JP2007061203A - 体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム - Google Patents

体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム Download PDF

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浩一郎 南
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Abstract

【課題】 簡便かつ正確な、睡眠時無呼吸症候群の診断手段を提供すること。
【解決手段】 a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温のうちの少なくとも1つ)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、b.前記呼吸音の時間周期、時間間隔、周波数、音量やこれらの因子を解析するステップ、c.とを有する体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による、睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被検者の、たとえば在宅における睡眠中の呼吸音を採取し、それを解析することによって、睡眠時無呼吸症候群の有無およびその程度を検出・評価するシステムに関する。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返し、日中傾眠などの症状を呈する疾患である。SASには呼吸を司る中枢に異常を来し無呼吸になる中枢型と、睡眠中に上気道が塞がる閉塞型とがある。SASの多くは閉塞型である。
SASになると無呼吸の度毎に睡眠が中断し、本人自身が気付かない脳波上の覚醒が何回となく起き、熟睡できなくなる。而して、この疾患をもつ者は、日中にだるさ、眠気を感じ仕事の能率が落ちるのみならず、交通事故や労災を惹起する危険性を有する。また、無呼吸により血中酸素濃度が低下し、脳や心臓などへ悪影響を及ぼして脳卒中や心臓病、高血圧症などを起こしやすくなる。さらに、無呼吸の程度がひどくなると、生命にも影響することがわかってきた。日本の無呼吸患者は成人の5%、200万人の潜在患者がおり、治療を要する患者数は30万人ともいわれている。
SAS判定には、病院で行われる精密診断として、ポリソムノグラフィー(Polysomnography:PSG)を用いて様々な生体信号を同時記録しそれを解析する方法がある。PSGによって計測される生体信号は、脳波、眼電図、筋電図、足の動き、腹の動き、胸の動き、いびき、呼吸、血中酸素飽和度など多岐に亘っている。PSGによる精密診断には、終夜に亘る医師の監視、多数のセンサの取り付け、12時間にも及ぶ検査時間を要するなどさまざまな問題がある。一方、簡易診断法としてパルスオキシメータによる測定法がある。この方法は、体動や末梢血流の影響を受けやすく、酸素飽和度の低下が少ない軽度の睡眠時無呼吸症候群の診断には問題がある。
SAS診断に関して、心臓電位を走査しかつa)心臓電位に基づいて心拍度数を検出するための器具、b)呼吸音及びc)いびき音を検出するための器具および短い時間間隔についてその都度検出された前記生理学的パラメータの多数の組をコード化された形で記憶するための器具を有する、患者の生理学的パラメータを検出しかつ記憶するための移動装置において、さらに、d)血液の酸素飽和度およびe)体位を検出しかつコード化された形で記憶するための器具を有する点によって特徴づけられる睡眠時無呼吸症候群の通院認知及び診断のために患者の生理学的パラメータを検出しかつ記憶するための移動装置が既知である(たとえば、特許文献1参照)。
特開平05−200031号公報
しかしながら、上記先行技術によるときは、患者の手足や腹部、胸部など多岐に亘る箇所に複数(20箇以上)の異なったセンサを取り付けて検査をしなければならない。このため、医師から患者への検査のための説明や指導も複雑をきわめていた。また、このようにして収集された検査結果を異なる専門の医師が解析する必要があり、しかも、最終的にはこの異なる専門の医師の解析結果を持ち寄って、睡眠時無呼吸症候群であるか否かの結論を出さねばならなかった。
而して、交通機関における運転・操縦業務や原子力発電所等重要施設における監視業務などに従事する人の適性検査にも応用できる、短時間で高精度かつ安価な睡眠時無呼吸症候群の診断手段が望まれているが、簡便かつ正確な睡眠時無呼吸症候群の診断手段は確立されていなかった。本発明は、従来技術における問題を解決し、簡便かつ正確な睡眠時無呼吸症候群の診断手段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温として直腸温、口腔温、膣温、食道温)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
b.前記呼吸音の時間周期、時間間隔、周波数、音量やこれらの因子を解析するステップ、
c.とを有する体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムである。
請求項2に記載の発明は、a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸間隔時系列データを生成するステップ、
