以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における表示装置1の機能構成を示すブロック図である。
表示装置1は、一又は複数の入力信号を画面に表示するコンピュータである。表示装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース、及び、これらを相互に接続するバス等により構成される。
表示装置1は、例えば、測定対象の物理量を測定してその結果を画面に表示する測定装置に組み込まれる。あるいは、表示装置1は、タブレット端末、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータ等の電子端末により構成される。
表示装置1は、外部から入力される入力信号を取得し、その入力信号を画面上の座標に表示する。表示装置1は、入力部10と、記憶部20と、操作部30と、表示部40と、処理部50と、を備える。
入力部10は、表示装置1の外部と通信を行う通信回路により構成される。入力部10は、処理部50の指示に従って外部から一又は複数の入力信号を取得する取得手段を構成する。入力信号としては、例えば、波形又はヒストグラム等を示すデータが挙げられる。入力部10は、例えば、インターネット網又は電話網等のネットワークを通じて無線又は有線により外部端末から入力信号を受信したり、USBメモリ等の外部メモリから入力信号を取得したりする。
本実施形態の入力部10は、A/D変換回路により構成される。そして入力部10は、測定回路から時系列に出力される測定値を示すアナログ信号を受信し、そのアナログ信号をデジタル信号に変換した波形データを入力信号として取得する。測定回路は、例えば測定対象の電圧、電流、抵抗及び電力等の物理量を測定する電気回路である。
記憶部20は、RAM及びROMにより構成され、入力部10で取得された入力信号を記憶する。記憶部20には、処理部50により何らかの処理が施された入力信号が記録されてもよい。例えば、記憶部20には、間引き処理が施された入力信号、又は所定期間ごとに平均値を算出したトレンドデータ等が記録される。
本実施形態では、一又は複数の波形データが入力信号として記憶部20に記憶される。さらに記憶部20には、処理部50が本実施形態の表示処理を実行するためのプログラムが記憶されている。すなわち、記憶部20は、表示装置1の各部位を制御するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
操作部30は、表示部40の画面近傍に設けられる押しボタン、画面内に配置されるタッチセンサ、又は、キーボード及びマウス等により構成される。操作部30は、電源ボタンを押下する操作を受け付けることで表示装置1の起動指令を処理部50に出力する。
操作部30は、利用者の入力操作を受け付け、その入力操作に基づいて画面上の表示条件を設定する設定手段である。例えば、操作部30は、利用者の入力操作に基づき、入力信号についての各軸の表示範囲又は表示倍率を示す手動設定情報を受け付ける。あるいは、操作部30は、自動スケール機能の実行を指示する自動設定情報を受け付ける。自動スケール機能とは、Y軸の表示倍率を自動で調整する機能のことである。
表示部40は、画像を表示する液晶パネル又はタッチパネル等により構成される。表示部40は、画面上の表示条件に基づいて、記憶部20に記憶された入力信号を画面上のX軸及びY軸の座標に表示する。本実施形態の表示部40は、入力信号の基準となる値である基準値(初期値)を画面上の基準位置に割り当てる。
入力信号の基準値は、あらかじめ任意の値に設定可能であり、本実施形態では「0」に設定される。また、画面上の基準位置は、任意の位置に設定可能であり、本実施形態ではY軸上の一端及び他端の中央の位置に設定される。表示部40は、画面上の基準位置に対して入力信号の基準値を配置した画像を生成し、その画像を画面に表示する。
処理部50は、操作部30にて受け付けた手動設定情報としてY軸の表示倍率を取得すると、Y軸のフルスケールを演算し、そのフルスケールと、取得した表示倍率とを画面上の表示条件として表示部40に出力する。例えば、処理部50は、入力信号の最小値及び最大値を抽出し、予め定められた複数の倍率で求められたレンジの中から、その最小値から最大値までが収まり、かつ、最も広いレンジをY軸上のフルスケールとして特定する。
