JP7004412B2 - ウイング装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ウイング装置に関する。
多目的ホールでは、舞台の上手と下手の両袖に、舞台に対して間口方向への移動が可能な板状の構造体を備えており、客席側から見た際の舞台の間口を調節するウイング装置を備える場合がある。
ウイング装置は、プロセニアムと称される舞台と客席とを仕切る額縁状の壁の背後に設けられて、客席側面にプロセニアム形式の化粧が施された板状の構造体を備えていて、プロセニアムから構造体を舞台側へ迫り出すと舞台の間口が狭まり、プロセニアム側へ構造体を移動させると舞台の間口を広げる(たとえば、特許文献1、2参照)。
また、多目的ホールでは、舞台を演劇の他、舞台上に音響空間を形成する音響反射板を設置して舞台をコンサートにも利用できるようにしている。音響反射板は、多くの場合、ホールの天井からワイヤで吊り下げられており、演劇を行う場合には客席側から見えないように舞台上方に格納され、コンサートを行う場合には舞台上に下されて使用される。
音響反射板は、客席に正対する正面反射板と、正面反射板の両側に設置される一対の側面反射板と、正面反射板と二つの側面反射板で囲われる空間の上方に設置される天井反射板を備えている。そして、音響反射板は、演目によってオーケストラの編成が大小異なるために、オーケストラの編成規模に対応して音響空間を大小調節できるような構造を採用している。
具体的には、オーケストラの編成規模に応じて側面反射板と天井反射板の舞台奥行方向の長さの変更が要求され、側面反射板は、編成規模に応じて舞台奥行方向の長さを調節できるように、一部が舞台奥行方向へ折り畳みが可能な構造を採用している(たとえば、特許文献3参照)
特開平10-249069号公報 特開2010-24739号公報 特開2012-90800号公報
前述したように、多目的ホールでは、奥行長さの調節が可能な側面反射板が必要となるが、ホールの構造によっては側面反射板の格納スペースが充分に確保できない場合がある。このような場合、折り畳み構造の側面反射板では、どうしても大編成を収容する音響空間を形成する奥行長さを確保できない。
他方、従来のウイング装置は、舞台の間口の調節にのみ使用されており、音響空間には全く寄与できず、音響反射板とは別個の舞台設備となっている。
そこで、本発明は、舞台の間口の調整が可能であるとともに、側面反射板としても利用でき側面反射板の奥行方向の長さ不足を補えるウイング装置の提供を目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明のウイング装置は、舞台の上方に舞台の間口方向に沿って設置される走行レールと、走行レールから吊り下げられて走行レールに沿って走行可能な走行フレームと、走行フレームに対して鉛直方向を軸にして旋回可能に連結されて舞台の間口を調節するウイング板とを備え、ウイング板は、表側に設けられる舞台の間口の調節時に使用される化粧面と、裏側に設けられる音響反射面とを有している。
このように構成されたウイング装置は、ウイング板の化粧面を客席側に正対させると舞台の間口を調節するウイングとして機能し、ウイング板を旋回させて音響反射面を舞台の中央側に向けて配置すると側面反射板として機能できる。
また、ウイング装置は、ウイング板を走行フレームに対して旋回不能とする固定部を備えていてもよい。このように固定部を備えたウイング装置によれば、走行レールに対してウイング板を移動させる際に、ウイング板を走行フレームに一体化でき、スムーズにウイング板を移動させ得る。
さらに、ウイング板の上端における一端が走行フレームに旋回可能に連結されるとともに、ウイング板が、上下方向に移動可能であって舞台に設けた受金に抜き差し可能であって、受金に挿入された際にウイング板の旋回軸となる旋回用ロックピンを有してもよい。このように構成されたウイング装置によれば、ウイング板に舞台の旋回用ロックピンを設けているので、ウイング板を旋回させる際にウイング板の走行フレームに対する傾きを防止でき、ウイング板が走行フレームに干渉するのを防止できる。
また、ウイング装置は、固定部がウイング板の上端における他端に設けられた被支持部と、被支持部の下方に配置される支持部と、支持部を被支持部に対して上下方向に駆動可能な駆動部とを有して、走行フレームに設けられるジャッキ装置とを備えてよい。このように構成されたウイング装置によれば、ウイング板の走行フレームに対する旋回を規制できるとともに、一端が走行フレームに回転支持されるウイング板の他端をジャッキ装置で支持できるから、走行フレームとウイング板とを一体とした際の傾きを防止できる。
