以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係るサービス切替システムについて説明する。図1は、第1の実施の形態に係るサービス切替システムの構成例を説明するための図である。
図1に示したように、第1の実施の形態に係るサービス切替システム10は、その適用対象となる複数のエレベーター11が据付けられたビル1に設置されている。ビル1内では、サービス切替システム10及び複数のエレベーター11の他、群管理装置12、故障検出装置13、及び状況分析装置14が、それぞれネットワークを介して通信可能に接続されている。
サービス切替システム10は、エレベーター11の制御装置に故障が発生した場合や、ビル1内の状況に変化が生じた場合等に、エレベーター11に関するサービス及び制御装置の切替を行うことが可能なシステムである。図1に示したように、サービス切替システム10は、切替制御計算部110(稼動可能サービス計算部111及びサービス切替計算部112)と、代行機器切替部120と、稼動情報表示部130と、を備える。さらにサービス切替システム10は、上記の各部による処理の実行のために必要な情報として、サービス切替システム10は、サービスリスト103、代行機器リスト104、サービス性能要件表105、特殊状況リスト106、ビル構成情報107、及び切替機器リスト108を備える。これらの各情報の詳細は、図3~図8等を参照して後述される。
サービス切替システム10が備える上記の各部のうち、切替制御計算部110の稼動可能サービス計算部111は、エレベーター11の機器(制御装置)が故障したときや、ビル1内の状況に所定の変化があったとき等、エレベーター11に関するサービスや制御の継続に影響し得る状況において、故障検出装置13から通知される機器稼動情報101、及び代行機器リスト104を参照して、サービスリスト103に示される各サービスが現在の機器構成によって稼動可能であるかを算出する。
また、切替制御計算部110のサービス切替計算部112は、稼動可能サービス計算部111によって稼動不可と判断されたサービスについて、機器稼動情報101、代行機器リスト104、サービス性能要件表105、特殊状況リスト106、及び状況分析装置14から通知される状況情報102を参照して、当該サービスを継続するための機器の代行先の算出やサービスの切替指示等を行う。
代行機器切替部120は、切替制御計算部110(サービス切替計算部112)によって作成された切替機器リスト108に基づいて、代行先の機器に処理を切り替えてサービスを復旧させる。また、代行機器切替部120は、代行先の機器に、切替後の処理代行時に必要となるビル構成情報107を送信する。
稼動情報表示部130は、代行機器切替部120による切替が行われた後の最終的なサービスの稼動情報をユーザに表示する。
なお、サービス切替システム10が備える上記の各部による処理の詳細は、図9~図17を参照して後述される。
図2は、図1に示したサービス切替システムのハードウェア構成例を説明するためのブロック図である。図2に示したように、処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、メモリ22、ストレージ装置23、及び画面インタフェース24を備え、これらの各構成は、ネットワーク25を介してサービス切替システム10の外部と接続される。処理装置20は、例えばパーソナルコンピュータやサーバ等の計算機であり、図1に示したサービス切替システム10は、1台以上の処理装置20によって構成される。
サービス切替システム10(1台以上の処理装置20)では、CPU21がストレージ装置23に格納されたプログラムをメモリ22に読み出して実行することによって、切替制御計算部110や代行機器切替部120による処理が実現される。例えば、切替制御計算部110による処理は、CPU21上で1つ以上のプログラムによって実行される。また、CPU21が画面インタフェース24における表示出力を制御することによって、稼動情報表示部130に所定の情報が表示される。また、メモリ22やストレージ装置23には、サービス切替システム10で使用される各種の情報(サービスリスト103、代行機器リスト104、サービス性能要件表105、特殊状況リスト106、ビル構成情報107、及び切替機器リスト108)が記憶される。
エレベーター11には、各エレベーターの運転を制御するために複数の制御装置(装置名としては、装置A-1,装置B-1,…と称する)が備えられている。また、制御装置の設置場所はそれぞれのエレベーター11内に限られるものではなく、例えば、図1に示したように、各エレベーター11による共通の制御装置として、各エレベーター11の運行効率を改善するために複数のエレベーター11の運行を制御する群管理装置12(装置名としては、装置C-1と称する)等を備えていてもよい。
故障検出装置13は、エレベーター11の制御装置(装置A-1,装置B-1,…,装置C-1)の故障診断を行う装置であり、各制御装置の現在の稼動状況を示す診断結果を機器稼動情報101としてサービス切替システム10に通知する。
状況分析装置14は、各種のセンサー及び処理装置によって構成され、ビル1内の状況分析を行って、現在の状況を示す分析結果を状況情報102としてサービス切替システム10に通知する。状況分析装置14は、具体的には例えば、監視カメラ及び画像処理装置を有し、ビル1内のエレベーター乗り場の混雑度合いを算出したり、乗りかご内の有人状況等を検出したりする。
また、図1に示したように、ビル1内の各構成は、ネットワーク5を介して、ビル1の外部、具体的には例えば、隣接ビル2、管制センタ3、及びクラウドサーバ4とも通信可能に接続される。
隣接ビルに2は、ビル1と同様に制御装置(例えば、装置A-2)が設置されている。管制センタ3は、各ビル(ビル1や隣接ビル2)を総合的に管制するための外部基地であって、各ビル(ビル1や隣接ビル2)からの稼動情報を収集し、サービスが復旧できない重大な故障の発生時には、保守員への通知等を行う。
クラウドサーバ4は、ビル1内の装置(例えば、装置A-1,装置B-1,…,装置C-1)に対応するいくつかの仮想化された装置(仮想装置)を有するサーバである。クラウドサーバ4は、ビル1内の装置で故障が発生した際に、サービス切替システム10によって、故障した装置の代行機器として仮想装置が選ばれた場合には、当該仮想装置を立ち上げて処理を切り替えるか、または常に仮想装置を動作させておいて直ちに処理を切り替えられるようにする。本例では、装置A-C及び装置B-Cを常に動作させているとする。
次に、サービス切替システム10による処理の実行のために必要な情報の詳細について、具体例を挙げて詳しく説明する。
図3は、サービスリストの一例を説明するための図である。サービスリスト103は、ビル1内において稼動されるサービスの一覧、及びそれらサービスの優先順位や稼動状況が記録された情報であり、図3には、サービスリスト103の具体例が示されている。
図3に例示したサービスリスト103は、表形式で保存され、行単位で1つのサービスがまとめられている。より具体的には、各サービスについて、当該サービスの稼動の優先順位を示す優先順位103aと、当該サービスのタイプを示すサービスタイプ103bと、同じタイプのサービス内での当該サービスの稼動の優先順位を示すサービス内優先順位103cと、当該サービスの稼動を継続させることの可否を示す継続可否103dと、当該サービスの稼動状況を示す稼動状況103eと、当該サービスのために使用している機器を示す使用中機器103fと、が記録される。
