以下、本発明の光学部品の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<実施形態>
図1は、光学シート(第1実施形態)を備えるサングラスの斜視図である。図2は、光学シート(第1実施形態)を備えるサンバイザーの斜視図である。図3は、図1に示す光学シートを製造する光学シート製造装置を模式的に示した側面図である。図4は、図3に示す光学シート製造装置で得られた光学シート母材を打ち抜く打ち抜き工程を示す断面図である。図5は、図3に示す打ち抜き工程を経て得られた光学シートの断面図である。図6は、図1に示す光学シートを備える光学部品を製造する光学部品製造装置を模式的に示した断面図である。図7は、図6の部分拡大断面図である。図8は、図6に示す光学部品製造装置により得られた光学部品の断面図である。図9は、図6に示す状態とは反対の向きで光学シートを光学部品製造装置に配置した状態を示す断面図である。図10は、図9に示す状態において、光学シートの一部が欠損した状態を示す図である。
なお、図1~図10では、上側を「上方」または「上」と言い、下側を「下方」または「下」とも言う。また、本明細書で参照する図面では、厚さ方向の寸法を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
図1、図2および図5に示す光学シート1は、入射光に対して光学的に機能する光学機能層としての特定波長吸収層11を備え、光学シート1の厚さ方向に切った断面図において、一方の主面側(図5中上側)の2つの角部111がそれぞれ鈍角であり、他方の主面側(図5中下側)の2つの角部112がそれぞれ鋭角である。
これにより、いわゆるシートインサート法を用いて、光学シート1とレンズとが接合された光学部品(例えば、図1に示す光学部品10や図2に示す光学部品10’)を得る場合、図7に示すような向き、すなわち、角部112側の面がキャビティー610の底面641に密着するように配置して、溶融した樹脂を供給することにより、溶融した樹脂が底面641と光学シート1との間に入り込むのを防止または抑制することができる。さらに、例えば、角部112が欠損して溶融した樹脂中に混入してしまうのを防止することができる。その結果、優れた光学特性を有する光学部品(例えば、図1に示す光学部品10や図2に示す光学部品10’)を得ることができる。
このような光学シート1は、図1に示すサングラス(光学部品10)や、図2に示すサンバイザー(光学部品10’)に用いられる。
図1に示すように、サングラス(光学部品10)は、使用者の頭部に装着されるフレーム2と、フレーム2に固定された光学シート付レンズ3(光学部品)とを備えている。なお、本明細書中においては、「レンズ」とは、集光機能を有するもの、集光機能を有していないものの双方を含む。
図1に示すように、フレーム2は、使用者の頭部に装着されるものであり、リム部21と、ブリッジ部22と、使用者の耳に掛けられるテンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。各リム部21は、リング状をなしており、内側に光学シート付レンズ3が装着される部分である。
ブリッジ部22は、各リム部21を連結する部分である。テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21の縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の耳に掛けられる部分である。ノーズパッド部24は、サングラス(光学部品10)を使用者の頭部に装着した装着状態において、使用者の鼻と当接する部分である。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
なお、フレーム2の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
本発明の光学部品の製造方法により製造された光学部品は、レンズ4(基材)と、レンズ4の表側(装着状態における人の目とは反対側)の面に積層された光学シート1と、を有する。これにより、前述した光学シート1の利点を享受しつつ、サングラスとしての機能を発揮することができる。
図2に示すように、サンバイザー(光学部品10’)は、使用者の頭部に装着されるリング状の装着部5と、装着部5の前方に設けられたツバ6とを有している。ツバ6は、光透過性部材7(基材)と、光透過性部材7の上面に設けられた光学シート1とを有する。これにより、前述した光学シート1の利点を享受しつつ、サンバイザーとしての機能を発揮することができる。
なお、レンズ4および光透過性部材7の構成材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、各種樹脂材料や各種ガラス等が挙げられるが、光学シート1のポリカーボネートと同種のポリカーボネートであるのが好ましい。これにより、レンズ4または光透過性部材7と、光学シート1との密着性を高めることができる。
以下、光学シート1について詳細に説明する。なお、以下では、レンズ4(基材)上に積層した場合について代表的に説明する。
図5に示すように、光学シート1は、特定波長吸収層11を有している。この特定波長吸収層11は、樹脂材料を主材として、光吸収剤と、紫外線吸収剤と、を含んでいる。
主材としての樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
この中でもポリカーボネートであるのが好ましい。これにより、光学シート1は、優れた強度を発揮することができる。
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートとしては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネートであることが好ましい。芳香族系ポリカーボネートは、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、光学シート1の強度をより優れたものとすることができる。
この芳香族系ポリカーボネートは、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