さらに、ウイング装置は、ジャッキ装置が支持部を被支持部に当接する位置である上限位置と、予め設定される下限位置まで移動させると駆動部を停止させてもよい。このように構成されたウイング装置によれば、ジャッキ装置を自動的に上限位置と下限位置に停止できるので、操作者が目視でジャッキ装置がウイング板を支持しているか否かを確認しなくてもよく、ウイング板を走行フレームに固定する作業が容易となる。
また、支持部が上限位置にある場合に、旋回用ロックピンが受金に挿入されていない場合にはジャッキ装置は支持部を下方へ駆動しないようにしてもよい。このようにウイング装置が構成されると、操作者が誤ってウイング板が傾いてしまうような操作を行ってもジャッキ装置は駆動されないので、ウイング板と走行フレームとの干渉を未然に防げる。
そして、ウイング装置では、走行フレームが走行レールを走行するギヤードトロリを備えているので、走行フレームとウイング板の移動にあたって操作者の負担を軽減できる。
本発明のウイング装置によれば、舞台の間口の調整が可能であるとともに、側面反射板としても利用でき側面反射板の奥行方向の長さ不足を補える。
一実施の形態におけるウイング装置の正面図である。 一実施の形態におけるウイング装置の右側面図である。 一実施の形態におけるウイング装置の走行フレームに対するウイング板の旋回動作を説明する図である。 ジャッキ装置と被支持部の拡大側面図である。 操作盤の一例を示した図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるウイング装置Wは、図1に示すように、舞台Sの上方に舞台Sの間口方向である図1中左右方向に沿って設置される走行レール1と、走行レール1から吊り下げられて走行レール1に沿って走行可能な走行フレーム2と、走行フレーム2に対して鉛直方向を軸にして旋回可能に連結されて舞台Sの間口を調節するウイング板3とを備えて構成されている。なお、ウイング装置Wは、舞台Sの両袖に設けられるが、左右対称の構造となっているので、図1では客席側から見て左側(下手)のウイング装置Wのみを示して、以下、ウイング装置Wについて説明する。
以下、ウイング装置Wの各部について詳細に説明する。走行レール1は、図1および図2に示すように、本実施の形態では、I形鋼とされていて、舞台Sを図示しない客席とを仕切る壁Pに複数の鋼材Fを介して、舞台Sの上方であって舞台Sの間口方向である図1中左右方向に沿って取り付けられている。また、本実施の形態では、走行レール1は、舞台Sの上方に設置される図示しないスノコから延びるワイヤにより吊られており、ウイング装置Wの重量を支持できるようになっている。なお、強度上、鋼材Fによる壁Pへの取り付けで、ウイング装置Wの重量を充分に支持できる場合には、ワイヤによる吊り下げは省略できる。
走行フレーム2は、本実施の形態では、フレーム本体4と、フレーム本体4に設けたジャッキ装置Jと、フレーム本体4に設けられて走行レール1を走行するギヤードトロリ5およびプレントロリ6とを備えている。
フレーム本体4は、走行レール1に並行する横材4aと、横材4aの一端から垂下される縦材4bと、縦材4bの下端に上下方向に移動可能に取り付けられた固定用ピン4cとを備えて構成されている。
また、フレーム本体4の横材4aの舞台袖側端である図1中左端の上方には、走行レール1を走行可能なギヤードトロリ5が取り付けられており、フレーム本体4の横材4aの舞台中央側端である図1中右端の上方には、走行レール1を走行可能なプレントロリ6が取り付けられている。
ギヤードトロリ5は、走行レール1のフランジ状を走行する図示しない車輪と、図外のギヤを介して車輪を駆動する駆動輪とを備えてフレーム本体4の横材4aの舞台袖側端の上方に設けられる走行部5aと、駆動輪を駆動するために駆動輪に掛けられるチェーン5bとを備えている。そして、操作者がチェーン5bを手繰ることで駆動輪を回転させると、ギヤを介して操作者が与える動力が車輪に伝達されて走行部5aが走行レール1に沿って移動する。また、プレントロリ6は、走行レール1のフランジ状を走行する図示しない車輪を備えており、走行レール1上を円滑に走行できる。操作者がギヤードトロリ5のチェーン5bを操作すると、走行フレーム2は、走行レール1に沿って舞台Sの間口を広げる或いは狭める方向に移動する。
そして、このようにギヤードトロリ5を用いると、小さな力でウイング板3ととともに走行フレーム2を移動させ得るので、走行フレーム2とウイング板3の移動にあたって操作者の負担を軽減できる。なお、ギヤードトロリ5の車輪をモータで駆動するようにして、チェーン5bを廃止してもよい。
