JP2017039691A - 炎症性疾患の治療剤及びその使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】コレステロール結晶を認識するパターン認識受容体を同定し、コレステロール結晶と当該受容体との結合の阻害に基づく炎症性疾患の治療剤を提供する。【解決手段】Macrophage−inducible C−type lectin(Mincle)の発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質を有効成分とし、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する、炎症性疾患の治療剤。【選択図】図24

Description

本発明は、炎症性疾患の治療剤及びその使用に関する。より具体的には、炎症性疾患の治療剤、炎症性疾患の治療用組成物、炎症性疾患の治療剤のスクリーニング方法、及び炎症性疾患モデル非ヒト動物に関する。
コレステロールは、細胞の完全性、流動性及び様々な生物学的活性に必須の膜成分の1つである。しかしながら、コレステロールの過剰摂取は、高コレステロール血症を引き起こし、コレステロール結晶を形成させる。また、コレステロール結晶は、動脈硬化等の炎症性疾患において、炎症を惹起し、疾患の慢性化、憎悪に寄与していることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
ところで、C型レクチン受容体は、病原体や傷害を受けた組織を認識して自然免疫応答を誘導するパターン認識受容体の1つである。しかしながら、C型レクチン受容体の内在性のリガンドは完全には解明されていない。
Macrophage−inducible C−type lectin(Mincle)は、活性化したマクロファージ及び樹状細胞で発現するC型レクチン受容体の1つである。Mincleは、Immunoreceptor tyrosine−based activation motif(ITAM)を有するアダプタータンパク質であるFcRγ鎖と結合し、シグナル伝達を行うことが知られている。
Duewell P., et al., NLRP3 inflammasomes are required for atherogenesis and activated by cholesterol crystals., Nature, 464 (7293), 1357-1361, 2010.
コレステロール結晶を認識する直接的なパターン認識受容体は同定されていなかった。そこで、本発明は、コレステロール結晶を認識するパターン認識受容体を同定し、コレステロール結晶と当該受容体との結合の阻害に基づく炎症性疾患の治療剤を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
(1)Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質を有効成分とし、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する、炎症性疾患の治療剤。
(2)Mincleに対する特異的結合物質を有効成分とし、当該特異的結合物質が、MincleのCRACモチーフに結合するものである、(1)に記載の炎症性疾患の治療剤。
(3)(1)又は(2)に記載の炎症性疾患の治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、炎症性疾患の治療用組成物。
(4)被検物質の存在下又は非存在下で、Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量を測定する工程と、被検物質の存在下における前記結合量が、被検物質の非存在下における前記結合量よりも低下していた場合に、前記被検物質は炎症性疾患の治療剤であると判定する工程と、を備える、炎症性疾患の治療剤のスクリーニング方法。
(5)コレステロール結晶への結合性を有するMincleを発現する、炎症性疾患モデル非ヒト動物。
本発明により、コレステロール結晶を認識するパターン認識受容体が同定され、コレステロール結晶と当該受容体との結合の阻害に基づく炎症性疾患の治療剤を提供することができる。
(a)は、実験例1における脂質抽出物フラクションのNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。(b)は、実験例1におけるHPTLC解析の結果を示す写真である。 (a)は、実験例2におけるサブフラクションのHPTLC解析の結果を示す写真である。(b)は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 (a)は、実験例3におけるフラクションNo.7−15のHPLCクロマトグラムであり、(b)は、コレステロールのHPLCクロマトグラムである。 (a)は、実験例3におけるフラクションNo.7−15のポジティブモード、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(TOF−MS)スペクトルの結果であり、(b)は、コレステロールのTOF−MSスペクトルの結果である。 (a)は、実験例4における、フラクションNo.7−15のTMSエステルのトータルイオン電流(TIC)クロマトグラムである。(b)は、標準コレステロールTMSエステルのTICクロマトグラムである。(c)は、フラクションNo.7−15のTMSエステルの電子イオン化質量分析スペクトルである。(d)は、標準コレステロールTMSエステルの電子イオン化質量分析スペクトルである。 (a)及び(b)は、実験例5における、プレートにコートされたコレステロール又はコレステロール結晶のNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 実験例6において、ヒトIgG1−Fc又はヒトMincle−Igの、プレートにコートされたコレステロールへの結合能を測定した結果を示すグラフである。 実験例7における、プレートにコートされた様々な脂肪酸のNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 コレステロール、ステロイドホルモン及びステロールの化学構造を示す図である。 実験例8における、コレステロール、コルチゾン、プロゲステロン、エストラジオール、テストステロン、アルドステロン及びDHEAのNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 実験例9における、様々なコレステロールエステルのNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 実験例10における、コレステロール、シトステロール、デスモステロール、エルゴステロール及びコレスタン酸のNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。 実験例11において、マウスMincle、ヒトMincle、マウスMCL又はヒトMCLを発現したNFAT−GFPレポーター細胞をコレステロール結晶で刺激した結果を示すグラフである。 実験例12において、ヒトDectin−1、マウスDectin−1、ヒトDectin−2又はマウスDectin−2を発現したNFAT−GFPレポーター細胞をコレステロール結晶で刺激した結果を示すグラフである。 実験例13において、ヒト、マウス又はラットMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞をコレステロール結晶で刺激した結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、実験例14においてRAW−Blue細胞が産生したTNFの濃度の測定結果を示すグラフである。(c)及び(d)は、実験例14においてRAW−Blue細胞が産生したMIP−2の濃度の測定結果を示すグラフである。 (a)〜(c)は、実験例15において抗hMincle抗体の存在下、RAW−Blue細胞が産生したTNFの濃度の測定結果を示すグラフである。(d)〜(f)は、実験例15において抗hMincle抗体の存在下、RAW−Blue細胞が産生したMIP−2の濃度の測定結果を示すグラフである。 実験例16におけるマイクロアレイ解析の結果を示す図である。 実験例17における定量的PCRの結果を示すグラフである。 (a)は、実験例18において、LPS及びコレステロール結晶による刺激でヒト単球由来樹状細胞が産生したIL−1βの濃度の測定結果を示すグラフである。(b)は、実験例18において、LPS及び尿酸一ナトリウム結晶による刺激でヒト単球由来樹状細胞が産生したIL−1βの濃度の測定結果を示すグラフである。 実験例19において、ヒトMincle及びマウスMincleの炭水化物認識ドメインのアミノ酸配列をアラインメントした結果を示す図である。 実験例20において、hMincleR135Lの発現をフローサイトメトリーにより解析した結果を示すグラフである。 実験例21において、hMincle又はhMincleR135Lを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、コレステロール結晶又はトレハロース6,6’−ジミコレート(TDM)で刺激した結果を示すグラフである。 コレステロール結晶によるhMincleを介した刺激を説明する模式図である。
[炎症性疾患の治療剤]
1実施形態において、本発明は、Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質を有効成分とし、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する、炎症性疾患の治療剤を提供する。
実施例において後述するように、発明者らは、コレステロール結晶を認識するパターン認識受容体がMincleであることを明らかにした。また、Mincle及びコレステロール結晶が結合することにより、炎症性サイトカインの発現が上昇することを明らかにした。更に、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害することにより、炎症性サイトカインの発現の上昇が抑制されることを明らかにした。したがって、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する物質は、炎症性疾患の治療剤であるということができる。
Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する物質としては、Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質、コレステロール結晶に対する特異的結合物質等が挙げられる。
Mincleの発現阻害物質は、Mincleの発現を阻害することにより、結果的にMincleとコレステロール結晶との結合を阻害する。また、Mincleに対する特異的結合物質は、Mincleに結合することにより、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する。また、コレステロール結晶に対する特異的結合物質は、コレステロール結晶に結合することにより、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する。
(Mincle)
Mincleとしては、コレステロール認識/相互作用アミノ酸コンセンサス(cholesterol recognition/interaction amino acid consensus、CRAC)モチーフ(以下、「CRACモチーフ」という場合がある。)を有するMincleが挙げられる。CRACモチーフとは、(L/V)X1−5YX1−5(R/K)のアミノ酸配列からなるモチーフである。ここで、Lはロイシンを示し、Vはバリンを示し、Xは任意のアミノ酸を示し、Yはチロシンを示し、Rはアルギニンを示し、Kはリジンを示す。
より具体的には、ヒトMincleが挙げられる。ヒトMincleのアミノ酸配列を配列番号1に示し、cDNAの塩基配列を配列番号2に示す。配列番号1に示すアミノ酸配列において、第127〜135番目の領域がCRACモチーフである。
Mincleには、遺伝子多型やスプライシングバリアント等が存在する場合がある。このため、本実施形態におけるMincleは、配列番号1に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつコレステロール結晶に対する結合活性を有するタンパク質であってもよい。本明細書において、1若しくは数個とは、例えば1〜20個、例えば1〜10個、例えば1〜5個、例えば1〜3個を意味する。
(発現阻害物質)
発現阻害物質としては、Mincleの発現を阻害するsiRNA、shRNA、リボザイム、アンチセンス核酸等が挙げられる。
siRNA(small interfering RNA)は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングのために用いられる21〜23塩基対の低分子2本鎖RNAである。細胞内に導入されたsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体はsiRNAと相補的な配列を持つmRNAに結合し切断する。これにより、配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドをDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、例えば、適当なアニーリング緩衝液中、90〜95℃で約1分程度変性させた後、30〜70℃で約1〜8時間アニーリングさせることにより調製することができる。
Mincleの発現を阻害するsiRNAのセンス鎖の具体的な塩基配列としては、例えば、配列番号25〜28に記載の塩基配列等が挙げられる。
shRNA(short hairpin RNA)は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングのために用いられるヘアピン型のRNA配列である。shRNAは、ベクターによって細胞に導入し、U6プロモーター又はH1プロモーターで発現させてもよいし、shRNA配列を有するオリゴヌクレオチドをDNA/RNA自動合成機で合成し、siRNAと同様の方法によりセルフアニーリングさせることによって調製してもよい。細胞内に導入されたshRNAのヘアピン構造は、siRNAへと切断され、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体はsiRNAと相補的な配列を持つmRNAに結合し切断する。これにより、配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。
Mincleの発現を阻害するshRNAとしては、例えば、細胞内で切断されて、上述したMincleの発現を阻害するsiRNAを生成するもの等が挙げられる。
リボザイムは、触媒活性を有するRNAである。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、RNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となっている。リボザイムは、グループIイントロン型、RNasePに含まれるM1RNA等の400ヌクレオチド以上の大きさのものであってもよく、ハンマーヘッド型、ヘアピン型等と呼ばれる40ヌクレオチド程度のものであってもよい。
アンチセンス核酸は、標的配列に相補的な核酸である。アンチセンス核酸は、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が形成された部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエクソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制等により、標的遺伝子の発現を抑制することができる。