次に、表示部40に表示される画像の構成について図2乃至図4を参照して説明する。
図2は、直流成分を重畳した一つの入力信号の変動を表示した表示画面41の一例を示す図である。
表示画面41は、一又は複数の入力信号を識別する識別領域41aと、その入力信号を一つの座標に表示する信号表示領域41bと、Y軸Dyの上限値及び下限値を表示する上限表示領域41c及び下限表示領域41dと、X軸表示領域41eとにより構成される。表示画面41には、互いに異なる5つの入力信号が表示可能である。
識別領域41aには、識別番号ごとに入力信号の種類が対応付けられて表示される。入力信号の種類としては、例えば電圧値、電流値、電力値等が挙げられる。この例では、入力信号として、+300V(ボルト)の直流電圧に振幅100V(実効値70.71V)の交流電圧を重畳した電圧信号が利用者により選択されている。このため、電圧信号の実効値を示す波形データVrmsが識別番号「1」に割り当てられている。
信号表示領域41bには、複数の入力信号が同時に表示可能であり、信号表示領域41bの座標については、X軸Dxが時間[s]を示す軸であり、Y軸Dyが電圧値[V]を示す軸である。
この例では、識別番号「1」の波形データVrmsの基準値が0Vであり、Y軸Dy上の基準位置Pbに波形データVrmsの基準値(0)が割り当てられている。波形データVrmsの基準値が0Vであり、かつ、波形データVrmsには一定の直流成分が含まれているため、波形データVrmsのうち値が変動しやすい範囲を示す変動部位Rvは、基準位置Pbから上端位置Pu側に表示されている。
上限表示領域41c及び下限表示領域41dには、識別番号ごとにY軸Dyの上限値及び下限値が表示される。この例では、識別番号「1」の波形データVrmsについて、Y軸Dyの上限値U1が上限表示領域41cに示され、Y軸Dyの下限値L1が下限表示領域41dに示されている。
X軸表示領域41eには、X軸Dxの1目盛(div)の単位が表示される。この例では、1目盛につきT秒[s]であることが示されている。
図2に示したように、交流波形に直流波形が重畳された電圧信号のうち電圧値が変動する部位を包含する変動部位Rvは、基準位置Pbから上側又は下側のいずれか一方の領域に表示される。このような電圧信号を複数同時に表示させるような状況では、各電圧信号の変動部位Rvが互いに重なってしまうので、一つ一つの波形を正確に把握することが困難となる。これに加えて、波形が表示されていない他方の領域が無駄になってしまう。
このため、複数の波形が見やすくなるよう、一つ一つの波形の表示位置を基準位置Pbから上下にそれぞれ移動させるような操作を行えることが、利用者としては、望ましい。このような利用者の都合を考慮し、本実施形態の表示装置1は、操作部30にてY軸Dy上の入力信号の表示位置を特定する位置情報を受け付け、その位置情報に基づいて入力信号の表示位置を基準位置Pbからシフトさせる基準位置シフト機能を有している。
次に、本実施形態における基準位置シフト機能の設定手法について図3を参照して説明する。
図3は、基準位置シフト機能を実行するための設定画面42の一例を示す図である。設定画面42は、例えば操作部30にて基準位置シフト機能ボタンが選択されることで表示画面41から切り替えられる。利用者は、操作部30を介して設定画面42内の設定項目を選択して任意の値を入力する。
設定画面42は、表示画面41の識別領域41aと同じ内容を表示する識別領域42aと、Y軸設定領域42bと、表示位置設定領域42cと、変動部位設定領域42dと、位置関係表示領域42eと、により構成される。
Y軸設定領域42bは、Y軸Dyの表示倍率を設定可能な領域であり、Y軸Dyの表示倍率を設定可能な領域b1と、Y軸Dyの上限値及び下限値を設定可能な領域b2と、により構成される。例えば、領域b1に表示倍率が設定された場合は、領域b2は設定不能となる。
表示位置設定領域42cは、Y軸Dy上の表示位置Pdを設定可能な領域である。本実施形態の表示位置Pdとは、Y軸Dy上の中から、利用者の入力操作によって選択された選択位置であり、基準位置Pbとは異なる位置のことである。
