JP6846808B2 - Card14を用いた治療、診断およびスクリーニング - Google Patents

Card14を用いた治療、診断およびスクリーニング Download PDF

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Description

本発明は、CARD14を用いた治療、診断およびスクリーニングに関する。より特定すると、本発明は、CARD14を用いた、乾癬、多発性硬化症、およびγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤ならびにそれらのスクリーニング、Toll様レセプター(TLR)ベース/イミキモド(IMQ)/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤ならびにそれらのスクリーニングに関する。
乾癬は、境界が極めて明瞭な慢性的な紅斑性のプラークを主な特徴とする局所的なT細胞媒介性の慢性炎症性皮膚障害である(非特許文献1:Schon and Boehncke,2005)。最新の知見は、イミキモド(IMQ)クリームの局所的な適用により、ヒトおよびマウスにおいて乾癬様皮膚炎症を引き起こされることも示唆している(非特許文献2:Gilliet et al.,2004; 非特許文献3:van der Fits et al.,2009)。IMQは、マウスToll様レセプター(TLR)7の特異的なアゴニストであるが、TLR7欠損マウスは、野生型(WT)マウスと同程度の表皮の過角化を示した(非特許文献4:Walter et al.,2013)。このことは、TLR7非依存性のメカニズムが、病態形成に重要であるかもしれないということを示唆している。
乾癬の病態形成におけるインターロイキン(IL)−17およびIL−23の重要な役割が近年明らかになってきている(非特許文献5:Johnson-Huang et al.,2012)。IL−23p19に対するモノクローナル抗体(グセルクマブおよびチルドラキズマブ)は、IL−12/23p40サブユニットの遮断よりも有意に臨床的な利点を示した(非特許文献5:Johnson-Huang et al.,2012; 非特許文献6:Sofen et al.,2014)。この実験的設定において、インビボにおいてIL−23p19が存在しないことによって、IMQクリーム誘導性乾癬様皮膚炎症が抑止される(非特許文献3:van der Fits et al.,2009)。さらに、組み換えIL−23タンパク質のマウスの耳の皮内注射によって、乾癬と多くの特徴(例えば、IL−22アップレギュレーションおよびSTAT3活性化を介した表皮過角化)が共有された(非特許文献7:Cai et al.,2011; 非特許文献8:Zheng et al.,2007)。
近年、ヒト染色体領域17q25.3に位置する乾癬感受性遺伝子座2(PSORS2)にあるカスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー14(CARD14[MIM607211]、CARMA2としても知られている)は、ユニークな機能獲得型変異を有することが示された(非特許文献9:Jordan et al.,2012)。この知見は、PSORS2のゲノムワイド関連解析(GWAS)によりさらに確認され、これにより、CARD14を含むいくつかのリスク関連バリアントを同定した(非特許文献10:Tsoi et al., 2012)。CARD14は、上流の刺激に応答して、IκBキナーゼ複合体を介して核内因子カッパB(NF−κB)を活性化することが示された(非特許文献11:Bertin et al.,2001)。この証拠は、CARD14は乾癬および毛孔性紅色粃糠疹における重要な分子であるが、これらのメカニズムおよび免疫応答の相関はわかっていないことを示している(非特許文献12:Fuchs-Telem et al.,2012; 非特許文献9:Jordan et al.,2012)。
Schon and Boehncke,2005, The New England Journal of Medicine. 352:1899-1912. Gilliet et al., 2004, Archives of Dermatology. 140:1490-1495. van der Fits et al.,2009,Journal of Immunology. 182:5836-5845. Walter et al., 2013, Nature Communications. 4:1560. Johnson-Huang, L.M. et al., 2012, Disease Models & Mechanisms. 5:423-433. Sofen et al.,2014, The Journal of Allergy and Clinical Immunology. 133:1032-1040. Cai et al., 2011, Immunity. 35:596-610. Zheng et al., 2007, Nature. 445:648-651. Jordan, C.T., et al., 2012, American Journal of Human Genetics. 90: 784-795. Tsoi et al., 2012, Nature Genetics. 44:1341-1348. Bertin et al., 2001, The Journal of Biological Chemistry. 276:11877-11882. Fuchs-Telem et al.,2012, American Journal of Human Genetics. 91:163-170.
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、CARD14が、乾癬様皮膚炎の形成に必須であることを見出し、これをもとに治療剤および診断剤の提供ならびにそれらのスクリーニングが可能であるとの結論を見出し本発明を完成させた。特に、IL−17およびIL−22を産生するγδT細胞におけるCARD14は、乾癬様皮膚炎の形成に必須であることを見出し、造血細胞におけるCARD14の乾癬に関連する役割を見出し、特定の細胞の役割も重要であることも見出し本発明を完成させた。
また、本発明者らは、CARD14が多発性硬化症(MS)の発症において必須の因子であることを見出し、これをもとに治療剤、診断剤およびそれらのスクリーニングが可能であるとの結論を見出し、CARD14を用いた、多発性硬化症の治療剤または予防剤の提供ならびにそれらのスクリーニングが可能であるとの結論を見出し本発明を完成させた。
さらに、本発明者らは、γδT細胞におけるCARD14が、γδT細胞媒介性疾患および免疫介入の合併症に対する潜在的な治療標的となり得ることを見出し、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤の提供ならびにそれらのスクリーニングが可能であるとの結論を見出し本発明を完成させた。
加えて、本発明者らは、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤の提供ならびにそれらのスクリーニングが可能であるとの結論を見出し本発明を完成させた。
乾癬は未知の原因による慢性炎症性皮膚疾患であるが、イミキモド(IMQ)クリームの合併症として報告もされている。近年、CARD14が、乾癬感受性遺伝子として同定されたが、インビボでの乾癬病態形成における免疫学的役割は、未だに明らかになっていない。本明細書において、本発明者らは、2種の乾癬様モデルを使用して、CARD14欠損(Card14−/−)マウスを評価した。1つ目のモデルは、Toll様レセプター(TLR)7およびTLR9媒介性自然免疫活性化を介して、IMQクリームにより誘導され、もう1つのモデルは、TLR7およびTLR9の活性化を伴わずにインターロイキン(IL)−23により誘導される。両者のモデルにおいて、Card14−/−マウスは、皮膚の厚みおよび過角化の増加が野生型マウスと比べて有意に少ないことを示した。CARD14は、これらのモデルの乾癬性皮膚病変におけるIL−17およびIL−22を産生する表皮γδT細胞において発現され、この表皮γδT細胞に関連する。骨髄キメラマウスおよび遺伝子欠損マウスを使用した研究は、造血細胞(特にγδT細胞)において発現されるが、非造血細胞おいて発現されないCARD14は、乾癬様皮膚炎の形成に重要であることが明らかになった。共投与されるタンパク質抗原に対するIMQクリームのワクチンアジュバント効果は、CARD14の欠損によって変化せず、このことは、CARD14を阻害することにより、そのアジュバント活性に影響を与えずにIMQ誘導性乾癬様皮膚炎を減らし得ることを示唆している。これらの知見から、本発明者らはγδT細胞におけるCARD14は、γδT細胞媒介性疾患および免疫介入の合併症に対する潜在的な治療標的となり得ることを強く示唆していることを見出した。
以上から、本発明は、以下を提供する。
(1)造血細胞におけるCARD14の発現に基づく乾癬の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(2)造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(3)造血細胞におけるCARD14の発現に基づくTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(4)造血細胞におけるCARD14の発現に基づくγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(5)前記造血細胞はγδT細胞である、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記造血細胞は表皮γδT細胞である、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(7)前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、項目5または6に記載の方法。
(8)さらに、非造血細胞におけるCARD14の非発現に基づく、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(9)前記非造血細胞は皮膚常在細胞を含む、項目8に記載の方法。
(10)前記疾患はIMQ誘導性乾癬およびIL−23誘導性乾癬を包含する、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
(11)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む乾癬の治療剤または予防剤。
(12)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む多発性硬化症の治療剤または予防剤。
(13)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤。
(14)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤。
(15)前記造血細胞はγδT細胞である、項目11〜14のいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
(16)前記造血細胞は表皮γδT細胞である、項目11〜14のいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
(17)前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、項目15または16に記載の治療剤または予防剤。
(18)前記造血細胞特異的CARD14阻害剤は、項目1〜10のいずれか1項に記載される方法によって達成される、項目11〜17のいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
本発明はまた、以下を提供する。
(1A)造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく乾癬の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(2A)造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が多発性硬化症の治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(3A)造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づくTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(4A)造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づくγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法。
(5A)前記造血細胞はγδT細胞である、項目1A〜4Aのいずれか1項に記載の方法。
(6A)前記造血細胞は表皮γδT細胞である、項目1A〜4Aのいずれか1項に記載の方法。
(7A)前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、項目5Aまたは6Aに記載の方法。
(8A)非造血細胞においてCARD14が発現していないことを決定する工程をさらに包含する、項目1A〜7Aのいずれか1項に記載の方法。
(9A)非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する、項目1A〜8Aのいずれか1項に記載の方法。
(10A)前記非造血細胞は皮膚常在細胞を含む、項目8Aまたは9Aに記載の方法。
(11A)前記疾患はIMQ誘導性乾癬およびIL−23誘導性乾癬を包含する、項目1Aまたは3A〜10Aのいずれか1項に記載の方法。
(12A)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む乾癬の治療剤または予防剤。
(13A)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む多発性硬化症の治療剤または予防剤。
(14A)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤。
(15A)造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤。
(16A)前記造血細胞はγδT細胞である、項目12A〜15Aのいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
(17A)前記造血細胞は表皮γδT細胞である、項目12A〜15Aのいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
(18A)前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、項目16Aまたは17Aに記載の治療剤または予防剤。
本発明において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
本発明によって、効率よく造血細胞におけるCARD14の発現に基づく乾癬の治療剤または予防剤、多発性硬化症の治療剤または予防剤、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤ならびにγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤が提供され、そしてそれらのスクリーニングが容易に可能である。
TLR7およびTLR9は両方ともIMQ誘導性乾癬状皮膚炎に必要だが、IL−23誘導性乾癬状皮膚炎には必要ない。WTマウスおよびTlr7−/−Tlr9−/−マウス(n=4 マウス/群)由来の両耳を6日間連続でIMQで処置するか、または1日おきに5日間500ngのIL−23を注射した。(A)耳の厚みを注射する前に毎日測定した。データは4つの独立した実験の代表であり、結果を平均±標準偏差(s.d.)で示し、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。(B)各群の最終日のコントロールマウスおよびIMQマウスの皮膚におけるH&E染色。バーは100μmを示す。データは4つの独立した実験の代表である。(C)耳の厚みを、IL−23を注射する前に毎日モニターした。データは2つの独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示す;すべてScheffe検定。(D)実験最終日のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)注射マウスおよびIL−23注射マウスの皮膚のH&E染色。バーは100μmを示す。データは2つの独立した実験の代表である。 Card14−/−マウスの作製。Card14−/−マウスを、Card14遺伝子のエキソン2および3をネオマイシン(neo)抵抗性遺伝子で置換することによって作製した。(A)マウスCard14遺伝子座(WT allele)、Card14標的化ベクター(targeting vector)、および予測される変異体Card14遺伝子(mutated allele)の構造。Card14遺伝子のエキソン2および3を、neo抵抗性遺伝子で置換した。制限酵素:E,EcoRI; B, BamHI。(B)プライマーP1、P2およびP3を使用したWT対立遺伝子および変異体対立遺伝子のCard14 PCR遺伝子型判定。ゲノムDNAをマウスの尾から抽出した。WT産物は350bpであり、ノックアウト産物は250bpであった。レーンMはベースペアマーカーを表している。(C)WTマウスおよびCard14−/−マウス由来の表皮細胞および真皮細胞におけるCard14 mRNAレベル。データをリアルタイムqPCRを使用して分析し、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)と比較したCard14発現を示す(n=4 マウス/群)。 CARD14は、IMQ誘導性乾癬様モデルおよびIL−23誘導性乾癬様モデルの両方において皮膚炎症の発症に必須である。WTマウスおよびCard14−/−マウス(n=4 マウス/群)由来の耳を、6日間連続でIMQクリームで処置するか、1日おきに5日間IL−23を注射した。(A)耳の厚みを注射する前に毎日測定した。データは少なくとも5回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、はP<0.05、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。(B)コントロールおよびIMQを受けたマウスの最終日の皮膚のH&E染色、ケラチン5染色、およびKi67染色。バーは100μmを示す。データは少なくとも5回の独立した実験の代表である。(C)耳の厚みをIL−23を注射する前に毎日モニターした。データは4回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。(D)PBS注射マウスおよびIL−23注射マウスにおける実験最終日の皮膚のH&E染色、ケラチン5染色、およびKi67染色。バーは100μmを示す。データは4回の独立した実験の代表である。 造血細胞におけるCARD14は乾癬における重要な役割を担っているが、放射線抵抗性の皮膚常在細胞におけるCARD14はそうではない。(A)再構成した骨髄キメラ(WT BM → WTマウス(WT→WT)、WT BM → Card14−/−マウス(WT→KO)、Card14−/− BM → Card14−/−マウス(KO→KO)およびCard14−/− BM → WTマウス(KO→WT)、n=4〜6 マウス/群)を、図4に記載されるようにIMQクリームで処置した。耳の厚みを毎日モニターした。データは3回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。(B)WTマウス、Rag2−/−マウス、Rag2−/−Il2rg−/−マウス、およびTcrd−/−マウス(n=4 マウス/群)を6日間連続でIMQクリームで処置した。耳の厚みをクリーム処置する前に毎日測定した。データは3回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、はP<0.05、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。 CARD14はγδT細胞において発現され、γδT細胞よるIL−17およびIL−22の産生に必要である。WTマウスおよびCard14−/−マウス(n=4 マウス/群)由来の耳を、1日おきに5日間、IMQで処置するかまたはIL−23を注射した。(AおよびB)GAPDHと比較したいくつかの細胞におけるCard14 mRNAレベル。データは4回の独立した実験の代表である。(C)IL−23注射されたWTマウス(左)およびCard14−/−マウス(右)由来の凍結切片を、免疫蛍光染色のために、DAPI(青)、CARD14 Ab(緑)、およびGL3(抗TCRγ)mAb(赤)で染色した。Mergeはこれらを重ね合わせた図である。画像を0.5mmステップでZスタックをデコンボリューションした。画像を100倍に拡大した。データは2回の独立した実験の代表である。(DおよびE)IMQモデルまたはIL−23モデルにおけるWTマウスおよびCard14−/−マウス由来の表皮細胞懸濁液をホルボール12−ミリスタート13−アセタート(PMA)およびイオノマイシンで刺激し、細胞内IL−17およびIL−22の発現をフローサイトメトリーで分析した。CD45細胞でゲーティングした局所的なフロープロットは3回の独立した実験の代表である。データを平均±s.d.で示し、はP<0.05を示す;Scheffe検定。 CARD14は共投与される抗原に対するIMQのアジュバント効果に干渉しない。オボアルブミン(OVA)免疫化のために、WTマウス、Tlr7−/−Tlr9−/−マウス、およびCard14−/−マウス(n=5〜6 マウス/群)に、0日目および7日目に100μgのOVAタンパク質を耳に皮内注射した(20μL/耳)。14日目に血液を集め、抗体力価を測定した。乾癬状皮膚炎の誘導のために、マウスの耳を以前に記載されるように6日間連続でIMQクリームで処置した。(A)耳の厚みをクリームの処置および注射の前に毎日測定した。データは2回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、はP<0.05を示す;すべてScheffe検定。(B)血清中のOVA特異的IgGおよびIgG2cをELISAを使用して測定した。データは2回の独立した実験の代表であり、結果を平均±s.d.で示し、**はP<0.01を示す;すべてScheffe検定。 図7は、CARD14欠損による実験的脱髄性疾患モデルの症状軽減効果を示す。0日目および2日目に百日咳毒素(PTX)の存在下でMOG/CFA/HKMTBで免疫した後の野生型マウス(n=8)およびCard14−/−マウス(n=9)のEAEスコアの結果である。データは平均±SEMで示す。左パネルは、EAEスコアによる経時的評価(日)を示し、右パネルは、発症率を示す。CARD14欠損により実験的脱髄性疾患モデルの症状軽減効果があったことが示され、CARD14が多発性硬化症において重要な役割を果たしていることが示された。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本明細書において「CARD14」とは、Caspase recruitment domain-containing protein 14、CARD-containing MAGUK protein 2 (Carma 2)とも呼ばれるタンパク質およびそれをコードする遺伝子をいう。BIMP2; CARMA2; PRP; PSORS2; PSS1とも表示されることがあり、そのヒトアミノ酸配列については、アクセッション番号が、NP_001244899(ヒト)、NP_570956(マウス)、mRNA配列については、アクセッション番号が、NM_001257970(ヒト)、NM_130886(マウス)である。CARD14のアミノ酸配列は、例えば、配列番号2(ヒト)、4(マウス)である。CARD14のmRNAの塩基配列は、例えば、配列番号1(ヒト)、3(マウス)である。CARD14は、CARD14の活性を有していれば、そのアミノ酸配列は限定されない。したがって、本発明の具体的な目的に合致する限り、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその類似体もしくは誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、本発明において用いることができることが理解される。
