JP7009725B2 - 免震構造物の施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、免震構造物の施工方法に関する。
構造物のコア部から跳ね出す跳出し梁の上に、上部構造体を施工する施工方法であって、予め所定形状に変形された跳出し梁の先端部を引張機構で下方へ引っ張った状態で、跳出し梁の上に、上部構造体を施工する施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平5-340002号公報
ところで、免震装置に支持される上部構造体の施工が進むに従って上部構造体の重量が増加すると、免震装置を支持する支持梁が下方へたわむ可能性がある。そして、支持梁が下方へたわむと、免震装置が傾き、免震装置の性能が低下する可能性がある。
本発明は、上記の事実を考慮し、免震装置を支持する支持梁のたわみを抑制することを目的とする。
第1態様に係る免震構造物の施工方法は、支持梁に支持された免震装置上に上部構造体を施工する免震構造物の施工方法であって、上方へ凸状に湾曲された前記支持梁に下向きの変形荷重を載荷し、該支持梁を直線形状にしておき、前記上部構造体の施工が進むに従って又は前記上部構造体の施工後に、前記変形荷重を除荷する。
第1態様に係る免震構造物の施工方法によれば、先ず、上方へ凸状に湾曲された支持梁に下向きの変形荷重を載荷し、当該支持梁を直線形状にしておく。この状態で、支持梁に支持された免震装置上に上部構造体を施工する。
ここで、上部構造体の施工が進むと、上部構造体の重量が増加し、支持梁が下方へたわむ可能性がある。この対策として本発明では、上部構造体の施工が進むに従って又は上部構造体の施工後に、支持梁に載荷した変形荷重を除荷する。これにより、支持梁の湾曲形状が復元しようとするため、支持梁のたわみ量が低減される。
したがって、支持梁に支持された免震装置の傾きが低減されるため、免震装置の性能低下を抑制することができる。また、支持梁のたわみ量を低減することにより、上部構造体の施工精度を高めることができる。
第2態様に係る免震構造物の施工方法は、第1態様に係る免震構造物の施工方法において、前記支持梁のたわみ量が所定値以上になった場合に、前記変形荷重を除荷する。
第2態様に係る免震構造物の施工方法によれば、前記支持梁のたわみ量が所定値以上になった場合に、前記変形荷重を除荷する。
このように本発明では、支持梁のたわみ量を所定値未満に制御し、支持梁の直線形状を維持することにより、免震装置の傾きをより効果的に低減することができる。したがって、免震装置の性能低下をさらに抑制することができる。
第3態様に係る免震構造物の施工方法は、支持梁の材軸方向の中間部に設置された中間ジャッキ部材、及び前記中間ジャッキ部材の両側に設置された両側ジャッキ部材の上に上部構造体を施工した後、前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材を免震装置に盛り替える免震構造物の施工方法であって、上方へ凸状に湾曲された前記支持梁上に前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材を設置するとともに、前記中間ジャッキ部材の上下長さを前記両側ジャッキ部材の上下長さのよりも短くしておき、前記上部構造体の施工が進むに従って又は前記上部構造体の施工後に、前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材の上下長さの差を小さくする。
第3態様に係る免震構造物の施工方法によれば、支持梁の材軸方向の中間部には、中間ジャッキ部材が設置される。また、中間ジャッキ部材の両側には、両側ジャッキ部材が配置される。
この状態で、先ず、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材の上に、上部構造体を施工する。次に、上部構造体を施工した後に、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材を免震装置に盛り替える。これにより、免震構造物が施工される。
ここで、上部構造体の施工が進むと、上部構造体の重量が増加し、支持梁が下方へたわむ可能性がある。この対策として本発明では、支持梁を上方へ凸状に湾曲させておき、当該支持梁上に中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材を介して上部構造体を支持させる。これにより、上部構造体の施工が進むに従って上部構造体の重量が増加しても、支持梁のたわみ量が低減される。