表示位置設定領域42cには、利用者の入力操作により、基準位置Pbからの変位量が表示位置Pdとして設定される。この例では、基準位置Pbを「0」として上下に5段階のステップで基準位置Pbからの変位量が設定可能であり、上端位置Puへの変位方向は正(プラス)の符号を用いて設定され、下端位置Plへの変位方向は負(マイナス)の符号を用いて設定される。
ここで、基準位置Pbからの変位量が表示位置設定領域42cに設定されると、入力信号の表示位置Pdは基準位置Pbからシフトするので、画面上の基準位置Pbと入力信号の基準値(0)とが互いに対応しなくなってしまう。
一方、図2に示した基準値(0)と変動部位Rvとが乖離した入力信号を表示画面に表示させる場合は、表示位置Pdに対して入力信号の基準値(0)が割り当てられるため、変動部位Rvは、利用者の意図する表示位置Pdから離れた位置に配置されてしまう。
このとき、表示画面には上限値U1及び下限値L1が表示されているだけであり、上述のように画面上の基準位置Pbと入力信号の基準値(0)とが対応していない状況では、基準位置Pbからの変位量をどの程度変更するべきかを判断することは容易ではない。
例えば、入力信号の変動部位Rvを利用者が意図する位置に表示させるには、利用者は、信号表示領域41bに表示されている変動部位Rvの位置を確認しながら、上限値U1及び下限値L1を使って最適な表示範囲を計算しなければならない。
特に、Y軸Dyの表示倍率がフルスケールよりも大きな値に設定されている場合は、入力信号の変動部位Rvが信号表示領域41bから外に出てしまうことが想定される。このような場合は、表示位置設定領域42cの変位量を変更するだけでは変動部位Rvを信号表示領域41bに収めることが困難となる場合がある。また、変位量のステップ幅が大きく、利用者の意図する位置に変動部位Rvを的確に表示させることができないことも起こり得る。
この対策として、本実施形態では、上述の表示位置設定領域42cに加えて変動部位設定領域42dが設定画面42に設けられている。
変動部位設定領域42dは、Y軸Dyに対し、入力信号の基準値(0)から変動部位Rvまでの特定の値を示す変動部位値Vcを設定可能な領域である。ここにいうY軸Dy上の変動部位Rvは、入力信号に示される物理量が変動する部分であり、例えば、入力信号の最小値から最大値までの変動範囲を示す。
変動部位Rvの最低値及び最高値は、上述の変動範囲よりも広くなるよう入力信号の最小値及び最大値のうち少なくとも一方に余裕を持たせてもよいし、反対に、変動範囲よりも狭くなるよう少なくとも一方を変動範囲の中心に近づけてもよい。本実施形態の変動部位Rvの範囲は、入力信号の最小値及び最大値の各々に対して余裕を持たせている。
変動部位Rvの最低値は、変動部位Rvの絶対値が最小となる値であり、基準値(0)からの高さが最も低くなる値である。一方、最高値は、変動部位Rvの絶対値が最大となる値であり、基準値(0)からの高さが最も高くなる値である。例えば、変動部位Rvがプラス側にある場合には、変動部位Rvの最大値が基準値(0)からの最高値となり、変動部位Rvがマイナス側にある場合には、変動部位Rvの最小値が基準値(0)からの最高値となる。
上述の変動部位値Vcは、基準値(0)から変動部位Rv内の任意の代表値までの高さ(乖離量)を示す指標であり、例えば、波高値、実効値、平均値、最低値、又は、変動の起点となる起点値、周期性の高い値等が挙げられる。本実施形態の変動部位値Vcは、入力信号の最小値から最大値までの間の中央値を示す。すなわち、変動部位値Vcは、入力信号の基準値(0)からの直流成分の高さを示す一定の値である。
変動部位設定領域42dには、入力信号の変動部位値Vcとして、変動部位Rvにおける基準値(0)からの最高値と変動部位値Vcとの比率が、利用者の入力操作により設定される。
本実施形態では、Y軸Dy上の変動部位Rvの最高値として、Y軸Dy上のフルスケールFSの上限値又は下限値までの高さを示す最高値が用いられる。このため、変動部位設定領域42dには、フルスケールFSの最高値に対する変動部位値Vcの比率が設定される。Y軸Dy上のフルスケールFSに対する変動部位値Vcの比率のことを以下では「FS比率」と称する。
