以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
<第一の実施の形態>
図1に示すように、本発明の第一の実施の形態に係る間口照明移動装置は、トーメンタルタワー装置Aであり、当該トーメンタルタワー装置Aは、多目的ホールに利用され、舞台1の上手側と下手側の袖S1,S2にそれぞれ設けられている。
図示を省略するが、舞台1上にできる空間であって、演出の施される観客に見せるための空間を演出空間Pとすると、当該演出空間Pよりも高い位置に簀子が設けられており、当該簀子に吊り物が吊り下げられている。吊り物としては、例えば、音響反射板B、地明かりを作るための照明装置(図示せず)、幕類(図示せず)等があり、演出空間Pに演目に合せた演出を施せるようになっている。
客席の並ぶエリアを客席エリアGとすると、演出空間Pと客席エリアGとの境界、即ち、演出空間Pにおける客席側の開口が舞台1の間口Fであり、客席から見た手前奥方向(図1中上下)が舞台1の奥行方向、客席から見た左右(図1中左右)が舞台1の間口方向である。以下の説明では、舞台1の奥行方向及び間口方向を単に「奥行方向」「間口方向」ということがある。
また、舞台1上にできる空間であって、上手側と下手側にできる客席から見えない部分が舞台1の袖S1,S2であり、当該袖S1,S2は、間口Fの横幅を制限する固定壁Wにより客席エリアGと仕切られている。そして、上記トーメンタルタワー装置Aは、固定壁Wの裏側であって、間口Fに近い位置に設けられている。説明の便宜上、両袖S1,S2における間口方向の一方側であって間口Fに近い側をそれぞれ舞台側、反対側の間口Fから離れた側をそれぞれ袖側とする。
トーメンタルタワー装置Aは、図2,3に示すように、照明器具Lが取り付けられる照明取付用フレームであるトーメンタルタワー2と、トーメンタルタワー2を間口方向へ移動可能にする走行装置3と、トーメンタルタワー2を間口方向へ駆動する駆動装置5と、トーメンタルタワー2の倒れを防止する倒れ防止装置4とを備える。
トーメンタルタワー2は、フレーム材、単管パイプ等を組み立てて形成される櫓状の構造物である。より詳しくは、トーメンタルタワー2は、複数の支柱20aと、これら支柱20aを連結する複数の横架材20bとを略四角柱状に組み立てて形成された本体部20と、本体部20の内側であって固定壁W側の横架材20bに固定され、袖側に寄せて設けた梯子21とを有する。そして、本体部20の舞台側部分に複数の照明器具Lが上下に並べて取り付けられる。
また、図示しないが本体部20の舞台側部分には、複数の足場板が取り付けられており、作業者が梯子21から足場板へ乗り移り、当該足場板に乗った状態で照明器具Lを操作できる。なお、トーメンタルタワー2の構造は、上記の限りではなく、任意の数の照明器具Lを支えられる構造であればよい。また、トーメンタルタワー2にスピーカ等の照明器具L以外の器具、装置等を取り付けてもよいのは勿論である。
また、本体部20の舞台奥側には、見切幕22が展張される(図3)。当該見切幕22は、図4(a)(b)に示すように、上下に分割されている。見切幕22全体としての大きさは、トーメンタルタワー2の舞台奥側の全面を覆うことのできる大きさである。そして、分割された見切幕22のうちの上側は常設幕22aであり、トーメンタルタワー2に常時展張されている。その一方、分割された見切幕22のうちの下側は着脱幕22bであり、トーメンタルタワー2に着脱できる。
着脱幕22bの大きさは、図4(b)に示すように、着脱幕22bを外した状態で駆動装置5の後述するハンドル50が露出する程度の大きさである。このため、ハンドル50を操作する場合には、着脱幕22bを取り外して操作すればよく、当該操作時に見切幕22の全てを取り外す必要がないので利便性が良い。また、トーメンタルタワー2に見切幕22を取り付けても着脱幕22bを外せるので、見切幕22がハンドル操作の妨げにならない。
このように、本実施の形態では、着脱幕22b部分をハンドル操作のための開閉部として利用している。また、本実施の形態では、着脱幕22bをトーメンタルタワー2に着脱可能にするため、着脱幕22bの上下に面ファスナ22c,22dを取り付けている。しかし、着脱幕22bをトーメンタルタワー2に着脱可能に取り付けるための方法は、面ファスナに限らず適宜変更できる。例えば、ボタン、クリップ等を利用してもよい。
つづいて、トーメンタルタワー2を間口方向へ移動可能にする走行装置3は、図5,6に示すように、トーメンタルタワー2が積載される略矩形の基台30と、この基台30と舞台1との間に奥行方向に並べて設けられる一対のリニアガイド31,32とを備える(図6)。これらリニアガイド31,32は、共通の構成を有しており、それぞれがレール33と、レール33を走行する二つのスライダ34,35とを有する(図5)。
両リニアガイド31,32のレール33,33は、間口方向に沿って平行に配置され、舞台1に固定される。より詳しくは、舞台1は、床10と、床10を支える躯体11と、図示しない床下構造物とを有して構成されている。床10には、トーメンタルタワー装置Aが設置される部分に開口10aが形成されており、レール33は、当該開口10aを通じて躯体11及び床下構造物に固定される。
その一方、一本のレール33上を走行する一組のスライダ34,35は、基台30の下側であって間口方向の両側に固定される(図5)。図示しないが、スライダ34,35には、それぞれ多数の転動体がレール33との間に保持されており、スライダ34,35がレール33上を移動すると転動体が回転する。つまり、リニアガイド31,32は、直動式の転がり軸受け構造を有し、スライダ34,35がレール33上を円滑に移動できる。
前述のように、スライダ34,35が基台30に固定されていて、レール33が間口方向に沿って配置されているので、スライダ34,35がレール33に沿って動くと、基台30と、基台30に積載されたトーメンタルタワー2等の可動部が間口方向へ移動する(図5)。
