JP7002362B2 - 駆動力伝達装置及びこれを用いた遮蔽装置 - Google Patents

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Description

本発明は、入力回転に対し、複数の変速比の回転を出力する駆動力伝達装置と、当該駆動力伝達装置を用いた遮蔽装置に関する。
従来、遮蔽装置の1つである横型ブラインドには、操作コードの操作により巻取軸を回転駆動して、スラットを昇降及び角度調節可能としたものがある(特許文献1参照)。このものは、巻取軸から昇降コードを繰り出すことによりスラットが下降され、巻取軸に昇降コードを巻取ることによりスラットが引き上げられる。また、スラットの昇降動作が始まる前には、スラットが回動され、各スラットは全閉状態又は逆全閉状態まで回動された状態で昇降するようになっている。
特開2014-221970号公報
ところで、スラットの昇降動作における初動において各スラットを回動させるときに、巻取軸を回転させる操作の速度が過度に速いと、スラットの回動不足が生じることがある。すなわち、巻取軸の回転させる操作の速度が過度に速いと、それに伴うラダーコードの移動に対してスラットの回動が追従できないことがある。このようなスラットの追従不足は、美観を損ねる。このような問題は、操作コードの操作による巻取軸の回転が一定であることに起因する。
また、上記横型ブラインドの例に限らず、様々な場面において、入力回転に対して、初動とその後の動作で回転速度を変化させたいという課題が生じていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、入力回転に対し、入力開始直後とその後で異なる変速比の回転を出力することの可能な駆動力伝達装置を提供するものである。
本発明によれば、第1部材と、第2部材と、第3部材とを備え、前記第1部材への入力回転を前記第2部材の回転として出力する駆動力伝達装置であって、前記第1部材の回転に伴って前記第2部材と前記第3部材の少なくとも一方が回転するよう構成されており、前記第3部材の回転の規制と許容とを切り替える回転規制部材を備える、駆動力伝達装置が提供される。
本発明によれば、回転規制部材が第3部材の回転の規制と許容とを切り替える構成となっていることから、第3部材の回転状態が変化することで第1部材への入力に対する第2部材から出力する回転の状態を変化させることが可能となっている。
好ましくは、前記回転規制部材が前記第3部材の回転の規制と許容とを切り替えることで、前記第2部材の出力する回転の変速比が切り替わるよう構成される。
好ましくは、前記回転規制部材は、前記第3部材に与える回転抵抗を変化させることで、前記第3部材の回転の規制と許容とを切り替えるよう構成される。
好ましくは、前記回転規制部材は、前記第3部材の回転に伴って回転抵抗が増大することで前記第3部材の回転を規制し、前記第2部材の回転に伴って前記回転抵抗が低減されることで前記第3部材の回転を許容するよう構成される。
好ましくは、前記第1部材が回転開始後所定角度回転するまでは、前記回転規制部材が前記第3部材の回転を規制するとともに前記第2部材が第1の変速比で回転を出力し、前記第1部材が前記所定角度回転した後は、前記回転規制部材が前記第3部材の回転の規制を解除するとともに前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材が一体回転して、前記第2部材が第2の変速比で回転を出力するよう構成される。
好ましくは、前記第2部材は円周方向の一部の位置に第2部材係合部を備え、前記第3部材は、円周方向の一部の位置に第3部材係合部を備えており、前記第2部材係合部と前記第3部材係合部が前記回転規制部材に対して逆方向に作用することによって前記第3部材の回転の規制と許容が切り替わるよう構成される。
好ましくは、前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材及び前記回転規制部材を収容するケース部材と、前記ケース部材に固定された円筒状のカラーとを備え、前記回転規制部材は、前記カラーの外周面又は内周面に配置され且つ径方向に延びる突起を有するコイルスプリングを備えており、前記第3部材係合部は、前記第3部材の回転により前記コイルスプリングが縮径又は拡径して前記カラーに対して相対回転不能となるよう前記突起を押圧する位置に配置され、前記第2部材係合部は、前記第2部材の回転により前記コイルスプリングが前記カラーに対して相対回転可能となるよう前記突起を押圧する位置に配置される。