一方、支持梁を上方へ凸状に湾曲させると、支持梁の材軸方向の中間部が、当該支持梁の材軸方向両側よりも上方に位置される。この結果、支持梁の材軸方向の中間部に設置される中間ジャッキ部材の上端部が、当該中間ジャッキ部材の両側に設置される両側ジャッキ部材の上端部よりも上方に位置され、中間ジャッキ部材の上端部と両側ジャッキ部材の上端部との間に高低差が生じる。そのため、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材によって支持される上部構造体の安定性が低下する可能性がある。
この対策として本発明では、中間ジャッキ部材の上下長さを両側ジャッキ部材の上下長さよりも短くしておく。これにより、中間ジャッキ部材の上端部と両側ジャッキ部材の上端部との高低差が小さくなる。したがって、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材によって支持される上部構造体の安定性の低下を抑制することができる。
また、上部構造体の施工が進むに従って支持梁がたわみ、支持梁の形状が徐々に直線形状に近づくと、支持梁の材軸方向の中間部とその両側との高低差が小さくなる一方で、中間ジャッキ部材の上端部と、両側ジャッキ部材の上端部との高低差が大きくなる。そのため、上部構造体の施工が進むと、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材によって支持される上部構造体の安定性が徐々に低下する可能性がある。
この対策として本発明では、上部構造体の施工が進むに従って又は上部構造体の施工後に、中間ジャッキ部材の上下長さと、両側ジャッキ部材の上下長さとの差を小さくする。これにより、中間ジャッキ部材の上端部と、両側ジャッキ部材の上端部との高低差が小さくなる。したがって、上部構造体の施工が進むに従って、支持梁の形状が徐々に直線形状に近づいても、中間ジャッキ部材及び両側ジャッキ部材によって支持される上部構造体の安定性の低下を抑制することができる。
以上説明したように、本発明に係る免震構造物の施工方法によれば、免震装置を支持する支持梁のたわみを抑制することができる。
第一実施形態に係る免震構造物を示す立面図である。 図1に示される免震構造物の施工過程を示す立面図である。 比較例に係る免震構造物を示す立面図である。 第一実施形態に係る免震構造物の施工過程を示す立面図である。 第一実施形態に係る免震構造物を示す立面図である。 第一実施形態に係る免震構造物の施工過程を示す立面図である。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
(免震構造物)
図1には、第一実施形態に係る免震構造物の施工方法によって施工された免震構造物10が示されている。免震構造物10は、複数階を有している。また、免震構造物10は、中間階免震構造とされている。この免震構造物10は、下部構造体20と、上部構造体30と、複数の免震装置40とを備えている。
(下部構造体)
下部構造体20は、複数階を有し、免震構造物10の下部を構成している。この下部構造体20は、一対の柱22と、一対の柱22の上部に架設されるトラス梁24とを有している。一対の柱22は、例えば、角形鋼管等の鉄骨部材や、RC造、SRC造等のコンクリート部材で形成されている。
トラス梁24は、鉄骨造とされており、下部構造体20の最上階を構成している。このトラス梁24は、上弦材24Aと、下弦材24Bと、複数の斜材24Cとを有している。上弦材24A及び下弦材24Bは、H形鋼等の鉄骨部材で形成されている。これらの上弦材24A及び下弦材24Bは、一対の柱22に架設されている。また、上弦材24Aと下弦材24Bとは、上下方向に間隔を空けて配置されている。なお、上弦材24Aの上には、後述する複数の免震装置40が設置されている。
複数の斜材24Cは、例えば、H形鋼等の鉄骨部材で形成されている。また、複数の斜材24Cは、上弦材24Aと下弦材24Bとに斜めに架け渡されており、上弦材24Aと下弦材24Bとを連結している。これらの上弦材24A、下弦材24B、及び複数の斜材24Cによってトラス構造が構成されている。
ここで、トラス梁24は、図2に二点鎖線で示されるように、予め上方へ凸状に湾曲するように形成されている。換言すると、トラス梁24には、予めむくりが付けられている。このトラス梁24の湾曲量(むくり量)は、例えば、後述する施工後(竣工後)の上部構造体30の重量(鉛直荷重)がトラス梁24に作用した場合に、トラス梁24が直線形状になるように適宜設定される。なお、トラス梁24は、支持梁の一例である。
トラス梁24の下方には、下部構造体20の下階を構成する複数の梁26,28が架設されている。各梁26,28は、例えば、H形鋼等の鉄骨部材で形成されており、一対の柱22に架設されている。
(上部構造体)
