以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、当該図面では、車両前方及び車両後方をそれぞれ矢印X1及び矢印X2で示し、車両外方及び車両内方をそれぞれ矢印Y1及び矢印Y2で示し、車両上方及び車両下方をそれぞれ矢印Z1及び矢印Z2で示している。車両ドアに組み付けられる前の状態のドアロック装置に対して、また車両ドアに組み付けられた後の状態のドアロック装置に対して、これらの方向を適用することができる。
図1は、本実施形態に係るドアロック装置1を車両前方X1側から見た斜視図であり、図2はドアロック装置1を車両後方X2側から見た斜視図である。また、図3Aは、ドアロック装置1の平面図(上面図)、図3Bは、車両内方Y2側から見たドアロック装置1の側面図、図3Cは、ドアロック装置1の正面図(前面図)である。これらの図に示すドアロック装置1は、車両ドア内に配設される。また、これらの図に示すように、ドアロック装置1は、ハウジング2と、ラッチ機構3と、防水プロテクタ6とを備える。
ハウジング2は、ドアロック装置1の作動部品を収容する樹脂製の筐体である。このハウジング2は、図3A及び図3Cによく示すように、第一ハウジング部21と第二ハウジング部22とを有する。第一ハウジング部21は、ハウジング2の主に車両外方Y1側を向く面を構成し、第二ハウジング部22は、ハウジング2の主に車両内方Y2側を向く面を構成する。そして、第一ハウジング部21の車両内方Y2側を向いた端面と第二ハウジング部22の車両外方Y1側を向いた端面が突き合わされた状態で、両者が係合されることにより、筐体状のハウジング2が構成される。こうして構成されたハウジング2は、上から見た場合に図3Aに示すように略L字状に形成される。
略L字状に形成されたハウジング2の内部には、収容空間が形成される。この収容空間は、図3Aに示すL字状のハウジング2のうち車両前後方向X1,X2に延びた部分を構成する第一収容部2A内の空間と、第一収容部2Aの車両後方部分に接続され車両内外方向Y1,Y2に延びた部分を構成する第二収容部2B内の空間とを有する。従って、第二収容部2Bは、ハウジング2の車両後方X2側に形成され、第二収容部2Bよりも車両前方X1側に第一収容部2Aが形成される。第一収容部2A内の収容空間には、主にロック機構が配設される。第二収容部2B内の収容空間には、主にラッチ機構が配設される。また、第二収容部2Bの車両後方X2側に、車両ドアを構成するドアパネルの後端壁Pが位置する。つまり、ハウジング2の第二収容部2Bの車両後方端が、車両ドアの後端壁Pに対面する。また、車両ドアの後端壁Pに対面した第二収容部2Bの車両後方端、及び第二収容部2Bの車両内方Y2側の側方端は、車体に取り付けられたストライカを受け入れるために開口している。なお、第一収容部2A及び第二収容部2Bは、それぞれ、第一ハウジング部21と第二ハウジング部22とにより構成される。
図4は、第二収容部2B内に配設されたラッチ機構3が示された、ドアロック装置1の背面図(後面図)である。図4に示すように、ラッチ機構3は、ラッチ支持軸31と、ラッチ32と、ポール支持軸33と、ポール34と、樹脂ボディ35と、クローザ機構4とを有する。
ラッチ支持軸31は、金属により構成され、その軸線が車両前後方向X1,X2に平行であるように第二収容部2Bに配設される。このラッチ支持軸31の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能にラッチ32が取り付けられる。つまり、ラッチ32は、ラッチ支持軸31の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能にラッチ支持軸31に支持される回転部材である。
ラッチ32は、基部321と、ハーフラッチ爪部322と、フルラッチ爪部323と、従動突部324とを有する。基部321は、ラッチ32のうちラッチ支持軸31の外周回りに回転可能に支持される部分を構成する。ハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323は、基部321から、ラッチ32の回転軸心に直交する面内にてほぼ同じ方向に向かって二股に延設した部分である。図4においては、ハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323は、基部321から下方に延設している。ハーフラッチ爪部322とフルラッチ爪部323は、所定の間隔を開けてそれぞれ延設されているので、両爪部(322,323)間には、ラッチ32の径外方に向けて開口した凹部325が形成される。言い換えれば、ハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323は、凹部325を挟んでラッチ32の径外方に延びるように構成される。また、ハーフラッチ爪部322は、フルラッチ爪部323から見た場合、凹部325を挟んで図4において反時計回り方向に位置する。従動突部324は、基部321のうちハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323が接続された部分とは反対側の部分から、これらの爪部の延設方向とは反対の方向に延設した突起状の部分である。図4においては、従動突部324は、基部321から上方に延設している。
