と角膜反射との位置関係から視線の方向を検出する。DSM51は、検出したドライバの顔向き、視線方向の情報を車内LAN10へ出力する。
なお、DSM51は、ドライバの顔向きによってドライバの頭部若しくは肩部と運転席のシート若しくはヘッドレストとの距離が変化することを利用して、顔向きを検出する構成としてもよい。一例として、DSM51は、運転席のシート若しくはヘッドレストに設置した複数の測距センサによってそれぞれ検出する、ドライバの頭部若しくは肩部までの距離の変化から、顔向きを検出する構成としてもよい。
後側方カメラ52は、例えば単眼式のカメラであって、自車の後側方を逐次撮像する。後側方カメラ52は、自車の左右のドアミラーにそれぞれ設置され、自車の左右の後側方の所定範囲をそれぞれ撮像する。後側方カメラ52は、逐次撮像する撮像画像のデータをHCU50へ逐次出力する。
コンビネーションメータ53は、自車の車室内にて運転席の前方に配置されている。CID54は、自車の車室内にてセンタクラスタの上方に配置されている。コンビネーションメータ53及びCID54は、HCU50から取得した画像データに基づいて、情報通知のための種々の画像をディスプレイの表示画面に表示する。
HUD装置55は、HCU50から取得した画像データに基づいて表示素子に形成された表示画像を、自車のウインドシールドに投影することにより、表示画像の虚像を自車の室内から前方の外界風景と重ねて視認可能に表示させる。HUD装置55は、虚像表示された表示物によってドライバへ情報を提示する。
電子ミラー56は、後側方カメラ52で逐次撮像した自車の後側方の撮像画像を逐次表示する表示デバイスであって、自車の右後側方の撮像画像を表示する表示デバイスと、自車の左後側方の撮像画像を表示する表示デバイスとがある。一例としては、電子ミラー56は、自車の車室内において、ウインドシールドの左右両側に位置する各ピラーの根本に設置される。電子ミラー56は、後側方カメラ52で逐次撮像した撮像画像を、HCU50を介して逐次取得して表示する。
電子ミラー56は、後側方カメラ52で撮像した自車の後側方の撮像画像に加え、HCU50で生成した表示物を重畳表示してもよい。また、HCU50で生成した表示物と、後側方カメラ52で撮像した自車の後側方の撮像画像との表示領域を分けて表示してもよい。電子ミラー56は、自車の後側方の撮像画像に加えて表示される表示物によってドライバへ情報を提示する。
オーディオスピーカ57は、例えば自車のドアの内張り内に設置され、自車のドライバによって聞き取り可能な音又は音声を再生する。具体的には、機械的なビープ音、メッセージ等の合成音声等がオーディオスピーカ57から出力される。オーディオスピーカ57は、再生する音及び音声によってドライバへ向けた情報提示を行う。
操作デバイス58は、自車のドライバが操作するスイッチ群である。例えば、操作デバイス58としては、自車のステアリングのスポーク部に設けられたステアリングスイッチがある。ステアリングスイッチは、ドライバが運転支援アプリの起動の要否等を含む各種設定を行うために用いられたり、ドライバが自動での車線変更を許可するために用いられたりする。
HCU50は、CPU、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。なお、HCU50が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
HCU50は、コンビネーションメータ53、CID54、HUD装置55、電子ミラー56、オーディオスピーカ57を制御して情報を提示することで、ドライバに向けた報知を行う。また、HCU30は、後側方カメラ52から逐次取得する自車の後側方の撮像画像データを電子ミラー56に逐次出力する。他にも、HCU50は、DSM51での検出結果、操作デバイス58でのスイッチ操作に応じた信号を車内LAN10に出力する。
<車両制御システム6の概略構成>
続いて、車両制御システム6の概略構成について説明を行う。車両制御システム6は、車両制御ECU60、アクセルポジションセンサ61、ブレーキ踏力センサ62、舵角センサ63、操舵トルクセンサ64、車速センサ65、電子制御スロットル66、ブレーキアクチュエータ67、及びEPSモータ68を備えている。