図3に示したサービスリスト103において、サービスタイプ103bには、サービスのタイプが略号で示されている。具体的には例えば、「Sa」は群管理サービスを意味し、「Sb」は救出運転サービスを意味し、「Sc」は通常運転サービスを意味するものとする。
なお、サービスタイプ103bには、複数行で同じ情報が記載されることがある(例えば図3の場合、データの1行目、2行目、及び4行目におけるサービスタイプ103bは何れも「Sa」。)が、同じサービスタイプ103bのサービスであってもサービス内優先順位103cが異なることから、個々のサービスは一意に識別される。ここで、サービス内優先順位103cは、例えば、群管理サービスの実現方法によって異なる値を付すようにしてもよい。具体的には、専用の群管理装置(例えば装置C-1)によって稼動するサービスに対してサービス内優先順位103cを「1」とし、エレベーター11内の制御装置同士(例えば装置A-1,装置B-1)の通信によって稼動するサービスに対してサービス内優先順位103cを「2」とする、等としてもよい。
すなわち、サービスリスト103では、ビル1内で稼動されるサービスについて、サービスタイプ103b及びサービス内優先順位103cをまとめて優先順位付けを行うことによって、優先順位103aを決定している。
また、継続可否103dには、機器の故障等を踏まえた稼動情報に基づいて、稼動継続の可否が「可」または「不可」で示される。また、稼動状況103eには、対象サービス(図3における同行のサービス)が、現在稼動しているか否かの稼動状況が「ON(稼動中)」または「OFF(非稼動中)」で示される。また、使用中機器103fは、稼動状況103eが「ON」であるときに記録される項目であり、対象サービスのためにどの装置が実際に使用されているかが記録される。
以上のサービスリスト103において、優先順位103a、サービスタイプ103b、及びサービス内優先順位103cは、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目である。一方、継続可否103d、稼動状況103e、及び使用中機器103fは、稼動可能サービス計算部111によって編集(更新)される動的な項目である。
図4は、代行機器リストの一例を説明するための図である。代行機器リスト104は、ビル1内に存在する機器の代わりに処理を行うことができるネットワーク上に接続された機器(代行機器)の一覧及びその性能が記録された情報である。なお、代行機器リスト104には、ネットワーク上で接続されたビル1内の機器も、代行機器として記録することができる。
図4に例示した代行機器リスト104は表形式で保存され、それぞれの代行機器に関する情報がまとめられている。具体的には、各代行機器について、当該代行機器のタイプを示す機器タイプ104aと、当該代行機器を特定するための機器番号104bと、当該代行機器の設置場所を示す場所104cと、当該代行機器を使用することの可否を示す使用可否104dと、当該代行機器の使用状況を示す使用状況104eと、当該代行機器の性能を示す性能104fと、が記録される。
図4に示した代行機器リスト104において、代行機器は、機器のタイプ(機器タイプ104a)ごとに複数の候補が存在することが通常であるため、機器番号104bで細分化することによって、同じ機器タイプ104aであっても個々の代行機器を一意に識別できるようにしている。具体的には例えば、図4のデータの1行目の代行機器は、機器タイプ104aが「装置A」で機器番号104bが「1」となっていることから、当該代行機器は図1においてエレベーター11の「装置A-1」であることが示される。同様に、図4のデータの2行目の代行機器は、図1においてクラウドサーバ4の「装置A-C」であり、図4のデータの3行目の代行機器は、図1においてエレベーター11の「装置B-1」である。
また、場所104cには、対象の代行機器のIPアドレスが示されている。また、使用可否104dには、対象の代行機器が現在使用可能であるか否かが「可」または「不可」で示される。故障等によって代行機器が使用できないときは「不可」となる。また、使用状況104eには、対象の代行機器が現在使用中であるか否かが記録される。具体的には、図3に例示したサービスリスト103において対象の代行機器が使用中機器103fに記録されている場合は「ON(使用中)」となり、使用中機器103fに記録されていない場合は「OFF(非使用中)」となる。性能104fには、対象の代行機器に関する種々の性能が記載され、図4では一例として、ネットワークのレイテンシ、通信品質、当該代行機器の立上げ時間、及び処理性能等が記載されている。
以上の代行機器リスト104において、機器タイプ104a、機器番号104b、場所104c、及び性能104fは、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目である。一方、使用可否104d及び使用状況104eは、稼動可能サービス計算部111によって編集(更新)される動的な項目である。
図5は、サービス性能要件表の一例を説明するための図である。サービス性能要件表105は、サービスリスト103に示された各サービスに必要な機器及び性能要件が関連付けて記録された情報である。
図5に例示したサービス性能要件表105は表形式で保存され、サービスリスト103にまとめられた各サービスをサービスタイプ別に並べ替え、各サービスに必要とされる情報が関連付けられて示される。具体的には、各サービスについて、当該サービスのタイプを示すサービスタイプ105aと、同じタイプのサービス内での当該サービスの稼動の優先順位を示すサービス内優先順位105bと、当該サービスを稼動するために必要な機器のタイプを示す機器タイプ105cと、当該サービス(または当該機器)に求められる性能要件105dと、が記録される。
図5に示したサービス性能要件表105において、サービスタイプ105a及びサービス内優先順位105bには、対象のサービスについてのサービスリスト103(図3)におけるサービスタイプ103b及びサービス内優先順位103cの情報が記載される。
また、機器タイプ105cには、対象のサービスを稼動するために必要な機器(構成機器)の機器タイプが記載され、1つのサービスに対して1または複数の機器タイプが記載される。例えば、図5において、サービスタイプ105a「Sb」及びサービス内優先順位105b「1」で特定されるサービス(この場合、サービス「Sb-1」と称する)では、稼動のために装置Aと装置Bとを使用することが示されている。なお、サービス「Sb-1」よりも優先順位が低いサービス「Sb-2」では、装置Bのみを使用することが示されている。
また、性能要件105dには、代行機器リスト104(図4)における性能104fと同様の項目が用意され、各項目には、対象のサービスを稼動するために構成機器に求められる性能が条件式で示される。なお、サービス性能要件表105(図5)の性能要件105dは、代行機器リスト104(図4)の性能104fに示される全ての項目について記載されなくてもよい。