また、ラッチ32には、図示しないラッチリターンスプリングが取り付けられる。ラッチリターンスプリングにより、ラッチ32が図4においてラッチ支持軸31を中心として時計回り方向に回転付勢される。従って、ラッチ32が外力を受けていないとき、ラッチ32はラッチリターンスプリングにより時計回り方向に回転するが、その回転は、ラッチ32が第二収容部2B内に設けられたラッチストッパ326に当接することにより規制される。ラッチストッパ326により規制されるラッチ32の回転位置が、ラッチ初期位置として定義される。
樹脂ボディ35は、第二収容部2B内にてラッチ32よりも車両前方X1側(図4の奥側)に配設される樹脂部材であり、ラッチストッパ326がこの樹脂ボディ35に形成される。また、樹脂ボディ35には、車両内方Y2に開口するとともに開口端から車両外方Y1に延びるストライカ挿通溝351が形成される。車両ドアが閉じられるとき、車体に設けられたストライカは、ストライカ挿通溝351を挿通する。また、図4からわかるように、ラッチ32に形成された凹部325は、車両前後方向X1,X2から見た場合にストライカ挿通溝351に一致する位置に設けられており、且つ、ラッチ32の回転位置がラッチ初期位置であるときには凹部325の開口面が車両内方Y2を向いている。従って、車両ドアが閉じられて車体に設けられたストライカがストライカ挿通溝351を車両外方Y1に向かって移動した場合、ストライカは、ラッチ初期位置に位置するラッチ32に形成された凹部325に受け入れられる。凹部325に受け入れられたストライカがさらに車両外方Y1に移動すると、それに伴って凹部325も車両外方Y1に移動され、この凹部325の移動によって、ラッチ32が、ラッチ初期位置からラッチリターンスプリングの付勢力に抗して図4の反時計回り方向に回転する。
ポール支持軸33は、金属により構成され、ラッチ支持軸31の下方であって且つラッチ支持軸31よりも車両内方Y2側の位置に設けられる。ポール支持軸33は、ラッチ支持軸31と同様に、その軸線が車両前後方向X1,X2に平行であるように第二収容部2Bに配設される。このポール支持軸33の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能にポール34が取り付けられる。つまり、ポール34は、ポール支持軸33の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能にポール支持軸33に支持される回転部材である。
ポール34は、基部341と、延設部342と、係合突部343を有する。基部341は、ポール34のうちポール支持軸33の外周回りに回転可能に支持される部分を構成する。延設部342は、基部341から、ポール34の回転軸心に直交する面内にて、ラッチ32の下方に向かって延設される。この延設部342の図4において上側面から上方に突出するように、係合突部343が設けられる。係合突部343は、ラッチ32のハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323に係合可能な位置に形成される。
また、ポール34には、図示しないポールリターンスプリングが取り付けられる。ポールリターンスプリングにより、ポール34が図4においてポール支持軸33を中心として反時計回り方向に回転付勢される。従って、ポール34はポールリターンスプリングの付勢力によって図4の反時計回り方向に回転するが、その回転は図示しないポールストッパにより規制される。ポールストッパにより規制されるポール34の回転位置が、ポール初期位置として定義される。
車両ドアが閉じられるときに、上述したようにストライカがラッチ32の凹部325に進入するとともに、ラッチ32が図4の反時計回り方向に回転する。そして、ストライカの移動が停止してそれに伴いラッチ32の回転が停止すると、ラッチ32はラッチリターンスプリングの付勢力により図4の時計回り方向に回転しようとする。このときポール34の係合突部343がラッチ32のハーフラッチ爪部322及びフルラッチ爪部323のいずれかに係合することにより、ラッチ32の時計回り方向への回転が規制される。これにより、ストライカがラッチ32に形成された凹部325から離脱できずにラッチ32に保持される。このようにして、車両ドアの閉鎖状態が維持される。ここで、係合突部343がハーフラッチ爪部322に係合している場合、車両ドアが半ドア状態のまま、ストライカがラッチ32に保持される。ハーフラッチ爪部322にポール34が係止されるラッチ32の回転位置が、ハーフラッチ位置として定義される。一方、係合突部343がフルラッチ爪部323に係合している場合、車両ドアが全閉にされた状態で、ストライカがラッチ32に保持される。フルラッチ爪部323にポール34が係止されるラッチ32の回転位置が、フルラッチ位置として定義される。