アクセルポジションセンサ61は、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み量を検出し、車両制御ECU60へ出力する。ブレーキ踏力センサ62は、ドライバによるブレーキペダルの踏力を検出し、車両制御ECU60へ出力する。舵角センサ63は、舵角として自車の操舵角若しくは転舵角を検出する。操舵トルクセンサ64は、ドライバによってステアリングホイールに印加された操舵トルクを検出し、車両制御ECU60へ出力する。車速センサ65は、変速機の出力軸又は車軸の回転速度を計測することにより、自車の現在の走行速度を検出し、車両制御ECU60へ出力する。
電子制御スロットル66は、車両制御ECU60から出力される制御信号に基づき、スロットルの開度を制御する。ブレーキアクチュエータ67は、車両制御ECU60から出力される制御信号に基づいたブレーキ圧の発生により、各車輪に発生させる制動力を制御する。EPSモータ68は、車両制御ECU60から出力される制御信号に基づき、ステアリング機構に印加される操舵力及び保舵力を制御する。
車両制御ECU60は、自車の加減速制御及び/又は操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU60としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU60は、アクセルポジションセンサ61、ブレーキ踏力センサ62、舵角センサ63、車速センサ65等の各センサから出力される検出信号をもとに、電子制御スロットル66、ブレーキアクチュエータ67、及びEPSモータ68等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。車両制御ECU60は、運転支援アプリの実行時には、運転支援ECU9からの指示に従って自車の加減速制御及び/又は操舵制御を行う。また、車両制御ECU60は、上述の各センサ61~65から出力された検出信号を車内LAN10へも出力する。
<運転支援ECU9の概略構成>
続いて、図2を用いて運転支援ECU9の概略構成を説明する。運転支援ECU9は、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、LCA(Lane Change Assist)機能部90、ACC(Adaptive Cruise Control)機能部91、LKA(Lane Keeping Assist)機能部92、及びAEB(Autonomous Emergency Braking)機能部93を、機能ブロックとして構築する。これら機能ブロックにより、前述の運転支援アプリが実行される。
ACC機能部91は、周辺監視ECU40から取得する先行車の監視情報に基づき、車両制御ECU60に駆動力及び制動力を調整させることで、自車の走行速度を制御するACCの機能を実現する。ACC機能部91は、先行車が検出されていない場合には、例えば操作デバイス58を介してドライバによって設定された目標走行速度で、自車を定速走行させる。一方、先行車が検出されている場合には、ACC機能部91は、先行車の速度を目標走行速度として、この目標走行速度に応じた先行車までの目標車間距離を設定する。そして、この目標車間距離となるように加減速制御を行いつつ、自車を先行車に追従走行させる。先行車の速度は、周辺監視ECU40で検出した自車に対する先行車の相対速度と、自車の車速センサ65の検出信号が示す自車の車速とから求めればよい。
LKA機能部92は、車両制御ECU60に操舵力を調整させることで、自車の操舵輪の舵角を制御するLKAの機能を実現する。LKA機能部92は、走行区画線への接近を阻む方向への操舵力を発生させることで自車を自車線内に維持して走行させる。ACCの機能とLKAの機能とを共に作動させて自車の走行レーン内の自動運転を実現する運転支援を以降ではレーン内走行支援と呼ぶ。
AEB機能部93は、周辺監視ECU40から取得する自車前方の監視情報に基づいて、車両制御ECU60に制動力を調整させることで、自車の車速を強制的に自動減速する衝突被害軽減制動(つまり、AEB)の機能を実現する。具体例としては、自車前方の物体に対するTTC(time to collision)が例えば5sec等の設定値を下回り、緊急制御条件が成立した場合に、自車の車速を強制的に自動減速させる。
LCA機能部90は、現在走行中の車線から隣接車線へと自車を移動させるLCAの機能を実現する。LCA機能部90の詳細については後述する。
なお、運転支援ECU9は、周辺監視ECU40から取得する自車の左右後側方の監視情報に基づいて、自車の左右後側方領域の他車の存在をドライバに報知するBSM(Blind Spot Monitor)の機能を実現する等、他の運転支援に関する機能を実現する構成としてもよい。