c.該呼吸間隔時系列データから無呼吸状態と呼吸状態を識別し、無呼吸状態の時間の総和と、無呼吸状態および呼吸状態全ての状態の時間の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
e.とを有する体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムである。
請求項3に記載の発明は、a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸終了点検出用閾値未満の呼吸音信号の極小点検出を行って該極小点を呼吸終了点とし、該呼吸終了点間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データとして生成するステップ、
c.前記呼吸間隔時系列データにおける無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔の総和である無呼吸時間と、全ての呼吸間隔の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
e.とを有する体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムである。
請求項4に記載の発明は、a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸終了点検出用閾値未満の呼吸音信号の極小点検出を行って該極小点を呼吸終了点とし、該呼吸終了点間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データとして生成するステップ、
c.前記呼吸間隔時系列データにおける無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔の総和である無呼吸時間と、全ての呼吸間隔の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
e.呼吸間隔時系列データ、カオス処理手法による呼吸間隔時系列データのアトラクタ、および無呼吸率を表示するステップ、
f.とを有する体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムである。
本発明によれば、ポリソムノグラフィーによるSAS判定に比し、きわめて簡便かつ正確にSAS判定が可能となる。即ち、ポリソムノグラフィーによる場合、終夜に亘る医師の監視、多数のセンサの取り付け、12時間に及ぶ検査時間を要するのに対し、本発明による場合、被検者が在宅で簡便に睡眠中の呼吸音を採取し、それを医療機関等で解析することによって高精度下に睡眠時無呼吸症候群の検出・評価が可能となる。また、在宅で呼吸音データ、体温データの採取が可能である処から、同時に測定できる数はデータ採取記録装置(頸部密着型マイクロホン(送信機)および受信・記録装置)の数に依存し、同時に多数のデータ採取が可能である。而して、睡眠時無呼吸症候群の集団検診に利用できる。
さらに、頸部密着型マイクロホンにより直接的に睡眠時の呼吸音を測定するので、外部の雑音を気にする必要がなく、正確な解析が可能となる。また、無呼吸率を数値で表現し、呼吸間隔データを時系列とアトラクタで表示するため簡便かつ正確で客観的なSAS評価が可能となる。
本発明においては、睡眠時無呼吸症候群の検出・評価のための検出パラメータとして、いびき(鼾)音を含む睡眠中の呼吸音を測定することとした。睡眠中の呼吸音の検出には、頸部密着(バンド、金具または貼着)型マイクロホンを用いることができる。頸部密着型マイクロホンを用いることによって、直接的に呼吸音を測定することとなり、外部の雑音を気にする必要がなく正確な解析を可能ならしめる信号を得ることができる。
本発明は、たとえば被検者が在宅で簡便に睡眠中の呼吸音を採取できることが長所の1つである。而して本発明においては、得られた呼吸音がノンレム睡眠中のものであるか否かを弁別できることを要する。発明者らは、睡眠の深さの程度と体温が強い相関関係を有することに着眼し、被検者の体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温として直腸温、口腔温、膣温、食道温の少なくとも1つ)を併せ同時に測定することとした。こうすることによって、得られる呼吸音信号が必要十分に深い睡眠中のものであるか否かを弁別できる。睡眠中は体温が低下し、皮膚温、鼻腔温の場合、0.5℃以上、深部温の場合1℃〜2℃の低下で深い眠りに入っている。
本発明においては、被検者の呼吸音と共に睡眠の深度をモニターするが、これを体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温として直腸温、口腔温、膣温、食道温の少なくとも1つ)をパラメータとして検出する。体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温のうちの少なくとも1つ)が睡眠時に低下することそれ自体は、たとえば日本生理学会誌 1989 51、387〜404や精神神経学会誌において指摘されているように既知である。
深い睡眠中の体温の低下程度は、皮膚温や鼻腔温の場合、0.5℃以上の低下、深部温であれば1℃〜2℃の低下であることが観察されている。これらの報告より体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温のうちの少なくとも1つ)の0.5℃以上の低下を有意ととり、睡眠状態にあると判断することができる。
こうして得られる信号は10分間の測定で2000万箇〜3000万箇と膨大で実用的でなくまた、いびきや呼吸音はせいぜい数百Hzである処から、500Hzに変換したデータを用いる。こうすることによって、20万箇〜30万箇のデータ数となる。