クローザ機構4は、レバー支持軸41と、動作レバー42と、ケーブル43と、図示しないアクチュエータとを有する。レバー支持軸41は、金属により構成され、図4に示すようにラッチ支持軸31の上側に設けられる。レバー支持軸41は、ラッチ支持軸31及びポール支持軸33と同様に、その軸線が車両前後方向X1,X2に平行であるように第二収容部2Bに配設される。このレバー支持軸41の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能に動作レバー42が取り付けられる。つまり、動作レバー42は、レバー支持軸41の軸回り(車両前後方向軸回り)に回転可能にレバー支持軸41に支持される回転部材である。
また、動作レバー42には、図示しないレバーリターンスプリングが取り付けられる。レバーリターンスプリングにより、動作レバー42が図4においてレバー支持軸41を中心として反時計回り方向に回転付勢される。従って、動作レバー42はレバーリターンスプリングの付勢力によって図4の反時計回り方向に回転するが、その回転は、第二収容部2Bに設けられているレバーストッパ44により規制される。レバーストッパ44により規制される動作レバー42の回転位置が、レバー初期位置として定義される。図4には、レバー初期位置にある動作レバー42が示される。
また、動作レバー42は、本実施形態では、主プレート421と一対のガイドプレート422とにより構成される。主プレート421は、レバー支持軸41の外周回りに回転可能に支持される。この主プレート421の一方面(前方面)及び他方面(後方面)に、一対のガイドプレート422が配設される(図6参照)。一対のガイドプレート422は、その複数個所にてピン部材45により主プレート421に固定される。これにより、主プレート421と一対のガイドプレート422が一体的に動作する。
動作レバー42の一対のガイドプレート422に、係合凹部422aが形成される。この係合凹部422a内に、ケーブル43の先端に取り付けられた球継手部材46が挿入される。球継手部材46は、係合凹部422aの壁面に係合する。このため、ケーブル43が、その先端に設けられる球継手部材46を介して、ガイドプレート422に係合する。また、ケーブル43は、その先端に設けられる球継手部材46から、円弧状に形成された主プレート421の外周面に沿って巻き掛けられるように延設される。そして、ケーブル43の基端に図示しないアクチュエータが接続される。アクチュエータは、作動することによってケーブル43の基端部を牽引する。これにより、球継手部材46に係合したガイドプレート422及びガイドプレート422に接続された主プレート421を有する動作レバー42が、レバーリターンスプリングの付勢力に抗して、図4の時計回り方向に回転駆動される。
また、動作レバー42の主プレート421の下方部分に、駆動突部421aが形成される。この駆動突部421aは、動作レバー42の回転位置がレバー初期位置であり且つラッチ32の回転位置がハーフラッチ位置であるときに、ラッチ32に設けられている従動突部324に車両外方Y1側から対面する。従って、車両ドアが半ドア状態であるときにクローザ機構4のアクチュエータが作動して、動作レバー42が初期位置から時計回り方向に回転駆動すると、駆動突部421aが車両内方Y2側に移動して従動突部324に係合する。そして、その状態でさらに動作レバー42が時計回り方向に回転駆動することにより、駆動突部421aと従動突部324との係合状態が維持されたまま、従動突部324が駆動突部421aとともに車両内方Y2側に移動する。従動突部324の車両内方Y2側への移動によって、ラッチ32が反時計回り方向に回転する。これによりラッチ32のフルラッチ爪部323がポール34の係合突部343に係合するフルラッチ位置までラッチ32が回転し、フルラッチ位置にてラッチ32の回転が停止する。ストライカを保持したラッチ32がフルラッチ位置にあるとき、車両ドアが全閉状態にされるとともに、ラッチ32のフルラッチ爪部323にポール34の係合突部343が係合して、車両ドアの閉鎖状態が維持される。図4には、ラッチ32の回転位置がフルラッチ位置であり、且つ、ポール34の回転位置が、フルラッチ爪部323に係合した回転位置である状態が、示される。
