特許法第30条第2項適用 1.株式会社デンソー 平成29年5月10日営業開始 平成29年6月3日納品 2.豊田共栄サービス株式会社 平成29年5月15日営業開始 平成29年8月7日納品 3.トヨタ紡織株式会社 平成29年5月16日営業開始 平成29年6月3日納品 4.第4回ワークスタイル変革EXPO 平成29年7月26日から28日までの3日間開催
上述した特許文献1や特許文献2のブラインドは、それまでのルーバータイプのブラインドと比較して、室内の眩しさを抑えた状態としながらも、室内を明るく保つことができるものではあったが、以下のような欠点を有していた。
すなわち、特許文献1のブラインドにおいて、各スラットは、光を拡散することにより眩しさを抑えるものであり、光の透過率自体は高いものとなっていた。このため、日差しが強いとき等には、各スラットを起立させた状態としても、室内にいる人が眩しさや熱を感じることがあった。また、オフィス等の窓際では、窓を背にした状態で人が座る配席になっていることが多いが、日差しの強いとき等には、その人が作業するパソコンの画面(窓に対向する状態となっていることが多い。)に映り込みが生じて画面が見にくくなることもあった。
一方、特許文献2のブラインドは、下部ブラインドとして、すりガラス的な採光が可能な膜材を用いるもの(同文献の段落0017を参照。)であるため、やはり、特許文献1のブラインドと同様の欠点を有する。また、特許文献2のブラインドは、上部ブラインドとして、専ら光を反射するものを用いるもの(同文献の段落0008を参照。)となっている。このため、上部ブラインドのスラットを起立させると、上部ブラインドの領域からは光が殆ど室内に導き入れられなくなる。したがって、天井面に光を反射させようとすると、上部ブラインドのスラットを傾けた状態とする必要がある。加えて、上部ブラインドのスラットで反射した光は、天井面にくっきりとした明暗を形成すると推測され、室内が柔らかな雰囲気にならないと考えられる。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、スラットを起立させた状態においても、自然で柔らかな光を室内に導き入れることで、室内を雰囲気よく明るく保つことのできるブラインドを提供することを目的とする。また、その仕様によっては、室内にいる人に眩しさや熱を感じさせにくく、且つ、室内にあるパソコンの画面等に映り込みが生じにくくすることも可能なブラインドを提供することも本発明の目的である。
上記課題は、
互いに略平行に配された複数本のスラットを備え、各スラットの傾きを調節することにより、室外から室内に差し込む光を調節することができるようにしたブラインドであって、
スラットとして、
光透過率が15%以下に抑えられた、合成樹脂製の帯板材からなる反射拡散型のスラットと、
光透過率が20~90%に設定された、合成樹脂製の帯板材からなる透過拡散型のスラットと、
が混在されるとともに、
少なくとも反射拡散型のスラットが、長手方向に垂直な断面形状が「V」字状を為す形態とされた
ことを特徴とするブラインド
を提供することによって解決される。
このように、反射拡散型のスラットと透過拡散型のスラットとを組み合わせてブラインドを構成することにより、スラットを閉じた状態であっても、室外の光(日光等)を拡散させた自然で柔らかな状態で室内に導き入れることが可能になる。
また、反射拡散型のスラットと透過拡散型のスラットの配置を変更することにより、使用場所等に応じた適切な採光を行うことも可能になる。例えば、室内の上部(天井面付近)に自然で柔らかな光を導き入れながらも、室内にいる人が眩しさや熱を感じにくく、パソコンの画面等への映り込みを抑えたいような場合には、ブラインドの上側領域を透過拡散型のスラットで構成し、ブラインドの下側領域を反射拡散型のスラットで構成することで、そのような状態を実現することが可能である。
さらに、反射拡散型のスラットを断面「V」字状としたことにより、後述するように、スラットを傾けた場合において、反射拡散型のスラットを通じて室外から室内に導き入れられる光が、反射拡散型のスラットで反射を複数回繰り返す(拡散を複数回繰り返す)ようになる。このため、反射拡散型のスラットが配された領域を通じても、より均一に拡散された自然で柔らかな状態の光を室内に導き入れることが可能になる。