図1に示されるように、上部構造体30は、下部構造体20の上に構築されており、免震構造物10の上部を構成している。この上部構造体30は、複数の免震装置40を介して下部構造体20のトラス梁24に支持されている。これにより、上部構造体30は、下部構造体20に対して水平方向に変位可能とされている。また、高剛性のトラス梁24によって免震装置40を支持することにより、上部構造体30の安定性が高められる。
(免震装置)
免震装置40は、例えば、積層ゴム支承、滑り支承、又は転がり支承とされる。各免震装置40は、下側フーチング42を介してトラス梁24に接合されるとともに、上側フーチング44を介して上部構造体30に接合されている。なお、上部構造体30と下部構造体20との間には、免震層46が形成されている。
(免震構造物の施工方法)
次に、第一実施形態に係る免震構造物の施工方法について説明する。
(変形荷重載荷工程)
先ず、変形荷重載荷工程について説明する。図2には、一対の柱22に架設されたトラス梁24が示されている。このトラス梁24は、二点鎖線で示されるように、予め上方へ凸状に湾曲するように形成されている。変形荷重載荷工程では、上記のように予め上方へ凸状に湾曲されたトラス梁24に下向きの変形荷重Pを載荷し、実線で示されるようにトラス梁24を直線形状に変形させる。
具体的には、引張機構50によってトラス梁24に下向きの変形荷重Pを載荷する。引張機構50は、一対の引張材52と、ベース部材54と、一対のジャッキ部材56とを有している。一対の引張材52は、例えば、PC鋼線やPC鋼棒等の線材で形成される。
一対の引張材52は、トラス梁24の材軸方向の中間部24Mから吊り下げられ、当該トラス梁24とその下方の梁28とに亘って配置されている。この一対の引張材52の上端部52Uは、トラス梁24の中間部24Mの上弦材24Aに固定されている。また、一対の引張材52の下端部52Lは、梁28の下方へ延出されている。この一対の引張材52の下端部52Lには、ベース部材54が取り付けられている。
ベース部材54は、板状に形成されており、梁28の下方に略水平に配置されている。このベース部材54の上には、一対のジャッキ部材56が設置されている。各ジャッキ部材56は、油圧ジャッキ及びスペーサを含んで構成されている。この一対のジャッキ部材56は、ベース部材54と梁28の下面28Lとの間に設置されている。なお、ジャッキ部材56のスペーサは、適宜省略可能である。
ここで、トラス梁24に下向きの変形荷重Pを載荷する際には、一対のジャッキ部材56の油圧ジャッキを作動し、当該油圧ジャッキを伸長させる。これにより、一対のジャッキ部材56が、梁28に反力をとってベース部材54を下方へ押圧する。この結果、一対の引張材52に張力が付与され、トラス梁24の中間部24Mに下向きの変形荷重Pが載荷される。この一対のジャッキ部材56の伸張量を調整することにより、トラス梁24を二点鎖線で示される湾曲形状から実線で示される直線形状に変形させる。
なお、引張材52及びジャッキ部材56の数や配置は、適宜変更可能である。また、トラス梁24に変形荷重Pを載荷する方法は、上記の引張機構50に限らず、適宜変更可能である。また、梁28等は、例えば、ブレース等の補強部材によって適宜補強しても良い。
(上部構造体施工工程)
次に、上部構造体施工工程について説明する。図1に示されるように、上部構造体施工工程では、トラス梁24を直線形状にした状態で、トラス梁24の上弦材24A上に複数の免震装置40を設置する。次に、複数の免震装置40上に、上部構造体30の下部30Lを施工する。
(変形荷重除荷工程)
次に、変形荷重除荷工程について説明する。図3には、比較例に係るトラス梁100が示されている。このトラス梁100は、一般的な梁と同様に、予め直線形状に形成されている。この場合、上部構造体30の施工が進み、例えば、二点鎖線で示されるように上部構造体30の上部30Uが施工されると、上部構造体30の重量が増加する。この結果、二点鎖線で示されるように、直線形状のトラス梁100が下方へたわむ可能性がある。
この対策として本実施形態では、上部構造体施工工程と並行して、変形荷重除荷工程を行う。具体的には、図示しない歪ケージやレーザ変位計等のたわみ測定装置によって、トラス梁24の下方へのたわみ量を検出する。そして、トラス梁24のたわみ量が所定値以上になった場合に、引張機構50の一対のジャッキ部材56を下げる(ジャッキダウン)。
これにより、一対の引張材52が緩み、トラス梁24に載荷された変形荷重Pを徐々に除荷される。この結果、トラス梁24の湾曲形状が復元しようとするため、トラス梁24の下方へのたわみ量が低減される。この際、例えば、トラス梁24が直線形状に戻るまで、一対のジャッキ部材56を下げる。
次に、トラス梁24のたわみ量を測定しながら、上部構造体30をさらに施工する。そして、トラス梁24のたわみ量が再び所定値以上になった場合に、一対のジャッキ部材56を下げ、トラス梁24のたわみ量を低減する。つまり、本実施形態では、上部構造体30の施工が進むに従ってトラス梁24に載荷された変形荷重Pを徐々に除荷することで、トラス梁24の下方へのたわみ量を所定値未満に制御する。