<LCA機能部90の概略構成>
続いて、図2を用いてLCA機能部90の概略構成を説明する。LCA機能部90は、機能ブロックとして、状態遷移部100、LC(Lane Change)意思判定部101、意思検出部102、動作判定部103、タイムアウト判定部104、周辺状況判定部105、許可部106、促進処理部107、車線変更部108、及び完了後処理部109を備えている。
状態遷移部100は、自車のLCA機能の状態を遷移させる。状態遷移部100は、例えばレーン内走行支援がOFF(つまり、ACC及びLKAの機能が共に非作動)である場合に、LCA機能が実行できないLC_OFFの状態とする。他にも、周辺監視ECU40で自車の隣接車線を検出できていない場合に、LC_OFFとする。例えば、自車の隣接車線を検出できていない場合とは、自車線と隣接車線との間の走行区画線を検出できていない場合を指す。一方、状態遷移部100は、レーン内走行支援がON(つまり、ACC及びLKAの機能が共に作動)であって、且つ、周辺監視ECU40で自車の隣接車線を検出できている場合に、LCA機能を実行する準備ができているLC_READYの状態に遷移させる。
また、状態遷移部100は、後述するLC意思判定部101でドライバの車線変更の意思ありと判定した場合に、LCA機能部90を、LCA機能を実行するLC_ONの状態に遷移させる。一方、状態遷移部100は、後述するタイムアウト判定部104でLC意思判定部101若しくは動作判定部103の判定結果が無効と判定した場合に、LC_READYの状態に遷移させる。他にも、状態遷移部100は、後述する車線変更部108での操舵が完了した場合に、LC_READYの状態に遷移させる。
LC意思判定部101は、LC_READYの状態にある場合に、ドライバの車線変更の意思を判定する。一例として、ウィンカスイッチ8から右左折時のウィンカ信号が得られた場合に、車線変更の意思あり(以下、LC意思あり)と判定すればよい。また、右折時のウィンカ信号が得られた場合に、右隣接車線にLC意思ありと判定し、左折時のウィンカ信号が得られた場合に、左隣接車線にLC意思ありと判定すればよい。右左折時のウィンカ信号が得られていない場合には、LC意思なしと判定すればよい。実施形態1では、ウィンカレバー7が請求項の操作部材に相当する。
意思検出部102は、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した時点を起点として、カウントを開始する。つまり、ウィンカレバー7の操作時を起点とするカウントを開始する。そして、カウントが規定値に達したことを、車線変更をドライバが許可したこと(以下、操舵開始トリガON)として検出する。カウントは、経過時間のカウントであっても、自車の走行距離のカウントであってもよいが、以下では経過時間のカウントを行う場合を例に挙げて説明を行う。経過時間のカウントは、例えばタイマー回路等によって行えばよい。このカウントが請求項の計測値に相当する。
動作判定部103は、HCU50から逐次出力されるDSM51での検出結果をもとに、ドライバが車線変更時における安全確認動作を実施したか否か判定する。動作判定部103での判定は、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した後に開始することが好ましい。これは、動作判定部103での判定を常時行う構成に比べ、運転支援ECU9の処理負荷を低減できるためである。
ここで、LC意思判定部101で右隣接車線にLC意思ありと判定した場合の動作判定部103での判定の一例について説明する。動作判定部103は、DSM51で検出されるドライバの顔向き及び/又は視線方向が、自車の正面から右後側方に動き、右後側方を向いた状態で一定時間以上滞留した後に、自車の正面に戻る動きを示した場合に、安全確認動作を実施したと判定すればよい。なお、ここでの一定時間とは、安全確認に通常要すると考えられる程度の滞留時間であって、任意に設定可能である。
また、DSM51でドライバの視線方向まで検出する場合には、例えば、自車の正面、右ドアミラー、右後側方、正面の順に視線方向が移動した場合に、安全確認動作を実施したと判定してもよい。右ドアミラー、右後側方については、視線方向が一定時間以上滞留したことを条件としてもよい。
なお、LC意思判定部101で左隣接車線に車線変更の意思ありと判定した場合の動作判定部103での判定については、左右が逆になる点を除けば、右隣接車線に車線変更の意思ありと判定した場合と同様である。
