しかしながら、上記特許文献1に記載されたトレーニング装置においては、操作部が半球体状の固定部から垂直方向に延びる操作棒上に設けられているため、椅子などに着座している使用者に対して操作棒および操作棒の位置が遠く操作し難いという問題がある。特に、身体機能が低下した高齢者やケガ人などは椅子に着座した姿勢でリハビリテーション(以下、単に「リハビリ」という)を行うことが多く、遠方に位置する操作部を把持し難いという問題がある。
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、使用者が把持し易くトレーニングを行い易いトレーニング器具を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、使用者が把持するための操作把持体と、操作把持体から下方に延びて同操作把持体を支持する棒状の起立棒と、起立棒の下端部側を支持して同起立棒を揺動可能に支持する起立棒支持体とを備え、起立棒は、垂直方向に対して傾倒した姿勢で設けられており、起立棒支持体は、起立棒の揺動可能範囲における揺動中心で前記傾倒した前記起立棒を支持していることにある。
このように構成した本発明の特徴によれば、トレーニング器具は、操作把持体を支持する起立棒が起立棒支持体から傾倒した姿勢で設けられているため、操作把持体を使用者の近傍に配置しつつ起立棒支持体を使用者から離れた位置に位置させることができ使用者が操作把持体を把持し易く同操作把持体を操作するトレーニングを行い易くすることができる。この場合、本発明に係るトレーニング器具においては、起立棒支持体は揺動可能範囲における揺動中心で前記傾倒した起立棒を支持しているため、起立棒を揺動中心でない位置で傾倒させた場合に同位置からの傾倒可能量が特定の方向に偏ってムラが生じることを防止することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、起立棒支持体は、揺動中心が起立棒の軸線上に位置していることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、起立棒支持体における揺動中心が起立棒の軸線上に位置しているため、起立棒支持体における揺動中心が起立棒の軸線上に位置していない場合に比べて起立棒の傾倒可能範囲に偏りが生じることを防止することができる。例えば、トレーニング器具は、起立棒を揺動させる部分に対して起立棒が屈曲して繋がっている場合においては、屈曲する方向への起立棒の揺動可能範囲が狭くなるが、起立棒支持体における揺動中心が起立棒の軸線上に位置していることで揺動可能範囲が狭くなることを防止することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、起立棒支持体は、軸状に形成されて起立棒に繋がったスタッド部の先端部に球面を有したボール部が形成されたボールスタッドと、ボール部を摺動可能な状態で保持するボール保持部を有したハウジングとを備えたボールジョイントで構成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、起立棒支持体がボールスタッドとハウジングとを備えたボールジョイントで構成されているため、起立棒を傾倒した状態でも精度良く保持することができるとともに、起立棒を揺動可能範囲内にて均等な力で傾倒させることができ、かつ耐久性も向上させることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、操作把持体は、垂直方向に延びて形成されて使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部および水平方向に延びて形成されて使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部のうちの少なくとも一方を備えることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、操作把持体が垂直方向に延びて形成されて使用者が垂直方向に沿って把持することができる垂直把持部および水平方向に延びて形成されて使用者が水平方向に沿って把持することができる水平把持部のうちの少なくとも一方を備えているため、使用者は手または腕の障害の程度または回復の程度に応じて操作把持体の把持の仕方を変えながらリハビリまたはトレーニングを行うことができ、リハビリまたはトレーニングの種類および使用者の範囲を広げることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