siRNA、shRNA、リボザイム及びアンチセンス核酸は、安定性や活性を向上させるために、種々の化学修飾を含んでいてもよい。例えば、ヌクレアーゼ等の加水分解酵素による分解を防ぐために、リン酸残基を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換してもよい。また、少なくとも一部をペプチド核酸(PNA)等の核酸類似体により構成してもよい。
(特異的結合物質)
特異的結合物質としては、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー、低分子化合物等が挙げられる。抗体は、例えば、マウス等の動物に対象タンパク質又はその部分ペプチドを抗原として免疫することにより作製してもよい。あるいは、ファージライブラリー等の抗体ライブラリーのスクリーニング等により作製することもできる。また、抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。上記の抗体又は抗体断片は、ポリクローナルであってもよく、モノクローナルであってもよい。
アプタマーとは、標識物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。対象タンパク質に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、対象タンパク質に対する特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo−hybrid法等により選別することができる。
特異的結合物質は、上記の他にも、例えば、対象物質に対する結合性を指標として、化合物ライブラリー等からスクリーニングしたものであってもよい。
Mincleに対する特異的結合物質としては、Mincleに結合してMincleとコレステロール結晶との結合を阻害するものであれば特に制限されない。例えば、MincleのCRACモチーフ(配列番号1の第127〜135番目のアミノ酸配列)に結合する、抗体、抗体断片、アプタマー、低分子化合物等が挙げられる。より具体的には、実施例において後述する、抗ヒトMincleモノクローナル抗体13D10−H11であってもよい。あるいは、上記抗体に基づく抗体断片等であってもよい。
コレステロール結晶に対する特異的結合物質としては、コレステロール結晶に結合してMincleとコレステロール結晶との結合を阻害するものであれば特に制限されない。例えば、CRACモチーフ((L/V)X1−5YX1−5(R/K))のアミノ酸配列からなるペプチド、CRACモチーフを有するタンパク質、抗コレステロール結晶抗体等が挙げられる。
(炎症性疾患)
本実施形態の治療剤が治療対象とする炎症性疾患としては、Mincleとコレステロール結晶との結合に起因する疾患が挙げられ、例えば動脈硬化、脂質代謝異常症、2型糖尿病、メタボリック症候群、高血圧症、狭心症、脳梗塞等が挙げられる。
[炎症性疾患の治療用組成物]
1実施形態において、本発明は、上述した炎症性疾患の治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、炎症性疾患の治療用組成物を提供する。本実施形態の治療用組成物を生体に投与することにより、炎症性疾患を治療、予防又は症状を緩和することができる。
炎症性疾患の治療用組成物は、常法(例えば、日本薬局方記載の方法)にしたがって、上述した炎症性疾患の治療剤、薬学的に許容される担体、及び場合によりその他の添加剤を混合して製剤化することにより製造することができる。
薬学的に許容される担体としては、特に制限されず、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、増粘剤、湿潤剤、注射剤用溶剤等を使用することができる。また、その他の添加剤としては、特に制限されず、例えば、防腐剤、pH調整剤、安定剤紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料等が挙げられる。薬学的に許容される担体及びその他の添加剤としては、例えば、第十六改正日本薬局方等に記載されている一般的な原料を使用することができる。
治療用組成物の剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口的に投与する剤型、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の非経口的に投与する剤型等が挙げられる。
治療用組成物中の炎症性疾患の治療剤の含有量は、固形分換算で、例えば0.01〜10質量%であってもよく、例えば0.01〜5質量%であってもよく、例えば0.1〜2質量%であってもよい。
炎症性疾患の治療剤又は炎症性疾患の治療用組成物の投与方法は特に制限されず、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等は経口投与される。また、注射剤は、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて、動脈内、筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内投与される。坐剤は直腸内投与される。皮膚外用剤は、患部に塗布、貼付又はスプレーされる。
炎症性疾患の治療剤又は炎症性疾患の治療用組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば1日あたり0.01〜500mg/kg体重、例えば0.1〜100mg/kg体重、例えば1〜10mg/kg体重の有効成分(固形分換算した炎症性疾患の治療剤)を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば1日あたり0.01〜50mgの有効成分を投与すればよい。また、坐剤の場合には、例えば1日あたり0.01〜100mgの有効成分を投与すればよい。また、皮膚外用剤の場合には、例えば1日あたり0.01〜50mgの有効成分を投与すればよい。
[炎症性疾患の治療剤のスクリーニング方法]
1実施形態において、本発明は、被検物質の存在下又は非存在下で、Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量を測定する工程と、被検物質の存在下における前記結合量が、被検物質の非存在下における前記結合量よりも低下していた場合に、前記被検物質は炎症性疾患の治療剤であると判定する工程と、を備える、炎症性疾患の治療剤のスクリーニング方法を提供する。
(Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量を測定する工程)
実施例において後述するように、Mincleは、コレステロール結晶又は固相上にコートされたコレステロールと結合することによりシグナル伝達を行う。そこで、本工程では、被検物質の存在下又は非存在下で、Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量を測定する。被検物質としては、例えば化合物ライブラリー等を用いることができる。
固相としては、例えば、マイクロウェルプレート、プラスチックチューブ、ガラス板、ビーズ、膜等が挙げられる。固相上へのコレステロールのコートは、例えば、コレステロールを2−プロパノール等の有機溶媒に溶解した溶液を固相に接触させた後、溶媒を除去すること等により行うことができる。溶媒の除去は、例えば、溶媒を蒸発させること等により行うことができる。
Mincleとコレステロール結晶との結合量は、例えば、実施例において後述するNFAT−GFPレポーターアッセイ等により測定することができる。あるいは、例えばMincleタンパク質をビアコア等の生物物理学的相互作用解析装置のセンサーチップに固定化し、被検物質の存在下又は非存在下でコレステロール結晶を接触させて解析することにより、Mincleとコレステロール結晶との結合量を測定してもよい。ここで、Mincleは、例えば実施例において後述する、Mincleとイムノグロブリン(Ig)との融合タンパク質(hMincle−Ig)の形態であってもよい。あるいは、Mincleは、CRAC領域のアミノ酸配列のみからなるペプチドであってもよく、CRAC領域のアミノ酸配列を含むペプチドであってもよく、CRAC領域のアミノ酸配列を含む部分タンパク質であってもよい。
