JP7003008B2 - 層状パネル床版橋構築方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 あゆみ野道B橋再生プロジェクト工事
本願発明は、橋に関する技術であり、より具体的には、軽量な層状パネルを床版に利用した層状パネル床版橋と、その構築方法に関するものである。
近年、橋の床版の取替え工事が頻繁に行われるようになった。これは、車両の通過による繰り返し荷重を長年にわたって受け続けた結果、あるいは凍結防止剤などの影響による塩害が生じた結果、床版に著しい劣化現象がみられたことが主な理由である。床版の劣化が部分的あるいはその程度が軽微である場合は補修や補強で対応することもあるが、劣化の範囲や程度の規模が大きい場合は、主桁は残したまま既設床版を撤去して新たな床版が設置されることが多い。
既設床版がコンクリート床版である場合、新たに設置する床版としてはプレキャストコンクリート床版が多用されている。軽量で長期耐久性に優れ、現場施工の短縮化が可能であり、しかも近年では高強度コンクリート(σ=50N/mm)の使用など高品質であるといった理由から、プレキャストコンクリート床版が好んで用いられるわけである。例えば特許文献1でも、プレキャスト床版の設置に関する技術を開示しており、PC鋼材の配置計画の自由度を担保したうえで鋼桁との合成構造を構築する発明を示している。
一方、コンクリート以外の材料が橋の床版に利用されることもある。その代表的なものが鋼床版であり、その他木製の床版が採用されることもある。例えば特許文献2では、「森林の適正な整備のために発生する小径木や間伐材の有効利用」をひとつの目的として長尺集成材を床版とする木橋について提案している。
特開2018-040168号公報 特開2000-226811号公報
特許文献1に示されるようなプレキャストコンクリート床版を利用すれば、現地での床版設置作業は場所打ちコンクリートに比べ著しくその工程を短縮することができる。その結果、既設橋の交通を早急に開放することができ、利用者にとっても管理者にとっても極めて好適となる。しかしながら、プレキャストコンクリート床版はコンクリート製であるが故に相当に重量があり、したがって当然に人力による運搬や設置は困難であり、通常はクレーン等の揚重機が利用される。そのため、揚重機にかかる費用を要するうえ、重機オペレータや玉掛等の専門技術者を確保する必要があり、さらに揚重機作業に伴う事故のおそれも生じるなど、プレキャストコンクリート床版の設置作業はやや負担の大きな作業となっていた。
特許文献2に示すように単位体積重量の小さい木製材を床版として利用することも考えられるが、この文献が提案するプレストレス木床版を採用すれば必然的に床版厚は相当な寸法となってしまい、すなわち床版全体としては相当な重量となる結果、プレストレス木床版がプレキャストコンクリート床版の設置作業が抱える問題を解決することはない。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、揚重機とこれに伴う専門技術者を必要とすることなく、容易かつ迅速に床版を形成することができる層状パネル床版橋と、その構築方法を提供することにある。
本願発明は、芯材とその両面に薄肉の表面材を積層した層状パネルを利用して橋の床版を形成するという点に着目してなされたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
本願発明の層状パネル床版橋は、床版に複数の層状パネルを利用した橋である。層状パネルは、「芯材」とこの芯材より薄肉の「表面材」を有するとともに、芯材の両面に表面材を積層した構造である。床版は、複数の層状パネルが敷設されるとともに層状パネルが支持桁上に固定(例えば接着固定)されることで形成されたものである。また、表面材に滑り止め加工が施された層状パネルを利用したものとすることもできるし、層状パネルの端部に設けられたボルト孔を用いて高欄が層状パネルにボルト固定されたものとすることもできる。なお芯材としては、バルサ材を用いることができる。
本願発明の層状パネル床版橋は、固定具によって層状パネルが支持桁に固定されたものとすることもできる。この固定具は、上フランジと下フランジ、連結棒を具備し、上フランジと下フランジが連結棒で連結されたものである。そして、連結棒が層状パネルを貫通するとともに、上フランジと下フランジで層状パネルと支持桁の一部を挟持することによって、層状パネルが支持桁に固定される。
