以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側とする。図1に示す矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備えて構成される。この過給機本体1は、ベアリングハウジング2を備える。ベアリングハウジング2の左側には、締結機構3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング6が連結される。ベアリングハウジング2、タービンハウジング4、コンプレッサハウジング6は一体化されている。
ベアリングハウジング2の外周面には、突起2aが設けられている。突起2aは、タービンハウジング4近傍に設けられる。突起2aは、ベアリングハウジング2の径方向に突出する。また、タービンハウジング4の外周面には、突起4aが設けられている。突起4aは、ベアリングハウジング2近傍に設けられる。突起4aは、タービンハウジング4の径方向に突出する。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結して固定される。締結機構3は、例えば、突起2a、4aを挟持するGカップリングで構成される。
ベアリングハウジング2には、軸受孔2bが形成されている。軸受孔2bは、過給機Cの左右方向に貫通する。軸受孔2bには、セミフローティング軸受7(軸受部材)が設けられる。セミフローティング軸受7によって、シャフト8が回転自在に軸支されている。シャフト8の左端部にはタービンインペラ9が設けられる。タービンインペラ9は、タービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の右端部にはコンプレッサインペラ10が設けられる。コンプレッサインペラ10は、コンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
コンプレッサハウジング6には、吸気口11が形成されている。吸気口11は、過給機Cの右側に開口する。吸気口11は、不図示のエアクリーナに接続される。また、上記のように、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6が連結された状態では、ディフューザ流路12が形成される。ディフューザ流路12は、ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6の対向面によって形成される。ディフューザ流路12は、空気を昇圧する。ディフューザ流路12は、シャフト8の径方向(以下、単に径方向と称す)内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路12は、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気口11に連通している。
また、コンプレッサハウジング6には、コンプレッサスクロール流路13が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は環状である。コンプレッサスクロール流路13は、例えばディフューザ流路12よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口と連通する。コンプレッサスクロール流路13は、ディフューザ流路12とも連通している。コンプレッサインペラ10が回転すると、吸気口11からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
タービンハウジング4には、吐出口14が形成されている。吐出口14は、過給機Cの左側に開口する。吐出口14は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。また、タービンハウジング4には、流路15と、タービンスクロール流路16とが設けられている。タービンスクロール流路16は環状である。タービンスクロール流路16は、例えば流路15よりもタービンインペラ9の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路16は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口は、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。ガス流入口は、上記の流路15とも連通している。ガス流入口からタービンスクロール流路16に導かれた排気ガスは、流路15およびタービンインペラ9を介して吐出口14に導かれる。吐出口14に導かれる排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させることとなる。