好ましくは、遊星歯車機構を備え、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材は、前記遊星歯車機構の太陽歯車部材、キャリア及び内歯車部材によって構成される。
好ましくは、前記第1部材を前記太陽歯車部材とし、前記第2部材を前記キャリアとし、前記第3部材を前記内歯車部材とする。
また、本発明によれば、遮蔽部材と、前記遮蔽部材を開閉させる開閉コードと、操作部の操作により回転する入力軸と、入力軸の回転に伴って回転して前記開閉コードの巻取り及び巻戻しを行う巻取軸とを備え、前記巻取軸の回転と連動して前記遮蔽部材の角度を変更可能に構成された遮蔽装置であって、上記駆動力伝達装置を備え、前記駆動力伝達装置は、前記入力軸の回転を前記巻取軸に伝達するよう構成される、遮蔽装置が提供される。
本発明の実施形態に係る横型ブラインドの正面図である。 図1の横型ブラインドの駆動力伝達装置10の分解斜視図である。 図2の駆動力伝達装置10の、図2とは異なる方向から見た場合の分解斜視図である。 図2の駆動力伝達装置10の、ケース部材20を外した際の側面図である。 図2の駆動力伝達装置10の、ケース部材20以外の部材を組み立てた状態の斜視図である。 図4のA-A線における断面図である。 図4のB-B線における断面図である。 図2の駆動力伝達装置10の動作を説明するタイミングチャートである。 図9A~図9Dは、図4のB-B線の断面における、動作説明図である。 図10A~図10Dは、図1の横型ブラインドのスラット3の回動動作を示す説明図である。 遊星歯車機構Sの太陽歯車部材30、キャリア40及び内歯車部材50の役割の組み合わせを示す表である。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態中で示した各特徴は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
(1)構成の説明
(1-1)横型ブラインド全体の構成
図1に示す本発明の一実施形態に係る遮蔽装置である横型ブラインドは、ヘッドボックス1から垂下される複数本のラダーコード2(スラット支持コード)によって遮蔽部材としてのスラット3が支持され、ラダーコード2の下端にはボトムレール4が接続されている。ラダーコード2の近傍には、ヘッドボックス1から開閉コードとしての複数本の昇降コード5が垂下されている。昇降コード5の上端部はヘッドボックス1内に配設される巻取コーン6に巻着され、下端部はボトムレール4を支持している。
ヘッドボックス1の一端部には昇降装置7が設けられており、昇降装置7から垂下される操作部としての無端状の操作コード8が操作されると、ヘッドボックス1内に配設される角軸状の入力軸9がまず回転し、駆動力伝達装置10を介して角軸状の巻取軸としての角軸状の昇降軸11が回転する。そして、昇降軸11の回転に応じて巻取コーン6が回転し、昇降コード5を巻取りあるいは巻戻すことでスラット3が昇降するよう構成される。なお、昇降装置7は、操作コード8の操作をやめた際に自重によるスラット3の降下を防止する公知のストッパ機構(図示せず)を備えている。
また、ヘッドボックス1内には、スラット3の角度を調整する角度調整機構12が設けられており、ラダーコード2の上端は角度調整機構12が備えるチルトドラム(図示せず)に取着されている。角度調整機構12は、クラッチ装置(図示せず)を備え、昇降軸11の回転が選択的にチルトドラムに伝達されるよう構成されている。そして、操作コード8の操作開始から昇降軸11が一定量回転する間、チルトドラムが回転してラダーコード2の前後のコードが互いに上下逆の方向に動作することで、各スラット3が同位相で角度調節されるようになっている。角度調整機構12については、既知の任意の構成を適用することができるため、詳細な説明を省略する。
ここで、駆動力伝達装置10は、入力軸9の回転を、入力開始直後とその後で異なる変速比で出力するものである。以下に、図2~図9を用いて、駆動力伝達装置10の構成について説明する。なお、以下では、駆動力伝達装置10の向きについて、入力する側を前側、出力する側を後側とする。また、本実施形態において、駆動力伝達装置10は、ヘッドボックス1の長手方向の向きについて、昇降装置7が設けられる側(図1の正面図における右側)が前側、これと反対側(図1の左側)が後側となるよう設置される。