固定用ピン4cは、先端となる下端が縦材4bの下端よりも上方にある位置と、先端が縦材4bの下端よりも舞台S側へ突出する位置に固定できるようになっている。また、舞台Sにおける走行フレーム2の移動軌跡の直下には、固定用ピン4cの抜き差しを許容して走行フレーム2を固定するために使用される受金7が複数個所に設置されている。固定用ピン4cと受金7は、フランス落としを構成しており、受金7に固定用ピン4cが差し込まれた状態では、走行フレーム2における舞台Sの間口方向への移動を規制してその場に固定できる。なお、受金7の設置個所および設置数は、舞台Sの間口の調整幅に応じて決定すればよい。
ジャッキ装置Jは、図4に示すように、走行フレーム2にステー18を介して取り付けられた駆動部としてのアクチュエータ8と、アクチュエータ8によって上下方向に駆動される支持部9とを備えて構成されている。アクチュエータ8は、モータMと、モータMによって回転駆動される図示しないウォームと、ウォームに歯合する図示しない環状のギヤと、前記ギヤの内周に螺合される螺子ロッドRとを備えており、モータMを駆動すると送り螺子の要領で螺子ロッドRを上下動させ得る。また、アクチュエータ8は、図外のウォームとギヤとでセルフロック機構を構成しており、螺子ロッドR側に上下方向の外力が作用しても螺子ロッドRの上下方向の移動を規制できる。支持部9は、螺子ロッドRの上端に装着されており、上方へ突出する凸部9aを備えている。
ウイング板3は、矩形の枠体10aと、枠体10aを補強するために設けた複数のブレース10bおよびビーム10cとを備えた構造体10と、構造体10の表側である客席側に設けられた化粧面11と、構造体10の裏側である反客席側に設けた音響反射面12とを備えている。なお、本書では、ウイング板3の表とは、ウイング板3を舞台Sの間口を調節するウイングとして利用する場合に客席側に正対する面をいい、ウイング板3の裏とは、ウイング板3を舞台Sの間口を調節するウイングとして利用する場合に舞台側に正対する面をいう。
ウイング板3の表側の化粧面11は、構造体10の表側にプロセニアム形式の化粧を張って形成されており、観客からウイング板3の裏側を見えないようにする目隠しとして使用されて舞台Sの間口を調節する際に使用される。
ウイング板3の裏側の音響反射面12は、音の反射に向く材質で形成されており、音響反射板における側面反射板の一部として機能して客席側へ向けて音を効率的に反射させるものである。
このように構成されたウイング板3は、図1中の上端であって舞台中央側端である一端に設けた連結軸10dを介して走行フレーム2の横材4aの舞台中央側端にヒンジ結合されていて、図3で示すように、鉛直方向を軸として走行フレーム2に対して旋回できるようになっている。
また、ウイング板3の図1中の下端であって舞台中央側端であって連結軸10dの直下には、旋回用ロックピン13が上下方向に移動可能に設けられている。旋回用ロックピン13は、先端となる下端がウイング板3の下端よりも上方に配置してウイング板3内に収納される収納位置から先端がウイング板3の下端よりも舞台S側へ突出してウイング板3の旋回軸として機能する旋回時使用位置まで変位できるようになっている。具体的には、旋回用ロックピン13は、セルフロック可能な送り螺子機構によってウイング板3に対して上下動するようになっている。そして、ウイング板3の枠体10aの側方に図示しない孔が設けてあって、この孔にハンドルを差し込むと、ハンドルが送り螺子機構に接続されてハンドル操作によって旋回用ロックピン13を上下動させるようになっている。よって、ハンドル操作によって旋回用ロックピン13を上下方向の任意の位置に移動させた後、ハンドル側から送り螺子機構に動力を与えない限り旋回用ロックピン13はその場に固定される。
走行レール1に対して走行フレーム2を移動させてウイング板3を舞台S上の所定位置に移動させると、舞台Sに設けられて旋回用ロックピン13の抜き差しを許容する環状の受金14に旋回用ロックピン13の先端が対向する。そして、旋回用ロックピン13は断面円形であって、受金14の内周形状も円形となっており、旋回用ロックピン13の先端が受金14に挿入されて嵌合された状態では旋回用ロックピン13は受金14に対して軸線周りの回転が許容される。よって、旋回用ロックピン13を受金14内に挿入して旋回時使用位置にまで変位させると、旋回用ロックピン13は、ウイング板3の下端側の旋回軸として機能する。よって、ウイング板3は、連結軸10dと旋回用ロックピン13とを旋回軸として、両者を通る鉛直方向の線V(図1中一点鎖線)を中心として走行フレーム2に対して旋回できる。なお、旋回用ロックピン13の駆動については、前記したハンドル操作以外にもモータを利用してもよい。また、旋回用ロックピン13の駆動については、送り螺子機構を使わずに、旋回用ロックピン13を収納位置と旋回時使用位置とに固定可能なロック機構を備えた直動型のアクチュエータを利用してもよい。