、操作把持体は、垂直把持部を備えており、垂直把持部は、同垂直把持部の上端部に水平方向に延びて同垂直把持部を握る使用者の手を覆う上側カバー体を備えており、上側カバー体は、垂直把持部を握る使用者の手の手首側が指側よりも長く延びて形成されていることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、垂直把持部を握る使用者の手の手首側が指側よりも長く延びた上側カバー体が垂直把持部に設けられているため、垂直把持部を前方に押して傾倒させる操作を親指の付け根付近と手首との間の部分で押して操作することができ、前方への傾倒操作を行い易くすることができる。
また、本発明の他の特徴は、前記トレーニング器具において、さらに、起立棒支持体を床面上で支持する支持ベース体を備えており、支持ベース体は、平面視における中心位置よりも起立棒が傾倒する側とは反対側にずれた位置で起立棒支持体を支持していることにある。
このように構成した本発明の他の特徴によれば、トレーニング器具は、さらに、起立棒支持体を床面上で支持する支持ベース体を備えるとともに、支持ベース体が平面視における中心位置よりも起立棒が傾倒する側とは反対側にずれた偏心した位置で起立棒支持体を支持しているため、起立棒が中立位置で傾倒した状態および同中立位置から更に使用者側に傾倒する際におけるトレーニング器具全体の傾倒を防止することができる。
以下、本発明に係るトレーニング器具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るトレーニング器具100の外観構成の概略を示す斜視図である。また、図2は、図1に示すトレーニング器具100の外観構成の概略を示す側面図である。また、図3は、図2に示すトレーニング器具100の使用状態を模式的に示す側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このトレーニング器具100は、手や腕を自分の思うように動かすことができない身体に障害がある使用者Uが操作把持体101を掴んで起立棒110を傾倒操作することにより手や腕の機能を回復および向上させるために使用する器具である。
トレーニング器具100は、操作把持体101を備えている。操作把持体101は、リハビリやトレーニングを行う使用者Uが手Hで把持する部分であり、主として、垂直把持部102、水平把持部103および受け体104をそれぞれ備えている。
垂直把持部102は、使用者Uが垂直方向に沿って把持する部分であり、樹脂材、金属材または木材を人が握ることができる太さの円柱状に形成して構成されている。より具体的には、垂直把持部102は、本実施形態においては硬質の樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)を円筒形に形成した芯材(図示せず)の外側を弾力性のあるゴム材、熱可塑性樹脂材または熱硬化性樹脂材であるエラストマ材を円筒状に形成した外筒で覆って構成されている。また、垂直把持部102は、使用者Uの手Hの幅(概ね8cm~13cm)よりも若干長い長さに形成されている。なお、垂直把持部102は、使用者Uの両手で把持できる長さ(概ね15cm~20cm)に形成することもできる。
この垂直把持部102は、図示上側の端部が小径に形成されており(図示せず)、この上端部に水平把持部103が嵌合した状態で取り付けられている。また、垂直把持部102は、図示下側の端部が小径に形成されており(図示せず)、この下端部に受け体104が嵌合した状態で取り付けられている。
水平把持部103は、使用者Uが水平方向に沿って把持する部分であり、樹脂材、金属材または木材を人が掴むことができる大きさの板状に形成して構成されている。より具体的には、水平把持部103は、本実施形態においては硬質の樹脂材(例えば、塩化ビニル樹脂)を平面視で円形でかつ正面視で図示上方に凸状に膨らむ球面状に形成して構成されている。この場合、水平把持部103は、平面視で使用者Uの掌の大きさ(概ね6cm~10cm)でかつ掌に馴染む曲面(高さが2cm~7cm)で構成されている。なお、水平把持部103は、平らな円形、楕円形、多角形状または各種異形形状の板状に形成されていてもよい。
この水平把持部103は、底面に図示下方に向かって張り出した状態で形成された円筒体状の取付部103aに垂直把持部102の上端部が嵌合することで垂直把持部102に取り付けられている。この場合、水平把持部103は、底面が垂直把持部102を握る使用者Uの手Hを覆う大きさの平面状に形成されるとともに、垂直把持部102に対して手Hの手首側の長さL1が指側の長さL2よりも長く延びて形成されている。この水平把持部103は、図示しないネジによって垂直把持部102に対して着脱自在な状態で取り付けられている。なお、水平把持部103は、垂直把持部102に代えて、後述する起立棒110の上端部に垂直把持部102と同様に取り付けることができるように構成してもよい。