また、Mincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量は、例えば、マイクロウェルプレート等の固相にコレステロールをコートした後、被検物質の存在下又は非存在下でMincleを反応させ、Mincleの結合量を測定することにより測定することができる。Mincleの結合量は、例えば、抗Mincle抗体等を用いて測定することができる。あるいは、例えば、上述した生物物理学的相互作用解析装置のセンサーチップにコレステロールを固定化し、被検物質の存在下又は非存在下でMincleを接触させて解析することにより、Mincleとコレステロール結晶との結合量を測定してもよい。上述したように、Mincleは、融合タンパク質の形態であってもよく、ペプチド又は部分タンパク質の形態であってもよい。
(判定する工程)
本工程において、被検物質が炎症性疾患の治療剤であるか否かを判定する。被検物質の存在下において測定された、Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量が、被検物質の非存在下における前記結合量よりも低下していた場合には、被検物質は炎症性疾患の治療剤であると判定することができる。
[炎症性疾患モデル非ヒト動物]
1実施形態において、本発明は、コレステロール結晶への結合性を有するMincleを発現する、炎症性疾患モデル非ヒト動物を提供する。
実施例において後述するように、げっ歯類のMincleは、コレステロール結晶への結合性を有していない。これは、げっ歯類のMincleがCRACモチーフを有していないためであると考えられる。マウスMincleのアミノ酸配列を配列番号3に示し、cDNAの塩基配列を配列番号4に示す。
したがって、野生型のMincle遺伝子を有する、マウス、ラット等の非ヒト動物を用いて、コレステロール結晶とMincleとの結合に基づく炎症応答を解析することは困難である。これに対し、本実施形態の炎症性疾患モデル非ヒト動物によれば、コレステロール結晶により誘導される生理的又は病理学的な応答をより詳細に解析することができる。
コレステロール結晶への結合性を有するMincleは、ヒトMincleであってもよい。あるいは、野生型のMincleにCRACモチーフを導入した組換えMincleであってもよい。
本実施形態の非ヒト動物は、例えば、ヒトMincleトランスジェニックマウスであってもよい。この場合、ヒトMincleトランスジェニックマウスは、内在性のマウスMincle遺伝子が破壊されていることが好ましい。
あるいは、本実施形態の非ヒト動物は、相同組換え等により、内在性のマウスMincle遺伝子をヒトMincle遺伝子と置換した遺伝子改変マウス等であってもよい。あるいは、相同組換え等により、内在性のマウスMincle遺伝子にCRACモチーフを導入した遺伝子改変マウス等であってもよい。非ヒト動物の遺伝子改変は、ES細胞を用いた方法、ゲノム編集技術を用いた方法等により行うことができる。
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質の有効量を治療を必要とする患者に投与する工程を備える、炎症性疾患の治療方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、炎症性疾患の治療のための、Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質を提供する。
1実施形態において、本発明は、炎症性疾患の治療剤を製造するための、Mincleの発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質の使用を提供する。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[材料及び方法]
(試薬)
コレステロール(カタログ番号「C75209」)、コルチゾン(カタログ番号「C2755」)、プロゲステロン(カタログ番号「P8783」)、エストラジオール(カタログ番号「E8875」)、テストステロン(カタログ番号「T1500」)、アルドステロン(カタログ番号「A9477」)、エルゴステロール(カタログ番号「E5610」)、トレハロース6,6’−ジミコレート(TDM、カタログ番号「T3034」)、リポポリサッカライド(LPS、カタログ番号「L4516」)はシグマ−アルドリッチ社から購入した。
ウシ肝臓からの全脂質抽出物(カタログ番号「181104C」)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(カタログ番号「700087P」)、コレステロールエステル14:0(カタログ番号「110859P」)、16:0(カタログ番号「110862P」)、18:0(カタログ番号「110866P」)、20:0(カタログ番号「110870P」)、22:0(カタログ番号「110875P」)、シトステロール(カタログ番号「700095P」)、デスモステロール(カタログ番号「700060P」)、コレスタン酸(カタログ番号「700070P」)は、アバンティ社から購入した。
脂肪酸ライブラリー(商品名「SCREEN−WELL(商標) Fatty Acid library」、型番「BML−2803−0100」)は、エンゾライフサイエンス社から購入した。1−(トリメチルシリル)イミダゾールは、東京化成工業株式会社から購入した。尿酸一ナトリウム結晶はインビボジェン社から購入した。
コレステロール結晶は、コレステロールを95%エタノールに溶解し、60℃に加熱し、室温で放置することにより調製した。コレステロール結晶はリン酸緩衝液(PBS)に懸濁した。
(細胞)
2B4−NFAT−GFPレポーター細胞(以下、「NFAT−GFPレポーター細胞」という場合がある。)は次のようにして作製した。まず、3つのタンデムに連結したNFAT結合部位をGFPのcDNAに結合させることによりNFAT−GFPコンストラクトを作製した。続いて、T細胞ハイブリドーマ2B4にNFAT−GFPコンストラクトを遺伝子導入した。続いて、得られた細胞を抗TCRβ抗体で刺激し、GFP陽性細胞をセルソーターで回収した。回収した細胞をクローニングし、代表的なクローン細胞を2B4−NFAT−GFPレポーター細胞として実験に用いた。FcRγと結合した受容体を用いた場合には、FcRγのみを発現したレポーター細胞を対照として使用した。
RAW−Blue細胞はインビボジェン社より購入し、レトロウイルスベクター(pMX−IRES−hCD8)を用いた遺伝子導入によりヒトMincle(以下、「hMincle」という場合がある。)を遺伝子導入した。
ヒト単球由来樹状細胞の調製には、健康なドナーの末梢血からリンパ球分離液(d=1.077、ナカライテスク社)を使用した密度勾配遠心分離によりヒト末梢血単核球細胞を分離して使用した。ヒトCD14陽性単核球は、抗ヒトCD14マイクロビーズ(ミルテニーバイオテク社)を用いてヒト末梢血単核球細胞から精製した。樹状細胞は、CD14陽性単核球を、10%ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、10ng/mLヒトGM−CSF、10ng/mLヒトIL−4を添加したRPMI1640培地で7日間培養することにより調製した。
細胞の刺激は、脂質リガンドをクロロホルム:メタノール(以下、「C:M」という場合がある。)に溶解し、2−プロパノールで希釈し、プレートにコートされた形で使用した。
(親油性画分の調製)
ウシ肝臓をC:M(体積比2:1)で処理し、可溶性抽出物を高性能薄層クロマトグラフイー(HPTLC)で更に分画した。各フラクションを薄層クロマトグラフィープレートから回収してC:Mに溶解し、2−プロパノールで希釈して細胞の刺激に用いた。