本明細書で使用される「誘導体」、「類似体」または「変異体」は、好ましくは、限定を意図するものではないが、対象となるタンパク質(例えば、CARD14)に実質的に相同な領域を含む分子を含み、このような分子は、種々の実施形態において、同一サイズのアミノ酸配列にわたり、または当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行ってアラインされる配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%同一であるか、あるいはこのような分子をコードする核酸は、(高度に)ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、またはストリンジェントでない条件下で、構成要素タンパク質をコードする配列にハイブリダイズ可能である。これは、それぞれ、アミノ酸置換、欠失および付加によって、天然存在タンパク質を改変した産物であり、その誘導体がなお天然存在タンパク質の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示すタンパク質を意味する。例えば、本明細書において記載されあるいは当該分野で公知の適切で利用可能なin vitroアッセイによって、このようなタンパク質の生物学的機能を調べることも可能である。本明細書で使用される「機能的に活性な」は、本明細書において、本発明のポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体が関連する態様に従って、生物学的活性などの、タンパク質の構造的機能、制御機能、または生化学的機能を有する、ポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体を指す。本発明では、CARD14についてヒトが主に論じられるが、ヒト以外の多くの動物がCARD14を発現していることが知られているため、これらの動物、特に哺乳動物についても、本発明の範囲内に入ることが理解される。
したがって、CARD14の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1または3に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CARD14の有する活性またはマーカーとして同じ生物内に存在する他のタンパク質から識別し得ることをいう。
CARD14のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CARD14の有する活性またはマーカーとして同じ生物内に存在する他のタンパク質から識別し得ること(例えば、抗原として用いられる場合特異的エピトープとして機能し得る領域を含むこと)をいう。
本発明の関連において、「CARD14に結合する物質」、「CARD14(の)結合剤」または「CARD14相互作用分子」は、少なくとも一時的にCARD14に結合する分子または物質である。検出目的では好ましくは、結合したことを表示しうる(例えば標識されるか標識可能な状態である)ことが有利であり、治療目的では、さらに治療用薬剤が結合していることが有利である。CARD14に結合する物質は、例としては、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、低分子量分子(LMW)、結合性ペプチド、アプタマー、リボザイムおよびペプチド模倣体(peptidomimetic)等を挙げることができる。CARD14に結合する物質またはCARD14相互作用分子は、CARD14の阻害剤であってもよく、例えばCARD14に対して向けられる、特にCARD14の活性部位に対して向けられる、結合性タンパク質または結合性ペプチド、並びにCARD14遺伝子に対して向けられる核酸も含まれる。CARD14に対する核酸は、例えばCARD14遺伝子の発現またはCARD14の活性を阻害する、二本鎖または一本鎖DNAまたはRNA、あるいはその修飾物または誘導体を指し、そしてアンチセンス核酸、アプタマー、siRNA(低分子干渉RNA)およびリボザイムを含むがこれらに限定されない。本明細書において、CARD14について「結合タンパク質」または「結合ペプチド」とは、CARD14に結合する任意のタンパク質またはペプチドを指し、そしてCARD14に対して指向される抗体(例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)、抗体フラグメントおよび機能的等価物を含むがこれらに限定されない。
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が包含される。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本明細書において、「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基を持つ有機化合物の総称である。本発明の実施形態に係る抗体が「特定のアミノ酸配列」を含むとき、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸が化学修飾を受けていてもよい。また、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸が塩、または溶媒和物を形成していてもよい。また、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸がL型、またはD型であってもよい。それらのような場合でも、本発明の実施形態に係る蛋白質は、上記「特定のアミノ酸配列」を含むといえる。蛋白質に含まれるアミノ酸が生体内で受ける化学修飾としては、例えば、N末端修飾(例えば、アセチル化、ミリストイル化等)、C末端修飾(例えば、アミド化、グリコシルホスファチジルイノシトール付加等)、または側鎖修飾(例えば、リン酸化、糖鎖付加等)等が知られている。本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al., J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al., Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいい、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。従って本明細書において「相同体」または「相同遺伝子産物」は、本明細書にさらに記載する複合体のタンパク質構成要素と同じ生物学的機能を発揮する、別の種、好ましくは哺乳動物におけるタンパク質を意味する。こうような相同体はまた、「オルソログ遺伝子産物」とも称されることもある。本発明の目的に合致する限り、このような相同体、相同遺伝子産物、オルソログ遺伝子産物等も用いることができることが理解される。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.28(2013.4.2発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメータの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
本発明の一実施形態において「数個」は、例えば、10、8、6、5、4、3、または2個であってもよく、それらいずれかの値以下であってもよい。1または数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入、または他のアミノ酸による置換を受けたポリペプチドが、その生物学的活性を維持することは知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.)。欠失等がなされた抗体は、例えば、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、または抗体ファージライブラリを用いたバイオパニング等によって作製できる。部位特異的変異導入法としては、例えばKOD -Plus- Mutagenesis Kit (TOYOBO CO., LTD.)を使用できる。欠失等を導入した変異型抗体から、野生型と同様の活性のある抗体を選択することは、FACS解析やELISA等の各種キャラクタリゼーションを行うことで可能である。
本発明の一実施形態において「90%以上」は、例えば、90、95、96、97、98、99、または100%以上であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記「相同性」は、2つもしくは複数間のアミノ酸配列において相同なアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定してもよい。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一アミノ酸の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られている(例えば、BLAST、GENETYX等)。本明細書において「相同性」は、特に断りのない限りNCBIのBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸配列を比較するときのアルゴリズムには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositivesまたはIdentitiesとして数値化される。
本明細書において「ストリンジェント(な)条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。「ストリンジェントな条件」は、例えば、以下の条件を採用することができる。(1)洗浄のために低イオン強度および高温度を用いる(例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる(例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)、または(3)20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションし、次に約37-50℃で1×SSCでフィルターを洗浄する。なお、ホルムアミド濃度は50%またはそれ以上であってもよい。洗浄時間は、5、15、30、60、もしくは120分、またはそれら以上であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに影響する要素としては温度、塩濃度など複数の要素が考えられ、詳細はAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照することができる。「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。ハイブリダイゼーション、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-38, DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することができ、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Vol.1、7.42−7.45 Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。従って、本発明において使用されるポリペプチドには、本発明で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、高度または中程度でストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。
本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質または生物学的因子は、好ましくは「精製された」物質である。本明細書で使用される「単離された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子が実質的に除去されたものをいう。本明細書中で使用される用語「単離された」は、その目的に応じて変動するため、必ずしも純度で表示される必要はないが、必要な場合、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質は、好ましくは「単離された」物質または生物学的因子である。
本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸あるいは部分とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子(例えば、CARD14)において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドあるいは部分と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいい、複合分子にあっては対応する部分(例えば、膜貫通ドメイン等)をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。対応するアミノ酸は、例えば、システイン化、グルタチオン化、S−S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などがされる特定のアミノ酸であり得る。あるいは、対応するアミノ酸は、二量体化を担うアミノ酸であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。このような対応する領域またはドメインは、本発明において複合分子を設計する場合に有用である。
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。従って、ヒトのCARD14は、それぞれ、他の動物(特に哺乳動物)において、対応するCARD14を見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。従って、例えば、ある動物(例えば、マウス)における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、CARD14等(配列番号1、3等または配列番号2、4等)の配列をクエリ配列として用いてその動物の配列を含むデータベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなフラグメントは、例えば、全長のものがマーカー、治療剤または標的分子として機能する場合、そのフラグメント自体もまたマーカー、治療剤または標的分子としての機能を有する限り、本発明の範囲内に入ることが理解される。
本発明に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、CARD14は、膜結合グアニレートキナーゼ(MAGUK)ファミリーに属しており、プラズマ膜の領域に特化してマルチタンパク質複合体のアセンブリを形成する分子足場として機能するため、これらの機能との関連性や、また、このタンパク質はCARDファミリーに属しており、特定のカスパーゼ関連リクルートメントドメイン(CARD)を有しており、BCL10との特異的相互作用およびBCLのリン酸化、NF−κB活性化および細胞アポトーシスの正の調節因子として機能することも知られているため、これらの機能との関連を挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子の間の結合およびそれによって生じる生物学的変化であり得、そして、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
本明細書においてCARD14の「値」とは、CARD14のタンパク質の量、mRNAの発現量、酵素活性等、CARD14に関する直接または間接的な何らかの値であればよい。この「値」は乾癬、多発性硬化症、γδT細胞媒介性疾患および/もしくは免疫介入の合併症、ならびに/またはTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させることの指標として本発明において用いることができる。
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様である。したがって、本明細書において「発現産物」とは、このようなポリペプチドもしくはタンパク質、またはmRNAを含む。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。例えば、CARD14の発現レベルは、任意の方法によって決定することができる。具体的には、CARD14のmRNAの量、CARD14タンパク質の量、そしてCARD14タンパク質の生物学的な活性を評価することによって、CARD14の発現レベルを知ることができる。このような測定値はコンパニオン診断において使用し得る。CARD14のmRNAやタンパク質の量は、本明細書の他の箇所に詳述したような方法あるいは他の当該分野において公知の方法によって決定することができる。
本明細書において「機能的等価物」とは、対象となるもとの実体に対して、目的となる機能が同じであるが構造が異なる任意のものをいう。従って、「CARD14」またはその抗体の機能的等価物は、CARD14またはその抗体自体ではないが、CARD14またはその抗体の変異体または改変体(例えば、アミノ酸配列改変体等)であって、CARD14の持つ生物学的作用を有するもの、ならびに、作用する時点において、CARD14またはその抗体自体またはこのCARD14またはその抗体の変異体もしくは改変体に変化することができるもの(例えば、CARD14またはその抗体自体またはCARD14またはその抗体の変異体もしくは改変体をコードする核酸、およびその核酸を含むベクター、細胞等を含む)が包含されることが理解される。本発明において、CARD14またはその抗体の機能的等価物は、格別に言及していなくても、CARD14またはその抗体と同様に用いられうることが理解される。機能的等価物は、データベース等を検索することによって、見出すことができる。本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al., J.Mol.Biol. 215:403-410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci., USA 85: 2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman, J.Mol.Biol. 147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch, J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本発明の機能的等価物としては、アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加されたものを用いることができる。本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、あるいは天然の変異により、天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされていることを意味する。改変アミノ酸配列は、例えば1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜9個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個のアミノ酸の挿入、置換、もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、CARD14のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1もしくは数個または1、2、3、もしくは4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であってもよい。ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