受け体104は、垂直把持部102を把持した使用者Uの手Hを図示下方から支持するための部品であり、樹脂材、金属材または木材を垂直把持部102の外周面から張り出して形成されている。より具体的には、受け体104は、本実施形態においては硬質の樹脂材を垂直把持部102の外周面からフランジ状に張り出す平面視で円形でかつ正面視で図示下方に凸状に張り出す略円錐状に形成して構成されている。この場合、受け体104の外径は、水平把持部103の外径よりも小径に形成されており、使用者Uによる垂直把持部102の把持および同把持時による垂直把持部102の操作が行ない易くなっている。
この受け体104は、上面の中央部に図示上方に向かって突出した状態で形成された円筒体状の取付部104aに垂直把持部102の下端部が嵌合することで垂直把持部102を支持している。この場合、受け体104は、取付部104aの周囲が平らに形成されている。また、受け体104は、図示しないネジによって垂直把持部102に対して着脱自在な状態で取り付けられている。
また、受け体104は、底面に図示下方に向かって張り出した状態で形成された円筒体状の取付部104bに起立棒110の上端部が嵌合することで起立棒110に取り付けられている。この場合、取付部104bは、起立棒110の軸線方向に対して垂直把持部102を屈曲する方向に支持するための部分であり、取付部104aの軸線方向に対して屈曲する方向に起立棒110を連結するように形成されている。本実施形態においては、取付部104bは、垂直把持部102の軸線が垂直方向に延びるように、垂直把持部102が延びる軸線に対して起立棒110が嵌合する軸線が10°だけ傾斜して形成されている。この場合、受け体104は、図示しないネジによって起立棒110に対して着脱自在な状態で取り付けられている。
起立棒110は、操作把持体101を使用者Uの好みの高さ位置で支持するための棒状の部品であり、伸縮自在な金属製の棒体で構成されている。具体的には、起立棒110は、操作把持体101から下方に向かって太さが太くなる2つの筒状の棒体で構成されており、これら2つの筒状の棒体のうちのより太さの太い棒体内に太さの細い棒体が収納されるように構成されている。
この場合、太さの太い棒体の上端部には、太さの太い棒体に対して太さの細い棒体を任意の引き出し位置で固定またはロック解除するロック機構111が設けられている。なお、起立棒110は、操作把持体101から上方に向かって太さが太くなるように構成してもよいし、太さが不変で伸縮しない棒体、または連結式で構成されていてもよい。
本実施形態においては、起立棒110は、200mm~1500mmの範囲で長さ(高さ)が調整可能に形成されている。この起立棒110は、一方(図示上側)の端部が前記操作把持体101を支持しているとともに、他方(図示下側)の端部が起立棒支持体120を介して支持ベース体132に支持されている。
起立棒支持体120は、図4に示すように、起立棒110を起立させつつ所定の傾倒範囲で傾倒可能な状態で支持するための部品であり、ボールジョイントで構成されている。具体的には、起立棒支持体120は、主として、ボールスタッド121、ボールシート123,124、ハウジング126、弾性体127および押圧体128を備えて構成されている。ボールスタッド121は、鉄鋼材により構成されており、軸状に形成されたスタッド部121aの一方(図示下方)の端部側に括れ部121bを介して略球状に形成されたボール部122が形成されて構成されている。
スタッド部121aは、起立棒支持体120を前記起立棒110の下端部に連結するための部分であり、ボール部122とは反対側の端部に形成した図示しないネジ部を介して起立棒110に連結されている。一方、ボール部122は、ベアリングシートとしてのボールシート123,124内で摺動して揺動する部分であり、ボールシート123,124の各内周面に対して円滑に摺動するように滑らかな凸状の球面状に形成されている。すなわち、ボール部122の揺動範囲が起立棒110の傾倒範囲である。
ボールシート123,124は、ボールスタッド121におけるボール部122を摺動自在に保持する部品であり、樹脂材をそれぞれ円筒状に形成して互いに対向配置して構成されている。この場合、ボールシート123は、ボール部122における上下方向中央部からスタッド部121a側の一部を環状に覆う円筒状に形成されている。また、ボールシート124は、ボール部122を構成する球体の上下方向中央部からボール部122の先端部側の一部を環状に覆う円筒状に形成されている。
