JP7008328B2 - 免疫制御剤 - Google Patents

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Description

本発明は、新規の免疫制御の方法論、それに基づいて製造された免疫制御剤及びその用途に関する。より具体的には、コレステロール3-硫酸によるDedicator of cytokinesis 2(DOCK2)阻害を介した免疫制御のメカニズムに立脚した、免疫抑制、免疫特権部位の形成及びその解除のための方法論、それに基づいて製造された免疫制御剤及びその用途に関する。本願は、2015年11月20日に、日本に出願された特願2015-228190号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
眼、脳、妊娠中の子宮等の特定の器官において、免疫に媒介される炎症や同種異系移植片拒絶が顕著に抑制されることが古くから知られており、この現象は免疫特権と呼ばれている(例えば、非特許文献1を参照)。また、癌組織が免疫特権を示すことが報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。しかしながら、免疫特権の実体は不明であった。
Niederkorn J. Y., See no evil, hear no evil, do no evil: the lessons of immune privilege., Nat Immunol., 7(4), 354-359, 2006. Joyce J. A. and Fearon D. T., T cell exclusion, immune privilege, and the tumor microenvironment., Science, 348(6230), 74-80, 2015.
免疫チェックポイント分子を標的とした抗体療法は、現在最も期待を集めている癌治療法の一つであるが、これが効果的に作用するためにも、癌の免疫回避機構(免疫特権)を解除する必要がある。
また、免疫特権の実体を明らかにし、人為的に組織や細胞に免疫特権を付与することが可能になれば、移植や再生医療において他家移植可能な組織を作製する医療技術につながる。
したがって、本発明は、免疫特権の実体を明らかにし、新たな免疫制御剤を提供することを目的とする。より詳細には、炎症性疾患の治療薬、癌免疫を賦活化する医薬品、免疫特権を付与した、他家移植可能な組織を作製する医療技術を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]Dedicator of cytokinesis 2(DOCK2)によるRac活性化の制御剤を有効成分として含有する、免疫制御剤。
[2]DOCK2によるRac活性化の前記制御剤が、下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物である、[1]に記載の免疫制御剤。
Figure 0007008328000001
[式(1)中、Rは、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、置換されていてもよい炭素数3~12のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族基を表す。]
[3]DOCK2によるRac活性化の前記制御剤が、コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合物質である、[1]に記載の免疫制御剤。
[4]前記特異的結合物質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール3-硫酸又はその塩に対する結合活性を有するタンパク質である、[3]に記載の免疫制御剤。
[5]DOCK2によるRac活性化の前記制御剤が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール3-硫酸又はその塩に対する結合活性を有するタンパク質の発現ベクターである、[1]に記載の免疫制御剤。
[6]DOCK2によるRac活性化の前記制御剤が、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤である、[1]に記載の免疫制御剤。
[7]DOCK2によるRac活性化の前記制御剤が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤である、[1]に記載の免疫制御剤。
本発明によれば、新たな免疫制御剤を提供することができる。
主な生体内ステロイドの構造と生合成経路を示す図である。 実験例1の結果を示すグラフである。 (a)~(c)は、実験例2の結果を示すグラフである。 実験例2において、様々な濃度の各種ステロイド化合物の存在下でRac活性化能を測定した結果を示すグラフである。 実験例2において、50μMの各種ステロイド化合物の存在下でRac活性化能を比較した結果を示すグラフである。 実験例3の結果を示すグラフである。 実験例4において、GST-Racビーズに結合したDOCK2-DHR-2をウエスタンブロット法により検出した結果を示す写真である。 実験例5において、野生型及びDOCK2欠損マウス由来のT細胞のCCL21に対する遊走能を比較した結果を示すグラフである。 実験例5において、T細胞の遊走に対するコレステロール3-硫酸の阻害効果を検討した結果を示すグラフである。 実験例6において、リンパ球の遊走に対する、各種ステロイド化合物の効果を検討した結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、実験例7において、好中球のfMLPへの化学遊走性に対するコレステロール3-硫酸の効果を検討した実験結果を示すグラフである。 (a)~(c)は、実験例8の結果を示すグラフ及び写真である。 (a)は、実験例9において、対照のGFPのみ又はSult2B1b遺伝子とGFPを発現したストローマ細胞上でのT細胞の遊走性を示すタイムラプス画像である。(b)は、実験例9において、対照のGFPのみ又はSult2B1b遺伝子とGFPを発現したストローマ細胞上でのT細胞の遊走性を比較した結果を示すグラフである。 (a)は、実験例10において、ウエスタンブロット法によりSult2B1bタンパク質を検出した結果を示す写真である。(b)は、野生型マウス(+/+)及びSult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の各組織におけるSult2B1bタンパク質の発現を検出した結果を示す写真である。 (a)及び(b)は、実験例11におけるコレステロール-3硫酸の定量結果を示すグラフである。 実験例11において、マウスの眼球におけるコレステロール-3硫酸の局在を測定した質量分析顕微鏡画像及び光学顕微鏡写真である。 (a)は、実験例12における、マウスの眼球切片の光学顕微鏡写真である。(b)及び(d)は、実験例12において、マウスの前眼房に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。(c)は、実験例12において、マウスの眼球切片を、好中球のマーカーであるGr1に対する抗体で免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。 (a)は、実験例13における、マウスの眼球切片の光学顕微鏡写真である。(b)及び(c)は、実験例13において、マウスの結膜に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。 (a)~(c)は、実験例10の結果を示す写真である。 (a)~(c)は、実験例11の結果を示す写真である。 (a)及び(b)は、実験例12の結果を示す写真である。 発明者らが今回明らかにした、生体におけるコレステロール-3硫酸の作用を説明する模式図である。
免疫応答は、生体にとって感染に対する必須の防御機構であり、免疫細胞は、種々の感染源に迅速に対処すべく生体内を常にパトロールしている。このように絶えず動き回るという特徴は、免疫細胞で独自に進化したものである。
DOCK2は、免疫細胞に特異的に発現し、免疫応答を制御するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)であり、低分子量Gタンパク質の一種であるRacを活性化し、葉状突起と呼ばれるアクチンに富んだ突起を形成することで細胞運動の際の駆動力を提供している。
DOCK2は、DOCKファミリータンパク質に特有のDHR-2ドメインを持ち、このドメインを介して、Racに結合しているGDPをGTPに変換することで、Racを活性化する。
後述するように、発明者らは、免疫特権の実体がコレステロール-3硫酸(以下、「C3S」という場合がある。)であることを明らかにした。図22は、発明者らが今回明らかにした、生体におけるコレステロール-3硫酸の作用を説明する模式図である。免疫細胞の遊走、浸潤には、DOCK2の働きが必要である。コレステロール-3硫酸は、DOCK2の機能を阻害し、免疫細胞の動きを抑制し、免疫特権部位の形成、癌細胞による免疫回避等に寄与している。
[DOCK2によるRac活性化の制御剤]
本実施形態の免疫制御剤は、DOCK2によるRac活性化の制御剤(DOCK2制御剤)を有効成分として含有する。本明細書において、Rac活性化の制御とは、Rac活性化の阻害、Rac活性化の促進又はRac活性化の維持を意味する。また、例えば、「Racの活性化の阻害」とは、Racの活性化を完全に阻害すること及びRacの活性化を一部阻害すること(Racの活性化を抑制すること)を意味する。本実施形態の免疫制御剤としては、例えば、DOCK2のDHR-2ドメインに対する特異的結合物質、Racに対する特異的結合物質、コレステロール3-硫酸に対する特異的結合物質、コレステロール3-硫酸の合成や分解を担う酵素の阻害剤等であって、DOCK2によるRacの活性化を制御するものが挙げられる。特異的結合物質については後述する。
実施例において後述するように、例えば、コレステロール3-硫酸は、DOCK2によるRac活性化の特異的且つ強力な阻害剤である。
[コレステロール3-硫酸及びその誘導体]
