JP6993199B2 - タイヤ成形用金型の鋳造装置 - Google Patents
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Description
鋳造欠陥の中でも、気泡欠陥は最も生じ易い欠陥である。
特許文献1に開示された低圧鋳造法は、密閉された保持炉内に溜められた溶湯を圧縮ガスの吹き込みにより、保持炉内を加圧することで、ストークを通して溶湯を上昇して鋳込み空間に注湯する方法であり、注湯中に溶湯内に気泡が巻き込まれることが極めて少ない。
しかし、この低圧鋳造法は、複雑で大きな専用の低圧鋳造装置が必要であり、大きな設備投資を要し、製造コストも高く、大型タイヤの成形金型の鋳造は困難である。
重力鋳造法は、鋳型に形成された鋳込み空間に高い位置から重力を利用して溶湯を注湯する鋳造方法であり、大掛かりな装置が不要であり、設備投資および製造コストも低く抑えられ、大型タイヤの成形金型の鋳造も可能である。
そこで、できるだけ鋳込み空間に気泡が入らないようにして、気泡欠陥の発生を抑えるようにした重力鋳造法の例(例えば、特許文献2参照)がある。
定盤の上面には、リング状の溝が彫りこまれており、このリング状の溝は、中空リングにより上方から覆われてリング状の湯道が形成されている。
したがって、注湯用の湯口から遠心側延出部に入湯した溶湯は、リング状の溝を流れて、複数中心側延出部から鋳込み空間に出湯し、鋳込み空間に充填される。
鋳込み時間が長いと、石膏鋳型の形状の転写が緩慢となるとともに、押湯の圧力がタイミング遅れにより有効に作用しないなどの不具合があり、細かな処で鋳造品質にあまり良くない影響を与える。
定盤の上に設置される環状の石膏鋳型と、
前記定盤の上に設置されて前記石膏鋳型の外周を中心軸を同軸にして囲繞して前記石膏鋳型との間に環状の鋳込み空間を形成する外筒鋳枠と、
前記外筒鋳枠の外側で前記定盤の上に設けられて前記鋳込み空間に溶湯を鋳込むために溶湯を重力により注湯する注湯治具と、
を備えたタイヤ成形用金型の鋳造装置において、
前記定盤の上面に前記中心軸を中心に放射方向に延びる1本または複数本の放射溝を有し、
前記放射溝の遠心側溝端部は、前記外筒鋳枠より外側にあって前記注湯治具と連結して溶湯を前記放射溝に入湯する溝入湯口を備え、
前記放射溝の中心側溝端部は、前記外筒鋳枠の内側にあって前記放射溝から前記鋳込み空間に溶湯を出湯する溝出湯口を備え、
前記鋳込み空間の上に配設されて前記溝出湯口の直上に押湯を溜める押湯空間(35)が形成される押湯枠を備え、
前記石膏鋳型は、製品用鋳型とダミー鋳型を周方向に組み合わせて構成され、
前記鋳込み空間のうち前記ダミー鋳型と前記外筒鋳枠との間の空間に、前記溝出湯口が開口することを特徴とする。
前記注湯治具は、上端の湯溜め部からシュート部が下方に延出して構成され、
前記シュート部の下端が前記定盤における前記放射溝の遠心側溝端部に連結されて、前記溝入湯口を介して前記シュート部の内部と前記放射溝とが連通され、
前記溝入湯口が栓部材により開閉自在に閉塞されるようにしてもよい。
定盤の上面の放射溝は、外筒鋳枠より外側の注湯治具と連結する溝入湯口と外筒鋳枠の内側の鋳込み空間に溶湯を出湯する溝出湯口とを連通する湯道である。
すなわち、放射溝は、外筒鋳枠を外側から内側に最短距離で潜り抜ける湯道であるので、極めて距離が短い。
これにより、鋳型の形状の転写が早く行われ、押湯の圧力が早めに有効に作用するなど、種々の点で鋳造品質を向上させることができる。
前記石膏鋳型は、製品用鋳型とダミー鋳型を周方向に組み合わせて構成され、
前記ダミー鋳型は、前記溝出湯口の近傍に配設されるようにしてもよい。
前記ダミー鋳型の下端部の外周面に対向して前記鋳込み空間内に配設される鋳造用フィルタにより、前記溝出湯口が覆われるようにしてもよい。
前記放射溝に、気泡の移動を規制する堰が設けられるようにしてもよい。
前記タイヤ成形用金型の鋳造装置を用いてタイヤ成形用金型を鋳造するタイヤ成形用金型の鋳造方法において、