(1-2)駆動力伝達装置10の構成
駆動力伝達装置10は、図2及び図3に示すように、前ケース21及び後ケース22からなるケース部材20に、第1部材としての太陽歯車部材30と、第2部材としてのキャリア40と、第3部材としての内歯車部材50と、4つの遊星歯車部材60と、回転規制部材としてのコイルスプリング70及びカラー80とが収容されて構成される。なお、本実施形態において、コイルスプリング70及びカラー80は金属製とされ、その他の部材は樹脂製とされる。本実施形態の駆動力伝達装置10は、太陽歯車部材30に入力された回転を、キャリア40の回転として出力するものである。具体的には、太陽歯車部材30と入力軸9、キャリアと昇降軸11が接続されることで、入力軸9の回転を2つのモードの異なる変速比で出力するものである。以下、各部材ごとに説明する。
<ケース部材20>
ケース部材20は、図2~図4に示すように、前側に配置される前ケース21と後側に配置される後ケース22とからなる。前ケース21は、略矩形状の板状部23と、当該板状部23の上端及び下端から後方に向かって延びる一対の係合突起24a,24bを備える。板状部23の中央には、貫通孔21aが形成されている。
後ケース22は、略矩形の底壁部25及び、底壁部25の外縁から前方向に向かって延びる側壁部26を備えた略直方体形状の部材であり、これら底壁部25及び側壁部26によって筒状の収容空間27を形成している。収容空間27には、内歯車部材50を保持する円柱状の大収容空間27aと、カラー80を収容する大収容空間27aよりも小径である円柱状の小収容空間27bとが前後方向に連続するように形成される。また、小収容空間27bの外周の対向する2箇所には、底壁部25から前方に向かって突起27cが形成されている。加えて、収容空間27の上下には、前ケース21の係合突起24a,24bと係合する係合溝28a,28bが形成されている。そして、底壁部25の中央には、貫通孔25aが形成されている。
<太陽歯車部材30>
太陽歯車部材30は、前方から順に入力側接続部31、外周に亘って外歯32gが形成される太陽ギア部32及び円筒部33を備える筒状の部材であり、駆動力伝達装置10において回転が入力される部材である。入力側接続部31が入力軸9と接続される。太陽歯車部材30は、遊星歯車機構Sを構成する部材であり、太陽ギア部32が4つの遊星歯車部材60それぞれと歯合するよう構成される。
<キャリア40>
キャリア40は、遊星歯車機構Sを構成する部材であり、前キャリア部材41及び後キャリア部材42から構成される。前キャリア部材41は、前方から順に、前円筒部43と、前円筒部43よりも径の大きい円盤部44と、円盤部44から後方に延びる4つの支持柱45とを備える。前円筒部43及び円盤部44の中央には、太陽歯車部材30の入力側接続部31を相対回転可能に保持する貫通孔41aが形成される。また、4つの支持柱45は円周方向に亘って等間隔に設けられ、各支持柱45の先端(後端)には突起45aが設けられている。加えて、円盤部44には、後キャリア部材42の遊星歯車保持軸48の先端(前端)に設けられた突起48aと嵌合する4つの嵌合孔44aが、4つの支持柱45と交互に形成される。
後キャリア部材42は、円盤部46及び後円筒部47を前方からこの順に備え、加えて、円盤部46から前方に延びる4つの遊星歯車保持軸48を備える。4つの遊星歯車保持軸48は円周方向に亘って等間隔に設けられ、各遊星歯車保持軸48の先端(前端)には突起48aが設けられている。円盤部46には、前キャリア部材41の支持柱45に設けられた突起45aと嵌合する4つの嵌合孔46aが、4つの遊星歯車保持軸48と交互に形成される。また、円盤部46の内周面は、太陽歯車部材30の円筒部33を相対回転可能に保持する保持部46bとなっている。一方、後円筒部47の内周面には、出力軸である昇降軸11と接続する出力側接続部47aが形成される。加えて、後円筒部47の径方向外側には、円周方向の一部の位置に、円盤部46から後円筒部47後端近傍に亘って延びるキャリア突起49が形成されている。本実施形態においては、キャリア突起49が本発明における第2部材係合部に対応する。キャリア突起49の回転軸と垂直な方向の断面は、図7に示すように、扇形である。
<内歯車部材50>