1実施形態において、DOCK2によるRac活性化の制御剤は、下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物である。すなわち、1実施形態において、本発明は、下記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物(以下、「コレステロール3-硫酸又はその誘導体」という場合がある。)を有効成分として含有する免疫制御剤を提供する。式(1)中、Rは、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、置換されていてもよい炭素数3~12のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族基を表す。
Figure 0007008328000002
実施例において後述するように、発明者らは、上記式(1)において、Rが1,5-ジメチル-n-ヘキシル基であるコレステロール3-硫酸が、免疫特権部位を形成する分子実体であることを見出した。本明細書において、免疫特権部位とは、免疫細胞の浸潤が阻害された部位を意味する。免疫特権部位では、免疫細胞が浸潤しないため、免疫応答や炎症作用が抑制されている。
コレステロール3-硫酸は、ステロイド骨格を有する化合物であり、生体内に存在することが知られている。しかしながら、その生理機能は未解明であり、コレステロールの血中レザバーである可能性等が指摘されていた。
上記式(1)で表される化合物は、DOCK2を阻害することにより、免疫細胞の細胞運動を阻害する。その結果、上記式(1)で表される化合物が存在する部位には免疫細胞が浸潤することができず、免疫特権部位が形成されるものと考えられる。
上記式(1)で表される化合物、その薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物は、免疫特権部位を形成することができる。したがって、本実施形態の免疫制御剤は、免疫特権部位生成剤であるということもできる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤は、免疫抑制剤であるということもできる。コレステロール3-硫酸は、もともと生体内に存在する化合物であることから、本実施形態の免疫制御剤は生体に投与しても副作用が少ないと考えられる。
上記式(1)で表される化合物において、Rは分岐鎖状のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族基であることが好ましい。また、Rの置換基としては、水酸基、アシル基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、アセトアミド基、ハロゲン原子等が挙げられるが、Rは置換されていないことが好ましい。また、Rの炭素数は6~10であることがより好ましく、7~9であることが更に好ましい。
上記式(1)において、Rとしては、例えば1,5-ジメチル-n-ヘキシル基、フェニル基、パラ-メトキシフェニル基、オルト-ブチルフェニル基、オルト-2-メチルブチルフェニル基等が挙げられる。上記式(1)におけるRが1,5-ジメチル-n-ヘキシル基である場合、上記式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表されるコレステロール3-硫酸である。
Figure 0007008328000003
本実施形態の免疫制御剤において、上記式(1)で表される化合物は、フリー体であってもよく、薬学的に許容される塩であってもよく、フリー体の溶媒和物であってもよく、薬学的に許容される塩の溶媒和物であってもよい。
薬学的に許容される塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。より具体的には、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、亜鉛塩等の金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モルホリン、ピペリジン等の有機アミン付加塩;グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸付加塩等が挙げられる。
溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物であれば特に制限されず、例えば、水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。
本実施形態の免疫制御剤を、例えば、徐放製剤として移植臓器の組織内に投与することにより、拒絶反応を抑制することができる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤を、過剰な免疫応答により生じる、慢性関節リウマチ、ぶどう膜炎、多発性硬化症等の免疫疾患の患者に投与することにより、免疫疾患を治療することができる。
[コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合物質]
1実施形態において、DOCK2によるRac活性化の制御剤は、コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合物質である。すなわち、1実施形態において、本発明は、コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合物質を有効成分として含有する免疫制御剤を提供する。コレステロール3-硫酸の塩としては、上記式(1)で表される化合物の塩と同様のものが挙げられる。
本実施形態の免疫制御剤は、生体内のコレステロール3-硫酸に結合してその機能を阻害することができる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤は、コレステロール3-硫酸を吸着し、その生体内濃度を低下させることができる。その結果、コレステロール3-硫酸の存在により形成された免疫特権を除去することができる。したがって、本実施形態の免疫制御剤は、免疫特権除去剤であるということもできる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤は、免疫回避除去剤であるということもできる。特異的結合物質とコレステロール3-硫酸との解離定数Kdは、例えば10-7M以下であることが好ましく、10-8M以下であることがより好ましく、10-9M以下であることが更に好ましい。
本実施形態の免疫制御剤により、免疫特権が除去されると、当該領域に免疫細胞が浸潤し、免疫応答が活性化される。したがって、本実施形態の免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。
実施例において後述するように、発明者らは、癌組織にはコレステロール3-硫酸が局在しており、免疫特権部位が形成されていることを見出した。したがって、本実施形態の免疫制御剤を用いて、癌組織の免疫特権を除去することにより、癌組織における免疫応答を促進し、癌を治療することができる。
本明細書において、特異的結合物質としては、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー、低分子化合物等が挙げられる。抗体は、例えば、マウス等の動物に抗原を免疫することにより作製することができる。あるいは、ファージライブラリー等の抗体ライブラリーのスクリーニング等により作製することができる。ここで、抗原としてコレステロール3-硫酸又はその塩を用いるとよい。抗原はハプテン化されていてもよい。
抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。上記の抗体又は抗体断片は、ポリクローナルであってもよく、モノクローナルであってもよい。また、上記の抗体又は抗体断片は、例えばポリエチレングリコール等の化合物が結合したものであってもよい。ポリエチレングリコールを結合することにより、例えば血中安定性を高めること等が可能になる。
アプタマーとは、標識物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。コレステロール3-硫酸又はその塩に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution ofligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。
特異的結合物質は、上記の他にも、例えば、対象物質に対する結合性を指標として、化合物ライブラリー等からスクリーニングしたものであってもよい。
上記の特異的結合物質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール3-硫酸又はその塩に対する結合活性を有するタンパク質(以下、「配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の変異体」という場合がある。)であってもよい。本明細書において、1若しくは数個とは、例えば1~20個、例えば1~10個、例えば1~5個、例えば1~3個を意味する。
DOCK2のDHR-2ドメインはAローブ、Bローブ及びCローブと呼ばれる領域からなる。配列番号1に記載のアミノ酸配列は、ヒトDOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質のアミノ酸配列である。より詳細には、Bローブは配列番号1の第1~第141番目のアミノ酸からなり、Cローブは配列番号1の第142~第427番目のアミノ酸からなる。
実施例において後述するように、発明者らは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質がコレステロール3-硫酸と特異的に結合することを見出した。したがって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体は、コレステロール3-硫酸に対する特異的結合物質として使用することができる。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体は、例えばポリエチレングリコール等の化合物を結合させることにより、血中安定性を向上させたものであってもよい。