また、ウイング板3の構造体10の下端における図1中の舞台袖側には、ウイング板3を旋回させた場合において、旋回先でウイング板3を固定するための固定用ピン10eが設けられている。この固定用ピン10eは、先端が構造体10の枠体10aの下端よりも上方に配置された状態と、先端が枠体10aの下端よりも舞台S側へ突出する状態とに固定できるようになっている。また、舞台Sにおけるウイング板3の舞台袖側端の移動軌跡の直下には、固定用ピン10eの抜き差しを許容してウイング板3を固定するために使用される受金16が複数個所に設置されている。固定用ピン10eと受金16は、フランス落としを構成しており、受金16に固定用ピン10eが差し込まれた状態では、ウイング板3における走行フレーム2に対する旋回軸周りの旋回を規制してウイング板3をその場に固定できる。なお、受金16の設置個所および設置数は、ウイング板3を固定したい場所に応じて決定すればよい。
また、ウイング板3の上端であって舞台袖側端である他端には、つまり、図1中で枠体10aの上端の左端には、走行フレーム2の横材4aの直下にウイング板3を横材4aと平行に配置した状態とすると、ジャッキ装置Jの支持部9の上方に対向する被支持部15が取り付けられている。ジャッキ装置JにおけるモータMを正転させると支持部9が被支持部15に近づいて当接する上限位置まで変位し、逆にモータMを逆転させると支持部9が被支持部15から遠ざかり所定の下限位置まで変位する。
被支持部15は、図4に示すように、支持部9の凸部9aが嵌合する凹部15aを備えており、被支持部15の下方に支持部9を対向させた状態でジャッキ装置Jを駆動して支持部9を上限位置まで変位させて被支持部15に嵌合させると、支持部9に対して被支持部15の横方向の移動が規制される。また、支持部9を被支持部15に当接させた状態では、ウイング板3の舞台袖側端が走行フレーム2に取り付けたジャッキ装置Jによって下方から支持さえる格好となり、ウイング板3の上端における両端は、連結軸10dとジャッキ装置Jとで吊られた状態で走行フレーム2に支持される。この状態では、ウイング板3は、被支持部15への支持部9の嵌合によって前記旋回軸周りの旋回が規制されて走行フレーム2の横材4aの直下に平行配置された状態に保持される。このように、本実施の形態では、固定部は、ウイング板3に設けた被支持部15と走行フレーム2に設けたジャッキ装置Jとで構成されている。
なお、被支持部15への支持部9への嵌合のみでもウイング板3の走行フレーム2に対する旋回を規制できるが、本実施の形態では、ウイング板3を走行フレーム2に固定する旋回止めピン17を設けている。具体的には、旋回止めピン17は、走行フレーム2の縦材4bを図1中左右方向に貫いた状態で前記縦材4bに着脱可能とされていて、縦材4bに取り付けた状態では先端が舞台中央側に突出する。また、ウイング板3の構造体10の舞台袖側端には、この旋回止めピン17の断面に符合する形状の図示しない孔が設けられている。よって、ウイング板3を走行フレーム2の直下で平行に配置した状態で、縦材4bに旋回止めピン17を取り付けて構造体10の前記孔に挿入すると、ウイング板3の走行フレーム2に対する旋回が阻止されるとともに、ウイング板3の下端側の図1中止面方向へのふらつきも防止される。また、旋回止めピン17を構造体10の孔に挿入すると、ジャッキ装置Jによる支持が無くとも旋回止めピン17がウイング板3を支持して傾きを防止できるようにしてもよい。このようにすると、被支持部15やジャッキ装置Jに何らかの支障があってジャッキ装置Jによる支持が得られなくなっても、旋回止めピン17でウイング板3の傾きを防止できる。
走行フレーム2に対するウイング板3の旋回を規制した状態で、固定用ピン4cを受金7から抜いて、ギヤードトロリ5のチェーン5bを操作すれば、ウイング板3が走行フレーム2と一体となって舞台Sの間口方向へ移動できる。ウイング板3の移動は、必ず、ジャッキ装置Jの支持部9を被支持部15に当接させて、ウイング板3の走行フレーム2に対する旋回を不能とした状態で行われる。
そして、走行フレーム2を所望する位置へ移動させて、固定用ピン4cを所望する受金7に対向させて受金7に挿入すると、走行フレーム2が舞台S上のその場に固定される。ウイング装置Wをウイングとしたい場合には、ジャッキ装置Jの支持部9を被支持部15に当接してウイング板3の走行フレーム2に対する旋回を規制して、客席側にウイング板3の表側である化粧面11を正対させた状態で使用する。
