以下、検出装置および検出方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、検出装置1の構成について添付図面を参照して説明する。
図1に示す検出装置1は、「検出装置」の一例であって、後述の「検出方法」に従い、被験者100の頸部101(図3参照)の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データDmに基づいて被験者100による嚥下行為を検出する検出処理を実行可能に構成されている。具体的には、検出装置1は、装置本体2およびセンサシート3を備えて構成されている。
この場合、センサシート3は、被験者100の頸部101(図3参照)に貼付(装着)された状態で頸部101の筋活動に伴う筋電位を検出可能に構成されたシート状センサ群であって、図2に示すように、粘着シート21、複数(一例として8つ)の筋電位センサ22a1~22d1,22a2~22d2(以下、「筋電位センサ22a1,22a2」を区別しないときには「筋電位センサ22a」ともいい、「筋電位センサ22b1,22b2」を区別しないときには「筋電位センサ22b」ともいい、「筋電位センサ22c1,22c2」を区別しないときには「筋電位センサ22c」ともいい、「筋電位センサ22d1,22d2」を区別しないときには「筋電位センサ22d」ともいい、「筋電位センサ22a~22d」を区別しないときには「筋電位センサ22」ともいう)、送信部23および電源(バッテリー:図示せず)を備えている。
粘着シート21は、一面に粘着材層が形成されて頸部101等に貼付け可能とする粘着面が形成されている。なお、図2では、粘着シート21における粘着面とは逆側の面から見た状態でセンサシート3を図示している。各筋電位センサ22は、「検出電極」の一例であって、センサシート3を貼付した部位(頸部101等)の筋活動に伴って発生する筋電位を検出して筋電位のレベルに対応する筋電位信号Smを出力する。この筋電位センサ22は、粘着シート21における上記の粘着面に固定されている。送信部23は、筋電位センサ22から出力された筋電位信号Smを装置本体2に対して無線送信可能に構成されている。
また、センサシート3には、被験者100の頸部101における「嚥下行為時の筋電位変化の検出に適した位置」に各筋電位センサ22を位置させるようにして頸部101に粘着シート21を貼付させるための取付け指標24が形成されている。具体的には、このセンサシート3では、図3に示すように、被験者100の頸部101における喉頭隆起102(喉仏)の近傍(外側)に取付け指標24が位置するように粘着シート21を頸部101に貼付したときに、各筋電位センサ22が嚥下関連筋群に対向するように、各筋電位センサ22が配置されている。
より具体的には、このセンサシート3は、喉頭隆起102の近傍に取付け指標24を位置させたときに、筋電位センサ22aが胸骨甲状筋の近傍(以下、「位置A」ともいう)に接し、筋電位センサ22bが胸骨舌骨筋の近傍(以下、「位置B」ともいう)に接し、筋電位センサ22cがオトガイ筋の近傍(以下、「位置C」ともいう)に接し、かつ筋電位センサ22dが甲状舌骨筋の近傍(以下、「位置D」ともいう)に接するように各筋電位センサ22の配置および取付け指標24の形成位置が最適化されている。
一方、装置本体2は、受信部11、操作部12、表示部13、処理部14および記憶部15を備えている。受信部11は、センサシート3の送信部23から無線送信される筋電位信号Smを受信して処理部14に出力する。操作部12は、処理条件の設定操作や、処理開始/終了の指示操作が可能な各種の操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部14に出力する。表示部13は、処理部14の制御に従い、処理条件の設定画面や、筋電位信号Smの波形(筋電位の経時変化を示す波形)の表示画面、および検出結果を報知する表示画面など(いずれも図示せず)を表示する。
処理部14は、検出装置1(装置本体2)を総括的に制御する。具体的には、処理部14は、「処理部」の一例であって、センサシート3から送信されて受信部11によって受信された筋電位信号Smに基づき、センサシート3の各筋電位センサ22によって検出された筋電位の変化を特定可能な筋電位データDm(「被験者の頸部の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データ」の一例)を生成して記憶部15に記憶させる。また、処理部14は、記憶部15に記憶させた筋電位データDmを解析して筋電位のレベルや所定の条件を満たしている時間長などを特定する処理を実行する。さらに、処理部14は、特定した筋電位のレベルや時間長に基づき、被験者100の嚥下行為を検出する。なお、処理部14による上記の各処理については後に詳細に説明する。記憶部15は、処理部14の動作プログラムや処理部14の演算結果を記憶すると共に、上記の筋電位データDmを記憶する。
次に、検出装置1によって睡眠状態の被験者100による嚥下行為を検出する処理について添付図面を参照して説明する。
最初に、嚥下行為を検出するための「基準の値」を特定する。この「基準の値」の特定に際しては、まず、覚醒状態の被験者100を対象として以下の処理を順次実行する。具体的には、図3に示すように、被験者100の頸部101における喉頭隆起102の近傍(外側)に取付け指標24が位置するように粘着シート21を頸部101に貼付してセンサシート3を装着する。この際には、センサシート3の筋電位センサ22aが胸骨甲状筋の近傍(位置A)に接し、筋電位センサ22bが胸骨舌骨筋の近傍(位置B)に接し、筋電位センサ22cがオトガイ筋の近傍(位置C)に接し、かつ筋電位センサ22dが甲状舌骨筋の近傍(位置D)に接した状態となる。次いで、装置本体2およびセンサシート3の電源をそれぞれ投入する。この際には、センサシート3の各筋電位センサによって被験者100の頸部101の筋活動に伴って発生する筋電位が検出され、検出された電位のレベルに応じた筋電位信号Smがセンサシート3から装置本体2に送信される。続いて、被験者100に対して就寝時の体位となるように指示をする。
次いで、装置本体2の操作部12を操作することにより、「嚥下行為時データの取得」の開始を指示すると共に、覚醒状態の被験者100に対して嚥下行為の実施を指示する。この際には、被験者100自身の唾液、或いは、極く少量の飲料(水など)を嚥下させる。これに応じて、被験者100が嚥下行為を実施したときには、一例として、図4に示すように、頸部101における位置Aの電位(筋電位センサ22aによって検出される電位)、頸部101における位置Bの電位(筋電位センサ22bによって検出される電位)、頸部101における位置Cの電位(筋電位センサ22cによって検出される電位)、および頸部101における位置Dの電位(筋電位センサ22dによって検出される電位)が嚥下行為時の筋活動に伴って逐次変化する。この場合、同図に示す波形は、嚥下行為時の筋電位の変化の一例であって、位置A~D毎の筋電位の変化の態様は、嚥下行為の癖や、頸部101の状態などに応じて被験者100毎に相違する。
一方、装置本体2では、処理部14が、操作部12の操作によって「嚥下行為時データの取得」の開始を指示された時点から受信部11によって受信されている筋電位信号Smに基づく筋電位データDmの生成を開始し、予め規定された時間が経過したとき(例えば、開始を指示されてから3秒が経過したとき)に、筋電位データDmの生成を終了して記憶部15に記憶させる。以上の処理を複数回(一例として10回)繰り返し実行することにより、覚醒状態の被験者100による複数回の嚥下行為時の筋電位データDm(「覚醒状態の被験者に嚥下行為を複数回実施させつつ筋電位を記録した筋電位データ」の一例)が取得される。
次いで、装置本体2の操作部12を操作することにより、「体動行為時データの取得」の開始を指示すると共に、覚醒状態の被験者100に対して体動行為の実施を指示する。この際には、一例として「寝返り(仰臥位から側臥位への移行、側臥位から仰臥位への移行、および側臥位から逆向きの側臥位への移行など)」を体動行為として実施させる。これに応じて、被験者100が体動行為を実施したときには、一例として、図6に示すように、頸部101における位置Aの電位(筋電位センサ22aによって検出される電位)、頸部101における位置Bの電位(筋電位センサ22bによって検出される電位)、頸部101における位置Cの電位(筋電位センサ22cによって検出される電位)、および頸部101における位置Dの電位(筋電位センサ22dによって検出される電位)が体動行為時の筋活動に伴って逐次変化する。この場合、図6に示す波形は、体動行為時の筋電位の変化の一例であって、位置A~D毎の筋電位の変化の態様は、体動行為の癖や、頸部101の状態などに応じて被験者100毎に相違する。