これらのボールシート123,124は、各内周面がボール部122に対応する球面が形成されているとともに、外周面が後述する収容部126bの内周面に嵌合する円周面に形成されている。また、ボールシート124には、下端面の内側部分が下方に向かって突出するストッパ125が形成されている。
ストッパ125は、後述する押圧体128の弾性体127側への変位を規制して弾性体127を保護するための部分であり、弾性体127が圧縮変形して所定の厚さとなったときに収容部126bの底部に突き当たる張り出し量で形成されている。本実施形態においては、ストッパ125は、弾性体127の厚さが圧縮を受けていない元の厚さの2/3となったときに収容部126bの底部に突き当たる張り出し量でリング状に形成されている。
また、ボールシート123,124は、ボール部122の外周面上でボールシート123とボールシート124とが互いに接触しない厚さにそれぞれ形成されている。すなわち、ボールシート123,124は、ボール部122の外周面上においてボール部122の中央部付近でボールシート123とボールシート124との間に隙間が形成されている。
これらのボールシート123,124を構成する合成樹脂材としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ナイロン樹脂(PA-6T,9T)またはポリプロピレン(PP)などがある。
ハウジング126は、前記ボールスタッド121におけるボール部122をボールシート123,124を介して収容し保持するとともに押圧体128が取り付けられる部品であり、非鉄金属または鉄鋼材などの金属材料を平面視で円盤状に形成して構成されている。このハウジング126は、中央部が上方に向かって突出した突出部126aが形成されている。突出部126aは、ボールシート123および押圧体128をそれぞれ保持する円筒状の部分であり、内側部分に収容部126bが形成されるとともに外周面にハウジングネジ部126cが形成されている。
収容部126bは、前記ボールスタッド121におけるボール部122をボールシート123,124を介して収容し保持する部分であり、一方(図示上側)の端部が開口するとともに他方(図示下側)の端部側が閉塞された有底円筒状に形成されている。この場合、収容部126bの底部上には、ボールシート124の下面との間に弾性体127が設けられている。また、収容部126bは、ボールシート123の上端部が突出部126aの上端部よりも張り出す深さに形成されるとともに、ボールシート123,124が上下方向に摺動可能な内径に形成されている。
ハウジングネジ部126cは、押圧体128における押圧体ネジ部128bがねじ込まれる部分であり、押圧体ネジ部128bにネジ嵌合する雄ネジで構成されている。このハウジングネジ部126cは、支持ベース体132上にボルトを介して取り付けられている。
弾性体127は、押圧体128による押圧力の一部を吸収してボールシート123,124に対する押圧力を弱めるための部品であり、ゴム材(本実施形態においては、硬質ゴム)を平板リング状に形成して構成されている。より具体的には、弾性体127は、内径がボールシート124の外径よりも大きく形成されるとともに、内径が収容部126bの内径よりも小さく形成されている。なお、弾性体127は、押圧体128によって生じる押圧力によって弾性変形する材料で構成されていればよいため、ゴム材以外の材料、例えば、ウレタン樹脂などの樹脂材、コイルスプリングおよびスプリングワッシャなどを単体でまたはこれらを組み合わせて構成することができる。
押圧体128は、ハウジング126内に保持されているボールシート123をボールシート124に押圧するためのリング状の部品であり、主として、押圧本体128aとハンドル部128cとを備えて構成されている。押圧本体128aは、ハウジング126にネジ嵌合してボールシート123を押圧する部品であり、非鉄金属または鉄鋼材などの金属材料を平面視でリング状に形成して構成されている。
この押圧本体128aは、下面の一部が図示下方に円筒状に突出しており、この円筒体の内周面に前記ハウジングネジ部126cがネジ嵌合する雌ネジからなる押圧体ネジ部128bが形成されている。これにより、押圧本体128aは、ハウジング126への捩じ込み量によってボールシート123とボールシート124とがボール部122を挟持する力、すなわち、起立棒110の傾倒操作時に生じる抵抗力を増減させることができる。