FS比率(%)は、「-100」から「+100」までの間の任意の値に設定可能である。この例では、フルスケールFSの中心を「0」としてフルスケールFSの上限値への変位方向は正の符号により設定され、下限値への変位方向は負の符号により設定される。このような設定項目を設けることで、入力信号の基準値(0)の変動部位値VcをフルスケールFS内の値に制限することができる。
位置関係表示領域42eは、表示位置Pdの設定値とY軸Dy上の位置との対応関係を丸印で表示する領域である。さらにY軸Dyの右側には、FS比率(%)の設定値とフルスケールFS上の位置との対応関係が三角印で示されている。
Y軸Dy上の基準位置Pbからの変位量については、変位量が「0」から大きくなるほど、表示位置Pdは上端位置Puに向かって段階的に移動し、変位量が「0」よりも小さくなるほど、表示位置Pdは下端位置Plに向かって段階的に移動する。
また、入力信号の変動部位値Vcに相当するFS比率(%)については、FS比率(%)が「0%」から大きくなるほど、基準値(0)に対して変動部位値Vcが高くなる。FS比率(%)が「+100」に到達すると、変動部位値VcがフルスケールFSの上限値に達することになるため、これ以上、変動部位値Vcを大きくすることは過剰であることを意味する。
同様に、FS比率(%)が「0」よりも小さくなるほど、基準値(0)に対して変動部位値Vcが高くなり、FS比率(%)が「-100」に到達すると、変動部位値VcがフルスケールFSの下限値に達することになるため、これ以上は過剰であることを意味する。
図3に示した例では、識別番号「1」の波形データVrmsについて、利用者の意図する表示位置Pdとして基準位置Pbからの変位量が「+2」に設定され、入力信号の変動部位値VcとしてFS比率(%)が「+60」に設定されている。
このように、利用者は、画面上の表示位置Pdを変位させる第1の入力操作と、変位後の表示位置Pdに割り当てられる入力信号の基準値(0)をシフトさせる第2の入力操作とにより、変動成分に直流成分が重畳された入力信号の位置を調整する。
次に、設定画面42でこのように設定された表示条件に基づき表示画面に表示される波形の位置関係について図4を参照して説明する。
図4は、波形データVrmsの表示位置Pd及び変動部位値Vcを設定したときの表示画面43の一例を示す図で、図3の設定例に対応する。表示画面43は、例えば操作部30にて波形表示ボタンが選択されることで設定画面42から切り替えられる。
まず、画面上の表示位置Pdを基準位置Pbから移動させる手法について説明する。
識別番号「1」の波形データVrmsについては、上述のとおり、表示位置Pdの変位量が「+2」に設定されている。このため、表示位置Pdは、Y軸Dy上の基準位置Pbから二目盛だけ上昇した位置に変位するとともに、この表示位置Pdに対して波形データVrmsの基準値(0)が割り当てられる。
これにより、波形データVrmsが示す波形については、破線で示すように、上端位置Puから波形の一部が外に出てしまう。
次に、画面上の表示位置Pdに対して波形データVrmsの変動部位Rvを近づける手法について説明する。
識別番号「1」の波形データVrmsについては、さらに基準値(0)からの変動部位値VcとしてFS比率(%)が「+60」に設定されている。このため、フルスケールFSの上限値に60%を乗算して得られる変動部位値VcがY軸Dy上の表示位置Pdに割り当てられる。すなわち、表示位置Pdにおいて入力信号の基準値(0)が変動部位値Vcの分だけ下側にシフトする。
これにより、波形データVrmsが示す波形については、実線で示すように、変動部位Rvの中心が表示位置Pdに近づくことになる。これに伴い、上限表示領域41c及び下限表示領域41dの各値が上限値Um1及びLm1に変更される。
具体的には、フルスケールFSの上限値を+500Vと仮定すると、上限値(+500V)にFS比率(+60%)を乗算することで変動部位値Vc(+300V)が得られる。そして表示位置Pdにおいて波形データVrmsの基準値(0)が、変動部位値Vcの絶対値に相当するシフト量(300V)だけ、変動部位値Vcの向きとは反対の向きに移動する。