そして、上記のタービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ10の回転力によって昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
図2は、図1の破線部分の抽出図である。ベアリングハウジング2には、油路2cが形成される。油路2cには、不図示のポンプから送出された潤滑油が導入される。油路2cは、軸受孔2bに開口する。油路2cから軸受孔2bに潤滑油が流入する。軸受孔2bに流入した潤滑油は、軸受孔2bに設けられたセミフローティング軸受7に供給される。軸受孔2bと、セミフローティング軸受7と、シャフト8により、軸受構造Bが構成される。ここで油路2cは、過給機Cがエンジンに搭載された姿勢状態で、例えば重力方向における上方向から下方向に向かって形成される。
セミフローティング軸受7は、円筒形状の本体7aを有する。本体7aには、シャフト8が挿通される。本体7aは、外径側(外周面側)に、外側大径部7bと、外側小径部7cと、外側傾斜部7dとを有する。外側大径部7bと、外側小径部7cと、外側傾斜部7dとは、軸受孔2bの内周面と対向する。
外側大径部7bは、シャフト8の回転軸方向(以下、単に軸方向と称す)に離間して2つ設けられる。2つの外側大径部7bは、外側小径部7cおよび外側傾斜部7dよりも軸受孔2bの内周面に近接する。2つの外側大径部7bは、ダンパ部として機能する。
外側小径部7cは、2つの外側大径部7bの間に設けられる。外側小径部7cは、外側大径部7bの外径より小さい外径を有する。外側小径部7cは、油路2cが軸受孔2bと連通する開口と対向する。
外側傾斜部7dは、2つの外側大径部7bと、外側小径部7cとの間に設けられる。外側傾斜部7dは、軸方向に離間して2つ設けられる。外側傾斜部7dは、外側小径部7cと外側大径部7bを接続する。外側傾斜部7dの外径は、外側小径部7c側から外側大径部7b側に向かって大きくなる(漸増する)。
本体7aは、内径側(内周面側)に、内側小径部7eと、内側大径部7fと、内側傾斜部7gとを有する。内側小径部7eと、内側大径部7fと、内側傾斜部7gとは、シャフト8の外周面と対向する。
内側小径部7eは、軸方向に離間して2つ設けられる。2つの内側小径部7eは、内側大径部7fおよび内側傾斜部7gよりもシャフト8の外周面に近接する。2つの内側小径部7eの内周面には、それぞれ軸受面7hが形成される。
内側大径部7fは、2つの内側小径部7eの間に設けられる。内側大径部7fは、内側小径部7eの内径より大きい内径を有する。
内側傾斜部7gは、2つの内側小径部7eと、内側大径部7fとの間に設けられる。内側傾斜部7gは、軸方向に離間して2つ設けられる。内側傾斜部7gは、内側小径部7eと内側大径部7fを接続する。内側傾斜部7gの内径は、内側小径部7e側から内側大径部7f側に向かって大きくなる(漸増する)。内側傾斜部7gと内側大径部7fの内周面には、非軸受面7iが形成される。
このように、本体7aの内周面には、軸方向に離隔する2つの軸受面7h(ラジアル軸受面)が形成される。2つの軸受面7hは、シャフト8を軸支する。また、本体7aの内周面には、2つの軸受面7hの間に、非軸受面7iが形成される。すなわち、非軸受面7iは、図2中、左側の軸受面7hよりも右側(コンプレッサインペラ10側)、かつ、右側の軸受面7hよりも左側(タービンインペラ9側)に位置する。軸受面7hの内径は、非軸受面7iの内径よりも小径に形成されている。換言すれば、非軸受面7iは、軸受面7hの内径よりも大きい内径を有する。
本体7aは、2つの外側大径部7b(内側小径部7e)の間(すなわち、外側小径部7cおよび内側大径部7f)に導入孔(潤滑油導入部)7jを有する。導入孔7jは、本体7aの外周面と内周面を貫通する。導入孔7jは、本体7aの外周面に入口端を有する。導入孔7jは、本体7aの内周面に出口端を有する。導入孔7jは、本体7aの内周面とシャフト8の外周面との間に潤滑油を導入する。
導入孔7jは、油路2cに対し、シャフト8の回転方向にずれた位置に設けられる。本実施形態において、導入孔7jは、油路2cに対し、シャフト8の回転方向に90°ずれた位置に設けられる。ただし、油路2cに対する導入孔7jの位置はこれに限らない。例えば、油路2cに対して、シャフト8の回転方向に180°ずれた位置に導入孔7jが設けられてもよい。また、導入孔7jは、油路2cに対向してもよい。本実施形態では、導入孔7jは、油路2cと軸方向の位置が一部重なる。ただし、導入孔7jは、油路2cに対して、軸方向に完全にずれた位置に設けられてもよい。