また、ポール34には、ポール34とともにポール支持軸33回りを一体回転するリフトレバーが取り付けられている。このリフトレバーは、図示しないオープンリンクに連係している。オープンリンクは、車両ドアに設けられているアウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの操作に連動して動作するように構成されている。従って、アウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの操作によりオープンリンクが動作すると、リフトレバーが回転し、それに伴いポール34がポールリターンスプリングの付勢力に抗して図4において時計回り方向に回転する。ここで、ストライカを保持したフルラッチ位置のラッチ32にポール34が係合しているときに、アウトサイドハンドル又はインサイドハンドルが操作された場合、ポール34が図4に示す状態から時計回り方向に回転して、ポール34に設けられた係合突部343とフルラッチ爪部323との係合が解除される。これによりポール34によるラッチ32の回転規制が解除され、ラッチ32はラッチリターンスプリングの付勢力に従って図4の時計回り方向に回転する。このためラッチ32に形成された凹部325の開口面が車両内方Y2側に向き、ストライカは凹部325から離脱してストライカ挿通溝351内を車両内方Y2側に移動することができる。こうしてストライカが車両内方Y2側に移動してストライカ挿通溝351から離脱することにより、車両ドアを開けることができる。また、車両ドアが開放した後にアウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの操作が終了し、アウトサイドハンドル又はインサイドハンドルが原位置に復帰した場合、ポール34がポールリターンスプリングの付勢力によって図4の反時計回り方向に回転してポール34はポール初期位置に復帰する。
また、ハウジング2の第一収容部2Aに主に配設されたロック機構は、上記したオープンリンクの動作方向を、ロック方向又はアンロック方向に設定する。オープンリンクの動作方向がアンロック方向に設定された場合、オープンリンクの動作に連動してポール34が時計回り方向に回転する。このため上記したアウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの操作によりポール34を回転させて、フルラッチ位置のラッチ32の回転規制を解除することにより、車両ドアを開けることができる。一方、オープンリンクの動作方向がロック方向に設定された場合、オープンリンクの動作がポールに伝達されない。このため、インサイドハンドル又はアウトサイドハンドルを操作しても、ポールによるラッチの規制は解除されず、車両ドアを開けることができない。なお、ロック機構の具体的な構成についての説明は省略するが、例えば特開2011-220094号公報に開示のロック機構の構成が、参照される。
また、ハウジング2の第二収容部2Bには、図4においては図示していないベースプレート及びサブベースプレートが配設される。すなわち、ドアロック装置1は、ハウジング2内(第二収容部2B内)に配設されたベースプレート及びサブベースプレートを備える。ベースプレートは、第二収容部2Bの車両後端側及び車内側の開口部分を覆うように、第二収容部2Bに設けられる。このベースプレートは、剛性の高い金属により構成され、上記した各回転部材の各支持軸、具体的には、ラッチ支持軸31、ポール支持軸33、レバー支持軸41の一方端である車両後方端を固定する。すなわち、ベースプレートは、ラッチ機構3を支持する金属製のプレート部材である。なお、サブベースプレートも、ラッチ機構3を支持する金属製のプレート部材である。
図5は、ベースプレート5が示されたドアロック装置1の背面図(後面図)である。図5に示すように、ベースプレート5は、第一プレート部51と第二プレート部52を有する。第一プレート部51は、第二収容部2Bの車両後端側の開口を覆うように第二収容部2B内に配設される。第二プレート部52は、第一プレート部51の車両内方Y2側の端部から車両前方X1側に延設されて、第二収容部2Bの車両内方Y2側の開口を覆うように第二収容部2B内に配設される。
ベースプレート5の第一プレート部51には、第一円孔51a、第二円孔51b、第三円孔51cが、形成される。これらの円孔は、ベースプレート5を車両前後方向X1,X2に貫通する貫通孔である。また、第一円孔51aの中心位置は、第二収容部2B内に配設されているラッチ支持軸31の軸心位置に一致し、第二円孔51bの中心位置は、第二収容部2B内に配設されているポール支持軸33の軸心位置に一致し、第三円孔51cの中心位置は、第二収容部2B内に配設されているレバー支持軸41の軸心位置に一致する。