以上のサービス性能要件表105において、各項目(サービスタイプ105a、サービス内優先順位105b、機器タイプ105c、及び性能要件105d)は、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目である。
図6は、特殊状況リストの一例を説明するための図である。特殊状況リスト106は、ビル1(特にエレベーターシステム)において発生し得る特殊な状況(例えば、「乗客閉じ込め」や「乗り場混雑」等)について、代行機器の性能を評価するための指標等が記載された情報である。
図6に例示した特殊状況リスト106は表形式で保存され、ビル1で発生し得る特殊な状況(特殊状況)におけるサービスの復旧に関連する情報がまとめられている。具体的には、各特殊状況について、当該特殊状況の概要を示す特殊状況106aと、当該特殊状況で影響を受けるサービスを示すサービス106bと、上記サービスを稼動させるために必要な機器(代行機器)の機器タイプを示す機器タイプ106cと、上記代行機器に求められる性能を評価するための基準を示す優先度値評価関数106dと、優先度値評価関数106dに記載された評価式によって算出される優先度値の最低水準を示す最低優先度値106eと、が記録される。
図6に示した特殊状況リスト106において、サービス106bには、サービスリスト103のサービスタイプ103bとサービス内優先順位103cと(サービス性能要件表105のサービスタイプ105aとサービス内優先順位105bとでもよい)を組合せたサービス名が記載される。例えば、サービスタイプが「Sa」でサービス内優先順位が「2」であれば、サービス名は「Sa-2」となる。機器タイプ106cには、サービス性能要件表105の機器タイプ105c(代行機器リスト104の機器タイプ104aでもよい)と同様の形式で、代行機器の機器タイプが記載される。
また、優先度値評価関数106dには、特殊状況において代行先機器の性能を評価するための基準として、代行機器の性能要件から特殊状況に応じた優先度値を計算するための優先度値評価関数の計算式が記載される。具体的には例えば、サービス性能要件表105の性能要件105dに示された各性能要件に重みを付ける等によって、重視すべき性能要件が優先的に評価されるような計算式を設定することができる。そして、最低優先度値106eには、優先度値を計算された代行機器が代行先機器として適切であるか否かを判定する際に用いられる閾値(最低水準)が記載される。
以上の特殊状況リスト106において、各項目(特殊状況106a、サービス106b、機器タイプ106c、優先度値評価関数106d、及び最低優先度値106e)は、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目である。
詳細は後述するが、本実施の形態に係るサービス切替システム10は、このような特殊状況リスト106を用いることによって、特殊状況において状況に応じて最適な代行機器への切替を実現することができる。
例えば、複数台のうちの1台のエレベーター11において制御装置(機器)が故障したとき、通常状況であれば、同等の性能を有する代行機器を一時間後に復旧させる、といった判断をすることが考えられる。このような場合、サービス性能要件表105の性能要件105dを満たすような代行機器への切替が行われればよい。しかし、当該エレベーター11に乗客が閉じ込められている(乗客閉じ込め)といった特殊状況の場合には、サービス性能要件表105の性能要件105dのうち特定の性能要件を優先的に評価して(例えば立上げ時間を重視して)、直ちに復旧するような処理が求められる。
このような特殊状況に対応するため、本実施の形態に係るサービス切替システム10では、切替制御計算部110(特にサービス切替計算部112)が、特殊状況リスト106を用いて状況に応じた優先度評価(優先度値評価関数106dの計算)を行い、その計算結果を最低優先度値106eと比較して最適な代行機器を決定し、代行機器切替部120が、最適な代行機器への切替を実現するようにしている。
図7は、ビル構成情報の一例を説明するための図である。ビル構成情報107は、ビル1の固有の情報(例えば、階床数や高さ等)や、エレベーター11の定格速度等の仕様情報が記録された情報である。ビル構成情報107は、ビル1内の機器の処理を隣接ビル2またはクラウドサーバ4等に設置された代行機器に切り替える際に、代行機器に渡すべき情報をまとめたものであり、後述する代行機器切替部120によって使用される。
図7に例示したビル構成情報107は表形式で保存され、ビル1に関する所定の項目(項目107a)と、各項目の値(値107b)との組合せで構成される。具体的には、図7の場合、ビル1の構成情報として、昇降路高さが「60m」で、階床数が「15」であることが記載されている。また、エレベーター11の構成情報として、使用しているハードウェア(例えばモーター)の型式を示すモーター型式が「M-001」であること、エレベーター11の数を示す号数機が「3」であること、及び、エレベーター11の定格速度を示す定格速度が「120m/min」であることが記載されている。なお、ビル構成情報107における項目107a及び値107bは、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目である。
図8は、切替機器リストの一例を説明するための図である。切替機器リスト108は、機器の故障時に切り替える代行機器が記録された情報である。詳細は後述するが、切替機器リスト108は、切替制御計算部110(稼動可能サービス計算部111及びサービス切替計算部112)による計算結果として作成される一時データであり、具体的には、図8に例示したように、サービスの継続または切替のために立上げる必要がある機器を示す機器108aと、当該機器の場所(例えばIPアドレス)を示す場所108bとの組合せで構成される。切替機器リスト108は代行機器切替部120に通知され、代行機器切替部120は、切替機器リスト108の記録内容に基づいて機器の切替を行う。
次に、本実施の形態に係るサービス切替システム10によって実行される処理について詳しく説明する。
サービス切替システム10では、エレベーター11の制御装置に故障が発生した場合や、ビル1内の状況に変化が生じた場合等に、サービスや制御装置の切替を判定及び制御する切替制御処理が行われる。切替制御処理において、切替制御計算部110(稼動可能サービス計算部111及びサービス切替計算部112)は、サービス及び制御装置を切り替えるか否かを判断するための処理(機器動作可否更新処理や継続不可サービス判断処理など)を行う。そして、代行機器切替部120は、切替制御処理のなかで作成される切替機器リスト108に基づいて、サービス及び制御装置を切り替える処理(代行機器切替処理)を実行する。また、切替制御計算部110(特にサービス切替計算部112)は、切替制御処理のなかで、代行機器切替処理の終了後の最終的なサービスの稼動情報を稼動情報表示部130に表示させる処理(サービス情報通知処理)を行う。
図9は、切替制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図9に例示した処理手順は、切替制御処理の概要を示すものであり、より詳細な処理手順は、図10以降に例示される。