そして、演奏会が催される場合等、間口Fを照らす照明器具Lが不要な場合には、トーメンタルタワー2を最も袖側へ寄せた位置(格納位置)に配置する(図5)。このようにトーメンタルタワー2が格納位置にある場合には、床10に形成された開口10aの袖側部分が基台30で塞がれる。この場合、開口10aにおける基台30で塞がれない舞台側部分は、取り外し式の分割床36で塞がれる。
その一方、演劇が催される場合等、間口Fを照らす照明器具Lが利用される場合には、トーメンタルタワー2を最も舞台側へ寄せた位置(使用位置)に配置する。このようにトーメンタルタワー2が使用位置にある場合には、床10に形成された開口10aの舞台側部分が基台30で塞がれる。この場合、開口10aにおける基台30で塞がれない袖側部分が上記分割床36で塞がれる。
当該構成によれば、レール33が基台30と分割床36で覆われる。そして、分割床36は、床10と同じ高さに設けられるので、演者、作業者等の通行の妨げにならない。また、トーメンタルタワー2の駆動時以外は、レール33を床下に格納できるのでレール33を保護できる。なお、本実施の形態では、分割床36を四枚設けているがその数は適宜変更できる。
つづいて、トーメンタルタワー2を間口方向へ駆動する駆動装置5は、ハンドル50と、ハンドル50の回転により回転駆動されるピニオン51と、ピニオン51が噛合するラック52と、ハンドル50の回転を減速するとともに回転方向を変えてピニオン51に伝えるギヤボックス53とを備える。
ハンドル50は、手回し式であり、作業者が掴むための持ち手50aを有する。そして、ハンドル50は、正面を舞台奥側へ向けて配置される(図6)。また、ハンドル50は、作業者の腰程(床10から約900mm程度)の高さに設けられている。
このため、作業者が床10上に立った状態(トーメンタルタワー装置Aから降りた状態)で、ハンドル50を回転しつつトーメンタルタワー2とともに舞台1上を移動し易い。なお、ハンドル50の向き及び高さはこの限りではなく、作業者が作業をし易いように適宜変更できる。
また、ハンドル50の回転軸は、ギヤボックス53に接続されている。ギヤボックス53は、基台30上に設置された支持台54上に固定されており、ハウジング(符示せず)と、ハウジングに収容されたウォームギヤ55(図7)とを有する。当該ウォームギヤ55は、図7に示すように、ウォーム55aと、ウォーム55aに噛合するウォームホイール55bとを有する。
そして、ウォーム55aの回転軸55cが奥行方向へ略水平に延びてハンドル50の回転軸に直列に接続されており、ウォームホイール55bの回転軸が連結軸56を介してピニオン51の回転軸に直列に接続されている。当該構成によれば、ウォームギヤ55でハンドル50の回転を減速するとともに、回転方向を切換えてピニオン51に伝達できる。
ピニオン51は、図6に示すように、基台30の下側に配置され、基台30に取り付けられた軸受で回転自在に支持されて水平回転する。当該ピニオン51が噛合するラック52は、二本のレール33,33の間にこれらと平行に設けられ、舞台1の躯体11及び床下構造物に固定されている。
このため、ハンドル50を回転するとピニオン51が回転し、ラック52に沿ってピニオン51が間口方向の舞台側又は袖側へ移動する。すると、ピニオン51とともに基台30が移動するので、基台30上のトーメンタルタワー2、ギヤボックス53、及びハンドル50が間口方向の舞台側又は袖側へ移動する。
また、前述のように、ウォームギヤ55を設けてハンドル50の回転方向を変換するとともに、ハンドル50の回転を減速してピニオン51へ伝えている。このため、ハンドル50を作業者が回転し易い任意の方向へ向けて配置できるとともに、トーメンタルタワー2を含む可動部の重量が重くてもハンドル50操作を軽くでき、作業負荷が軽減される。
また、ウォームホイール側からのトルク入力に対してはウォーム55aが回転しない構造、即ち、セルフロックのかかる構造となっている。このため、トーメンタルタワー2の移動を阻止するための機構を別途設けなくても、ハンドル50を回転しなければトーメンタルタワー2が動かない。よって、トーメンタルタワー装置Aの構造を簡易且つ容易にできる。
また、図5に示すように、基台30の下側には、ピニオン51を覆うようにカバー57が設けられている。カバー57は、矩形の天板57aと、天板57aの向かい合う二辺から下方へ延びる一対のストッパ部57b,57cとを有して断面コ字状となっている。そして、カバー57は、天板57aが基台30の下面に沿うとともに、ストッパ部57b,57cがトーメンタルタワー2の進行方向(間口方向)へ並ぶようにして基台30に固定される。
また、ストッパ部57b,57cが設けられている方のカバー57の幅は、ピニオン51の直径よりも大きく(図5)、ストッパ部57b,57cの先端がピニオン51の下側まで延びている。その一方、ストッパ部57b,57cが設けられていない方のカバー57の幅は、ピニオン51の直径よりも短く(図6)、カバー57をピニオン51に被せた状態で、ピニオン51の一部がカバー57外へはみ出してラック52に噛合する。
また、舞台1の躯体11又は床下構造物には、ストッパ部57b,57cに対向する位置にそれぞれクッションゴム58a,58bが設けられている。そして、トーメンタルタワー2が使用位置にある場合、一方のストッパ部57bが一方のクッションゴム58aに突き当たり、トーメンタルタワー2が格納位置にある場合、他方のストッパ部57cが他方のクッションゴム58bに突き当たる。このため、トーメンタルタワー2を間口方向の両側の限界位置まで動かしたときの衝撃をクッションゴム58a,58bで緩和できる。
つづいて、トーメンタルタワー2の倒れを防止する倒れ防止装置4は、図2,3に示すように、本体部20の上端部に回転自在に取り付けられたローラ40と、固定壁Wに固定されてローラ40が走行するレール41とを備える。固定壁Wは、詳細に図示しないが、化粧板と、化粧板を支える躯体とを有して構成されており、レール41は躯体に埋め込まれたアンカーボルトを利用して固定壁Wの躯体に固定されている。