(式(1)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネートとしては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネートを主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネートを用いることにより、光学シート1は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
このようなポリカーボネートの平均分子量は、粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下とされる。これにより、光学シート1の強度を十分に高めることができる。また、ポリカーボネートの溶融状態において、流動性を十分に高めることができる。これにより、光学シート1を、例えば、押し出し成形により製造する際、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤を十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。よって、成形後に光吸収剤が過剰に凝集した状態となるのを防止することができる。さらに、ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下であるため、十分な強度を有するものとなる。以上より、光学シート1は、光吸収剤が凝集するのを防止するとともに、十分な強度を有する。
なお、ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvが小さすぎると、成形後に十分な強度が得られない。一方で、ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvが大きすぎると、溶融状態において、流動性を十分に高めることができない。このため、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤との混合が不十分になる。
ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下であれば、本発明の効果を得ることができるが、23000以上28000以下であれば、さらに効果が顕著に得られ、24000以上27500以下であれば、特に効果が顕著に得られる。
また、ポリカーボネートは、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、3g/10min以上30g/10min以下であるのが好ましく、15g/10min以上25g/10min以下であるのがより好ましい。これにより、溶融状態において、ポリカーボネートの流動性を十分に高めることができる。よって、例えば、押し出し成形により光学シート1を製造する際、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。
また、ポリカーボネートは、吸水率が、0.02%以上0.2%以下のものであるのが好ましく、0.04%以上0.15%以下のものであるのがより好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。よって、光吸収剤が過剰に凝集するのを防止することができる。
なお、本明細書中での吸水率は、アクアトラック3E(ブラベンダー社製)にて測定した値とされる。
また、特定波長吸収層11中のポリカーボネートの含有量は、87wt%以上99.949wt%以下であるのが好ましく、90wt%以上99.87wt%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
<光吸収剤(光学機能材)>
光吸収剤は、特定の波長の光を吸収するものである。本明細書中では、「光を吸収する」とは、可視光領域が420nm~780nmの最大吸収波長の値をλ1とし、λ1より20nm低波長側の値をλ2、20nm高波長側の値をλ3とした場合、吸光度λ1/λ2あるいは吸光度λ1/λ3が、1.0以上であることを言う。
光吸収剤としては、350nm以上780nm以下の波長域の光のうち、特定の波長の光を吸収するものであれば特に限定されないが、例えば、キノリン系色素、アントラキノン系色素、ぺリレン系色素、ポリメチン色素、ポルフィリン錯体色素、フタロシアニン色素等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
キノリン系色素としては、例えば、2-メチルキノリン、3-メチルキノリン、4-メチルキノリン、6-メチルキノリン、7-メチルキノリン、8-メチルキノリン、6-イソプロピルキノリン、2,4-ジメチルキノリン、2,6-ジメチルキノリン、4,6,8-トリメチルキノリン等のアルキル置換キノリン化合物、2-アミノキノリン、3-アミノキノリン、5-アミノキノリン、6-アミノキノリン、8-アミノキノリン、6-アミノ-2-メチルキノリン等のアミノ基置換キノリン化合物、6-メトキシ-2-メチルキノリン、6,8-ジメトキシ-4-メチルキノリン等のアルコキシ基置換キノリン化合物、6-クロロキノリン、4,7-ジクロロキノリン、3-ブロモキノリン、7-クロロ-2-メチルキノリン等のハロゲン基置換キノリン化合物等が挙げられる。
このようなキノリン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が350nm以上550nm以下の光を吸収することができる。なお、400nm以上550nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