一方、装置本体2では、処理部14が、操作部12の操作によって「体動行為時データの取得」の開始を指示された時点から受信部11によって受信されている筋電位信号Smに基づく筋電位データDmの生成を開始し、予め規定された時間が経過したとき(例えば、開始を指示されてから5秒が経過したとき)に、筋電位データDmの生成を終了して記憶部15に記憶させる。以上の処理を複数回(一例として10回)繰り返し実行することにより、覚醒状態の被験者100による複数回の体動行為時の筋電位データDm(「覚醒状態の被験者に予め規定された体動行為を複数回実施させつつ筋電位を記録した筋電位データ」の一例)が取得される。
なお、詳細な説明を省略するが、「予め規定された体動行為」は上記の例のような「寝返り」に限定されるものではなく、「寝返り」に加えて(または、「寝返り」に代えて)「咳払い」、「深呼吸」および「発声(寝言を意図した音声の発声)」などを「体動行為」として実施させて筋電位データDmを取得するのが好ましい。この場合、各種の「体動行為」を実施させて筋電位データDmを取得するときには、各「体動行為」をそれぞれ複数回実施して同種の「体動行為」に対応する複数の筋電位データDmを取得するのが好ましい。また、「嚥下行為時データの取得」および「体動行為時データの取得」の実行順序は上記の例に限定されず、「体動行為時データの取得」の後に「嚥下行為時データの取得」を実施することもできる。
次いで、処理部14は、記憶部15に記憶させた各筋電位データDmに基づいて「嚥下行為についての基準の値」および「体動行為についての基準の値」をそれぞれ演算する。具体的には、処理部14は、各筋電位データDmの値を対象とするフィルタリング処理を実行する。より具体的には、一例として、100Hz~500Hz帯域を抽出するBPFを使用したフィルタリング処理、全波整流処理フィルタを使用したフィルタリング処理(数値の絶対値変換処理)、および10Hz以下の低域を抽出するLPFを使用したフィルタリング処理をこの順で実行する。これにより、一例として、図4に示す嚥下行為時の筋電位データDmの波形については図5に示す波形のように変換され、図6に示す体動行為時の筋電位データDmの波形については図7に示す波形のように変換される。以下、前述のように筋電位信号Smに基づいて生成された筋電位データDmと区別するために、フィルタリング処理後の筋電位データDmについて筋電位データDmfともいう。
続いて、嚥下行為時の各筋電位データDmfに基づき、前述の「嚥下行為時データの取得」において検出された筋電位が予め規定された「第1の閾値」を超えてから予め規定された「第2の閾値」を下回るまでの「第1の時間」を嚥下行為毎、かつ位置A~D毎にそれぞれ特定する。この場合、検出される筋電位のレベルや、嚥下行為時や体動行為時の変化量が被験者100毎に相違する。このため、筋電位が低い被験者100や変化量が小さい被験者100を対象としているときには「第1の閾値」や「第2の閾値」を低い電位に規定し、筋電位が高い被験者100や変化量が大きい被験者100を対象としているときには「第1の閾値」や「第2の閾値」を高い電位に規定する。また、「第1の閾値」および「第2の閾値」として相違する電位を規定することもできるが、一例として、両「閾値」を同じ電位に規定するものとする。
次いで、一例として、上記のように特定した各「第1の時間」のうちの最短の時間および最長の時間を除く各「第1の時間」の平均時間長を「第1の時間の代表時間」である「嚥下行為継続時間」として位置A~D毎にそれぞれ演算する(「予め規定された第1の時間特定手順」に従って「嚥下行為継続時間」を特定する処理の一例)。この際に、最短の時間および最長の時間を除いて「嚥下行為継続時間」を演算することにより、前述の「嚥下行為時データの取得」に際して被験者100が通常時に実施しない(睡眠状態において実施しない)変則的な嚥下行為についての継続時間が「基準の値」に与える影響を軽減することができる。
続いて、一例として、上記の「嚥下行為継続時間」の演算対象とした「第1の時間」の筋電位データDmfに基づき、各「第1の時間」内における筋電位の最大値を「第1の時間内の筋電位の代表値」である「嚥下行為時電位」として位置A~D毎にそれぞれ演算する(「予め規定された第1の電位特定手順」に従って「嚥下行為時電位」を特定する処理の一例)。なお、本例では、前述の「嚥下行為時データの取得(被験者100に嚥下行為を実施させつつ筋電位データDmを取得する処理)」、および「嚥下行為についての基準の値(嚥下行為継続時間および嚥下行為時電位)の演算」の処理が「第1の処理」に相当する。
続いて、体動行為時の各筋電位データDmfに基づき、前述の「体動行為時データの取得」において検出された筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第2の時間」を体動行為毎、かつ位置A~D毎にそれぞれ特定する。なお、この際に使用する「第1の閾値」および「第2の閾値」については、嚥下行為時の筋電位データDmfを対象とする前述の処理時に使用した「第1の閾値」および「第2の閾値」と同じ値の「閾値」を使用する。
次いで、一例として、上記のように特定した各「第2の時間」のうちの最短の時間および最長の時間を除く各「第2の時間」の平均時間長を「第2の時間の代表時間」である「体動行為継続時間」として位置A~D毎にそれぞれ演算する(「予め規定された第1の時間特定手順」に従って「体動行為継続時間」を特定する処理の一例)。この際に、最短の時間および最長の時間を除いて「体動行為継続時間」を演算することにより、前述の「体動行為時データの取得」に際して被験者100が通常時に実施しない(睡眠状態において実施しない)変則的な体動行為についての継続時間が「基準の値」に与える影響を軽減することができる。
続いて、一例として、上記の「体動行為継続時間」の演算対象とした「第2の時間」の筋電位データDmfに基づき、各「第2の時間」内における筋電位の最大値を「第2の時間内の筋電位の代表値」である「体動行為時電位」として位置A~D毎にそれぞれ演算する(「予め規定された第1の電位特定手順」に従って「体動行為時電位」を特定する処理の一例)。なお、本例では、前述の「体動行為時データの取得(被験者100に体動行為を実施させつつ筋電位データDmを取得する処理)」、および「体動行為についての基準の値(体動行為継続時間および体動行為時電位)の演算」の処理が「第2の処理」に相当する。
この場合、複数の被験者100に対して上記の「第1の処理」や「第2の処理」を実行したときに、演算される(特定される)「嚥下行為継続時間」および「嚥下行為時電位」や、「体動行為継続時間」および「体動行為時電位」は、図8~13に示すように、被験者100毎に相違する。
なお、図8,10,12では、複数回の「嚥下行為時データの取得」によって取得された各筋電位データDm(Dmf)に基づいて特定された「第1の時間」の分布範囲、および複数回の「体動行為時データの取得」によって取得された各筋電位データDm(Dmf)に基づいて特定された「第2の時間」の分布範囲を位置A~D毎に「棒グラフ」でそれぞれ示すと共に、演算された「嚥下行為継続時間」や「体動行為継続時間」を位置A~D毎に「●」でそれぞれ示している。また、図9,11,13では、複数回の「嚥下行為時データの取得」によって取得された各筋電位データDm(Dmf)に基づいて特定された「第1の時間内における代表電位」の分布範囲、および複数回の「体動行為時データの取得」によって取得された各筋電位データDm(Dmf)に基づいて特定された「第2の時間内における代表電位」の分布範囲を位置A~D毎に「棒グラフ」でそれぞれ示すと共に、演算された「嚥下行為時電位」や「体動行為時電位」を位置A~D毎に「●」でそれぞれ示している。
例えば、図8,12に示すように、被験者100A,100Cは、位置A~Dのすべてにおいて、「第1の時間」よりも「第2の時間」が長く、演算される「体動行為継続時間」が「嚥下行為継続時間」よりも長くなっている。これに対して、図10に示すように、被験者100Bは、位置Aにおいては、「第1の時間」よりも「第2の時間」が長く、演算される「体動行為継続時間」が「嚥下行為継続時間」よりも長くなっているものの、位置B~Dにおいては、「第1の時間」と「第2の時間」との差が小さく、演算される「体動行為継続時間」の「嚥下行為継続時間」との差も小さくなっている。なお、詳細な説明を省略するが、「第1の時間」や「第2の時間」の分布範囲についても、被験者100A~100B毎に相違している。
また、図9に示すように、被験者100Aは、位置A,Bにおいて「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違するものの、位置C,Dにおいては、「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが同程度となっている。さらに、被験者100Aは、位置Bにおける「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違するものの、位置Aにおける「第1の時間内における代表値」の分布範囲の一部と「第2の時間内における代表値」の分布範囲の一部とが重なっている。