すなわち、FS比率(%)を大きくするほど、基準値(0)からの変動部位値Vcが大きくなり、変動部位値Vcの向きとは反対の向きに入力信号の全体をシフトさせるシフト量が大きくなる。
このように、表示位置Pdを基準位置Pbとは異なる選択位置に変更することで画面上の基準位置Pbと入力信号の基準値(0)とが対応しなくなるものの、FS比率(%)を設定することで表示位置Pdに変動部位Rv内の値を対応付けることが可能となる。
このため、表示装置1の画面上において、変動部位Rvが信号表示領域41bから外に出ることを回避することができるため、簡易な操作により、利用者の意図する表示位置Pdに入力信号の変動部位Rvを表示させることができる。
次に、表示装置1の各部位の動作について図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態における入力信号を画面に表示する表示方法についての処理手順例を示すフローチャートである。
ここでは、入力部10が、直流信号に交流信号が重畳された入力信号を取得し、その入力信号を表示するにあたり、入力信号の基準値として「0」が画面上の基準位置Pbに割り当てられている。
ステップS1において操作部30は、利用者が意図するY軸Dy上の入力信号についての表示位置Pd、及び入力信号の変動部位値Vcを特定する設定情報の入力を受け付ける。本実施形態の操作部30には、図3に示したように、識別番号「1」の表示位置Pdとして、基準位置Pbからの変位量が入力され、識別番号「1」の変動部位値Vcとして、FS比率(%)が入力される。
ステップS2において操作部30は、受け付けた設定情報に基づいて、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位量を表示条件として設定する。処理部50は、基準位置Pbからの変位量に基づいて、Y軸Dy上の表示位置Pdと入力信号の基準値(0)との対応関係を示す表示条件を表示部40に出力する。
ステップS3において表示部40は、その表示位置Pdと基準値(0)とを対応付けるために、Y軸Dy上の表示位置Pdに対して入力信号の基準値(0)を割り当てる。
ステップS4において操作部30は、受け付けた設定情報に基づいて、基準値(0)から入力信号の変動部位Rvまでの変動部位値Vcを設定する。
本実施形態では、操作部30が、Y軸Dy上の変動部位Rvのうち基準値(0)からの最高値と変動部位値Vcとの比率を示すFS比率(%)を表示条件として設定する。このように、操作部30は、入力信号の変動部位値Vcと、入力信号についての表示位置Pdとを表示条件として設定する。
ステップS5において処理部50は、変動部位値Vcに基づいて、入力信号の基準値(0)に割り当てられる割当位置を表示位置PdからY軸Dyに沿って移動させる。
本実施形態では、処理部50が、波形データVrmsの最小値及び最大値が収まるようY軸DyのフルスケールFSを演算し、フルスケールFSの上限値とFS比率(%)とに基づき、表示位置Pdの基準値(0)をY軸Dyに沿って移動させるシフト量を算出する。このように、処理部50は、変動部位値Vcに基づいて、入力信号の変動部位Rvの位置を入力信号についての表示位置Pdに向かって移動させる。
ステップS6において表示部40は、基準値(0)の割当位置を移動させた後の入力信号を画面上の座標に表示する。
本実施形態では、表示部40が、表示位置Pd及び基準値(0)の対応関係と、表示位置Pdからの入力信号のシフト量とに基づいて、波形データVrmsの変動部位Rvが表示位置Pdに近づくよう波形データVrmsを画面上に配置する。このように、入力信号の変動部位Rvの位置を表示位置Pdに向かって移動させた後に入力信号を表示する。
ステップS6の処理が終了すると、入力信号の表示方法についての一連の処理手順が終了する。
以下に、本実施形態の作用効果について詳しく説明する。
本実施形態によれば、表示装置1は、入力信号を取得する取得手段として入力部10と、Y軸Dy上の基準位置Pbとは異なる表示位置(選択位置)Pdに入力信号の基準値(0)を割り当てる割当手段として表示部40を備える。なお、Y軸Dyは、座標上の一つの座標軸である。