本願発明の層状パネル床版橋は、上記とは異なる固定具によって層状パネルが支持桁に固定されたものとすることもできる。この固定具は、貫入体と下フランジ、連結棒を具備し、貫入体と下フランジが連結棒で連結されたものである。そして、貫入体が層状パネル内で固定されるとともに、貫入体と下フランジで層状パネルと支持桁の一部を挟持することによって、層状パネルが支持桁に固定される。
本願発明の層状パネル床版橋は、表面材がFRPであって芯材が木材である層状パネルを利用したものとすることもできるし、表面材がガラス繊維を含むGFRPである層状パネルを利用したものとすることもできる。なお表面材がGFRPである層状パネルを利用する場合、ガラス繊維の配列方向が橋軸直角方向又は橋軸方向となるように層状パネルは支持桁上に敷設される。また本願発明の層状パネル床版橋は、重量が50kg以下である層状パネルや、総厚が59mm以上であって93mm以下である層状パネル、あるいは表面材の厚さが3mm以上であって4mm以下である層状パネルを利用したものとすることもできる。
本願発明の層状パネル床版橋構築方法は、層状パネル床版橋を構築する方法であって、接着剤塗布工程と床版設置工程、高欄設置工程を備えた方法である。このうち接着剤塗布工程では、支持桁上に型枠を設置してこの型枠内に接着剤を塗布するか、あるいは型枠を設置せずに直接支持桁上に接着剤を塗布し、床版設置工程では、人力よって橋軸方向に複数の前記層状パネルを敷設することで床版を形成し、高欄設置工程では、層状パネルの端部に設けられたボルト孔を用いて高欄を層状パネルにボルト固定する。
本願発明の層状パネル床版橋構築方法は、仮固定工程と固定具解除工程をさらに備えた方法とすることもできる。仮固定工程では、床版設置工程の後に固定具(上フランジと下フランジと連結棒を具備するとともにこの上フランジと下フランジが連結棒で連結されたもの)によって層状パネルを支持桁に仮固定し、固定具解除工程では、接着部の養生後に固定具を取り外す。なお仮固定工程では、連結棒を層状パネルに貫通するとともに、上フランジと下フランジによって層状パネルと支持桁の一部を挟持することで、層状パネルを支持桁に仮固定する。あるいは、貫入体と下フランジと連結棒を具備するとともにこの貫入体と下フランジが連結棒で連結された固定具によって、層状パネルを支持桁に仮固定することもできる。この場合の仮固定工程では、貫入体を層状パネル内に固定するとともに、貫入体と下フランジによって層状パネルと支持桁の一部を挟持することで、層状パネルを支持桁に仮固定する。
本願発明の層状パネル床版橋、層状パネル床版橋構築方法、及び層状パネルには、次のような効果がある。
(1)層状パネルが軽量であることから人力による運搬や設置が可能となり、したがって容易かつ迅速に床版を形成することができる。また、床版の形成に揚重機を使用しないことから、揚重機や専門技術者にかかる費用が不要となり、揚重機作業に伴う事故のおそれもなく安全に施工することができる。
(2)層状パネルの表面材には滑り止め加工が施されていることから、改めて舗装を敷設する必要がない。また、表面材には種々の色や模様を付すことができるため、要望に応じて様々な色や模様付きの床版を形成することができる。
(3)層状パネルは容易に小孔を設けることができることから、この小孔を利用することで高欄をはじめ種々の付属物を床版に取り付けることができる。
本願発明の層状パネル床版橋の基本的な構造を示す斜視図。 (a)は橋軸直角方向に分割した複数の層状パネルを主桁上に配置した床版を示す平面図、(b)は横桁上に複数の層状パネルを配置した床版を示す平面図。 層状パネル200を部材ごとに分割した断面図。 凸部とエンボス加工による滑り止め加工を施した表面材を示す部分斜視図。 両フランジ式の固定具によって層状パネルを支持桁に固定した部分断面図。 貫入式の固定具によって層状パネルを支持桁に固定した部分断面図。 橋軸直角方向における両端付近に高欄を設置した層状パネル床版橋を示す断面図。 層状パネル床版橋構築方法の主な工程の流れを示すフロー図。 層状パネル床版橋構築方法の主な工程を説明するステップ図。
本願発明の層状パネル床版橋、層状パネル床版橋構築方法、及び層状パネルの実施形態の一例を図に基づいて説明する。なお、本願発明の層状パネル床版橋構築方法は、本願発明の層状パネル床版橋を構築する方法である。したがって、まずは本願発明の層状パネル床版橋について説明し、その後に本願発明の層状パネル床版橋構築方法について説明することとする。
1.層状パネル床版橋