処で、前記のようにして得られる呼吸音データは非常にノイジーであるため、信号にフィルタ処理を施す。500Hzに変換された呼吸音データはバイポーラ(正負)であるため、負のデータを絶対値に変換し、包絡線処理、移動平均処理を繰り返すフィルタ処理を施す。
フィルタ処理が施された呼吸音データ中には、明らかないびきや呼吸音、不明瞭ないびきや呼吸音、呼吸停止が混在している。これらを正確に検出することは容易ではない。本発明においては、呼吸終了点を検出し、この呼吸終了点の間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データを生成し、この呼吸間隔時系列データに基づいて呼吸状態と無呼吸状態を識別する。即ち、いびきや呼吸中は呼吸間隔(呼吸終了点間隔)が広く、無呼吸時には呼吸間隔が狭い。而して、ある呼吸間隔(呼吸終了点間隔)を無呼吸検出用閾値として、この無呼吸検出用閾値よりも狭い呼吸間隔の場合を無呼吸状態とし、無呼吸検出用閾値よりも広い呼吸間隔の場合を呼吸状態として、呼吸状態と無呼吸状態とを識別する。
次いで、無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔の総和を無呼吸状態の時間として算出するとともに、全ての呼吸間隔の総和との比を無呼吸率として演算算出し、それに基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または軽重を判定する。
被検者として、健常者(被検者1)および顕著なSAS患者(被検者2)を各1名宛選び、データ採取、解析対象者とした。これら被検者の臨床的特徴を表1に示す。各被検者は在宅で、睡眠中の呼吸音データおよび体温(皮膚温、鼻腔温、深部温)データを採取・送信するための、図1に示す、頸部密着型マイクロホン(送信機)1を装着する。この頸部密着型マイクロホン(送信機)1には電池5、マイクロホン2、温度計3が内蔵され、睡眠中の呼吸音データおよび体温(皮膚温、鼻腔温、深部温のうちの少なくとも1つ)データの採取・送信機として機能し、被検者の睡眠中の呼吸音データおよび皮膚温或いは体温データを発信する。この実施例においては、頸部密着型マイクロホン(送信機)1は外径2cm〜3cmの円形状で、被検者の咽頭部横に人工肛門用両面テープ4によって貼着された。電源を入れると一定時間(12時間程度)連続して採取データを送信し続ける。電源ボタンをもう一度押すと、送信を停止する。
Figure 2007061203
一方、被検者の睡眠中の呼吸音データおよび皮膚温或いは体温(皮膚温、鼻腔温、深部温の少なくとも1つ)データを受信すべく機能する受信機能付き記録装置(ICメモリ)6を配設する。この記録装置6はICメモリ方式のデータ記録兼電波受信装置であって、被検者の睡眠中の呼吸音をICメモリに記録する。記録方式は、日時と体温をファイルネームとする10分間を1つのファイルとして記録する。基本モードは10分間のファイルを連続して8時間以上、最大12時間まで記録する。また、録音時間と1ファイルにおける録音時間は任意に設定できる。さらに、頸部密着型マイクロホン(送信機)1からの信号が途絶えた場合は、記録を中断し電源を切る。或いはアラームを鳴らす。図1において、7は電源(録音開始)ボタンである。
この受信機能付き記録装置6のディメンジョンは、厚さ2cm、幅10cm、長さ15cmのボックス型で、液晶ディスプレイで、日時/呼吸音の録音データ受信/体温のデータ受信の情報を表示し、簡単なアラームなどを鳴らすスピーカを内蔵している。また、PCへの記録データ転送用に、USB(universal serial bus)のインターフェイスを装備している。さらに、これらのインターフェイスはPHSや携帯電話に接続することも可能である。而して、電源スイッチ7を入れると、電源ONを赤、受信状態を緑のランプで表示する。
この実施例においては、頸部密着型マイクロホン(送信機)1と受信機能付き記録装置6間は無線で、被検者の睡眠中の呼吸音データおよび体温(皮膚温、鼻腔温、深部温の少なくとも1つ)データを送信・受信を行うようにしているが、これを有線で行うことも勿論できる。
図2に被検者1の、図3に被検者2の、呼吸音測定開始から1分間毎の解析対象データを示す。 図2の(1)乃至(10)の各区間を見ると、(8)7分−8分の区間で無呼吸が見られるが、区間によって呼吸信号(音圧)レベルの相異はあるものの、ほぼ全区間で睡眠中の呼吸が見られる。一方、図3の(1)乃至(10)の各区間を見ると、16ビットバイポーラA/D変換器のフルレンジと思われる非常に高い音圧レベルの呼吸音(強烈ないびき)が見られる一方で、かなりの時間無呼吸状態が続いている。
次に、被検者1のパワースペクトル解析結果を図4に、被検者2のパワースペクトル解析結果を図5に示す。被検者1の解析対象データ図2と図4を対応づけて見ると、無呼吸があると想定される 図2における(8)7分−8分の区間のパワースペクトル解析処理結果である図4における(8)7分−8分は、他の区間のパワースペクトル解析結果図と比較して、特徴的な差異が見られない。
これに対し被検者2の解析対象データ図3と図5を対応づけて見ると、図3における区間(3)、(7)、および(10)は全区間無呼吸で、これに対応する図5における区間(3)、(7)、および(10)は、他区間に比しパワーレベルに差が現れている。しかし、両被検者のパワースペクトル解析図は非常にノイジーで、1/fゆらぎや特定周波数によって無呼吸の有無を判定することは困難である。