また、図11に示すように、被験者100Bは、位置A~Dのすべてにおいて「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違し、かつ「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違している。さらに、図13に示すように、被験者100Cは、位置A~Dのすべてにおいて「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違し、位置B,Cにおいて「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違するものの、位置A,Dにおいて「第1の時間内における代表値」の分布範囲の一部と「第2の時間内における代表値」の分布範囲の一部とが重なっている。
このような「嚥下行為時の測定値」や「体動行為時の測定値」の被験者100毎の相違は、嚥下行為の癖や、体動行為の癖、および頸部101の状態などに起因して生じるものである。このため、同一の被験者100については、「第1の処理」および「第2の処理」を複数回実行しても同様の値が得られることが確認されている。また、同一の被験者100については、覚醒状態において取得された筋電位データDmに基づいて得られる「嚥下行為継続時間」、「嚥下行為時電位」、「体動行為継続時間」および「体操行為時電位」と、睡眠状態において得られる取得された筋電位データDmに基づいて得られる「嚥下行為継続時間」、「嚥下行為時電位」、「体動行為継続時間」および「体操行為時電位」とが同程度となることも確認されている。以上により、「基準の値」を特定する処理が完了する。
次いで、特定した「基準の値」に基づき、後述の「検出処理」において嚥下行為が行われたか否かを判別するための「判別用基準時間」および「判別用基準電位」を特定する。具体的には、処理部14は、一例として、最初に、各位置A~Dのうちから、特定された「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」との差、および「第1の時間」の分布範囲と「第2の時間」の分布範囲との差が予め規定された時間長を超え、かつ特定された「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」との差、および「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲との差が予め規定された値を超えている位置を「嚥下行為検出位置」として特定する。この際に、条件を満たす位置が複数存在するときには、上記の「差」が最も大きい位置を「嚥下行為検出位置」として特定する。
また、処理部14は、一例として、特定した「嚥下行為検出位置」における「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」との中間の時間を、嚥下行為および体動行為のいずれの行為が行われたかを判別するための「判別用基準時間」として特定する(「予め規定された第2の時間特定手順」に従って「判別用基準時間」を特定する処理の一例)。さらに、処理部14は、一例として、特定した「嚥下行為検出位置」における「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」との中間値を、嚥下行為および体動行為のいずれの行為が行われたかを判別するための「判別用基準電位」として特定する(「予め規定された第2の電位特定手順」に従って「判別用基準電位」を特定する処理の一例)。
この際に、例えば、前述の被験者100Aが被験者100であったときには、前述したように、位置A~Dのすべてにおいて「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」とが相違し、かつ「第1の時間」の分布範囲と「第2の時間」の分布範囲とが相違すると共に、位置Bにおいて、「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違し、かつ「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違している。このため、処理部14は、被験者100Aが被験者100であったときには、位置Bを「嚥下行為検出位置」として特定すると共に、位置Bにおける「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」との中間の時間(図8に一点鎖線で示す時間)を「判別用基準時間」として特定し、かつ位置Bにおける「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」との中間値(図9に一点鎖線で示す電位)を「判別用基準電位」として特定する。
また、例えば、前述の被験者100Bが被験者100であったときには、前述したように、位置A~Dのすべてにおいて「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違し、かつ「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違すると共に、位置Aにおいて「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」とが相違し、かつ「第1の時間」の分布範囲と「第2の時間」の分布範囲とが相違している。このため、処理部14は、被験者100Bが被験者100であったときには、位置Aを「嚥下行為検出位置」として特定すると共に、位置Aにおける「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」との中間の時間(図10に一点鎖線で示す時間)を「判別用基準時間」として特定し、かつ位置Aにおける「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」との中間値(図11に一点鎖線で示す電位)を「判別用基準電位」として特定する。
さらに、例えば、前述の被験者100Cが被験者100であったときには、前述したように、位置A~Dのすべてにおいて「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」とが相違し、かつ「第1の時間」の分布範囲と「第2の時間」の分布範囲とが相違すると共に、位置B,Cにおいて、「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」とが相違し、かつ「第1の時間内における代表値」の分布範囲と「第2の時間内における代表値」の分布範囲とが相違している。この被験者100Cでは、位置Bよりも位置Cの方が時間や値の「差」が大きいため、処理部14は、被験者100Cが被験者100であったときには、位置Cを「嚥下行為検出位置」として特定すると共に、位置Cにおける「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」との中間の時間(図12に一点鎖線で示す時間)を「判別用基準時間」として特定し、かつ位置Cにおける「嚥下行為時電位」と「体動行為時電位」との中間値(図13に一点鎖線で示す電位)を「判別用基準電位」として特定する。
なお、本例では、上記の「判別用基準時間」を特定する処理、および「判別用基準電位」を特定する処理が「第3の処理」に相当する。以上により、「判別用基準時間」および「判別用基準電位」を特定する処理が完了する。
次に、睡眠状態の被験者100による嚥下行為を検出する(「検出処理」の実行)。具体的には、嚥下行為の検出に際しては、前述の「基準の値」を特定する処理時と同様にして、被験者100の頸部101にセンサシート3を装着した状態で装置本体2およびセンサシート3の電源をそれぞれ投入し、就寝するように指示をする。この際には、頸部101における各位置A~Dの電位が各筋電位センサ22a~22dによって検出され、検出された電位を示す筋電位信号Smがセンサシート3から装置本体2に送信される。次いで、一例として、被験者100が睡眠状態に移行したことを確認したときに、操作部12を操作することによって、「睡眠時データの取得」の開始を指示する。
この際に、装置本体2では、処理部14が、操作部12の操作によって「睡眠時データの取得」の開始を指示された時点から受信部11によって受信されている筋電位信号Smに基づく筋電位データDmの生成を開始し、生成した筋電位データDmを記憶部15に逐次記憶させる。また、操作部12の操作によって「睡眠時データの取得」の終了が指示されたとき(被験者100が覚醒したことを確認した測定者がそのような操作を行ったとき)や、予め設定された処理継続時間が経過したとき(または、予め設定された処理終了時刻が到来したとき)に、処理部14は、筋電位信号Smに基づく筋電位データDmの生成、および記憶部15への記憶の処理を終了する。これにより、睡眠状態の被験者100についての筋電位データDm(「睡眠状態の被験者における頸部の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データ」の一例)の取得が完了する。