[配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター]
1実施形態において、DOCK2によるRac活性化の制御剤は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール3-硫酸又はその塩に対する結合活性を有するタンパク質の発現ベクターである。すなわち、1実施形態において、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール3-硫酸又はその塩に対する結合活性を有するタンパク質の発現ベクターを有効成分として含有する免疫制御剤を提供する。
本実施形態の発現ベクターを生体に投与することにより、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体を発現させることができる。発現ベクターから発現した、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体は、上述したように、コレステロール3-硫酸又はその塩に対する特異的結合物質として機能する。したがって、本実施形態の免疫制御剤は、免疫特権除去剤であるということもできる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤は、免疫回避除去剤であるということもできる。あるいは、本実施形態の免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。
発現ベクターとしては、投与対象の細胞中で配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体を発現可能なものであれば特に限定されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のベクター;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のベクター;pSH19、pSH15等の酵母由来ベクター;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。
発現ベクターにおいて、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又はその変異体の発現用プロモーターとしては特に限定されず、例えば、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等が挙げられる。
発現ベクターは、更に、マルチクローニングサイト、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等を有していてもよい。
[sulfotransferase family cytosolic 2B member 1 isoform b(SULT2B1b)タンパク質、その発現ベクター、発現阻害物質、阻害剤]
1実施形態において、DOCK2によるRac活性化の制御剤は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤である。
すなわち、1実施形態において、本発明は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質(以下、「SULT2B1bタンパク質の変異体」という場合がある。)、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤を有効成分として含有する免疫制御剤を提供する。
である。SULT2B1bタンパク質は、コレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有する酵素である。したがって、SULT2B1bタンパク質又はその変異体を生体に投与することにより、コレステロール3-硫酸を生成させて、免疫特権部位を生成することができる。
したがって、SULT2B1bタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成剤であるということもできる。あるいは、SULT2B1bタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤は、免疫抑制剤であるということもできる。SULT2B1bタンパク質又はその変異体は、例えばポリエチレングリコール等の化合物を結合させることにより、血中安定性を向上させたものであってもよい。
本実施形態の免疫制御剤は、SULT2B1bタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とするものであってもよい。発現ベクターとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。本実施形態の発現ベクターを生体に投与することにより、SULT2B1bタンパク質又はその変異体を発現させることができる。発現ベクターから発現した、SULT2B1bタンパク質又はその変異体は、上述したように、コレステロール3-硫酸を生成させて、免疫特権部位を生成することができる。
したがって、SULT2B1bタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成剤であるということもできる。あるいは、SULT2B1bタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、免疫抑制剤であるということもできる。
SULT2B1bタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、例えば、再生医療技術により作製された移植臓器に組み込んで発現させることにより、移植臓器に免疫特権部位を生成し、拒絶反応を抑制することができる。
あるいは、本実施形態の免疫制御剤を、過剰な免疫応答により生じる、慢性関節リウマチ、ぶどう膜炎、多発性硬化症等の免疫疾患の患者に投与することにより、免疫疾患を治療することができる。
本実施形態の免疫制御剤は、SULT2B1bタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とするものであってもよい。本明細書において、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アンチセンス核酸をまとめて「発現阻害物質」という場合がある。これらのsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を生体に投与することにより、SULT2B1bタンパク質の発現を阻害することができる。その結果、コレステロール3-硫酸の生成を抑制し、免疫特権部位の生成を阻害することができる。
したがって、SULT2B1bタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成抑制剤であるということもできる。あるいは、SULT2B1bタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。
SULT2B1bタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤を、例えば全身投与又は癌組織に局所投与して、癌組織の免疫特権を除去することにより、癌組織における免疫応答を促進し、癌を治療することができる。
siRNA(small interfering RNA)は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングのために用いられる21~23塩基対の低分子2本鎖RNAである。細胞内に導入されたsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体はsiRNAと相補的な配列を持つmRNAに結合し切断する。これにより、配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドをDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、例えば、適当なアニーリング緩衝液中、90~95℃で約1分程度変性させた後、30~70℃で約1~8時間アニーリングさせることにより調製することができる。
ヒトSULT2B1bタンパク質の発現を阻害するsiRNAのセンス鎖の具体的な塩基配列としては、例えば配列番号4~7に記載の塩基配列等が挙げられる。
shRNA(short hairpin RNA)は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングのために用いられるヘアピン型のRNA配列である。shRNAは、ベクターによって細胞に導入し、U6プロモーター又はH1プロモーターで発現させてもよいし、shRNA配列を有するオリゴヌクレオチドをDNA/RNA自動合成機で合成し、siRNAと同様の方法によりセルフアニーリングさせることによって調製してもよい。細胞内に導入されたshRNAのヘアピン構造は、siRNAへと切断され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体はsiRNAと相補的な配列を持つmRNAに結合し切断する。これにより、配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
ヒトSULT2B1bタンパク質の発現を阻害するshRNAの具体的な塩基配列としては、例えば配列番号8~10に記載の塩基配列等が挙げられる。
miRNA(microRNA、マイクロRNA)は、ゲノム上にコードされ、多段階的な生成過程を経て最終的に約20塩基の微小RNAとなる機能性核酸である。miRNAは、機能性のncRNA(non-coding RNA、非コードRNA:タンパク質に翻訳されないRNAの総称)に分類されており、他の遺伝子の発現を調節するという、生命現象において重要な役割を担っている。特定の塩基配列を有するmiRNAを生体に投与することにより、ヒトSULT2B1bタンパク質の発現を阻害することができる。
