JP7010431B2 - ビニルアルコール系重合体 - Google Patents
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Description
[1]下記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位から選ばれる少なくとも1種と、ビニルアルコール単位とを含むビニルアルコール系重合体。
(一般式(1a)中、R1は炭素数1~3のアルキル基を有してもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、R2は炭素数1~3のアルキル基を表す。一般式(1b)中、R3は炭素数1~3のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
[3]平均残存水酸基量が60モル%超である、[1]又は[2]に記載のビニルアルコール系重合体。
[4]前記ビニルアルコール系重合体1.0gを90℃の水99gに添加し、200rpmで2時間撹拌したときの未溶解分が0.1g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のビニルアルコール系重合体。
[6]R1中に含まれる炭素数及びR2中に含まれる炭素数の合計が2以上8以下である、[5]に記載のビニルアルコール系重合体。
[7]前記一般式(1a)のR2がメチル基である、[5]又は[6]に記載のビニルアルコール系重合体。
[9][8]に記載の樹脂組成物からなる接着剤。
[10]エラストマーとの接着用である[9]に記載の接着剤。
[11][8]に記載の樹脂組成物からなるビニルアルコール系樹脂繊維処理剤。
本発明のビニルアルコール系重合体は、下記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位から選ばれる少なくとも1種と、ビニルアルコール単位とを含むビニルアルコール系重合体である。本発明のビニルアルコール系重合体は、側鎖の末端に反応性炭素-炭素二重結合を有し、反応性に優れていることから、本発明のビニルアルコール系重合体を接着剤として用いた場合にエラストマー等に対して優れた接着性を示す。また、側鎖の末端に存在する前記反応性炭素-炭素二重結合は、主鎖の近傍に存在していることから反応性が極端に高くなく、製造及び保管時にゲル化しにくいという性質も有している。なお、本発明において「反応性炭素-炭素二重結合」とは、熱又は光等の外部エネルギーにより他の成分と反応し得る炭素-炭素二重結合を意味し、通常、芳香族環に含まれる炭素-炭素二重結合は含まず、脂肪族炭素-炭素二重結合を指す。また、本明細書において「エラストマー」は、ゴム弾性を示す高分子物質を意味し、熱可塑性エラストマーや一般的にゴムと称される熱硬化性エラストマーを含む。
本発明のビニルアルコール系重合体は、下記一般式(1a)で表されるアセタール構成単位(以下、「アセタール構成単位(1a)」ともいう)、及び後述する一般式(1b)で表されるアセタール構成単位(以下、「アセタール構成単位(1b)」ともいう)から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
前記ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対する前記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位の合計の含有量(以下、「アセタール化度」ともいう)は0.01モル%以上85モル%以下であることが好ましい。前記アセタール構成単位の合計の含有量が前記範囲内であると、本発明のビニルアルコール系重合体がゲル化しにくくなり保存安定性が向上すると共に、高エネルギー線に対する反応性が向上する。前記観点から、前記ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対する前記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位の合計の含有量は、好ましくは0.05モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、より更に好ましくは1.0モル%以上、より更に好ましくは1.5モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、より更に好ましくは10モル%以下、より更に好ましくは5モル%以下、より更に好ましくは3モル%以下である。なお、本発明において「構成単位」は重合体を構成する繰り返し単位を意味し、例えばビニルアルコール単位は「1単位」、2単位のビニルアルコール単位がアセタール化された構造、すなわち前記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位は「2単位」と数える。
上記アセタール構成単位の合計の含有量は、1H-NMRスペクトルにより求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
本発明のビニルアルコール系重合体の平均残存水酸基量は60モル%超であることが好ましい。平均残存水酸基量が前記範囲内であると、本発明のビニルアルコール系重合体がゲル化しにくくなり保存安定性が向上する傾向にある。前記観点から、平均残存水酸基量は70モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましく、85モル%以上がより更に好ましく、90モル%以上がより更に好ましい。なお、本発明における平均残存水酸基量は、前記ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対するビニルアルコール単位の含有量である。本発明のビニルアルコール系重合体の平均残存水酸基量は1H-NMR又はIR(赤外分光法)により測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
本発明のビニルアルコール系重合体は、その1.0gを90℃の水99gに添加し、200rpmで2時間撹拌したときの未溶解分が0.1g以下であることが好ましい。前記未溶解分が前記上限値以下であると水に溶解しやすいことを示す。水に溶解しやすいほど、含水率の高いハイドロゲルを作製可能である。前記観点から、前記未溶解分は、好ましくは0.05g以下、より好ましくは0.03g以下、更に好ましくは0.02g以下、特に好ましくは0.01g以下であり、実質的に0gが最も好ましい。