第一円孔51aには、ラッチ支持軸31の車両後方端が挿入される。第一円孔51aを挿通して第一プレート部51から車両後方側に突き出たラッチ支持軸31の車両後方端面31aは、第一プレート部51に車両後方側から加締められる。これにより、ラッチ支持軸31の車両後方端がベースプレート5に固定される。
第二円孔51bには、ポール支持軸33の車両後方端が挿入される。第二円孔51bを挿通して第一プレート部51から車両後方側に突き出たポール支持軸33の車両後方端面33aは、第一プレート部51に車両後方側から加締められる。これにより、ポール支持軸33の車両後方端がベースプレート5に固定される。
第三円孔51cには、レバー支持軸41の車両後方端が挿入される。第三円孔51cを挿通して第一プレート部51から車両後方側に突き出たレバー支持軸41の車両後方端面41aは、第一プレート部51に車両後方側から加締められる。これにより、レバー支持軸41の車両後方端がベースプレート5に固定される。
また、ベースプレート5には、車体に取り付けられたストライカが樹脂ボディ35のストライカ挿通溝351に進入することができるように、ストライカ挿通溝351に対応する位置に、スリット53が形成される。スリット53は、ベースプレート5の第一プレート部51及び第二プレート部52を跨ぐように形成されている。
図6は、図5のVI-VI断面図である。図6は、上記した各支持軸(ラッチ支持軸31、ポール支持軸33、レバー支持軸41)を通るように切断したドアロック装置1の第二収容部2B及びその内部の配設部材の断面を示している。図6に示すように、ベースプレート5の第一プレート部51は、ハウジング2(第二収容部2B)の車両後方端の開口を覆うように、ハウジング2(第二収容部2B)内に配設される。この第一プレート部51よりも車両後方端側に、車両ドアのドアパネルの後端壁Pが対面配置する。そして、第一プレート部51は、対面配置した後端壁Pに、ネジT,Tによって、固定される。また、上記したように、各支持軸(31,33,41)の車両後方端が、ベースプレート5の第一プレート部51に形成された各円孔(51a,51b,51c)に固定される。
また、第二収容部2B内には、第一プレート部51に所定距離離間して対面するようにサブベースプレート9が配設される。サブベースプレート9は、第一プレート部51よりも車両前方X1側に配置する。サブベースプレート9は、ベースプレート5と同様に、剛性の高い金属により構成される。このサブベースプレート9にも、ベースプレート5の第一プレート部51と同様に、第一円孔91、第二円孔92、第三円孔93、が形成される。これらの円孔は、サブベースプレート9を車両前後方向X1,X2に貫通する貫通孔である。第一円孔91の中心位置は、ラッチ支持軸31の軸心位置に一致し、第二円孔92の中心位置は、ポール支持軸33の軸心位置に一致し、第三円孔93の中心位置は、レバー支持軸41の軸心位置に一致する。
サブベースプレート9のうち第一円孔91の周囲部分に、ラッチ支持軸31の車両前方端面が車両後方X2側から当接する。また、ラッチ支持軸31の車両前方端面に、ネジ37が設けられる。ネジ37のヘッド部には、径外方に拡径したフランジ371が形成される。そして、フランジ371がサブベースプレート9に車両前方X1側から対面接触した状態でネジ37が第一円孔91を通過してラッチ支持軸31の車両前方端面にねじ込まれる。これにより、サブベースプレート9のうち第一円孔91の周囲部分がフランジ371とラッチ支持軸31の車両前方端との間に挟み込まれて締め付けられる。このようにして、ラッチ支持軸31の車両前方端がサブベースプレート9に固定される。
第二円孔92には、ポール支持軸33の車両前方端が挿入される。第二円孔92を挿通してサブベースプレート9の車両前方X1側に突き出たポール支持軸33の車両前方端面33bは、サブベースプレート9に車両前方側から加締められる。これにより、ポール支持軸33の車両前方端がサブベースプレート9に固定される。
第三円孔93には、レバー支持軸41の車両前方端が挿入される。第三円孔93を挿通してサブベースプレート9の車両前方X1側に突き出たレバー支持軸41の車両前方端面41bは、サブベースプレート9に車両前方X1側から加締められる。これにより、レバー支持軸41の車両前方端がサブベースプレート9に固定される。
また、図4に示すように、ハウジング2は、第一ハウジング部21の車両内方Y2側を向いた端面と第二ハウジング部22の車両外方Y1を向いた端面が突き合わされた状態で、両者が係合されることにより、筐体状に構成される。両ハウジング部(21,22)の突き合わせ端面は、少なくともハウジング2の車両前方面及び車両上方面に形成される。車両前方面の突き合わせ端面は、車両上下方向Z1,Z2に沿って形成される。また、車両上方面の突き合わせ端面は、車両前後方向X1,X2に沿って形成され、車両後方端にまで延びている。図4には、ハウジング2(第二収容部2B)の車両上方面に車両前後方向X1,X2に沿って形成されて車両後方端まで延設した突き合わせ端面Sが示される。