本明細書において「阻害剤」または「抑制剤」または「インヒビター」(いずれも英文では、inhibitorに該当する)とは、対象となる実体(例えば、レセプターまたは細胞)に対してそのレセプターまたは細胞の生物学的作用を阻害する物質または因子をいう。本発明のCARD14の阻害剤としては、対象となるCARD14またはCARD14を発現する細胞等の作用または機能を一時的または永久に低下または消失させることができる因子が挙げられる。このような因子には、抗体、その抗原結合フラグメント、それらの誘導体、機能的等価物、アンチセンス、siRNA等のRNAi因子等の核酸の形態のもの
等を挙げることができるがこれらに限定されない。
本明細書において「アゴニスト」とは、対象となる実体(例えば、レセプター)に対してそのレセプターの生物学的作用を発現またはそれを増強する物質をいう。天然のアゴニスト(リガンドとも称される)のほか、合成されたものや改変されたもの等を挙げることができる。本明細書において「アンタゴニスト」とは、対象となる実体(例えば、レセプター)に対してそのレセプターの生物学的作用の発現を抑制または阻害する物質をいう。天然のアンタゴニストのほか、合成されたものや改変されたもの等を挙げることができる。アゴニスト(またはリガンド)と競合的に抑制または阻害するもののほか、非競合的に抑制または阻害するもの等がある。アゴニストを改変することによっても得られうる。生理現象を抑制または阻害することから、アンタゴニストは阻害剤(抑制剤もしくはインヒビター)または阻害もしくは抑制(する)因子の概念に包含されうる。したがって、本明細書においては実質的にアンタゴニストは「阻害剤」と同義で用いられる。
本明細書において「抗体」は、広義にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらのフラグメント、例えばFvフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2およびFabフラグメント、ならびにその他の組換えにより生産された結合体または機能的等価物(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異性またはオリゴ特異性(oligospecific)抗体、単鎖抗体、scFV、ダイアボディー(diabody)、sc(Fv)2(single chain (Fv)2)、scFv−Fc)を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。本発明で用いられる抗CARD14抗体は、CARD14のタンパク質に結合すればよく、その由来、種類、形状などは問われない。具体的には、非ヒト動物の抗体(例えば、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体が使用できる。本発明においては、モノクローナル、あるいはポリクローナルを抗体として利用することができるが好ましくはモノクローナル抗体である。抗体のCARD14タンパク質への結合は特異的な結合であることが好ましい。また抗体は、抗体修飾物または抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。
本発明の一実施形態において「ポリクローナル抗体」は、例えば、抗原に特異的なポリクローナル抗体の産生を誘導するために、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル等)、鳥類等に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、および所望の場合にはアジュバントの注入をしてもよい。アジュバントは、免疫応答を増加させるために使用されることもあり、フロイントアジュバント(完全または不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウム等)、または界面活性物質(リゾレシチン等)等を含んでいてもよい。免疫プロトコールは、当該技術分野で公知であり、選択する宿主生物に合わせて、免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される場合がある(タンパク質実験ハンドブック、羊土社(2003):86-91.)。
本発明の一実施形態において「モノクローナル抗体」は、集団を構成する個々の抗体が、少量自然に生じることが可能な突然変異を有する抗体を除いて、実質的に単一のエピトープに対応する抗体である場合を含む。または、集団を構成する個々の抗体が、少量自然に生じることが可能な突然変異を有する抗体を除いて、実質的に同一である抗体であってもよい。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、異なるエピトープに対応する異なる抗体を典型的に含むような、通常のポリクローナル抗体とは異なる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成できる点で有用である。「モノクローナル」という形容は、実質的に均一な抗体集団から得られるという特徴を示していてもよいが、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、モノクローナル抗体は、"Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497."に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作製してもよい。あるいは、モノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作製してもよい。または、モノクローナル抗体は、"Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628."、または"Marks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597."に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。または、"タンパク質実験ハンブック, 羊土社(2003):92-96."に掲載されている方法でよって作製してもよい。
本発明の一実施形態において「ヒト化抗体」は、例えば、非ヒト種由来の1つ以上のCDR、およびヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域(FR)、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する抗体である。抗体のヒト化は、当該技術分野で既知の種々の手法を使用して実施可能である(Almagro et al., FRont Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.)。例えば、CDRグラフティング(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.)、Re-surfacing (roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.)、またはFRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)などが挙げられる。抗原結合を改変するために(好ましくは改善するために)、ヒトFR領域のアミノ酸残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換してもよい。このFR置換は、当該技術分野で周知の方法によって実施可能である(Riechmann et al., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.)。例えば、CDRとFR残基の相互作用のモデリングによって抗原結合に重要なFR残基を同定してもよい。または、配列比較によって、特定の位置で異常なFR残基を同定してもよい。
本発明の一実施形態において「ヒト抗体」は、例えば、抗体を構成する重鎖の可変領域および定常領域、軽鎖の可変領域および定常領域を含む領域が、ヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体である。主な作製方法としてはヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法、ファージディスプレイ法などがある。ヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法では、内因性Igをノックアウトしたマウスに機能的なヒトのIg遺伝子を導入すれば、マウス抗体の代わりに多様な抗原結合能を持つヒト抗体が産生される。さらにこのマウスを免疫すればヒトモノクローナル抗体を従来のハイブリドーマ法で得ることが可能である。例えば、"Lonberg et al., Int Rev Immunol. 1995;13(1):65-93."に記載の方法で作製できる。ファージディスプレイ法は、典型的には大腸菌ウイルスの一つであるM13やT7などの繊維状ファージのコート蛋白質(g3p、g10p等)のN末端側にファージの感染性を失わないよう外来遺伝子を融合蛋白質として発現させるシステムである。例えば、"Vaughan et al., Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-314."に記載の方法で作製できる。
本発明の一実施形態において「抗CARD14抗体」は、CARD14に結合性を有する抗体を含む。この抗CARD14抗体の生産方法は特に限定されないが、例えば、CARD14を哺乳類または鳥類に免疫することによって生産してもよい。
また、「CARD14に対する抗体(抗CARD14抗体)、または、そのフラグメント」の「機能的等価物」は、例えば、抗体の場合、CARD14の結合活性、必要であれば抑制活性を有する抗体自体およびそのフラグメント自体のほか、キメラ抗体、ヒト化抗体、多機能抗体、二重特異性またはオリゴ特異性(oligospecific)抗体、単鎖抗体、scFV、ダイアボディー、sc(Fv)2(single chain (Fv)2)、scFv−Fcなども包含されることが理解される。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、疾患が特に強く抑制される観点からは、CARD14の特定のエピトープに特異的に結合する抗CARD14抗体であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体であれば、ポリクローナル抗体に比べて、効率的にCARD14に対して作用させることができる。抗CARD14モノクローナル抗体を効率的に生産する観点からは、CARD14をニワトリに免役することが好ましい。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体の抗体クラスは特に限定されないが、例えばIgM、IgD、IgG、IgA、IgE、またはIgYであってもよい。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、抗原結合活性を有する抗体断片(以下、「抗原結合性断片」と称することもある)であっても良い。この場合、安定性または抗体の生産効率が上昇する等の効果がある。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、融合蛋白質であってもよい。この融合蛋白質は、抗CARD14抗体のNまたはC末端に、ポリペプチドまたはオリゴペプチドが結合したものであってもよい。ここで、オリゴペプチドは、Hisタグであってもよい。また融合蛋白質は、マウス、ヒト、またはニワトリの抗体部分配列を融合したものであってもよい。それらのような融合蛋白質も、本実施形態に係る抗CARD14抗体の一形態に含まれる。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、例えば、精製CARD14、CARD14発現細胞、またはCARD14含有脂質膜で生物を免疫する工程を経て得られる抗体であってもよい。CARD14陽性疾患に対する治療効果を高める観点からは、CARD14発現細胞を免疫に使用することが好ましい。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、精製CARD14、CARD14発現細胞胞またはCARD14含有脂質膜で生物を免疫する工程を経て得られる抗体の、CDRセットを有する抗体であってもよい。CARD14陽性疾患に対する治療効果を高める観点からは、CARD14発現細胞を免疫に使用することが好ましい。CDRセットとは、重鎖CDR1、2、および3、並びに、軽鎖CDR1、2、および3のセットである。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、目的を達成する限り、どのような結合力を有していてもよく、例えば、少なくとも1.0×10以上、2.0×10以上、5.0×10以上、1.0×10以上を挙げることができるがこれらに限定されず、通常は、解離定数(KD)値が、1.0×10以上であってもよい。
本発明の一実施形態に係る抗CARD14抗体は、CARD14の野生型または変異型に結合する抗体であってもよい。変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。野生型または変異型のCARD14のアミノ酸配列は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列に対し、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有している。
本発明の一実施形態において「CDR(相補性決定領域)」は、抗体において、実際に抗原に接触して結合部位を形成している領域である。一般的にCDRは、抗体のFv(可変領域:重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む)上に位置している。また一般的にCDRは、5〜30アミノ酸残基程度からなるCDR1、CDR2、CDR3が存在する。そして、特に重鎖のCDRが抗体の抗原への結合に寄与していることが知られている。またCDRの中でも、CDR3が抗体の抗原への結合における寄与が最も高いことが知られている。例えば、"Willy et al., Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 356, Issue 1, 27 April 2007, Pages 124-128"には、重鎖CDR3を改変させることで抗体の結合能を上昇させたことが記載されている。CDR以外のFv領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれ、FR1、FR2、FR3およびFR4からなり、抗体間で比較的よく保存されている(Kabat et al.,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services, 1983.)。即ち、抗体の反応性を特徴付ける要因はCDRにあり、特に重鎖CDRにあるといえる。
CDRの定義およびその位置を決定する方法は複数報告されている。例えば、Kabatの定義(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))、またはChothiaの定義(Chothia et al., J. Mol. Biol.,1987;196:901-917)を採用してもよい。本発明の一実施形態においては、Kabatの定義を好適な例として採用するが、必ずしもこれに限定されない。また、場合によっては、Kabatの定義とChothiaの定義の両方を考慮して決定しても良く、例えば、各々の定義によるCDRの重複部分を、または各々の定義によるCDRの両方を含んだ部分をCDRとすることもできる。そのような方法の具体例としては、Kabatの定義とChothiaの定義の折衷案である、Oxford Molecular’s AbM antibody modeling softwareを用いたMartinらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1989;86:9268-9272)がある。このようなCDRの情報を用いて、本発明に使用されうる変異体を生産することができる。このような抗体の変異体では、もとの抗体のフレームワークに1または数個(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の置換、付加もしくは欠失を含むが、該CDRには変異を含まないように生産することができる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。本明細書において「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。本発明の抗体は、エピトープが同じであれば、他の配列を有する抗体であっても同様に利用することができることが理解される。
本明細書において使用される抗体は、副反応等の望ましくない効果が減じられる限り、どのような特異性の抗体を用いても良いことが理解される。従って、本発明において用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。
本明細書において「被験体(者)」とは、本発明の診断または検出、あるいは治療等の対象となる対象(例えば、ヒト等の生物または生物から取り出した細胞、血液、血清等)をいう。
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、アレルギー)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、アレルギー等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。なおアレルギーの治療薬は、アレルギーの予防のために用いられる薬物(予防薬)、またはアレルギー抑制剤を含む。
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、アレルギー)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、アレルギー等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、アレルギー等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
従って、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に」相互作用する(または結合する)「因子」(または、薬剤、検出剤等)とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含む試料中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用する(または結合する)ことをいう。物質または因子について特異的な相互作用(または結合)としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の反応、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)ことには、抗体と、その抗原との間の相互作用(または結合)が包含される。このような特異的な相互作用または結合の反応を利用することにより、試料中の対象物の検出または定量を行うことができる。
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチド発現の「検出」または「定量」は、例えば、検出剤、検査剤または診断剤への結合または相互作用を含む、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、蛍光抗体法、発光イムノアッセイ(LIA)法、免疫沈降法(IP)、免疫拡散法(SRID)、免疫比濁法(TIA)、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−532に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、in vitro翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞、組織などにおいて、ポリペプチドまたはmRNA等が発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。あるマーカーの発現量を測定することによって、マーカーに基づく種々の検出または診断を行うことができる。
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「減少」または「抑制」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における減少、または減少させる活性をいう。減少のうち「消失」した場合は、活性、発現産物等が検出限界未満になることをいい、特に「消失」ということがある。本明細書では、「消失」は「減少」または「抑制」に包含される。
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「増加」または「活性化」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または増加させる活性をいう。
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(例えば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。本発明のマーカーまたはそれを捕捉する因子または手段を複数、蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。リガンドを標識する場合、機能に影響を与えないものならば何れも用いることができるが、蛍光物質としては、AlexaTMFluorが望ましい。AlexaTMFluorは、クマリン、ローダミン、フルオレセイン、シアニンなどを修飾して得られた水溶性の蛍光色素であり、広範囲の蛍光波長に対応したシリーズであり、他の該当波長の蛍光色素に比べ、非常に安定で、明るく、またpH感受性が低い。蛍光極大波長が10nm以上ある蛍光色素の組み合わせとしては、AlexaTM555とAlexaTM633の組み合わせ、AlexaTM488とAlexaTM555の組み合わせ等を挙げることができる。核酸を標識する場合は、その塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、2−アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(CARD14阻害剤)