リボザイムは、触媒活性を有するRNAである。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、RNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となっている。リボザイムは、グループIイントロン型、RNasePに含まれるM1RNA等の400ヌクレオチド以上の大きさのものであってもよく、ハンマーヘッド型、ヘアピン型等と呼ばれる40ヌクレオチド程度のものであってもよい。
アンチセンス核酸は、標的配列に相補的な核酸である。アンチセンス核酸は、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が形成された部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエクソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制等により、標的遺伝子の発現を抑制することができる。
本実施形態において、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム及びアンチセンス核酸は、安定性や活性を向上させるために、種々の化学修飾を含んでいてもよい。例えば、ヌクレアーゼ等の加水分解酵素による分解を防ぐために、リン酸残基を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換してもよい。また、少なくとも一部をペプチド核酸(PNA)等の核酸類似体により構成してもよい。
本実施形態の免疫制御剤は、SULT2B1bタンパク質の阻害剤を有効成分とするものであってもよい。SULT2B1bタンパク質の阻害剤は、低分子化合物であることが好ましい。SULT2B1bタンパク質の阻害剤を生体に投与することにより、SULT2B1bタンパク質の活性を阻害することができる。その結果、コレステロール3-硫酸の生成を阻害し、免疫特権部位の生成を阻害することができる。
したがって、SULT2B1bタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成抑制剤であるということもできる。あるいは、SULT2B1bタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。
SULT2B1bタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤を、例えば全身投与又は癌組織に局所投与して、癌組織における免疫特権生成を抑制することにより、癌組織における免疫応答を促進し、癌を治療することができる。
[steryl-sulfatase(STS)タンパク質、その発現ベクター、発現阻害物質、阻害剤]
1実施形態において、DOCK2によるRac活性化の制御剤は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤である。
すなわち、1実施形態において、本発明は、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール-3硫酸の硫酸基を除去する活性を有するタンパク質の発現ベクター、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸、又は配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤を有効成分として含有する免疫制御剤を提供する。
配列番号3に記載のアミノ酸配列は、ヒトSTSタンパク質のアミノ酸配列である。STSタンパク質は、ステロイド骨格に付加された硫酸基を除去する活性を有する酵素である。したがって、STSタンパク質又はその変異体を生体に投与することにより、コレステロール3-硫酸の硫酸基を除去し、コレステロールを生成することができる。その結果、コレステロール3-硫酸の生体内濃度を低下させることができる。その結果、コレステロール3-硫酸の存在により形成された免疫特権を除去することができる。
したがって、STSタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権除去剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤は、免疫回避除去剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。STSタンパク質又はその変異体は、例えばポリエチレングリコール等の化合物を結合させることにより、血中安定性を向上させたものであってもよい。
STSタンパク質又はその変異体を有効成分とする免疫制御剤を、例えば全身投与又は癌組織に局所投与して、癌組織の免疫特権を除去することにより、癌組織における免疫応答を促進し、癌を治療することができる。
本実施形態の免疫制御剤は、STSタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とするものであってもよい。発現ベクターとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。本実施形態の発現ベクターを生体に投与することにより、STSタンパク質又はその変異体を発現させることができる。発現ベクターから発現した、STSタンパク質又はその変異体は、上述したように、コレステロール3-硫酸をコレステロールに変換し、コレステロール3-硫酸の生体内濃度を低下させることにより、コレステロール3-硫酸の存在により形成された免疫特権を除去することができる。
したがって、STSタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権除去剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、免疫回避除去剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤は、免疫促進剤であるということもできる。
STSタンパク質又はその変異体の発現ベクターを有効成分とする免疫制御剤を、例えば全身投与又は癌組織に局所投与して、癌組織の免疫特権を除去することにより、癌組織における免疫応答を促進し、癌を治療することができる。
本実施形態の免疫制御剤は、STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とするものであってもよい。これらのsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を生体に投与することにより、STSタンパク質の発現を阻害することができる。その結果、コレステロール3-硫酸からの硫酸基の除去を抑制し、コレステロール3-硫酸の生体内濃度を上昇させて免疫特権部位を生成又は維持することができる。
したがって、STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権維持剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫回避維持剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤は、免疫抑制剤であるということもできる。siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アンチセンス核酸については上述したものと同様である。
ヒトSTSタンパク質の発現を阻害するsiRNAのセンス鎖の具体的な塩基配列としては、例えば配列番号11~14に記載の塩基配列等が挙げられる。
ヒトSTSタンパク質の発現を阻害するshRNAの具体的な塩基配列としては、例えば配列番号15~17に記載の塩基配列等が挙げられる。
STSタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸を有効成分とする免疫制御剤を、例えば、上述したコレステロール3-硫酸又はその誘導体とともに、徐放製剤として移植臓器の組織内に投与することにより、免疫特権部位を生成させやすくし、拒絶反応を抑制することができる。
本実施形態の免疫制御剤は、STSタンパク質の阻害剤を有効成分とするものであってもよい。STSタンパク質の阻害剤は、低分子化合物であることが好ましい。STSタンパク質の阻害剤を生体に投与することにより、STSタンパク質の活性を阻害することができる。その結果、コレステロール3-硫酸からの硫酸基の除去を抑制し、コレステロール3-硫酸の生体内濃度を上昇させて免疫特権部位を生成又は維持することができる。
したがって、STSタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権部位生成剤であるということもできる。
あるいは、STSタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫特権維持剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫回避維持剤であるということもできる。あるいは、STSタンパク質の阻害剤を有効成分とする免疫制御剤は、免疫抑制剤であるということもできる。
STSタンパク質の阻害剤としては、例えば、667 COUMATE、STX213、KW-2581、STX681、YM511等が挙げられる。
[医薬組成物]
上述した免疫制御剤は、それ自体を投与してもよいし、薬学的に許容される担体と混合した医薬組成物として製剤化したものを投与してもよい。
医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等の経口的に使用される剤型に製剤化されていてもよく、例えば注射剤、軟膏、貼付剤等の非経口的に使用される剤型に製剤化されていてもよい。
薬学的に許容される担体としては、例えば、滅菌水、生理食塩水等の溶媒;ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤、結晶性セルロース等の賦形剤;コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の膨化剤等が挙げられる。