本発明のビニルアルコール系重合体は、前記一般式(1a)及び一般式(1b)で表されるアセタール構成単位から選ばれる少なくとも1種、及びビニルアルコール単位の他に、その他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位としては、ポリビニルアルコールの原料となる酢酸ビニル等のビニルエステル単量体と共重合可能な反応性炭素-炭素二重結合を有する不飽和単量体に由来する構成単位が挙げられる。前記反応性不飽和単量体としては、例えばエチレン、1-ブテン、及びイソブチレン等のオレフィン;アクリル酸及びその誘導体;メタクリル酸及びその誘導体;アクリルアミド及びその誘導体;メタクリルアミド及びその誘導体;マレイン酸及びその誘導体;無水マレイン酸及びその誘導体;等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニルアルコール系重合体が前記反応性不飽和単量体に由来する他の構成単位を含有する場合、その含有量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、3モル%以下が更に好ましい。
本発明のビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は特に制限されないが、取り扱い性の観点から、4000以下が好ましく、3500以下がより好ましく、3000以下が更に好ましく、そして、ビニルアルコール系重合体を接着剤として用いた場合の接着性を向上させる観点から、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましい。ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度は、例えばJIS K 6726に準拠した方法により測定できる。
本発明のビニルアルコール系重合体の製造方法に特に制限はないが、ポリビニルアルコールと前述のアルデヒド及び/又はそのアセタール化体とを反応させ、ポリビニルアルコールをアセタール化することにより得ることができる。具体的なアセタール化方法としては、アルデヒド及び/又はそのアセタール化体及びポリビニルアルコールを溶解し、酸触媒存在下で反応させ、その後塩基性物質で中和することによりビニルアルコール系重合体の水溶液を得る方法等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は前述の本発明のビニルアルコール系重合体を含むものであり、本発明の接着剤及びビニルアルコール系樹脂繊維処理剤は前記樹脂組成物からなるものである。本発明の樹脂組成物、接着剤及びビニルアルコール系樹脂繊維処理剤はいずれも本発明のビニルアルコール系重合体を含むため、製造及び保存時にゲル化しにくく保存安定性に優れると共に、高エネルギー線に対する反応性に優れ、且つエラストマーとの接着性に優れる。
本発明の樹脂組成物及び接着剤は、本発明のビニルアルコール系重合体の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、溶媒、架橋開始剤、可塑剤、及び分散剤等の任意成分を含有してもよい。
本発明の接着剤の用途に制限はなく、エラストマー接着用途、ビニルアルコール系樹脂繊維処理剤、前記接着剤層を含む積層体用、表面保護用途、マスキング用途、シーリング用途、電磁波シールド用、及び接着テープ用途等が挙げられる。中でも、本発明のビニルアルコール系重合体はエラストマーに対して良好な接着性を示すことから、エラストマー接着用途に用いることが好ましい。また、繊維を補強する目的で本発明の樹脂組成物をビニルアルコール系樹脂繊維処理剤として用いることも好ましい。
[原料]
<ポリビニルアルコール>
ポリビニルアルコール(A):けん化度99モル%、粘度平均重合度1700
ポリビニルアルコール(B):けん化度88モル%、粘度平均重合度1700
下記(1)~(5)のアルデヒドについては、国際公開2016/104332に記載の方法に従って製造した。
(1)4-メチル-4-ペンテナール
(2)3-(1,3-ジオキサラン-2-イル)-2-メチル-1-プロペン
(3)3-メチル-4-ペンテナール
(4)2,2-ジメチル-3-ブテナール
(5)3-(1,3-ジオキサラン-2-イル-)-3-メチル-1-プロペン
(7)7-オクテナール:株式会社クラレ製
(8)3-メチル-2-ブテナール:株式会社クラレ製
(9)メタクロレイン:シグマアルドリッチジャパン合弁会社製
(10)クロトンアルデヒド:シグマアルドリッチジャパン合弁会社製
(11)3-ブテナールジエチルアセタール:シグマアルドリッチジャパン合弁会社製
<アセタール化度、平均残存水酸基量の測定>
下記の実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系重合体(0.03g)をジメチルスルホキシド-d6(0.97g)に溶解させ、500MHzの1H-NMR測定を行った。原料のポリビニルアルコール粒子についても、同様に1H-NMR測定を行った。得られた1H-NMRスペクトルから、下記式にしたがってアセタール化度を算出した。結果を表1に示す。
アセタール化度(モル%)=[(アルデヒド及び/又はそのアセタール化体と反応した水酸基のモル数)/(全構成単位のモル数)]×100
平均残存水酸基量(モル%)=[(ビニルアルコール単位のモル数)/(全構成単位のモル数)]×100
全構成単位のモル数=(アルデヒド及び/又はそのアセタール化体と反応した水酸基のモル数)+(ビニルアルコール単位のモル数)+(ビニルエステル単位のモル数)
実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系重合体1.0gを水99.0gに溶解させ、25℃に冷却した。2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシメトキシ)-2-メチルプロピオフェノン0.01gを添加して溶解させた後、溶液を縦10cm、横20cmのテフロン(登録商標)製型に流し入れた。25℃で1週間乾燥させた後、フィルムを型から取り出し、東芝製TOSCURE401(ランプH400L/2)を用いて22mJ/cm2の強度で480秒間紫外光を照射した。その後、フィルムを煮沸水に1時間浸漬し、取り出して120℃、圧力0.005MPaで6時間乾燥させた後、重量Wを測定した。