内歯車部材50は、遊星歯車機構Sを構成する部材であり、前方から順に、薄肉筒状部51と狭径部52とを備える。薄肉筒状部51の内面には、円周方向に亘って、遊星歯車部材60と歯合する内歯部53が形成される。狭径部52の内径は、後キャリア部材42の後円筒部47及びキャリア突起49を挿入可能な大きさとされる。狭径部52後端からは、円周方向の一部の位置に、後方に向かって延びる内歯車突起54が形成されている。内歯車突起54の回転軸と垂直な方向の断面は、図7に示すように、扇形であり、また、内歯車突起54は、狭径部52の内縁から径方向内側にも突出していて、キャリア突起49と係合可能となっている。本実施形態においては、内歯車突起54が本発明における第3部材係合部に対応する。
<遊星歯車部材60>
遊星歯車部材60は、遊星歯車機構Sを構成する部材であり、外周面にギア歯を有している。本実施形態において、遊星歯車部材60は4つ設けられる。各遊星歯車部材60は、その貫通孔62に後キャリア部材42の遊星歯車保持軸48が通され、遊星歯車保持軸48に回転可能に保持される。そして、遊星歯車部材60は、太陽歯車部材30の太陽ギア部32及び内歯車部材50の内歯部53と歯合するようになっている。
<コイルスプリング70・カラー80>
コイルスプリング70及びカラー80は、後ケース22に対する内歯車部材50の相対回転の許容及び規制を切り替える回転規制部材として用いられる。コイルスプリング70は、円筒状に巻回された金属線の両端がそれぞれ径方向内側に突出するコイルスプリング突起71となっている。コイルスプリング70は、図5に示すように、後キャリア部材42の後円筒部47の外周に、一対のコイルスプリング突起71が内歯車突起54を挟むよう配置される。コイルスプリング70は、内歯車突起54が回転すると拡径するようになっている。
カラー80は、金属製の薄肉リング状の部材である。カラー80は、後端の円周方向の対向2ヶ所に係合溝81を備えており、当該係合溝81が後ケース22の突起27cと係合することで後ケース22に対して固定され、回転不能となっている。また、カラー80の内側にはコイルスプリング70が配置され、カラー80の内径はコイルスプリング70の外径よりも僅かに大きな径となっている。このような構成により、コイルスプリング70は、縮径した際にはカラー80(すなわち、ケース部材20)に対して相対回転可能となり、拡径した際にはカラー80に対して相対回転不能となるようになっている。
(2)動作の説明
(2-1)駆動力伝達装置10の動作
次に、上記のような構成の駆動力伝達装置10の動作について、図8のタイミングチャート及び、図4のB-B断面における各部材の動作を示す図9A~図9Dの説明図を用いて説明する。
<局面(i)>
まず、初期状態において、各部材は図9Aに示す位置関係にある、すなわち、キャリア40のキャリア突起49が、反時計回りに回転するとすぐにコイルスプリング突起71と当接する位置にあるとする。この状態で入力軸9の回転と連動して太陽歯車部材30が時計回りの回転(CW回転)を開始すると、図6において、太陽歯車部材30と歯合する4つの遊星歯車部材60がそれぞれ遊星歯車保持軸48を中心に反時計回りに回転(CCW回転)する。すると、遊星歯車部材60を保持するキャリア40は時計回りに回転しようとし、遊星歯車部材60と歯合する内歯車部材50は反時計回りに回転しようとする。すなわち、図9Aにおいて、キャリア突起49が時計回りに回転しようとし、内歯車突起54が反時計回りに回転しようとする。
<局面(i)~局面(ii)>
ここで、キャリア40は昇降軸11に接続され、昇降軸11に接続された巻取コーン6、昇降コード5及びボトムレール4がキャリア40に対する回転抵抗となっているため、まずは内歯車部材50の反時計回りが開始される。ところが、内歯車部材50は、僅かに回転したところで内歯車突起54がコイルスプリング突起71に当接して押圧し、コイルスプリング70が拡径して回転不能となる(回転抵抗が増大し、回転が規制された状態)。したがって、内歯車部材50は僅かなクリアランス分の反時計回りの回転後、回転停止状態となる。
その結果、遊星歯車機構Sにおいて、太陽歯車部材30の時計回りの回転に対し内歯車部材50が停止状態となるため、キャリア40が時計回りの回転を開始する(図8及び図9B参照)。この際、太陽歯車部材30の回転に対してキャリア40は、(太陽ギア部32のギア歯の数)/(太陽ギア部32のギア歯の数+内歯部53のギア歯の数)の変速比で減速回転することになり、駆動力伝達装置10は昇降軸11に時計回りの減速回転を伝達する。この変速比が、本発明における第1の変速比である。
<局面(ii)>