図1は、本願発明の層状パネル床版橋100の基本的な構造を示す斜視図である。この図に示すように層状パネル床版橋100は、複数の層状パネル200によって床版が形成され、これら層状パネル200は主桁310などの上面(例えば、上フランジ)で固定される。層状パネル床版橋100の床版は、図1に示すように橋軸方向に並べた複数の層状パネル200を主桁310上に固定することで形成することもできるし、図2(a)に示すようにさらに橋軸直角方向に分割した複数の層状パネル200を主桁310上に配置して形成することもできる。あるいは図2(b)に示すように、横桁320(その他、横リブ等)上に複数の層状パネル200を配置することで、層状パネル床版橋100の床版を形成することもできる。以下、橋軸方向に敷設される主桁310や縦桁等、そして橋軸直角方向に敷設される横桁320や横リブ等を含め、層状パネル200を支持する梁のことを便宜上ここでは「支持桁300」ということとする。支持桁300としては、H型鋼やI型鋼といった形鋼を利用することができ、あるいは山形鋼や溝型鋼を組み合わせたものを利用することもできるし、その他角鋼管や鋼材以外の材料を利用することもできる。
図3は、層状パネル200を部材ごとに分離した断面図である。この図に示すように層状パネル200は、比較的軽量な芯材(以下、「軽量芯材210」という。)とこれより薄肉の表面材220によって構成される。より具体的には、軽量芯材210を、その両面側(図では、上下面側)から表面材220で挟んだ(いわば、サンドイッチ状の)積層構造とされる。この積層構造は、真空積層によって形成することもできるし、一枚一枚繊維シートを貼り付けるハンドレイアップによって形成することも、その他従来用いられている種々の手法よって形成することもできる。
層状パネル200は、床版の部材として機能させるものであるから、相当の強度(剛性)を有することが必要であり、そのため軽量芯材210と表面材220はそれぞれ相当の強度を有する材料を選択するとよい。例えば、せん断耐荷力は、表面材220より厚肉の軽量芯材210に負担させ、曲げ耐荷力は、軽量芯材210より薄肉の表面材220に負担させることが考えられる。また1枚の層状パネル200は、人力によって運搬や設置ができる程度の重量(例えば、50kg/枚以下で、望ましくは30kg/枚以下)とすることが望ましく、したがって軽量芯材210と表面材220も軽量な材料を利用するとよい。
軽量芯材210としては、バルサをはじめ桐等の木材を利用することができ、あるいはアルミ合金や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、セラミック、ペーパーといったハニカム材、ウレタンフォームや塩ビフォーム、スチロフォームからなる発泡プラスチック材などを利用することができる。中でもバルサ材は、比重が0.15程度と軽量であり、しかも圧縮、せん断強度に優れた天然素材であり、すなわち取り扱いやすく高強度であることから、軽量芯材210として用いるには好適な材料である。なお、公称平均比重が0.148、あるいは0.109、0.285といったバルサ材が市場に提供されており、これらを採用すれば品質が確保されているうえ、しかも容易に入手できるためさらに好適となる。一方、木材は低コストであって入手しやすいため、施工現場や予算等の状況によっては軽量芯材210として最も好適な材料となり得る。
一方の表面材220としては、合成樹脂やFRPを利用することができる。中でもガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastic)は、軽量であって曲げ耐荷力にも優れていることから、表面材220として用いるには好適な材料である。表面材220としてGFRPを利用する場合、そのガラス繊維が層状パネル200に生ずる曲げモーメントに対抗し得るように、層状パネル200を支持桁300上に配置するとよい。例えば、橋軸方向に敷設される主桁310や縦桁間(つまり橋軸直角方向)が曲げモーメントの対象スパンとなるときはガラス繊維が橋軸直角方向に配列されるように層状パネル200を配置し、橋軸直角方向に敷設される横桁320や横リブ間(つまり橋軸方向)が曲げモーメントの対象スパンとなるときはガラス繊維が橋軸方向に配列されるように層状パネル200を配置するとよい。なお1枚の層状パネル200(例えば、軽量芯材210としてバルサ材、表面材220としてGFRPを利用した層状パネル200)の寸法は、人力による取り扱いを可能とするため平面寸法600mm程度×2000mm程度、厚さ100mm以下にするとよい。したがって、表面材220の厚さは、数mm程度とするのが望ましく、例えば3mm以上であって4mm以下の厚さで設計するとよい。なお本願発明者らは、層状パネル200の厚さを59mm以上にすると目的とする強度を発現しやすく、93mm以下にすると層状パネル200の取り扱いが極めて容易となることを確認している。