また、ローラ40は、二つで一組とされており、本体部20における間口方向の両側に一組ずつ計四個設けられ、全て水平回転する。図8に示すように、レール41はH鋼であり、ウェブ41aと、ウェブ41aの両端に設けた一対のフランジ41b,41cとを有する。そして、レール41は、一方のフランジ41bを固定壁Wに向けた状態で間口方向に沿って配置されており、他方のフランジ41cの下部が奥行方向に並ぶ各組のローラ40,40で挟まれる。
このように、二組のローラ40でレール41のフランジ41cを挟んでいるので、トーメンタルタワー2の倒れが防止される。また、トーメンタルタワー2が間口方向へ動くと、ローラ40がフランジ41bを挟みつつ回転する。このため、倒れ防止装置4がトーメンタルタワー2の移動の妨げとならず、トーメンタルタワー2の円滑な移動が可能となる。
以下、本実施の形態の間口照明移動装置であるトーメンタルタワー装置Aを多目的ホールで使用した場合の使用例について説明する。
多目的ホールで演奏会が行われる場合には、図1中、中心線Xの左側に示すように、天井反射板b1を演出空間Pの上部に寝かせた状態で設け、正面反射板b2を演出空間Pの奥に起立した状態に設け、一対の側面反射板b3,b4を演出空間Pの上手側と下手側に起立した状態に設ける。
また、演奏会が行われる場合には、トーメンタルタワー2を袖側へ後退させて格納位置に配置する。さらに、舞台1の開口10aにおいて、基台30で塞がれない舞台側部分を分割床36で塞ぐ。
このように、多目的ホールで演奏会が行われる場合には、音響反射板Bを舞台1上に設置しているので、所望の音響反射効果を得られる。また、トーメンタルタワー2を格納位置に配置するとともに、開口10aを分割床36で塞ぐので、出演者が演出空間Pと袖S1,S2との間を行き来し易い。
その一方、多目的ホールで演劇が行われる場合には、図1中、中心線Xの右側に示すように、天井反射板b1と正面反射板b2を舞台1奥側であって演出空間Pよりも上方に格納するとともに、一対の側面反射板b3,b4をそれぞれ袖S1,S2に格納する。
また、多目的ホールで演劇が行われる場合には、トーメンタルタワー2を舞台側へ前進させて使用位置に配置する。さらに、舞台1の開口10aにおいて、基台30で塞がれない袖側部分を分割床36で塞ぐとともに、着脱幕22bをトーメンタルタワー2に装着する。
このように、演劇が行われる場合には、トーメンタルタワー2が間口Fに接近した位置に配置されるので照明器具Lが間口Fに近づく。よって、間口Fの明るさを容易に確保できる。さらに、トーメンタルタワー2に見切幕22(図4)を取り付けているので、客席側からトーメンタルタワー2の奥(袖S1,S2)が見えるのを防止できる。
つまり、本実施の形態では、多目的ホールを演奏会に適した演奏会形式にしたり、演劇に適した演劇形式にしたりできる。そして、多目的ホールを演奏会形式にした場合には、音響反射板Bを設置して当該音響反射板Bによる音響反射効果を得られるとともに、多目的ホールを演劇形式にした場合には、トーメンタルタワー2を前進させて間口Fの明るさを確保できる。
つづいて、多目的ホールを図1中左側に示す演奏会形式から右側に示す演劇形式に変更する場合、まず、音響反射板Bを格納してから、分割床36と着脱幕22b(図4)を取り外し、ハンドル50を一方へ回転してトーメンタルタワー2を舞台側へ前進させる。そして、トーメンタルタワー2を使用位置まで前進させた状態でハンドル50の回転を停止し、開口10aにおける袖側を分割床36で塞ぐとともに、着脱幕22bをトーメンタルタワー2に取り付ける。
反対に、多目的ホールを図1中右側に示す演劇形式から左側に示す演奏会形式に変更する場合、まず、分割床36と着脱幕22b(図4)を取り外し、ハンドル50を逆方向へ回転してトーメンタルタワー2を袖側へ後退させる。そして、トーメンタルタワー2を格納位置まで後退させた状態でハンドル50の回転を停止し、開口10aにおける舞台側を分割床36で塞いだ後に、音響反射板Bを設置する。
このように、多目的ホールの形態を演劇形式と演奏会形式とで切換える場合、トーメンタルタワー2を袖側へ後退させた状態で音響反射板B、及び他の舞台装置を移動できる。よって、演奏会形式において良好な音響反射効果を得るため、音響反射板Bを間口Fに近づけて配置したとしても、当該音響反射板Bを設置したり格納したりする際にトーメンタルタワー2が邪魔にならない。
つづいて、本実施の形態の間口照明移動装置であるトーメンタルタワー装置Aの作用効果について説明する。
本実施の形態において、トーメンタルタワー装置(間口照明移動装置)Aは、トーメンタルタワー(照明取付用フレーム)2の舞台奥側面を覆う見切幕22を備えている。そして、当該見切幕22の一部が着脱幕22bとなっていて当該部分を開閉できる。このため、当該着脱幕(開閉部)22bをハンドル50と対向する位置に設ければ、見切幕22を全て外さずにハンドル操作ができる。
また、本実施の形態では、見切幕22の開閉部を着脱幕22bにして、当該着脱幕22bをトーメンタルタワー2から完全に分離できる。このため、ハンドル操作のための開口を大きくとれるとともに、見切幕22の開閉を容易にできる。
しかし、見切幕22の構成は上記の限りではなく、適宜変更できる。例えば、見切幕22の開閉部が常設幕22aの下端に常に連結された状態となっており、ハンドル操作時に当該開閉部をめくり上げるようにしてもよい。この場合には、見切幕22を一枚布で形成できる。さらに、トーメンタルタワー2の舞台奥側が客席から見えない構造となっていれば、見切幕22を廃するとしてもよい。
また、本実施の形態の駆動装置5は、舞台1の間口方向に沿って舞台1に取り付けられたラック52と、ラック52に噛合するピニオン51と、ピニオン51を回転するハンドル50とを有して構成されている。このため、作業者がハンドル50を回転することでトーメンタルタワー2を駆動できる。つまり、トーメンタルタワー2を手動で駆動できるので、トーメンタルタワー装置Aを安価にできる。
なお、モータでピニオン51を回転する等、トーメンタルタワー2を電動で駆動するとしてもよい。そして、当該変更は、見切幕22の構成、及び有無によらず可能である。