図9に例示した切替制御処理は、例えば、故障検出装置13がビル1内の装置の故障を検出した場合や、状況分析装置14がビル1内で所定の特殊状況の発生を検出した場合に、所定の信号がサービス切替システム10に送信される等を契機として処理が開始される。また、他にも例えば、切替制御処理は定期的に実行される等としてもよい。
切替制御処理が開始されると、まず、ステップS101において、稼動可能サービス計算部111が、代行機器リスト104に対して、各機器の動作可否に関する情報(具体的には、使用可否104d)を更新する(機器動作可否更新処理)。機器動作可否更新処理の詳細は、別途図10を参照して説明される。
次にステップS102では、稼動可能サービス計算部111が、どのサービスが継続不可となったかを調べ、サービスリスト103に記載する(継続不可サービス判断処理)。具体的には、サービスリスト103の継続可否103d及び稼動状況103eを更新する。継続不可サービス判断処理の詳細は、別途図11を参照して説明される。
次にステップS103からは、ステップS102の継続不可サービス判断処理の処理後にサービスリスト103の継続可否103dが「不可」となったサービス(継続不可サービス)のそれぞれについて、優先順位(図3の優先順位103a)の高い順にステップS104~S106の処理が行われる。
まず、ステップS104では、サービス切替計算部112が、サービスリスト103を参照し、処理対象の継続不可サービスよりも優先順位が高いサービスが稼動しているか否かを確認する。すなわち、サービスリスト103に記載された各サービスのうち、サービスタイプ103bが継続不可サービスと同じで、かつサービス内優先順位103cが継続不可サービスよりも高いサービスについて、稼動状況103eが「ON」となっているか否かを判定する。ステップS104の判定で肯定結果が得られた場合には(ステップS104のYES)、処理対象の継続不可サービスと同じサービスタイプのサービスが既に稼動していることを意味するため、同じサービスタイプのサービスを新たに稼動する必要はなく、次の継続不可サービス(次に優先順位が高い継続不可サービス)に対する処理へ移り、ステップS104からの処理を繰り返す。
一方、ステップS104の判定で否定結果が得られた場合には(ステップS104のNO)、処理対象の継続不可サービスと同じサービスタイプのサービスが未だ稼動していないことを意味するため、サービス切替計算部112は、代行機器によって当該サービスを復旧するための処理(サービス復旧処理)を行う(ステップS105)。サービス復旧処理の詳細は別途図12~図14を参照して説明されるが、サービス復旧処理の実行に伴って、代行機器切替部120による制御装置の切替等の処理(代行機器切替処理)が行われるため、当該サービスが復旧される。
ステップS105のサービス復旧処理が終了した後は、ステップS106において、稼動可能サービス計算部111が、ステップS102と同様の継続不可サービス判断処理を改めて実行する。その結果、サービスリスト103の稼動情報(継続可否103d、稼動状況103e、使用中機器103f)が更新される。ステップS106の処理が終了すると、次の継続不可サービス(次に優先順位が高い継続不可サービス)に対する処理へ移り、ステップS104からの処理を繰り返す。
そして、上記ステップS104~S106の処理が全ての継続不可サービスについて完了すると、ステップS107において、サービス切替計算部112は、切替後(復旧後)の最終的なサービスの稼動情報を稼動情報表示部130に表示させるサービス情報通知処理を行う。サービス情報通知処理の詳細は、別途図16を参照して説明される。ステップS107の処理の後、切替制御処理は終了する。
次に、切替制御処理に関する詳細な処理手順を順に説明する。
図10は、機器動作可否更新処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、機器動作可否更新処理は、稼動可能サービス計算部111によって実行される。
図10によればまず、稼動可能サービス計算部111は、故障検出装置13から機器稼動情報101を取得する(ステップS201)。そして、機器稼動情報101に基づいて現在稼動している機器の動作可否を確認し、動作可能な機器については、代行機器リスト104の使用可否104dを「可」とし(ステップS202)、動作不可能な機器については「不可」に変更する(ステップS203)。
以上、図10に例示した機器動作可否更新処理が行われることによって、代行機器リスト104において、機器の動作可否に関する情報(使用可否104d)が更新される。
図11は、継続不可サービス判断処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、機器動作可否更新処理は、稼動可能サービス計算部111によって実行される。
図11によれば、ステップS301において、稼動可能サービス計算部111が、サービスリスト103にまとめられたサービスのうち、稼動状況103eが「ON(稼動中)」となっているサービスについて、優先順位103aの高い順に1つずつ、以下のステップS302~S305の処理を開始する。
まず、ステップS302においては、稼動可能サービス計算部111は、サービスリスト103を参照して、ステップS301で選択されたサービスが使用する機器を使用中機器103fから取得し、取得した機器の使用可否を判断する。より具体的には、代行機器リスト104を参照して、上記機器の使用可否104dを確認する。
そして、ステップS303において、稼動可能サービス計算部111は、ステップS302で確認した結果、ステップS301で選択されたサービスが使用する機器の全てが使用可能(すなわち、代行機器リスト104の使用可否104dが「可」である)か否かを判定する。当該機器が全て使用可能であった場合は(ステップS303のYES)、稼動可能サービス計算部111は、サービスリスト103において、当該サービスの継続可否103dを「可」に更新する(ステップS304)。一方、ステップS301で選択されたサービスが使用する機器が1つでも使用不可能(使用可否104dが「不可」)であった場合は(ステップS303のNO)、稼動可能サービス計算部111は、サービスリスト103において、当該サービスの継続可否103dを「不可」に更新するとともに、当該サービスの稼動状況103eを「OFF」に更新する(ステップS305)。
ステップS304またはステップS305の処理が終了すると、稼動可能サービス計算部111は、次の稼動中サービス(すなわち、稼動中のサービスのうち、現在選択しているサービスの次に優先順位が高いサービス)を選択し、このサービスについてステップS302からの処理を繰り返す。
そして、上記ステップS302~S305の処理が全ての稼動中サービスについて完了すると、稼動可能サービス計算部111は、継続不可サービス判断処理を終了する。
以上、図11に例示した継続不可サービス判断処理が行われることによって、サービスリスト103において、サービスの継続可否に関する情報(継続可否103d及び稼動状況103e)が更新される。
図12は、サービス復旧処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、サービス復旧処理は、サービス切替計算部112によって実行される。