ハウジング2に形成された突き合わせ端面間からハウジング2内への雨水等の浸入が懸念される。特に、ハウジング2の車両前方面及び車両上方面に形成された突き合わせ端面間からハウジング2内への雨水等の浸入が懸念される。このような水の浸入を防止するために、本実施形態に係るドアロック装置1は、図1に示すように防水プロテクタ6を備える。防水プロテクタ6はハウジング2の表面に設けられる。また、防水プロテクタ6は、前方カバー部61、上方カバー部62、後方カバー部63、及び、接続部64を有する。前方カバー部61、上方カバー部62、後方カバー部63、及び接続部64は、一体的に形成される。
前方カバー部61は、ハウジング2の第一収容部2Aの車両前方面に車両上下方向Z1,Z2に沿って形成された突き合わせ端面を覆うように、車両上下方向Z1,Z2に沿ってハウジング2の表面に設けられる。前方カバー部61により、ハウジング2の第一収容部2Aの車両前方面に形成される突き合わせ端面間からハウジング2内への水の浸入を防ぐことができる。
上方カバー部62は、前方カバー部61の車両上方端に接続される。上方カバー部62は、第一収容部2Aの車両上方面に車両前後方向X1,X2に沿って形成された突き合わせ端面を覆うように、車両前後方向X1,X2に沿ってハウジング2の表面に設けられる。上方カバー部62により、ハウジング2の第一収容部2Aの車両上方面に形成される突き合わせ端面間からハウジング2内への水の浸入を防ぐことができる。
後方カバー部63は、上方カバー部62の車両後方端に接続される。後方カバー部63は、第二収容部2Bの車両上方面に車両前後方向X1,X2に沿って形成された突き合わせ端面を覆うように、上方カバー部62の車両後方端からさらに車両後方X2側に向けて延設される。後方カバー部63により、ハウジング2の第二収容部2Bの車両上方面に形成される突き合わせ端面間からハウジング2内への水の浸入を防ぐことができる。また、後方カバー部63は、第二収容部2Bの車両上方部分の全体を覆うように形成されていて、第二収容部2Bの車両後方端まで延びている。
接続部64は、図1及び図3Aによく示すように、上方カバー部62の車両後方側及び後方カバー部63の車両前方側に接続されるとともに、第二収容部2Bの車両前方面の上側部分を覆うように、形成される。この接続部64は、第一ハウジング部21と第二ハウジング部22との突合せ端面を覆うようには設けられておらず、後述するように防水プロテクタ6をベースプレート5に固定するための固定部分としての役割を果たす。また、接続部64は、後方カバー部63と一体になって、第二収容部2Bの車両前方面の上側部分及び車両上方部分の全体をカバーするように構成される。
図4には、防水プロテクタ6の後方カバー部63が示される。図4からわかるように、後方カバー部63は、ハウジング2の第二収容部2B車両後方端にまで延びている。そして、第二収容部2Bの車両後方端にて、後方カバー部63は、第二収容部2Bを構成する第一ハウジング部21の車両後方端の上方部分及び第二ハウジング部22の車両後方端の上方部分の全体を上側から覆うように、設けられる。
また、図4からわかるように、後方カバー部63の車両後方端面63aと、第二収容部2B(第一ハウジング部21及び第二ハウジング部22)の車両後方端面2Cとの間に、微小な隙間Gが形成される。この隙間Gに水が浸入すると、浸入した水が、第一ハウジング部21と第二ハウジング部22との突き合わせ端面Sを経由して第二収容部2B内に浸入する虞がある。従って、そのような経路からの水の浸入を防止するために、本実施形態に係るドアロック装置1は、弾性変形可能な樹脂により構成されたシール部材7を備える。
図7は、シール部材7が示されたドアロック装置1の後面図である。図7において、シール部材7が斜線で表した領域により示される。図7に示すように、シール部材7は、後方シール部71及び側方シール部72を有する。後方シール部71は、第二収容部2Bの車両後方端面2Cと後方カバー部63の車両後方端面63aとの隙間Gを車両後方X2側から塞ぐように、第二収容部2Bの車両後方端の開口縁に沿って設けられる。また、側方シール部72は、後方シール部71の車両内方Y2側の端部に接続されるとともに、第二収容部2Bの車両内方Y2側の開口縁に沿って設けられる。この側方シール部72は、第二収容部2Bの車両内方Y2側の開口縁に形成される隙間を塞ぐように、その開口縁に沿って設けられる。
また、第二収容部2Bの車両後方端は、車両ドアのドアパネルの後端壁Pに対面配置する(図6参照)。従って、シール部材7の後方シール部71は、図6に示すように、防水プロテクタ6の後方カバー部63の車両後方端面63a及びハウジング2の第二収容部2Bの車両後方端面2Cと、後端壁Pとの間に配設される。