なお、トラス梁24のたわみ量の所定値は、例えば、トラス梁24の許容たわみ量や、免震装置40の許容傾き量に基づいて設定される。
次に、上部構造体30の施工が完了した後に、引張機構50を撤去する。
(効果)
次に、第一実施形態の効果について説明する。
以上説明したように、本実施形態に係る免震構造物の施工方法によれば、上方へ凸状に湾曲されたトラス梁24に下向きの変形荷重Pを載荷し、当該トラス梁24を直線形状にしておく。この状態で、トラス梁24に支持された免震装置40上に上部構造体30を施工する。
そして、上部構造体30の施工が進むに従って、トラス梁24に載荷した変形荷重Pを除荷する。これにより、トラス梁24の湾曲形状が復元しようとするため、トラス梁24のたわみ量が低減される。
したがって、トラス梁24に支持された免震装置40の傾きが低減されるため、免震装置40の性能低下を抑制することができる。また、トラス梁24のたわみ量を低減することにより、上部構造体30の施工精度も高めることができる。
また、本実施形態では、トラス梁24の下方へのたわみ量が所定値未満になるように、上部構造体30の施工が進むに従って変形荷重Pを徐々に除荷する。そして、トラス梁24の直線形状を維持することにより、免震装置40の傾きをより効果的に低減することができる。したがって、免震装置40の性能低下をさらに抑制することができる。
(第一実施形態の変形例)
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
上記第一実施形態では、上部構造体30の施工の途中で、トラス梁24に載荷した変形荷重Pを除荷したが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、上部構造体30の施工が完了した後に、トラス梁24に載荷した変形荷重Pを除荷することも可能である。
また、トラス梁24に載荷した変形荷重Pを全て除荷するのではく、例えば、トラス梁24が直線形状になるように、上部構造体30の施工後(竣工後)においてもトラス梁24に所定の変形荷重Pを載荷したままの状態にしても良い。
また、上記実施形態では、上部構造体30の施工が完了した後に、引張機構50を撤去したが、引張機構50を撤去するタイミングは、適宜変更可能である。また、一対の引張材52や一対のジャッキ部材56は、撤去せずに、そのまま残置することも可能である。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同様の構成には、同符号を付して説明を適宜省略する。
(免震構造物の施工方法)
第二実施形態に係る免震構造物の施工方法では、図4に示されるように、トラス梁24及び一対の柱22上にそれぞれ設置された中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72上に上部構造体30を施工した後、図5に示されるように、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72を免震装置40に盛り替えることにより、免震構造物60を施工する。
(ジャッキ部材設置工程)
具体的には、図6に示されるように、先ず、ジャッキ部材設置工程において、予め上方へ凸状に湾曲されたトラス梁24上に中間ジャッキ部材70を設置するとともに、中間ジャッキ部材70の両側に一対の両側ジャッキ部材72を設置する。
中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72は、例えば、油圧ジャッキ及びスペーサを含んで構成されている。なお、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72のスペーサは、適宜省略可能である。
中間ジャッキ部材70は、トラス梁24の材軸方向の中間部24Mに設置される。一方、両側ジャッキ部材72は、中間ジャッキ部材70の両側に設置される。より具体的には、両側ジャッキ部材72は、トラス梁24の材軸方向両側に配置される一対の柱22上に設置される。
ここで、トラス梁24を上方へ凸状に湾曲させると、トラス梁24の中間部24Mが、当該トラス梁24の両端部24Eよりも上方に位置される。この結果、中間ジャッキ部材70の上端部70Uが、両側ジャッキ部材72の上端部72Uよりも上方に位置され、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの間に高低差H(=L2-L1)が生じる。そのため、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72によって支持される上部構造体30の安定性が低下する可能性がある。