これに対して、ウイング装置Wを側面反射板としたい場合には、旋回用ロックピン13を受金14内に挿入して、ウイング板3の下端を旋回用ロックピン13によって旋回可能に位置決めされる状態とする。この状態では、ウイング板3の上端の舞台中央側端が連結軸10dによって走行フレーム2によって支持されるとともに、ウイング板3の下端の舞台中央側端が旋回用ロックピン13によって位置決めされるので、ウイング板3が走行フレーム2に対して傾かない状態となる。そうしておいてから、ジャッキ装置Jの支持部9を下降させて被支持部15から離脱させても、ウイング板3は走行フレーム2に対して傾かずに旋回できる。そして、ウイング板3を走行フレーム2に対してウイング板3の裏側の音響反射面12を舞台中央側に向くように旋回させて、固定用ピン10eを受金16に正対させた後、受金16に固定用ピン10eを挿入して、ウイング板3を固定する。このようにすると、ウイング板3の裏側の音響反射面12が舞台Sの中央側を向いてウイング板3は、側面反射板として機能できる。
ここで、旋回用ロックピン13を受金14に挿入せずに、ジャッキ装置Jを駆動して支持部9を被支持部15から離脱させるとジャッキ装置Jによる支持が無くなって、ウイング板3の上端の舞台中央側端が連結軸10dによって支持されるのみとなる。ウイング板3の重心は、連結軸10dの鉛直下方から図1中で舞台袖側にずれた位置にあるので、ジャッキ装置Jでウイング板3の支持が無くなると、ウイング板3の舞台袖側が下方へ傾いてしまう。ウイング板3が傾くと、ウイング板3が走行フレーム2に干渉したり、旋回用ロックピン13を受金14に正対させられず受金14に挿入できなくなったりする場合がある。
よって、ウイング板3を移動させた後、或いは、ウイング板3をウイングとして機能させる状態から側面反射板として機能させる際には、必ず、旋回用ロックピン13を受金14に挿入してから、ジャッキ装置Jを駆動して被支持部15から支持部9を離脱させるようにする必要がある。
そこで、本実施の形態では、ジャッキ装置Jの支持部9が被支持部15を支持位置にあるか否かと、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置にあるか否かを把握して、ジャッキ装置Jの駆動を制御する制御装置を設けている。制御装置は、ジャッキ装置JにおけるモータMの正転側の回転数と逆転側の回転数がそれぞれ所定回数となるとこれをトリガとして停止信号を出力するジャッキ用リミットスイッチLS1と、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置に到達するとこれをトリガとして到達信号を出力するロックピン用リミットスイッチLS2と、モータMの駆動を制御する駆動制御部20と、ウイング装置Wの操作者のジャッキ装置Jの操作を指示するための操作盤21とを備えている。
ジャッキ用リミットスイッチLS1は、モータMの回転数を監視しており、モータMの正転と逆転の双方の回転数が所定回転数となると駆動制御部20へ停止信号を出力する。支持部9が被支持部15に当接する上限位置からモータMを逆転させて支持部9を被支持部15から所定距離だけ離間させて下限位置にまで変位させる際に要するモータMの回転数を所定回転数としている。モータMの回転数は支持部9の変位量に比例するのでモータMがどれだけ回転したか、つまり、駆動された際の回転数を把握すれば、被支持部15に対する支持部9の位置を把握できる。
ロックピン用リミットスイッチLS2は、旋回用ロックピン13が操作者によって変位させられて旋回時使用位置に到達すると到達信号を駆動制御部20へ出力する。
駆動制御部20は、操作盤21からモータMを正転或いは逆転させる指示が入力されるとモータMを駆動し、ジャッキ用リミットスイッチLS1から停止信号が入力されるとモータMを停止させる。モータMの回転数は支持部9の変位量に比例しており、駆動制御部20は、支持部9を被支持部15側へ接近させる方向へモータMを正転駆動した後に停止信号の入力でモータMを停止させると支持部9が被支持部15に当接する位置である上限位置にあると判断する。逆に、駆動制御部20は、支持部9を被支持部15から離間する方向へモータMを逆転駆動した後に停止信号の入力でモータMを停止させると支持部9が被支持部15から離間して下限位置にあると判断する。さらに、駆動制御部20は、支持部9が上限位置にあると判断している際に、ロックピン用リミットスイッチLS2から到達信号が入力されていないと、操作盤21から支持部9を被支持部15から離間させる方向へモータMを駆動する指示が入力されてもモータMを駆動しない。つまり、駆動制御部20は、旋回用ロックピン13が受金14内に挿入されて旋回時使用位置にある状態とならないと、支持部9を被支持部15から離間させる方向へモータMを駆動しない。