さらに、表示装置1は、基準値から入力信号の変動部位Rvまでの値を示す変動部位値Vcを設定する設定手段としての操作部30を備える。そして表示装置1は、変動部位値Vcに基づいて、表示位置Pdから入力信号の基準値(0)の割当位置をY軸Dyに沿って移動させる移動手段として処理部50を備える。表示部40は、処理部50による移動後の入力信号を画面上の座標に表示する。
表示装置1は、図4に示したように、Y軸Dy上の表示位置Pdを基準位置Pbから変更した場合に、基準値(0)からの変動部位値Vcを設定することで、変動部位Rv内の値を画面上の表示位置Pdに表示することが可能になる。
例えば、Y軸Dyの表示倍率がフルスケールFSよりも大きな値に設定された状態で、表示位置Pdを基準位置Pbから変更した場合は、入力信号の変動部位Rvが信号表示領域41bから外に出てしまうことが想定される。
このような状況であっても、利用者の入力操作により変動部位値Vcが設定されることで、表示位置Pdに変動部位Rvを近づけることが可能となる。したがって、信号表示領域41bの一端側の領域に入力信号についてのコメントを記載するために、信号表示領域41bの他端側に入力信号の変動部位Rvを移動させることも可能となる。
このように、本実施形態によれば、基準値(0)と変動部位Rvとが乖離しているような入力信号を表示する状況であっても、簡易な操作により、入力信号の変動部位を都合の良い位置に表示させることができる。
また、本実施形態によれば、操作部30は、入力信号の直流成分に相当する変動部位値Vcとして、入力信号の変動成分に相当する変動部位Rvのうち基準値(0)からの最高値と変動部位値Vcとの比率を設定する。処理部50は、その比率に基づき、表示位置PdからY軸Dyに沿って基準値(0)を移動させるシフト量を算出し、表示部40は、そのシフト量に基づいて変動部位Rvが表示位置Pdに近づくよう入力信号を画面上に配置する。
このように、入力信号の変動部位値Vcを特定するための設定項目として、入力信号の変動部位Rvの最高値に対する変動部位値Vcの比率を用いることで、変動部位値Vcを入力信号の直流成分の実際の高さに近づけることが容易となる。
例えば、図2に示した入力信号については、利用者が変動部位Rv内の値を覚えていない状況でも、その波形については利用者が直感的に把握していることが多い。このため、入力信号の最高値に対する変動部位値Vcの比率を設定項目とすることで、変動部位値Vcを操作部30に直接入力する場合に比べて、利用者が必要以上に大きな変動部位値Vcを入力してしまうという事態を回避することができる。
したがって、入力信号の基準値(0)を表示位置PdからY軸Dyに沿って移動させるシフト量が入力信号の直流成分の高さに近づくことになるので、利用者の意図する表示位置Pdに変動部位Rvを近づけることが容易になる。したがって、表示位置Pdに変動部位Rvを近づける操作の時間を短縮することができる。
このように、直流成分と変動成分とを含む入力信号の表示位置Pdを変更する際には、入力信号の直流成分の高さに近い変動部位値Vcが設定されるので、入力信号の変動成分を表示位置Pdに容易に近づけることができる。すなわち、利用者は、直流成分と変動成分とを含む入力信号であっても、入力信号の変動部位Rvを都合の良い位置に表示させることができる。
また、本実施形態によれば、表示装置1は、入力信号を記憶する記憶手段として記憶部20を備え、処理部50は、その入力信号の最小値及び最大値が含まれるようY軸Dy上のフルスケールFSを演算する演算手段を構成する。
そして操作部30は、図3で述べたように、Y軸DyのフルスケールFSのうち基準値(0)からの最高値に対する変動部位値Vcの比率を表すFS比率(%)を設定する。処理部50は、操作部30で設定されたFS比率(%)と、フルスケールFSとに基づいて変動部位値Vcを求め、その変動部位値Vcに基づいて、表示位置Pdに割り当てられた基準値(0)のシフト量を算出する。
このように、設定項目としてFS比率(%)を採用することで、基準値(0)からの変動部位値VcをフルスケールFS内の値に制限することが可能になる。したがって、入力信号の変動部位Rvを表示位置Pdに近づけることが容易になる。