本発明のブラインドにおいて、反射拡散型のスラットは、光透過率が15%以下となる合成樹脂製の帯板材であれば、その材質を特に限定されないが、顔料を練り込んだ透光樹脂製(透明樹脂を含む。)の帯板材で形成することが好ましい。透光樹脂としては、ポリカーボネート(PC)や、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS)等が例示される。このような透光樹脂に、顔料を練り込むことにより、光透過率を15%以下に抑えることができる。
このとき、顔料は、遮光性を有するものであれば特に限定されないが、酸化チタン(TiO2)を用いることが好ましい。酸化チタンは、高い遮光性を有することに加えて、触媒としての活性が低く、また熱安定性にも優れるため、反射拡散型のスラットに用いる顔料として好適である。加えて、酸化チタンは、それ自体で白色を有するため、他の顔料等を使用しなくても、反射拡散型のスラットを清潔感のある白色に着色することが可能である。
これに対し、透過拡散型のスラットは、光透過率が20~90%となる合成樹脂製の帯板材であれば、その材質を特に限定されないが、上記の反射拡散型のスラットと同様、顔料を練り込んだ透光樹脂製(透明樹脂を含む。)の帯板材で形成することが好ましい。透光樹脂としても、上記の反射拡散型のスラットで述べたものと同様のものを用いることができ、顔料としても、上記の光拡散型のスラットで述べたもの(酸化チタン)を好適に用いることができる。この場合、顔料の配合量を、反射拡散型のスラットの配合量よりも少なくすると、透過拡散型のスラットの光透過率を20~90%とすることができる。
本発明のブラインドにおいて、反射拡散型のスラットは、それに入射した光を拡散しながら反射するものとされる。このような反射拡散型のスラットは、それを形成する合成樹脂に光拡散材(光拡散ビーズ等)を練り込むか、その表面に光拡散用の凹凸を形成することによって得ることができる。これに対し、透過拡散型のスラットは、それに入射した光を拡散しながら透過するものとされる。このような透過拡散型のスラットも、上記の反射拡散型のスラットと同様、それを形成する合成樹脂に光拡散材(光拡散ビーズ等)を練り込むか、その表面に光拡散用の凹凸を形成することによって得ることができる。
本発明のブラインドにおいては、既に述べたように、反射拡散型は、断面「V」字状に形成される。反射拡散型のスラットの断面形状における「V」字の開き角度(以下において、「開き角度θ」と呼ぶことがある。)は、180°未満(開き角度θが180°であると反射拡散型のスラットの断面は「I」字状になる。)であれば、特に限定されない。しかし、開き角度θが180°に近いと、上述した効果(反射拡散型のスラットを通じて室外から室内に導き入れられる光が、反射拡散型のスラットで反射を複数回繰り返すようになるという効果)が奏されにくくなる虞がある。このため、反射拡散型のスラットの開き角度θは、175°以下とすることが好ましい。反射拡散型のスラットの開き角度θは、170°以下とすることがより好ましく、165°以下とすることがさらに好ましい。
一方、反射拡散型のスラットの開き角度θを小さくしすぎても、上述した効果(反射拡散型のスラットを通じて室外から室内に導き入れられる光が、反射拡散型のスラットで反射を複数回繰り返すようになるという効果)が奏されにくくなる虞がある。このため、反射拡散型のスラットの開き角度θは、100°以上とすることが好ましい。反射拡散型のスラットの開き角度θは、130°以上とすることがより好ましく、150°以上とすることがさらに好ましい。
本発明のブラインドにおいては、既に述べたように、スラットとして、反射拡散型のスラットと透過拡散型のスラットとが混在される。この点、スラットの全本数(N本とする。)に対する透過拡散型のスラットの本数(N1本とする。)の比N1/Nは、ブラインドの設置箇所等によっても異なり、特に限定されない。しかし、透過拡散型のスラットの割合を少なくしすぎる(比N1/Nを小さくしすぎる)と、スラットを起立させた状態において、室外に光が室内に入り込みにくくなり、室内が暗くなる虞がある。このため、比N1/Nは、0.1以上とすることが好ましい。比N1/Nは、0.2以上とすることがより好ましく、0.3以上とすることがさらに好ましい。
一方、透過拡散型のスラットの割合を多くしすぎる(比N1/Nを大きくしすぎる)と、ブラインドの仕様(透過拡散型のスラットの配置等)や設置箇所等によっては、室内にいる人が眩しさや熱を感じやすくなったり、室内にあるパソコンの画面等に映り込みが生じやすくなったりする虞がある。このため、比N1/Nは、0.9以下とすることが好ましい。比N1/Nは、0.8以下とすることがより好ましく、0.7以下とすることがさらに好ましい。