アントラキノン系色素としては、例えば、(1)2-アニリノ-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(2)2-(o-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(3)2-(p-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(4)2-(m-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(5)2-(o-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(6)2-(p-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(7)2-(m-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(8)2-(o-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(9)2-(p-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(10)2-(m-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(11)2-(p-ターシャルブチルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(12)2-(o-メトキシアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(13)2-(2,6-ジイソプロピルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(14)2-(2,6-ジクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(15)2-(2,6-ジフルオロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(16)2-(3,4-ジシアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(17)2-(2,4,6-トリクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(18)2-(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(19)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(20)3-(2,3,4,5-テトラフルオロアニリノ)-2-ブトキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(21)3-(4-シアノ-3-クロロアニリノ)-2-オクチルオキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(22)3-(3,4-ジシアノアニリノ)-2-ヘキシルオキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(23)3-(4-シアノ-3-クロロアニリノ)-1,2-ジブトキシ-4-フルオロアントラキノン、(24)3-(p-シアノアニリノ)-2-フェノキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(25)3-(p-シアノアニリノ)-2-(2,6-ジエチルフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(26)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(27)3-(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-2-(2,6-ジメトキシフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(28)2,3-ジアニリノ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(29)2,3-ビス(p-ターシャルブチルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(30)2,3-ビス(p-メトキシアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(31)2,3-ビス(2-メトキシ-6-メチルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(32)2,3-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(33)2,3-ビス(2,4,6-トリクロロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(34)2,3-ビス(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(35)2,3-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(36)2,3-ビス(p-シアノアニリノ)-1-メトキシエトキシ-4-フルオロアントラキノン、(37)2-(2,6-ジクロロアニリノ)-1,3,4-トリクロロアントラキノン、(38)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,3,4-トリクロロアントラキノン、(39)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)-1,4-ジクロロアントラキノン、(40)2-(2,6-ジクロロアニリノ)アントラキノン、(41)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)アントラキノン、(42)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)アントラキノン、(43)2,3-ビス(2-メトキシ-6-メチルアニリノ)-1,4-ジクロロアントラキノン、(44)2,3-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリノ)アントラキノン、(45)2-ブチルアミノ-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(46)1,4-ビス(n-ブチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(47)1,4-ビス(n-オクチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(48)1,4-ビス(ヒドロキシエチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(49)1,4-ビス(シクロヘキシルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(50)1,4-ビス(シクロヘキシルアミノ)-2-オクチルオキシ-3-フルオロアントラキノン、(51)1,2,4-トリス(2,4-ジメトキシフェノキシ-3-フルオロアントラキノン、(52)2,3-ビス(フェニルチオ)-1-フェノキシ-4-フルオロアントラキノン、(53)1,2,3,4-テトラ(p-メトキシフェノキシ)-アントラキノン等が挙げられる。