次いで、処理部14は、前述の「第1の処理」や「第2の処理」時と同様にして、各筋電位データDmの値を対象とするフィルタリング処理を実行して筋電位データDmfを生成する。続いて、処理部14は、生成した筋電位データDmfと、事前に特定した「判別用基準時間」および「判別用基準電位」とに基づき、被験者100の睡眠中の嚥下行為を検出する。
この場合、図8,9に示す被験者100Aにおける位置B(嚥下行為検出位置)、図10,11に示す被験者100Bにおける位置A(嚥下行為検出位置)、および図12,13に示す被験者100Cにおける位置C(嚥下行為検出位置)では、いずれも、「嚥下行為継続時間が体動行為継続時間よりも短く、かつ嚥下行為時電位が体動行為時電位よりも高いとき」との条件を満たす筋電位データDm(Dmf)が取得される。したがって、処理部14は、被験者100A~100Cが被験者100であったときには、筋電位データDmfにおいて、筋電位が前述の「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも短く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも高いとの条件を満たす筋電位の変化が生じているか否かを検索し、そのような条件を満たす筋電位の変化が存在したときに、その筋電位の変化の時点において睡眠状態における被験者100によって嚥下行為が実施されたと判別する。
これにより、筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」以上となったり、「第3の時間」内の筋電位の最大値が「判別用基準電位」以下となったりする「体動行為時の筋電位の変化」が「嚥下行為時の筋電位の変化」であると誤検出される事態を好適に回避しつつ、睡眠状態の被験者100による嚥下行為が確実に検出される。
また、被験者100A~100Cの例とは相違するが、「嚥下行為検出位置」において、「嚥下行為継続時間が体動行為継続時間よりも短く、かつ嚥下行為時電位が体動行為時電位よりも低い」との条件を満たす筋電位データDm(Dmf)が取得される被験者100も存在する。このような被験者100を対象としているときに、処理部14は、筋電位データDmfにおいて、筋電位が前述の「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも短く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも低いとの条件を満たす筋電位の変化が生じているか否かを検索し、そのような条件を満たす筋電位の変化が存在したときに、その筋電位の変化の時点において睡眠状態における被験者100によって嚥下行為が実施されたと判別する。
これにより、筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」以上となったり、「第3の時間」内の筋電位の最大値が「判別用基準電位」以上となったりする「体動行為時の筋電位の変化」が「嚥下行為時の筋電位の変化」であると誤検出される事態を好適に回避しつつ、睡眠状態の被験者100による嚥下行為が確実に検出される。
さらに、「嚥下行為検出位置」において、「嚥下行為継続時間が体動行為継続時間よりも長く、かつ嚥下行為時電位が体動行為時電位よりも高い」との条件を満たす筋電位データDm(Dmf)が取得される被験者100も存在する。このような被験者100を対象としているときに、処理部14は、筋電位データDmfにおいて、筋電位が前述の「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも長く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも高いとの条件を満たす筋電位の変化が生じているか否かを検索し、そのような条件を満たす筋電位の変化が存在したときに、その筋電位の変化の時点において睡眠状態における被験者100によって嚥下行為が実施されたと判別する。
これにより、筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」以下となったり、「第3の時間」内の筋電位の最大値が「判別用基準電位」以下となったりする「体動行為時の筋電位の変化」が「嚥下行為時の筋電位の変化」であると誤検出される事態を好適に回避しつつ、睡眠状態の被験者100による嚥下行為が確実に検出される。
また、「嚥下行為検出位置」において、「嚥下行為継続時間が体動行為継続時間よりも長く、かつ嚥下行為時電位が体動行為時電位よりも低い」との条件を満たす筋電位データDm(Dmf)が取得される被験者100も存在する。このような被験者100を対象としているときに、処理部14は、筋電位データDmfにおいて、筋電位が前述の「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも長く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも低いとの条件を満たす筋電位の変化が生じているか否かを検索し、そのような条件を満たす筋電位の変化が存在したときに、その筋電位の変化の時点において睡眠状態における被験者100によって嚥下行為が実施されたと判別する。
これにより、筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」以下となったり、「第3の時間」内の筋電位の最大値が「判別用基準電位」以上となったりする「体動行為時の筋電位の変化」が「嚥下行為時の筋電位の変化」であると誤検出される事態を好適に回避しつつ、睡眠状態の被験者100による嚥下行為が確実に検出される。
この場合、図8に示すように、被験者100Aでは、位置A~Dのすべてにおいて、「嚥下行為継続時間」と「体動行為継続時間」とが大きく相違している。このため、被験者100Aについては、「第3の時間」内の筋電位の最大値と「判別用基準電位」との比較を行うことなく、「第3の時間」だけに着目して、「第3の時間」が「判別用基準時間」を下回るときには嚥下行為が行われたと判定し、「第3の時間」が「判別用基準時間」以上のときには体動行為が行われたと判定することもできる。しかしながら、図12に示すように、被験者100Cでは、位置Cにおける「判別用基準時間」が「体動行為継続時間」の分布範囲に含まれている。このため、被験者100Cについて位置Cの「第3の時間」だけに着目して嚥下行為か体動行為かを判定したときに、「判別用基準時間」を僅かに下回る「第3の時間」が特定される体動行為について、嚥下行為が行われたと誤判定してしまう。
また、詳細な説明を省略するが、「判別用基準電位」が「体動行為時電位」の分布範囲に含まれるような被験者100について、「第3の時間」内の筋電位の最大値と「判別用基準電位」との比較だけで判定を行ったときにも、体動行為に伴って測定される筋電位が「判別用基準電位」に近い値のときには、嚥下行為が行われたと誤判定してしまう。このため、検出装置1による検出方法のように、「第3の時間」と「判別用基準時間」との比較に加え、「第3の時間」内の筋電位の最大値と「判別用基準電位」との比較を行い、両比較の結果に基づいて、嚥下行為が行われたか体動行為が行われたかを判定することにより、体動行為を誤って嚥下行為であると誤判定する可能性を十分に低減することが可能となっている。
以上により、睡眠状態における被験者100の嚥下行為を検出する「検出処理」が完了する。なお、「検出処理」において検出した嚥下行為については、対応する筋電位の変化の開始時刻を記録したデータを、「検出処理」において使用した筋電位データDmと共に保存することにより、一例として、被験者100の嚥下機能が正常であるか否かの判定において有効利用することができる。
このように、この検出装置1、およびその検出方法では、覚醒状態の被験者100に嚥下行為を複数回実施させつつ筋電位を記録した筋電位データDm(Dmf)に基づいて「嚥下行為継続時間」および「嚥下行為時電位」を特定する「第1の処理」と、覚醒状態の被験者100に予め規定された体動行為を複数回実施させつつ筋電位を記録した筋電位データDm(Dmf)に基づいて「体動行為継続時間」および「体動行為時電位」を特定する「第2の処理」と、「嚥下行為継続時間」および「体動行為継続時間」に基づいて「判別用基準時間」を特定すると共に「嚥下行為時電位」および「体動行為時電位」に基づいて「判別用基準電位」を特定する「第3の処理」とを「検出処理」に先立って実行すると共に、「検出処理」において睡眠状態の被験者100における頸部101の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データDm(Dmf)に基づいて被験者100の睡眠中の嚥下行為を検出するときに、「嚥下行為継続時間」が「体動行為継続時間」よりも短く、かつ「嚥下行為時電位」が「体動行為時電位」よりも高いときには、筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも短く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも高いときに嚥下行為が実施されたと判別し、「嚥下行為継続時間」が「体動行為継続時間」よりも短く、かつ「嚥下行為時電位」が「体動行為時電位」よりも低いときには、「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも短く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも低いときに嚥下行為が実施されたと判別し、「嚥下行為継続時間」が「体動行為継続時間」よりも長く、かつ「嚥下行為時電位」が「体動行為時電位」よりも高いときには、「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも長く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも高いときに嚥下行為が実施されたと判別し、「嚥下行為継続時間」が「体動行為継続時間」よりも長く、かつ「嚥下行為時電位」が「体動行為時電位」よりも低いときには、「第3の時間」が「判別用基準時間」よりも長く、かつ「第3の時間」内における筋電位の最大値(代表値)が「判別用基準電位」よりも低いときに嚥下行為が実施されたと判別する。