図12によれば、ステップS401において、サービス切替計算部112は、状況分析装置14から状況情報102を取得し、状況情報102に示された現在の状況と特殊状況リスト106に示された特殊状況(特殊状況106a)とを比較する。ここで、具体的な例示は省略するが、状況情報102は、少なくとも、特殊状況106aのラベル値との合致比較が可能な情報を有するものとし、例えば「乗客閉じ込め」や「乗り場混雑」といったラベル値で与えられるとする。また例えば、状況情報102は、後述する第2の実施の形態において例示する図19の状況情報202のように、状況をより細分化した項目設定がなされた形式で構成されてもよい。
そしてステップS402では、サービス切替計算部112は、ステップS401の比較に基づいて、現在の状況が特殊状況であるか否かを判定する。
ステップS402の判定において、現在の状況が特殊状況106aの何れかに該当(合致)する場合は(ステップS402のYES)、現在の状況が「特殊状況」であることを意味するため、サービス切替計算部112は、ステップS403に進み、特殊状況用のサービス復旧処理(特殊状況時サービス復旧処理)を行う。特殊状況時サービス復旧処理の詳細は図13を参照して後述する。
一方、ステップS402の判定において、現在の状況が特殊状況106aの何れにも該当(合致)しない場合は(ステップS402のNO)、現在の状況が所謂「通常状況」であることを意味するため、サービス切替計算部112は、ステップS404に進み、通常状況用のサービス復旧処理(通常状況時サービス復旧処理)を行う。通常状況時サービス復旧処理の詳細は図14を参照して後述する。
そして、上記ステップS403またはステップS404の処理が完了すると、サービス切替計算部112は、サービス復旧処理を終了する。
図13は、特殊状況時サービス復旧処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。特殊状況時サービス復旧処理は、サービス復旧処理のなかで実行される処理であって(図12のステップS403)、サービス切替計算部112によって実行される。
図13によれば、ステップS501において、サービス切替計算部112は、復旧を試みるサービスについて、当該サービスを稼動するために必要な構成機器(復旧するサービスの構成機器)の機器タイプごとに、以下のステップS502~S506の処理を開始する。復旧するサービスの構成機器の機器タイプは、サービス性能要件表105の機器タイプ105cから取得することができる。
具体的には例えば、特殊状況が「乗客閉じ込め」であるとすると、図6の特殊状況リスト106によれば、復旧するサービスは、「Sa-1」、「Sa-2」、「Sb-1」、・・・となる。ここで、簡便のために、復旧するサービスを「Sb-1」に絞って説明を続けると、図5のサービス性能要件表105によれば、サービス「Sb-1」の構成機器の機器タイプは、「装置B」及び「装置A」となる。そこで、「装置B」と「装置A」のそれぞれの機器タイプについて、ステップS502~S506の処理が行われる。
まず、ステップS502において、サービス切替計算部112は、特殊状況リスト106を参照し、復旧するサービス(サービス106b)と当該サービスの構成機器の機器タイプ(機器タイプ106c)との組に紐付けられた優先度値評価関数(優先度値評価関数106d)を取得する。
上記の具体例を用いて説明すると、復旧するサービスが「Sb-1」で「装置A」の機器タイプについてステップS502の処理が行われるとする場合、図6の特殊状況リスト106によれば、「e1*レイテンシ+f1*通信品質+・・・」の優先度値評価関数が取得される。
次に、ステップS503において、サービス切替計算部112は、代行機器リスト104を参照し、該当する機器タイプにまとめられた代行機器のそれぞれについて、それぞれの性能値を上記の優先度値評価関数に適用することによって、優先度値を計算する。
上記の具体例を用いて説明すると、図4の代行機器リスト104によれば、該当する機器タイプ(装置A)にまとめられた代行機器は、機器番号104bが「1」の代行機器(すなわち、装置A-1)と、機器番号104bが「C」の代行機器(すなわち、装置A-C)である。このうち例えば、代行機器「装置A-1」については、性能104fの記載に基づいて、レイテンシ「1ms」及び通信品質「200M(bps)」が優先度値評価関数に適用されて優先度値計算が計算される。また、代行機器「装置A-C」についても、同様にして優先度値が計算される。
そして、ステップS504において、サービス切替計算部112は、ステップS503でそれぞれ優先度値を計算した代行機器のうちから、優先度値が最も高い(大きい)代行機器を代行機器候補として選択する。
次に、ステップS505において、サービス切替計算部112は、特殊状況リスト106を参照して、代行機器候補の優先度値が最低優先度値以上であるか否かを判定する。より具体的には、特殊状況リスト106のうち、ステップS502で取得した優先度値評価関数に対応する最低優先度値106eと比較すればよく、例えば、上記の具体例の場合は「Z1」が比較対象の最低優先度値である。
ステップS505で比較した結果、代行機器候補の優先度値が最低優先度値以上であった場合は(ステップS505のYES)、代行機器に求められる性能を評価するための基準を満たしていることから、サービス切替計算部112は、当該代行機器候補に選択された代行機器を切替機器リスト108に追加する(ステップS506)。
一方、ステップS505で比較した結果、代行機器候補の優先度値が最低優先度値未満であった場合は(ステップS505のNO)、代行機器に求められる性能を評価するための基準を満たさないことから、代行機器への切替を諦め、サービス切替計算部112は、ステップS508の処理を行う。ステップS508では、切替機器リスト108の記録内容がクリアされ、特殊状況時サービス復旧処理を終了する。したがって、当該サービスの復旧は行われないこととなるが、但し、このような場合でも、引き続き行われる切替制御処理によって、サービスリスト103内で当該サービスよりも優先順位103aが低く設定された、同じサービスタイプのサービスが復旧できる可能性を残すことができる。
ステップS506の処理が終了すると、サービス切替計算部112は、復旧するサービスの構成機器の機器タイプのうちから次の機器タイプ(未処理の機器タイプ)を選択し、この機器タイプについてステップS502~S506の処理を繰り返す。
また、ステップS506の処理が終了したときに、復旧するサービスの構成機器の全ての機器タイプについて、優先度値が最低優先度値以上となる代行機器候補が見つかった場合(すなわち、復旧するサービスの構成機器の全ての機器タイプについてステップS506の処理が行われた場合)には、サービス切替計算部112は、ステップS507の処理を行う。
ステップS507では、サービス切替計算部112は、代行機器が記録された切替機器リスト108を代行機器切替部120に送信する。なお、ステップS507における切替機器リスト108の送信は、復旧するサービス単位で行われる。具体的には例えば、復旧するサービス「Sb-1」について、当該サービスの構成機器の全ての機器タイプに関する代行機器の情報がまとめて送信される。そして、ステップS507において切替機器リスト108を受信した代行機器切替部120は、切替機器リスト108の記録内容に基づいて、特殊状況に応じた最適な代行機器への切替を行う(代行機器切替処理)。代行機器切替処理の詳細は、別途図15を参照して説明される。