なお、本実施形態では、基準値(0)からの変動部位Rvの最高値として、フルスケールFSの上限値を用いる例について説明したが、変動部位Rvの最高値としては、例えば入力信号の最大値又は最大値に所定の係数を乗算した値を用いてもよい。
また、図2に示したように、本実施形態ではY軸DyのフルスケールFSが基準値(0)を中心としてプラス側の領域だけでなくマイナス側の領域も含むように設定された。しかしながら、入力信号の最小値及び最大値がプラス側又はマイナス側のいずれか一方の領域にある場合には、一方の領域のみ含むようにフルスケールFSを設定してもよい。
また、本実施形態では一つの入力信号を表示させる例について説明したが、二つ以上の入力信号が重ならないようそれぞれの表示位置Pdを互いに異なる位置に配置して表示させることも可能である。
(第2実施形態)
次に、値が変動する変動成分と値が一定となる直流成分とで構成される二つの入力信号の表示位置Pdを変更する実施形態について図6及び図7を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、第1実施形態の基本構成と同じである。
図6は、第2実施形態における表示装置1の設定画面44の一例を示す図である。
本実施形態では、第1実施形態とは異なり、変動部位設定領域42dには、FS比率(%)ではなく変動部位値Vcそのものが設定される。また、この例では、駆動装置に交流電力を印加したときの一本の電線の電圧信号及び電流信号を表示装置1に表示することを想定している。
図6に示すように、識別番号「1」には、電圧信号の実効値を示す波形データVrmsが割り当てられ、表示位置Pdには「+2」が設定され、変動部位値Vcには「+200V」が設定されている。一方、識別番号「2」には、電流信号の実効値を示す波形データIrmsが割り当てられ、表示位置Pdには「-3」が設定され、変動部位値Vcには「+100A」が設定されている。
さらに本実施形態では、利用者の入力操作により識別番号「1」の設定値を変更可能な状態において、位置関係表示領域44e及び測定値表示領域44fには、識別番号「1」の波形データVrmsの設定に関する情報が表示されている。
位置関係表示領域44eには、識別番号「1」のフルスケールFS上に波形データVrmsの現在値Pmが三角印で示されるとともに、測定値表示領域44fには波形データVrmsの現在値Pmが示されている。これにより、利用者は、位置関係表示領域44eを監視することで波形データVrmsの変動部位を把握することができるので、識別番号「1」の変動部位値Vcに適切な値を設定することが可能になる。
図7は、図6に示した識別番号「1」及び「2」の設定条件に基づいて2つの波形を表示した表示画面45の一例を示す図である。
識別番号「1」の波形データVrmsについては、表示位置Pdに「+2」が設定されているため、表示位置Pdは、基準位置Pbから二目盛だけ上端位置Puに向かって変位している。これにより、表示位置Pdに基準値B1が割り当てられる。
さらに変動部位値Vcには「+200V」が設定されているため、基準値B1が表示位置Pdから「200V」と同じ量だけ、かつ、変動部位値Vcの向き(+)とは反対の向き(-)に移動している。これにより、表示位置Pdに変動部位Rv1の中心が配置されている。
また、識別番号「2」の波形データIrmsについても、同様に、表示位置Pdに基準値B2が割り当てられ、その基準値B2が表示位置Pdから「100A」と同じ量だけ、かつ、変動部位値Vcの向き(+)とは反対の向き(-)に移動している。これにより、表示位置Pdに変動部位Rv2の中心が配置されている。
このように、2つの波形データVrms及びIrmsの変動部位Rv1及びRv2の中心がそれぞれ利用者の意図する表示位置Pdに適切に配置できるので、無駄なスペースを削減しつつ、2つの波形が重ならないよう見やすく表示させることができる。
したがって、表示装置1は、複数の入力信号を見やすく表示しつつ、信号表示領域41bの全体を有効に利用することができる。
第2実施形態によれば、表示装置1は、識別信号「1」の波形データVrmsを示す入力信号と、識別信号「2」の波形データIrmsを示す他の入力信号とを取得する取得手段として入力部10を備える。そして操作部30は、識別番号「2」の波形データIrmsについてY軸Dyの中から識別番号「1」の表示位置Pdとは異なる表示位置Pdを選択する。表示部40は、その識別番号「2」の表示位置Pdに対して波形データIrmsの基準値B2を割り当てる。