また、本実施の形態では、ハンドル50とピニオン51との間にウォームギヤ(減速機)55が設けられている。そして、ウォームギヤ55はハンドル50の回転を減速し、ハンドル50の回転方向を切換えてピニオン51へ伝達する。このため、手動でトーメンタルタワー2を駆動する場合であっても、ハンドル操作を軽くできるとともに、ハンドル50の向きを操作し易い向きにできるので、操作性を良好にできる。
さらに、本実施の形態では、ハンドル50の正面を舞台奥側へ向けて配置している。このため、作業者がトーメンタルタワー装置Aの舞台奥側へ降りた状態で、ハンドル50を回転しつつトーメンタルタワー2とともに舞台1上を間口方向へ移動できる。
加えて、本実施の形態では、ウォームギヤ(減速機)55がセルフロック機能を有し、ピニオン51側からのトルク入力に対するハンドル50の回転を阻止する。このため、ハンドル50を回転しなければトーメンタルタワー2を停止した状態に維持できる。よって、トーメンタルタワー2を停止した状態に維持する装置を別途設ける必要がなく、トーメンタルタワー装置Aの構造を簡易にしてコストを低減できる。
なお、減速機はウォームギヤ以外でもよい。また、ハンドル操作に支障がなければ、減速機で回転方向を切換えずにハンドルの回転をピニオンに伝えてもよい。さらに、本実施の形態のように、舞台1とトーメンタルタワー2との間にリニアガイド31,32が設けられている場合、トーメンタルタワー2を比較的抵抗なく移動できる。このため、このような場合には、例えば、ハンドル50とピニオン51との間に回転変換機構を設け、ハンドルの回転を減速せずにピニオンへ伝達するとしてもよい。そして、これらの変更は、見切幕22の構成、及び有無によらず可能である。
また、本実施の形態では、舞台1とトーメンタルタワー(照明取付用フレーム)2との間にリニアガイド31,32が設けられている。このため、本実施の形態のように、トーメンタルタワー2の重量を舞台1で支えるとともに、トーメンタルタワー2を手動で駆動する場合であっても、トーメンタルタワー2を間口方向へ容易且つ円滑に移動できる。
しかし、トーメンタルタワー2の間口方向への移動を可能にする走行装置3の構成は、リニアガイド31,32に限らず適宜変更できる。例えば、基台30の下側に車輪を設け、当該車輪が舞台に取り付けたレール上を走行するとしてもよい。そして、このような変更は、見切幕22の構成及び有無、並びに、駆動装置5の構成によらず可能である。
また、本実施の形態において、トーメンタルタワー装置(間口照明移動装置)Aは、舞台1の間口Fの幅を制限する固定壁(壁部)Wに取り付けられたレール41と、トーメンタルタワー(照明取付用フレーム)2の上部に取り付けられてレール41を舞台1の奥行方向の両側から挟む一組のローラ40,40とを備える。このため、トーメンタルタワー2の重量を舞台1で支える場合であっても、トーメンタルタワー2の倒れを防止できる。
さらに、本実施の形態では、ローラ40,40が二組設けられ、トーメンタルタワー2の間口方向の両側に設けられている。このため、トーメンタルタワー2の倒れを確実に防止できる。
しかし、ローラを三組以上設けてもよい。また、本実施の形態において、レール41はH鋼であるが、それ以外でもよい。さらに、トーメンタルタワー2の倒れが防止されていれば、ローラ40、及びレール41を有して構成される倒れ防止装置4を廃するとしてもよい。加えて、トーメンタルタワー2の転倒を防ぐ上ではローラ40をトーメンタルタワー2の上部に設けるのが好ましいが、例えば、トーメンタルタワー2の中央部にローラを取り付けてもよい。そして、これらの変更は、見切幕22の構成及び有無、駆動装置5の構成、並びに、走行装置3の構成によらず可能である。
また、本実施の形態では、トーメンタルタワー装置(間口照明移動装置)Aが舞台1の袖S1,S2に設置されて照明器具Lを取り付け可能なトーメンタルタワー(照明取付用フレーム)2と、トーメンタルタワー2を駆動して、トーメンタルタワー2を舞台1の間口方向へ移動させる駆動装置5とを備えている。
このため、トーメンタルタワー装置Aが多目的ホールに利用される場合であっても、音響反射板B等の他の舞台装置の設置、及び移動の妨げにならない位置にトーメンタルタワー2を移動できる。加えて、照明器具Lを利用する場合には、トーメンタルタワー2を間口に近い位置に配置できる。よって、トーメンタルタワー2を多目的ホールに利用する場合であっても、間口Fの明るさを容易に確保できる。
<第二の実施の形態>
つづいて、本発明の第二の実施の形態に係る間口照明移動装置について説明する。以下の説明において、第一の実施の形態で説明した構成と同じか対応する構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図9(a)に示すように、本実施の形態に係る間口照明移動装置は、多目的ホールに利用されるプロセニアムウイング移動装置Mwであり、プロセニアム桁部昇降装置Mpとともに舞台1の間口Fの大きさを変更する間口調整装置Mを構成する。
プロセニアムウイング移動装置Mwは、舞台1の上手側と下手側の袖S1,S2に、それぞれ設置されている。これら一対のプロセニアムウイング移動装置Mw,Mwは、共通の構成を備えており、客席側から見て左右対称に配置されている。
ここでいう「プロセニアムウイング移動装置が袖に設置された」状態とは、装置全体が袖S1,S2に収容されて客席から完全に見えなくなった状態のみに限られず、一部が客席から見える状態も含む。プロセニアムウイング移動装置Mwは、常に固定壁Wに隠れた位置にある前述のトーメンタルタワー装置Aとは異なり、固定壁Wに完全に隠れた位置から観客に見える位置まで移動して、舞台1の間口Fの幅を変更できるようになっている。
具体的に、プロセニアムウイング移動装置Mwは、図10,11に示すように、プロセニアムウイング6と、プロセニアムウイング6を間口方向へ移動可能にする走行装置3Aと、プロセニアムウイング6を間口方向へ駆動する駆動装置5Aと、プロセニアムウイング6の振れ止めをする振止装置7とを備える。