本体7aは、2つの外側大径部7b(内側小径部7e)の間(すなわち、外側小径部7cおよび内側大径部7f)に貫通孔7kを有する。貫通孔7kは、本体7aの外周面と内周面を貫通する。貫通孔7kは、シャフト8を挟んで油路2cと反対側に配される。貫通孔7kは、油路2cと軸方向の位置が一部重なる。ただし、貫通孔7kは、油路2cに対して、軸方向に完全にずれた位置に設けられてもよい。
ベアリングハウジング2には、ピン孔2dが形成されている。ピン孔2dは、軸受孔2bを挟んで油路2cと反対側に配される。ピン孔2dは、貫通孔7kに対向する部位に形成される。ピン孔2dは、軸受孔2bを形成する壁部を外周面から内周面にかけて貫通している。
位置決めピン17は、ピン孔2dに圧入される。位置決めピン17の先端は、セミフローティング軸受7の貫通孔7kに挿入される。位置決めピン17によって、セミフローティング軸受7の回転、および、軸方向の移動が規制される。ここで、位置決めピン17と貫通孔7kとの間に僅かな隙間が形成される。ただし、位置決めピン17の先端は、貫通孔7kに対して圧入されてもよい。この場合、例えばベアリングハウジング2のピン孔2dと位置決めピン17の間に僅かな隙間を設けることができる。また、位置決めピン17と貫通孔7kとの間に僅かな隙間が形成されてもよい。
シャフト8は、セミフローティング軸受7の本体7aと対向する部位に、小径部8aと、小径部8aよりも径が大きい2つの大径部8bを有する。大径部8bは、小径部8aにおける軸方向の両側にそれぞれ形成される。大径部8bは、セミフローティング軸受7の軸受面7hに対し、シャフト8の径方向に対向する。また、大径部8bは、セミフローティング軸受7の内側傾斜部7gに対し、シャフト8の径方向に対向する。したがって、大径部8bは、セミフローティング軸受7の非軸受面7iの一部と、シャフト8の径方向に対向する。小径部8aは、セミフローティング軸受7の非軸受面7iに対し、シャフト8の径方向に対向する。ただし、シャフト8は、本体7aと対向する部位に、小径部8aが形成されなくてもよい。すなわち、シャフト8は、本体7aと対向する部位が、一定の径を有する円柱形状であってもよい。
セミフローティング軸受7の非軸受面7iと、シャフト8は、シャフト8の径方向に離隔しており、本体7a内に間隙Sが形成されている。そして、本体7aには、シャフト8の径方向に貫通する導入孔7jが設けられている。導入孔7jは、非軸受面7iに開口しており、導入孔7jを通じて間隙Sに潤滑油が供給される。
セミフローティング軸受7は、位置決めピン17によってベアリングハウジング2に対する相対的な移動が規制されている。そのため、シャフト8が回転すると、シャフト8の大径部8bとセミフローティング軸受7の軸受面7hとの間に相対的な回転移動が生じる。このとき、間隙Sに供給された潤滑油が2つの軸受面7hを潤滑することで、シャフト8が軸受面7hに軸支される。
また、シャフト8には、大径部8bよりも外径が大きいカラー8cが設けられている。カラー8cは、タービンインペラ9側(図2中、左側)の大径部8bにおけるタービンインペラ9側に連続形成される。カラー8cは、セミフローティング軸受7の軸方向のタービンインペラ9側の端面7mに対向し、シャフト8と一体回転する。セミフローティング軸受7の端面7m(スラスト軸受面)は、カラー8cとの隙間に潤滑油が供給されてシャフト8のスラスト荷重を受ける。ここで、端面7mとカラー8cとの隙間には、軸受面7hを潤滑した後の潤滑油が供給される。
図3は、セミフローティング軸受7の断面図である。図3に示すように、本体7aは、内周面に2つの周溝18を有する。周溝18は、2つの軸受面7hそれぞれに設けられ、互いに軸方向に離間して配される。周溝18は、シャフト8の周方向に延在する環状の溝である。
潤滑油は、図2に示す油路2cから導入孔7jを介して間隙Sに流入する。潤滑油は、本体7aの内周面とシャフト8との間を流れる。間隙Sに流入した潤滑油は、シャフト8の回転につられて回転流動する。また、潤滑油は、導入孔7jから一対の軸受面7hが離隔する方向(すなわち、セミフローティング軸受7の軸方向の両端側)に移動する。本実施形態では、潤滑油は、軸受面7hとシャフト8との間を、一対の軸受面7hが離隔する方向に向かって流れる。