最後に、ステップS508において、サービス切替計算部112は、切替機器リスト108の記録内容をクリアし、特殊状況時サービス復旧処理を終了する。なお、ステップS507を経てステップS508の処理が行われる場合には、確実に代行機器の情報を通知するために、切替機器リスト108の記録内容が代行機器切替部120側で完全に受信された後、あるいは、代行機器切替部120による代行機器切替処理が終了した後に、切替機器リスト108の記録内容のクリアが行われることが好ましい。
図14は、通常状況時サービス復旧処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。通常状況時サービス復旧処理は、サービス復旧処理のなかで実行される処理であって(図12のステップS404)、サービス切替計算部112によって実行される。
図14によれば、ステップS601において、サービス切替計算部112は、サービス性能要件表105を参照し、復旧を試みるサービスについて、当該サービスを稼動するために必要な構成機器(復旧するサービスの構成機器)の機器タイプ(機器タイプ105c)と性能要件(性能要件105d)とを取得する。
次いで、ステップS602において、サービス切替計算部112は、ステップS601で取得した機器タイプ(復旧するサービスの構成機器の機器タイプ)ごとに、以下のステップS603~S605の処理を開始する。
まず、ステップS603において、サービス切替計算部112は、代行機器リスト104の機器タイプ104aを参照し、ステップS602で選択した機器タイプと同じ機器タイプの代行機器候補を取得する。そして、ステップS604では、ステップS603で取得した代行機器候補について、その性能(代行機器リスト104の性能104f)がサービス性能要件表105の性能要件105d(ステップS601で取得)を満たし、かつ、使用可能(代行機器リスト104の使用可否104dが「可」)となっている機器が有るか否かを判定する。
ステップS604の条件を満たす代行機器候補が存在した場合は(ステップS604のYES)、当該代行機器候補に選択された代行機器を切替機器リスト108に追加する(ステップS605)。
一方、ステップS604の条件を満たす代行機器候補が存在しなかった場合は(ステップS604のNO)、使用可能な代行機器候補のなかに、復旧させるサービスの性能要件を満たすものがないことを意味することから、代行機器への切替を諦め、サービス切替計算部112は、ステップS607の処理を行う。ステップS607では、切替機器リスト108の記録内容がクリアされ、通常状況時サービス復旧処理を終了する。
ステップS605の処理が終了すると、サービス切替計算部112は、復旧するサービスの構成機器の機器タイプのうちから次の機器タイプ(未処理の機器タイプ)を選択し、この機器タイプについてステップS603~S605の処理を繰り返す。
また、ステップS605の処理が終了したときに、復旧するサービスの構成機器の全ての機器タイプについて、代行機器が切替機器リスト108に追加された場合(すなわち、復旧するサービスの構成機器の全ての機器タイプについてステップS605の処理が行われた場合)には、サービス切替計算部112は、ステップS606の処理を行う。
ステップS606では、サービス切替計算部112は、代行機器が記録された切替機器リスト108を代行機器切替部120に送信する。なお、ステップS606における切替機器リスト108の送信は、特殊状況時サービス復旧処理の場合(図13のステップS507)と同様に、復旧するサービス単位で行われる。そして、ステップS606において切替機器リスト108を受信した代行機器切替部120は、切替機器リスト108の記録内容に基づいて、通常状況に応じた最適な代行機器への切替を行う(代行機器切替処理)。代行機器切替処理の詳細は、別途図15を参照して説明される。
最後に、ステップS607において、サービス切替計算部112は、切替機器リスト108の記録内容をクリアし、通常状況時サービス復旧処理を終了する。なお、ステップS606を経てステップS607の処理が行われる場合には、確実に代行機器の情報を通知するために、切替機器リスト108の記録内容が代行機器切替部120側で完全に受信された後、あるいは、代行機器切替部120による代行機器切替処理が終了した後に、切替機器リスト108の記録内容のクリアが行われることが好ましい。
図15は、代行機器切替処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、代行機器切替処理は代行機器切替部120によって実行され、切替制御処理においてサービス復旧処理(特殊状況時サービス復旧処理、通常状況時サービス復旧処理)が行われるときに送信される切替機器リスト108に基づいて、機器の切替が行われる。
図15によれば、まず、代行機器切替部120は、特殊状況時サービス復旧処理のステップS507または通常状況時サービス復旧処理のステップS606でサービス切替計算部112から送信される切替機器リスト108を取得する(ステップS701)。
そしてステップS702からは、切替機器ごとの処理として、切替機器リスト108に記録された代行機器(機器108a)ごとに、ステップS703~S704の処理が行われる。
まず、ステップS703では、代行機器切替部120は、対象の代行機器(より具体的には、その設置場所(場所108b))にビル構成情報107を送信し、当該代行機器がサービスを代行するために必要な、サービスの処理の切替を実施する。そして、ステップS703で切替が実施された後、ステップS704では、代行機器切替部120は、サービスリスト103内の該当サービスの稼動状況103eを「ON(稼動中)」に変更し、切り替えた代行機器についての代行機器リスト104内の使用状況104eを「ON(使用中)」に変更する。
ステップS704の処理が終了すると、次の代行機器についても同様にステップS703~S704の処理を行う。切替機器リスト108に記録された代行機器の全てについてステップS703~S704の処理が完了すると、代行機器切替処理は終了する。また、前述したように、サービス切替計算部112からはサービス単位で切替機器リスト108が送信されるため、代行機器切替部120は、切替機器リスト108を受信するたびに、上記の代行機器切替処理を行って、機器の切替を行う。
図16は、サービス情報通知処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、サービス情報通知処理は、サービス切替計算部112によって制御される。なお、図16に例示するサービス情報通知処理では、ビル1内に配置された稼動情報表示部130において切替後の情報を表示するだけでなく、ネットワーク5を介して接続されたビル1の外部(例えば管制センタ3)にも機器の故障に関する情報を通知するようにしている。
図16によれば、ステップS801において、サービス切替計算部112は、図9の切替制御処理におけるステップS101~S106の処理を経て最終的に更新されたサービスリスト103(厳密には、代行機器切替処理におけるサービスリスト103の更新(図15のステップS704)を含む)を稼動情報表示部130に表示する。