そこで本発明においては、呼吸音測定データにフィルタ処理を施した後、呼吸終了点検出を行いこの呼吸終了点の間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データを生成する。先ず、呼吸音測定データのフィルタ処理は、この実施例においては、図6に示すステップで施される。即ち、呼吸音測定データを500Hzサンプリングへ変換した後、バイポーラ(正、負)データにおける負のデータを正の値に変換し、包絡線処理、移動平均処理を施した後、出力する。図2、図3に示す、睡眠時の呼吸音測定データをフィルタ処理した結果を、被検者1のものを図7に、被検者2のものを図8に示す。
図7、図8に示すフィルタ処理後の睡眠時呼吸音データには、明らかないびきや呼吸、不明瞭ないびきや呼吸、呼吸停止が混在しており、これらを正確に検出することはできない。そこで本発明においては、図9に示す処理ステップによって、呼吸間隔時系列データを生成する。即ち、図7、図8に示すフィルタ処理後の睡眠時呼吸音データにおいて、呼吸終了点検出用閾値、この実施例においては、図7、図8に示す呼吸音波形におけるdegree200未満の呼吸音信号の極小点を呼吸終了点とする。この呼吸終了点の間隔を呼吸間隔とする。
呼吸間隔(呼吸終了点間隔)を、被検者1のものを図10に、被検者2のものを図11に示す。これらの図中の縦線が呼吸終了点を示している。図10、図11から明らかなように、いびきや呼吸は呼吸間隔(呼吸終了点間隔)が広く、図10の(8)や図11の(3)、(7)、および(10)に見られるように、無呼吸時には呼吸間隔(呼吸終了点間隔)が狭い。無呼吸時に呼吸終了点を多数検出しているのは、時系列全体に僅かなノイズが存在しており、いびきや呼吸中はノイズレベルに比し信号レベルが非常に大きくノイズの影響を無視できるのに対し、無呼吸時には信号レベルが非常に小さく、ノイズレベルを無視できないためである。
前述のように、睡眠中無呼吸時の呼吸終了点は残存するノイズの影響で多数検出されるが、これらを含めた呼吸終了点間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データとして生成する。その結果を、被検者1のものを図12に、被検者2のものを図13に示す。図12、図13から明らかなように、睡眠中のいびきや呼吸間隔は、2秒間〜5秒間である。一方、睡眠中無呼吸時の呼吸間隔(呼吸終了点間隔)は1秒間未満と考えられる。この実施例においては、睡眠中の呼吸間隔(呼吸終了点間隔)が1秒間未満のものを無呼吸状態、1秒間以上のものを呼吸状態として識別することとした。
このようにして、無呼吸検出用閾値(呼吸間隔:1秒間)を用いて、麻酔による短時間睡眠中の被検者の呼吸状態或いは無呼吸状態を識別し、次式によって無呼吸率(Rapn)を求める。
Figure 2007061203
ここで、Tutlは無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔、Tallは全ての呼吸間隔である。被検者1および被検者2の無呼吸率を、表2に示す。なお、図14に、無呼吸検出用閾値を変化させたときの無呼吸率の挙動を示す。また、本発明の麻酔就眠時の呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムにおける処理プロセスを図15に示す。
Figure 2007061203
表2から明らかなように、健常者である被検者1の無呼吸率は0.066であったのに対し、顕著なSAS患者である被検者2の無呼吸率は0.64であった。このように、SASの軽重を定量的に表現することができた。発明者らは、無呼吸検出用閾値を1秒間とした場合の無呼吸率が0.3程度以上をSASと考えている。
本発明の体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムの出力表示として、図12、図13に示すような、呼吸間隔時系列データ、図16、図17に示す、カオス処理手法による呼吸間隔時系列データのアトラクタ、および無呼吸率を表示する。
図16は被検者1の呼吸間隔時系列データのアトラクタ、図17は被検者2の呼吸間隔時系列データのアトラクタを示す。図16、図17から明らかなように、図16に示す被検者1の軌道に比し、図17に示す被検者2の軌道は全体に広がらずに左隅に集中している。ここが、無呼吸のエリアである。
本発明の一実施例に係わる、被検者の睡眠中の呼吸音データおよび体温データを採取する発受信ユニットを示す模式図 本発明の一実施例に係わる、呼吸音測定開始から1分間毎の被検者1の呼吸音解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、呼吸音測定開始から1分間毎の被検者2の呼吸音解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、呼吸音測定開始から1分間毎の被検者1のパワースペクトル解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、呼吸音測定開始から1分間毎の被検者2のパワースペクトル解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、呼吸音解析データのフィルタ処理のプロセスの一例を示すブロックダイアグラム 本発明の一実施例に係わる、フィルタ処理後の被検者1の呼吸音解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、フィルタ処理後の被検者2の呼吸音解析データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、呼吸間隔時系列データ生成のための処理ステップを示すブロックダイアグラム 