このとき、潤滑油に異物が含まれる場合、異物は、潤滑油の回転流動に伴い、シャフト8の回転方向に回転する。また、異物は、潤滑油の軸方向の移動に伴い、セミフローティング軸受7の導入孔7jから軸受面7hに向かって移動する。異物は、遠心力によってセミフローティング軸受7の内周面(非軸受面7i)に近接しながら、軸受面7hに向かう。その結果、異物は、内側傾斜部7gのうち内側小径部7eに最も近い小径端部に到達する。
周溝18は、内側傾斜部7gのうち内側小径部7eに最も近い小径端部近傍に設けられる。周溝18は、軸受面7hに隣接する位置に設けられる。周溝18は、軸受面7hと導入孔7jとの間、もしくは、軸受面7hのうち、軸方向の中心よりも導入孔7j側に設けられる。換言すれば、周溝18は、軸受面7hに対し潤滑油の流れ方向の上流側に形成される。導入孔7jから軸受面7hに向かって移動した異物は、軸受面7hとシャフト8との間に到達する前に周溝18の内部に導入されることとなる。周溝18は、異物を内部で周回させることで異物を内部に留める(捕集する)。
周溝18は、軸方向に離間した一対の側壁18aおよび側壁18bを有する。周溝18は、側壁18aおよび側壁18bを接続する底面18cを有する。側壁18aは、周溝18の導入孔7jに近接する側(すなわち、潤滑油の流れ方向の上流側)の側壁である。側壁18bは、周溝18の導入孔7jから離隔する側(すなわち、潤滑油の流れ方向の下流側)の側壁である。底面18cは、シャフト8の外周面と対向する。
側壁18aは、例えば内側傾斜部7gのうち内側小径部7eに最も近い小径端部から軸方向に0.5mm以内に形成される。側壁18aが上記小径端部から0.5mmを超えて形成されると、異物が周溝18に到達する前に、本体7aの内周面とシャフト8の外周面との間に噛み込みやすくなる。
周溝18の軸方向の幅(すなわち、一対の側壁18a、18bの間隔)は、例えば1mm以上である。周溝18の幅を1mm未満とすると、異物を内部で留める捕集能力が低下する。周溝18の内部に留める捕集能力が低下すると、周溝18の外部に異物が離脱しやすくなり、異物が軸受面7hとシャフト8との間に噛み込みやすくなる。
また、周溝18の深さ(すなわち、軸受面7hと底面18cとの間の径方向における距離)は、例えば0.5mm以上である。周溝18の深さを0.5mm未満とすると、周溝18の内部に導入された異物が周溝18の外部に離脱しやすくなり、異物が軸受面7hとシャフト8との間に噛み込みやすくなる。
周溝18の深さは、内側小径部7e(軸受面7h)の内径と内側大径部7f(非軸受面7i)の内径との差と異なる。本実施形態では、周溝18の深さは、内側小径部7e(軸受面7h)の内径と内側大径部7f(非軸受面7i)の内径との差よりも大きい。ただし、周溝18の深さは、内側小径部7e(軸受面7h)の内径と内側大径部7f(非軸受面7i)の内径との差より小さくてもよい。また、周溝18の深さは、内側小径部7e(軸受面7h)の内径と内側大径部7f(非軸受面7i)の内径との差と同じでもよい。
側壁18bは、軸受面7h(または底面18c)との間の角度が90°以下である。すなわち、軸受面7hと、軸受面7hに連続する周溝18の壁部(側壁18b)との間の角度は90°以下である。軸受面7hと側壁18bとの間の角度を90°以下とすることで、周溝18の内部に導入された異物が側壁18bを越えて外部に離脱することを低減できる。なお、軸受面7hと側壁18aとの間の角度を90°以下としてもよい。
また、本体7aは、軸受面7hに油溝(軸受溝)20を有する。油溝20は、軸方向に直線的に延在する。本実施形態では、油溝20は、2つの軸受面7hのそれぞれに形成される。ただし、油溝20は、2つの軸受面7hのうち少なくとも一方に形成されてもよい。また、いずれの軸受面7hにも油溝20が形成されなくてもよい。油溝20は、本体7aの周方向に離隔して複数(例えば、4つ)設けられる。複数の油溝20は、例えば本体7aの周方向に等間隔に配される。ただし、油溝20の数は、4つに限定されず、2つでも、3つでも、5つ以上あってもよい。また、油溝20の数は、単数であってもよい。なお、油溝20は、軸方向に平行でなくてもよい。例えば、油溝20は、軸方向から傾斜した方向に延在してもよい。
周溝18は、油溝20と連通する。周溝18の深さは、油溝20の深さより深い。換言すれば、軸受面7hには、周溝18より深さが浅い油溝20が設けられる。周溝18の深さは、例えば油溝20の深さに、想定される異物の最大径(例えば、0.2mm)を加えた深さである。好ましくは、周溝18の深さは、油溝20の深さの倍以上である。これにより、周溝18の内部に導入された異物が油溝20の内部に導入される(すなわち、異物が周溝18の外部に離脱する)ことを低減できる。