医薬組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノールの安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤;界面活性剤;乳化剤等が挙げられる。
医薬組成物は、上記の担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
医薬組成物が注射剤である場合、注射剤用の溶媒としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム等の補助薬を含む等張液が挙げられる。注射剤用の溶媒は、エタノール等のアルコール;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルコール;ポリソルベート80(商標)、HCO-50等の非イオン性界面活性剤等を含有していてもよい。
免疫制御剤の患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等のほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。
免疫抑制剤の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり、例えば0.1~100mg、例えば1~50mg、例えば1~20mg等が挙げられる。
非経口的に投与する場合は、その1回の投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では成人(体重60kgとして)においては、1日あたり、例えば0.01~30mg、例えば0.1~20mg、例えば0.1~10mg程度を静脈注射又は局所注射により投与することが挙げられる。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体に対する特異的結合物質、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質の発現阻害物質、SULT2B1bタンパク質の阻害剤、STSタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、STSタンパク質の発現阻害物質、又はSTSタンパク質の阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与する工程を備える免疫制御方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、STSタンパク質の発現阻害物質、又はSTSタンパク質の阻害剤の有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与する工程を備える、移植臓器の拒絶反応の抑制方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体に対する特異的結合物質、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質の発現阻害物質、SULT2B1bタンパク質の阻害剤、又はSTSタンパク質若しくはその変異体の発現ベクターの有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与する工程を備える、癌の治療方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、免疫の制御のためのコレステロール-3硫酸若しくはその誘導体、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体に対する特異的結合物質、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質の発現阻害物質、SULT2B1bタンパク質の阻害剤、STSタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、STSタンパク質の発現阻害物質、又はSTSタンパク質の阻害剤を提供する。
1実施形態において、本発明は、免疫制御剤を製造するためのコレステロール-3硫酸若しくはその誘導体、コレステロール-3硫酸若しくはその誘導体に対する特異的結合物質、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体、SULT2B1bタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、SULT2B1bタンパク質の発現阻害物質、SULT2B1bタンパク質の阻害剤、STSタンパク質若しくはその変異体の発現ベクター、STSタンパク質の発現阻害物質、又はSTSタンパク質の阻害剤の使用を提供する。
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例1]
(コレステロール3-硫酸によるグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性の阻害効果の選択性の検討)
図1は、主な生体内ステロイドの構造と生合成経路を示す図である。コレステロール3-硫酸(図中、Cholesterol sulfateと示す。)は、SULT2B1b酵素の働きによって、コレステロールの3位の炭素に硫酸基が付与されて生合成される。一方、STS酵素の働きによって、コレステロール3-硫酸の硫酸基が除去され、コレステロールが生成される。
コレステロール3-硫酸によるDOCK2のGEF活性の阻害効果の選択性を検討した。DOCK2、Trio及びTiamは、いずれもRacを活性化するGEFである。段階希釈したコレステロール3-硫酸の存在下で、Dock2タンパク質、Trioタンパク質及びTiamタンパク質によるRacの活性化能をインビトロGEFアッセイによって測定した。インビトロGEFアッセイでは、GEFの働きによってRacに結合すると蛍光強度が増大する性質を持つ標識GTP(商品名、「Bodipy-FL-GTP」、インビトロジェン社)を利用した。
より具体的には、まず、DOCK2のBローブ及びCローブからなるDHR-2ドメイン、Trioタンパク質及びTiamタンパク質のDH-PHドメインに相当するポリペプチド断片を、それぞれN端にHistidine-SUMOタグを融合したリコンビナントタンパク質として、pET28a発現ベクターを用いて大腸菌Arctic express DE3株に発現させた(0.5mM IPTG存在下で16℃、一晩発現誘導)。続いて、回収した大腸菌をリン酸バッファー(PBS)-0.5mM EDTA-5mM 2-メルカプトエタノールに懸濁して超音波破砕後、その上清からNi-NTAアフィニティーカラムを用いてそれぞれのタンパク質を精製した。
一方、RacはN端にGSTタグを融合したリコンビナントタンパク質としてpGEX-6P-1発現ベクターを用いて大腸菌BL21 DE3株に発現させた(0.5mM IPTG存在下で25℃、一晩発現誘導)。回収した大腸菌をPBS-1mM EDTA-5mM 2-メルカプトエタノールに懸濁して超音波破砕後、その上清からGlutathione Sepharose 4B アフィニティーカラムを用いて精製した。
次いで、反応液A(20mM MES-NaOH-150mM NaCl-10mM MgCl-20μM GDP、pH7.0)中で、調製した各GEF(DHR-2ドメイン又はDH-PHドメイン)を、DMSOに溶解させた所定濃度のコレステロール3-硫酸又はDMSO単独(対照)の存在下で遮光しながら室温で20分間インキュベートしてGEFの前処理物を準備した。なお、全てのサンプルにおいてDMSOの濃度が3%(最終的な反応液中では濃度1%)になるように調整した。
一方、調製したRacを反応液Aに濃度15μMで添加し、そのまま氷上で30分間静置することによりGDP-Rac複合体を形成させた。
このようにして調製した100μLのGDP-Rac複合体を含む反応液Aに、3.6μMとなるようにBodipy-FL-GTPを加え、30℃で3分間平衡化させた。平衡化後、前処理した50μLのGEFを添加し30℃で反応させた。
反応中のBodipy-FL-GTP蛍光強度の変化を、Perkin Elmer社のEnspire蛍光光度分光機を用いてモニターした(励起波長:488nm、発光波長:514nm)。得られた測定値について、反応開始時点(0秒)での蛍光強度が0となるよう補正した値を算出した。
そして、ソフトウエア(商品名「GraphPad Prism5」、GraphPad software社)を用いて、算出した補正値をy軸に、時間(t)をx軸にとってプロットした際の近似曲線を求め、t=0~10秒における傾きをグアニンヌクレオチド交換反応の初速度とした。溶媒(DMSO)のみを加えた対照の反応初速度を100%として、GEF活性(%活性)及びIC50値を計算した。
図2は、実験結果を示すグラフである。その結果、コレステロール3-硫酸は、DOCK2特異的にRac活性化能を阻害することが明らかとなった。DOCK2に対するコレステロール3-硫酸の50%阻害濃度(IC50)は6.7μMであった。一方、Trio及びTiamに対するコレステロール3-硫酸のIC50は300μM超であり、これらのタンパク質のGEF活性には全く影響しなかった。
[実験例2]
(コレステロール3-硫酸によるDOCK2の活性阻害の検討)
DOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質によるRac活性化に対する各種ステロイド化合物の効果を検討した。
ステロイド化合物としては、コレステロール3-硫酸(以下、「C3S」という場合がある。)、コレステロール、コレステロール3-酢酸(以下、「C3A」という場合がある。)、プレグネノロン3-硫酸(以下、「PREG3S」という場合がある。)、デヒドロエピアンドロステロン(以下、「DHEA」という場合がある。)、デヒドロエピアンドロステロン3-硫酸(以下、「DHEA3S」という場合がある。)、エストロン3-硫酸(以下、「Estrone3S」という場合がある。)、エストリオール3-硫酸(以下、「Estriol3S」という場合がある。)、エストラジオール3-硫酸(以下、「Estradiol3S」という場合がある。)を用いた。