本発明で使用され得るCARD14阻害剤は、CARD14の作用を阻害する任意の物質をいい、その作用機序はCARD14の発現を阻害すること、機能を阻害することをなどを含む。したがって、「CARD14阻害剤」は、CARD14の発現を阻害する物質およびCARD14の機能を阻害する物質、このほか作用機序が不明であっても最終的にCARD14の作用が阻害される任意の物質を含み、抗体、抗体フラグメント、その誘導体、核酸、低分子、その他のアンタゴニスト等であり得るがこれらに限定されない。このような種々の抗体等については、本願明細書の他の箇所において説明される。好ましくは、このようなCARD14阻害剤は、CARD14を特異的に阻害するものであることが有利である。CARD14以外の因子への影響による副作用を低減することができるからである。
本発明において「CARD14の発現を阻害する物質」とは、CARD14をコードする核酸(CARD14遺伝子)の転写レベル、転写後調節のレベル、CARD14タンパク質への翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、CARD14の発現を阻害する物質としては、例えば、CARD14遺伝子の転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからCARD14の翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する物質(例、siRNA、リボザイム)、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても好ましく用いることができる。
ここで転写産物の好ましい例としては、mRNAが挙げられる。
CARD14遺伝子のmRNAからCARD14への翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、好ましくは、これらのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸が挙げられる。
CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と実質的に相補的な塩基配列とは、投与対象となる哺乳動物におけるCARD14産生細胞(例、好中球)の生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る(あるいは該標的配列を切断する)程度の相補性を有する塩基配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAの塩基配列と完全相補的な塩基配列(すなわち、mRNAの相補鎖の塩基配列)と、オーバーラップする領域に関して、約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約97%以上の相同性を有する塩基配列である。本発明における「塩基配列の相同性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
より具体的には、CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列としては、以下の(k)または(l):(k)配列番号1または3で表される塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列;(l)配列番号1または3で表される塩基配列の相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつCARD14の機能を少なくとも1つ有するタンパク質をコードする配列と、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列;が挙げられる。ストリンジェントな条件は、前述のとおりである。なおCARD14の機能としては、これらに限定されないが、例えば、膜結合型グアニル酸キナーゼ(MAGUK)の機能、形質膜の特定領域での複数タンパク質複合体のアセンブルのための分子スキャフォルドとしての機能、カスパーゼ関連リクルートドメインを有するためカスパーゼ関連リクルート機能BCL10との相互作用の機能、NF−κB活性化および細胞アポトーシスの正の調節因子としての機能、NF−κBの活性化、BCL10のリン酸化の誘導機能等を挙げることができる。
CARD14遺伝子のmRNAの好ましい例としては、配列番号1で表される塩基配列(Genbank Accession No. NM_052972)を含むヒトCARD14のmRNA、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウスCARD14(配列番号3、Genbank Accession No. NM_029796)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型バリアント等が挙げられる。
CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と「相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列の一部」とは、CARD14遺伝子のmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害(あるいは該mRNAを分解)し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的もしくは実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上を含むものである。
具体的には、CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸として、以下の(1)〜(3)のいずれかのものが好ましく例示される:
(1)CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、
(2)CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、
(3)CARD14遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体。
(1)CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における「CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸」とは、該mRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。
アンチセンス核酸は、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていたりしてよい。
上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNaseHに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNaseHによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、CARD14遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、CARD14遺伝子のcDNA塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてタンパク質:CARD14への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、CARD14をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、CARD14遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、オープンリーディングフレーム(ORF)翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、CARD14遺伝子のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、−OR(R=CH(2’−O−Me)、CHCHOCH(2’−O−MOE)、CHCHNHC(NH)NH、CHCONHCH、CHCHCN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
RNAの糖部のコンフォメーションはC2’−endo(S型)とC3’−endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォメーションをN型に固定したRNA誘導体である架橋核酸(BNA)(Locked核酸(LNA))(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CARD14遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
(2)CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸
CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイム核酸が挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイム核酸として最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイム核酸は、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。CARD14遺伝子のmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
(3)CARD14遺伝子のmRNAに対するsiRNA
本明細書においては、CARD14遺伝子のmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAもまた、CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、上記のアンチセンス核酸やリボザイムの代替技術として汎用されている。
siRNAは、標的遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、Elbashirら(Genes Dev., 15, 188-200 (2001))、Teramotoら(FEBS Lett. 579(13):p2878-82(2005))の提唱する規則に従って設計することができる。siRNAの標的配列は、原則的には15〜50塩基、好ましくは19〜49塩基、更に好ましくは19〜27塩基の長さを有しており、例えばAA+(N)19(AAに続く、19塩基の塩基配列)、AA+(N)21(AAに続く、21塩基の塩基配列)もしくはA+(N)21(Aに続く、21塩基の塩基配列)であってもよい。
本発明の核酸は、5’または3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常2〜4塩基程度であり、siRNAの全長として19塩基以上である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug−3’、uu−3’、tg−3’、tt−3’、ggg−3’、guuu−3’、gttt−3’、ttttt−3’、uuuuu−3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、siRNAは、3’末端に突出部配列(オーバーハング)を有していてもよく、具体的には、dTdT(dTはデオキシリボ核酸のデオキシチミジン残基を表わす)を付加したものが挙げられる。また、末端付加がない平滑末端(ブラントエンド)であってもよい。
また、siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖が異なる塩基数であってもよく、例えば、アンチセンス鎖が3’末端および5’末端に突出部配列(オーバーハング)を有している「aiRNA」を挙げることができる。典型的なaiRNAは、アンチセンス鎖が21塩基からなり、センス鎖が15塩基からなり、アンチセンス鎖の両端で各々3塩基のオーバーハング構造をとる(Sun,X.ら著、Nature Biotechnology Vol26 No.12 p1379、国際公開第WO2009/029688号パンフレット)。標的配列の位置は特に制限されるわけではないが、5’−UTRおよび開始コドンから約50塩基まで、並びに3’−UTR以外の領域から標的配列を選択することが望ましい。上述の規則その他に基づいて選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16−17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等のホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認する。特異性の確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19−21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19−21塩基に相補的な配列およびTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5−25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
siRNAおよび/またはshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、Ambionが提供するsiRNA Target Finder(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)およびpSilencer(登録商標)Expression Vector用インサートデザインツール(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)、RNAi Codexが提供するGeneSeer(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)がある
がこれらに限定されない。
siRNAを構成するリボヌクレオシド分子もまた、安定性、比活性などを向上させるために、上記のアンチセンス核酸の場合と同様の修飾を受けていてもよい。但し、siRNAの場合、天然型RNA中のすべてのリボヌクレオシド分子を修飾型で置換すると、RNAi活性が失われる場合があるので、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)が機能できる最小限の修飾ヌクレオシドの導入が必要である。
当該修飾として具体的には、siRNAを構成するヌクレオチド分子の一部を、天然型のDNAや、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を施したRNAに置換することができる(Usman and Cedergren,1992,TIBS 17,34;Usman et al.,1994,Nucleic Acids Symp.Ser.31,163を参照)。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、siRNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、−OR(R=CH(2’−O−Me)、CHCHOCH(2’−O−MOE)、CHCHNHC(NH)NH、CHCONHCH、CHCHCN等)、フッ素原子(−F)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。その他上記(1)に記載されたアンチセンス核酸における修飾方法を用いることができる。あるいは、siRNAにおけるRNAの一部をDNAに置換する化学修飾(2’−デオキシ化、2’−H)を施してもよい。また、糖(リボース)の2’位と4’位を−O−CH−で架橋しコンフォメーションをN型に固定した人工核酸(LNA:Locked Nucleic Acid)を用いてもよい。
また、siRNAを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖は、リンカーを介し、細胞表層に存在する受容体を特異的に認識するリガンド、ペプチド、糖鎖、抗体、脂質や正電荷や分子構造的に細胞膜表層に吸着し貫通するオリゴアルギニン、Tatペプチド、RevペプチドまたはAntペプチドなどと化学結合していてもよい。
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これを、ダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
本明細書においては、生体内でCARD14遺伝子のmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5〜25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製することができる。shRNAを発現するベクターには、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成するというものである。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成するというものである。プロモーターとしては、polII系プロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター)を使用することもできるが、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6−snRNAプロモーター、ヒトH1−RNasePRNAプロモーター、ヒトバリン−tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列が用いられる。
このようにして構築したsiRNAもしくはshRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入する。このようなベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどが用いられる。
上記siRNAは、ヌクレオチド配列の情報に基づいて、例えば394 Applied Biosystems, Inc.合成機等のDNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って化学的に合成することができる。例えば、Caruthers et al.,1992,Methods in Enzymology 211,3-19、Thompson et al.,国際公開WO99/54459、Wincott et al.,1995,Nucleic Acids Res.23,2677-2684、Wincott et al.,1997,Methods Mol.Bio.,74,59、Brennan et al.,1998,Biotechnol Bioeng.,61,33-45、Usman et al.,1987 J.Am.Chem.Soc.,109,7845、Scaringe et al.,1990 Nucleic Acids Res.,18,5433、および米国特許第6001311号に記載される方法等が挙げられる。具体的には、当業者に公知の核酸保護基(例えば5’末端にジメトキシトリチル基)およびカップリング基(例えば3’末端にホスホルアミダイト)を用いて合成できる。すなわち、5’末端の保護基を、TCA(トリクロロ酢酸)等の酸で脱保護し、カップリング反応を行う。ついでアセチル基でキャッピングを行った後、次の核酸の縮合反応を行う。修飾されたRNAやDNAを含むsiRNAの場合には、原料として修飾されたRNA(例えば、2’−O−メチルヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド)を用いればよく、カップリング反応の条件は適宜調整できる。また、リン酸結合部分が修飾されたホスホロチオエート結合を導入する場合には、ボーケージ試薬(3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキシド)を用いることができる。
あるいは、オリゴヌクレオチドは、別々に合成し、合成後に例えばライゲーションにより一緒につなげてもよいし(Moore et al.,1992,Science 256,9923; Draper et al.国際公開WO93/23569; Shabarova et al.,1991,Nucleic Acids Research 19,4247; Bellon et al.,1997, Nucleosides & Nucleotides,16,951; Bellon et al.,1997, Nucleosides & Nucleotides, Bellon et al.,1997,Bioconjugate Chem.8,204)、または合成および/または脱保護の後にハイブリダイゼーションにより、一緒につなげてもよい。siRNA分子はまたタンデム合成法により合成することができる。すなわち、両方のsiRNA鎖を、切断可能なリンカーにより分離された単一の連続するオリゴヌクレオチドとして合成し、次にこれを切断して別々のsiRNAフラグメントを生成し、これをハイブリダイズさせて精製する。リンカーはポリヌクレオチドリンカーであっても非ヌクレオチドリンカーであってもよい。
合成したsiRNA分子は、当業者に公知の方法を用いて精製できる。例えばゲル電気泳動により精製する方法、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製する方法が挙げられる。
CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の別の好ましい例として、該mRNAを標的とするmicroRNA(miRNA)が挙げられる。miRNAも、上述のsiRNAについて記載した方法に準じて調製することができる。
CARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で提供されたり、他の分子が付加された形態で提供されうる。付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大させたりするような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
これらの核酸のCARD14発現阻害活性は、CARD14をコードする核酸を導入した形質転換体、生体内や生体外のCARD14遺伝子発現系、または生体内や生体外のCARD14タンパク質の翻訳系を用いて調べることができる。
本発明におけるCARD14の発現を阻害する物質は、上記のようなCARD14遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に限定されず、CARD14の産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。そのような物質は、例えば、後述する本発明のスクリーニング方法により取得することができる。
本発明において「CARD14の機能を阻害する物質」とは、いったん機能的に産生されたCARD14がその機能を発揮するのを阻害する限りいかなるものでもよい。
具体的には、CARD14の機能を抑制する物質として、例えば、CARD14に対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab’、F(ab’)等のフラグメント、scFv、scFv−Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
好ましい一実施態様において、CARD14に対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディス製造することが望ましい。
CARD14の機能を抑制する別の好ましい物質は、Lipinski’s Ruleに見合った低分子化合物である。そのような化合物は、例えば、後述する本発明のスクリーニング法を用いて取得することができる。
本発明により、CARD14の発現もしくは機能を阻害する物質等のCARD14阻害剤は、乾癬、多発性硬化症の治療または予防剤、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤として有用である。
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
<乾癬の治療剤または予防剤、およびスクリーニング方法>
1つの局面において、本発明は、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく乾癬の治療剤または予防剤のスクリーニング方法を提供する。CARD14は従来知られていた分子ではあるが、その造血細胞、特にγδT細胞、中でも、表皮γδT細胞における発現をみることで、乾癬の治療剤または予防剤をスクリーニングすることができることは見出されておらず、本発明において初めて提供されたものである。理論に束縛されることを望まないが、特に、造血細胞、特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞におけるCARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤は、乾癬の治療剤または予防剤として使用することができることが理解される。したがって、本発明の方法は、造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する。
CARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤としては、例えば、CARD14の発現産物に対する抑制剤、例えば、抗体、抗体フラグメント、機能的等価物等、あるいはCARD14のアンチセンス核酸、RNAi機能を有する分子等を挙げることができる。
1つの実施形態では、標的とするγδT細胞はインターロイキン−17(IL−17)およびインターロイキン−22(IL−22)を産生する細胞である。
本発明のスクリーニング方法では、治療剤または予防剤としてより良いものを提供するためには、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)ではない細胞(「非造血細胞」ともいう。例えば、皮膚常在細胞)において、CARD14が発現していないことを確認することが好ましい。ここで、好ましい実施形態では、造血細胞と非造血細胞とは同種同系由来であることが望ましく、さらに有利には同じ個体由来であることが望ましい。1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する。本明細書において「実質的な影響がない」とは、その影響があってもCARD14がその機能を発揮することができることをいう。
本発明が対象とする乾癬は、例えば、イモキミド(IMQ)誘導性乾癬およびIL−23誘導性乾癬を包含し得る。
したがって、本発明の治療剤または予防剤は、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)に特異的に送達されることが好ましい。
本発明では、造血細胞に特異的に送達するためには、その造血細胞(例えば、γδT細胞)に特異的な抗体等の特異的分子を先導としたデリバリーシステムにより達成される。
<多発性硬化症の治療剤または予防剤ならびにそれらのスクリーニング方法>
1つの局面では、本発明は、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法を提供する。CARD14は従来知られていた分子ではあるが、その造血細胞、特にγδT細胞、中でも、表皮γδT細胞における発現をみることで、多発性硬化症の治療剤または予防剤をスクリーニングすることができることは見出されておらず、本発明において初めて提供されたものである。理論に束縛されることを望まないが、特に、造血細胞、特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞におけるCARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤は、多発性硬化症の治療剤または予防剤として使用することができることが理解される。本発明では、多発性硬化症のモデル(自己免疫疾患モデル)の実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)モデルにおいて、CARD14の役割がはっきりと示されたことから、CARD14に基づく機構を用いて、多発性硬化症を予防または治療することができると考えられる。したがって、本発明の方法は、造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する。
CARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤としては、例えば、CARD14の発現産物に対する抑制剤、例えば、抗体、抗体フラグメント、機能的等価物等、あるいはCARD14のアンチセンス核酸、RNAi機能を有する分子等を挙げることができる。
1つの実施形態では、標的とするγδT細胞はインターロイキン−17(IL−17)およびインターロイキン−22(IL−22)を産生する細胞である。
本発明のスクリーニング方法では、治療剤または予防剤としてより良いものを提供するためには、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)ではない細胞(「非造血細胞」。例えば、皮膚常在細胞)において、CARD14が発現していないことを確認することが好ましい。ここで、好ましい実施形態では、造血細胞と非造血細胞とは同種同系由来であることが望ましく、さらに有利には同じ個体由来であることが望ましい。1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する。
したがって、本発明の治療剤または予防剤は、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)に特異的に送達されることが好ましい。
本発明では、造血細胞に特異的に送達するためには、その造血細胞(例えば、γδT細胞)に特異的な抗体等の特異的分子を先導としたデリバリーシステムにより達成される。
<TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤ならびにそれらのスクリーニング方法>
1つの局面では、本発明は、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法を提供する。CARD14は従来知られていた分子ではあるが、その造血細胞、特にγδT細胞、中でも、表皮γδT細胞における発現をみることで、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤をスクリーニングすることができることは見出されておらず、本発明において初めて提供されたものである。理論に束縛されることを望まないが、特に、造血細胞、特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞におけるCARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤は、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤として使用することができることが理解される。本明細書において実証されるように、組み合わせでのTLR7およびTLR9の両方のシグナル伝達が、IMQ誘導性乾癬状皮膚炎を完全に発症するのに必要であり、他方で、IL−23誘導性乾癬様皮膚炎モデルは、TLR7およびTLR9媒介性自然免疫活性化の下流を直接活性化することが実証されている。IMQ誘導性皮膚炎の発症において、どのリガンドまたは刺激がTLR7およびTLR9媒介性自然免疫活性化の原因であるか未だにはっきりしていない一方で、上記の知見は、IMQ誘導性乾癬様モデルとIL−23誘導性乾癬様モデルとの間の自然免疫のシグナルの明確な差異が実証されていることになる。このような知見を介してTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤をスクリーニングすることができる。IMQベースのアジュバントまたは他のTLRベースのアジュバントあるいは免疫刺激アジュバントにより引き起こされる副作用を減少させるための優れた標的となり得る。これは、共投与された抗原に特異的な適応免疫応答を抑制せずに自然免疫活性化を阻害することになる。したがって、本発明の方法は、造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する。
本明細書において「TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用」とは、TLR、イミキモド(IMQ)または免疫刺激アジュバント(例えば、CpG等)に基づくアジュバントを投与したときに生じる任意の副作用をいう。このような副作用としては、例えば、乾癬、乾癬様皮膚炎症等の炎症、サイトカイン血症等を挙げることができるがそれらに限定されない。TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用に関する情報については、例えば、非特許文献2(Gilliet et al.,2004)を参照のこと。この論文でも紹介されるように、TLR7リガンドのアジュバントとしての副作用として乾癬という疾患が起こりうるものであり、イミキモド(IMQ)クリームの局所的な適用により、ヒトおよびマウスにおいて乾癬様皮膚炎症を引き起こされることが示唆されることも報告されている。したがって、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用は、本発明のCARD14阻害剤によって予防または治療され得ることが理解される。
CARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤としては、例えば、CARD14の発現産物に対する抑制剤、例えば、抗体、抗体フラグメント、機能的等価物等、あるいはCARD14のアンチセンス核酸、RNAi機能を有する分子等を挙げることができる。
1つの実施形態では、標的とするγδT細胞はインターロイキン−17(IL−17)およびインターロイキン−22(IL−22)を産生する細胞である。
本発明のスクリーニング方法では、治療剤または予防剤としてより良いものを提供するためには、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)ではない細胞(「非造血細胞」、例えば、皮膚常在細胞)において、CARD14が発現していないことを確認することが好ましい。ここで、好ましい実施形態では、造血細胞と非造血細胞とは同種同系由来であることが望ましく、さらに有利には同じ個体由来であることが望ましい。1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する。
したがって、本発明の治療剤または予防剤は、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)に特異的に送達されることが好ましい。
本発明では、造血細胞に特異的に送達するためには、その造血細胞(例えば、γδT細胞)に特異的な抗体等の特異的分子を先導としたデリバリーシステムにより達成される。
<γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤ならびにそれらのスクリーニング方法>
1つの局面では、本発明は、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法を提供する。CARD14は従来知られていた分子ではあるが、その造血細胞、特にγδT細胞、中でも、表皮γδT細胞における発現をみることで、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤をスクリーニングすることができることは見出されておらず、本発明において初めて提供されたものである。理論に束縛されることを望まないが、特に、造血細胞、特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞におけるCARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤は、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤として使用することができることが理解される。したがって、本発明の方法は、造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する。
CARD14の発現を抑制ないし消失させる剤等のCARD阻害剤としては、例えば、CARD14の発現産物に対する抑制剤、例えば、抗体、抗体フラグメント、機能的等価物等、あるいはCARD14のアンチセンス核酸、RNAi機能を有する分子等を挙げることができる。
1つの実施形態では、標的とするγδT細胞はインターロイキン−17(IL−17)およびインターロイキン−22(IL−22)を産生する細胞である。
本発明のスクリーニング方法では、治療剤または予防剤としてより良いものを提供するためには、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)ではない細胞(「非造血細胞」。例えば、皮膚常在細胞)において、CARD14が発現していないことを確認することが好ましい。ここで、好ましい実施形態では、造血細胞と非造血細胞とは同種同系由来であることが望ましく、さらに有利には同じ個体由来であることが望ましい。1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は、非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する。
したがって、本発明の治療剤または予防剤は、造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)に特異的に送達されることが好ましい。
本発明では、造血細胞に特異的に送達するためには、その造血細胞(例えば、γδT細胞)に特異的な抗体等の特異的分子を先導としたデリバリーシステムにより達成される。
本明細書において「γδT細胞媒介性疾患」とは、γδT細胞が媒介する任意の疾患をいい、「γδT細胞媒介性疾患」としては、例えば、乾癬、多発性硬化症、炎症、サイトカイン血症等を挙げることができるがそれらに限定されない。
本明細書において「免疫介入の合併症」とは免疫介入した際の任意の合併症をいい、「免疫介入の合併症」としては、例えば、炎症、サイトカイン血症等を挙げることができるがそれらに限定されない。
<スクリーニング方法の詳細>
CARD14の発現または機能を阻害する化合物をスクリーニングする場合、該スクリーニング方法は、CARD14を産生する能力を有する細胞を、被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下におけるCARD14の発現量または機能の程度を比較することを含む。また、CARD14の機能を阻害する化合物は、精製したCARD14タンパク質への結合能、CARD14タンパク質とその結合タンパク質(例えば、CARD14受容体)との結合阻害活性を試験することによっても、スクリーニングすることができる。特に、このような細胞としては、造血細胞、好ましくはγδT細胞が有利であり、さらに有利には表皮のγδT細胞が好ましい。あるいは遺伝子組換え細胞を用いてもよい。このような細胞は、具体的には、CARD14をコードするDNA(即ち、配列番号1または3、好ましくは配列番号1で表される塩基配列または該塩基配列に対し相補性を有する塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号2または4、好ましくは配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同質の機能を有するポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNA)を、適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結して宿主動物細胞に導入することにより調製することができる。
1つの実施形態では、スクリーニングの手法としては、(A)CARD14遺伝子もしくは該遺伝子の転写調節領域の制御下にあるレポータータンパク質をコードする核酸を含む細胞を、被検物質に接触させる工程;(B)前記細胞におけるCARD14遺伝子もしくはCARD14タンパク質またはレポータータンパク質の発現量を測定する工程;および(C)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、CARD14遺伝子もしくはCARD14タンパク質またはレポータータンパク質の発現量を低下させた被検物質を、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療および/または予防のために使用される物質の候補として選択する工程を包含する。1つの実施形態では、CARD14と被検物質とを接触させ、CARD14と結合能を有する被検物質を乾癬の治療および/または予防のために使用される物質の候補として選択することができる。
別の実施形態では、本発明は(A)被検物質の存在下でCARD14を造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)の細胞膜画分と接触させる工程;(B)細胞膜画分に結合したCARD14量を測定する工程;および(C)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、細胞膜画分に結合するCARD14量を低下させた被検物質を、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療および/または予防のために使用される物質の候補として選択する工程を含む。
さらなる実施形態では、本発明は、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療および/または予防のために使用される物質の候補として選択された被検物質を乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症のモデル(例えば、実施例に記載されるモデル動物を含む)に適用し、該モデルにおける乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の反応を抑制するか否かを検定することをさらに含む。
別の実施形態では、本発明は、(A)造血細胞(特にγδT細胞、中でも、好ましくは表皮γδT細胞)を、CARD14の存在下および非存在下で被検物質に接触させる工程;(B)各条件下での前記細胞における乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の程度を測定する工程;および(C)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、CARD14の存在下で乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の反応を抑制し、CARD14の非存在下で乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の反応を抑制しなかった被検物質を、CARD14の機能を阻害して乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療および/または予防のために使用される物質の候補として選択する工程を包含する。
本発明のスクリーニングを実施するに当たり、被検物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
また、CARD14もしくはCARD14遺伝子の発現量を低下させる物質、またはCARD14の機能を低下させる物質を選択する際に、被検物質を接触させない対照細胞を比較対照として用いることもできる。ここで「被検物質を接触させない」とは、被検物質の代わりに被検物質と同量の溶媒(ブランク)を添加する場合や、CARD14もしくはCARD14遺伝子の発現量またはCARD14の機能に影響を与えないネガティブコントロール物質を添加する場合も含まれる。