ハンドル部128cは、押圧本体128aを回転させるために使用者Uが把持する部分であり、樹脂材を半球の平面視でリング状に形成して構成されている。すなわち、ハンドル部128cは、使用者Uによる回転操作を介してボールシート123,124によるボール部122の締め付け力を加減して起立棒110を傾倒させるために必要な力を増減することができる。このハンドル部128cの表面には、上下方向に沿って凹状に延びる溝部が周方向に沿って等間隔に形成されて把持し易くなっている。このハンドル部128cは、押圧本体128aに対してボルトを介して着脱自在に取り付けられる。この起立棒支持体120は、支持体台座130を介して支持ベース体132に支持されている。
支持体台座130は、起立棒110を傾倒可能範囲における中心に位置した中立位置で垂直方向に対して使用者U側に傾斜した状態とするために起立棒支持体120を支持する部品であり、樹脂材を箱状に形成して構成されている。より具体的には、支持体台座130は、起立棒支持体120を支持する支持面131が水平方向に対して傾斜する傾斜面で構成されている。本実施形態においては、支持体台座130は、支持面131が水平方向に対して使用者U側に向かって10°だけ傾斜して形成されている。
これにより、起立棒110は、傾倒可能範囲における中心に位置した中立位置で水平な床面に直交する垂直方向に対して10°だけ傾倒した状態となる。また、垂直把持部102は、起立棒110が中立状態で垂直方向に延びる状態となる。この支持体台座130は、本実施形態においては、樹脂材で構成されており、ボルトを介して起立棒支持体120を着脱自在な状態で支持するとともに、ボルトを介して支持ベース体132に着脱自在な状態で取り付けられている。
支持ベース体132は、起立棒110を起立した状態で支持するための部品であり、非鉄金属または鉄鋼材などの金属材料を平面視で円板状に形成して構成されている。本実施形態においては、支持ベース体132は、トレーニング器具100の安定性をより確保するために平面視で長方形状に形成された鋼板によって構成されている。
この場合、支持ベース体132は、平面視における中心位置よりも起立棒110が傾倒する側とは反対側にずれた位置で起立棒支持体120を支持している。この支持ベース体132は、裏面の全面が平らに形成されていてもよいし、裏面の一部にゴム材などの弾性体を円柱状に形成した複数の底足(図示せず)が均等配置して支持ベース体132を浮かせるように構成してもよい。
そして、このトレーニング器具100は、全体として人が持ち運びできる重さに形成されている。この場合、トレーニング器具100の総重量である人が持ち運びできる重さとは、概ね10kg以下であるが、好ましくは1kg以上かつ5kg以下、より好ましくは1kg以上かつ3kg以下である。
(トレーニング器具100の作動)
次に、上記のように構成したトレーニング器具100の作動について説明する。トレーニング器具100を使用する使用者U(リハビリを行う者またはトレーナ)は、図3に示すように、トレーニング器具100を用意してトレーニング器具100を使用する床面上に配置する。そして、使用者Uは、トレーニング器具100におけるロック機構111を操作して起立棒110の高さを調整するとともにハンドル部128cを操作して起立棒110を傾倒させる際の抵抗力を調整する。
また、使用者Uは、起立棒110を傾倒操作して傾倒可能範囲における中心位置である中立位置に位置させる。これにより、起立棒110は、垂直方向に対して10°だけ傾倒した姿勢、換言すれば、水平な床面に対して80°の傾倒した姿勢で起立する。また、操作把持体101は、垂直方向に沿って起立した状態となる。そして、使用者Uは、起立棒110が傾倒する側に使用者Uが対向するように支持ベース体132の向きおよび位置を調整する。この場合、トレーニング器具100は、起立棒110が中立状態で使用者Uに向かって傾倒しているため、使用者Uに対して支持ベース体132を遠ざけた状態で操作把持体101を近い位置に配置することができる。これにより、トレーニング器具100は、トレーニングまたはリハビリを行なえる状態となる。
したがって、使用者Uは、椅子やベッドに着座した状態または起立した状態で操作把持体101における垂直把持部102または水平把持部103を握ってまたは掴んで腕を前後左右(図1における破線矢印参照)に動かすことで起立棒110を傾倒させてトレーニングまたはリハビリを行うことができる。また、使用者Uは、起立棒110を軸線周りに回転変位させることもできる。なお、トレーニング器具100は、使用者の正面のほかに、左右の側方に配置することもできる。例えば、トレーニング器具100は、車椅子(図示せず)に着座する使用者Uの側方に配置する場合、支持ベース132を車椅子の車輪から離して配置することができる。