より具体的には、上述したものと同様にして調製したDOCK2-DHR-2ドメインタンパク質を、DMSOに溶解させた所定濃度の各種ステロイド化合物及びDMSOのみ(対照)の存在下で遮光しながら室温で20分間インキュベートしてGEFの前処理物を準備した。全てのサンプルにおいてDMSOの濃度が3%(最終的な反応液中では濃度1%)になるように調整した。次いで、上述したものと同様にして調製したRac及びBodipy-FL-GTPを用いたインビトロGEFアッセイによって、DHR-2ドメインによるRac活性化を測定した。
図3(a)はコレステロール3-硫酸の存在下でRac活性化能を測定した結果を示す時間経過曲線であり、(b)はコレステロールの存在下でRac活性化能を測定した結果を示す時間経過曲線であり、(c)はコレステロール3-酢酸の存在下でRac活性化能を測定した結果を示す時間経過曲線である。また、図4は、様々な濃度の各種ステロイド化合物の存在下でRac活性化能を測定した結果を示すグラフである。また、図5は、50μMの各種ステロイド化合物の存在下でRac活性化能を比較した結果を示すグラフである。図5中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。
その結果、コレステロール3-硫酸のみが、DOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質によるRac活性化をIC50値10μM以下で特異的に阻害することが明らかになった。表1に、DOCK2DHR-2によるRac活性化に対する各種ステロイド化合物のIC50値を示す。
Figure 0007008328000004
[実験例3]
(ELISA法によるDOCK2のDHR-2ドメインとコレステロール3-硫酸との特異的結合の検出)
DOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質と、各種ステロイド化合物との結合をELISA法により検討した。ステロイド化合物としては、コレステロール3-硫酸、コレステロール3-酢酸、コレステロール、プレグネノロン3-硫酸、エストロン3-硫酸、エストリオール3-硫酸、エストラジオール3-硫酸、デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロン3-硫酸を用いた。
まず、100%メタノールを用いて100μg/mlに調製した各種ステロイド化合物を50μLずつELISA用96ウェルプレート(商品名「Immulon 4HBX」、Thermo Scientific社)に添加し、1時間クリーンベンチ内で風乾して固定した。続いて、TBS(20mM Tris・HCl-150mM NaCl、pH7.5)に希釈した5%BSA(ウシ血清アルブミン)を180μLずつ添加して、4℃で6時間インキュベーショトし、ウェルをブロッキングした。
続いて、各ウェルを180μLのPBS-0.01%Tween-20で3回リンスした後、濃度が2μg/mLである、ヒスチジン-SUMOタグを融合したDOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質を100μLずつウェルに添加して室温で2.5時間静置した。
続いて、各ウェルを180μLのPBS-0.01%Tween-20で3回で洗浄した。続いて、5000倍希釈した、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヒスチジンタグプローブ(Thermo Scientific社)を100μLずつ各ウェルに添加して室温で1.5時間静置した。
続いて、各ウェルを180μLのPBS-0.01%Tween-20で3回で洗浄し、HRP発色基質TMB(3,3’,5,5’tetramethyl benzidine)溶液(Thermo Scientific社)を100μLずつ各ウェルに添加して発色反応を行い、反応停止液(0.16M硫酸、Thermo Scientific社)を100μLずつ各ウェルに添加して反応停止後、波長450nmの吸光度を測定した。
図6は測定結果を示すグラフである。図6中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。その結果、DOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質は、コレステロール3-硫酸に特異的に結合することが明らかとなった。
[実験例4]
(DOCK2のDHR-2ドメインとRacとの結合に対するコレステロール3-硫酸の影響)
DOCK2のDHR-2ドメインとRacとの結合に対する、コレステロール3-硫酸の影響をGST-Racビーズを用いたPull downアッセイにより検討した。
より具体的には、まず、上述したものと同様にしてGST-Racを発現誘導した大腸菌株を超音波破砕し、その上清をGlutathione Sepharose 4B ビーズと混ぜて、4℃で4時間インキュベーションした後、PBS-1mM EDTA-0.01%Tweeen-20-5mM 2-メルカプトエタノールでよく洗浄し、GST-Racを結合したビーズを調製した。
続いて、1μgのDOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質を、150μMのコレステロール3-硫酸、コレステロール3-酢酸、コレステロール、デヒドロエピアンドロステロン3-硫酸及びDMSOのみ(対照、終濃度0.6%)の存在下で、200μLのBinding buffer(20mM-Tris・HCl-150mM NaCl-5mM EDTA-0.01%Tween-20、pH7.5)中で室温、20分間前処理した。
続いて、前処理物に200μLのBinding bufferを加えて希釈し、別のチューブに200μLのBinding bufferを用いてあらかじめ分注した8μLのGST-Racビーズに添加した(計600μL)。これを4℃で1時間ローテーターを用いてゆっくりと混和した後、600μLのbinding bufferを用いてビーズを3回洗浄した。洗浄したビーズに30μLの1.5×sample buffer(87.5mM-Tris・HCl(pH6.8)-7.5%glycerol-2.5%SDS-0.003%bromophenol blue)を添加し、95℃で5分間煮沸した。
インプットとして0.1μgのDOCK2のDHR-2ドメインのBローブ及びCローブからなるタンパク質を1×sample bufferに希釈して同様に煮沸した。サンプルをSDS-PAGEで分離後、PVDF膜に転写し、3%スキムミルク-TBSTでブロッキングした後、3%スキムミルク-TBSTで1000倍希釈したHRP標識ヒスチジンタグプローブ(Thermo Scientific社)を用いたウエスタンブロット法により、His-SUMO融合DOCK2-DHR-2タンパク質を検出した。
図7は、GST-Racビーズに結合したDOCK2-DHR-2をウエスタンブロット法により検出した結果を示す写真である。その結果、コレステロール3-硫酸は、RacとDHR-2との結合を特異的に阻害することが明らかとなった。
[実験例5]
(トランスウェルを用いたリンパ球の遊走アッセイ1)
T細胞の遊走に対する、コレステロール3-硫酸の影響を検討した。また、対照として、DOCK2ノックアウトマウス由来のT細胞を用いた実験も行った。より具体的には、まず、マウス脾臓細胞(1×10個/mL)を、所定濃度のコレステロール3-硫酸又はDMSOのみ(対照)の存在下で、0.5%BSA含有RPMI-1640(トランスウェル培地)中で37℃、1時間培養した。全てのサンプルにおいてDMSOの最終濃度が0.2%になるように調整した。
続いて、24ウェルプレートに、ケモカインCCL21(300ng/mL)とコレステロール3-硫酸を所定濃度添加したトランスウェル培地を加えた後、ウェルにトランスウェル(5μm孔、Corning社)をセットし、前培養した細胞(1×10個/100μL)をロードした。続いて、37℃で2時間インキュベートした後、下層のチャンバーに移動した細胞を集め、PE標識-抗Thy1.2抗体(型式「53-2-1」、BD Pharmingen社)で染色した。移動したT細胞の割合(T細胞の遊走(%))は、下層チャンバー中のThy1.2陽性細胞(T細胞)の数をトランスウェルに入れたThy1.2陽性細胞(T細胞)の数で割ることにより算出した。
図8は、野生型及びDOCK2欠損マウス由来のT細胞のCCL21に対する遊走能を比較した結果を示すグラフである。図8中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。また、図9は、T細胞の遊走に対するコレステロール3-硫酸の阻害効果を検討した結果を示すグラフである。図9中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。その結果、コレステロール3-硫酸の存在により、T細胞の遊走が顕著に阻害された。また、コレステロール3-硫酸を6.25μMの濃度で添加した場合に、DOCK2ノックアウトマウス由来のT細胞と同程度にまでT細胞の遊走が阻害されることが明らかとなった。
[実験例6]
(トランスウェルを用いたリンパ球の遊走アッセイ2)
T細胞の遊走に対する、各種ステロイド化合物の影響を検討した。ステロイド化合物としては、コレステロール3-硫酸、コレステロール、コレステロール3-酢酸、プレグネノロン3-硫酸、エストロン3-硫酸、エストリオール3-硫酸、エストラジオール3-硫酸、デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロン3-硫酸を用いた。
より具体的には、まず、マウス脾臓細胞(1×10個/mL)を、それぞれ12.5μMに調製した各種ステロイド化合物又はDMSOのみ(対照)の存在下で、0.5%BSA含有RPMI-1640(トランスウェル培地)中で37℃、1時間培養した。全てのサンプルにおいてDMSOの最終濃度が0.2%になるように調整した。
続いて、上述したものと同様にしてトランスウェルアッセイを行い、CCL21(300ng/mL)へのT細胞の遊走性に対する各種ステロイド化合物の効果を比較検討した。