被検物質の上記細胞との接触は、例えば、上記の培地や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被検物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被検物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100μMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分〜約24時間が挙げられる。
CARD14を産生する細胞が、非ヒト哺乳動物個体の形態で提供される場合、該動物個体の状態は特に制限されないが、例えば、薬剤もしくは遺伝子改変により炎症を誘起した乾癬疾患モデル動物(例えば、実施例1で例示されたIMQ誘導性乾癬状皮膚炎、IL−23誘導性乾癬状皮膚炎等)、多発性硬化症モデル動物(例えば、実施例2において使用された実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)モデル等)、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用の発症モデル動物(実施例1のIMQ誘導性乾癬状皮膚炎、IL−23誘導性乾癬状皮膚炎等)、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症のモデル動物(実施例1のIMQ誘導性乾癬状皮膚炎、IL−23誘導性乾癬状皮膚炎等)等であってもよい。使用される動物の飼育条件に特に制限はないが、SPFグレード以上の環境下で飼育されたものであることが好ましい。被検物質の該細胞との接触は、該動物個体への被検物質の投与によって行われる。投与経路は特に制限されないが、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、経口投与、気道内投与、直腸投与等が挙げられる。投与量も特に制限はないが、例えば、1回量として約0.5〜20mg/kgを、1日1〜5回、好ましくは1日1〜3回、1〜14日間投与することができる。
あるいは、上記のスクリーニング方法は、CARD14を産生する能力を有する細胞に代えて、該細胞の抽出液、あるいは該細胞から単離精製したCARD14に、被検物質を接触させることにより行うこともできる。
本発明は、CARD14を産生する能力を有する細胞における該タンパク質(遺伝子)の発現を、被検物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、乾癬の予防および/または治療に使用することができる物質のスクリーニング方法を提供する。本方法において用いられる細胞、被検物質の種類、被検物質と細胞との接触の態様などは、上記と同様である。
CARD14の発現量は、前記したCARD14をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸、即ち、配列番号1で表される塩基配列もしくはそれと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸(DNA)(以下、「本発明の検出用核酸」という場合がある)を用いて、CARD14遺伝子のmRNAを検出することにより、RNAレベルで測定することができる。あるいは、該発現量は、前記したCARD14に対する抗体(以下、「本発明の検出用抗体」という場合がある)を用いて、これらのタンパク質を検出することにより、タンパク質レベルで測定することもできる。
従って、より具体的には、本発明は、(a)CARD14を産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質をコードするmRNAの量を、本発明の検出用核酸を用いて測定、比較することを特徴とする、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の予防および/または治療に使用することができる物質のスクリーニング方法、および(b)CARD14を産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質の量を、本発明の検出用抗体を用いて測定、比較することを特徴とする、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の予防および/または治療に使用することができる物質のスクリーニング方法を提供する。
すなわち、CARD14の発現量を変化させる物質のスクリーニングは、以下のようにして行うことができる。
(i)正常あるいは疾患モデル(例えば、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症など)非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して被検物質を投与し、一定時間経過した後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳等)、あるいは臓器から単離した組織または細胞を得る。
CARD14のmRNAは、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出して定量することができ、あるいは自体公知のノーザンブロット解析により定量することもできる。一方、CARD14のタンパク質量は、ウェスタンブロット解析や以下に詳述する各種イムノアッセイ法を用いて定量することができる。
(ii)CARD14遺伝子を発現する細胞(例えば、CARD14を導入した形質転換体)を上記の方法に従って作製し、常法に従って培養する際に被検物質を培地もしくは緩衝液中に添加し、一定時間インキュベート後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該細胞培養物中に含まれるCARD14あるいはそれをコードするmRNAを、上記(i)と同様にして定量、解析することができる。
CARD14遺伝子(mRNA)の発現レベルの検出および定量は、前記細胞から調製したRNAまたはそれから転写された相補的なポリヌクレオチドを用いて、ノーザンブロット法、RT−PCR法など公知の方法で実施できる。具体的には、CARD14遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチドおよび/またはその相補的なポリヌクレオチドをプライマーまたはプローブとして用いることによって、RNA中のCARD14遺伝子の発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。そのようなプローブもしくはプライマーは、CARD14遺伝子の塩基配列をもとに、例えばprimer 3(http://primer3.sourceforge.net/)あるいはベクターNTI(Infomax社製)を利用して設計することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合、前記プライマーもしくはプローブを放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした細胞由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された前記プライマーもしくはプローブ(DNAまたはRNA)とRNAとの二重鎖を、前記プライマーもしくはプローブの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルとして放射線検出器(BAS−1800II、富士フィルム社製)または蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System(GEヘルスケア社製)を用いて、該プロトコールに従って前記プローブを標識し、細胞由来のRNAとハイブリダイズさせた後、前記プローブの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(GEヘルスケア社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
RT−PCR法を利用する場合は、細胞由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製して、これを鋳型として標的のCARD14遺伝子の領域が増幅できるように、CARD14遺伝子の配列に基づき調製した一対のプライマー(上記cDNA(−鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせて、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した前記プライマーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents(Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT-PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7900 Sequence Detection System (Applied Biosystems社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
被検物質を添加した細胞におけるCARD14遺伝子の発現が被検物質を添加しない対照細胞での発現量と比較して2/3倍以下、好ましくは1/2倍以下、更に好ましくは1/3倍以下であれば、該被検物質はCARD14遺伝子の発現抑制物質として選択することができる。
また、CARD14の発現量を変化させる物質のスクリーニングは、CARD14遺伝子の転写調節領域を用いたレポーター遺伝子アッセイで行うことも可能である。ここで、「転写調節領域」とは、通常、当該染色体遺伝子の上流数kbから数十kbの範囲を指し、例えば、(i)5’−レース法(5’−RACE法)(例えば、5’-full RaceCoreKit(タカラバイオ社製)等を用いて実施されうる)、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピング等の通常の方法により、5’末端を決定するステップ;(ii)Genome Walker Kit(クローンテック社製)等を用いて5’−上流領域を取得し、得られた上流領域について、プロモーター活性を測定するステップ;を含む手法等により同定することができる。
CARD14遺伝子の転写調節領域の下流に機能可能な形でレポータータンパク質をコードする核酸(以下、「レポーター遺伝子」という)を連結して、レポータータンパク質発現ベクターを構築する。該ベクターは当業者に公知の方法で調製すればよい。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press「Current Protocols In Molecular Biology」(1987),John Wiley & Sons, Inc.等に記載される通常の遺伝子工学的手法に従って切り出されたCARD14遺伝子の転写調節領域を、レポーター遺伝子を含むプラスミド上に組み込むことができる。
レポータータンパク質としては、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)、β−ガラクトシダーゼ(GAS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(CFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)等が挙げられる。
調製したCARD14遺伝子の転写調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子を、通常の遺伝子工学的手法を用いて、当該レポーター遺伝子を導入する細胞において使用可能なベクターに挿入し、プラスミドを作製し、適当な宿主細胞へ導入することができる。ベクターに搭載される選択マーカー遺伝子に応じた選抜条件の培地で培養することにより、安定な形質転換細胞を得ることができる。あるいは、CARD14遺伝子の転写調節領域を機能可能な形で連結されてなるレポーター遺伝子は、宿主細胞内に一過的に発現させてもよい。
また、レポーター遺伝子の発現量を測定する方法としては、個々のレポーター遺伝子に応じた方法を利用すればよい。例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いる場合には、前記形質転換細胞を数日間培養後、当該細胞の抽出物を得、次いで当該抽出物をルシフェリンおよびATPと反応させて化学発光させ、その発光強度を測定することによりプロモーター活性を検出することができる。この際、ピッカジーンデュアルキット(登録商標;東洋インキ製)等の市販のルシフェラーゼ反応検出キットを用いることができる。
CARD14のタンパク質量の測定方法としては、具体的には、例えば、(i)本発明の検出用抗体と、試料液および標識化されたCARD14とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたタンパク質を検出することにより試料液中のCARD14を定量する方法や、(ii)試料液と、担体上に不溶化した本発明の検出用抗体および標識化された別の本発明の検出用抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、試料液中のCARD14を定量する方法等が挙げられる。
CARD14のタンパク質発現レベルの検出および定量は、CARD14を認識する抗体を用いたウェスタンブロット法等の公知方法に従って定量できる。ウェスタンブロット法は、一次抗体としてCARD14を認識する抗体を用いた後、二次抗体として125Iなどの放射性同位元素、蛍光物質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)等の酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器(BAI−1800II:富士フィルム社製など)、蛍光検出器などで測定することによって実施できる。また、一次抗体としてCARD14を認識する抗体を用いた後、ECL Plus Western Blotting Detection System(GEヘルスケア社製)を利用して該プロトコールに従って検出し、マルチバイオメージャーSTORM860(GEヘルスケア社製)で測定することもできる。
上記の抗体は、その形態に特に制限はなく、CARD14を免疫原とするポリクローナル抗体であっても、またモノクローナル抗体であってもよく、さらにはCARD14を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸、より好ましくは20アミノ酸からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体を用いることもできる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。
上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はCARD14の異なる部分を認識するものであることが望ましい。例えば、一方の抗体がCARD14のN端部を認識する抗体であれば、他方の抗体として該タンパク質のC端部と反応するものを用いることができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
本発明の検出用抗体を用いるCARD14の定量法は、特に制限されるべきものではなく、試料液中の抗原量に対応した、抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられる。感度、特異性の点で、例えば、後述するサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明の検出用抗体に試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明の検出用抗体を反応させた(2次反応)後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のCARD14を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明の検出用抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、試料液中のCARD14と標識したCARD14とを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定することにより、試料液中のCARD14を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか(直接法)、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる(間接法)固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、試料液中のCARD14と固相化したCARD14とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するか、あるいは試料液中のCARD14と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化したCARD14を加えて未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し試料液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。試料液中のCARD14の量がわずかであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてCARD14の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の検出用抗体を用いることによって、細胞におけるCARD14の量を感度よく定量することができる。
例えば、上記スクリーニング法において、被検物質の存在下におけるCARD14の発現量(mRNA量またはタンパク質量)が、被検物質の非存在下における場合に比べて、約20%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上阻害された場合、該被検物質を、CARD14の発現阻害物質、従って、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用の減少またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の予防および/または治療に使用することができる物質の候補として選択することができる。
あるいは、上記スクリーニング法において、CARD14遺伝子を発現する細胞に代えて、CARD14遺伝子の内在の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む細胞を用いることができる。このような細胞は、CARD14遺伝子の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼ、GFPなど)を導入したトランスジェニック動物の細胞、組織、臓器もしくは個体であってもよい。かかる細胞を用いる場合には、CARD14の発現量は、レポーター遺伝子の発現レベルを、常法を用いて測定することにより評価することができる。
本発明のスクリーニング方法は、被検物質がCARD14の機能を阻害するか否かを指標として行うこともできる。CARD14は、膜結合グアニレートキナーゼ(MAGUK)ファミリーに属しており、プラズマ膜の領域に特化してマルチタンパク質複合体のアセンブリを形成する分子足場として機能するため、これらの機能との関連性や、また、このタンパク質はCARDファミリーに属しており、特定のカスパーゼ関連リクルートメントドメイン(CARD)を有しており、BCL10との特異的相互作用およびBCLのリン酸化、NF−κB活性化および細胞アポトーシスの正の調節因子として機能することも知られているため、このような機能を指標に阻害剤をスクリーニングすることができる。
本発明のさらに別の実施態様においては、上記in vitroの乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症のモデルを用いて、CARD14の機能を阻害して乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症を治療または予防する作用を示す物質を、ワンステップでスクリーニングすることもできる。当該方法は以下の(1)〜(3)の工程:
(1)疾患(例えば、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症等)の標的細胞を、CARD14の存在下および非存在下で被検物質に接触させる工程
(2)各条件下での前記細胞における疾患(例えば、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症)の反応(例えば、乾癬特有の反応、多発性硬化症特有の反応、TLR関連の反応、合併症特有の症状)の程度を測定する工程
(3)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、CARD14の存在下で当該反応を抑制し、CARD14の非存在下で当該反応を抑制しなかった被検物質を、CARD14の機能を阻害して疾患(例えば、乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症等)の治療または予防作用を示す物質の候補として選択する工程を含む。
<医薬>
本発明の医薬は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の医薬と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の核酸を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castoroil))〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記核酸を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。