本発明の一実施例に係わる、被検者1の呼吸間隔(呼吸終了点間隔)を示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、被検者2の呼吸間隔(呼吸終了点間隔)を示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、被検者1の呼吸間隔時系列データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、被検者2の呼吸間隔時系列データを示すグラフ 本発明の一実施例に係わる、無呼吸検出用閾値と無呼吸率の関係を示すグラフ 麻酔就眠時の呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システムのデータ解析処理ステップを示すブロックダイアグラム カオス処理手法による被検者1の呼吸間隔時系列データのアトラクタを示す立体グラフ カオス処理手法による被検者2の呼吸間隔時系列データのアトラクタを示す立体グラフ
符号の説明
1 頸部密着型マイクロホン(送信機)
2 マイクロホン(検出端)
3 温度計
4 両面テープ
5 電池(バッテリー)
6 受信機能付き記録装置
7 電源ボタン

Claims (4)

  1. a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、および深部体温として直腸温、口腔温、膣温、食道温のうちの少なくとも1つ)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
    b.前記呼吸音の時間周期、時間間隔、周波数、音量やこれらの因子を解析するステップ、
    c.とを有することを特徴とする体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム。
  2. a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温の少なくとも1つ)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
    b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸間隔時系列データを生成するステップ、
    c.該呼吸間隔時系列データから無呼吸状態と呼吸状態を識別し、無呼吸状態の時間の総和と、無呼吸状態および呼吸状態全ての状態の時間の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
    d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
    e.とを有することを特徴とする体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム。
  3. a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温の少なくとも1つ)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
    b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸終了点検出用閾値未満の呼吸音信号の極小点検出を行って該極小点を呼吸終了点とし、該呼吸終了点間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データとして生成するステップ、
    c.前記呼吸間隔時系列データにおける無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔の総和である無呼吸時間と、全ての呼吸間隔の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
    d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
    e.とを有することを特徴とする体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム。
  4. a.被検者の睡眠の深さを検出するパラメータとしての体温(皮膚温、鼻腔温、深部体温の少なくとも1つ)と、該被検者の睡眠中の呼吸音を頸部密着型マイクロホンによって同時に検出するステップ、
    b.該呼吸音検出によって得られる信号をフィルタ処理した後呼吸終了点検出用閾値未満の呼吸音信号の極小点検出を行って該極小点を呼吸終了点とし、該呼吸終了点間隔を呼吸間隔として呼吸間隔時系列データとして生成するステップ、
    c.前記呼吸間隔時系列データにおける無呼吸検出用閾値未満の呼吸間隔の総和である無呼吸時間と、全ての呼吸間隔の総和との比から無呼吸率を求めるステップ、
    d.該無呼吸率に基づいて睡眠時無呼吸症の有無および/または無呼吸症の程度を判定するステップ
    e.呼吸間隔時系列データ、カオス処理手法による呼吸間隔時系列データのアトラクタ、および無呼吸率を表示するステップ、
    f.とを有することを特徴とする体温センサ付き検出端を用いた睡眠中呼吸音の解析による睡眠時無呼吸症候群の検出・評価システム。
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