前記注湯治具により溶湯を前記溝入湯口から前記放射溝に入湯し、前記溝出湯口から前記鋳込み空間に出湯して前記鋳込み空間に充填し、さらに前記鋳込み空間から押湯を溢れさせ、その後溶湯を冷却して凝固させることを特徴とする。
注湯治具により溶湯を溝入湯口から放射溝に入湯し、溝出湯口から鋳込み空間に出湯して鋳込み空間に充填するので、外筒鋳枠を外側から内側に潜り抜ける短い放射溝を通って溶湯は鋳込み空間に充填され、
そのため、鋳型の形状の転写が早く行われ、押湯の圧力が早めに有効に作用するなど、種々の点で鋳造品質を向上させることができる。
図1は、本発明を適用した一実施の形態に係るタイヤ成形用金型の鋳造装置1の全体斜視図であり、図2は、図1のII-II矢視の同鋳造装置1の鉛直断面図である。
したがって、本鋳造装置1は、低圧鋳造方式の鋳造装置のように、大掛かりな装置が不要であり、設備投資および製造コストも低く抑えられるとともに、大型タイヤの成形金型の鋳造も可能である。
すなわち、鋳造したリング鋳物は、製品鋳物部とダミー鋳物部とが周方向に交互に形成されるので、後述するように、分割してダミー鋳物を除いた製品鋳物(製品セグメント)を、複数リング分組み合わせて、1つのタイヤ成形用金型を製造する。
なお、本鋳造装置1は、2つのリング分の製品鋳物により1つのタイヤ成形用金型を製造するための鋳造装置である。
定盤2は、鋳鉄平板であり、図3に示されるように、中空円板の外周縁の互いに等間隔の5か所が中央円環部2aの中心軸Lcを中心に放射方向に突出して、平面視で五芒星形状をしている。
定盤2は、中央円環部2aがその外周の外周環状部2bより上面が凹んでいる。
外周環状部2bが五芒星形状をしており、外周環状部2bの外周縁の5か所に放射方向に突出した突出部2bbを有している。
放射溝3の遠心側溝端部3aは、突出部2bbにおいて円柱状に拡張されている。
放射溝3の中心側溝端部3bは、外周環状部2bの内周縁に近接している。
図4および図5を参照して、湯道として使用する放射溝3の底面と側壁面には断熱ペーパー5a,5bが内張りされる。
放射溝3の側壁面に内張りされる枠状の断熱ペーパー5bの対向する側壁部間に棒状の堰部材6が2本上方から架設される。
放射溝3の遠心側溝端部3aを覆う断熱ペーパー7の遠心側端部には、円孔である溝入湯口7iが形成されている。
断熱ペーパー7の中心側端部は、放射溝3の中心側溝端部3bの一部を溝出湯口7eとして開口して、その他を覆っている(図6参照)。
なお、断熱ペーパー5a,5b,7は、セラミックファイバーを紙状にしたもので耐熱性に優れた断熱材である。
定盤2において、中央円環部2aに鋳型配列テーブル8が嵌め込まれると、鋳型配列テーブル8の上面は定盤2の外周環状部2bの上面と同一面をなす。
押えリング9は、炭素鋼板であり、定盤2と同じように中央円環部9aの外周に外周環状部9bを有し、外周環状部9bは定盤2の外周環状部2bと同じ形状の外周縁を形成しており、外周縁の5か所に放射方向に突出した突出部9bbを有して五芒星形状をなしている。
湯道として使用する2本の放射溝3の遠心側溝端部3aにそれぞれ対応する押えリング9の円孔9hには、ゲート部材10が嵌入される。
ゲート部材10は、非発泡石膏製で、円柱の内部がすり鉢状にくり抜かれて下方に先細に円錐面10cが形成されており、円錐面10cの先端(下端)には円孔10hが形成されて貫通している。
この押えリング9の中央円環部9aの内径は、定盤2の外周環状部2bの内径より大きい。
そして、押えリング9の円孔9hにゲート部材10が嵌入されると、ゲート部材10の円錐面10cの下端の円孔10hは、定盤2の放射溝3の上方を覆う断熱ペーパー7の遠心側端部の溝入湯口7iと一致する(図2参照)。
石膏鋳型20は、5つの製品用鋳型21と5つのダミー鋳型22を周方向に交互に組み合わせて構成されている。
5つのダミー鋳型22も、同じ形状で、石膏鋳型20において周方向に等間隔に位置する。
ダミー鋳型22の外径は製品用鋳型21の外径より小さい。
湯道として使用する2本の放射溝3にそれぞれ対応するダミー鋳型22は、放射溝3の中心側溝端部3bの溝出湯口7eの近傍に配設される(図2参照)。