表面材220は、既述したとおり軽量芯材210よりも薄肉とされ、いわばシート状や薄板状、膜状の部材である。層状パネル床版橋100の床版として層状パネル200が設置されると、この表面材220が人や自転車、自動車が通行する路面となる。したがって、表面材220には滑り止め加工(ノンスリップ加工)を施すとよい。さらに、表面材220にゲルコートを塗布するなど紫外線による劣化防止加工を施すこともできる。滑り止め加工や紫外線劣化防止加工を施すことにより層状パネル床版橋100の床版に対して改めて舗装を敷設する必要がなく、層状パネル200の設置だけで足りるわけである。また、表面材220は所望の色や模様を施すことが可能であり、すなわちバリエーション豊富な路面を形成することができる。
表面材220の滑り止め加工は、エンボス加工をはじめ従来用いられている種々の加工を採用することができる。例えば図4では、表面材220の表面全体をエンボス加工するとともに、複数の「凸部」を設けた滑り止め加工としている。なお、この図では一方向のみの凸部を設けているが、2方向(格子状やX字状)に凸部を設けることもできるし、凸部に代えて(あるいは加えて)「凹部」を設けることもできる。また滑り止め加工は、層状パネル200のうち片面側の表面材220にのみ施すこともできるし、両面側の表面材220に施すこともできる。滑り止め加工を片側面のみとすると加工費が軽減でき、両面側に滑り止め加工を施すと表裏を間違えることなく層状パネル200を設置することができる。
層状パネル200は軽量であるが故に、風等で飛散しないよう支持桁300に堅固に固定することが望ましく、例えば接着剤を利用して固定するとよい。具体的には、支持桁300の上面(例えば、上フランジ面)に塗布された接着剤の上に層状パネル200を載置し、指定期間養生することで層状パネル200を支持桁300に接着固定する。このとき、塗布する接着剤としては粘性が高いものが望ましく、例えばエポキシ樹脂系接着剤を採用することができる。
層状パネル200は、接着固定に加えて(あるいは代えて)、固定具400を用いて支持桁300に固定することもできる。図5は、両フランジ式の固定具400によって層状パネル200を支持桁300に固定した部分断面図である。この両フランジ式の固定具400は、上フランジ410と下フランジ420、そして連結棒430を備えており、連結棒430によって上フランジ410と下フランジ420が連結された構造である。両フランジ式の固定具400によって層状パネル200を支持桁300に固定するには、図5に示すように、上フランジ410と下フランジ420で層状パネル200と支持桁300の一部を挟持する。より具体的には、連結棒430が層状パネル200を肉厚方向に貫通したうえで、ネジ等を利用して上フランジ410と下フランジ420の間隔を縮め、上フランジ410で層状パネル200を上方から押さえるとともに、下フランジ420で支持桁300の一部(この場合、支持桁300の上フランジ)を下方から押し上げることで、層状パネル200と支持桁300の一部を挟持する。このとき、軽量芯材210としてバルサ材や木材等を利用していることから、鋼板等に比べ極めて容易に連結棒430用の貫通孔を設けることができるわけである。
両フランジ式の固定具400のほか貫入式の固定具400を用いて支持桁300に固定することもできる。図6は、貫入式の固定具400によって層状パネル200を支持桁300に固定した部分断面図である。この貫入式の固定具400は、貫入体440と下フランジ420、そして連結棒430を備えており、連結棒430によって貫入体440と下フランジ420が連結された構造である。貫入式の固定具400によって層状パネル200を支持桁300に固定するには、図6に示すように、貫入体440と下フランジ420で層状パネル200と支持桁300の一部を挟持する。より具体的には、貫入体440を層状パネル200内に貫入させたうえで、ネジ等を利用して貫入体440と下フランジ420の間隔を縮め、貫入体440が内部で層状パネル200を介して層状パネル200下に引き込むとともに、下フランジ420で支持桁300の一部(この場合、支持桁300の上フランジ)を下方から押し上げることで、層状パネル200と支持桁300の一部を挟持する。このとき、軽量芯材210としてバルサ材や木材等を利用していることから、鋼板等に比べ極めて容易に貫入体440を層状パネル200に貫入させることができるわけである。