(NFAT−GFPレポーターアッセイ)
2−プロパノールで希釈した各脂質を、96ウェルプレートに1ウェルあたり20μLずつ添加し、溶媒を蒸発させた。続いて、NFAT−GFPレポーター細胞を、抗ヒトMincleモノクローナル抗体13D10−H11(ラット、IgG1、κ)の存在下又は非存在下、コレステロール結晶又はプレートにコートされた形態の様々な脂質で18〜24時間刺激した。アイソタイプ適合コントロールモノクローナル抗体(クローンR3−34)はBDバイオサイエンス社から購入した。NFAT−GFPのレポーター活性は、フローサイトメトリーにより測定した。
(炎症性サイトカイン産生量の測定)
マウスTumor Necrosis Factor(TNF)及びヒトIL−1βの濃度はELISAキット(BDバイオサイエンス社)を用いて測定した。
(コレステロールの同定)
フラクションNo.7−サブフラクションNo.15(以下、「フラクションNo.7−15」という場合がある。)を順相HPLC(カラム:コスモシル5SLII;移動相:n−ヘキサン/2−プロパノール(99/1);検出:λ210)に供し、ピークを、後に続く質量分析(型式「micrOTOF II」、ブルカー社)の結果に基づき、コレステロールを示すものであると同定した。
フラクションNo.7−15中のコレステロールは、保持時間(Rt)=8.95分、m/z=409.3318[M+Na]、C2746NaOに対して計算、Δミリマスユニット(mmu)=12.3であった。
標準的なコレステロールは、保持時間(Rt)=8.92分、m/z=409.3394[M+Na]、Δミリマスユニット(mmu)=4.7であった。
トリメチルシリルステロールのガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)は、GC−MS装置(型式「QP−2010」、島津製作所)を用いて、電子イオン化モード、イオン化エネルギー70eVで行った。
GC−MS装置に、INERTCAP−5MS/SILキャピラリーカラム(30m、内径0.25mm、ジーエルサイエンス社)を装着し、キャリアガスとしてヘリウムを0.66mL/分の流量で使用した。カラム温度は最初の2分間250℃に維持し、続いて5.0℃/分の割合で次第に280℃に上昇し、280℃で20分間維持した。インジェクター及びインターフェイスは、それぞれ300℃及び250℃にセットした。ガスクロマトグラフはスプリットレスモードで操作した。マススペクトルはm/z=40〜600の範囲で測定した。スキャン間隔は1.0秒であり、スレッシュホールドは1000とした。ソルベントカットは2分に設定した。
ステロールサンプルは1−(トリメチルシリル)イミダゾール(TMS)/ピリジン(1/1、0.1mL)と共に加熱して60℃で1時間反応させ、ステロールのTMSエステルを調製した。インジェクション溶液(1mL)は、n−ヘキサン中のTMSステロールであった。
(Ig融合タンパク質)
ヒトMincleのIg融合タンパク質(hMincle−Ig)は、ヒトMincleの細胞外ドメイン(アミノ酸46−219)と、ヒトIgG1のFc領域(hIgG1−Fc)との融合タンパク質を作製することにより調製した。
(インビトロMincle結合アッセイ)
2μg/mLのhIgG1−Fc(Ig)及びhMincle−Igを結合バッファー(20mM Tris−HCl,150mM NaCl、1mM CaCl、2mM MgCl、pH7.0)を0.1nmol/0.32cmの予めコートされたコレステロールとインキュベートした。結合したタンパク質を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗hIgG抗体及び後に続く発色基質との反応により検出した。ペルオキシダーゼ活性は分光光度計により測定した。
(DNAマイクロアレイ)
RNeasy(キアゲン社)を使用して細胞から全RNAを分離した。DNAマイクロアレイ解析は、Human Gene 1.0 ST array(アフィメトリクス社)を用いて行った。
(定量的PCR)
Sepasol−RNA I Super G(ナカライテスク社)を用いて細胞から全RNAを分離した。RNA試料1μgを逆転写及びReverTra Ace qPCR RT Master Mix(東洋紡社)を用いたcDNA合成に使用した。リアルタイムPCRは、THUNDERBIRD SYBR qPCR mix(東洋紡社)及びABI PRISM 7000(アプライドバイオシステムズ社)を用いて行った。いくつかの標的遺伝子の遺伝子シンボルと、当該標的遺伝子増幅のためのプライマーの塩基配列の配列番号を表1に示す。
(分子シミュレーション)
コレステロール及びhMincleの結合の解析は、クエン酸と共結晶化したhMincle(Protein Data Bank(PDB)ID:3WH2)をテンプレートに用いて、Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウエア(菱化システム社)により行った。
(統計解析)
全ての統計解析は、独立両側スチューデントt検定により行った。
<I.Mincleの内在性リガンドはコレステロールである>
[実験例1]
発明者らは、まず、hMincleが内在性の脂質を認識するか否かを検討した。具体的には、ウシ肝臓からの脂質抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより20のフラクションに分画し、NFAT−GFPレポーターアッセイを用いて各フラクションを評価した。
ウシ肝臓からの脂質抽出物を、2mLのクロロホルム:メタノール(C:M=2:1,v/v)で溶出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより各100μLずつ20個のフラクションに分画した。各フラクションをプレートにコートし、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。
図1(a)はNFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。その結果、図1(a)に示すように、フラクションNo.7に強い活性のピークが認められた。
また、上記の各フラクションをHPTLCで解析し、クロロホルム−メタノール−水(65:25:4,v/v/v)で展開した。HPTLCプレートは、酢酸銅−リン酸で染色した。
図1(b)は、HPTLC解析の結果を示す写真である。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。図1(b)中、白矢頭及び黒矢頭は、それぞれ、原点及び溶媒の先端を示す。また、Tは全脂質抽出物を示す。
[実験例2]
続いて、発明者らは、実験例1のフラクションNo.7を更に分画して解析した。具体的には、フラクションNo.7をHPTLC(C:M=8:2,v/v)で解析し、20のサブフラクションに分画した。HPTLCプレートは、酢酸銅−リン酸で染色した。
図2(a)は、HPTLC解析の結果を示す写真である。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。図2(a)中、白矢頭及び黒矢頭は、それぞれ、原点及び溶媒の先端を示す。
続いて、各サブフラクションをプレートにコートし、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を18時間刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。
図2(b)は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。その結果、hMincleを発現したレポーター細胞は、フラクションNo.7−サブフラクションNo.15(以下、「フラクションNo.7−15」という場合がある。)に特異的に反応した。
図2(a)に示すように、フラクションNo.7−15は、比較的高いR値を示した。このことから、hMincleは極性の低い脂質に結合すると考えられた。