これらの場合、トレーニング器具100は、起立棒110が中立状態で使用者Uに向かって傾倒しているため、操作把持体101の把持および操作を行い易い。また、トレーニング器具100は、垂直把持部102に対して水平把持部103の手首側の長さL1が指側の長さL2よりも長く延びて形成されているため、操作把持体101を使用者Uから遠ざける方向に傾倒させる操作を行い易くすることができる。また、トレーニング器具100は、支持ベース体132が平面視における中心位置よりも起立棒110が傾倒する側とは反対側にずれた偏心した位置で起立棒支持体120を支持しているため、起立棒110が中立位置で傾倒した状態および同中立位置から更に使用者U側に傾倒する際におけるトレーニング器具100全体の傾倒を防止することができる。
そして、使用者Uは、トレーニング器具100の使用を終了する場合や起立棒110を傾倒させる抵抗力を調整などする場合には、起立棒110を傾倒操作して傾倒可能範囲における中心位置である中立位置に位置させる。この場合においてもトレーニング器具100は、起立棒110の中立位置が使用者U側に向かって傾倒しているため、容易に中立位置に戻すことができる。
なお、使用者Uは、トレーニング器具100の使用開始時および使用終了時において起立棒110を必ずしも傾倒可能範囲における中立位置に位置させる必要はなく、同中立位置に対して前後左右の全方向に傾倒させた状態で位置決めするようにしてもよい。
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、トレーニング器具100は、操作把持体101を支持する起立棒110が起立棒支持体120から傾倒した姿勢で設けられているため、操作把持体101を使用者Uの近傍に配置しつつ起立棒支持体120を使用者Uから離れた位置に位置させることができ使用者Uが操作把持体101を把持し易く同操作把持体101を操作するトレーニングを行い易くすることができる。この場合、本発明に係るトレーニング器具100においては、起立棒支持体120は揺動可能範囲における揺動中心で前記傾倒した起立棒110を支持しているため、起立棒110を揺動中心でない位置で傾倒させた場合に同位置からの傾倒可能量が特定の方向に偏ってムラが生じることを防止することができる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
例えば、上記実施形態においては、操作把持体101は、中立位置で傾倒する起立棒110に対して同傾倒方向とは反対方向に同じ角度で傾倒するように構成した。これにより、操作把持体101は、起立棒110が中立位置で傾倒した状態であっても垂直方向に起立姿勢となるため、使用者Uによる把持および操作を行い易くすることができる。
この場合、操作把持体101は、図5に示すように、中立位置で傾倒する起立棒110に対して同傾倒方向とは反対方向に起立棒110の傾斜角度と同じまたはそれ以上の角度で傾倒するように構成することもできる。これによれば、操作把持体101は、操作把持体101がより使用者U側に向くため、使用者Uによる把持および操作を一層行い易くすることができる。一方、操作把持体101は、図6に示すように、中立位置で傾倒する起立棒110の軸線上に傾倒した状態で設けることもできる。なお、これらの場合、水平把持部103および垂直把持部102は、厳密には水平方向および垂直方向に延びるものではないが、使用者Uが掴んだり握ったりして把持することができる形状を広く採用できることは当然である。
また、上記実施形態においては、操作把持体101は、垂直把持部102および水平把持部103を備えて構成した。しかし、操作把持体101は、使用者Uが掴んだり握ったりして把持することができる形状を広く採用することができる。したがって、操作把持体101は、垂直把持部102および水平把持部103のうちの少なくとも一方含んで構成することができるとともに、これら以外の形状、例えば、球体で構成することもできる。