図10は、リンパ球の遊走に対する、各種ステロイド化合物の効果を検討した結果を示すグラフである。図10中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。その結果、コレステロール3-硫酸のみが特異的にT細胞の遊走を阻害することが明らかとなった。
[実験例7]
(好中球の遊走アッセイ1)
好中球の遊走速度に対するコレステロール3-硫酸の影響を検討した。より具体的には、マウス骨髄から単離した好中球を、所定濃度のコレステロール3-硫酸、又はDMSO単独(溶媒コントロール)の存在下で、20mM HEPES-NaOH(pH7.3)-0.1%BSA含有RPMI-1640(Taxiscan培地)中で室温、1時間インキュベーションした。全てのサンプルにおいてDMSOの最終濃度が0.2%になるように調整した。
続いて、EZ-TAXIScanチャンバー(Effector Cell Institute社)の一方のウェルに前処理した細胞をロードし、260μm離れたもう一方のウェルにTaxiscan培地で10μMに調製したfMLPを1μL添加し、fMLP濃度勾配(0-10μM)存在下において好中球を遊走させた。位相差顕微鏡画像を30秒間隔で20分間撮影し、Image Jプログラムのmanual tracking及びchemotaxis and migrationツールを用いて、遊走の軌跡とスピードを解析した。
図11(a)及び(b)は、好中球のfMLPへの化学遊走性に対するコレステロール3-硫酸の効果を検討した実験結果を示すグラフである。図11(a)は遊走スピードを表し、図11(b)は遊走の軌跡を表す。図11(a)中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。その結果、コレステロール3-硫酸の存在により、好中球の遊走が顕著に阻害されることが明らかとなった。
[実験例8]
(好中球の遊走アッセイ2)
好中球の遊走速度に対するコレステロール3-硫酸の影響を、細胞の前処理でなく、化学遊走因子(fMLP)と同じウェルに添加した場合についても検討した。より具体的には、マウス骨髄由来好中球をEZ-TAXIScanチャンバー(Effector Cell Institute社)の一方のウェルにロードし、260μm離れたもう一方のウェルにTaxiscan培地で3μMに調製したfMLP溶液に、150μMになるように調製したコレステロール3-硫酸、デヒドロエピアンドロステロン3-硫酸又はDMSO(対照、最終濃度3%)を1μL添加し、好中球を遊走させた。位相差顕微鏡画像を30秒間隔で40分間撮影し、上記と同様の方法で解析した。
図12(a)~(c)は、実験結果を示すグラフ及び写真である。上段には、EZ-TAXIScanチャンバーの起点(好中球をロードしたウェル)から終点(fMLP及び各種ステロイドを添加したウェル)までの間における好中球の位置と遊走スピードの関係を示すグラフを示す。また、中段には、各時点でのそれぞれの条件下で遊走している好中球の位相差顕微鏡写真を示す。また、下段には、好中球の軌跡を示すグラフを示す。図12(a)はDMSOを添加した場合の結果であり、図12(b)はコレステロール3-硫酸を添加した場合の結果であり、図12(c)はデヒドロエピアンドロステロン3-硫酸を添加した場合の結果である。
その結果、コレステロール3-硫酸が所定の濃度に達したところで好中球の遊走が急激に停止することが明らかとなった。この効果は、コレステロール3-硫酸に特異的であった。
[実験例9]
(ストローマ細胞上でのリンパ球の遊走アッセイ)
コレステロール3-硫酸の産生酵素であるSult2B1bを過剰発現したストローマ細胞上でのT細胞の遊走性を検討した。より具体的には、マウスの二次リンパ組織を摘出し、細切れにした後、1mg/mLコラゲナーゼD(ロシュ・ダイアグノスティックス社)、0.8mg/mLディスパーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス社)及び0.1mg/mL DNase Iを添加したDMEM培地に懸濁し、37℃で45分間処理してストローマ細胞を分離した。
分離したストローマ細胞を10%FBS-DMEMで培養し、培養開始後5日目に抗CD45抗体を架橋したマイクロビーズ(ミルテニー社)を用いて、残存するリンパ球を含む造血系細胞を除き、ガラスボトムディッシュにまき直した(4×10個/dish)。培養開始後6日目、7日目、8日目に連続してレトロウィルスを感染させ、遺伝子導入をおこなった。感染用のレトロウィルスは、パッケージ細胞株Plat-EにpMX-IRES-GFP(対照)又はpMX-Sult2B1b-IRES-GFPを遺伝子導入し、その培養上清中に濃縮されたものをそのまま使用した。培養9日目に細胞をTNF-α(10ng/mL)で刺激し、10日目にCCL21(300ng/mL)を添加してアッセイを行った。
アッセイには、PanT isolation kit(ミルテニー社)にてマウス脾臓より単離したT細胞をストローマ細胞上にまきこみ、ディッシュを保温機能付きステージを持った蛍光顕微鏡にセットし、CO存在下、37℃でインキュベートしながら遊走させて、1分間隔で20分間、微分干渉顕微鏡画像及び蛍光顕微鏡画像を撮影した。撮影した画像のスタックを再生し、T細胞が細胞上を通過したGFP陽性のストローマ細胞の数を求め、GFP陽性ストローマ細胞の総数で割ることにより、T細胞の遊走性(%ストローマ細胞)を算出した。
図13(a)は、対照のGFPのみ又はSult2B1b遺伝子とGFPを発現したストローマ細胞上でのT細胞の遊走性を示すタイムラプス画像である。図13(b)は、対照のGFPのみ又はSult2B1b遺伝子とGFPを発現したストローマ細胞上でのT細胞の遊走性を比較した結果を示すグラフである。図13(b)中、「**」は、t-検定で有意差p<0.01を表す。
その結果、Sult2B1b酵素を発現したストローマ細胞では、T細胞が細胞上を通過できずに、周辺部位にたまることが明らかとなった。この結果は、コレステロール3-硫酸を産生している細胞の周辺部位では、リンパ球の遊走が抑制され、免疫回避が起きていることを支持するものである。
[実験例10]
(マウスの各組織におけるSult2B1bタンパク質の発現の検討)
Sult2B1bタンパク質は、Sult2B1aタンパク質と同じ遺伝子から形成されるが、RNAスプライシングの結果、N末端領域のアミノ酸配列が異なっている。コレステロール3-硫酸の産生にはSult2B1bタンパク質の発現が必須である。そこで、Sult2B1bタンパク質に特異的な抗体を作製し、マウスの各組織におけるSult2B1bタンパク質の発現をウエスタンブロット法により検討した。
具体的には、マウスの各組織から抽出したタンパク質をSDS-PAGEで分離後、PVDF膜に転写し、マウスSult2B1bタンパク質に特異的な抗体で染色した。図14(a)はウエスタンブロット法により検出した結果を示す写真である。ローディングコントロールとしてアクチンタンパク質を検出した。各レーンにアプライした総タンパク質量はそれぞれ20μgであった。その結果、Sult2B1bタンパク質は、涙の脂質成分を形成するハーダー腺において最も多く発現していることが明らかとなった。また、小腸及び皮膚にも発現が認められた。
続いて、同様の検討を、Sult2B1b遺伝子を欠損したマウスの各組織を用いて行った。図14(b)は、野生型マウス(+/+)及びSult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の各組織におけるSult2B1bタンパク質の発現を検出した結果を示す写真である。ローディングコントロールとしてアクチンタンパク質を検出した。各レーンにアプライした総タンパク質量はそれぞれ20μgであった。その結果、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウスにおいては、Sult2B1bタンパク質の発現が認められないことが確認された。
[実験例11]
(マウスの各組織におけるコレステロール-3硫酸の存在量の検討)
野生型マウス(+/+)及びSult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の各組織及び涙におけるコレステロール-3硫酸(C3S)を、質量分析により定量した(n≧7)。具体的には、重水素で標識したコレステロール-3硫酸を内部標準として各組織に添加し、ホモジナイズした。続いて、各組織の懸濁液を限外濾過チューブで限外濾過し、ろ液をLC-MS/MSに供して直接解析した。コレステロール-3硫酸の絶対量は、内部標準のピーク面積に対するコレステロール-3硫酸のピーク面積の比に基づいて算出した。図15(a)及び(b)は、コレステロール-3硫酸の定量結果を示すグラフである。
その結果、野生型マウスにおいては、Sult2B1bタンパク質の発現量と一致して、コレステロール-3硫酸の存在量は、ハーダー腺と涙において多いことが明らかとなった。また、コレステロール-3硫酸の存在は、小腸及び皮膚にも認められた。一方、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)においては、コレステロール-3硫酸の存在が認められないことが確認された。
続いて、質量分析顕微鏡を用いて、野生型マウス(+/+)及びSult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の眼球におけるコレステロール-3硫酸の局在を可視化した。
具体的には、各マウス試料を凍結した後に新鮮な凍結薄切片を作製した。この切片上に、マトリックスとして9-amino acridineを噴霧し、質量分析顕微鏡による測定を行った。測定されたデータから質量電荷比(m/z)=465に出現するピークをタンデム質量分析によりコレステロール3-硫酸として同定し、このピーク強度分布を画像化した。続いて、測定後の切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、光学顕微鏡で観察した。