プロセニアムウイング6は、フレーム材、単管パイプ等を組み立てて形成される構造体である躯体部60と、当該躯体部60の舞台手前側に取り付けられるサイドパネル61とを有する。躯体部60は、サイドパネル61が固定されるパネル固定部60aと、当該パネル固定部60aの舞台奥側に設けられて照明器具Lが上下に並べて取り付けられる照明取付部60bと、梯子60c(図10)とを有する。
本実施の形態では、プロセニアムウイング6の躯体部60が間口Fを照らす照明器具Lを取り付けるための照明取付用フレームである。そして、当該躯体部60がサイドパネル61と一体となって間口方向へ移動するとともに、駆動装置5Aにより駆動され、振止装置7により振れ止めされる。図示しないが、照明取付部60bの任意の位置に足場板が取り付けられており、作業者が梯子60cから足場板へ乗り移り、当該足場板に乗った状態で照明器具Lを操作できるようになっている。
また、サイドパネル61は、後に詳細に説明するように、プロセニアムウイング移動装置Mwで間口Fの幅を狭めた際、間口Fを形成するため固定壁Wに設けた開口の側部を塞げる大きさに設定されている。サイドパネル61は、不透明であるので、サイドパネル61で固定壁Wに設けた開口の側部を塞ぐと、客席からサイドパネル61よりも舞台奥側が見えなくなる。
なお、プロセニアムウイング6の構造は、上記の限りではなく、適宜変更できる。例えば、プロセニアムウイング6に、照明器具L以外にスピーカ等を取り付けてもよい。
つづいて、プロセニアムウイング6を間口方向へ移動可能にする走行装置3Aは、図10に示すように、躯体部60の上端部に取り付けられた二つのトロリ37,38と、これらトロリ37,38が走行するレール39とを有する。
二つのトロリ37,38は、プロセニアムウイング6の躯体部60の上端部であって間口方向の両端部にそれぞれ連結されている。間口Fに近い舞台側のトロリ37は、プレントロリである。その一方、間口Fから離れた袖側のトロリ38は、ギヤードトロリである。これらトロリの構成は公知であるので、ここでの詳細な説明を省略するが、ギヤードトロリであるトロリ38は、駆動装置5Aと一体となっている。
当該駆動装置5Aは、ハンドホイール59と、ハンドホイール59の回転を減速してトロリ38の駆動輪(図示せず)に伝達する減速機(図示せず)と、ハンドホイール59に巻掛けられたハンドチェーン59aとを有する。ハンドチェーン59aは、舞台1の床面近くまで延びており、舞台1上の作業者がハンドチェーン59aを操作してハンドホイール59を回転するとトロリ38の駆動輪が回転駆動される。すると、当該トロリ38、プロセニアムウイング6、及び舞台側のトロリ37が一体となってレール39に沿って移動する。
レール39は、舞台1の間口方向に沿って配置されている。このため、プロセニアムウイング6が間口方向へ移動でき、当該プロセニアムウイング6とともに間口Fを照らす照明器具Lが移動する。
さらに、間口Fを形成するため固定壁Wに形成された開口の周縁であって、その上部を上縁w1、左右を側縁w2,w3とすると、図10に示すように、レール39は、固定壁Wの上縁w1よりも上側であって側縁w2,w3よりも袖側から上縁w1の上側へと延びている。
そして、プロセニアムウイング6が固定壁Wの側縁w2,w3よりも袖側にあり、客席から見て固定壁Wに完全に隠れた状態であって、最も袖側へ後退した状態にある格納位置(図9(b)中、中心線Xの左側、二点鎖線)からプロセニアムウイング6が側縁w2,w3を超えて舞台側へ最も前進し、プロセニアムウイング6が固定壁Wの開口を通じて客席から見える使用位置まで移動できるようになっている。図9(b)中、中心線Xの右側は、プロセニアムウイング6が使用位置へ移動する過程を示示している。
また、プロセニアムウイング6は、格納位置及び使用位置で停止できるのは勿論、固定壁Wに完全に隠れた状態で、且つ、格納位置から前進して先端(舞台側の端部)を固定壁Wの側縁w2,w3に近接させた状態にある照明使用位置(図9(b)中、中心線Xの左側、破線)でも停止する。
プロセニアムウイング6が格納位置及び照明使用位置にある場合には、舞台1の間口Fの幅は、固定壁Wの開口の横幅(上手側の側縁w2から下手側の側縁w3までの距離)に等しい。しかし、プロセニアムウイング6が使用位置にある場合には、固定壁Wの開口の側部をプロセニアムウイング6で塞ぐので間口Fの幅が狭くなる。
換言すると、本実施の形態では、固定壁Wの開口で間口Fの最大幅が決まる。そして、舞台1の上手側と下手側のプロセニアムウイング6,6が格納位置及び照明使用位置にある場合には、固定壁Wの開口の横幅が間口Fの幅となる(図9(b)中、中心線Xの左側)。その一方、舞台1の上手側と下手側のプロセニアムウイング6,6が使用位置にある場合には、両プロセニアムウイング6,6の間隔が間口Fの幅となる。
つまり、プロセニアムウイング6を前進させると、間口Fの幅を狭める方向へ変更できる。なお、プロセニアムウイング6の使用位置は、多段階に設定されていても、無段階に設定されていてもよい。この場合には、間口Fの幅を多段階又は無段階に調整できる。
また、図10,11に示すように、レール39は、固定壁Wに固定されたアーム39aの先端に連結されるとともに、その両端が演出空間Pよりも上方に設けた簀子から垂下されるワイヤ39bに連結されている。このように、本実施の形態では、固定壁Wと簀子の両方でレール39を支えているので、より安全な設計とすることができる。しかし、レール39の固定方法はこの限りではなく、適宜変更できる。
また、図11に示すように、プロセニアムウイング6は、後述するプロセニアム桁部8との干渉を避けるため、固定壁Wから若干離れた位置に設けられている。しかし、当該プロセニアムウイング6の位置は、プロセニアム桁部8との位置関係、及びプロセニアム桁部8の構成に応じて適宜変更可能であり、場合によっては、プロセニアムウイング6を固定壁Wと近接した位置に設けてもよいのは勿論である。