したがって、この検出装置1、およびその検出方法によれば、睡眠状態の被験者100から筋電位データDmを取得する際に測定者が被験者100を監視することなく、取得された筋電位データDmに基づき、被験者100が行った嚥下行為を正確かつ容易に検出することができる。これにより、例えば被験者100の嚥下機能が正常であるか否かを判定する装置や判定者に対して、睡眠状態における被験者100が行った嚥下行為時の筋電位を特定可能な正確な情報(筋電位データDm)を提供することができる。
次に、検出装置および検出方法の他の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、検出装置1を用いた上記の実施の形態における要素と同様の要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図14に示す検出装置1Aは、「検出装置」の他の一例であって、後述の「検出方法」に従い、被験者100の頸部101(図15参照)の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データDm、被験者100の呼吸状態に応じて変化する外鼻孔103近傍の温度を記録した温度データDt、および被験者100の呼吸状態に応じて変化する圧力を記録した圧力データDpに基づいて被験者100による嚥下行為を検出する検出処理を実行可能に構成されている。具体的には、検出装置1Aは、装置本体2およびセンサシート3に加えて、温度測定装置4および圧力測定装置5を備えて構成されている。
この場合、温度測定装置4は、被験者100の外鼻孔103近傍に貼付可能な温度センサ4s(サーミスタ:図15参照)を備え、温度センサ4sを介して測定した温度を記録して温度データDtを生成し、生成した温度データDtを装置本体2に出力可能に構成されている。なお、温度センサ4sについては、被験者100による吸引動作によって外鼻孔103から吸引される空気、および被験者100による排出動作によって外鼻孔103から排出される空気が通過する位置に貼付される。
また、圧力測定装置5は、一例として、圧力測定装置5内の圧力センサと図示しないエアバッグ(嚢体)とがエアホースを介して接続されており、エアバッグの圧迫度合いに応じて変化する圧力を圧力センサを介して測定して圧力データDpを生成し、生成した圧力データDpを装置本体2に出力する。なお、本例では、一例として、上記のエアバッグを被験者100の胸部に配設した状態で帯体(伸縮性を有するベルト)によってエアバッグを被験者100に固定するものとする。この場合、被験者100の胸部に代えて腹部や背中にエアバッグを配設して帯体等で固定することもできる。
一方、本例の検出装置1Aにおける装置本体2では、処理部14が、筋電位信号Smに基づいて生成する筋電位データDmに関連付けて、温度測定装置4から出力された温度データDt、および圧力測定装置5から出力された圧力データDpを記憶部15に記憶させる。また、処理部14は、筋電位データDmを解析して筋電位のレベルや所定の条件を満たしている時間長などを特定する処理に加え、温度データDtおよび圧力データDpを解析して被験者100の呼吸状態(吸引動作や排出動作を行っているか否か)を特定する処理を実行する。さらに、処理部14は、特定した筋電位のレベルや時間長、および呼吸状態に関する特定結果に基づいて被験者100の嚥下行為を検出する。
次に、検出装置1Aによって睡眠状態の被験者100による嚥下行為を検出する処理について添付図面を参照して説明する。
この検出装置1Aによる嚥下行為の検出に際しては、最初に、覚醒状態の被験者100を対象として「嚥下行為を検出するための[基準の値]」を特定すると共に、特定した「基準の値」に基づき、「検出処理」において嚥下行為が行われたか否かを判別するための「判別用基準時間」および「判別用基準電位」を特定する。なお、これらの処理の具体的な手順については、検出装置1による嚥下行為の検出時と同様のため、詳細な説明を省略する。
次に、睡眠状態の被験者100による嚥下行為を検出する(「検出処理」の実行)。具体的には、被験者100の頸部101にセンサシート3を装着し、かつ外鼻孔103の近傍に温度測定装置4の温度センサ4sを装着すると共に、被験者100の胸部に圧力測定装置5のエアバッグを配設した状態で帯体によって固定する。なお、後述するように温度データDtや圧力データDpに基づいて被験者100の呼吸状態を特定する本例の「検出処理」に際しては、環境温度(室温)の変化量が十分に小さく、無風状態で、かつ被験者100の身体に大きな振動が加わることのない環境下で一連の処理を実施するのが好ましい。
次いで、装置本体2、温度測定装置4および圧力測定装置5の電源をそれぞれ投入すると共に、被験者100に対して仰向けの姿勢で就寝するように指示をする。この際には、頸部101における各位置A~Dの電位が各筋電位センサ22a~22dによって検出され、検出された電位を示す筋電位信号Smがセンサシート3から装置本体2に送信される。
また、被験者100によって吸引動作が行われたときには、外鼻孔103から吸引される空気が温度センサ4sに順次接することによって非呼吸状態(吸引動作や排出動作が行われず、温度センサ4sの周囲において空気が滞留している状態)よりもやや低い温度が検出されて温度測定装置4からそのような温度の変化を示す温度データDtが装置本体2に送信される。さらに、吸引動作時によって被験者100の体内に空気が吸引されたときには、胸部に配設されている(被験者100と帯体との間に挟み込まれている)エアバッグが圧迫されて圧力測定装置5によって徐々に高い圧力が検出され、そのような圧力の変化を示す圧力データDpが装置本体2に送信される。
また、被験者100によって排出動作が行われたときには、外鼻孔103から排出される空気(被験者100の体内で温度上昇させられた空気)が温度センサ4sに順次接することによって吸引状態や非呼吸状態よりも高い温度が検出されて温度測定装置4からそのような温度を示す温度データDtが装置本体2に送信される。さらに、排出動作によって被験者100の体内から空気が排出されたときには、胸部に配設されているエアバッグの圧迫が徐々に解かれることにより、圧力測定装置5によって徐々に低い圧力が検出され、そのような圧力の変化を示す圧力データDpが装置本体2に送信される。
次いで、一例として、被験者100が睡眠状態に移行したことを確認したときに、操作部12を操作することによって「睡眠時データの取得」の開始を指示する。これに応じて、処理部14が筋電位信号Smに基づいて筋電位データDmを生成して記憶部15に記憶させると共に、温度測定装置4から出力されている温度データDt、および圧力測定装置5から出力されている圧力データDpを筋電位データDmに関連付けて記憶部15に記憶させる。これにより、睡眠状態の被験者100についての筋電位データDm(「睡眠状態の被験者における頸部の筋活動に伴う筋電位を記録した筋電位データ」の一例)、温度データDt(「睡眠状態の被験者における外鼻孔近傍の温度を特定可能に筋電位データ」の一例)、および圧力データDp(「睡眠状態の被験者による呼吸状態に応じて変化する圧力を特定可能に筋電位データと共に記録した圧力データ」の一例)の取得が完了する。
この場合、図16に示すように、被験者100が時点t1aから吸引動作を開始して時点t1bまで吸引動作を継続したときには、温度測定装置4によって時点t1a~t1bの間に低い温度が検出されると共に、圧力測定装置5によって測定される圧力が時点t1aから徐々に上昇する。また、被験者100が時点t1bから排出動作を開始して時点t1cまで排出動作を継続したときには、温度測定装置4によって時点t1b~t1cの間に高い温度が検出されると共に、圧力測定装置5によって測定される圧力が時点t1bから徐々に低下する。したがって、温度測定装置4から出力される温度データDtの値(温度)や、圧力測定装置5から出力される圧力データDpの値(圧力)は、被験者100の呼吸状態に応じて同図に示すように変化する。