この対策として本実施形態では、中間ジャッキ部材70の上下長さL1を両側ジャッキ部材72の上下長さL2よりも短くし、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hを小さくする。なお、本実施形態では、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hをなくし、中間ジャッキ部材70の上端部70Uの高さと両側ジャッキ部材72の上端部72Uの高さとを同じにする。
(上部構造体施工工程)
次に、上部構造体施工工程において、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72上に上部構造体30を施工する。
(ジャッキ部材調整工程)
図4に示されるように、上部構造体30の施工が進むと、上部構造体30の重量が増加する。この結果、上方へ凸状に湾曲されたトラス梁24が下方へたわみ、トラス梁24の形状が直線形状に徐々に近づく。
これにより、トラス梁24の中間部24Mと両端部24Eとの高低差Hが小さくなる。一方、本実施形態では、前述したジャッキ部材設置工程において、中間ジャッキ部材70の上下長さL1が両側ジャッキ部材72の上下長さL2よりも短く設定されているため(図6参照)、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと、両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hが大きくなる。そのため、上部構造体30の施工が進むに従って、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72によって支持される上部構造体30の安定性が徐々に低下する可能性がある。
この対策として本実施形態では、上部構造体施工工程と並行して、ジャッキ部材調整工程を行う。具体的には、上部構造体30の施工が進むに従って、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hが所定値以上になった場合に、中間ジャッキ部材70の上下長さL1と、両側ジャッキ部材72の上下長さL2との差を小さくする。
より具体的には、中間ジャッキ部材70の油圧ジャッキを作動し、中間ジャッキ部材70の上下長さL1を長くし又は両側ジャッキ部材72の油圧ジャッキを作動し、両側ジャッキ部材72の上下長さL2を短くする。若しくは、中間ジャッキ部材70の上下長さL1を長くし、かつ、両側ジャッキ部材72の上下長さL2を短くする。
この結果、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hが小さくなる。なお、本実施形態では、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hをなくし、中間ジャッキ部材70の上端部70Uの高さと、両側ジャッキ部材72の上端部72Uの高さとを同じにする。
これにより、上部構造体30の施工が進むに従って、トラス梁24の形状が徐々に直線形状に近づいても、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72によって支持される上部構造体30の安定性の低下を抑制することができる。
(免震装置盛替工程)
次に、図5に示されるように、上部構造体30を中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72から免震装置40に盛り替える。これにより、免震構造物60が施工される。
(効果)
次に、第二実施形態の効果について説明する。
以上説明したように、本実施形態に係る免震構造物の施工方法によれば、上部構造体30の施工が進むに従って中間ジャッキ部材70の上下長さL1と、両側ジャッキ部材72の上下長さL2との差を小さくする。これにより、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと、両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hが小さくなる。
そのため、上部構造体30の施工が進むに従って、トラス梁24の形状が徐々に直線形状に近づいても、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72によって支持される上部構造体30の安定性の低下を抑制することができる。したがって、上部構造体30の施工精度を高めることができる。