また、ステップS802において、サービス切替計算部112は、管制センタ3に、機器の故障情報を含む機器稼動情報101を通知する。機器稼動情報101が通知されることによって、管制センタ3では、機器の故障を認識することができ、必要に応じて保守員を修理に向かわせることができる。
次に、ステップS803では、サービス切替計算部112は、サービスリスト103に記録された全てのサービスを確認し、サービスが稼動していないサービスタイプが存在するか否かを調べる。
ステップS803においてサービスが1つも稼動していないサービスタイプ(稼動不可なサービスタイプ)が存在する場合には(ステップS803のYES)、サービス切替計算部112は、管制センタ3に稼動不可なサービスタイプを通知するとともに、稼動情報表示部130にも稼動不可なサービスタイプを表示し(ステップS804)、サービス情報通知処理を終了する。稼動不可なサービスタイプが通知されることによって、管制センタ3では、例えば群管理レベルで全てのサービスが稼動不能になっているといった状況を認識することができる。あるサービスタイプが全て稼動不能という状況は、エレベーターシステムを停止せざるを得ない程度に緊急性の高い事態であり、このような事態を把握できるようにすることで、管制センタ3から、迅速に保守員を修理に向かわせることができる。
また、ステップS803において全てのサービスタイプにおいて少なくとも1つのサービスが稼動している場合には(ステップS803のNO)、稼動不可なサービスタイプはないため、通知をする必要はなく、サービス情報通知処理を終了する。
図17は、稼動情報表示部の一例を説明するための図である。図17には、サービス情報通知処理が行われたときの稼動情報表示部130の表示画面の一例が示されている。
図17の例示によれば、稼動情報表示部130は、サービスリスト表示部131の表示領域と稼動不可サービスタイプ表示部132の表示領域とを有している。このうち、サービスリスト表示部131は、サービス情報通知処理のステップS801によって表示され、切替制御処理の実行に伴って最終的に更新されたサービスリスト103、すなわち、代行機器切替処理による代行機器への切替後のサービスリスト103を表示する。また、サービスリスト表示部131は、サービス情報通知処理のステップS804によって表示され、代行機器切替処理による制御装置やサービスの切替後でもサービスが1つも稼動していないサービスタイプ(稼動不可なサービスタイプ)をリスト形式で表示する。
以上に説明したような切替制御処理及び代行機器切替処理を行うことによって、本実施形態に係るサービス切替システム10は、エレベーターの制御装置(エレベーターシステムの機器)が作動不可となった場合でも、状況に応じて最適な代行機器に切り替えることができるため、エレベーターシステムの可用性を高めることができる。
また、本実施形態に係るサービス切替システム10によれば、代行機器による機器の切替(サービスの復旧)ができない場合には、稼動情報表示部130や管制センタ3に対して、稼動不可な装置・サービスの情報や、稼動不可なサービスタイプの情報が通知される(図16のステップS801~S804)。このような通知を行うことで、稼動情報表示部130を見る利用者や、管制センタ3の管理者に、サービスを継続できないことを認識させることができる。
また、本実施形態に係るサービス切替システム10によれば、故障検出装置13による故障の診断結果や状況分析装置14による特殊状況の分析結果等、複数の契機から切替制御処理装置を実行させることができるので、複数の状況に応じて柔軟に、装置の切替やサービスの復旧を行うことができる。具体的には例えば、制御装置の故障によってエレベーター11が停止したというような緊急性の高い状況で装置の切替やサービスの復旧ができるだけでなく、乗り場混雑といったような緊急性が比較的低い状況でも装置の切替やサービスの復旧が可能となる。このため、利用者に対して、より細やかなサービスを提供することに期待できる。
(2)第2の実施の形態
上述した本発明の第1の実施の形態は、エレベーター11の装置が故障した場合やビル1内の状況の変化が生じた場合に、サービスを提供するために必要な処理を実行する装置を状況に応じて最適な代行機器に切り替えることによって、当該エレベーター11によるサービスを継続するものであった。
ところで、近年のエレベーターシステムでは、ビル1内に多数のエレベーター11が設置されていることも多く、1つの号機で故障が発生したとしても、他の号機に処理を切り替えることで、サービスを継続して提供できる場合がある。そこで以下では、本発明の第2の実施の形態として、上記のようにビル1内に多数のエレベーター11が設置されている場合に、1つの号機で故障等(例えば状況の変化を含む)が生じたとき、状況に応じて最適な代行機器に切り替えることができるサービス切替システム、及びそのサービス切替方法について説明する。
なお、第2の実施の形態に係るサービス切替システムの構成や処理は、第1の実施の形態に係るサービス切替システム10と共通する部分が多いため、共通部分については第1の実施の形態で説明した構成や処理を流用し、その説明を省略する。すなわち、以下の説明では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
図18は、第2の実施の形態で用いるサービスリストの一例を説明するための図である。図18に例示したサービスリスト203では、第1の実施の形態で図3に例示したサービスリスト103と同様の項目である優先順位203a~使用中機器203fの他に、サービスタイプ203bに対応する項目として、使用可能エレベーター203gと使用中エレベーター203hとが追加されている。
使用可能エレベーター203gには、各サービスタイプにおいて使用できるエレベーター11が記載され、使用中エレベーター203hには、各サービスタイプで現在使用されているエレベーター11が記載される。なお、使用可能エレベーター203gは、予めエレベーター管理者等によって提供(決定)される静的な項目であり、使用中エレベーター203hは、サービス切替計算部112によって編集(更新)される動的な項目である。
例えば図18の場合、使用可能エレベーター203gによれば、サービスタイプ「Sa」,「Sb」は「1号機」のエレベーター11のみで稼動できるサービスであり、サービスタイプ「Sc」は、「1号機」、「2号機」、または「3号機」のエレベーター11の何れでも稼動できるサービスであることが示される。そして、使用中エレベーター203hによれば、現在のサービスタイプ「Sa」,「Sb」,「Sc」は、全て「1号機」のエレベーター11によって稼動していることが示される。
図19は、第2の実施の形態で用いる状況情報の一例を説明するための図である。前述した第1の実施の形態では、状況情報102について「乗客閉じ込め」や「乗り場混雑」といったラベル値が与えられるとしたが、図19に例示した状況情報202では、状況を分類する項目202aがより細分化されて設定され、各項目202に対応する情報が値202bに記載されている。