なお、同図、および後に参照する図17~21では、被験者100の嚥下行為や体動行為(頸部101の筋活動に伴う筋電位の変化)と被験者100の呼吸状態との関係についての理解を容易とするために、センサシート3における各筋電位センサ22a~22dを介して検出される筋電位のうちの1つだけを図示しているが、実際には、各筋電位センサ22a~22dの貼付位置の筋活動を特定可能な複数の筋電位を特定可能な筋電位データDmが取得される。この場合、図16の例では、被験者100による嚥下行為や体動行為が実施されていないことで、筋電位が一定となっている。また、図16~21は、被験者100の「吸引動作」、「排出動作」および「呼吸動作停止(非呼吸状態)」と「温度測定装置4によって測定される温度」および「圧力測定装置5によって測定される圧力」との関係を示す概念図であり、実際には、使用する温度測定装置4や圧力測定装置5の特性、および被験者100毎の呼吸の癖などの影響を受けて、検出される温度や圧力が非直線的な変化の態様となる。
一方、被験者100が嚥下行為を正常に実施するときには、嚥下行為時(唾液等を飲み込む際の頸部101の筋活動時)に呼吸が停止する。一例として、被験者100が吸引動作後に排出動作に先立って嚥下行為を実施した場合、図17に示すように、時点t2aから吸引動作を開始して時点t2bまで吸引動作を継続したときに、時点t2a~t2bの間に低い温度が検出されると共に、測定される圧力が時点t2aから徐々に上昇する。また、吸引動作を終了した時点t2bから時点t2cまで嚥下行為に伴う頸部101の筋活動が実施されるときには、筋電位が変化するのに対して、吸引や排出が行われないことで、測定される温度が吸引動作時よりもやや高い温度でほぼ一定の状態が維持されると共に、測定される圧力が高い圧力でほぼ一定の状態が維持される。
さらに、被験者100が時点t2cにおいて嚥下行為を終了して排出動作を開始し、時点t2dまで排出動作を継続したときには、時点t2c~t2dの間に高い温度が検出されると共に、測定される圧力が時点t2cから徐々に低下する。したがって、筋電位データDmの値(筋電位)、温度測定装置4から出力される温度データDtの値(温度)、および圧力測定装置5から出力される圧力データDpの値(圧力)は、被験者100の嚥下行為や呼吸状態に応じて同図に示すように変化する。
また、一例として、被験者100が排出動作後に吸引動作に先立って嚥下行為を実施した場合、図18に示すように、時点t3aから排出動作を開始して時点t3bまで排出動作を継続したときに、時点t3a~t3bの間に高い温度が検出されると共に、測定される圧力が時点t3aから徐々に低下する。また、排出動作を終了した時点t3bから時点t3cまで嚥下行為に伴う頸部101の筋活動が実施されるときには、筋電位が変化するのに対して、吸引や排出が行われないことで、測定される温度が吸引動作時よりもやや高い温度でほぼ一定の状態が維持されると共に、測定される圧力が低い圧力でほぼ一定の状態が維持される。
さらに、被験者100が時点t3cにおいて嚥下行為を終了して吸引動作を開始し、時点t3dまで吸引動作を継続したときには、時点t3c~t3dの間に低い温度が検出されると共に、測定される圧力が時点t3cから徐々に上昇する。したがって、筋電位データDmの値(筋電位)、温度測定装置4から出力される温度データDtの値(温度)、および圧力測定装置5から出力される圧力データDpの値(圧力)は、被験者100の嚥下行為や呼吸状態に応じて同図に示すように変化する。
さらに、一例として、被験者100が吸引動作後に嚥下行為を実施して再び吸引動作を実施したり、排出動作後に嚥下行為を実施して再び排出動作したりすることもある。具体的には、2回の吸引動作の間に嚥下行為を実施した場合、図19に実線で示すように、時点t4a~t4bの間の1回目の吸引動作時に低い温度が検出されると共に、測定される圧力が徐々に上昇する。また、時点t4b~t4cの間に吸引および排出が行われずに嚥下行為が実施されることで、測定される温度が吸引動作時よりもやや高い温度でほぼ一定の状態が維持され、かつ測定される圧力がやや高い圧力でほぼ一定の状態が維持されると共に、嚥下行為に対応する筋電位の変化が検出される。さらに、時点t4c~t4dの間の2回目の吸引動作時に再び低い温度が検出されると共に、測定される圧力が徐々に上昇する。この後、時点t4d~t4eの間に排出動作が行われることで高い温度が検出されると共に、圧力が徐々に低下する。
また、2回の排出動作の間に嚥下行為を実施した場合、図19に破線で示すように、時点t5a~t5bの間に吸引動作が行われることで低い温度が検出されると共に、圧力が徐々に上昇する。また、時点t5b~t5cの間の1回目の排出動作時に高い温度が検出されると共に、測定される圧力が徐々に低下する。さらに、時点t5c~t5dの間に吸引および排出を行われずに嚥下行為が実施されることで、測定される温度が吸引動作時よりもやや高い温度でほぼ一定の状態が維持され、かつ測定される圧力がやや高い圧力でほぼ一定の状態が維持されると共に、嚥下行為に対応する筋電位の変化が検出される。この後、時点t5d~t5eの間の2回目の排出動作時に再び高い温度が検出されると共に、測定される圧力が徐々に低下する。
一方、前述のように筋電位データDm、温度データDtおよび圧力データDpの取得が完了したときに、処理部14は、各筋電位データDmの値を対象とするフィルタリング処理による筋電位データDmfの生成と共に、各温度データDtの値を対象とするフィルタリング処理による温度データDtfの生成、および各圧力データDpの値を対象とするフィルタリング処理による圧力データDpfの生成を実行する。
この場合、被験者100が睡眠状態にあるときには、被験者100自身の体温の変化や環境温度(室温)の変化の影響を受けて温度測定装置4によって検出される温度が比較的長い周期で上下することがある。したがって、本例の検出装置1A(検出装置1Aによる検出方法)では、一例として、被験者100の呼吸状態の変化(吸引動作や排出動作)に応じた温度変化よりも長い周期の温度変化の影響を除外するフィルタ(一例として0.5Hz(または1.0Hz)程度の周期を下回る温度変化を除外するHPF)を用いて温度データDtをフィルタリング処理して温度データDtfを生成する。
また、被験者100が睡眠状態であるか覚醒状態であるかを問わず、被験者100の鼓動や、寝床に伝達される各種振動の影響を受けて圧力測定装置5によって検出される圧力が比較的短い周期で上下することがある。したがって、本例の検出装置1A(検出装置1Aによる検出方法)では、一例として、被験者100の呼吸状態の変化(吸引動作や排出動作)に応じた圧力変化よりも短い周期の圧力変化の影響を除外するフィルタ(一例として、0.5Hz程度の周期を超える圧力変化を除外するLPF)を用いて圧力データDpをフィルタリング処理して圧力データDpfを生成する。
続いて、処理部14は、生成した筋電位データDmf、および事前に特定した「判別用基準時間」および「判別用基準電位」と、温度データDtfおよび圧力データDpfとに基づき、被験者100の睡眠中の嚥下行為を検出する。なお、筋電位データDmfの値(筋電位)、「判別用基準時間」および「判別用基準電位」に基づいて嚥下行為の実施や体動行為の実施の有無を判別する処理については、検出装置1による前述の処理と同様のため、詳細な説明を省略する。
この場合、前述したように、被験者100による正常な嚥下行為は非呼吸状態(吸引動作や排出動作を行わない状態)において実施される。したがって、処理部14は、筋電位データDmfの値(筋電位)、「判別用基準時間」および「判別用基準電位」に基づき、睡眠状態における被験者100によって嚥下行為が実施されたと判別したときに、温度データDtfおよび圧力データDpfに基づいて、嚥下行為が実施されたと判別した時間内の被験者100の呼吸状態(吸引動作および排出動作を行っていたか否か)を特定することにより、嚥下行為が実施されたとの判別結果の正否を確認する処理を実行する。
具体的には、処理部14は、筋電位データDmfの値に基づいて嚥下行為が実施されたと判別した前述の「第3の時間」(筋電位が「第1の閾値」を超えてから「第2の閾値」を下回るまでの時間)の前後数秒を含む時間(一例として、筋電位が第1の閾値を超えた時点の5秒前から、筋電位が第2の閾値を下回った時点の5秒後までの時間:以下、「第4の時間」ともいう)内の温度データDtfを解析することにより、「第3の時間」内の被験者100の呼吸状態を特定する(「処理A」の一例)。
より具体的には、処理部14は、一例として、温度データDtfの値(温度)の「第4の時間」内の最大値および最小値をそれぞれ特定すると共に、一例として、最小値から最大値までの温度範囲の10%~90%の温度範囲を非呼吸時温度範囲Htとして特定する。続いて、処理部14は、温度データDtfの値(温度)が非呼吸時温度範囲Htを下回る温度のときには、被験者100が吸引動作を行っていたと特定し、温度データDtfの値(温度)が非呼吸時温度範囲Htを上回る温度のときには、被験者100が排出動作を行っていたと特定し、温度データDtfの値(温度)が非呼吸時温度範囲Ht内の温度のときには、被験者100が非呼吸状態であった(吸引動作や排出操作を行っていなかった)と特定する。