また、駆動制御部20は、モータMの電流を図外の電流センサによって監視しており、モータMに過電流が流れるとモータMを保護するためにモータMを停止させる。駆動制御部20は、このようにモータMに過電流が流れるとモータMを停止するので、ジャッキ用リミットスイッチLS1が故障して停止信号を送信できなくなってモータMが回転し続けるのを防止できる。
操作盤21は、図5に示すように、操作者の押し下げ操作によってモータMを正転駆動して支持部9を上限位置に変位させる指示を駆動制御部20へ出力させる正転指示釦22と、操作者の押し下げ操作によってモータMを逆転駆動して支持部9を下限位置へ変位させる指示を駆動制御部20へ出力させる逆転指示釦23と、旋回用ロックピン13の操作を行ってよいか否かの情報を操作者に与える表示部24と、ジャッキ装置Jの異常時に点灯する異常表示灯25とを備えている。
表示部24は、青色に点灯する点灯部24aと、赤色に点灯する点灯部24bと備えている。点灯部24aは、旋回用ロックピン13の操作が可能である場合に点灯し、旋回用ロックピン13の操作が可能な状態であることを操作者に知らせる。他方、点灯部24bは、旋回用ロックピン13の操作を行ってはならない場合に点灯し、旋回用ロックピン13の操作が禁止される状態であることを操作者に知らせる。
表示部24の点灯部24a,24bのオンオフの制御は、駆動制御部20によって行われる。駆動制御部20は、ジャッキ装置Jにおける支持部9が上限位置にあると判断する場合に、点灯部24aを点灯させるとともに点灯部24bを消灯して、操作者に旋回用ロックピン13の操作が可能である旨を知らせる。また、駆動制御部20は、ジャッキ装置Jにおける支持部9が下限位置にあると判断する場合には、点灯部24aを消灯させるとともに点灯部24bを点灯して、操作者に旋回用ロックピン13の操作を禁止される状態である旨を知らせる。
以上、駆動制御部20は、支持部9が上限位置にあり被支持部15に当接している場合には、旋回用ロックピン13の受金14への抜き差しをしてもウイング板3がジャッキ装置Jで支持されておりウイング板3の傾きを阻止できるので、旋回用ロックピン13の操作が可能な状態であると判断する。よって、この場合には、駆動制御部20は、操作者に旋回用ロックピン13の操作が可能な状態であることを知らせるべく、表示部24の点灯部24aを点灯させるとともに点灯部24bを消灯する。これに対して、駆動制御部20は、支持部9が下限位置にあり被支持部15から離間している場合には、旋回用ロックピン13の受金14への抜き差しをするとウイング板3がジャッキ装置Jで支持されておらずウイング板3が傾いてしまうので、旋回用ロックピン13の操作が禁止される状態であると判断する。よって、この場合には、駆動制御部20は、操作者に旋回用ロックピン13の操作を禁止する状態であることを知らせるべく、表示部24の点灯部24bを点灯させるとともに点灯部24aを消灯する。
また、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置にある場合には、連結軸10dと旋回用ロックピン13が旋回軸としてウイング板3の傾きを阻止しつつウイング板3の旋回を許容でき、支持部9を被支持部15に当接させても離間させてもよい状態にある。よって、駆動制御部20は、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置にある場合には、操作者の正転指示釦22或いは逆転指示釦23の押し下げによって入力されるモータMの駆動指示に従ってモータMを駆動する。モータMを駆動すると、ジャッキ用リミットスイッチLS1から停止信号が入力されると、これをトリガとしてモータMの駆動を停止する。
これに対して、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置にない場合には、支持部9が被支持部15から離間してしまうと、連結軸10dのみでウイング板3を支持する格好となってウイング板3が傾いてしまうので、支持部9を被支持部15に当接した状態に維持しなくてはならない。よって、駆動制御部20は、旋回用ロックピン13が旋回時使用位置にない場合には、操作者の逆転指示釦23の押し下げによって入力されるモータMの逆転駆動指示には従わず、モータMを逆転駆動しない。他方、モータMを正転駆動させる指示が入力されるとモータMを正転駆動して、支持部9を被支持部15へ接近させる方向へモータMを駆動する。支持部9が被支持部15から離間している場合には、ジャッキ用リミットスイッチLS1から停止信号が入力されるまでモータMを正転駆動し、正転駆動指示を受け取った際に支持部9が被支持部15に当接していてジャッキ用リミットスイッチLS1から停止信号が入力されている場合にはモータMを駆動しない。