以上のように、本発明によって、スラットを起立させた状態においても、自然で柔らかな光を室内に導き入れることで、室内を雰囲気よく明るく保つことのできるブラインドを提供することが可能になる。また、その仕様によっては、室内にいる人に眩しさや熱を感じさせにくく、且つ、室内にあるパソコンの画面等に映り込みが生じにくくすることも可能なブラインドを提供することも可能になる。
本発明のブラインドの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第九実施態様までの9つの実施態様を例に挙げて本発明のブラインドを説明する。しかし、本発明のブラインドの技術的範囲は、これらの実施態様に限定されるものではなく、発明の趣旨を損なわない限り、適宜変更することができる。
また、後掲する各図(図1~12)においては、説明の便宜を考慮し、x軸、y軸及びz軸を示している。x軸、y軸及びz軸の向きは、異なる図であっても、互いに一致している。以下においては、x軸方向正側を「右」側、x軸方向負側を「左」側、y軸方向正側を「室外」側又は「後」側、y軸方向負側を「室内」側又は「前」側、z軸方向正側を「上」側、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがあるが、これは、各部の相対的な位置関係を表すためのものに過ぎず、各部の絶対的な位置関係を限定するものではない。
1.第一実施態様のブラインド
まず、第一実施態様のブラインドについて説明する。図1は、スラット30を起立させた状態にある第一実施態様のブラインドを示した斜視図である。図2は、スラット30を傾けた状態にある第一実施態様のブラインドを示した斜視図である。図3は、第一実施態様のブラインドにおいて、起立した状態にある反射拡散型のスラット30を、スラット30の長手方向(x軸方向)に垂直な平面で切断して示した拡大断面図である。図4は、第一実施態様のブラインドにおいて、傾いた状態にある反射拡散型のスラット30を、スラット30の長手方向(x軸方向)に垂直な平面で切断して示した拡大断面図である。
第一実施態様のブラインドを含め、本発明のブラインドは、建物等における採光用の開口部(窓等)に設置されるものとなっている。この種のブラインドは、通常、窓等の開口部の略全体を覆うことができる状態で、窓等における室内側に配置される。第一実施態様のブラインドは、図1に示すように、ブラインドの上側部分を構成するヘッドボックス10と、ブラインドの下側部分を構成するボトムレール20と、ヘッドボックス10とボトムレール20との間の領域に互いに略平行に配された複数本のスラット30と、ヘッドボックス10とボトムレール20とを連結する昇降コード40及びラダーコード50と、ヘッドボックス10から室内側に設けられた操作手段60とを備えたものとなっている。
ヘッドボックス10は、ブラインドを取り付ける開口部の上側部分(通常、窓の上桟)に固定され、ブラインドにおける他の部分を開口部の室内側に垂れ下がった状態に支持するとともに、ブランドを動作させるための各種のメカ機構(図示省略)を収容するための部分となっている。ボトムレール20は、ブラインドの下側部分を保護するとともに、ブラインドのウェイトとしても機能する部分となっている。スラット30は、その傾きを変化させることが可能な状態となっており、室外から室内に差し込む光を調節する機能を有する部分となっている。1台のブラインドにつき、スラット30を何本設けるかは、ブラインドの寸法や各スラット30の上下幅等によっても異なり、特に限定されない。しかし、腰窓に設置するブラインドの場合には、スラット30の本数は、通常、30~80本程度とされ、掃出窓に設置するブラインドの場合には、通常、50~150本程度とされる。この点、図1及び図2並びに後掲する図5~11のブラインドは、16本のスラット30で簡略化して描いている。
昇降コード40は、ヘッドボックス10に対してボトムレール20を昇降させる機能を有する部分となっている。昇降コード40は、その上端側をヘッドボックス10内に収容された、図示省略の滑車(昇降コード支持用滑車)に掛け回されて、操作手段60におけるチルトポール62の内部を挿通され、イコライザー64に固定されている。昇降コード40の下端部は、ボトムレール20に固定されている。昇降コード40における、ヘッドボックス10とボトムレール20との間に位置する部分は、各スラット30に設けられた貫通孔に挿通された状態となっている。このため、チルトポール62に対してイコライザー64を下側に引っ張ると、スラット30が上下に重なりながらボトムレール20が上昇してブラインドが上側に引き上げられるようになっている。上側に引き上げられたブラインドは、イコライザー64を僅かに引き下げて手を離すと下降するようになっている。