タイムアウト判定部104は、意思検出部102の検出結果及び動作判定部103の判定結果が有効期限切れ(つまり、タイムアウト)か否かを判定する。意思検出部102の検出結果については、意思検出部102で操舵開始トリガONと検出してからの経過時間が第1有効時間以上の場合にタイムアウトと判定し、第1有効時間未満の場合に有効と判定する。ここで言うところの第1有効時間は、任意に設定可能であって数秒程度とすればよい。
動作判定部103での判定結果については、動作判定部103で安全確認動作を実施したと判定してからの経過時間が第2有効時間以上の場合にタイムアウトと判定し、第2有効時間未満の場合に有効と判定する。ここで言うところの第2有効時間は、隣接車線の後側方の状況が変化する可能性が高いと考えられる程度の時間であって、任意に設定可能である。例えば第2有効時間は数秒程度とすればよい。
周辺状況判定部105は、LC_ONの状態となった場合に、周辺監視ECU40から逐次出力される監視情報をもとに、自車の周辺状況が隣接車線に車線変更可能な周辺状況か否かを逐次判定する。一例として、ミリ波レーダ42が検出した自車の後側方の監視情報から、車線変更先の車線の後側方に、自車に接近する物体がなかった場合に、車線変更可能な周辺状況と判定する。一方、車線変更先の車線の後側方に、自車に接近する物体があった場合には、車線変更不可能な周辺状況と判定する。
なお、周辺状況判定部105は、ITS通信機3で取得した周辺車両の位置情報及び走行速度情報等から、車線変更先の車線の後側方に、自車に接近する他車が存在するか否かを判定することで、自車の周辺状況が隣接車線に車線変更可能な周辺状況か否かを判定してもよい。
許可部106は、LC_ONの状態となった場合に、所定の条件を満たすか否かによって、自車の車線変更を許可したり、許可しなかったりする。所定の条件とは、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出したこと、動作判定部103で安全確認動作を実施したと判定したこと、周辺状況判定部105で車線変更可能な周辺状況と判定していること、及びタイムアウト判定部104でLC意思判定部101及び動作判定部103の判定結果がタイムアウトと判定されないことである。なお、ここで言う規定値とは、前述の第1有効時間よりも短い時間に相当する任意に設定可能な値であって、例えば3秒とすればよい。
促進処理部107は、動作判定部103で安全確認動作を実施していないと判定したこともとに、安全確認動作をドライバに促す報知を行わせる指示をHCU50に出力する。一例としては、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出したにも関わらず、動作判定部103で安全確認動作を実施していないと判定した場合に、安全確認動作をドライバに促す報知を行わせる構成とすればよい。なお、高齢者等の安全確認動作が定常的に遅いドライバに対して無駄に報知を行わないようにするため、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出してから一定時間経過を条件としてもよい。ここで言うところの一定時間とは、任意に設定可能であって、高齢者等の安全確認動作が定常的に遅いドライバが安全確認動作を完了する時間を考慮して設定すればよい。
報知を行わせる指示を受けたHCU50では、表示デバイスやオーディオスピーカ57から、安全確認動作をドライバに促す報知を行わせる。報知の一例としては、電子ミラー56等の表示デバイスに安全確認動作を促す表示を行う構成としてもよいし、単にLED等のランプを点灯させる構成としてもよい。
車線変更部108は、車両制御ECU60に指示を行い、隣接車線へ向かう方向への操舵力を発生させることにより、自車を隣接車線へ移動させる。完了後処理部109は、車線変更部108での自車を隣接車線へ移動させる処理における操舵が完了した場合に、操舵完了後処理を行う。
操舵完了後処理の一例としては、車線変更が完了したことを示す報知を行わせる指示をHCU50に出力し、表示デバイスやオーディオスピーカ57から、車線変更が完了したことを示す報知を行わせる。車線変更中に車線変更中であることを示す表示を行わせる構成の場合、操舵完了後処理によって、車線変更中であることを示す表示を終了させる構成としてもよい。他の例としては、ウィンカレバーを動作させる電子制御装置に指示を出力し、ドライバによって操作されていたウィンカレバー7を中立位置に自動的に復帰させてもよい。