また、駆動制御部20は、モータMを正転させてから停止すると支持部9が被支持部15に当接してウイング板3の舞台袖側端を支持する上限位置にあると判断し、モータMを逆転させてから停止すると支持部9が被支持部15から離間してウイング板3の舞台袖側端の支持しない下限位置にあると判断する。そして、駆動制御部20は、モータMを駆動した後は、支持部9の位置に応じて表示部24の点灯部24a,24bの一方を選択して点灯させる。
このように制御装置が構成されると、旋回用ロックピン13が受金14内に挿入されてウイング板3の傾きが阻止される状態にならないと、支持部9が被支持部15から離間する方向へモータMを駆動する指示が入力されても、モータMを支持部9が被支持部15から離間する方向へ駆動しない。よって、旋回用ロックピン13が受金14内に挿入されておらずウイング板3の傾きが阻止されない状態で操作者が逆転指示釦23を押し下げても、モータMが駆動されないので、ウイング板3が傾いてしまうのを未然に防げる。
また、支持部9が被支持部15から離間してウイング板3をジャッキ装置Jで支持していない状態で旋回用ロックピン13を受金14から抜いてしまうとウイング板3が傾いてしまう。このように、支持部9が被支持部15から離間していてウイング板3をジャッキ装置Jで支持していない状態では、制御装置は表示部24の点灯部24bを点灯させて操作者に旋回用ロックピン13の操作が禁止される状態である旨を操作者に伝達する。他方、支持部9が被支持部15に当接していてウイング板3をジャッキ装置Jで支持している状態では、制御装置は表示部24の点灯部24aを点灯させて操作者に旋回用ロックピン13の操作が可能な状態である旨を操作者に伝達する。よって、制御装置は、表示部24によって操作者に注意喚起を促して旋回用ロックピン13の操作を行ってよいか否かを知らせ得る。
また、駆動制御部20は、モータMの過電流を検知すると操作盤21における異常表示灯25を点灯させて操作者にジャッキ装置Jに異常が発生した旨を知らせる。
なお、制御装置は、支持部9の位置と旋回用ロックピン13の位置を把握できればよいので、これらの位置の把握には、リミットスイッチ以外のセンサを利用してもよい。
以上のように、ウイング装置Wは、舞台Sの上方に舞台Sの間口方向に沿って設置される走行レール1と、走行レール1から吊り下げられて走行レール1に沿って走行可能な走行フレーム2と、走行フレーム2に対して鉛直方向を軸にして旋回可能に連結されて舞台Sの間口を調節するウイング板3とを備え、ウイング板3は、表側に設けられる舞台Sの間口の調節時に使用される化粧面11と、裏側に設けられる音響反射面12とを有している。このように構成されたウイング装置Wは、ウイング板3の化粧面11を客席側に正対させると舞台Sの間口を調節するウイングとして機能し、ウイング板3を旋回させて音響反射面12を舞台Sの中央側に向けて配置すると側面反射板として機能できる。このようにウイング装置Wは、大編成のオーケストラに対応可能な奥行長さの側面反射板の格納が困難な多目的ホールにあっても、ウイング板3を側面反射板として利用して側面反射板の奥行長さの不足を補える。
よって、本発明のウイング装置Wによれば、舞台Sの間口の調整が可能であるとともに、側面反射板としても利用でき側面反射板の奥行方向の長さ不足を補えるのである。
また、本実施の形態のウイング装置Wは、ウイング板3を走行フレーム2に対して旋回不能とする固定部を備えている。このように固定部を設けると、走行レール1に対してウイング板3を移動させる際に、ウイング板3を走行フレーム2に一体化でき、スムーズにウイング板3を移動させ得る。
さらに、本実施の形態のウイング装置Wでは、ウイング板3は、上端における一端(舞台中央側端)が走行フレーム2に旋回可能に連結されるとともに、上下方向に移動可能であって舞台Sに設けた受金14に抜き差し可能であって、受金14に挿入された際にウイング板3の旋回軸となる旋回用ロックピン13を有している。このように構成されたウイング装置Wによれば、ウイング板3に舞台Sの旋回用ロックピン13を設けているので、ウイング板3を旋回させる際にウイング板3の走行フレーム2に対する傾きを防止でき、ウイング板3が走行フレーム2に干渉するのを防止できる。