ラダーコード50は、前後一対の縦紐(上下方向に延びる紐)と、前後一対の縦紐間を結ぶ状態で前後方向に配された複数本の横紐とで構成された梯子状を為している。スラット30は、ラダーコード50における前後一対の縦紐間に配され、各スラット30の下面が、ラダーコード50におけるそれぞれの横紐に支持された状態となっている。ラダーコード50における前後一対の縦紐の上端側は、ヘッドボックス10内に収容された、図示省略のギア(ラダーコード支持用ギア)に取り付けられており、このラダーコード支持用ギアが一方に回転すると、前側の縦紐が下降して、後側の縦紐が上昇する動作を行う一方、このラダーコード支持用ギアが他方に回転すると、前側の縦紐が上昇して、後側の縦紐が下降する動作を行うようになっている。ラダーコード支持用ギアは、操作手段60におけるグリップ63を回転させると回転するようになっている。
このため、グリップ63を一方に回転させると、図1及び図3に示すように、スラット30が起立した閉状態(スラット30間の隙間が見えなくなる状態又は当該隙間が狭くなった状態)から、図2及び図4に示すように、スラット30が傾いた開状態(閉状態よりもスラット30間の隙間が広がった状態)となる一方、グリップ63を他方に回転させると、図2及び図4に示すように、スラット30が傾いた開状態から、図1及び図3に示すように、スラット30が起立した閉状態となるようになっている。すなわち、グリップ63を回転操作すると、スラット30が倒伏回動又は起立回動することで、スラット30間の隙間が変化し、当該隙間を通じて室外側から室内側に入り込む光量を調節することができるようになっている。また、グリップ63を回転操作すると、スラット30の倒伏角度が変化して、スラット30に当たった光の反射具合を調節することもできるようになっている。
操作手段60は、上記の昇降コード40及びラダーコード50を操作するものとなっている。第一実施態様のブラインドにおいて、操作手段60は、チルター61と、チルトポール62と、グリップ63と、イコライザー64とを備えたものとなっている。この操作手段60においては、既に述べたように、イコライザー64を操作するとブラインドの昇降動作が行われ、グリップ63を操作するとスラット30の開閉動作(開状態と閉状態とを切り替える動作)が行われる。第一実施態様のブラインドにおいて、操作手段60は、ブラインドの昇降操作とスラット30の開閉操作とをともに行うことができる、いわゆるワンポール式のものとなっている。しかし、操作手段60は、このワンポール式のものに限定されることなく、他の機構のものを採用することもできる。例えば、ブラインドの昇降操作は、ヘッドボックス10から垂下した昇降操作紐(図示省略)で行い、スラット30の開閉操作は、グリップ63の回転操作により行うといった構造(当該構造の場合、イコライザー64は不要となる。)も可能である。
第一実施態様のブラインドを含め、本発明のブラインドは、図1及び図2に示すように、スラット30として、反射拡散型のスラット31と、透過拡散型のスラット32とが混在するものとなっている。図1及び図2並びに後掲する図5~11においては、図示の便宜上、反射拡散型のスラット31を、目の細かい網掛けハッチングで示しており、透過拡散型のスラット32を、目の大きな網掛けハッチングで示している。第一実施態様のブラインドにおいては、ブラインドにおける下側の約半分の領域に反射拡散型のスラット31を配し、ブラインドにおける上側の約半分の領域に透過拡散型のスラット32を配している。
反射拡散型のスラット31は、それに入射した光を拡散しながら反射するものとなっており、透過拡散型のスラット32は、それに入射した光を拡散しながら透過するものとなっている。このため、反射拡散型のスラット31の光透過率は15%以下に抑えられる一方、透過拡散型のスラット32の光透過率は20~90%と、反射拡散型のスラット31におけるそれよりも高くなっている。反射拡散型のスラット31及び透過拡散型のスラット32はいずれも、合成樹脂製の帯板材によって形成されている。反射拡散型のスラット31及び透過拡散型のスラット32を、アルミニウム等の金属ではなく、合成樹脂によって形成することによって、反射拡散型のスラット31及び透過拡散型のスラット32を、熱が蓄熱しにくいものとすることが可能となっている。また、反射拡散型のスラット31や透過拡散型のスラット32を柔軟にして、それに手で触れても傷つきにくくすることも可能となっている。