本発明の医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、すでに引用されたものも含め、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel,F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis,M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Gait,M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein,F.(1991). Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach, IRL Press;Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman&Hall; Shabarova,Z. et al.(1994). Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim;Blackburn, G.M.et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson,G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
例えば、本明細書において、当該分野に知られる標準法によって、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されるものなど)の使用によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成することも可能である。例えば、Steinら(Stein et al., 1988,Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドを合成することも可能であるし、調節孔ガラスポリマー支持体(Sarin et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451)等の使用によって、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドを調製することも可能である。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
(実施例1:CARD14欠損マウスにおける免疫学的機能の評価)
本実施例では、CARD14欠損マウスを作製し、2種のマウス乾癬様モデル(1つは、IMQクリームにより誘導されるモデルであり、もう1つは、組み換えIL−23タンパク質のマウスの耳への注射により誘導されるモデルである)を使用して、それらの免疫学的機能を評価した。
インビボでの乾癬様皮膚炎におけるCARD14の免疫学的役割についてほとんど知られていないため、CARD14は、皮膚の自然免疫システムにおけるNF−κBの活性化を生じさせるTLR7媒介性および/または他の自然免疫レセプター媒介性の細胞内シグナル伝達経路に関与し得るとの本発明者らが仮説を立てたことに基づくものである。
(材料及び方法)
(マウス株)
Card14−/−(詳細は下記および図2に説明する)、Tlr7−/−、Tlr9−/−およびTlr7−/−Tlr9−/−二重欠損マウス(Onishi et al., 2015)を本発明者らの動物施設で飼育し、特定病原体除去条件下で維持した。Rag2−/−Il2rg−/−マウスをTaconic Biosciencesから入手した。Tcrd−/−マウスをJackson Laboratoriesから入手した。C57BL/6(WT)マウスをCLEA Japan, Inc.(東京、日本)から購入した。すべての実験を、医薬基盤・健康・栄養研究所の実験動物の管理および使用に関する施設倫理ガイドラインに従って行った。
(ノックアウトマウスの作製および遺伝子型判定)
Card14−/−マウスは、相同組換えによってエキソン2およびエキソン3の一部を取り除くように設計された標的化ベクターを使用して、Lexicon Pharmaceuticals(The Woodlands,TX,USA)により作製された。PCRを慣例的なマウス遺伝子型判定のために使用した。プライマーは以下を使用した。
P1, 5′-GGGTGTTCCTCTGACTCTCCCAGTTGGATG-3′(配列番号5)
P2, 5′-GCTGACCGCTTCCTCGTGCTTTACGGTATC-3′(配列番号6)
P3, 5′-CAGTGACTCAAGGAGGGGCAAACGCCTATG-3′(配列番号7)
Card14−/−標的化マウスを、C57BL/6バックグラウンドに対して少なくとも8回戻し交配し、マーカー支援スピードコンジェニック法を使用して決定した。結果として、N8世代でB6バックグラウンドゲノムの99%を超える置換が生じた(Markel et al.,1997,Nature Genetics. 17:280-284)。
(乾癬様皮膚炎モデル)
以前記載されたように、乾癬状皮膚炎の誘導のために、6日間連続で、62.5mgの5%IMQを含有するBeselna(日本以外ではAldaraTMとして販売されている;3M Pharmaceticals, St Paul, Minn)クリーム(Mochida Pharmaceutical Co.,Ltdより購入)の局所投与によりマウスの両耳を処置した(非特許文献3(van der Fits et al., 2009))。
コントロールマウスはクリームで処置しなかった。以前記載されたように、単独、または500ngの組み換えマウスIL−23(BioLegend)を含有するかのいずれかで、20μl PBSの皮内注射を、30ゲージの針を使用して、1日おきに5日間、麻酔したマウスの両耳に行った(非特許文献8(Zheng et al., 2007))。耳の測定を、一定圧力厚み計(PG-16J, Teclock, Japan)を使用して耳の中央で行った。様々な時点でマウスを屠殺し、組織を回収した。
(骨髄キメラの生成)
BM細胞(5×10)をドナーWTマウスおよびドナーCard14−/−マウスの大腿骨および脛骨をフラッシングすることにより得た。マウス(WTおよびCard14−/−)は致死線量のX線(9Gy)を受け、その後、眼窩静脈叢を介したBM細胞の静脈内注射によって再構成した。IMQクリームによる処置を再構成してから6週間後に行った。
(耳の皮膚の病理組織学)
実験の最終日にマウスを屠殺し、耳を回収して、その後のパラフィンにおける包埋のために10Nのホルマリンで固定した。パラフィン組織切片(直径4μm)を脱パラフィンし、CARD14に対するウサギ抗マウスポリクローナル抗体(1:100; Proteintech, Chicago, IL, USA)、ケラチン5に対するウサギ抗マウスポリクローナル抗体(1:400;Covance, Berkeley, CA, USA)およびKi67に対するウサギ抗マウスモノクローナル抗体(Thermo Fisher Scientific)で染色した。一次抗体を添加する前に切片を0.01Mクエン酸(pH6.0に調節)中で10分間80℃で処理した。二次抗体は、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンにコンジュゲートしたペルオキシダーゼ標識ポリマー(Dako)を使用した。3,3’−ジアミノベンジジン(Dako)を色素源として使用すると、褐色の染色が生じた(Uchio et al., 2002, Lab Invest. 82:619-628)。Aperio ScanScope (Aperio Technologies)を使用して、すべてのスライドを絶対倍率20倍でスキャンした。
(免疫蛍光染色)
マウスを屠殺し、それらの耳を回収した。この耳の皮膚組織を封入剤(Tissue-Tek OCT compound, Sakura Finetechnical. Co., Tokyo, Japan)中で−80℃で瞬間冷凍した。CARD14およびγδTCRについての染色を、クライオスタット(Leica)を使用して全マウスの耳6μmの切片に対して行った。切片を典型的には、15分間室温(RT)で4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%BSAおよび0.2%Triton X−100を含有するPBS中の2%ヤギ血清で1時間室温でブロックし、抗マウスγδTCR(1:50;BD PharMingen, GL3, PE)およびCARD14に対するウサギ抗マウスポリクローナル抗体(1:150)と共に一晩4℃でインキュベートした。PBS中で洗浄した後、上記切片をAlexaFluor 488コンジュゲート化ロバ抗ウサギIgG(H+L)(1:250; Invitrogen)と共に室温で1時間インキュベートし、次いでPBS中で洗浄し、DAPIを使用して共染色した。LeicaTCS SP2共焦点顕微鏡システムを使用して画像を取得し、Volocity (version 6.2.1)を使用して分析した。
(耳細胞の調製)
表皮細胞懸濁液を、表皮をトリプシン−EDTAと共に45分間37℃でインキュベートすることにより調製した。完全RPMI培地(Nacalai Tesque)中の1.6mg/mLのコラゲナーゼIV(Worthington)および0.1mg/mL Dnase-I(Sigma)含有する緩衝液を使用して、真皮懸濁液を得た。その後、細胞を70μmのポアサイズのセルストレーナー(BDFalcon)を通してろ過し、単一細胞懸濁液を得た(Nakashima et al. The Journal of Allergy and Clinical Immunology. 134:100-107, 2014; Tokura et al., 1994, The Journal of Investigative Dermatology. 102:31-38)。
(RNA抽出およびリアルタイム定量PCR)
保存した細胞を400×gで5分間遠心分離することによって回収した。RNAをQiagen RNeasy kit (Qiagen)を使用して単離した。その後、RNAを逆転写酵素(ReverTra Ace, Toyobo, Osaka, Japan)とオリゴdTプライマーとを使用してcDNAに逆転写した。リアルタイムPCR混合物は、総量20μLで、10μLのSYBR Green Master mix (Roche)、フォワードプライマーおよびリバースプライマー(CARD14およびグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素;GAPDHに対しては200nM)ならびに2μLのcDNAサンプルからなる。増幅用のプライマーは以下の通りである。
mCARD14, 5′-TGCATAGCTCCCGTTTCAC-3′(フォワード)(配列番号8)
5′-GGAACTTCAGGCTTTCCAGA-3′(リバース)(配列番号9)
mGAPDH, 5′-CAAGATTGTCAGCAATGCATCC-3′(フォワード)(配列番号10)
5′-CCTTCCACAATGCCAAGTTG-3′(リバース)(配列番号11)
PCR反応を、LightCycler480 System II (Roche Life Science)のMicroAmp optical 384ウェル反応プレートにおいて40サイクル(95℃で15分間、60℃で1分間)行った。閾値サイクルの間に検出される蛍光シグナル(ΔCt)を、上記装置にインストールされたソフトウェアにより記録した。RNAおよびcDNA品質におけるばらつきに関して標的遺伝子レベルを標準化するために、GAPDHを内部コントロールと同じ条件下で増幅した。
(フローサイトメトリー分析およびセルソーティング)
以下の抗体をBDPharMingenから購入した:抗CD8a(Ly-2,APC);抗CD45(30-F11,PerCP/Cy5.5);抗マウスγδTCR(GL3,PE);抗IL-17A(TC11-18H10,PE);および抗NK1.1(PK136,PE)。BioLegendからの以下の抗体を使用した:抗CD3e(134-2C11,PerCP/Cy5.5);抗CD4(RM4-5,PE/Cy7);抗CD11b(M1/70,FITC);抗CD45(30-F11,PE/Cy7);および抗TCRβ(H57-597,PerCP/Cy5.5)。以下の抗体をeBioscienceから購入した:抗CD19(1D3,PacificBlue);抗IL-22(IL22JOP,APC);および抗TCRγδ(GL3,APC)。FACS分析のために、耳の固定された領域をTrephine(8-mm,Kai Industries Co., Ltd.)を使用してくりぬいた。細胞をFc-block (BioLegend)と共に15分間予めインキュベートし、その後、30分間4℃で適切な細胞表面抗体により標識した。細胞内サイトカイン染色のために、細胞を50ng/ml PMA(Sigma)および500ng/mlイオノマイシン(Sigma)で刺激し、GolgiStop(BD Bioscience)を用いて5分間37℃で処理した。細胞内染色のために、細胞を、BD Cytofix/Cytoperm 固定/透過処理キット(BDBiosciences)で固定および透過処理し、その後30分間4℃で抗体により染色した。BD LSR IIフローサイトメーターをFACS分析のために使用した。FACSAriaフローサイトメーターをセルソーティングのために使用した。その後、試料を、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して分析した。
(OVA+IMQクリームの適用および抗体応答の測定)
単独または100μgのLPSを含まないOVA(Seikagaku)を含有するかのいずれかで、20μl PBSの皮内注射を0日目および7日目に行った。採血後、抗体力価を14日目に測定した。マウスの耳を、以前記載されたように、IMQを使用して6日間連続で処理して、乾癬状皮膚炎を誘導した。OVA特異的抗体を、ELISAを使用して定量化した。簡単に説明すると、平底96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc)を、0.5M NaHCO中の50μg/mLのOVAでコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートし、0.05%Tween20を含むPBSで洗浄し、1時間室温でブロックした。洗浄後、50μLの希釈された血清を2時間室温でインキュベートした。その後、プレートを洗浄し、アルカリホスフェートコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体およびIgG2C抗体(1:4000,Southern Biotech)と共に2時間室温でインキュベートした。プレートを洗浄し、その後、TMB基質溶液(Kirkegaard & PerryLaboratories)を使用して、結合抗体を可視化した。反応を2N HSOを添加することにより停止し、Gen5ELISA (Biotek(登録商標))プログラムを使用して、450nmの吸光度をBioStackTM (BioTek Instruments Inc.)マイクロプレートリーダーで読み取った。
(統計分析)
Mann−Whitney U検定またはScheffe検定を使用して、群間の差の統計学的有意性ついて試験した。統計学的有意性をP<0.05として認めた。
(結果および考察)
(TLR7およびTLR9の両方がIMQ誘導性乾癬状皮膚炎に必要だが、IL−23誘導性乾癬状皮膚炎には必要でない)
インビボの乾癬病態形成における自然免疫系でのCARD14の役割を評価するために、本発明者らは2種の確立したマウス乾癬様モデルを利用した。一方のモデルは、IMQを含有するAldaraTMクリームを6日間両耳に局所適用することにより誘導される(非特許文献3(van der Fits et al., 2009))。IMQはTLR7アゴニストであるので、本発明者らはTLR欠損マウスを使用して、TLR7が本発明者らの実験乾癬モデルにおいて必須であるのか、または不必要であるのかを評価した。以前の報告(非特許文献4(Walter et al., 2013))と一貫して、TLR7単一欠損(Tlr7−/−)マウスは、WTマウスと同様の乾癬状皮膚炎を発症した(データは示さず)。同様に、TLR9単一欠損(Tlr9−/−)マウスは、WTマウスと同一の表現型を示した(データは示さず)。著しく対照的には、同じ実験設定において、TLR7およびTLR9の二重欠損(Tlr7−/−Tlr9−/−)マウスを評価した際に、Tlr7−/−Tlr9−/−マウスは、WTマウスと比較して、適用の最後の3日間、耳の厚み、表皮過角化および真皮細胞浸潤の顕著な減少を示した(図1Aおよび1B)。多くのグループによって以前に推測されてきたが(Pantelyushin et al., 2012, The Journal of Clinical Investigation.122:2252-2256; 非特許文献4(Walter et al., 2013))、本発明者らの結果は、初めてIMQ誘導性乾癬状皮膚炎がTLR7およびTLR9の両方を必要とするという証拠を示した。
次に、本発明者らは、IL−23の投与により誘導された別の確立された乾癬状皮膚炎モデル(非特許文献8(Zheng et al., 2007))を使用して、TLR7および/またはTLR9の潜在的な関与を調べた。以前の報告と一貫して、0日目、2日目および4日目の組み換えIL−23の注射により、5日目に、表皮肥厚および真皮炎症性細胞浸潤を伴う耳の厚みの顕著な増加が生じた。これらの変化は、すべてTLR7またはTLR9とは無関係であった(図1Cおよび1D)。これらの結果は、組み合わせでのTLR7およびTLR9の両方のシグナル伝達が、IMQ誘導性乾癬状皮膚炎を完全に発症するのに必要であり、他方で、IL−23誘導性乾癬様皮膚炎モデルは、TLR7およびTLR9媒介性自然免疫活性化の下流を直接活性化することを実証した。IMQ誘導性皮膚炎の発症において、どのリガンドまたは刺激がTLR7およびTLR9媒介性自然免疫活性化の原因であるか未だにはっきりしていない一方で、上記の知見は、IMQ誘導性乾癬様モデルとIL−23誘導性乾癬様モデルとの間の自然免疫のシグナルの明確な差異を実証した。
(CARD14は、IMQ誘導性乾癬様モデルおよびIL−23誘導性乾癬様モデルの両方において皮膚炎症の発症に必須である)
よりCARD14のインビボにおける役割を特徴づけるために、本発明者らは、CARD14欠損(Card14−/−)マウスを作製し(図2)、IMQ誘導性乾癬様モデルおよびIL−23誘導性乾癬様モデル(非特許文献3(van der Fits et al., 2009);非特許文献8(Zheng et al., 2007))の両方におけるCARD14の役割を評価した。本発明者らは、IMQクリームを6日間連続で適用するか、または1日おきに5日間IL−23を注射した。WTマウスは、IMQの適用の後、悪化した皮膚の状態を有し、皮膚の厚みが増加したが、Card14−/−マウスを皮膚炎症から有意に保護した(図3A)。組織化学的実験は、Card14−/−マウスの耳の皮膚におけるケラチン5およびKi67を染色した過剰増殖細胞が、コントロールマウスのものと同様であり、他方で、IMQの適用を受けたWTマウスにおける過剰増殖細胞は激しく増加したことを明らかにした(図3B)。さらに、IL−23誘導性の耳の膨化は、Card14−/−マウスにおいて顕著に抑制された(図3C)。表皮過角化(ケラチン5およびKi67が染色された過剰増殖細胞として見られる)および真皮炎症(H&E染色における浸潤細胞として見られる)は、IL−23注射されたCard14−/−マウスにおいて両方とも減少した(図3D)。これらの結果は、CARD14がIMQクリームの適用およびIL−23の注射によって誘導される乾癬様皮膚炎の形成に必須であることを示している。したがって、本発明者らは、CARD14が、TLR7およびTLR9の下流のシグナル伝達に必要であり、さらにTLR7およびTLR9を必要としないIL−23の下流のシグナル伝達にも必要であるので、自然免疫細胞よりもむしろ、適応免疫細胞におけるシグナル伝達経路に関連すると結論付けた。
(造血細胞におけるCARD14は乾癬において重要な役割を担っているが、放射線抵抗性皮膚常在細胞におけるCARD14はそうではない)
CARD14は、ケラチノサイトノの自然免疫に重要であることが示されたが(非特許文献12(Fuchs-Telem et al., 2012); 非特許文献9(Jordan et al., 2012))、本発明者らの上記結果は、他の細胞型におけるCARD14についての潜在的な役割を示唆しており、CARD14はIL−23シグナル伝達の下流で機能することを示唆している。この問題をさらに明確にするために、本発明者らは相反性骨髄(BM)キメラを作製し、IMQ誘導性乾癬様モデルを使用してCARD14の役割をさらに評価した。WTマウスおよびCard14−/−マウス由来のBM細胞は、X線照射されたCard14−/−マウスおよびWTマウスにそれぞれ移植した。6週間後、マウスを6日間連続でIMQクリームで両耳に対して処置した。乾癬様炎症が、WTマウス由来のBMが移植されたCard14−/−マウスおよびWTマウスにおいて誘導されたが、Card14−/− BMが移植された照射されたWTマウスまたはCard14−/−マウスでは誘導されなかった(図4A)。これは、造血BM由来細胞におけるCARD14発現は、IMQ誘導性モデルにおける乾癬の病態形成に必須であるが、放射線抵抗性皮膚常在細胞におけるCARD14発現は必須ではなかったことを示している。本発明者らは、RAG遺伝子に加えて、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球(ILC)およびγδT細胞によって制御されるT細胞およびB細胞の潜在的な寄与について明らかにした。本発明者らは、γδT細胞を欠いているT細胞レセプターδ欠損(Tcrd−/−)マウスと、T細胞、NK細胞、NKT細胞およびILCを欠いているRag2−/−Il2rg−/−マウスにおける乾癬様モデルの重症度を比較した。以前の報告(Pantelyushin et al., 2012, The Journal of Clinical Investigation.122:2252-2256)と一貫して、Tcrd−/−マウスおよびRag2−/−Il2rg−/−マウスが、IMQクリームの適用後、WTマウスと比較した皮膚の膨化の顕著な減少を示した(図4B)。ケラチノサイトを含む非造血細胞におけるCARD14が、乾癬様炎症における役割を担うという可能性を除外することはできないが、上記結果は、BM由来細胞、潜在的にはγδT細胞におけるCARD14は、IMQ誘導性乾癬様皮膚炎の発症に必要であることを強く示唆している。
(CARD14はγδT細胞において発現され、γδT細胞によるIL−17およびIL−22の産生に必要である)