図4は、本実施形態における図2の一点鎖線部分に対応する部位の断面図である。本体7aは、周溝18に対して軸受面7hと反対側に連続する内側段差部22を有する。内側段差部22は、周溝18に対し導入孔7jの出口端側に形成される。内側段差部22は、周溝18に対し潤滑油の流れ方向の上流側に形成される。内側段差部22は、周溝18および内側傾斜部7gの間に配され、周溝18および内側傾斜部7gと隣接(連続)している。内側段差部22の内径は、内側小径部7e(軸受面7h)の内径よりも大きい。内側小径部7e(軸受面7h)と内側段差部22との内径差は、周溝18の深さより浅い。ただし、内側小径部7e(軸受面7h)と内側段差部22との内径差は、0.1mm以上である。上記内径差が0.1mm未満である場合、異物が内側段差部22の内周面とシャフト8の外周面との間に噛み込みやすくなる。
本実施形態において、周溝18は、軸受面7hと導入孔7jの出口端との間に設けられる。周溝18は、内側小径部7eと内側段差部22との間に形成される。なお、側壁18aの径方向における長さは、側壁18bの径方向における長さより短くなる。側壁18aと側壁18bとの長さの差は、内側小径部7e(軸受面7h)と内側段差部22との内径差に等しい。
周溝18と、内側段差部22と、内側傾斜部7gは、シャフト8の大径部8bと径方向に対向している。本実施形態において、周溝18と、内側段差部22と、内側傾斜部7gは、シャフト8の大径部8bのうち軸方向における中央位置よりも導入孔7jの出口端に近接する側に形成される。ただし、周溝18と、内側段差部22と、内側傾斜部7gは、シャフト8の大径部8bのうち軸方向における中央位置よりも導入孔7jの出口端と反対側に形成されてもよいし、中央位置近傍に形成されてもよい。
図5は、第1変形例における図2の一点鎖線部分に対応する部位の断面図である。本変形例では、本体7aは、周溝18に隣接する内側段差部22を有さない。本体7aは、周溝18の導入孔7j側(すなわち、潤滑油の流れ方向の上流側)に軸受面7h(内側小径部7e)を有する。本変形例では、周溝18は、内側小径部7eの軸受面7h内に配される。周溝18は、内側小径部7e(軸受面7h)のうち軸方向における中央位置よりも導入孔7jの出口端に近接する側に形成される。周溝18は、軸受面7hのうち、潤滑油の流れ方向の上流側に形成される。周溝18は、軸方向の両側において軸受面7hと隣接する。
周溝18の導入孔7j側(すなわち、潤滑油の流れ方向の上流側)の軸受面7hの軸方向の長さは、例えば0.5mm以内に設定される。そのため、周溝18の導入孔7j側において、軸受面7hとシャフト8との間の異物の噛み込みを低減することができる。本変形例において、側壁18aの径方向における長さは、側壁18bの径方向における長さと等しい。なお、周溝18の導入孔7j側(すなわち、潤滑油の流れ方向の上流側)に軸受面7hが形成されなくてもよい。すなわち、周溝18は、内側小径部7e(軸受面7h)の軸方向における導入孔7jの出口端に近接する側の端部に形成されてもよい。その場合、周溝18は、導入孔7j側(すなわち、潤滑油の流れ方向の上流側)において、内側傾斜部7gと隣接する。
図6は、第2変形例における図2の一点鎖線部分に対応する部位の断面図である。本変形例においては、シャフト8の小径部8aには、径方向に突出する外周突起19が、シャフト8の周方向に延在している。
外周突起19は、シャフト8の回転軸に対して垂直な方向よりも、外周突起19の径方向の先端が、2つの軸受面7hの近接方向(図6中、右側)に傾斜している。すなわち、外周突起19のうち、図6中、右側の側面19aは、抉れた形状となっている。
また、本体7aは、内側大径部7f(非軸受面7i)から径方向に突出する内周突起30を有する。外周突起19は、内周突起30と径方向に対向している。そして、外周突起19の先端は、内周突起30の先端より、図6中、右側に延在している。
本変形例では、導入孔7jから軸受面7hに向かう潤滑油に含まれる異物は、内周突起30および外周突起19により堰き止められる。内周突起30および外周突起19は、異物を導入孔7j側(すなわち、軸受面7hと反対側)の空間に留まらせる。その結果、内周突起30および外周突起19は、異物を軸受面7hに行き難くすることができる。ただし、異物の一部は、内周突起30と外周突起19の間を通って、内周突起30および外周突起19から軸受面7h側に進入する場合がある。この場合にも、内周突起30および外周突起19から軸受面7hに向かって進入した異物は、軸受面7hとシャフト8との間に到達する前に周溝18の内部に導入されることとなる。周溝18は、異物を内部で周回させることで異物を内部に留める(捕集する)。