このように、ブラインドのスラット30として、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とを混在させることで、図1に示すように、スラット30を閉状態とした場合であっても、透過拡散型のスラット32が設けられた領域(第一実施態様のブラインドでは上側領域)を通じて室外から室内に光を導き入れて、室内の奥側まで明るく照らすことが可能となっている。このとき、透過拡散型のスラット32を通じて室内に導き入れられた光は、透過拡散型のスラット32を透過する際に拡散するため、柔らかく自然な光へと変換されるようになっている。第一実施態様のブラインドでは、ブラインドの上側領域に透過拡散型のスラット32を配したため、室内における上部空間(通常、天井付近)が拡散光で照らされるようになり、室内を、恰も関節光で照らされているような良い雰囲気とすることができるようになっている。
一方、反射拡散型のスラット31は、図3に示すように、起立させた状態(閉状態)においては、室外からの光(日光等)の大部分を室外側へと反射し、室内側へは殆ど導き入れないようになっている。ただし、反射拡散型のスラット31は、光を反射するとはいっても、その光透過率が15%以下とある程度は光を透過することに加えて、隣り合う反射拡散型のスラット31の隙間からは、反射拡散型のスラット31で拡散反射された光が漏れ出てくるようになる。このため、スラット30を閉状態としても、反射拡散型のスラット31の室内側の面は、その広い範囲がぼんやりと明るく照らされた状態になるようになっている。ただし、反射拡散型のスラット31で反射又は透過される光は拡散光であることに加えて、その光量はかなり弱まった状態となっているため、眩しさや熱を感じるほどのものではない。第一実施態様のブラインドでは、ブラインドの下側領域に反射拡散型のスラット31を配したため、窓際の机上に設置されたパソコンの画面等への映り込みが抑えられるようになっている。
以上のように、第一実施態様のブラインドは、スラット30を起立状態(閉状態)としたときには、室内への直斜光を遮りながらも、眩しすぎず、且つ、パソコンの画面等に映り込み等を生じさせない快適な状態で室内の奥側まで明るく照らすことが可能なものとなっている。室内をより明るくしたい場合や、室内に直接光(直射日光)を導き入れたい場合には、図2に示すように、スラット30を傾いた状態(開状態)とし、隣り合うスラット30の隙間が広がった状態とするとよい。隣り合うスラット30の隙間の広さ、すなわち、スラット30の隙間を通じて室内に導き入れる光量は、スラット30の傾き角度φ(図4)を変化させることで調節することができる。
反射拡散型のスラット31の光透過率は、上記のように、15%以下(光反射率で言うと85%以上)であれば、特に限定されない。しかし、反射拡散型のスラット31が配される領域の眩しさや熱をより抑え、室内にあるパソコンの画面等の映り込みをより確実に抑えるためには、反射拡散型のスラット31の光透過率は、10%以下(光反射率で言うと90%以上)とすることが好ましい。反射拡散型のスラット31の光透過率は、9%以下(光反射率で言うと91%以上)とすることがより好ましく、8%以下(光反射率で言うと92%以上)とすることがさらに好ましい。
また、透過拡散型のスラット32の光透過率は、上記のように、20~90%であれば、特に限定されない。しかし、透過拡散型のスラット32が配される領域の明るさを確保するためには、透過拡散型のスラット32の光透過率は、30%以上とすることが好ましい。透過拡散型のスラット32の光透過率は、40%以上とすることがより好ましく、50%以上とすることがさらに好ましく、60%以上とすることが特に好ましい。一方、透過拡散型のスラット32の光透過率を高くしすぎると、透過拡散型のスラット32が配される領域が眩しくなりすぎる虞がある。このため、透過拡散型のスラット32の光透過率は、85%以下とすることが好ましい。透過拡散型のスラット32の光透過率は、80%以下とすることがより好ましい。第一実施態様のブラインドにおいて、透過拡散型のスラット32の光透過率は70%としている。