つづいて、照明取付用フレーム2Aの振れ止めをする振止装置7は、図11に示すように、プロセニアムウイング6の下端から下方へ突出するガイドシュー70と、舞台1に固定されてガイドシュー70が摺接可能なガイドレール71とを備える。
ガイドシュー70は、プロセニアムウイング6の躯体部60に、その下端から垂下した状態に固定された板状の部材であり、板面が舞台の手前及び奥側を向くようにして配置される。また、ガイドシュー70は、躯体部60の進行方向(間口方向)に並べて二つ設けられている(図10)。
その一方、ガイドレール71は、一対の長尺な板状部材71a,71b(図11)を有して構成されており、これらが舞台1の間口方向に沿うように、舞台1の奥行方向に平行に並べて配置される。そして、一対の板状部材71a,71bの間に形成される隙間にガイドシュー70が摺動自在に挿入されており、ガイドレール71でガイドシュー70を板厚方向(奥行方向)の両側から挟んでいる。
一対の板状部材71a,71bの間に形成される隙間の間隔は、ガイドシュー70の板厚よりも若干広く設定されている。このため、プロセニアムウイング6を移動する際、一対の板状部材71a,71bの間をガイドシュー70が抵抗なく間口方向へ移動できるとともに、一対の板状部材71a,71bでガイドシュー70が奥行方向へ移動するのを抑制できる。よって、当該振止装置7によれば、プロセニアムウイング6の間口方向への移動を妨げずに、プロセニアムウイング6が奥行方向へ振れるのを抑制できる。
さらに、本実施の形態に係るプロセニアムウイング移動装置Mwは、プロセニアムウイング6を任意の位置で停止した状態に維持するためのストッパ(図示せず)を備えている。しかし、第一の実施の形態のトーメンタルタワー装置Aのように、セルフロックのかかる構造となっていてもよい。
また、本実施の形態に係るプロセニアムウイング移動装置Mwにおいても、プロセニアムウイング6を限界位置まで動かしたときの衝撃を吸収するクッションゴム(図示せず)を備えていてもよい。
以上をまとめると、上記プロセニアムウイング移動装置Mwによれば、ハンドチェーン59aの操作によりハンドホイール59を任意の方向へ回転すると、トロリ38の駆動輪が回転駆動されてプロセニアムウイング6が間口方向の袖側又は舞台側へ移動する。
そして、多目的ホールで演奏会が催される場合等、間口Fを照らす照明器具Lが不要な場合には、プロセニアムウイング6を最も袖側へ寄せた格納位置に配置して、当該プロセニアムウイング6が音響反射板の設置の妨げになるのを防止する。
その一方、演劇が催される場合等、間口Fを照らす照明器具Lが利用される場合には、プロセニアムウイング6を舞台側へ前進させた照明使用位置又は使用位置に配置して、照明器具Lを舞台1の間口Fに近づける。プロセニアムウイング6を照明使用位置に配置した場合には間口Fの幅を広くでき、使用位置に配置した場合には間口Fの幅を狭くできる。
また、プロセニアムウイング6の駆動時において、駆動装置5Aと走行装置3Aが一体的に設けられていて、駆動装置5Aによる推力を走行装置3Aが直接受ける構造となっている。よって、推力を効率よく伝達してハンドホイール59の回転操作を軽くできるとともに、プロセニアムウイング6が図10中左右に傾くのを抑制できる。
また、本実施の形態では、プロセニアムウイング6の上端を走行装置3Aに連結し、当該プロセニアムウイング6を吊り下げた状態で移動できるとともに、当該プロセニアムウイング6の下部に振止装置7が設けられている。よって、プロセニアムウイング6の上下長が長くても、プロセニアムウイング6を安定して走行させられる
つづいて、プロセニアムウイング移動装置Mwとともに間口調整装置Mを構成するプロセニアム桁部昇降装置Mpは、プロセニアム桁部8と、当該プロセニアム桁部8を上下方向へ移動させる昇降装置(図示せず)とを備える。昇降装置の構成は任意であるが、例えば、プロセニアム桁部8の上下方向への移動をガイドするガイド部材と、簀子に固定されてプロセニアム桁部8を吊り下げるワイヤを繰り出し巻き取るウインチとを備えるとよい。
プロセニアム桁部8は、詳細な図示を省略するが、フレーム材、単管パイプ等を組み立てて形成される構造体である躯体部と、当該躯体部の客席から見える部分を覆うパネルとを有する。
そして、プロセニアム桁部8が固定壁Wの上縁w1よりも上側にあり、客席から見て固定壁Wに完全に隠れた状態にある格納位置(図9(b)中、中心線Xの左側)からプロセニアム桁部8が上縁w1を超えて下方へ移動し、プロセニアム桁部8が固定壁Wの開口を通じて客席から見える使用位置(図9(b)中、中心線Xの右側)まで移動できるようになっている。
プロセニアム桁部8が格納位置にある場合には、舞台1の間口Fの高さは、固定壁Wの開口の縦幅(舞台1の床面から上縁w1までの距離)に等しい。しかし、プロセニアム桁部8が使用位置にある場合には、固定壁Wの開口の上部をプロセニアム桁部8で塞ぐので間口Fの高さが低くなる。
換言すると、本実施の形態では、固定壁Wの開口で間口Fの最大高さが決まる。そして、プロセニアム桁部8が格納位置にある場合には、固定壁Wの開口の縦幅が間口Fの高さとなる(図9(b)中、中心線Xの左側)。その一方、プロセニアム桁部8が使用位置にある場合には、舞台1の床面からプロセニアム桁部8の下端までの距離が間口Fの高さとなる(図9(b)中、中心線Xの右側)。
つまり、プロセニアム桁部8を下降させると、間口Fの高さを低くする方向へ変更できる。なお、プロセニアム桁部8の使用位置は、多段階に設定されていても、無段階に設定されていてもよい。この場合には、間口Fの高さを多段階又は無段階に調整できる。また、音響反射板等、他の舞台装置の設置の妨げにならなければ、プロセニアム桁部8の下端を常に固定壁Wの上縁w1から下側へ突出させて、当該プロセニアム桁部8で間口Fの最大高さを決めてもよい。
つづいて、プロセニアム桁部8には、プロセニアムウイング6の進入を許容する収納部8aが形成されるとともに、当該収納部8aの下端開口を開閉するスライドパネル80が設けられている。スライドパネル80には、カウンタウエイト(図示せず)が取り付けられていて、当該カウンタウエイトにより収納部8aの下端開口を閉じる方向へ附勢されている。さらに、スライドパネル80には、プロセニアムウイング6が突き当たる突当板80aが設けられている。