製品用鋳型21,21間に嵌め込まれるダミー鋳型22は、製品用鋳型21より高密度の非発泡石膏製で、鋳造収縮に対する抗力が大きい。
押湯枠30は、内筒壁31と外筒壁32を放射方向に指向した複数の連結壁33が連結して構成されている。
したがって、内筒壁31と外筒壁32の間には連結壁33で仕切られた扇状空間が10個形成されており、そのうち扇状空間が上下に貫通した押湯空間35と扇状空間の底が底壁34(図2参照)で閉塞されたダミー空間36とが、5つずつ周方向に交互に形成されている。
押湯枠30の内筒壁31の外径は、環状に構成された5つのダミー鋳型22の外径と略等しく、中空の底壁34が石膏鋳型20の上面に接し、押湯枠30は支持される。
すなわち、ダミー鋳型22の外側空間の上方に押湯枠30の押湯空間35がある位置関係である。
なお、押湯枠30の押湯空間35の内壁には断熱ペーパー38が内張りされる。
外筒鋳枠40は、円筒状をした鋳鉄品であり、外筒鋳枠40の内径は、押湯枠30の外径および押えリング9の中央円環部9aの内径と等しい(図2参照)。
外筒鋳枠40は、上下端部にフランジ40U,40Lを有し、フランジ40U,40Lの互いの同径の外径は、押えリング9の外周環状部9bの内径と等しい。
外筒鋳枠40は、押湯枠30よりも上方に延出している。
なお、石膏鋳型20に対向する外筒鋳枠40の内周面には断熱ペーパー45が内張りされる。
鋳込み空間50の製品用鋳型21に対向する空間は、上方が押湯枠30の底壁34で仕切られているが、鋳込み空間50のダミー鋳型22に対向する空間は、上方が押湯枠30の押湯空間35となって、上下に連通している。
放射溝3の中心側溝端部3bの溝出湯口7eは、ダミー鋳型22の近傍で鋳込み空間50に開口しているので、溝出湯口7eから出湯した溶湯は鋳込み空間50のダミー鋳型22に対向する空間に入る。
図11に示されるように、ゲート部材10の円錐面10cに上方から接して円孔10hおよび溝入湯口7iを閉塞する栓部材61が、上方に開閉ロッド62を延設させて設けられる。
栓部材61は、円柱の下端部が円錐状に突出した形状の部材で、高炭素鋼で表面にセラミックコーティングを付与したものである。
こうして、タイヤ成形用金型の本鋳造装置1が組立てられる。
なお、シュート部65の内周面および湯溜め部66の内面には、断熱ペーパー67a,67bが内張りされる。
この栓部材61により溝入湯口7iを閉塞した状態で、湯溜め部66に溶湯を注入すると、図2に示されるように、溶湯はシュート部65内を満たし、さらに、湯溜め部66内を満たす。
なお、本鋳造装置1において、使用する溶湯は、アルミニウム合金溶湯である。
定盤2の上面の放射溝3は、外筒鋳枠40より外側の注湯治具60と連結する溝入湯口7iと外筒鋳枠40の内側の鋳込み空間50に溶湯を出湯する溝出湯口7eとを連通する湯道である。
注湯時の気泡巻き込みが極少化できることから、鋳込み速度を大きくすることができ、鋳込み空間50に溶湯が鋳込まれる鋳込み時間を短くすることができる。
鋳込み時間が短いことで、鋳型の形状の転写が速やかに行われ、押湯の圧力が早めに有効に作用するなど、種々の点で鋳造品質を向上させることができる。
鋳放しされた鋳造物80は、図13の鋳造装置1の鉛直断面図に示された溶湯の流動状態が示す形状をしている。
なお、図14の(1)に示す鋳造物80は、注湯治具60のシュート部65内の鋳物部分は除去されている。
5つの製品鋳物部82は、同じ形状で、リング鋳物81において周方向に等間隔に位置する。
2本の湯道鋳物部86は、2つのダミー鋳物部83の下部からそれぞれ放射方向に延びている。
拡径リング鋳物81Aには、製品鋳物部82aとダミー鋳物部83aが、5つずつ周方向に交互に形成されている。
製品鋳物部82aの方がダミー鋳物部83aより周方向幅が多少大きい。
図14の(4)に示されるように、拡径リング鋳物81Aの製品鋳物部82aは、周方向両端を除く中央部分が製品セグメント92aのセクターとして切り出される。
残りのセクターであるダミー鋳物部83aを含むダミーセグメントは除去される。