既に述べたように、スラット30は、反射拡散型のものも透過拡散型のものも、合成樹脂からなる帯板材によって形成される。スラット30を形成する合成樹脂としては、ポリカーボネート(PC)や、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリスチレン(PS)や、アクリロニトリルーブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の透光樹脂(透明樹脂)が好適である。これらの透光樹脂に顔料を練り込むことにより、スラット30の光透過率を所望の値に設定することができる。すなわち、光透過率が15%以下と低めの反射拡散型のスラット31においては、顔料の配合量を増やし、光透過率が20~90%と高めの透過拡散型のスラット32においては、顔料の配合量を減らすとよい。
この場合、スラット30を形成する透光樹脂に練り込む顔料は、その種類を特に限定されるものではないが、酸化チタン(TiO2)とすることが好ましい。酸化チタンは、高い遮光性を有することに加えて、触媒としての活性が低く、また熱安定性にも優れるだけでなく、それ自体で白色を有するため、他の顔料等を使用しなくても、スラット30を清潔感のある白色に着色することができる。第一実施態様のブラインドにおいては、ポリカーボネートに酸化チタンを練り込んで帯板状に成形することによって、スラット30を形成している。
スラット30の厚さ(板厚)は、特に限定されないが、薄くしすぎると、スラット30の強度を保つことが難しくなるだけでなく、透光樹脂に顔料を配合することによってはスラット30の光透過率を所望の値に設定しにくくなる虞もある。このため、スラット30の厚さは、通常、100μm以上とされる。スラット30の厚さは、150μm以上とすることが好ましく、200μm以上とすることがより好ましく、250μm以上とすることがさらに好ましい。しかし、その一方で、スラット30を厚くしすぎると、スラット30の重量が大きくなるだけでなく、スラット30の原料(透光樹脂のシート)をロール状に巻装しにくくなって歩留まりが低下する等の不具合が生じやすくなる。このため、スラット30の厚さは、通常、500μm以下とされる。スラット30の厚さは、400μm以下とすることが好ましく、350μm以下とすることがより好ましく、300μm以下とすることがさらに好ましい。
反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32は、反射しながら拡散するか、透過しながら拡散するかの違いはあるものの、光を拡散する機能を有する点においては共通している。この点、反射拡散型のスラット31や透過拡散型のスラット32にどのように拡散機能を付与するかについては、特に限定されないが、既に述べたように、それを形成する合成樹脂に光拡散材(光拡散ビーズ等)を練り込むか、その表面に光拡散用の凹凸を形成することによって得ることができる。第一実施態様のブラインドにおいては、反射拡散型のスラット31及び透過拡散型のスラット32のいずれも、エンボス加工によりその表面に多数の微細な凹凸(拡散用の凹凸)を形成したものとなっている。
反射拡散型のスラット31は、図3及び図4に示すように、平板状の第一部分31aと、第一部分31aに対して傾斜して設けられた平板状の第二部分31bとで構成されており、その長手方向(x軸方向)に垂直な断面形状が「V」字状を為している。これにより、図4に示すように、スラット30を傾けた開状態において、反射拡散型のスラット31を通じて室外から室内に導き入れられる光が、反射拡散型のスラット31で反射を複数回繰り返す(拡散を複数回繰り返す)ようになる。図4を見ると、例えば、下側に配された反射拡散型のスラット31における点P1で拡散反射された光が、上側に配された反射拡散型のスラット31における点Q1,Q2,Q3等でさらに拡散反射されることが分かる。したがって、反射拡散型のスラット31が配された領域であっても、スラット30を開状態とすれば、より均一に拡散された自然で柔らかな状態の光を、ある程度の光量で室内に導き入れることが可能になる。
反射拡散型のスラット31の開き角度θ(図3及び図4)は、既に述べたように、180°よりも小さければ特に限定されず、好ましくは、100~175°とされ、より好ましくは、130~170°とされ、さらに好ましくは、150~165°とされる。第一実施態様のブラインドにおいて、反射拡散型のスラット31の開き角度θは、160°としている。
反射拡散型のスラット31における第一部分31aの幅Wa(図4)や第二部分31bの幅Wb(図4)は、特に限定されず、異なる値としてもよい。しかし、幅Waと幅Wbとを大きくことなる値とすると、図4に示したような多重の拡散反射が生ずる部分が少なくなる。このため、幅Waに対する幅Wbの比Wb/Waは、0.25~4の範囲とすることが好ましく、0.5~2の範囲とすることがより好ましく、0.67~1.5の範囲とすることがさらに好ましい。第一実施態様のブランドにおいて、幅Waと幅Wbは、略等しく設定しており、比Wb/Waが約1となるようにしている。幅Wa及び幅Wbはそれぞれ、通常、5~30mmとされ、好ましくは、10~20mmとされる。