また、操作把持体101は、図7および図8にそれぞれ示すように、垂直把持部102および水平把持部103への把持を各自にするために垂直固定具140および水平固定具141をそれぞれ設けることもできる。ここで、垂直固定具140は、垂直把持部102を把持した使用者Uの手Hを垂直把持部102に押え付けて固定するための部品であり、垂直把持部102の外周面を軸方向に跨いだ状態で延びるバンドや紐で構成することができる。また、水平固定具141は、水平把持部103を把持した使用者Uの手Hを水平把持部103に固定するための部品であり、水平把持部103の上面を径方向に跨いだ状態で延びるバンドや紐で構成することができる。なお、操作把持体101は、垂直固定具140および水平固定具141のうちの一方を設けてもよいことは当然である。また、図7は使用者Uの手Hが垂直把持部102を把持した状態を示しており、図8は使用者Uの手Hが水平把持部103を把持した状態を示している。
また、上記実施形態においては、水平把持部103は、垂直把持部102の軸線に対して手Hの手首側の長さL1が指側の長さL2よりも長く延びて形成されている。すなわち、水平把持部103は、本発明に係る上側カバー体に相当する。しかし、水平把持部103は、図9に示すように、垂直把持部102の軸線に対して手Hの手首側の長さL1と指側の長さL2とが同じ長さ、すなわち、水平把持部103の中心に垂直把持部102を設けることもできる。なお、本発明に係る上側カバー体は、必ずしも使用者Uが把持できる形状に形成される必要はなく、単に、垂直把持部102を握る手Hを上方ら覆う傘状や平板状の形状に形成することができる。
また、上記実施形態においては、起立棒支持体120は、揺動中心が起立棒110の軸線上に位置するように構成した。すなわち、起立棒支持体120は、支持体台座130によって傾斜した状態で設けられている。しかし、起立棒支持体120は、揺動中心が起立棒110の軸線上に位置しない態様で構成することもできる。具体的には、起立棒支持体120は、図9に示すように、支持ベース体132上に水平方向に取り付けることができる。この場合、起立棒支持体120は、スタッド部121aにおける起立棒110との連結部分を屈曲させて構成する。
また、上記実施形態においては、起立棒支持体120は、ボールジョイントで構成した。この場合、起立棒支持体120は、押圧体128によって起立棒110の傾倒時の抵抗力を加減できるように構成した。これにより、トレーニング器具100は、使用者Uの障害の程度や回復の程度に応じた抵抗力でトレーニングを行うことができる。また、トレーニング器具100は、起立棒110を使用者Uが所望する角度で固定することもできる。しかし、起立棒支持体120は、起立棒110の下端部側を支持して同起立棒110を揺動可能に支持するように構成されていればよい。
したがって、起立棒支持体120は、例えば、押圧体128を省略して常に一定の抵抗力を起立棒110に付与するように構成することもできる。この場合、ボールシート123,124は、一体的に構成して1つの部品として構成することができる。また、起立棒支持体120は、コイルスプリングで構成することもできる。この場合、起立棒支持体120は、コイルスプリングの上端部に起立棒110の下端部を接続するとともに、このコイルスプリングの下端部を支持ベース体132に固定して構成することができる。また、起立棒支持体120は、発泡性樹脂材をブロック体に形成して構成することができる。この場合、起立棒支持体120は、発泡樹脂製のブロック体を支持ベース体132上に固定するとともに、このブロック体に起立棒支持体120の下端部を挿し込んで構成することができる。
また、上記実施形態においては、支持ベース体132は、平面視における中心位置よりも起立棒110が傾倒する側とは反対側にずれた偏心した位置で起立棒支持体120を支持している。しかし、支持ベース体132は、トレーニング器具100全体を傾倒させることなく起立棒110を支持するように構成されていればよい。したがって、支持ベース体132は、平面視における中心位置で起立棒支持体120を支持するようにしてよい。また、支持ベース体132は、平面視における中心位置よりも起立棒110が傾倒する側にずれた偏心した位置で起立棒支持体120を支持するようにしてもよい。また、支持ベース体132は、方形以外の形状、例えば、円形、楕円形または六角形などの多角形に形成することもできる。また、支持ベース体132は、複数の棒材を組み合わせて構成することもできる。また、支持ベース体132は、支持体台座130で構成してもよい。
また、上記実施形態においては、支持体台座130は、支持ベース体132とは別体で構成して支持ベース体132上に取り付けて構成した。しかし、支持体台座130は、支持ベース体132と同一の部品で一体的に形成してもよい。
また、上記実施形態においては、起立棒110は、垂直方向に対して10°だけ傾斜した状態で起立させた。しかし、起立棒110は、垂直方向に対して5°以上かつ30°以下の範囲に設定することが好適である。