上記構成によれば、舞台1の間口Fを小さくするには、プロセニアム桁部8及びプロセニアムウイング6を使用位置に配置する。この場合、図9(b)中、中心線Xの右側に示すように、プロセニアムウイング6がスライドパネル80を開きつつ前進して収納部8aに進入する。このため、プロセニアム桁部8とプロセニアムウイング6が奥行方向に重なる場合であっても、間口調整装置M全体としての奥行方向の厚みを薄くできるとともに、客席から見たときのプロセニアム桁部8とプロセニアムウイング6との一体感が向上する。
反対に、舞台1の間口Fの幅を広げるため、プロセニアムウイング6を後退させて収納部8aから退出させると、カウンタウエイトの附勢力によりスライドパネル80が閉じ方向へ移動してプロセニアムウイング6が退出した分だけ収納部8aの下端開口を閉じる。このように、本実施の形態では、カウンタウエイトでスライドパネル80を閉じ方向へ附勢しているので、プロセニアムウイング6の退出に伴い収納部8aの下端開口をスライドパネル80で自動的に閉じられる。
しかし、スライドパネル80を閉じ方向へ附勢するための構成は、カウンタウエイトに限られず、適宜変更できる。例えば、コイルばね等のばねの附勢力を利用してもよく、スライドパネル80の自重を利用してもよい。また、スライドパネル80を手動又は電気的に駆動して、収納部8aの下端開口を閉じるとしてもよい。
以下、本実施の形態の間口照明移動装置であるプロセニアムウイング移動装置Mwを備えた間口調整装置Mを多目的ホールで使用した場合の使用例について説明する。
多目的ホールで演奏会が行われる場合には、第一の実施の形態と同様に、舞台1上に音響反射板を設置する。さらに、上手側と下手側のプロセニアムウイング6,6を袖側へ後退させて格納位置(図9(b)中、中心線Xの左側、二点鎖線)に配置するとともに、プロセニアム桁部8を上昇させて格納位置(図9(b)中、中心線Xの左側、破線)に配置する。
このように、多目的ホールで演奏会が行われる場合には、音響反射板を舞台上に設置しているので、所望の音響反射効果を得られる。また、プロセニアムウイング6を最大限に後退させて、間口Fから離した位置に配置できるので、プロセニアムウイング6と音響反射板との干渉を避けられる。
その一方、多目的ホールで演劇が行われる場合には、第一の実施の形態と同様に、音響反射板を格納する。さらに、多目的ホールで演劇が行われる場合であって、間口Fを広くした状態で舞台1を使用する場合には、プロセニアム桁部8を格納位置に配置するとともに、上手側と下手側のプロセニアムウイング6,6を格納位置から一段階前進させた照明使用位置に配置する(図9(b)中、中心線Xの左側)。
また、多目的ホールで演劇が行われる場合であって、間口Fを狭くした状態で舞台1を使用する場合には、プロセニアム桁部8を格納位置から下降させて使用位置に配置するとともに、上手側と下手側のプロセニアムウイング6,6を照明使用位置からさらに前進させた使用位置へ移動させる(図9(b)中、中心線Xの右側)。
つまり、本実施の形態では、多目的ホールを演奏会に適した演奏会形式にしたり、演劇に適した演劇形式にしたりできる。そして、多目的ホールを演奏会形式にした場合には、音響反射板を設置して当該音響反射板による音響反射効果を得られる。
また、多目的ホールを演劇に適した演劇形式にした場合には、プロセニアムウイング6を前進させて間口Fの明るさを確保できる。さらに、間口調整装置Mで間口Fの大きさを調整できるとともに、当該間口Fの大きさによらず当該間口Fに近い位置に照明器具Lが配置されるので、間口Fの明るさを常に確保できる。
また、多目的ホールを演奏会形式と演劇形式とで切換える場合にも、音響反射板の邪魔にならない格納位置にプロセニアムウイング6及びプロセニアム桁部8を配置できる。よって、演奏会形式において良好な音響反射効果を得るため、音響反射板を間口に近づけて配置したとしても、当該音響反射板を設置したり格納したりする際に間口調整装置Mが邪魔にならない。
つづいて、本実施の形態の間口照明移動装置であるプロセニアムウイング移動装置Mw、及び当該プロセニアムウイング移動装置Mwを備えた間口調整装置Mの作用効果について説明する。
本実施の形態において、間口調整装置Mは、舞台1の間口Fの幅を変更するプロセニアムウイング移動装置Mwと、間口Fの高さを変更するプロセニアム桁部昇降装置Mpとを備える。さらに、当該プロセニアム桁部昇降装置Mpが間口Fの高さを制限可能なプロセニアム桁部8を有する。そして、当該プロセニアム桁部8には、プロセニアムウイング6の進入を許容する収納部8aが形成されている。
上記構成によれば、プロセニアムウイング6がプロセニアム桁部8の収納部8aに進入できる。よって、間口調整装置M全体としての奥行方向の厚みを薄くできるとともに、客席から見たときのプロセニアムウイング6とプロセニアム桁部8の一体感が向上する。
さらに、本実施の形態において、収納部8aは、プロセニアム桁部8の舞台奥側であって間口方向の両端部に形成された窪みにより形成されており、上下、舞台奥側、及び袖側に開口する。しかし、収納部8aの構成は、適宜変更が可能である。例えば、収納部8aにおける舞台奥側の開口が閉じられていてもよい。
また、本実施の形態において、プロセニアム桁部8の下端部には、当該プロセニアム桁部8に対して舞台1の間口方向へスライドし、収納部8aの下端開口を開閉するスライドパネル80が取り付けられている。そして、スライドパネル80は、収納部8aの下端開口を閉じる方向へ附勢されている。
上記構成によれば、プロセニアムウイング6が退出するのに伴い、収納部8aの下側開口をスライドパネル80で自動的に閉じられる。よって、収納部8aの下端開口を通じて、客席からプロセニアム桁部8の内部が見えるのを確実に防止できる。