図7は、高欄500を設置した層状パネル床版橋100を示す断面図である。この高欄500は、概ね全橋長にわたって橋軸方向に間隔を設けて配置される支柱510と、この支柱510間をつなぐように取り付けられる柵材で構成される。なお軽量化を図るため、高欄500は例えばアルミ製とするとよい。この図に示すように高欄500は、層状パネル200の上面であって橋軸直角方向(幅員方向)における両端部付近に設置される。より具体的には、層状パネル200の端部に設けられたボルト孔にボルト520を挿通し、支柱510の底部に固定されたベースプレートと層状パネル200をボルト520で縫い付けることで支柱510を層状パネル200に固定し、支柱510間に柵材を取り付けることによって高欄500を構築する。このとき、軽量芯材210としてバルサ材や木材等を利用していることから、鋼板等に比べ極めて容易に層状パネル200にボルト孔を設けることができるわけである。
2.層状パネル床版橋構築方法
次に、本願発明の層状パネル床版橋構築方法について説明する。なお、本願発明の層状パネル床版橋構築方法は、ここまで説明した層状パネル床版橋100を構築する方法であり、したがって層状パネル床版橋100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の層状パネル床版橋構築方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.層状パネル床版橋」で説明したものと同様である。
図8は、層状パネル床版橋構築方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、図9は、このフロー図に示す主な工程を説明するステップ図である。以下、図8と図9を参照しながら、層状パネル床版橋構築方法の主な工程について説明する。
図8に示すように、まず支持桁300上に計画された層状パネル200を暫定的に配置し、墨出し(マーキング)するなどそれぞれ層状パネル200が配置される位置を確認する(Step10)。あるいはあらかじめ計測した層状パネル200の寸法を利用することによって、仮配置を省略して墨出しを行うこともできる。層状パネル200の配置位置が確認できると、仮配置を行った場合は一旦層状パネル200を取り外し、支持桁300上に接着剤を塗布していく(Step20)。このとき、支持桁300上に接着剤を直接塗布することもできるし、図9(a)に示すように、支持桁300上の両端側に型枠FW(例えば、スポンジパッキンなど)を設置し、この型枠FW内に粘性の高い接着剤AD(例えば、エポキシ樹脂系接着剤など)を塗布していくこともできる。なお図9(a)に示す型枠FWは、橋軸方向(図では奥行方向)に相当の長さを有するものである。
支持桁300上に接着剤ADを塗布すると、図9(b)に示すように、仮配置工程(Step10)で確認した位置に層状パネル200を設置していく(Step30)。このとき、層状パネル200の下面側に接着剤ADが十分接触するように、層状パネル200を上部から押し付けるとよい。型枠FWを設置した場合は、橋軸方向に設けられた型枠FWと型枠FWとの隙間から接着剤ADが漏出(リーク)したときに、接着剤ADが層状パネル200に十分接触したと判断することができる。なお図9(b)では、3本の支持桁300のうち両側の支持桁300にのみ接着剤ADを塗布しているが、このように一部の支持桁300にのみ接着剤ADを塗布することもできるし、もちろんすべての支持桁300に接着剤ADを塗布することもできる。
支持桁300上に層状パネル200を設置すると、図9(c)に示すように固定具400によって層状パネル200を支持桁300に仮固定する(Step40)。例えば、両フランジ式の固定具400を使用する場合は、連結棒430を層状パネル200に貫通するとともに、ネジ等を利用して上フランジ410と下フランジ420の間隔を縮めることによって上フランジ410と下フランジ420で層状パネル200と支持桁300の一部を挟持し、これにより層状パネル200を支持桁300に仮固定する。また貫入式の固定具400を使用する場合は、貫入体440を層状パネル200内に固定するとともに、ネジ等を利用して貫入体440と下フランジ420の間隔を縮めることによって貫入体440と下フランジ420で層状パネル200と支持桁300の一部を挟持し、これにより層状パネル200を支持桁300に仮固定する。固定具400によって層状パネル200を支持桁300に仮固定すると、その状態で層状パネル200と支持桁300との接着部を所定期間養生する。なお、養生期間中、層状パネル200が風等によって飛散するおそれがないケースなどでは、固定具400によって層状パネル200を支持桁300に仮固定することなく、接着部を養生することもできる。