具体的には、図19の場合、エレベーター11の状況に関する項目202aとして、当該エレベーターが稼動できるか否かを示す「稼動可否」、当該エレベーターの現在位置を示す「位置」、当該エレベーターの現在の乗客数を示す「かご内人数」等が設定されている。そして各項目に対応する情報(値202b)としては、例えば「1号機」のエレベーター11であれば、「稼動不可」の状態で「1階」にあり、乗客数は「0人」であることが示されている。
次に、第2の実施の形態において実行される処理について説明する。第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、エレベーター11の制御装置に故障が発生した場合や、ビル1内の状況に変化が生じた場合等に、サービスや制御装置の切替を判定及び制御する切替制御処理が行われる。切替制御処理において、切替制御計算部110(稼動可能サービス計算部111及びサービス切替計算部112)は、サービス及び制御装置を切り替えるか否かを判断するための処理(機器動作可否更新処理や継続不可サービス判断処理など)を行う。そして、代行機器切替部120は、切替制御処理のなかで作成される切替機器リスト108に基づいて、サービス及び制御装置を切り替える処理(代行機器切替処理)を実行する。また、切替制御計算部110(特にサービス切替計算部112)は、切替制御処理のなかで、代行機器切替処理の終了後の最終的なサービスの稼動情報を稼動情報表示部130に表示させる処理(サービス情報通知処理)を行う。したがって、基本的には、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態で図9~図16に例示したのと同様の処理が行なわれる。
但し、第2の実施の形態では、切替制御処理のなかのサービス復旧処理(図9のステップS105に相当)において、同一ビル内の他号機のエレベーター11によるサービスの切替を図る処理が追加される点が、第1の実施の形態とは異なっている。そこで、以下の説明では、第1の実施の形態におけるサービス復旧処理(図12~図14)を第1サービス復旧処理と称し、第2の実施の形態におけるサービス復旧処理を第2サービス復旧処理と称する。
図20は、第2サービス復旧処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。前述したように、図20に例示する第2サービス復旧処理は、図9に例示した切替制御処理におけるステップS105の処理と置き換えられる処理である。したがって、より詳しく言えば、継続不可サービス判断処理(図9のステップS102)の処理後にサービスリスト203の継続可否103dが「不可」となったサービス(継続不可サービス)のそれぞれについて、優先順位(図3の優先順位103a)の高い順に図9のステップS104~S106の処理が行なわれるなかで、ステップS105の処理に代えて実行される。また、第2サービス復旧処理は、第1サービス復旧処理と同様に、切替制御計算部110(サービス切替計算部112)によって実行される。
図20によれば、ステップS901において、サービス切替計算部112は、状況分析装置14から状況情報202を取得する。そしてステップS902において、サービス切替計算部112は、サービスリスト203の使用可能エレベーター203gを参照して、処理対象の継続不可サービスを稼動可能なエレベーター11が複数存在するか否かを判定する。
ステップS902の判定で肯定結果が得られた場合(ステップS902のYES)、サービス切替計算部112は、状況情報202に記載された各エレベーター11の稼動可否の値を確認し、現在サービスを担当しているエレベーター以外に、現時点において当該サービスを担当可能(稼動可能)なエレベーターが存在するか否かを判定する(ステップS903)。補足すると、現在サービスを担当しているエレベーターは、サービスリスト203の使用中エレベーター203hに記載されている。また、当該サービスを担当可能(稼動可能)なエレベーターは、サービスリスト203の使用可能エレベーター203gに記載されており、現時点における各エレベーターの稼動可否は状況情報202に記載されている。
ステップS903の判定で肯定結果が得られた場合(ステップS903のYES)、すなわち、当該サービスに関して、サービスリスト203の使用中エレベーター203gに記載された複数のエレベーターのなかに、状況情報202から稼動可能と判断され、かつ、使用中エレベーター203hに記載されたエレベーター以外のエレベーターが存在する場合には、サービス切替計算部112は、該当するエレベーターに当該サービスを担当させるようサービスの切替を行い、サービスリスト203の使用中エレベーター203hを切替後の情報に更新する(ステップS904)。なお、ステップS904の処理のうち、該当するエレベーターへのサービスの切替は、サービス切替計算部112以外の処理部(例えば代行機器切替部120)が行うようにしてもよい。ステップS904の処理によって、本実施の形態に係るサービス切替システム10は、機器の切替や代行機器の立上げ時間を待つことなく、サービスを継続(継続不可サービスを復旧)させることができる。ステップS904の処理が行なわれた後は、第2サービス復旧処理は終了し、図9のステップS106の処理に進む。
一方、ステップS902の判定で、処理対象の継続不可サービスを稼動可能なエレベーター11が複数存在しなかった場合(ステップS902のNO)、あるいは、ステップS903の判定で、処理対象の継続不可サービスを稼動可能なエレベーター11が複数存在するものの、その何れも現時点では稼動不可能となっていた場合(ステップS903のNO)は、当該サービスを担当可能(稼動可能)な他のエレベーター11が存在しないことを意味する。このような場合、サービス切替計算部112は、第1の実施の形態と同様に、代行機器への切替によってサービスの復旧を図るために、第1サービス復旧処理を行う(ステップS905)。第1サービス復旧処理の詳細な処理手順は、図12~図14に例示した通りなので、説明を省略する。そして、ステップS905の処理が行なわれた後は、第2サービス復旧処理は終了し、図9のステップS106の処理に進む。
以上のように、第2の実施の形態では、ビル1内に複数のエレベーター11が設置されている場合に、1つの号機で故障や状況の変化が生じたときに、機器の切替を試みるよりも前に、可能であれば、他の号機に代行させることによってサービスを継続(復旧)させるようにしている。このとき、機器の切替や代行機器の立上げを待つ必要がないため、速やかにサービスの継続(復旧)することができ、エレベーターシステムの可用性を向上させる効果に期待できる。
また、第2の実施の形態によれば、乗り場混雑といったような緊急性が比較的低く、エレベーター11が強制的に停止されないような特殊状況の場合に、他号機によるサービスの代行切替が行われることによって、エレベーターシステム全体で見たときにサービスの提供を中断することなく、状況に応じてサービスを継続して提供することができるため、可用性及び利便性を向上させる効果に期待できる。
また、第2の実施の形態では、他号機によるサービスの代行切替を実行できない場合であっても、第1の実施の形態と同様に、適切な代行機器による装置の切替を行ってサービスの復旧を図ることができるため、第1の実施の形態によって得られるのと同様の効果にも期待できる。
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。