したがって、内周突起30、外周突起19および周溝18により、軸受面7hとシャフト8の間に異物が到達し噛み込むことを低減することができる。また、潤滑油の流れによっては、異物がシャフト8の外周面近傍を連れまわることもあるが、この場合、外周突起19によって、外周突起19の側面19aに近接した異物を軸受面7hから離隔する方向に導くことが可能となる。
上述した実施形態および変形例において、本体7aは、軸受面7hに隣接する周溝18を有する。周溝18を備える構成により、軸受面7hに到達する直前の異物を内部に留める(すなわち、異物を捕集する)ことができる。また、上述した実施形態および変形例において、周溝18は、環状の溝であり、加工が容易である。そのため、簡易な構成でセミフローティング軸受7の軸受面7hへの異物の侵入を抑え、対異物性能を向上することが可能となる。その結果、構成の煩雑化をせずに軸受面7hとシャフト8の間の異物の噛み込みを低減することができる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した実施形態および変形例では、2つの軸受面7hの内側に導入孔7jの出口端を設ける場合について説明した。しかし、例えば、2つの軸受面7hの外側に導入孔の出口端を設けてもよい。
図7は、第3変形例における図2の一点鎖線部分に対応する部位の断面図である。本変形例では、本体7aは、導入孔7jの代わりに、導入孔40を有する。すなわち、本体7aには、上述した導入孔7jが形成されない。導入孔40は、本体7aの一部を貫通する。導入孔40は、軸方向に対して傾斜した方向に延在する。導入孔40の一端(入口端)40aは、本体7aの外周面に開口している。本変形例では、導入孔40の一端40aは、外側傾斜部7dに開口している。ただし、導入孔40の一端40aは、外側小径部7cに開口してもよいし、外側大径部7bに開口してもよい。導入孔40の他端(出口端)40bは、後述の本体7aの内側小径部7eに形成される周溝18に開口している。導入孔40は、本体7aの内周面とシャフト50の外周面との間に潤滑油を導入する。
油路2cから軸受孔2bに供給された潤滑油は、外側小径部7cから外側大径部7bに向かって流れる。外側大径部7bに向かって流れる潤滑油は、外側傾斜部7dに形成された導入孔40の一端40aから導入孔40の内部に導入される。導入孔40の内部を通過した潤滑油は、導入孔40の他端40bから排出される。他端40bから排出された潤滑油の一部は、軸受面7hとシャフト8との間を通って、非軸受面7iとシャフト8との間の間隙Sに導入される。間隙Sに導入された潤滑油は、不図示の排出孔を通って軸受孔2bの外部に排出される。不図示の排出孔は、例えば、位置決めピン17(図2参照)に形成される。
このように、本変形例では、潤滑油は、軸受面7hとシャフト8との間を、一対の軸受面7hが近接する方向に向かって流れる。なお、本変形例では、シャフト50は、本体7aと対向する部位が、一定の径を有する円柱形状である。すなわち、シャフト50は、セミフローティング軸受7の内側に位置する部位の外径が均一である。本体7aの内側大径部7fと内側小径部7eの内径差によって、間隙Sが形成される。
周溝18は、内側小径部7e(軸受面7h)のうち軸方向における中央位置よりも導入孔40の他端(出口端)40bに近接する側に形成される。周溝18は、軸受面7hのうち、潤滑油の流れ方向の上流側に形成される。本変形例では、周溝18は、内側小径部7e(軸受面7h)の軸方向におけるタービンインペラ9側の端部に形成される。これにより、導入孔40の他端40bから軸受面7hに向かって移動した異物は、軸受面7hとシャフト8との間に到達する前に周溝18の内部に導入されることとなる。本変形例においても、上述した実施形態および変形例と同様の効果を得ることができる。
また、上述した実施形態および変形例では、セミフローティング軸受7の非軸受面7iよりも軸受面7hの方が小径に形成される場合について説明した。しかし、例えば、非軸受面7iと軸受面7hの内径が面一であってもよい。この場合、2つの軸受面7hは、本体7aの内周面のうち、シャフト8との間の距離が僅か(第1距離)である領域をいう。非軸受面7iは、本体7aの内周面のうち、シャフト8との間の距離が第1距離より大きい第2距離である領域をいう。シャフト8の小径部8aと大径部8bの外径差によって、上記の間隙Sが形成される。
また、上述した実施形態および変形例では、過給機Cに軸受構造Bが設けられる場合について説明した。しかし、軸受構造Bは、過給機Cに限らず、種々の回転機械に適用可能である。