キャリア40がさらに回転を続けると、図9Cに示すようにキャリア突起49がコイルスプリング突起71に当接する。すると、コイルスプリング70が押圧されて縮径し、カラー80に対して回転可能な状態となる(回転抵抗が低減され、規制が解除された状態)。この時、コイルスプリング突起71はキャリア突起49と内歯車突起54に挟まれた状態である。なお、初期状態から局面(ii)となるまでの太陽歯車部材30の回転角度が本発明における所定角度である。この所定角度は、太陽ギア部32、内歯部53及び遊星歯車部材60の歯数(変速比)と、キャリア突起49及び内歯車突起54の扇形形状の中心角によって規定することができる。
<局面(ii)~局面(iii)>
上記局面(ii)の状態でさらに太陽歯車部材30が時計回りに回転すると、キャリア突起49は時計回り、内歯車突起54は反時計回りに回転しようとするため、もはやキャリア40と内歯車部材50はもはや相対回転ができない。その結果、太陽歯車部材30の時計回りの回転に伴って、キャリア40、内歯車部材50、遊星歯車部材60及びコイルスプリング70がケース部材20内で一体的に時計回りの回転を開始する(図8及び図9C~図9D参照)。このとき、遊星歯車部材60は自転せず、太陽歯車部材30、キャリア40、内歯車部材50及び遊星歯車部材60の相対的な位置関係は変化しない。つまり、この際、太陽歯車部材30の回転に対してキャリア40は、1対1の変速比、すなわち等速で回転することになり、駆動力伝達装置10は昇降軸11に時計回りの等速回転を伝達する。この変速比が、本発明における第2の変速比である。
<局面(iii)>
入力軸9の回転が停止すると、太陽歯車部材30の回転も停止し、すべての部材が停止して、昇降軸11の回転も停止する。
なお、図9C又は図9Dの状態において入力軸9(太陽歯車部材30)を反時計回りに回転させた場合には、上記とは逆の動作により、操作開始直後はまずキャリア40が反時計回りに回転し、駆動力伝達装置10は昇降軸11に反時計回りの減速回転を伝達する。そして、キャリア突起49がコイルスプリング突起71に当接した後(図9A参照)は各部材が一体回転することで駆動力伝達装置10は昇降軸11に反時計回りの等速回転を伝達する。
(2-2)横型ブラインドの動作
次に、上記の駆動力伝達装置10を備えた横型ブラインドの動作について、図10を用いて説明する。なお、図10A~図10Dは本実施形態の横型ブラインドを図1の右側から見た側面図であり、図10A~図10Dにおいては左側が室内側となる。また、以下では、図10Aに示すスラット3が全閉となった状態から、スラット3が回動して図10Bに示す水平状態を経て図10Cに示す逆全閉状態となり、その後、図10Dに示すように上昇をする際の説明を行う。スラット3を下降させつつ逆全閉状態から全閉状態とするには、以下の動作を逆に行えば良い。
<スラット3の上昇及び回動>
スラット3が全閉状態である時(図10A参照)に、操作コード8をスラット3の上昇方向に操作すると、入力軸9が回転を開始する。このとき、駆動力伝達装置10は図9Aに示す上記局面(i)の状態となっており、駆動力伝達装置10によって昇降軸11は減速回転を開始する。すると、昇降軸11の減速回転により、巻取コーン6が回転して昇降コード5がヘッドボックス1内に引き込まれ、スラット3が上昇を開始する。同時に、角度調整機構12のチルトドラム(図示せず)が回転して、スラット3が回動動作を開始する。なお、図10Bはスラット3の回動の途中を示す図であり、このとき、駆動力伝達装置10は図9Bに示すように、キャリア40のみが回転する状態である(局面(i)~(ii)参照)。また、スラット3回動時にスラット3が上昇しないよう、昇降コード5にたるみを持たせる構成とすることも可能である。
<スラット3の回動停止>
さらに操作コード8の操作を続けると、スラット3は図10Cの逆全閉状態となり、これと略同一のタイミングで駆動力伝達装置10のキャリア突起49が図9Cに示すように、キャリア突起49がコイルスプリング突起71と当接する状態となる(局面(ii)参照)。
<スラット3の上昇>
その後さらに操作コード8の操作を続けると、駆動力伝達装置10によって昇降軸11は入力軸9と等速の回転を開始し、スラット3はそれまでよりも速い速度で上昇するようになる(図9C参照)。この時には、太陽歯車部材30、キャリア40、内歯車部材50、遊星歯車部材60及びコイルスプリング70は一体回転している(図9D参照)。
<スラット3の停止>
最後に、操作コード8の操作を停止して入力軸9を停止させると、昇降軸11の回転も停止し、スラット3の上昇が停止する。