次いで、被験者100が吸引動作や排出動作を行っていたと特定した時間が上記の「第4の時間」内に存在したときに、処理部14は、前述の「第3の時間」内に吸引動作や排出動作を行っていたか否かを特定する。
この場合、例えば、吸引動作中に嚥下行為が行われたときには、一例として、図20に実線で示すように、センサシート3を介して筋活動に伴う筋電位の変化が検出されるものの、吸引動作に伴い、温度測定装置4を介して検出される温度が嚥下行為中(筋電位が変化している最中)に非呼吸時温度範囲Htを下回る温度となる。なお、同図の例は、時点t6a~t6bの間に吸引動作が行われ、時点t6b~t6cの間に排出動作が行われた状態を示している。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為中)に吸引動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t6a~t6bの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
また、例えば、排出動作中に嚥下行為が行われたときには、一例として、図20に破線で示すように、センサシート3を介して筋活動に伴う筋電位の変化が検出されるものの、排出動作に伴い、温度測定装置4を介して検出される温度が嚥下行為中(筋電位が変化している最中)に非呼吸時温度範囲Htを上回る温度となる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為中)に排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t6b~t6cの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
さらに、例えば、吸引動作中に、正常な嚥下行為時の筋活動と似た筋活動を伴う体動行為が行われたときには、一例として、図21に実線で示すように、センサシート3を介して嚥下行為時と同様の筋電位の変化が検出されるものの、吸引動作に伴い、温度測定装置4を介して検出される温度が体動行為中(嚥下行為時と同様に筋電位が変化している最中)に非呼吸時温度範囲Htを下回る温度となる。なお、同図の例は、時点t7a~t7bの間に吸引動作が行われ、時点t7b~t7cの間に排出動作が行われた状態を示している。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為と誤判別され得る体動行為中)に吸引動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t7a~t7bの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
また、例えば、排出動作中に、正常な嚥下行為時の筋活動と似た筋活動を伴う体動行為が行われたときには、一例として、図21に破線で示すように、センサシート3を介して嚥下行為時と同様の筋電位の変化が検出されるものの、排出動作に伴い、温度測定装置4を介して検出される温度が体動行為中(嚥下行為時と同様に筋電位が変化している最中)に非呼吸時温度範囲Htを上回る温度となる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為と誤判別され得る体動行為中)に排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t7b~t7cの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
また、処理部14は、温度データDt(Dtf)に基づく被験者100の呼吸状態の特定と並行して、前述の「第3の時間」の前後数秒を含む「第4の時間」内の圧力データDpfを解析することにより、「第3の時間」内の被験者100の呼吸状態を特定する(「処理B」の一例)。
具体的には、処理部14は、一例として、圧力データDpfの値(圧力)の「第4の時間」内の最小値および最大値をそれぞれ特定すると共に、一例として、最小値から最大値までの圧力範囲の10%に相当する変動幅を非呼吸時変動幅として特定する。また、また、処理部14は、圧力データDpfの値(圧力)に基づき、単位時間(一例として、1秒)内に非呼吸時変動幅を超える圧力の変化が生じたときには、被験者100が吸引動作(圧力が上昇しているとき)、または排出動作(圧力が低下しているとき)を行っていたと特定し、単位時間内の圧力の変動量が非呼吸時変動幅を下回っているときには被験者100が非呼吸状態であった(吸引動作や排出操作を行っていなかった)と特定する。
次いで、被験者100が吸引動作や排出動作を行っていたと特定した時間が上記の「第4の時間」内に存在したときに、処理部14は、前述の「第3の時間」内に吸引動作や排出動作を行っていたか否かを特定する。
この場合、例えば、吸引動作中に嚥下行為が行われたときには、一例として、図20に実線で示すように、センサシート3を介して筋活動に伴う筋電位の変化が検出されるものの、吸引動作に伴い、圧力測定装置5を介して検出される圧力の単位時間内の変動量が嚥下行為中(筋電位が変化している最中)に非呼吸時変動幅を超えて大きくなる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為中)に吸引動作または排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t6a~t6bの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
また、例えば、排出動作中に嚥下行為が行われたときには、一例として、図20に破線で示すように、センサシート3を介して筋活動に伴う筋電位の変化が検出されるものの、吸引動作に伴い、圧力測定装置5を介して検出される圧力の単位時間内の変動量が嚥下行為中(筋電位が変化している最中)に非呼吸時変動幅を超えて大きくなる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為中)に吸引動作または排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t6b~t6cの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
さらに、例えば、吸引動作中に、正常な嚥下行為時の筋活動と似た筋活動を伴う体動行為が行われたときには、一例として、図21に実線で示すように、センサシート3を介して嚥下行為時と同様の筋電位の変化が検出されるものの、吸引動作に伴い、圧力測定装置5を介して検出される圧力の単位時間内の変動量が体動行為中(嚥下行為時と同様に筋電位が変化している最中)に非呼吸時変動幅を超えて大きくなる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為と誤判別され得る体動行為中)に吸引動作または排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t7c~t7bの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
また、例えば、排出動作中に、正常な嚥下行為時の筋活動と似た筋活動を伴う体動行為が行われたときにも、一例として、図21に破線で示すように、センサシート3を介して嚥下行為時と同様の筋電位の変化が検出されるものの、排出動作に伴い、圧力測定装置5を介して検出される圧力の単位時間内の変動量が体動行為中(嚥下行為時と同様に筋電位が変化している最中)に非呼吸時変動幅を超えて大きくなる。したがって、同図に示す例では、「第3の時間」内(嚥下行為と誤判別され得る体動行為中)に吸引動作または排出動作が行われたと特定され、処理部14は、時点t7b~t7cの間における筋電位の変化が正常な嚥下行為によるものではない(正常な嚥下行為が行われていない)と判別する。
一方、温度データDtfや圧力データDpfの解析によって「第3の時間」内に吸引動作や排出動作を行っていなかったと判別したとき(「第3の時間」内の温度が非呼吸時温度範囲Ht内の温度であり、かつ「第3の時間」内の圧力の単位時間内の変動量が非呼吸時変動幅を下回る量のとき)に、処理部14は、筋電位データDmf、「判別用基準時間」および「判別用基準電位」に基づく判別結果(被験者100が正常な嚥下行為を行ったとの判別結果)が正しいものとして確定する。