<LCA関連処理>
続いて、図3のフローチャートを用いて、運転支援ECU9でのLCA機能に関連する処理(以下、LCA関連処理)の流れの一例について説明を行う。図3のフローチャートは、例えば、運転支援ECU9でのレーン内走行支援がON(つまり、ACC及びLKAの機能が共に作動)したときに開始する構成とすればよい。
まず、ステップS1では、状態遷移部100によってLCA機能部90がLC_READYの状態に遷移した場合(S1でYES)には、ステップS2に移る。一方、LC_READYの状態に遷移しておらず、LC_OFFの状態である場合(S1でNO)には、ステップS14に移る。
ステップS2では、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した場合(S2でYES)には、ステップS3に移る。一方、LC意思なしと判定した場合(S2でNO)には、ステップS13に移る。ステップS3では、意思検出部102が、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した時点を起点として、カウントを開始する。
ステップS4では、周辺状況判定部105が車線変更可能な周辺状況と判定している場合(S4でYES)には、ステップS5に移る。一方、周辺状況判定部105が車線変更不可能な周辺状況と判定している場合(S4でNO)には、ステップS8に移る。
ステップS5では、意思検出部102でのカウントが規定値に達し、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出している場合(S5でYES)には、ステップS6に移る。一方、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出していない場合(S5でNO)には、S8に移る。
ステップS6では、動作判定部103で安全確認動作を実施したと判定していた場合(S6でYES)には、ステップS7に移る。一方、動作判定部103で安全確認動作を実施していないと判定していた場合(S6でNO)には、S8に移る。
ステップS7では、タイムアウト判定部104でLC意思判定部101若しくは動作判定部103の判定結果がタイムアウトと判定した場合(S7でYES)には、ステップS12に移る。一方、タイムアウト判定部104でLC意思判定部101及び動作判定部103の判定結果のいずれも有効と判定した場合(S7でNO)には、許可部106が自車の車線変更を許可し、ステップS9に移る。
また、ステップS8では、タイムアウト判定部104でLC意思判定部101若しくは動作判定部103の判定結果がタイムアウトと判定した場合(S8でYES)には、S12に移る。一方、タイムアウト判定部104でLC意思判定部101及び動作判定部103の判定結果のいずれも有効と判定した場合(S8でNO)には、S4に戻って処理を繰り返す。
なお、S7,S8でタイムアウトと判定した場合には、再度のウィンカレバー7の操作、安全確認動作が必要となることを示す報知を行わせる指示をHCU50に出力し、表示デバイスやオーディオスピーカ57からこの報知を行わせることが好ましい。また、S7,S8でタイムアウトと判定した場合には、ドライバによって操作されていたウィンカレバー7を中立位置に自動的に復帰させることにより、再度のウィンカレバー7の操作、安全確認動作が必要となることドライバに認識させる構成としてもよい。
ステップS9では、車線変更部108が、車両制御ECU60に指示を行い、自車を隣接車線へ移動させる。ステップS10では、車線変更部108での操舵が完了した場合(S10でYES)には、ステップS11に移る。一方、車線変更部108での操舵が完了していない場合(S10でNO)には、S9に戻って処理を繰り返す。ステップS11では、完了後処理部109が操舵完了後処理を行って、ステップS12に移る。
ステップS12では、LCA関連処理の終了タイミングであった場合(S12でYES)には、LCA関連処理を終了する。一方、LCA関連処理の終了タイミングでなかった場合(S12でNO)には、S2に戻って処理を繰り返す。LCA関連処理の終了タイミングの一例としては、操作デバイス58を介したドライバの操作入力によってレーン内走行支援がOFFされたこと、自車のイグニッション電源がオフとなったこと等がある。
S2でLC意思なしと判定した場合のステップS13では、LCA機能部90がLC_OFFの状態である場合(S13でYES)には、ステップS14に移る。一方、LCA機能部90がLC_OFFの状態でない場合(S13でNO)には、S2に戻って処理を繰り返す。
また、S1でLCA機能部90がLC_READYの状態でない場合のステップS14では、LCA関連処理の終了タイミングであった場合(S14でYES)には、LCA関連処理を終了する。一方、LCA関連処理の終了タイミングでなかった場合(S14でNO)には、S1に戻って処理を繰り返す。
<LCA機能部90の状態遷移>
ここで、図4を用いて、LCA機能部90の状態遷移についてまとめる。LCA機能部90は、前述したように、レーン内走行支援がOFFである場合と、周辺監視ECU40で自車の隣接車線を検出できていない場合との少なくともいずれかの場合に、LC_OFFの状態になる。一方、LC_OFFの状態において、レーン内走行支援がONであって、且つ、周辺監視ECU40で自車の隣接車線を検出できた場合に、LC_OFFからLC_READYの状態へ遷移する。
また、LC_READYの状態において、LC意思判定部101でドライバの車線変更の意思ありと判定した場合に、LC_ONの状態に遷移する。LC_ONの状態において、タイムアウト判定部104でタイムアウトと判定した場合には、LC_READYの状態へ遷移する。一方、タイムアウトと判定しておらず、車線変更可能な周辺状況、操舵開始トリガONの検出、及び安全確認動作の実施といった3つの条件を満たした場合に、車線変更が許可されて操舵が開始される。そして、操舵が完了し、操舵完了後処理を実行して車線変更が完了した場合に、LC_ONの状態からLC_READYの状態に遷移する。
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、動作判定部103でドライバが車線変更時における安全確認動作を実施していないと判定している場合には、許可部106が、車線変更部108による自動での車線変更を許可しない。よって、LCA機能によって自動で車両の車線変更を行わせる場合であっても、ドライバが車線変更時における安全確認動作を実施しなければならなくなる。また、ドライバが車線変更時における安全確認動作を実施しなければ車線変更を行うことができないので、ドライバに安全確認動作を促すことができる。その結果、車線変更時の安全確認動作をドライバに習慣付けることができ、ドライバの成長を促すことができる。
また、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した時点からのカウントが規定値に達したことを操舵開始トリガONとする構成において、ドライバによる安全確認動作の実施を車線変更許可の必須条件とすることで、車線変更時の操舵開始のタイミングを個人適応させることが可能になる。詳しくは、図5を用いて以下で説明を行う。
図5のAが、ドライバによる安全確認動作の実施を車線変更許可の必須条件としない場合の例を示している。また、図5のB,Cがドライバによる安全確認動作の実施を車線変更許可の必須条件とする場合の例を示している。さらに、図5のBがウィンカレバー7の操作から安全確認動作実施までが早いドライバの例を示しており、図5のCがウィンカレバー7の操作から安全確認動作実施までの時間が遅いドライバの例を示している。
Aの例のように、ドライバによる安全確認動作の実施を車線変更許可の必須条件としない場合には、安全確認動作の遅いドライバを考慮して、操舵開始トリガONとするカウントの規定値(AのT1参照)を大きめに設定する必要がある。
これに対して、実施形態1の構成によれば、ドライバによる安全確認動作の実施を車線変更許可の必須条件とするので、安全確認動作の遅いドライバを考慮せずに、操舵開始トリガONとするカウントの規定値(B,CのT1参照)をAの場合よりも小さめに設定することができる。よって、ウィンカレバー7の操作から安全確認動作実施までが早いドライバであれば、カウントの規定値を小さめに設定できる分だけAの場合よりも早く操舵を開始することが可能になる(BのT1参照)。一方、ウィンカレバー7の操作から安全確認動作実施までが遅いドライバにとっては、カウントが規定値に達しても、安全確認動作が実施されるまでは操舵が開始されずに済む(CのT2参照)。このように、実施形態1の構成によれば、車線変更時の操舵開始のタイミングを個人適応させることが可能になる。
(実施形態2)