さらに、操作部30は、識別番号「2」の基準値B2からの変動部位値Vcを設定し、処理部50は、識別番号「2」の変動部位値Vcに基づいて表示位置Pdから波形データIrmsをY軸Dyに沿って移動させる。そして表示部40は、識別番号「1」の表示位置Pdに波形データVrmsの変動部位Rv1の中心を近づけるとともに、識別番号「2」の表示位置Pdに波形データIrmsの変動部位Rv2の中心を近づける。
このように、操作部30が入力信号ごとに表示位置Pd及び変動部位値Vcを設定することで、識別番号「1」及び「2」の表示位置Pdにそれぞれ波形データVrms及びIrmsの変動部位Rvの中心を近づけることが可能となる。これにより、2つの波形が互いに重なる領域を削減することができるので、一つ一つの波形全体を見やすく表示することができる。
また、無駄なスペースが削減されるので、同時に表示可能な入力信号を増やすことや、Y軸Dyの識別信号「1」及び「2」の表示倍率を互いに高くすることも可能となる。これにより、利用者は、信号表示領域41bを目一杯利用しつつ、一つ一つの波形を細かく確認することが可能となる。
また、本実施形態によれば、表示部40は、画面上の座標に入力信号の表示画像を表示する信号表示手段と、座標の設定画像を表示する設定表示手段と、を含む。表示部40の設定画面は、図3及び図6に示したように、表示位置Pdとして基準位置Pbからの変位量を設定可能な表示位置設定領域42cと、基準値からの変動部位値Vcを設定可能な変動部位設定領域42dとで構成される。
そして表示部40は、入力信号に基づき基準値からの変動部位値Vcの設定に関する情報を表示する。変動部位値Vcの設定に関する情報としては、図6の位置関係表示領域44e及び測定値表示領域44fに示したように、入力信号の測定データの現在値Pmや、現在値PmとフルスケールFSとの位置関係を示す情報等が挙げられる。あるいは、表示部40は、入力信号のフルスケールFSの上限値を表示してもよい。
これにより、表示装置1の設定画面において、入力信号の基準値(0)から変動部位Rv内までの変動部位値Vcを把握しやすくなるので、表示位置Pdに変動部位Rvの中心を近づけるのに要する時間を短縮することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では入力信号の実効値を示す波形データVrms及びIrmsを表示する例について説明したが、入力信号の瞬時値又は平均値を示す波形データを表示することも可能である。また入力信号は、電圧信号及び電流信号に限らず、電力値又は抵抗値等の物理量を示す入力信号であってもよい。あるいは、入力信号は、波形データに限らず、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、及びヒストグラムを示すデータであってもよい。
また、上記実施形態では時間軸をX軸Dxとし物理量を示す軸をY軸Dyとした座標に入力信号を表示する例について説明したが、時間軸をY軸Dyとし物理量を示す軸をX軸Dxとしてもよい。
また、上記実施形態では表示画面を一つの信号表示領域41bのみで構成する例について説明したが、表示画面内に複数の信号表示領域41bを配置してもよい。この場合においても、信号表示領域41bごとに本実施形態の基準位置シフト機能を実行することが可能である。
また、上記実施形態では基準位置PbをY軸Dyの中心位置としたが、基準位置Pbは、Y軸Dyの任意の位置に設定可能であり、例えば基準位置Pbを上端位置Pu又は下端位置Plに設定してもよい。
また、上記実施形態では表示装置1が一つの画面上で設定画面又は表示画面を切り替える例について説明したが、操作ボタンにより表示画面上に設定画面がポップアップしたり、表示画面の中に設定画面を表示したりする表示装置にも適用可能である。
また、上記実施形態は二次元の座標に入力信号を表示する例について説明したが、座標軸上の基準位置Pbに対して入力信号を表示するものであればよく、例えば、三次元の座標に入力信号を表示する表示装置にも適用可能である。