[実験例3]
続いて、実験例2のフラクションNo.7−15をHPLC及び質量分析によりさらに解析した。図3(a)は、フラクションNo.7−15のHPLCクロマトグラムであり、図3(b)は、コレステロールのHPLCクロマトグラムである。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。図3中、「Rt」は保持時間を示す。
また、図4(a)は、フラクションNo.7−15のポジティブモード、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析(TOF−MS)スペクトルの結果であり、図4(b)は、コレステロールのTOF−MSスペクトルの結果である。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。図4中、「Intens」は強度を示す。
その結果、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)に示すように、フラクションNo.7−15の主要な成分はコレステロールであることが明らかとなった。
[実験例4]
続いて、TMSを用いたエステル化後のGC−MS解析によって、実験例2のフラクションNo.7−15を更に解析した。図5(a)〜(d)は、フラクションNo.7−15及びコレステロールをTMSでエステル化した後にGC−MS解析した結果を示すグラフである。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。
図5(a)は、フラクションNo.7−15のTMSエステルのトータルイオン電流(TIC)クロマトグラムである。図5(b)は、標準コレステロールTMSエステルのTICクロマトグラムである。図5(c)は、フラクションNo.7−15のTMSエステルの電子イオン化質量分析スペクトルである。図5(d)は、標準コレステロールTMSエステルの電子イオン化質量分析スペクトルである。
標準コレステロールTMSエステルの結果は、Rt=14.6、m/z=458(M),443(M−15),368,329,129(ベースピーク)であった。また、肝臓由来のコレステロールのTMSエステルの結果は、Rt=14.6、m/z=458(M),443(M−15),368,329,129(ベースピーク)であった。
TMSを用いたエステル化後のGC−MS解析の結果からも、フラクションNo.7−15の主要な成分がコレステロールであることが確認された。
[実験例5]
続いて、hMincle及びFcRγを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、プレートにコートされたコレステロール又はコレステロール結晶で18時間刺激し、NFAT−GFPの誘導をフローサイトメトリーにより解析した。対照として、FcRγのみを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を用いた。
図6(a)及び(b)は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。
その結果、図6(a)及び(b)に示すように、プレートにコートされた精製コレステロール及び精製コレステロール結晶は、hMincleを発現したレポーター細胞を活性化することが明らかとなった。
[実験例6]
続いて、発明者らは、可溶性のhMincle−Ig融合タンパク質を用いて、hMincleが、コートされたコレステロールに結合するか否かを検討した。
具体的には、hIgG1−Fc(Ig)又はhMincle−Igをプレートにコートされたコレステロールと共にインキュベートした。続いて、プレートに結合したタンパク質を、抗hIgG−セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)及び後に続く発色基質の添加により検出した。ペルオキシダーゼ活性は分光光度計で測定した。
図7は、結果を示すグラフである。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。図7中、「なし」はタンパク質を添加していないことを示し、「Ig」はhIgG1−Fcを添加したことを示し、「hMincle−Ig」はhMincle−Igを添加したことを示す。その結果、hMincle−Igはプレートにコートされたコレステロールに結合することが明らかとなった。
以上の結果から、hMincleは、コレステロール結晶と結合することが明らかとなった。
<II.hMincleはコレステロールに特異的に結合する>
[実験例7]
発明者らは、hMincleが他の脂質を認識するか否かを検討した。具体的には、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、プレートにコートされた形態の10nmol/ウェルの様々な脂肪酸(商品名「SCREEN−WELL(商標) Fatty Acid library」、型番「BML−2803−0100」、エンゾライフサイエンス社)及びプレートにコートされたコレステロールで18時間刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。
図8は、結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。その結果、図8に示す68種類の脂質のいずれもNFAT活性化を誘導することができないことが明らかとなった。
[実験例8]
図9は、コレステロール、ステロイドホルモン及びステロールの化学構造を示す図である。図9に示すように、天然のステロイドホルモンはコレステロールから合成され、それらのコア構造はコレステロールのそれと類似している。そこで、発明者らは、hMincle及びマウスMincle(以下、「mMincle」という場合がある。)が、プレートにコートされたステロイドホルモンを認識するか否かを検討した。
具体的には、コレステロール、コルチゾン、プロゲステロン、エストラジオール、テストステロン、アルドステロン及びDHEAを、プレートに1μg/ウェルコートし、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を18時間刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。
図10は、結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図10に示すように、コレステロールのみがhMincleと反応し、コルチゾン、プロゲステロン、エストラジオール、テストステロン、アルドステロン及びDHEAはhMincle及びmMincleとの反応性を示さないことが明らかとなった。また、コレステロールは、mMincleと反応性を示さないことが明らかとなった。
[実験例9]
摂取されたコレステロールの殆どはエステル化された形態で存在している。そこで、発明者らは、hMincleとコレステロールエステルとの反応性を検討した。プレートにコートされた、様々なコレステロールエステル(5μg/ウェル)で、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincle若しくはmMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を18時間刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。各コレステロールエステルは、脂肪酸の長さが異なっていた(14:0、16:0、18:0、20:0及び22:0)。
図11は、結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図11に示すように、様々な長さの飽和脂肪酸とのコレステロールエステルは、hMincle及びmMincleとの反応性を示さないことが明らかとなった。
[実験例10]