なお、セクターに分割を行った後に、直径拡張矯正を行ってもよい。
このようにして、タイヤ成形用金型90が製造される。
本鋳造装置100は、鋳造用フィルタ110を前記鋳造装置1に追加したものである。
そこで、本実施の形態では、部材を示す符号は、前記実施の形態と同じものを用いる。
この鋳造用フィルタ110は、鋳込み空間50内で溝出湯口7eを上方から覆うように配設される。
鋳造用フィルタ110は、ダミー鋳型22の下端部の外周面に対向して接し放射方向に延設している。
注湯治具が多い程、注湯治具から鋳込み空間に溶湯が鋳込まれる鋳込み時間は短くなり、鋳型の形状の転写が速やかに行われ、押湯の圧力が早めに有効に作用するなど、種々の点で鋳造品質をより向上させることができる。
この場合は、製品用鋳型でタイヤ成形用金型が直接鋳造される。
また、石膏鋳型を構成する製品用鋳型とダミー鋳型の数は、5つ以外の複数としてもよい。
20…石膏鋳型、21…製品用鋳型、22…ダミー鋳型、
30…押湯枠、31…内筒壁、32…外筒壁、33…連結壁、34…底壁、35…押湯空間、36…ダミー空間、38…断熱ペーパー
40…外筒鋳枠、40U,40L…フランジ、45…断熱ペーパー、
50…、鋳込み空間、
60…注湯治具、61…栓部材、62…開閉ロッド、65…シュート部、66…湯溜め部、67a,67b…断熱ペーパー、
80…鋳造物、81…リング鋳物、82…製品鋳物部、83…ダミー鋳物部、85…押湯鋳物部、
81A…拡径リング鋳物、82a,82b…製品鋳物部、83a…ダミー鋳物部、
90…タイヤ成形用金型、92a,92b…製品セグメント、
100…鋳造装置、110…鋳造用フィルタ。
Claims (3)
- 定盤(2)の上に設置される環状の石膏鋳型(20)と、
前記定盤(2)の上に設置されて前記石膏鋳型(20)の外周を中心軸(Lc)を同軸にして囲繞して前記石膏鋳型(20)との間に環状の鋳込み空間(50)を形成する外筒鋳枠(40)と、
前記外筒鋳枠(40)の外側で前記定盤(2)の上に設けられて前記鋳込み空間(50)に溶湯を鋳込むために溶湯を重力により注湯する注湯治具(60)と、
を備えたタイヤ成形用金型の鋳造装置において、
前記定盤(2)の上面に前記中心軸(Lc)を中心に放射方向に延びる1本または複数本の放射溝(3)を有し、
前記放射溝(3)の遠心側溝端部(3a)は、前記外筒鋳枠(40)より外側にあって前記注湯治具(60)と連結して溶湯を前記放射溝(3)に入湯する溝入湯口(7i)を備え、
前記放射溝(3)の中心側溝端部(3b)は、前記外筒鋳枠(40)の内側にあって前記放射溝(3)から前記鋳込み空間(50)に溶湯を出湯する溝出湯口(7e)を備え、
前記鋳込み空間(50)の上に配設されて前記溝出湯口(7e)の直上に押湯を溜める押湯空間(35)が形成される押湯枠(30)を備え、
前記石膏鋳型(20)は、製品用鋳型(21)とダミー鋳型(22)を周方向に組み合わせて構成され、
前記鋳込み空間(50)のうち前記ダミー鋳型(22)と前記外筒鋳枠(40)との間の空間に、前記溝出湯口(7e)が開口し、
前記ダミー鋳型(22)の下端部の外周面に対向して前記鋳込み空間(50)内に配設される鋳造用フィルタ(110)により、前記溝出湯口(7e)が覆われることを特徴とするタイヤ成形用金型の鋳造装置。 - 前記注湯治具(60)は、上端の湯溜め部(66)からシュート部(65)が下方に延出して構成され、
前記シュート部(65)の下端が前記定盤(2)における前記放射溝(3)の遠心側溝端部(3a)に連結されて、前記溝入湯口(7i)を介して前記シュート部(65)の内部と前記放射溝(3)とが連通され、
前記溝入湯口(7i)が栓部材(61)により開閉自在に閉塞されることを特徴とする請求項1記載のタイヤ成形用金型の鋳造装置。 - 前記放射溝(3)に、気泡の移動を規制する堰(6)が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載のタイヤ成形用金型の鋳造装置。
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