架橋後の溶出率(質量%)=[1.0-W/1.0]×100
この評価は、ビニルアルコール系重合体に光照射することにより製造したフィルムの耐水性を評価するものであって、溶出率が低い方が耐水性に優れていることを示す。
実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系重合体1.0gを水99.0gに溶解させ、25℃に冷却した。2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシメトキシ)-2-メチルプロピオフェノン0.01gを添加して溶解させた後、蓋付きガラス製容器に入れた。1ヶ月間又は3ヶ月間、25℃で放置した後、溶液のゲル化を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:3ヶ月後にもゲル状物が観察されなかった。
B:1ヶ月後はゲル状物が観察されなかったが、3ヶ月後にはゲル状物が観察された。
C:1ヶ月後にゲル状物が観察された。
実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系重合体2.0gを水98.0gに溶解させた水溶液に、ビニロン繊維(1330dtex)をディップし、ローラーで搾取した。120℃で30秒間乾燥、140℃で30秒間熱処理した。この操作により得られたビニルアルコール系重合体処理ビニロン繊維を撚り数80T/mで撚って繊維コードを作製した。得られた繊維コード41本を重ならないよう25.4mm間に平行に並べ、EPDM未加硫ゴムに埋め込み、加圧下150℃、圧力73.2kg/cm2下、30分間プレス加硫した。次いで繊維コードをゴムから剥離させるときに要した力(N/25.4mm)を測定した。剥離試験はインストロン3365を使用した。剥離速度は50mm/minで繊維コードとゴムとを約200mm剥離した。チャートに現れる最初のピークから10mmと最後のピークから10mmを除いた範囲に現れた多数のピークから、ピーク同士が2mm以上離れているものを選択し、その中から最高点5点と最低点5点を取り出して平均した値をゴム接着性とした。
水99gを200rpmで撹拌しながら、実施例及び比較例で得られたビニルアルコール系重合体1gを添加し、90℃で200rpmで2時間撹拌した。次いで、JIS P3801において規定された5種Aに分類されるろ紙を用いて、得られた未溶解分を含む溶液を差圧0.010±0.002MPaで減圧ろ過し、ろ紙上の残存成分を120℃、圧力0.005MPaで6時間乾燥させ、質量を測定した。
還流冷却管、温度計を備え付けた三つ口フラスコに、アセトニトリル193g、4-メチル-4-ペンテナール1.39gを加え、マグネティックスターラーで撹拌しながらポリビニルアルコール(A)50gを徐々に添加した。水39.5g、47質量%硫酸16.5gの混合溶液を滴下漏斗から5分間かけて滴下し、30℃に昇温して5時間反応を行った。1モル/L水酸化ナトリウム水溶液をpHが8になるまで加えた後、ろ過により固形物を取り出し、アセトニトリルと水の重量比9:1の混合溶媒で5回洗浄を行った後、120℃、圧力0.005MPaで6時間乾燥させて、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを3-(1,3-ジオキサラン-2-イル)-2-メチル-1-プロペン1.82gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを3-メチル-4-ペンテナール1.39gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを2,2-ジメチル-3-ブテナール1.39gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを3-(1,3-ジオキサラン-2-イル-)-3-メチル-1-プロペン1.82gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
ポリビニルアルコール(A)をそのまま用いた。
ポリビニルアルコール(B)をそのまま用いた。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gをアクロレイン0.75gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを7-オクテナール1.79gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを3-メチル-2-ブテナール1.19gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gをメタクロレイン0.99gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gをクロトンアルデヒド0.99gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
4-メチル-4-ペンテナール1.39gを3-ブテナールジエチルアセタール2.05gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、目的のビニルアルコール系重合体を得た。
Claims (9)
- 平均残存水酸基量が60モル%超である、請求項1に記載のビニルアルコール系重合体。
- 前記ビニルアルコール系重合体1.0gを90℃の水99gに添加し、200rpmで2時間撹拌したときの未溶解分が0.1g以下である、請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体。
- R1中に含まれる炭素数及びR2中に含まれる炭素数の合計が2以上8以下である、請求項1~3のいずれかに記載のビニルアルコール系重合体。
- 前記一般式(1a)のR2がメチル基である、請求項1~4のいずれかに記載のビニルアルコール系重合体。
- 請求項1~5のいずれかに記載のビニルアルコール系重合体を含む樹脂組成物。
- 請求項6に記載の樹脂組成物からなる接着剤。
- エラストマーとの接着用である請求項7に記載の接着剤。
- 請求項6に記載の樹脂組成物からなるビニルアルコール系樹脂繊維処理剤。
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