ここで、隙間Gを後方シール部71で確実に封止するためには、後方シール部71を、第二収容部2Bの車両後方端面2C及び後方カバー部63の車両後方端面63aに密着させる必要がある。このため、後方シール部71は、圧縮変形した状態で配設される。
上記のように後方シール部71が圧縮変形された場合、後方シール部71の圧縮変形に対する弾性反発力が、第二収容部2Bの車両後方端面2C及び後方カバー部63の車両後方端面63aに作用する。この弾性反発力に押し負けて防水プロテクタ6(後方カバー部63)及びハウジング2(第二収容部2B)が撓み変形すると、後方シール部71の圧縮変形量が減少し、これにより隙間Gへの密着力が低下して後方シール部71のシール性が低下する。後方シール部71のシール性が低下すると、隙間Gからハウジング2内に水が浸入する可能性が高まる。特に、従来では防水プロテクタがハウジングにスナップフィット等によって係合されているのみであり、その固定力は弱い。従って、上記した後方シール部71の弾性反発力に防水プロテクタが押し負けて防水プロテクタが容易に撓み、その結果、隙間Gからハウジング2内に水が浸入してしまう。
この点に関し、本実施形態では、後方シール部71の弾性反発力による防水プロテクタ6(後方カバー部63)の撓み変形を防止するために、防水プロテクタ6に接続部64を設け、この接続部64が締結スクリューによってベースプレート5に固定される構成を採用している。これについて説明すると、図6に示すように、防水プロテクタ6の接続部64は、後方カバー部63から車両前方X1側に延設されて、第二収容部2Bの車両前方面の上側部分を覆っている。この接続部64には、車両前後方向X1,X2に貫通した貫通孔641が形成される。貫通孔641は、その中心位置が、第二収容部2B内に配設されているレバー支持軸41の中心軸位置に一致する位置に形成される。また、接続部64に覆われている第二収容部2Bの車両前方面にも、接続部64に形成された貫通孔641と同軸の位置に、貫通孔23が形成される。そして、これらの貫通孔(641,23)に、ネジ部材としての締結スクリュー8が、車両前方X1から車両後方X2に向けて差し込まれる。
また、図6からわかるように、貫通孔23の車両後方X2側には、レバー支持軸41の車両前方端面41bが配置していて、この車両前方端面41bの中心位置には、車両前後方向X1,X2に沿って(すなわちレバー支持軸41の軸方向に沿って)レバー支持軸41内に形成されたネジ孔41cが開口している。そして、車両前方X1側から貫通孔641及び貫通孔23に差し込まれた締結スクリュー8は、レバー支持軸41の車両前方端面41bからネジ孔41cに差し込まれてレバー支持軸41に螺合される。このようにして締結スクリュー8がレバー支持軸41にねじ込まれて螺合されることにより締結力が生じ、この締結力が接続部64及び第二収容部2Bに作用することにより、防水プロテクタ6がハウジング2(第二収容部2B)とともにレバー支持軸41に固定される。また、レバー支持軸41はベースプレート5に固定されている。従って、防水プロテクタ6及びハウジング2は、締結力を発生する締結スクリュー8により共締めされた状態で、車両ドアのドアパネルの後端壁Pに固定されたベースプレート5に固定されることになる。
また、締結スクリュー8がネジ孔41cに螺合されることにより生じる締結力の作用方向は、車両後方X2である。つまり、防水プロテクタ6は、車両後方X2に向かう締結力を発生する締結スクリュー8により、ハウジング2とともに、ベースプレート5に固定される。また、車両後方X2側に作用する締結スクリュー8からの締結力は、防水プロテクタ6の後方カバー部63及びハウジング2の第二収容部2Bを介してシール部材7の後方シール部71に伝達される。これにより後方シール部71が後端壁Pに押し付けられて、所望の圧縮量だけ圧縮変形する。
このように、本実施形態によれば、防水プロテクタ6はハウジング2とともに、車両ドアの後端壁Pに固定されたベースプレート5に固定されている。従って、防水プロテクタがハウジングに係合された従来の構造と比較して、防水プロテクタ6は強固に固定される。このため、防水プロテクタ6は、後方シール部71の弾性反発力に押し負けることなく当該後方シール部71を車両ドアの後端壁Pに押し付けることができるとともに、防水プロテクタ6の撓み変形が効果的に防止される。これにより後方シール部71のシール性の低下が抑えられ、シール性の低下によって後方カバー部63の車両後方端面63aとハウジング2の車両後方端面2Cとの隙間Gを経由してハウジング2内に水が浸入することを防ぐことができる。なお、シール部材7は、車両ドアの後端壁Pを構成するドアパネル(例えばインナパネル)と、ベースプレート5との間の隙間を塞ぐようにも配設されている。このため、ドアパネルとベースプレート5との間からの水の流下を防止できる。その結果、ドアパネルとベースプレート5との間から流下した水が例えばベースプレート5に形成されたストライカ挿通溝351に対応するスリット53からドアロック装置1内に浸入すること、及び、上記のように流下した水がストライカ挿通溝351に対応してドアパネルに形成されたスリットを経由して車両ドアの外部(例えば車室内)に流れ出ることを、防止することができる。