このようなアントラキノン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が450nm以上600nm以下の光を吸収することができる。なお、500nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ぺリレン系色素としては、例えば、N,N’-ジメチルペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ジエチルペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-エトキシフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-クロロフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド等が挙げられるが、特に好ましいものとして、N,N’-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
このようなぺリレン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が400nm以上800nm以下の光を吸収することができる。なお、600nm以上780nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ポリメチン色素としては、ストレプトシアニンまたは開鎖シアニン、ヘミシアニン、閉鎖シアニン、メロシアニン等が挙げられる。
このようなポリメチン色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が400nm以上700nm以下の光を吸収することができる。なお、450nm以上550nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ポルフィリン錯体色素としては、テトラアザポルフィリン金属錯体、テトラアリールポルフィリン、オクタエチルポルフィリン等が挙げられる。
このようなポルフィリン錯体色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が500nm以上700nm以下の光を吸収することができる。なお、550nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
フタロシアニン色素としては、CoPc-4-スルホン酸ナトリウム塩、コバルトPcテトラカルボン酸、オクタヒドロキシNiPc等が挙げられる。
このようなフタロシアニン色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が550nm以上750nm以下の光を吸収することができる。なお、550nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
以上のような光吸収剤を配合することにより、特定の波長域の光を吸収することができる。よって、例えば、使用者は、装着状態において、物や人の輪郭をはっきりと認識することができ、安全性を高めることができる。
特定波長吸収層11中の光吸収剤(各光吸収剤の合計)の含有量は、0.001wt%以上5wt%以下であるのが好ましく、0.003wt%以上4wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。含有量が少なすぎると、光吸収剤としての効果が十分に得られないおそれがある。一方、含有量が多すぎると、光吸収剤が凝集し易くなる傾向を示す。
なお、光吸収剤(光学機能材)は、上記で挙げた色素とは異なる色素であってもよい。この色素としては、特に限定されないが、例えば、顔料、染料等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。また、前述したようなものと混合して使用することができる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ペンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン等のアゾ系顔料、アントラピリミジンイエロー、アントラキノニルレッド等のアントラキノン系顔料、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケルジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料、ペリノンオレンジ等のペリノン系顔料、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料、ジケトピロロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料のような有機顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等の炭素系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩系顔料、カドミウムイエロー、カドミウムリトポンイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリトポンオレンジ、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッド、硫化等の硫化物系顔料、オーカー、チタンイエロー、チタンバリウムニッケルイエロー、べんがら、鉛丹、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック等の酸化物系顔料、ビリジアン等の水酸化物系顔料、紺青等のフェロシアン化物系顔料、群青等のケイ酸塩系顔料、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等のリン酸塩系顔料、その他(例えば硫化カドミウム、セレン化カドミウム等)のような無機顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料としては、特に限定されないが、例えば、金属錯体色素、シアン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素、テトラアゾポルフィリン化合物等のポルフィリン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<紫外線吸収剤(光学機能材)>
紫外線吸収剤は、紫外線(波長域が100nm以上420nm以下の光)を吸収するものである。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、トリアジン系化合物が好ましく用いられる。これにより、特定波長吸収層11(ポリカーボネートおよび光吸収剤)の紫外線による劣化を防止または抑制することができ、光学シート1の耐候性を高めることができる。
トリアジン系化合物としては、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物や2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)、「アデカスタブLA-F70」(ADEKA製)等が挙げられる。
特定波長吸収層11が、上述したような100nm以上420nm以下の波長域の光を吸収する紫外線吸収剤をさらに含むことにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が100nm以上420nm以下の光を吸収することができる。これにより、特定波長吸収層11(ポリカーボネートおよび光吸収剤)の紫外線による劣化を防止または抑制することができ、光学シート1の耐候性を高めることができる。
特定波長吸収層11中の紫外線吸収剤の含有量は、0.05wt%以上8wt%以下であるのが好ましく、0.07wt%以上6wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。含有量が少なすぎると、紫外線吸収剤としての効果が十分に得られないおそれがある。一方、含有量が多すぎると、紫外線吸収剤が凝集し易くなる傾向を示す。
このような特定波長吸収層11の厚さは、特に限定されないが、0.05mm以上1.5mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上0.7mm以下であるのがより好ましい。これにより、取扱い性を高めることができるとともに、光学部品全体として無駄に厚くなるのを防止することができる。
また、特定波長吸収層11は、延伸して製造されたものであってもよく、延伸せずに製造されたものであってもよいが、その延伸度が10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。これにより、延伸時に色ムラ、光吸収剤のムラ、紫外線吸収剤のムラが生じるのを防止または抑制することができる。
また、ポリカーボネートの融点をT1とし、光吸収剤の融点T2としたとき、T1<T2を満足するのが好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを混合する際、光吸収剤が熱により変質または変色するのを防止することができる。
また、ポリカーボネートの融点をT1とし、紫外線吸収剤の融点T3としたとき、T1<T3を満足するのが好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと紫外線吸収剤とを混合する際、紫外線吸収剤が熱により変質または変色するのを防止することができる。
なお、ポリカーボネートの融点T1は、250℃以上400℃以下であるのが好ましく、270℃以上350℃以下であるのがより好ましい。
光吸収剤の融点T2は、300℃以上400℃以下であるのが好ましく、330℃以上360℃以下であるのがより好ましい。また、紫外線吸収剤の融点T3は、310℃以上370℃以下であるのが好ましく、340℃以上360℃以下であるのがより好ましい。融点T1~T3を上記数値範囲とすることにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
なお、上記では、光学機能材の一例として、可視光を吸収する光吸収剤について説明したが、入射光に対して光学的に機能する(例えば、特定の波長域の透過率を変更する)ものであれば特に限定されず、例えば、無機粒子等で構成された光反射剤や、赤外線を吸収する赤外線吸収剤等であってもよく、これらのうちの複数を組み合わせて混合したものであってもよい。
また、光学シート1は、特定波長吸収層11以外の層を有し、この層が特定波長吸収層11に積層されたものであってもよい。例えば、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す機能を有する偏光膜を有していてもよい。これにより、光学シート1を介して目に入射する入射光は、偏光されたものとなる。また、この場合、偏光膜が光学機能層となる。
このような偏光膜の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
これらの中でも、偏光膜は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光機能に優れたものとなる。
このような偏光膜は、接着剤層を介して特定波長吸収層11に積層されるのが好ましい。接着剤層を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、接着剤層の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとすることができる。
また、偏光膜を有する構成である場合、偏光膜は、特定波長吸収層11よりもレンズ4側に位置しているのが好ましい。