なお、LC意思判定部101でLC意思ありか否かを判定するよりも前に、車線変更が好ましい運転シーンであるかを判定して車線変更をドライバに提案する構成(以下、実施形態2)としてもよい。図6を用いて、実施形態2における運転支援ECU9aの概略的な構成の一例について説明を行う。図6では、便宜上、運転支援ECU9aが備える構成のうち、実施形態1の運転支援ECU9と異なる構成以外は図示を省略している。運転支援ECU9aは、シーン判定部110及び提案処理部111を備える点を除けば、実施形態1の運転支援ECU9と同様である。シーン判定部110及び提案処理部111は、LCA機能部90に含まれる構成であってもよいし、LCA機能部90に含まれない構成としてもよい。
シーン判定部110は、自車の走行状態及び/又は自車周囲の状況をもとに、車線変更が好ましい運転シーンであるか判定する。
例えば、シーン判定部110は、ADASロケータ2から取得する自車の位置及び交叉点の位置、周辺監視ECU40から取得する自車と先行車との車間距離をもとに、車線変更が好ましい運転シーンであるか判定する。具体例としては、自車が交差点から所定距離以上離れており、且つ、自車と先行車との車間距離が所定値以下である場合に、車線変更が好ましい運転シーンであると判定すればよい。
ここで言うところの所定距離とは、交叉点手前の車線変更禁止とすべき距離以上であればよく、任意に設定可能である。また、ここで言うところの所定値とは、先行車の速度が速度規制値よりも大幅に低いと言える場合の目標車間距離程度とすればよく、任意に設定可能である。ADASロケータ2から取得する地図データに含まれる速度規制値に応じてこの所定値を逐次変更する構成としてもよいし、速度規制値に関わらず固定値とする構成としてもよい。
また、シーン判定部110は、ADASロケータ2から取得する自車の位置及び車線規制情報をもとに、自車の車線変更が好ましい運転シーンであるか判定する。具体例としては、自車が車線規制により車線変更しなければならない地点まで所定距離未満となった場合に、車線変更が好ましい運転シーンであると判定すればよい。ここで言うところの所定距離とは、任意に設定可能である。
なお、車線規制により車線変更しなければならない地点についての車線規制情報は、ITS通信機3を介して路側機から取得する構成としてもよい。他にも、周辺監視カメラ41で撮像した撮像画像から画像認識処理によって車線規制を示す標識若しくは看板を検出することで、車線規制情報を取得する構成としてもよい。
他にも、カーナビゲーション装置で経路案内中の推奨経路、自動運転による走行予定経路等の走行が予定される予定経路の情報を運転支援ECU9が取得できる場合には、この予定経路を用いて、車線変更が好ましい運転シーンをシーン判定部110で判定する構成としてもよい。一例として、予定経路から、進行方向前方の交差点で右左折が必要であり、且つ、右左折のために車線変更が必要な場合に、車線変更が好ましい運転シーンであることをシーン判定部110で判定すればよい。
提案処理部111は、シーン判定部110で車線変更が好ましい運転シーンであると判定した場合に、自車の車線変更を提案する報知を行わせる指示をHCU50に出力する。報知を行わせる指示を受けたHCU50では、表示デバイスやオーディオスピーカ57から、自車の車線変更を提案する報知を行わせる。報知の一例としては、電子ミラー56等の表示デバイスに車線変更を提案するテキストやアイコンの表示を行う構成とすればよい。
実施形態2の構成によれば、車線変更が好ましいタイミングをドライバが判断する手間が省けるという利点がある。
(変形例1)
実施形態1,2では、動作判定部103での判定を、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した後に開始する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、LC意思判定部101でLC意思ありと判定する前から動作判定部103での判定を開始する構成(以下、変形例1)としてもよい。
一例としては、LC_READY以外の状態からLC_READYの状態に遷移した場合に、動作判定部103での判定を開始する構成とすればよい。他にも、実施形態2の構成と組み合わせることで、提案処理部111で自車の車線変更を提案する報知を行わせた後に、動作判定部103での判定を開始する構成としてもよい。
なお、変形例1の構成を採用する場合には、実施形態1の場合に比べて安全確認動作を実施したと判定されるタイミングが早まることがあるため、タイムアウト判定部104で用いる第2有効時間を、実施形態1の場合よりも長めに設定すればよい。