また、本実施の形態のウイング装置Wでは、固定部がウイング板3の上端における他端(舞台袖側端)に設けられた被支持部15と、被支持部15の下方に配置される支持部9と、支持部9を被支持部15に対して上下方向に駆動可能なアクチュエータ(駆動部)8とを有して、走行フレーム2に設けられるジャッキ装置Jとを備えている。このように構成されたウイング装置Wによれば、ウイング板3の走行フレーム2に対する旋回を規制できるとともに、一端が走行フレーム2に回転支持されるウイング板3の他端をジャッキ装置Jで支持できるから、走行フレーム2とウイング板3とを一体とした際の傾きを防止できる。よって、このウイング装置Wによれば、旋回用ロックピン13を受金14への挿入が容易となり、ウイング板3が走行フレーム2に干渉するのを防止できる。
さらに、本実施の形態のウイング装置Wでは、ジャッキ装置Jが支持部9を被支持部15に当接する位置である上限位置と、予め設定される下限位置まで移動させるとアクチュエータ(駆動部)8を停止させる。このように構成されたウイング装置Wによれば、ジャッキ装置Jを自動的に上限位置と下限位置に停止できるので、操作者が目視でジャッキ装置Jがウイング板3を支持しているか否かを確認しなくてもよく、ウイング板3を走行フレーム2に固定する作業が容易となる。
また、本実施の形態のウイング装置Wでは、ジャッキ装置Jは、支持部9が上限位置にある場合に、旋回用ロックピン13が受金14に挿入されていない場合には支持部9を下方へ駆動しない。このようにウイング装置Wが構成されると、操作者が誤ってウイング板3が傾いてしまうような操作を行ってもジャッキ装置Jは駆動されないので、ウイング板3と走行フレーム2との干渉を未然に防げる。
そして、本実施の形態のウイング装置Wでは、走行フレーム2が走行レール1を走行するギヤードトロリ5を備えているので、走行フレーム2とウイング板3の移動にあたって操作者の負担を軽減できる。
なお、前述したところでは、走行フレーム2は、横材4aと縦材4bとを備えたフレーム本体4を備えているが、フレーム本体4における縦材4bを省略してもよい。その場合、ウイング板3の下端に固定用ピンを設けて走行フレーム2とウイング板3を舞台S上に固定できるようにすればよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
1・・・走行レール、2・・・走行フレーム、3・・・ウイング板、5・・・ギヤードトロリ、8・・・アクチュエータ(駆動部)、9・・・支持部、11・・・化粧面、12・・・音響反射面、13・・・旋回用ロックピン、14・・・受金、15・・・被支持部、J・・・ジャッキ装置、S・・・舞台、W・・・ウイング装置

Claims (7)

  1. 舞台の上方に前記舞台の間口方向に沿って設置される走行レールと、
    前記走行レールから吊り下げられて前記走行レールに沿って走行可能な走行フレームと、
    前記走行フレームに対して鉛直方向を軸にして旋回可能に連結されて前記舞台の間口を調節するウイング板とを備え、
    前記ウイング板は、
    表側に設けられる前記舞台の間口の調節時に使用される化粧面と、
    裏側に設けられる音響反射面とを有する
    ことを特徴とするウイング装置。
  2. 前記ウイング板を前記走行フレームに対して旋回不能とする固定部を備えた
    ことを特徴とする請求項1に記載のウイング装置。
  3. 前記ウイング板は、
    上端における一端が前記走行フレームに旋回可能に連結されるとともに、
    上下方向に移動可能であって前記舞台に設けた受金に抜き差し可能であって、前記受金に挿入された際に前記ウイング板の旋回軸となる旋回用ロックピンを有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のウイング装置。
  4. 前記固定部は、
    前記ウイング板の上端における他端に設けられた被支持部と、
    前記被支持部の下方に配置される支持部と、前記支持部を前記被支持部に対して上下方向に駆動可能な駆動部とを有して、前記走行フレームに設けられるジャッキ装置とを有する
    ことを特徴とする請求項2または請求項2に従属する請求項3に記載のウイング装置。
  5. 前記ジャッキ装置は、前記支持部を前記被支持部に当接する位置である上限位置と、予め設定される下限位置まで移動させると前記駆動部を停止させる
    ことを特徴とする請求項4に記載のウイング装置。
  6. 前記ジャッキ装置は、前記支持部が上限位置にある場合に、前記旋回用ロックピンが前記受金に挿入されていない場合には前記支持部を下方へ駆動しない
    ことを特徴とする請求項3に従属する請求項4に記載のウイング装置。
  7. 前記走行フレームは、前記走行レールを走行するギヤードトロリを有する
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のウイング装置。
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