なお、スライドパネル80を附勢するための構成は、適宜変更できる。また、スライドパネル80を手動又は電動で閉じてもよく、この場合には、スライドパネル80が閉じ方向へ附勢されていなくてもよい。さらに、プロセニアムウイング6をプロセニアム桁部8の舞台奥側端よりもさらに奥側に配置してもよく、この場合には収納部8aを廃止できる。
また、本実施の形態では、照明器具Lを取り付け可能な躯体部(照明取付用フレーム)60と、躯体部60の舞台手前側面を覆うサイドパネル61とを有して舞台1の間口Fの幅を制限可能なプロセニアムウイング6が構成されている。このため、当該プロセニアムウイング6を駆動装置5Aで間口方向へ駆動すると、間口Fの幅を変更できる。
つまり、上記構成によれば、間口Fを照らす照明器具Lを移動する間口照明移動装置がプロセニアムウイング移動装置としても機能する。そして、当該プロセニアムウイング移動装置Mwにより間口Fの幅を変更できる。さらに、本実施の形態では、プロセニアム桁部昇降装置Mpで間口Fの高さも変更できる。よって、多目的ホールをより多くのニーズに対応させられる。
また、本実施の形態において、プロセニアムウイング移動装置Mwは、躯体部(照明取付用フレーム)60を含むプロセニアムウイング6を舞台1の間口方向へ移動可能にする走行装置3Aを備え、プロセニアムウイング6が走行装置3Aに吊り下げられた状態で設置されている。そして、走行装置3Aは、間口Fを形成するための開口が形成された固定壁(壁部)Wに固定されたレール39と、レール39を走行する二つのトロリ37,38とを有する。このため、プロセニアムウイング6を走行装置3Aに吊り下げた状態で間口方向へ移動させるのが容易である。
さらに、一方のトロリ38が駆動装置5Aにより駆動される駆動輪(図示せず)を有し、駆動装置5Aがハンドホイール59と、ハンドホイール59の回転を減速して駆動輪に伝達する減速機(図示せず)と、ハンドホイール59に巻掛けられたハンドチェーン59aとを有する。このように、駆動装置5Aが減速機を有しているので、プロセニアムウイング6を含む可動部の重量が重くても、ハンドチェーン59aを利用したハンドホイール59の回転操作を軽くでき、作業負荷が軽減される。
また、上記構成によれば、駆動装置5Aの推力が走行装置3Aに直接作用するので、上記推力が走行装置3Aに効率よく伝達される。このことからも、ハンドホイール59の回転操作を軽くでき、作業負荷が軽減される。さらに、駆動装置5Aにおいて推力を走行装置3Aへ伝える推力伝達部がプロセニアムウイング6の躯体部60の上部に設けられているので、プロセニアムウイング6でスライドパネル80を押し開く際、当該スライドパネル80へ効率よく力を伝達できる。
なお、走行装置3A及び駆動装置5Aの構成は、適宜変更できる。例えば、本実施の形態では、走行装置3Aが二つのトロリ37,38を有しているが、当該トロリの数は適宜変更可能であり、少なくとも一つのトロリに駆動装置が取り付けられていればよい。
また、本実施の形態のように、間口照明移動装置がプロセニアムウイング移動装置である場合であっても、第一の実施の形態のトーメンタルタワー装置Aのように、舞台1でプロセニアムウイング6の荷重を受ける構造にしてもよい。同様に、間口照明移動装置がトーメンタルタワー装置である場合であっても、本実施の形態のプロセニアムウイング移動装置Mwのように、トーメンタルタワーを走行装置に吊り下げて移動してもよい。
また、本実施の形態では、プロセニアムウイング6の躯体部60の下端に取り付けられたガイドシュー70と、舞台1の間口方向に沿って配置されてガイドシュー70を摺動自在に挟み、ガイドシュー70の間口方向への移動を許容するガイドレール71とを備える。当該構成によれば、プロセニアムウイング6が吊り下げた状態に設置される場合であって、プロセニアムウイング6が上下に長い場合であっても、プロセニアムウイング6の下側が奥行方向に揺れるのを抑制できる。よって、プロセニアムウイング6を安定して走行させられる。
さらに、プロセニアムウイング6の重量を支えているのは主に走行装置3Aであって、ガイドレール71にかかる荷重が小さいので、ガイドレール71を小型にできる。また、ガイドシュー70が板状であって肉厚が薄いので、ガイドレール71におけるガイドシュー70が挿入される隙間(本実施の形態においては、板状部材71a,71bの間に形成される隙間)が狭い。よって、ガイドレール71を舞台1に埋め込んだ状態に設置した場合(図10,11)、ガイドレール71の隙間を塞がなくても、演者、作業者等の通行の妨げにならない。
また、本実施の形態では、ガイドレール71が一対の板状部材71a,71bを有して構成されており、これら板状部材71a,71bの間にガイドシュー70が挿入されている。よって、振止装置7の構成が簡易であるが、当該振止装置の構成は適宜変更できる。
例えば、ガイドシュー70の位置及び数を適宜変更できるのは勿論、第一の実施の形態における倒れ防止装置4のように、ローラ等を振止装置として利用してもよい。そして、このような変更は、間口照明移動装置がトーメンタルタワー装置である場合にも可能である。
また、本実施の形態では、プロセニアムウイング移動装置(間口照明移動装置)Mwが舞台1の袖S1,S2に設置されて照明器具Lを取り付け可能な躯体部(照明取付用フレーム)60を含むプロセニアムウイング6と、プロセニアムウイング6を舞台1の間口方向へ移動させる駆動装置5Aとを備えている。
このため、プロセニアムウイング6が多目的ホールに利用される場合において、音響反射板等の他の舞台装置の設置、及び移動の妨げにならない位置にプロセニアムウイング6を移動できる。加えて、照明器具Lを利用する場合には、プロセニアムウイング6を舞台側へ移動して照明器具Lを間口に近い位置に配置できる。よって、照明取付用フレームである躯体部60を含むプロセニアムウイング6を多目的ホールに利用して、躯体部60に取り付けた照明器具Lで間口Fを照らす場合であっても、間口Fの明るさを容易に確保できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。