また、一つの締結スクリュー8により防水プロテクタ6とハウジング2が共にベースプレート5に固定されるため、両者を別々に固定する場合と比較して、締結部材の使用個数を減じることができる。よって、ドアロック装置1の材料コスト及び製造コストの増加を抑えることができる。なお、従来においても、締結スクリュー8がハウジング2をベースプレート5に固定するために用いられる場合もある。これに対し、本実施形態では、防水プロテクタ6に接続部64を設け、その接続部64をハウジング2と共に締結スクリュー8を用いて締結するように構成されている。このため、ドアロック装置1の既存の設計を大幅に変更することなく、シール部材7のシール性の低下を抑えることができる。
また、ベースプレート5は剛性の高い金属により構成されているので、防水プロテクタ6をより強固に固定することができる。このため、後方シール部71の弾性反発力による防水プロテクタ6の撓み変形がより効果的に抑えられる。よって、後方シール部71の圧縮変形量を維持してシール性の低下をより一層抑えることができ、ハウジング2内の浸水をより一層効果的に防止することができる。
また、防水プロテクタ6を締結する締結スクリュー8は、ベースプレート5に固定されたレバー支持軸41内に車両前方X1側からねじ込まれて螺合される。このためハウジング2の内部空間に締結スクリュー8の配設空間を設ける必要がない。よって、ドアロック装置1をコンパクトに構成することができる。
また、防水プロテクタ6は、金属製の締結スクリュー8、金属製のレバー支持軸41を介して、金属製のベースプレート5に固定される。つまり、防水プロテクタ6を固定するために用いられる部材が全て金属製である。よって、防水プロテクタ6がさらにより強固に固定され、防水プロテクタ6の撓み変形がより一層効果的に抑えられる。これにより後方シール部71の圧縮変形量を維持することができるとともに後方シール部71のシール性の低下がより一層抑えられ、ハウジング2内への水の浸入をより一層効果的に防止することができる。
図8は、シール部材7の配設領域が示された、ドアロック装置1の正面図である。図8において、シール部材7の配設領域が斜線で示される。また、シール部材7の配設領域は、シール部材7によって隙間Gが封止される封止領域である。図8からわかるように、シール部材7の封止領域は、ハウジング2の第二収容部2Bの外周縁を覆うような領域である。また、第二収容部2Bの上方部分には、クローザ機構4が配設されており(図4参照)、このクローザ機構4の動作レバー42(図4参照)の回転を第二収容部2B内で許容するために、第二収容部2Bの上方部分には、上に凸の円弧部分2Dが形成される。この円弧部分2Dの外形に倣うようにシール部材7の封止領域が形成される。また、円弧部分2Dの中心位置は、動作レバー42の回転中心位置であり、その回転中心位置にレバー支持軸41が配設されている。そして、このレバー支持軸41に締結スクリュー8が差し込まれている。つまり、締結スクリュー8による防水プロテクタ6の締結位置が、シール部材7により防水プロテクタ6(後方カバー部63)の車両後方端面63aとハウジング2(第二収容部2B)の車両後方端面2Cとの間の隙間Gが封止される封止領域のうちの円弧部分2Dの略中心位置である。このため、締結スクリュー8の締結力は、円弧部分2Dの車両後方に配設された後方シール部71の全体に亘ってほぼ均等に伝達される。よって、不均一に締結力が伝わることによって部分的に後方シール部71のシール性が低下し、シール性が低下した部分から水が浸入することを防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきではない。例えば、上記実施形態においては、締結スクリュー8を、レバー支持軸41に螺合する例を示したが、ラッチ支持軸31或いはポール支持軸33に締結スクリュー8を螺合するように構成してもよい。また、上記実施形態においては、締結スクリュー8を介して防水プロテクタ6及びハウジング2をベースプレート5に固定した例を示したが、サブベースプレート9にこれらを固定してもよい。また、上記実施形態では、クローザ機構付のドアロック装置に本発明を適用した例を示したが、クローザ機構が設けられていないドアロック装置に本発明を適用することができる。この場合、締結スクリューを、ラッチ支持軸に螺合するように構成することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。