また、第一実施態様のブラインドにおいては、反射拡散型のスラット31だけでなく、透過拡散型のスラット32も、平板状の第一部分(図示省略)と、第一部分に対して傾斜して設けられた第二部分(図示省略)とで構成しており、その長手方向(x軸方向)に垂直な断面形状が「V」字状を為すようにしている。というのも、透過拡散型のスラット32は、反射拡散型のスラット31よりも光反射率は低いものの、それでもある程度は光を拡散反射する。この点、透過拡散型のスラット32においても、その断面形状を「V」字状とすれば、図4で示したのと同様の多重の拡散反射が生ずるようにすることができる。また、透過拡散型のスラット32は、それに入射した光を拡散しながら透過するものとなっているところ、この透過拡散型のスラット32の断面形状を「V」字状とすることにより、透過拡散型のスラット32を透過して室内側に入射する光がより様々な方向へ出射するようになる。したがって、スラット30を傾けた開状態において、透過拡散型のスラット32が配された領域を通じて室内に導き入れられる光も、より均一に拡散された自然で柔らかな状態とすることができる。
透過拡散型のスラット32の断面形状における「V」字の開き角度(以下において、「開き角度θ’」と表記する。)は、上述した拡散反射型のスラット31の開き角度θと同様の範囲に設定することができる。透過拡散型のスラット32の開き角度θ’は、拡散反射型のスラット31の開き角度θと異なる値に設定することもできるが、第一実施態様のブラインドにおいては、開き角度θと同じ160°に設定している。また、透過拡散型のスラット32における第一部分の幅(以下において、「幅Wa’」と表記する。)や第二部分の幅(以下において、「幅Wb’」と表記する。)は、それぞれ、反射拡散型のスラット31における第一部分31aの幅Waや第二部分31bの幅Wbと同じ範囲に設定することができる。透過拡散型のスラット32における第一部分の幅Wa’や第二部分の幅Wb’は、それぞれ、反射拡散型のスラット31における第一部分31aの幅Waや第二部分31bの幅Wbと異なる値に設定することもできるが、第一実施態様のブラインドにおいては、幅Wa及び幅Wbと同じ値に設定している。
以上で述べた第一実施態様のブラインドは、スラット30を傾けた開状態だけでなく、スラット30を起立させた閉状態においても、自然で柔らかな光を室内に導き入れることで、室内を雰囲気よく明るく保つことのできるものとなっている。加えて、室内にいる人に眩しさや熱を感じさせにくく、且つ、室内にあるパソコンの画面等に映り込みが生じにくくすることも可能なものとなっている。
2.他の実施態様のブラインド
第一実施態様のブラインドは、図1に示すように、その上側の略半分の領域に透過拡散型のスラット32を配し、その下側の略半分の領域に反射拡散型のスラット31を配していたが、透過拡散型のスラット31と反射拡散型のスラット32の配置は、これに限定されない。透過拡散型のスラット31と反射拡散型のスラット32の配置は、ブラインドの設置箇所等に応じて適宜変更することが可能である。以下、この点について説明する。
図5は、スラット30を起立させた状態にある第二実施態様のブラインドを示した斜視図である。第二実施態様のブラインドは、図5に示すように、その上側の略半分の領域に反射拡散型のスラット31を配し、その下側の略半分の領域に透過拡散型のスラット32を配している。すなわち、第二実施態様のブラインドは、反射拡散型のスラット31及び透過拡散型のスラット32の配置が、第一実施態様のブラインドとは逆になっている。これにより、スラット30を起立した閉状態であっても、下側領域の明るいブラインドを提供することが可能になる。
図6は、スラット30を起立させた状態にある第三実施態様のブラインドを示した斜視図である。図7は、スラット30を起立させた状態にある第四実施態様のブラインドを示した斜視図である。上述した第一実施態様や第二実施態様のブラインドでは、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とによって、ブラインドが2つの領域に分かれていたが、第三実施態様や第四実施態様のブラインドでは、図6及び図7に示すように、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とによって、ブラインドが3つの領域に分かれている。