変形例1の構成によれば、LC意思判定部101でLC意思ありと判定する前から動作判定部103での判定を開始するので、車線変更時においてウィンカレバー7の操作前に安全確認動作を実施するドライバの安全確認動作についても判定の対象とすることができる。よって、ウィンカレバー7の操作前に安全確認動作を実施したにも関わらず、安全確認動作を実施していないとして車線変更が許可されない状況が生じるのを防止できる。
また、変形例1の構成であっても、安全確認動作を実施しない限り、車線変更は許可されない。よって、ウィンカレバー7の操作からの経過時間だけを条件に車線変更のための操舵が自動で開始されることがない。従って、ウィンカレバー7の操作後に安全確認動作を実施するドライバが安全確認動作を完了する前に、車線変更のための操舵が自動で開始される不具合は生じない。
(変形例2)
実施形態1,2では、LCA関連処理をレーン内走行支援がONになったときに開始する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、LKAの機能を作動させずにACCの機能を作動させたときにも開始する構成としてもよいし、ACCの機能もLKAの機能も作動させずに手動で車両を走行させる場合に開始する構成としてもよい。
(変形例3)
実施形態1,2では、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出したこと、動作判定部103で安全確認動作を実施したと判定したこと、周辺状況判定部105で車線変更可能な周辺状況と判定していること、及びタイムアウト判定部104でタイムアウトと判定されないことを、車線変更を許可する条件としたが、必ずしもこれに限らない。
例えば、意思検出部102で操舵開始トリガONを検出したことを、車線変更を許可する条件としない構成としてもよい。他にも、周辺状況判定部105で車線変更可能な周辺状況と判定していることを、車線変更を許可する条件としない構成としてもよい。また、タイムアウト判定部104でタイムアウトと判定されないことを、車線変更を許可する条件としない構成としてもよい。
(変形例4)
実施形態1,2では、意思検出部102が、LC意思判定部101でLC意思ありと判定した時点を起点としたカウントが規定値に達したことを操舵開始トリガONとして検出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。
例えば、操作デバイス58のうちの、ドライバが車線変更の意思を伝えるのに用いるボタン等を操作したことを操舵開始トリガONとして検出する構成としてもよい。この場合、操作デバイス58が請求項の操作部材に相当する。他にも、ドライバがステアリングホイールを操作したことを操舵開始トリガONとして検出する構成としてもよい。この場合、ステアリングホイールが請求項の操作部材に相当する。また、ドライバがステアリングホイールを操作したことは、操舵トルクセンサ64の信号から意思検出部102が検出する構成とすればよい。
(変形例5)
実施形態1,2では、タイムアウト判定部104が、意思検出部102で操舵開始トリガONと検出してからの経過時間が第1有効時間以上の場合にタイムアウトと判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ドライバがウィンカレバー7を操作してからの経過時間、つまり、意思検出部102でのカウントが第1有効時間以上の場合にタイムアウトと判定する構成としてもよい。
この場合、第1有効時間としては、ドライバがウィンカレバー7を操作してから安全確認を終了するまでにかかる時間程度よりも長い時間を設定すればよい。より好ましくは、安全確認が遅いドライバによる安全確認動作の実施中にタイムアウトと判定してしまわないように、安全確認が遅いドライバを基準として第1有効時間を長めに設定すればよい。例えば第1有効時間は10秒程度とすればよい。
(変形例6)
また、動作判定部103で安全確認動作を実施したか否か判定をするタイミングは、実施形態1,変形例1で説明したタイミングに必ずしも限らない。
(変形例7)
実施形態1,2では、促進処理部107が、動作判定部103で安全確認動作を実施していないと判定したこともとに、安全確認動作をドライバに促す報知を行わせる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、動作判定部103で安全確認動作の判定を開始する前に、安全確認動作をドライバに促す報知を行わせる構成としてもよい。
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。