いくつかの異なる細胞型におけるCARD14発現を試験するために、耳の皮膚由来の細胞を単離し、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を使用してmRNAを測定した。以前の報告(非特許文献9(Jordan et al., 2012))と一貫して、CARD14 mRNAは、ケラチノサイトにおいて高レベルで発現された(図5A)。免疫細胞の中で、耳の皮膚のγδT細胞におけるCARD14 mRNAは、ケラチノサイトと同程度に高く、他の免疫細胞型よりも高かった(図5Aおよび5B)。CARD14を発現する細胞型をさらに明らかにするために、本発明者らは、IL−23の投与の5日後に、CARD14およびT細胞レセプターγδ(TCRγδ)に対する抗体を使用して耳の皮膚の共焦点顕微鏡分析を行った。IL−23を受けたWTマウスの表皮領域において、CARD14陽性シグナルを検出し、他方で、IL−23を受けたCard14−/−マウスにおいて、CARD14陽性シグナルを検出しなかった。また、WTマウスおよびCard14−/−マウスの両方において、TCRγδ陽性シグナルを表皮と真皮との間の周辺領域において検出し、特定のTCRγδ陽性シグナルと、細胞質で発現されたCARD14陽性シグナルとが重なり、他方で、Card14−/−マウスにおいて重なった領域は検出されなかった(図5C)。これらのデータは、CARD14陽性γδT細部が乾癬様皮膚に存在することを示している。
IL−17およびIL−22を産生するγδT細胞は、乾癬の病態形成における重要な役割を担っていることが示された(非特許文献7(Cai et al., 2011))。大多数のIL−23レセプター(IL−23R)発現細胞がγδT細胞であること、およびIL−23Rの変異が特定の乾癬患者において見つかったことも報告されている(非特許文献7(Cai et al., 2011); 非特許文献10(Tsoi et al., 2012))。IMQ誘導性皮膚炎およびIL−23誘導性皮膚炎は、IL−17およびIL−23の産生に密接に関連しているので(非特許文献7(Cai et al., 2011); Pantelyushin et al., 2012, The Journal of Clinical Investigation.122:2252-2256; 非特許文献8(Zheng et al., 2007))、本発明者らは、IMQまたはIL−23を受けたWTマウスおよびCard14−/−マウスの表皮シートから回収されたIL−17およびIL−22を産生する細胞を、細胞内染色を使用して試験した(図5Dおよび図5E)。IMQまたはIL−23のいずれかで処置されたWTマウスは、コントロール群よりも顕著に多い数の表皮TCRγδIL−17細胞およびTCRγδIL−22細胞を示した。対照的にIMQ処置されたCard14−/−マウスおよびIL−23処置されたCard14−/−マウスの両方は、IL−17およびIL−22を産生する表皮γδT細胞が顕著に少なかった(図5Dおよび5E)。これらのデータは、CARD14は、IL−17およびIL−22を分泌する乾癬状皮膚の表皮病変でのγδT細胞における重要な役割を担い得ることを示唆している。
(CARD14は、共投与される抗原に対するIMQのアジュバント効果に干渉しない)
IMQは、多くの他の適用において一般的に使用されるワクチンアジュバントであるTLR7のアゴニストであるので、本発明者らは、CARD14が、共投与される抗原に対するIMQのアジュバント効果に影響を与えるかどうかを対象とした。この疑問を解決するために、本発明者らは、IMQクリームを使用する乾癬様皮膚炎モデルの実験プロトコールを改変し、WTマウス、Tlr7−/−Tlr9−/−マウスおよびCard14−/−マウスを、両耳における皮内注射を介してオボアルブミン(OVA)で免疫化し、他方で、IMQクリームを同じ耳に局所的に適用した。耳の厚みの増加をWTマウスにおいて観察し、他方で、マウスにOVAタンパク質を注射しても、Tlr7−/−Tlr9−/−マウスおよびCard14−/−マウスは、7日目で一貫して耳の厚みが顕著に薄いことを示した(図6A)。WTマウスをOVA免疫化と共にIMQクリームで処置し、予想されるように、処置されていないOVA免疫化群と比較して、顕著に高いOVA特異的免疫グロブリン(IgG)およびIgG2c抗体応答を示した(図6B)。OVA特異的IgG2c抗体力価は、Tlr7−/−Tlr9−/−マウスにおいて顕著に減少したが、Card14−/−マウスは、WTマウスに匹敵するレベルの血清抗OVA IgG2cを示した(図6B)。これらの結果は、IMQクリームが、共投与されたタンパク質抗原に対してアジュバント効果を有し、CARD14がアジュバント効果に影響を与えないことを示している。IMQ誘導性乾癬がIMQクリームの合併症であるので、CARD14阻害剤を開発すると、IMQ誘導性自然免疫機能およびそのアジュバント効果に影響を与えることなく乾癬状皮膚炎の病態形成を抑制する可能性がある。
したがって、上記データは、CARD14が表皮γδT細胞によりIL−17およびIL−22の最適な産生に必要であり、IMQおよびIL−23の両方によって誘導されることを強く示している。CARD14は、マウス実験モデルにおけるほとんどの乾癬様皮膚炎の原因である。
CARD14とCARD11は、BCL10およびNF−κBのシグナル伝達の上流の活性化因子として機能する新規MAGUKファミリーメンバーであることが示された(非特許文献11(Bertin et al., 2001))。CARD14は、乾癬患者における皮膚病変の上皮細胞において発現され(Harden et al., 2014, PloS One. 9:e111255)、本発明者らは、最初に、CARD14が、ケラチノサイトなどの上皮間質細胞におけるTLR7媒介性NF−κB活性化についての下流シグナル伝達分子であると仮定した。しかしながら、本発明者らの上記結果は、TLR7およびTLR9がIMQ誘導性乾癬様皮膚炎に必要であるが、IL−23誘導性乾癬様皮膚炎には必要ない(図1)一方で、CARD14は、IMQ誘導性乾癬様皮膚炎およびIL−23誘導性乾癬様皮膚炎の両方に重要である(図3)ことを実証している。これらのデータは、本発明者らの最初の仮説が疑わしかったことを示唆し、むしろ、CARD14はIL−23の下流であることを意味し、自然免疫細胞よりも適応免疫細胞に重要であると思われる。IL−23の投与によって開始されるシグナル伝達経路の下流では、IL−23Rを発現する細胞は、乾癬様皮膚炎のCARD14媒介性病態形成において重要な役割を担っているはずである。どの細胞がIL−23Rを発現するかは明らかではないが、IL−23Rを発現するほとんどの細胞はγδT細胞であることが示された(Awasthi et al., 2009, Journal of Immunology.182:5904-5908.)。本発明者らの結果は、CARD14が、TCRγδT細胞におけるIMQ媒介性およびIL−23媒介性のIL−17およびIL−22の産生に必要であることを実証しているが(図5Dおよび図5E)、どのようにCARD14がこれらの細胞内シグナル伝達経路に関与するのか明らかにするために、さらなる研究が必要である。本発明者らは、CARD14が、2種の確立された乾癬様皮膚炎モデルにおけるIL−17およびIL−22を産生するγδT細胞の抑制を介した乾癬の病変形成に必要であることを示した。
本発明者らは、CARD14が、上皮ケラチノサイトにおけるその発現に加えて、乾癬様皮膚発疹におけるγδT細胞において発現されることを見出した(図5Aおよび5C)。実験条件がヒト患者試料と実験マウスモデルとの間で異なり、また、TCRγδ細胞の量はヒトおよびマウスで異なることが知られている(非特許文献7(Cai et al., 2011); Pasparakis et al., 2014, Nature reviews. Immunology. 14:289-301)。したがって、ヒトおよびマウス(動物モデルを含む)おけるCARD14の役割が、CARD14発現細胞型または実験条件のいずれかに関して異なり得る。乾癬のヒトγδT細胞におけるCARD14の役割を明らかにするためにさらなる研究が必要である。
CARD14は、乾癬状皮膚炎の病態形成と、IMQベースのアジュバントまたは他のTLRベースのアジュバントあるいは免疫刺激アジュバントにより引き起こされる副作用とを減少させるための優れた標的となり得る。これは、共投与された抗原に特異的な適応免疫応答を抑制せずに自然免疫活性化を阻害する。CARD14媒介性の自然免疫応答および適応免疫応答の免疫学的有意性を研究するべきである。γδT細胞が多発性硬化症などの様々な免疫障害(Sutton et al., 2009, Immunity. 31:331-341)および他の感染疾患(Carding and Egan, 2002, Nature reviews. Immunology. 2:336-345.; Sutton et al.,2012, European Journal of Immunology. 42:2221-2231)において重要な役割を担っている。
(実施例2:多発性硬化症)
次に、本実施例では、CARD14欠損により、多発性硬化症の実験的脱髄性疾患モデルの症状軽減効果がみられるかどうかを調べた。本実施例では、基本的にRuiらの文献(Yuxiang Rui, Tasuku Honjo, and Shunsuke Chikuma. Programmed cell death 1 inhibits inflammatory helper T-cell development through controlling the innate immune response. PNAS 2013 110 (40) 16073-16078)の記載に基づいて行った。
本実施例で使用される実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)は、中枢神経組織由来のタンパク質抗原やペプチドを免疫することによって誘導される自己免疫疾患モデルであり、多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)と多くの病態を共有することから、MSの病態研究や治療法・治療剤の開発において一般に使用される。
(マウス)
CARD14−/−マウスは、Ruiらの文献に準じて遺伝子をノックアウトすることにより作製した。
(EAEマウス)
Ruiらの文献に準じてマウスを200μgのMOG35−55ペプチド(MOG35−55残基に相当するペプチド)、完全フロイントアジュバント(CFA)、および250μgの熱殺傷マイコバクテリア(Heat−killed mycobacteria;HKMTB)を含む0.2mLのエマルジョンで皮下(sc)免役した。加えて、マウスに、200ngの百日咳毒素(PTX)を免疫時および48時間後に2回の腹腔内(ip)注射を行った。いくつかの実験において、HKMTB、PTXまたはその両方を除いた最適未満(suboptimal)の免疫条件も用いた。マウスは毎日観察し、疾患の臨床的兆候を観察し、EAEスコアを以下のように評価した。
0, 無症状(no disease);
1, 尾の下垂(limp tail);
2, 後肢運動低下(hind limb weakness);
3, 一方の後肢の麻痺(paralysis of one hind limb);
4, 両方の後肢の麻痺(paralysis of both hind limbs);
5, 運動障害(limited movement);
6, 瀕死または死亡(moribund or death)。
スコアは、各々の実験群について平均臨床スコアとして示す。
再刺激アッセイのために、脾臓を免疫後8または30日後採取し、CD4T細胞富化サンプルを抗CD4マイクロビーズおよびautoMACSシステム(Miltenyi)を用いて得た。1mLの容積中で、2×10の単離CD4T細胞を、MOG35−55ペプチドの存在下(30μg/mL)でCARD−14+/+マウス由来の2×10マイトマイシンC処理脾臓細胞とともに培養した。上清をサイトカイン分析のための3日後に採取した。
図7に0日目および2日目に百日咳毒素(PTX)の存在下でMOG/CFA/HKMTBで免疫した後の野生型マウス(n=8)およびCard14−/−マウス(n=9)のEAEスコアを示す(図7左)。右側には発症率(Incidence)CARD14欠損により実験的脱髄性疾患モデルの症状軽減効果があったことが示され、CARD14が多発性硬化症において重要な役割を果たしていることが示された。
(実施例3:スクリーニング)
本実施例では、乾癬の治療または予防剤、多発性硬化症の治療または予防剤、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用を減少させるための治療剤または予防剤、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療または予防剤のスクリーニングを行う。
CARD14についての阻害活性を当該分野で公知の任意の方法で測定し、候補物質の阻害活性を測定し、阻害活性の見られるものを阻害剤として同定する。
実施例1または2に記載される乾癬、多発性硬化症、TLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる副作用、またはγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症のモデルにおいてこれらの阻害剤を投与し、症状等の経過観察を行い、症状が予防または治療することができたものをこれらの疾患、障害または症状の予防剤または治療剤として特定することができる。
(参考文献一覧:なお、これらの一覧にある文献は、本発明に対する先行技術であることを認める趣旨で掲載するものではない。)
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24.Walter,A., M. Schafer, V. Cecconi, C. Matter, M. Urosevic-Maiwald, B. Belloni, N.Schonewolf, R. Dummer, W. Bloch, S. Werner, H.D. Beer, A. Knuth, and M. van den Broek. 2013. Aldara activates TLR7-independent immune defence. Nature Communications. 4:1560.
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以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は2015年10月9日に日本国に出願した特願2015-200948に対して優先権を主張するものであり、その内容はその全体が本明細書において参考として援用される。
本発明は、バイオ医薬産業、製薬産業において産業上利用可能性を見出す。
配列番号1:CARD14 核酸配列(ヒト)NM_001257970
配列番号2:CARD14 アミノ酸配列(ヒト)NP_001244899
配列番号3:CARD14 核酸配列(マウス)NM_130886
配列番号4:CARD14 アミノ酸配列(マウス)NP_570956
配列番号5:P1, 5′-GGGTGTTCCTCTGACTCTCCCAGTTGGATG-3′
配列番号6:P2, 5′-GCTGACCGCTTCCTCGTGCTTTACGGTATC-3′
配列番号7:P3, 5′-CAGTGACTCAAGGAGGGGCAAACGCCTATG-3′
配列番号8:mCARD14, 5′-TGCATAGCTCCCGTTTCAC-3′(フォワード)
配列番号9:mCARD14, 5′-GGAACTTCAGGCTTTCCAGA-3′(リバース)
配列番号10:mGAPDH, 5′-CAAGATTGTCAGCAATGCATCC-3′(フォワード)
配列番号11:mGAPDH, 5′-CCTTCCACAATGCCAAGTTG-3′(リバース)

Claims (16)

  1. 造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が乾癬の治療剤または予防剤として使用することができると決定される、工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく乾癬の治療剤または予防剤のスクリーニング方法であって、該造血細胞はγδT細胞である、方法。
  2. 造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が多発性硬化症の治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づく多発性硬化症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法であって、該造血細胞はγδT細胞である、方法。
  3. 造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が、TLRベース/IMQ(イミキモド)/免疫刺激アジュバントによる乾癬副作用を減少させるための治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づくTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる乾癬副作用を減少させるための治療剤または予防剤のスクリーニング方法であって、該造血細胞はγδT細胞であり、該乾癬はTLR7およびTLR9の両方に媒介性の乾癬またはIL−23誘導性乾癬を含む、方法。
  4. 造血細胞に候補物質を接触させる工程、および造血細胞におけるCARD14の発現を決定する工程であって、ここで該候補物質がCARD14の発現を抑制ないし消失させる場合該候補物質が、γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤として使用することができると判定される工程を包含する、造血細胞におけるCARD14の発現に基づくγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤のスクリーニング方法であって、該造血細胞はγδT細胞であり、該γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症は乾癬または多発性硬化症を含む、方法。
  5. 前記造血細胞は表皮γδT細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 非造血細胞においてCARD14が発現していないことを決定する工程をさらに包含する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 非造血細胞に前記候補物質を接触させ、CARD14が発現に実質的な影響がない場合、該候補物質を前記治療剤または予防剤として選択する工程をさらに包含する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記非造血細胞は皮膚常在細胞を含む、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記乾癬はTLR7およびTLR9の両方に媒介性の乾癬およびIL−23誘導性乾癬を包含する、請求項1または3〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む乾癬の治療剤または予防剤であって、該造血細胞はγδT細胞であり、該乾癬はTLR7およびTLR9の両方に媒介性の乾癬またはIL−23誘導性乾癬を含み、該造血細胞特異的CARD14阻害剤は、CARD14に対する抗体もしくは抗体フラグメント、CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、またはCARD14遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸から選択される、治療剤または予防剤。
  12. 造血細胞特異的CARD14阻害剤を含む多発性硬化症の治療剤または予防剤であって、該造血細胞はγδT細胞であ該造血細胞特異的CARD14阻害剤は、CARD14に対する抗体もしくは抗体フラグメント、CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、またはCARD14遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸から選択される、治療剤または予防剤。
  13. 造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むTLRベース/IMQ/免疫刺激アジュバントによる乾癬副作用を減少させるための治療剤または予防剤であって、該造血細胞はγδT細胞であり、該乾癬はTLR7およびTLR9の両方に媒介性の乾癬またはIL−23誘導性乾癬を含造血細胞特異的CARD14阻害剤は、CARD14に対する抗体もしくは抗体フラグメント、CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、またはCARD14遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸から選択される、治療剤または予防剤。
  14. 造血細胞特異的CARD14阻害剤を含むγδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症の治療剤または予防剤であって、該γδT細胞媒介性疾患および/または免疫介入の合併症は乾癬または多発性硬化症を含み、該造血細胞はγδT細胞であり、該乾癬はTLR7およびTLR9の両方に媒介性の乾癬またはIL−23誘導性乾癬を含み、該造血細胞特異的CARD14阻害剤は、CARD14に対する抗体もしくは抗体フラグメント、CARD14遺伝子のmRNAに対するアンチセンス核酸、CARD14遺伝子のmRNAに対するリボザイム核酸、またはCARD14遺伝子のmRNAに対してRNAi活性を有する核酸から選択される、治療剤または予防剤。
  15. 前記造血細胞は表皮γδT細胞である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
  16. 前記γδT細胞はIL−17およびIL−22を産生する細胞である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の治療剤または予防剤。
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