すなわち、第三実施態様のブラインドは、図6に示すように、上側の略4分の1の領域と下側の略4分の1の領域に透過拡散型のスラット32が配され、中央の略2分の1の領域に反射拡散型のスラット31が配されている。一方、第四実施態様のブラインドは、図7に示すように、上側の略4分の1の領域と下側の略4分の1の領域に反射拡散型のスラット31が配され、中央の略2分の1の領域に透過拡散型のスラット32が配されている。このように、ブラインドは、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とによって、3つ以上の領域に分けることも可能である。
図8は、スラット30を起立させた状態にある第五実施態様のブラインドを示した斜視図である。上述した第一実施態様から第四実施態様までのブラインドではいずれも、1つの反射拡散領域が、複数本の反射拡散型のスラット31で構成され、1つの透過拡散領域が、複数本の透過拡散型のスラット32で構成されていたが、第五実施態様のブラインドでは、図8に示すように、1つの反射拡散領域が、1本の反射拡散型のスラット31で構成され、1つの透過拡散領域が、1本の透過拡散型のスラット32で構成されている。換言すると、第五実施態様のブラインドでは、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とが1本ずつ交互に配されている。このような配置も可能である。
ただし、第五実施態様のブラインドのように、反射拡散領域を1本の反射拡散型のスラット31で構成すると、反射拡散型のスラット31が上下に連続して配置されなくなるため、反射拡散領域において、図4で示したような多重の拡散反射を生じさせにくくなる。このため、1つの反射拡散領域は、図9に示すように、少なくとも2本の反射拡散型のスラット31で構成することが好ましい。図9は、スラット30を起立させた状態にある第六実施態様のブラインドを示した斜視図である。第六実施態様のブラインドは、図9に示すように、1つの反射拡散領域が、2本の反射拡散型のスラット31で構成され、1つの透過拡散領域が、2本の透過拡散型のスラット32で構成されている。換言すると、第六実施態様のブラインドでは、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とが2本ずつ交互に配されている。
図10は、スラット30を起立させた状態にある第七実施態様のブラインドを示した斜視図である。上述した第一実施態様から第六実施態様までのブラインドでは、いずれも、反射拡散型のスラット31の本数と、透過拡散型のスラット32の本数とが同一となっていたが、第七実施態様のブラインドでは、図10に示すように、2本の反射拡散型のスラット31と1本の透過拡散型のスラット32とからなる組みを繰り返し配しており、反射拡散型のスラット31の本数と、透過拡散型のスラット32の本数とが異なっている。このように、反射拡散型のスラット31の本数と、透過拡散型のスラット32の本数とは異ならせることも可能である。
図11は、スラット30を起立させた状態にある第八実施態様のブラインドを示した斜視図である。上述した第一実施態様から第七実施態様までのブラインドでは、いずれも、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とが周期的に規則正しく配されていたが、第八実施態様のブラインドでは、図11に示すように、各領域を構成するスラット30の本数が、ブラインドの上側から下側になるにつれて徐々に少なくなっており、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とが周期的には配されていない。このように、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32は、非周期的に配することも可能である。ただし、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とを完全に不規則に配置した方がよい設置箇所等はなかなか想定できない。このため、反射拡散型のスラット31と透過拡散型のスラット32とを非周期的に配する場合でも、各領域を構成するスラット30の本数が、ブラインドの上側から下側になるにつれて徐々に少なくなるか、逆に、ブラインドの上側から下側になるにつれて徐々に多くなるといった具合に、グラデーション配置することが好ましい。