なお、上記駆動力伝達装置10に用いられる遊星歯車機構Sは、太陽歯車部材30、キャリア40、内歯車部材50及び遊星歯車部材60の4つの部材から構成されるが、このうち遊星歯車部材60を除く3つの部材は、どの部材に回転を入力し、どの部材から回転を出力するかを任意に設定することができる。上記実施形態では入力軸9と接続する部材を太陽歯車部材30、昇降軸11(出力軸)と接続する部材をキャリア40、回転規制部材であるコイルスプリング70及びカラー80により回転の規制と許容を切り替える部材を内歯車部材50とすることで、複数の変速比の回転を出力できるようにしていたが、これら3つの役割は任意である。つまり、図11に示すように、入力軸と接続する部材、昇降軸と接続する部材及び、回転規制部材により回転の規制と許容が切り替えられる部材を任意に入れ替えることが可能である。
これらの組み合わせは、回転開始直後の変速比と一定回転後の変速比をどのように設定するかにより選択することが好ましい。上記実施形態のように、駆動力伝達装置10を1つの操作コードの操作により開閉及び角度調節可能とした昇降装置に用いる場合には、操作コード8の操作開始直後はスラット3の角度を調整するため入力回転を減速して出力し、スラット3の回動終了後は減速せずに出力することが好ましいため、上記実施形態の組み合わせを選択している。
(3)作用効果
上記のような駆動力伝達装置10及び横型ブラインドでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(イ)遊星歯車機構Sの太陽歯車部材30を入力軸9と接続し、キャリア40を昇降軸11(出力軸)と接続し、内歯車部材50の回転の許容と規制を回転規制部材であるコイルスプリング70及びカラー80により切り替えることによって、駆動力伝達装置10は、同一の入力回転に対し、複数の変速比の回転を出力することが可能となる。特に、入力回転の開始直後は減速回転を出力し、一定回転後は等速回転を出力することが可能となる。
(ロ)キャリア突起49、内歯車突起54がコイルスプリング突起71に対して逆方向に作用することによってコイルスプリング70が縮径、拡径してキャリア40の回転の規制と許容が切り替わる構成であり、略同心円上にキャリア突起49、内歯車突起54及びコイルスプリング突起71を配置することで、駆動力伝達装置10の軸方向(前後方向)のスペースを軽減することが可能となる。
(ハ)遊星歯車機構Sの太陽歯車部材30、キャリア40及び内歯車部材50の役割を図11に示す組み合わせから適切に選択することで、初動(入力回転開始)において減速させることも増速させることも可能である。
(ニ)遊星歯車機構Sの太陽歯車部材30に回転を入力し、キャリア40から回転を出力させることで、同軸での変速が可能である。
(ホ)遊星歯車機構Sのいずれか1つに回転を入力し、他の1つから回転を出力する構成であることから、変速が切り替わる際に遊び(空転)が生じない。
(ヘ)横型ブラインドに上記構成の駆動力伝達装置10を用いることで、スラット3の昇降動作における初動において各スラット3を回動させるときには、昇降軸11に減速回転を出力することでラダーコード2の移動に対して確実にスラット3を回動させ、スラット3の回動終了後には、等速回転を出力して効率的にスラット3を昇降させることが可能である。
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上述した実施形態は駆動力伝達装置10を横型ブラインドに適用したものであったが、横型ブラインド以外の遮蔽装置、例えば、縦型ブラインド等に適用することも可能である。
・上記実施形態においては、回転規制部材としてのコイルスプリング70がカラー80の内周面に配置され、コイルスプリング70が拡径することで回転不能となり、縮径することで回転可能となる構成であったが、回転規制部材として、コイルスプリング70をカラー80の外周面に配置し、コイルスプリング70が縮径することで回転不能となり、拡径することで回転可能となる構成のものを用いることも可能である。
1 :ヘッドボックス
2 :ラダーコード
3 :スラット
4 :ボトムレール
5 :昇降コード(開閉コード)
6 :巻取コーン
7 :昇降装置
8 :操作コード(操作部)
9 :入力軸
10 :駆動力伝達装置
11 :昇降軸(巻取軸)
12 :角度調整機構
20 :ケース部材
21 :前ケース
21a :貫通孔
22 :後ケース
23 :板状部