図16は、各マウスの眼球におけるコレステロール-3硫酸の局在を示す質量分析顕微鏡画像及び光学顕微鏡写真である。左上は野生型マウス(+/+)の眼球におけるコレステロール-3硫酸の局在を示す質量分析顕微鏡画像である。バーは500μmを表す。左下は左上の視野に対応する光学顕微鏡写真である。また、右上はSult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の眼球におけるコレステロール-3硫酸の局在を示す質量分析顕微鏡画像である。右下は右上の視野に対応する光学顕微鏡写真である。
その結果、野生型マウスの眼球の房水にもコレステロール-3硫酸が多く含まれることが明らかとなった。
[実験例12]
(眼の炎症誘導におけるコレステロール-3硫酸の役割の検討1)
Sult2B1b遺伝子のヘテロマウス(+/-)及びノックアウトマウス(-/-)を用いたUV誘導性角膜炎モデルを検討した結果、いずれのマウスにおいても角膜上皮の萎縮が観察された。そこで、各マウスの眼球切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、光学顕微鏡で観察した。
図17(a)は、各マウスの眼球切片の光学顕微鏡写真である。また、図17(b)はUV照射前(-)及びUV照射後(+)に、各マウスの前眼房に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。また、図17(c)は、各マウスの眼球切片を、好中球のマーカーであるGr1に対する抗体で免疫染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。写真中の点線は角膜の境界を示す。
その結果、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の眼球では、ヘテロマウス(+/-)と比較して、UV照射後に、好中球を主体とした前眼房への炎症細胞の浸潤が亢進したことが明らかとなった。
続いて、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)にコレステロール-3硫酸を点眼し、UV照射を行って、前眼房に浸潤した炎症細胞の総数を計測した。対照として溶媒のみ(ベヒクル)を点眼したマウスを用いた。
図17(d)は、各マウスの前眼房に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。その結果、UV照射による前眼房への炎症細胞の浸潤は、コレステロール-3硫酸を点眼することにより抑制されることが明らかとなった。
[実験例13]
(眼の炎症誘導におけるコレステロール-3硫酸の役割の検討2)
Sult2B1b遺伝子のヘテロマウス(+/-)及びノックアウトマウス(-/-)をブタクサ花粉で感作し、その10日及び12日後に同抗原を眼内に投与することで誘導される結膜炎モデルを検討した。各マウスの眼球切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色し、光学顕微鏡で観察した。
図18(a)は、各マウスの眼球切片の光学顕微鏡写真である。また、図18(b)はブタクサ花粉を眼内投与後に、各マウスの結膜に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。
その結果、ブタクサ花粉により誘導される結膜炎モデルにおいても、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)の眼球では、ヘテロマウス(+/-)と比較して、結膜への炎症細胞の浸潤が亢進したことが明らかとなった。
続いて、Sult2B1b遺伝子のノックアウトマウス(-/-)にコレステロール-3硫酸を点眼し、ブタクサ花粉への暴露を行って、結膜に浸潤した炎症細胞の総数を計測した。対照として溶媒のみ(ベヒクル)を点眼したマウスを用いた。
図18(c)は、各マウスの結膜に浸潤した炎症細胞の総数を計測した結果を示すグラフである。その結果、ブタクサ花粉への暴露による結膜への炎症細胞の浸潤は、コレステロール-3硫酸を点眼することにより抑制されることが明らかとなった。
[実験例14]
(コレステロール3-硫酸の検出1)
質量分析顕微鏡を用いて妊娠期マウス胎児中のコレステロール3-硫酸の分布を検出した。より具体的には、野生型妊娠マウスの胎児(E8.5)を母体より摘出し、凍結した後に新鮮な凍結薄切片を作製した。この切片上に、マトリックスとして9-amino acridineを噴霧し、質量分析顕微鏡による測定を行った。測定されたデータから質量電荷比(m/z)=465に出現するピークをタンデム質量分析によりコレステロール3-硫酸として同定し、このピーク強度分布を画像化した。続いて、測定後の切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色した。
図19(a)は野生型マウス胎児切片のHE染色像であり、図19(b)は同じ切片におけるコレステロール3-硫酸(m/z=465)の分布を示す写真であり、図19(c)は図19(a)及び(b)を重ね合わせた画像である。その結果、胎児の周辺にはコレステロール3-硫酸が局在していることが明らかとなった。この結果は、コレステロール3-硫酸が妊娠期における免疫特権部位を形成する分子実体であることを示すものである。
[実験例15]
(コレステロール3-硫酸の検出2)
ヒト大腸癌のマウス肝転移モデルを用いて、癌組織中のコレステロール3-硫酸の分布を質量分析顕微鏡により検出した。より具体的には、GFP変異体であるvenus遺伝子を導入して蛍光標識したヒト大腸癌細胞株HCT116(HCT116/venus)を、NOGマウス(NOD/Shi-scid/IL-2RγKOマウス)の脾臓内に移入した。続いて、2週間後にNOGマウスから肝臓を摘出し、液体窒素で凍結した後、凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡観察を行った。続いて、被検切片上に、マトリックスとして9-amino acridineを噴霧し、質量分析顕微鏡による測定を行った。測定されたデータからm/z=465に出現するピークをタンデム質量分析によりコレステロール3-硫酸として同定し、このピーク強度分布を画像化した。
図20(a)は肝転移モデルマウスの肝臓組織中のHCT116/venus細胞の転移巣を示す蛍光顕微鏡写真であり、図20(b)はコレステロール3-硫酸の分布を示す質量顕微鏡写真であり、図20(c)は図20(a)及び(b)を重ね合わせた画像である。その結果、肝臓に転移した癌組織がコレステロール3-硫酸を高発現していることが明らかとなった。この結果は、コレステロール3-硫酸が、癌細胞が宿主の免疫系から逃れるための免疫特権部位を形成する分子実体であることを支持するものである。
[実験例16]
(コレステロール3-硫酸の検出3)
ヒト非小細胞肺癌細胞の皮下移植モデルを用いて皮下腫瘍組織中のコレステロール3-硫酸及びアラキドン酸の分布を質量分析顕微鏡により検出した。より具体的には、ヒト非小細胞肺癌細胞株PC-9をヌードマウスの皮下に移植し、4週間後に皮下腫瘍を摘出し、HE染色及び質量分析顕微鏡による解析を行った。詳細には、被検切片上に、マトリックスとして9-amino acridineを噴霧し、質量分析顕微鏡による測定を行い、測定されたデータからm/z=465に出現するピークをタンデム質量分析によりコレステロール3-硫酸として同定し、このピーク強度分布を画像化した。続いて、測定後の切片をヘマトキシリン・エオジン(HE)染色した。
図21(a)は皮下腫瘍モデルマウスの皮下組織をHE染色した顕微鏡写真であり、図21(b)は、該組織中のコレステロール3-硫酸及び免疫細胞が浸潤したことを示すマーカーであるアラキドン酸の分布を示す質量分析顕微鏡画像である。その結果、癌組織の周辺にはコレステロール3-硫酸が局在していることが明らかとなった。また、コレステロール3-硫酸とアラキドン酸とは排他的に局在していた。この結果は、コレステロール3-硫酸が存在する領域には免疫細胞が全く浸潤できないことを示す。この結果は、コレステロール3-硫酸が、癌細胞が宿主の免疫系から逃れるための免疫特権部位を形成する分子実体であることを更に支持するものである。
本発明によれば、新たな免疫制御剤を提供することができる。本発明の免疫制御剤を、その一態様として免疫抑制剤として使用することにより、過剰な免疫応答により生じる自己免疫疾患等の炎症性疾患を抑えることが可能である。また別の態様では、本発明の免疫制御剤を免疫特権除去剤として使用することにより、がんの免疫回避システムを解除し、がん免疫を賦活化することが可能である。さらに、本発明の免疫制御剤を利用して、免疫特権部位を人為的に作り出し、移植片に対する拒絶反応を抑制することで、再生医療や移植医療に貢献することが可能である。

Claims (2)

  1. コレステロール3-硫酸又はその塩を有効成分とする、Dedicator of cytokinesis 2(DOCK2)によるRac活性化の阻害剤。
  2. コレステロール3-硫酸を生成させるタンパク質、前記タンパク質をコードする発現ベクター、前記タンパク質の発現阻害物質又は前記タンパク質の阻害剤を有効成分とし、
    コレステロール3-硫酸を生成させる前記タンパク質が、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質であり、
    前記発現ベクターが、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現ベクター、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロールの3位の炭素に硫酸基を付加する活性を有するタンパク質の発現ベクターであり、
    前記発現阻害物質が、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の発現を阻害するsiRNA、shRNA、miRNA、リボザイム又はアンチセンス核酸であり、
    前記阻害剤が、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の阻害剤である、
    DOCK2によるRac活性化の制御剤。
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