また、施工後(竣工後)の上部構造体30の重量によってトラス梁24に生じるたわみ量が低減される。したがって、トラス梁24に支持された免震装置40の傾きが低減されるため、免震装置40の性能低下を抑制することができる。
(第二実施形態の変形例)
次に、第二実施形態の変形例について説明する。
上記第二実施形態では、上部構造体30の施工の途中で、中間ジャッキ部材70の上下長さL1と、両側ジャッキ部材72の上下長さL2との差を小さくしたが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、上部構造体30の施工が完了した後に、中間ジャッキ部材70の上下長さL1と、両側ジャッキ部材72の上下長さL2との差を小さくしても良い。
また、上記第二実施形態では、中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの高低差Hをなくすが、本実施形態はこれに限らない。中間ジャッキ部材70の上端部70Uと両側ジャッキ部材72の上端部72Uとの間には、上部構造体30を安定的に支持可能な範囲内で、所定の高低差Hがあっても良い。
また、上記第二実施形態では、トラス梁24の材軸方向両側に配置された一対の柱22上に両側ジャッキ部材72を設置したが、上記第二実施形態はこれに限らない。両側ジャッキ部材72は、中間ジャッキ部材70の両側に設置されていれば良く、例えば、トラス梁24の材軸方向の両端部24E上に設置されても良い。
また、上記第二実施形態では、中間ジャッキ部材70及び両側ジャッキ部材72の設置位置に免震装置40を設置したが、上記実施形態はこれに限らない。免震装置40の設置位置や設置数は、適宜変更可能である。
(第一実施形態及び第二実施形態の変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は第二実施形態にも適宜適用可能である。
上記第一実施形態では、免震装置40を支持する支持梁がトラス梁24とされるが、上記第一実施形態はこれに限らない。支持梁は、例えば、一般的な鉄骨造や鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の梁であっても良い。
また、上記第一実施形態では、免震構造物10が中間階免震構造とされるが、免震構造物は、基礎免震構造であっても良い。この場合、支持梁は、例えば、基礎梁等となる。
また、免震装置40の数や配置は、適宜変更可能である。また、免震装置40は、フーチングやスラブを介してトラス梁24(支持梁)上に設置しても良い。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
10 免震構造物
24 トラス梁(支持梁)
30 上部構造体
40 免震装置
60 免震構造物
70 中間ジャッキ部材
72 両側ジャッキ部材
P 変形荷重
L1 中間ジャッキ部材の上下長さ
L2 両側ジャッキ部材の上下長さ

Claims (2)

  1. 支持梁に支持された免震装置上に上部構造体を施工する免震構造物の施工方法であって、
    上方へ凸状に湾曲された前記支持梁に下向きの変形荷重を載荷し、該支持梁を直線形状にした状態で該支持梁の上に免震装置を設置する工程と、
    前記支持梁の上に設置された前記免震装置上に前記上部構造体を施工する工程と、
    前記上部構造体の施工と並行して、前記支持梁の下方へのたわみ量を測定し、前記支持梁の下方へのたわみ量が所定値以上となった場合に、前記変形荷重を除荷することで、前記支持梁の下方へのたわみ量を前記所定値未満に低減する変形荷重除荷工程と、
    を備え、
    前記上部構造体の施工が進むに従って、前記変形荷重除荷工程を繰り返す、
    免震構造物の施工方法。
  2. 支持梁の材軸方向の中間部に設置された中間ジャッキ部材、及び前記中間ジャッキ部材の両側に設置された両側ジャッキ部材の上に上部構造体を施工した後、前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材を免震装置に盛り替える免震構造物の施工方法であって、
    上方へ凸状に湾曲された前記支持梁上に前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材を設置するとともに、前記中間ジャッキ部材の上下長さを前記両側ジャッキ部材の上下長さよりも短くしておき、
    前記上部構造体の施工が進むに従って又は前記上部構造体の施工後に、前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材の上下長さの差を小さくし、
    前記中間ジャッキ部材及び前記両側ジャッキ部材を前記免震装置に盛り替える、
    免震構造物の施工方法。
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