24a :係合突起
24b :係合突起
25 :底壁部
25a :貫通孔
26 :側壁部
27 :収容空間
27a :大収容空間
27b :小収容空間
27c :突起
28a :係合溝
28b :係合溝
30 :太陽歯車部材(第1部材)
31 :入力側接続部
32 :太陽ギア部
33 :円筒部
40 :キャリア(第2部材)
41 :前キャリア部材
41a :貫通孔
42 :後キャリア部材
43 :前円筒部
44 :円盤部
44a :嵌合孔
45 :支持柱
45a :突起
46 :円盤部
46a :嵌合孔
46b :保持部
47 :後円筒部
47a :出力側接続部
48 :遊星歯車保持軸
48a :突起
49 :キャリア突起(第2部材係合部)
50 :内歯車部材(第3部材)
51 :薄肉筒状部
52 :狭径部
53 :内歯部
54 :内歯車突起(第3部材係合部)
60 :遊星歯車部材
62 :貫通孔
70 :コイルスプリング(回転規制部材)
71 :コイルスプリング突起
80 :カラー(回転規制部材)
81 :係合溝
S :遊星歯車機構

Claims (7)

  1. 第1部材と、第2部材と、第3部材とを備え、前記第1部材への入力回転を前記第2部材の回転として出力する駆動力伝達装置であって、
    前記第1部材の回転に伴って前記第2部材と前記第3部材の少なくとも一方が回転するよう構成されており、
    前記第3部材の回転に伴って回転抵抗が増大することで前記第3部材の回転を規制し、前記第2部材の回転に伴って前記回転抵抗が低減されることで前記第3部材の回転を許容するよう構成される回転規制部材を備え
    前記回転規制部材が前記第3部材の回転の規制と許容とを切り替えることで、前記第2部材の出力する回転の変速比が切り替わるよう構成される、駆動力伝達装置。
  2. 前記第1部材が回転開始後所定角度回転するまでは、前記回転規制部材が前記第3部材の回転を規制するとともに前記第2部材が第1の変速比で回転を出力し、
    前記第1部材が前記所定角度回転した後は、前記回転規制部材が前記第3部材の回転の規制を解除するとともに前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材が一体回転して、前記第2部材が第2の変速比で回転を出力するよう構成される、請求項1に記載の駆動力伝達装置。
  3. 前記第2部材は円周方向の一部の位置に第2部材係合部を備え、前記第3部材は、円周方向の一部の位置に第3部材係合部を備えており、
    前記第2部材係合部と前記第3部材係合部が前記回転規制部材に対して逆方向に作用することによって前記第3部材の回転の規制と許容が切り替わるよう構成される、請求項1又は請求項2に記載の駆動力伝達装置。
  4. 前記第1部材、前記第2部材、前記第3部材及び前記回転規制部材を収容するケース部材と、前記ケース部材に固定された円筒状のカラーとを備え、
    前記回転規制部材は、前記カラーの外周面又は内周面に配置され且つ径方向に延びる突起を有するコイルスプリングを備えており、
    前記第3部材係合部は、前記第3部材の回転により前記コイルスプリングが縮径又は拡径して前記カラーに対して相対回転不能となるよう前記突起を押圧する位置に配置され、
    前記第2部材係合部は、前記第2部材の回転により前記コイルスプリングが前記カラーに対して相対回転可能となるよう前記突起を押圧する位置に配置される、請求項3に記載の駆動力伝達装置。
  5. 遊星歯車機構を備え、前記第1部材、前記第2部材及び前記第3部材は、前記遊星歯車機構の太陽歯車部材、キャリア及び内歯車部材によって構成される、請求項1~請求項4のいずれかに記載の駆動力伝達装置。
  6. 前記第1部材を前記太陽歯車部材とし、前記第2部材を前記キャリアとし、前記第3部材を前記内歯車部材とする、請求項5に記載の駆動力伝達装置。
  7. 遮蔽部材と、前記遮蔽部材を開閉させる開閉コードと、操作部の操作により回転する入力軸と、入力軸の回転に伴って回転して前記開閉コードの巻取り及び巻戻しを行う巻取軸とを備え、前記巻取軸の回転と連動して前記遮蔽部材の角度を変更可能に構成された遮蔽装置であって、
    請求項1~請求項6のいずれかに記載の前記駆動力伝達装置を備え、
    前記駆動力伝達装置は、前記入力軸の回転を前記巻取軸に伝達するよう構成される、遮蔽装置。
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