続いて、発明者らは、hMincleとステロールとの反応性を検討した。具体的には、FcRγのみ、又はFcRγと共にhMincle若しくはmMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、プレートにコートされた、コレステロール、シトステロール、デスモステロール、エルゴステロール及びコレスタン酸で18時間刺激した。NFAT−GFPの誘導はフローサイトメトリーにより解析した。
図12は、結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図12に示すように、真菌由来のステロールであるエルゴステロールは、hMincle及びmMincleとの反応性を示さなかったが、植物由来のステロールであるシトステロール及びコレステロール合成における中間体であるデスモステロールは、hMincleとの反応性を示すことが明らかとなった。
以上の結果から、hMincleは、様々なステロイドのうち、コレステロール及びコレステロールに密接に関連するステロールに特異的に結合することが明らかとなった。また、この結果から、hMincleによる認識にC3位の水酸基及びC17位のアルキル鎖が必要であることが示された。
<III.C型レクチン受容体のコレステロール結晶に対する特異性の検討>
[実験例11]
Mincle及びmacrophage C−type lectin(MCL、「Clec4d」又は「Clecsf8」とも呼ばれる。)は、トレハロース6,6’−ジミコレート(TDM)の脂質部分への結合に寄与する疎水性アミノ酸の領域を有しているが、他のC型レクチン受容体はそのような領域を有していない。
そこで、発明者らは、MCLがコレステロール結晶と結合するか否かを検討した。具体的には、FcRγと共にmMincle、hMincle、マウスMCL(mMCL)又はヒトMCL(hMCL)を発現したNFAT−GFPレポーター細胞をコレステロール結晶で刺激し、NFAT−GFPの誘導をフローサイトメトリーにより解析した。
図13は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、MCLはコレステロール結晶と結合しないことが明らかになった。
[実験例12]
続いて、発明者らは、Mincleに密接に関連したC型レクチン受容体であるDectin−1及びDetectin−2がコレステロール結晶と結合するか否かを検討した。具体的には、FcRγと共に、ヒトDectin−1(hDectin−1)、マウスDectin−1(mDectin−1)、ヒトDectin−2(hDectin−2)又はマウスDectin−2(mDectin−2)を発現したNFAT−GFPレポーター細胞をコレステロール結晶で18時間刺激し、NFAT−GFPの誘導をフローサイトメトリーにより解析した。
図14は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、Dectin−1及びDetectin−2はコレステロール結晶と結合しないことが明らかになった。
[実験例13]
続いて、発明者らは、異なる種に由来するMincleの、コレステロール結晶に対する結合能を検討した。具体的には、FcRγと共に、ヒト、マウス又はラットMincleを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、コレステロール結晶で18時間刺激し、NFAT−GFPの誘導をフローサイトメトリーにより解析した。
図15は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、ヒトMincleはコレステロール結晶に結合したが、マウスMincle及びラットMincleはコレステロール結晶に結合しないことが明らかとなった。
以上の結果から、哺乳動物が発現するITAM共役型のC型レクチン受容体のうち、ヒトMincleのみがコレステロール結晶と結合できることが明らかになった。
<IV.hMincleはげっ歯類由来マクロファージにコレステロール結晶に対する感受性を付与した>
[実験例14]
続いて、発明者らは、骨髄細胞におけるhMincleとコレステロールとの相互作用により引き起こされる細胞応答を同定するために、げっ歯類由来のマクロファージであるRAW細胞を用いて炎症性のサイトカインの産生を検討した。というのは、炎症性のサイトカインの産生は、インフラマソームの活性化と独立しているためである。
具体的には、RAW−Blue細胞又はhMincleを発現したRAW−Blue細胞を、コレステロール結晶、LPS(10ng/mL)又はTDM(100ng/ウェル)で刺激した。24時間後に培養上清を回収し、ELISA法により上清中のTNF及びMIP−2の濃度をELISA法により測定した。
図16(a)〜(d)は、結果を示すグラフである。図16(a)及び(b)はTNFの濃度を示し、図16(c)及び(d)はMIP−2の濃度を示す。図16中、「なし」はRAW−Blue細胞の結果を示し、「Mock」は空のベクターを導入したRAW−Blue細胞の結果を示し、「hMincle」はhMincleを発現したRAW−Blue細胞の結果を示す。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。
その結果、mMincleがコレステロールに結合しなかったという事実と一致して、mMincleを発現し機能的なFcRγシグナル経路を有するRAW−Blue細胞は、コレステロール結晶によって活性化されなかった。一方、図16(a)〜(d)に示すように、hMincleを遺伝子導入したRAW−Blue細胞は、コレステロール結晶に応答し、TNF及びMIP−2を産生することが明らかとなった。
[実験例15]
続いて、hMincleを発現したRAW−Blue細胞を、0、1、3又は10μg/mLの抗hMincle抗体又はアイソタイプコントロール抗体(R3−34)の存在下、コレステロール結晶(100μg/mL)、LPS(10ng/mL)又はTDM(100ng/mL)で24時間刺激した。続いて、培養上清を回収し、ELISA法により上清中のTNF及びMIP−2の濃度を測定した。
図17(a)〜(f)は、結果を示すグラフである。図17(a)〜(c)はTNFの濃度を示し、図17(d)〜(f)はMIP−2の濃度を示す。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図17(a)〜(f)に示すように、TNF及びMIP−2の産生は、抗hMincleモノクローナル抗体の存在によって減少することが明らかとなった。
以上の結果は、げっ歯類の骨髄細胞でhMincleを発現させることにより、コレステロール結晶に対する感受性が付与され、炎症性の応答につながることを示す。
<V.コレステロール結晶は、hMincleを通して炎症性遺伝子の転写を誘導した>
[実験例16]
発明者らは、ヒト樹状細胞のコレステロール応答における遺伝子発現を検討した。具体的には、内在性のhMincleを発現するヒト単球由来樹状細胞を、プレートにコートされたコレステロール又はコレステロール結晶で8時間刺激し、マイクロアレイ解析により遺伝子発現を解析した。
図18はマイクロアレイ解析の結果を示す図である。図18中、「結晶」はコレステロール結晶で刺激した結果であることを示し、「コート」はプレートにコートされたコレステロールで刺激した結果であることを示す。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。図18に示す各遺伝子の名称を下記表2に示す。
その結果、コートされたコレステロール及びコレステロール結晶による刺激により、C型レクチン受容体、ケモカイン及びサイトカインを含む、類似の炎症性遺伝子のセットが顕著に発現上昇することが明らかになった。
コレステロール結晶は、細胞内小器官の傷害によりインフラマソームを活性化することが知られている。しかしながら、インフラマソームの活性化は、表1に示す遺伝子の発現上昇には全く寄与しない。
[実験例17]
続いて、発明者らは、ヒト単球由来樹状細胞を、抗ヒトhMincleモノクローナル抗体の存在下又は非存在下、コレステロール結晶で8時間刺激し、定量的PCRにより遺伝子発現を解析した。
図19(a)〜(j)は定量的PCRの結果を示すグラフである。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図19に示すように、確かに、CLEC5A、CCL4、CSF1、AREG、DCSTAMP等の遺伝子の発現誘導は、抗ヒトhMincleモノクローナル抗体の存在により減少することが明らかとなった。
以上の結果は、コレステロール結晶がヒト樹状細胞を活性化し、hMincleを介して炎症性分子の発現を誘導することを示す。
[実験例18]
コレステロール結晶は、インフラマソームの活性化を通じて成熟型IL−1βの産生を誘導することが報告されている。そこで、発明者らは、この過程におけるhMincleの役割を検討した。
具体的には、ヒト単球由来樹状細胞を、抗ヒトhMincleモノクローナル抗体の存在下又は非存在下、LPS(100ng/mL)のみ、LPS(100ng/mL)及びコレステロール結晶(300μg/mL)、又はLPS(100ng/mL)及び尿酸一ナトリウム結晶(monosodium urate crystals:MSU)(250μg/mL)で2日間刺激した。続いて、ELISA法により培養上清中のIL−1βの濃度を測定した。
図20(a)及び(b)に結果を示す。2回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、図20(a)に示すように、ヒト単球由来樹状細胞は、LPS及びコレステロール結晶による刺激でIL−1βを産生した。しかしながら、上記のIL−1βの産生は、抗hMincleモノクローナル抗体により顕著に抑制された。対照的に、図20(b)に示すように、抗hMincleモノクローナル抗体は別のインフラマソーム活性化因子である尿酸一ナトリウム結晶(MSU)により誘導されたIL−1βの産生に影響を与えなかった。なお、尿酸一ナトリウム結晶はhMincleには結合しない(データ示さず。)。
以上の結果は、hMincleとコレステロール結晶との結合が、成熟型のIL−1βの分泌に寄与していることを示す。
<VI.hMincleは、コレステロール認識/相互作用アミノ酸コンセンサスモチーフを介してコレステロール結晶と結合する>
[実験例19]
いくつかのタンパク質が、コレステロール認識/相互作用アミノ酸コンセンサス(cholesterol recognition/interaction amino acid consensus、CRAC)モチーフ((L/V)X1−5YX1−5(R/K)、ここで、Lはロイシンを示し、Vはバリンを示し、Xは任意のアミノ酸を示し、Yはチロシンを示し、Rはアルギニンを示し、Kはリジンを示す。)を介してコレステロールと結合することが報告されている。
そこで、発明者らは、hMincle及びmMincleのアミノ酸配列におけるCRACモチーフの存在を検討した。図21に、hMincle及びmMincleの炭水化物認識ドメインのアミノ酸配列のアラインメントを示す。図21中、CRACモチーフを四角で囲む。その結果、図21に示すように、hMincleにはCRACモチーフ(LXY129XXXXXR)が存在するが、mMincleにはCRACモチーフが存在しないことが明らかとなった。
[実験例20]
続いて、発明者らは、CRACモチーフに変異を導入し、コレステロール結合能における変異の効果を検討した。具体的には、hMincle及び135番目のアルギニンをロイシンに変異させたhMincle(hMincleR135L)の細胞表面での発現を検討した。
hMincle又はhMincleR135Lを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、染色せず(破線)又は抗hMincle抗体で染色し(実線)、フローサイトメトリーにより解析した。
図22は結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。その結果、図22に示すように、hMincleR135Lは、通常通りに細胞表面に発現することが明らかとなった。
[実験例21]
続いて、hMincle又はhMincleR135Lを発現したNFAT−GFPレポーター細胞を、0、30、100、300μg/mLのコレステロール結晶、又は0、1、10、100ng/ウェルのTDMで18時間刺激し、NFAT−GFPの誘導をフローサイトメトリーにより解析した。
図23は、NFAT−GFPレポーターアッセイの結果を示すグラフである。3回の独立した実験の代表的な結果を示す。データは平均値±標準偏差を示す。「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。
その結果、hMincleR135Lを発現したNFAT−GFPレポーター細胞は、コレステロール結晶と結合することができないことが明らかとなった。重要なことに、hMincleR135Lは、TDMとの結合能を、野生型のhMincleと同程度に維持していた。
これらの結果は、hMincleのCRACモチーフがコレステロールとの結合能を決定していることを示す。
<VII.コレステロール結晶によるhMincleを介した刺激>
図24は、上記各実験例の結果から明らかとなった、コレステロール結晶によるhMincleを介した刺激を説明する模式図である。図24(a)に示すように、遊離コレステロール又は膜に埋まった形態のコレステロールは、Mincleにより認識されない。しかしながら、図24(b)に示すように、コレステロール結晶やコートされたコレステロール等の多量体化した形態のコレステロールは、hMincleを介して骨髄性細胞を活性化することができる。
上述したように、げっ歯類のMincleはコレステロールと結合しないことが明らかとなった。そこで、例えばhMincleをノックインしたマウス、mMincle遺伝子にCRACモチーフを導入した変異マウス等の非ヒト動物モデルを樹立することにより、コレステロール結晶により誘導される生理的又は病理学的な応答をより詳細に解析することが可能になる。
本発明により、コレステロール結晶を認識するパターン認識受容体が同定され、コレステロール結晶と当該受容体との結合の阻害に基づく炎症性疾患の治療剤を提供することができる。

Claims (5)

  1. Macrophage−inducible C−type lectin(Mincle)の発現阻害物質、Mincleに対する特異的結合物質又はコレステロール結晶に対する特異的結合物質を有効成分とし、Mincleとコレステロール結晶との結合を阻害する、炎症性疾患の治療剤。
  2. Mincleに対する特異的結合物質を有効成分とし、当該特異的結合物質が、MincleのCRACモチーフに結合するものである、請求項1に記載の炎症性疾患の治療剤。
  3. 請求項1又は2に記載の炎症性疾患の治療剤及び薬学的に許容される担体を含有する、炎症性疾患の治療用組成物。
  4. 被検物質の存在下又は非存在下で、Mincleとコレステロール結晶との結合量又はMincleと固相上にコートされたコレステロールとの結合量を測定する工程と、
    被検物質の存在下における前記結合量が、被検物質の非存在下における前記結合量よりも低下していた場合に、前記被検物質は炎症性疾患の治療剤であると判定する工程と、
    を備える、炎症性疾患の治療剤のスクリーニング方法。
  5. コレステロール結晶への結合性を有するMincleを発現する、炎症性疾患モデル非ヒト動物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023225741A1 (en) * 2022-05-27 2023-11-30 Uti Limited Partnership Mincle-binding dna aptamer demonstrates therapeutic use in a model of inflammatory bowel disease

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