層状パネル200と支持桁300が十分接着固定されるまで接着部を養生すると、高欄500を層状パネル200上に設置する(Step60)。なお、固定具400によって仮固定した場合は、高欄500を設置する前に固定具400を取り外しておく(Step50)とよい。図9(d)に示すように、層状パネル200の端部のボルト孔にボルト520を挿通し、支柱510底部のベースプレートと層状パネル200をボルト520で縫い付けることで支柱510を層状パネル200に固定するとともに、支柱510間に柵材を取り付けることによって高欄500を層状パネル200上に設置する。
本願発明の層状パネル床版橋、層状パネル床版橋構築方法、及び層状パネルは、人道橋や自転車用の橋、自動車用の橋など様々な道路橋に利用することができ、また新設橋の構築工事でも床版の取替え工事でも利用することができる。本願発明によれば、供用中の道路橋の床版の取替えを効率よく行うことができ、ひいては道路橋の長寿命化につながることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
100 層状パネル床版橋
200 (層状パネル床版橋の)層状パネル
210 (層状パネルの)軽量芯材
220 (層状パネルの)表面材
300 (層状パネル床版橋の)支持桁
310 (層状パネル床版橋の)主桁
320 (層状パネル床版橋の)横桁
400 (層状パネル床版橋の)固定具
410 (固定具の)上フランジ
420 (固定具の)下フランジ
430 (固定具の)連結棒
440 (固定具の)貫入体
500 (層状パネル床版橋の)高欄
510 (高欄の)支柱
520 (高欄の)ボルト
AD 接着剤
FW 型枠

Claims (2)

  1. 床版に層状パネルを利用した橋を構築する方法であって、
    前記層状パネルは、芯材と該芯材より薄肉の表面材を有するとともに、該芯材の両面に該表面材を積層した構造であって、該表面材には滑り止め加工が施され、
    支持桁上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
    人力によって橋軸方向に複数の前記層状パネルを敷設することで床版を形成する床版設置工程と、
    前記床版設置工程の後に、上フランジと下フランジと連結棒を具備するとともに該上フランジと該下フランジが該連結棒で連結された固定具によって、前記層状パネルを前記支持桁に仮固定する仮固定工程と、
    接着部の養生後に、前記固定具を取り外す固定具解除工程と、
    前記層状パネルの端部に設けられたボルト孔を用いて、該層状パネルに高欄をボルト固定する高欄設置工程と、を備え、
    前記仮固定工程では、前記連結棒を前記層状パネルに貫通するとともに、前記上フランジと前記下フランジによって該層状パネルと前記支持桁の一部を挟持することで、前記層状パネルを前記支持桁に仮固定する、
    ことを特徴とする層状パネル床版橋構築方法。
  2. 床版に層状パネルを利用した橋を構築する方法であって、
    前記層状パネルは、芯材と該芯材より薄肉の表面材を有するとともに、該芯材の両面に該表面材を積層した構造であって、該表面材には滑り止め加工が施され、
    支持桁上に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
    人力によって橋軸方向に複数の前記層状パネルを敷設することで床版を形成する床版設置工程と、
    前記床版設置工程の後に、貫入体と下フランジと連結棒を具備するとともに該貫入体と該下フランジが該連結棒で連結された固定具によって、前記層状パネルを前記支持桁に仮固定する仮固定工程と、
    接着部の養生後に、前記固定具を取り外す固定具解除工程と、
    前記層状パネルの端部に設けられたボルト孔を用いて、該層状パネルに高欄をボルト固定する高欄設置工程と、を備え、
    前記仮固定工程では、前記貫入体を前記層状パネル内に固定するとともに、前記貫入体と前記下フランジによって該層状パネルと前記支持桁の一部を挟持することで、前記層状パネルを前記支持桁に仮固定する、
    ことを特徴とする層状パネル床版橋構築方法。
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