これにより、正常な嚥下行為ではない嚥下行為時の筋電位の変化(一例として、図20を参照しつつ説明した例)や、嚥下行為時の筋電位の変化と似た体動行為時の筋電位の変化(一例として、図21を参照しつつ説明した例)が生じたときであっても、正常な嚥下行為が実施されたとの誤判別を好適に回避することができる。以上により、睡眠状態における被験者100の嚥下行為を検出する「検出処理」が完了する。なお、「検出処理」において検出した嚥下行為については、対応する筋電位の変化の開始時刻を記録したデータを、「検出処理」において使用した筋電位データDm、温度データDtおよび圧力データDpと共に保存することにより、一例として、被験者100の嚥下機能が正常であるか否かの判定において有効利用することができる。
このように、この検出装置1A、およびその検査方法では、睡眠状態の被験者100における外鼻孔103近傍の温度を特定可能に筋電位データDmと共に記録した温度データDtに基づいて筋電位データDmの記録時おける被験者100の呼吸状態を特定する「処理A」を実行すると共に、「検出処理」において、「処理A」によって吸引動作および排出動作のいずれかが行われていたと特定した時間内には被験者100による嚥下行為が実施されなかったと判別する。
また、この検出装置1A、およびその検査方法では、睡眠状態の被験者100による呼吸状態に応じて変化する圧力を特定可能に筋電位データDmと共に記録した圧力データDpに基づいて筋電位データDmの記録時おける被験者100の呼吸状態を特定する「処理B」を実行すると共に、「検出処理」において、「処理B」によって吸引動作および排出動作のいずれかが行われていたと特定した時間内には被験者100による嚥下行為が実施されなかったと判別する。
したがって、この検出装置1Aおよび検査方法によれば、筋電位データDmの値(筋電位)に基づく判別によって正常な嚥下行為が実施されたと誤判別する可能性がある頸部101の筋活動のうち、吸引動作や排出動作と一緒に実施された筋活動については、嚥下行為が実施されたとの誤判別を確実かつ容易に回避することができる。これにより、睡眠状態の被験者100が行った正常な嚥下行為を一層正確に検出することができる。
なお、「検出装置」の構成や「検出方法」の手順は、上記の例示の構成および手順に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、被験者100の位置A~Dのうちから選択したいずれか1箇所の筋電位データDm(Dmf)に基づいて「第3の時間」と「判別用基準時間」との比較、および「第3の時間」内の筋電位の最大値(代表値)と「判別用基準電位」との比較を行う例について説明したが、「第3の時間」と「判別用基準時間」との比較を行う筋電位データDm(Dmf)の取得位置と、「第3の時間」内の筋電位の最大値(代表値)と「判別用基準電位」との比較を行う筋電位データDm(Dmf)の取得位置とを相違させることもできる。これにより、嚥下行為時と体動行為時との「第3の時間」の差が大きい位置と、「第3の時間」内の筋電位の最大値(代表値)と「判別用基準電位」との差が大きい位置とが相違する被験者100についても嚥下行為を正確に検出することができる。
また、検出装置1におけるセンサシート3のように被験者100の頸部101における複数箇所に設置された複数の筋電位センサ22を介して各筋電位センサ22の設置箇所の筋活動に伴う筋電位を記録した複数の筋電位データDm(Dmf)を取得する構成・手順を採用したときに、「第1の処理」において、いずれかの筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第1の閾値」を超えてから、すべての筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第2の閾値」を下回るまでの時間を「第1の時間」として特定し、「第2の処理」において、いずれかの筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第1の閾値」を超えてから、すべての筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第2の閾値」を下回るまでの時間を「第2の時間」として特定し、「検出処理」において、いずれかの筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第1の閾値」を超えてから、すべての筋電位データDm(Dmf)における筋電位が「第2の閾値」を下回るまでの時間を「第3の時間」として特定することもできる。
このような構成・手順を採用することにより、各位置A~Dの個々の「第3の時間」が嚥下行為時と体動行為時とで同程度の時間長となるような被験者100であっても、いずれかの位置における筋電位が「第1の閾値」を超えてから、すべての位置における筋電位が「第2の閾値」を下回るまでの時間が嚥下行為時と体動行為時とで大きく相違するような場合には、「検出処理」において嚥下行為を正確に検出することができる。
さらに、被験者100の頸部101における複数の位置A~Dから取得した筋電位データDm(複数の筋電位センサ22を有するセンサシート3を用いて取得した筋電位データDm)に基づいて嚥下行為を検出する構成・手順を例に挙げて説明したが、被験者100の頸部101における任意の1箇所から取得した筋電位データDm(1つの筋電位センサ22を有するセンサシート3を用いて取得した筋電位データDm)に基づいて嚥下行為を検出する構成・手順を採用することもできる。
また、「嚥下行為継続時間」や「体動行為継続時間」の演算に際して、対象とする各「第1の時間」や各「第2の時間」の平均時間長を演算する構成・手順を例に挙げて説明したが、このような構成・手順に代えて、各「第1の時間」や各「第2の時間」の中央時間長を「嚥下行為継続時間」や「体動行為継続時間」として演算することもできる。また、「嚥下行為時電位」や「体動行為時電位」の演算に際して、対象とする各「第1の時間」内の筋電位の最大値や各「第2の時間」内の筋電位の最大値に基づいて演算する構成・手順を例に挙げて説明したが、このような構成・手順に代えて、各「第1の時間」や各「第2の時間」内の筋電位の平均値、偏差値および中央値に基づいて演算することもできる。
さらに、「嚥下行為時データの取得」および「体動行為時データの取得」の双方を完了した後に、筋電位データDmに基づいて「嚥下行為についての基準の値の演算」および「体動行為についての基準の値の演算」を実行する例について説明したが、「嚥下行為時データの取得」が完了した時点で「嚥下行為についての基準の値の演算」を実行すると共に、「体動行為時データの取得」が完了した時点で「体動行為についての基準の値の演算」を実行することもできる。また、嚥下行為についての「基準の値」を取得する処理、および体動行為についての「基準の値」を取得する処理の実行順序も上記の順序に限定されない。
また、被験者100に固定したエアバッグと圧力センサとをエアホースを介して接続して被験者100の呼吸状態に応じて変化する圧力を測定する構成の圧力測定装置5を使用して圧力データDpを取得する例について説明したが、被験者100の胸部、腹部または背中に圧力センサ(圧力検出用シート)を直接装着して呼吸状態に応じて変化する圧力を測定する「圧力測定装置」を使用して圧力データDpを取得することもできる。
さらに、温度データDt(Dtf)の値(温度)および圧力データDp(Dpf)の値(圧力)に基づいて被験者100の呼吸状態をそれぞれ特定する構成・方法を例に挙げて説明したが、温度データDt(Dtf)の値(温度)のみに基づいて被験者100の呼吸状態をそれぞれ特定する構成・方法や、圧力データDp(Dpf)の値(圧力)のみに基づいて被験者100の呼吸状態をそれぞれ特定する構成・方法を採用することもできる。また、温度データDtや圧力データDpに基づいて被験者100の呼吸状態を特定する構成・方法を例に挙げて説明したが、これらの構成・方法に代えて(または、これらの構成・方法に加えて)睡眠状態の被験者100に呼吸マスクを装着させると共に、呼吸マスクを介して吸引/排出される空気(呼気)の流量を測定し、その測定結果に基づいて呼吸状態を特定する構成・方法を採用することもできる。
また、筋電位データDm(Dmf)に基づいて嚥下行為が実施されたと判別した後に呼吸状態を特定して判別結果の正否を判定する構成・方法を例に挙げて説明したが、このような構成・方法に代えて、温度データDt(Dtf)や圧力データDp(Dpf)に基づいて呼吸状態を特定し、非呼吸状態と特定した時間内の筋電位データDm(Dmf)だけを対象として正常な嚥下行為が実施されたか否かを判別する構成・方法を採用することもできる。さらに、温度データDtをフィルタリング処理した温度データDtfの値に基づく呼吸状態の特定や、圧力データDpをフィルタリング処理した圧力データDpfの値に基づく呼吸状態の特定を行う例について説明したが、フィルタリング処理を行わずに温度データDtの値に基づいて呼吸状態を特定したり、フィルタリング処理を行わずに圧力データDpの値に基づいて呼吸状態を特定したりすることもできる。
加えて、「第1の処理」、「第2の処理」、「第3の処理」および「検出処理」において使用する筋電位データDmについて、外部装置によって被験者100から取得された筋電位データDmを使用する構成(他者が取得した筋電位データDmを使用する方法)を採用することもできる。