次に、光学シートの製造方法および本発明の光学部品の製造方法について説明する。以下では、押出法を用いて光学シートを製造する場合を一例に説明する。
(光学シートの製造方法)
まず、本製造方法に用いる光学シート製造装置について説明する。
図3に示す光学シート製造装置100は、シート供給部200と、シート成形部300とを有している。
シート供給部200は、本実施形態では、押出機210と、押出機210の溶融樹脂吐出部211に配管212を介して接続されたTダイ220とで構成されている。このTダイ220により、溶融状態または軟化状態の帯状のシート1’(光学シート母材)がシート成形部300に供給される。
Tダイ220は、押出法で溶融状態または軟化状態のシート1’を帯状のシートとした状態で押し出す押出成形部である。Tダイ220には、前述した光学シート1を構成する構成材料が溶融状態で装填されており、この溶融状態の材料をTダイ220から押し出すことで、帯状をなすシート1’が連続的に送り出される。
シート成形部300は、タッチロール310と、冷却ロール320と、後段冷却ロール330とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、冷却されることで、連続的に送り出されるようになっている。このシート成形部300に、シート1’を連続的に送り込むことにより、シート1’の表面が平坦化されるとともに、シート1’が所望の厚さに設定されて冷却される。そして、この冷却されたシート1’を、刃700を用いて所定の形状に打ち抜くことにより、光学シート1が得られる。
以上のような光学シート製造装置100を用いた光学シートの製造方法により、本実施形態の光学シートが製造される。
光学シートの製造は、押出工程と、成形工程と、冷却工程と、を有している。
まず、帯状をなす溶融状態または軟化状態のシート1’を押し出す(押出工程)。この押出工程では、押出機210に、光学シート1の構成材料(ポリカーボネート、光吸収剤および紫外線吸収剤等)が装填される。また、光学シート1の構成材料は、押出機210内において、溶融または軟化した状態となっている。そして、この十分に混合された状態でこれらを押し出すことにより、後述する成形工程および冷却工程を経て得られる光学シート1では、光吸収剤および紫外線吸収剤等が過剰に凝集してしまうのを防止することができる。
次に、シート1’の表面を平坦化するとともに、シート1’を所定の厚さに設定する(成形工程)。本工程は、タッチロール310と、冷却ロール320との間で行われる。
次に、シート1’の表面を冷却する(冷却工程)。本工程は、冷却ロール320と、後段冷却ロール330との間で行われる。
以上の工程を経て、光学シート1を得ることができる。次に、光学部品の製造方法について説明する。
(光学部品の製造方法)
まず、本製造方法に用いる光学部品製造装置について説明する。
図6に示す光学部品製造装置400は、樹脂供給部500と、金型600とを有している。樹脂供給部500には、前述したポリカーボネートが充填されている。金型600は、キャビティー610と、キャビティー610の内外を連通する供給口620と、を有する。また、金型600は、上部材630と下部材640とで構成され、これらを組立てた組立状態において、光学部品製造装置400を画成する金型600が構成される。
以上のような光学部品製造装置400と、図4に示す刃700とを用いた光学シートの製造方法により、本実施形態の光学部品が製造される。
光学部品の製造方法は、打ち抜き工程と、形状付け工程と、接合工程とを有している。
(打ち抜き工程)
まず、図4に示すように、シート1’(光学シート母材)を、一方の面側からリング状の刃700を貫通させるように切断することにより、シート1’を所望の形状に打ち抜いて光学シート1を得る。
なお、本工程で用いる刃700は、リング状をなし、内周部および外周部に刃面701を有する両刃で構成されている。特に、内周部に刃面701が形成されていることにより、図5に示すような断面形状を有する光学シート1が得られる。
図5に示すように、光学シート1は、その厚さ方向に切った断面において、上側の2つの角部111は、鈍角となり、下側の二つの角部112は、鋭角となる。
このように、打ち抜き工程では、刃700を用いてシート1’をその一方の主面側(図4中上側)から打ち抜くことにより、厚さ方向に切った断面図において、一方の主面側(図5中上側)の2つの角部111がそれぞれ鈍角であり、他方の主面側(図5中下側)の2つの角部112がそれぞれ鋭角である光学シート1を得ることができる。
(形状付け工程)
次いで、図6に示すように、上部材630と下部材640とを分解した状態において、下部材640の底面641に光学シート1を配置する。なお、底面641は、湾曲凹面となっており、これにより、レンズ4に湾曲面を形成することができる。また、光学シート1は、可撓性を有しているため、底面641の形状に倣って配置される。
この際、図7に示すように、本発明では、角部112側の面が底面641と密着するように配置する。そして、この配置状態で、下部材640を加熱することにより、光学シート1を、底面641に倣った状態で一方向に湾曲させて形状付けを行うことができる。これにより、底面641と光学シート1との間に隙間が形成されるのを防止することができ、後述するように溶融した樹脂(レンズ材料900)を供給しても、溶融した樹脂(レンズ材料900)が底面641と光学シート1との間に入り込むのをより確実に防止することができる。
(接合工程)
次いで、上部材630と下部材640とを組立状態とし、供給口620を介して、溶融または軟化した状態のレンズ材料を流し込む(レンズ材料供給工程)。そして、溶融または軟化した状態のレンズ材料を冷却することにより、光学シート1とレンズとが積層された積層体を得ることができる。
このように、接合工程では、底面641が湾曲凹面のキャビティー610を有する治具である上部材630と下部材640を用い、底面641上に光学シート1を配置し、キャビティー610内に溶融した状態のレンズ材料(基板用材料)を注入する。これにより、接着剤を用いて接着する方法に比べて高い接合強度を実現することができる。また、後述するような本発明の効果がより顕著に現れる。
ここで、図9に示すように、角部111側の面が底面641に密着するように配置してしまうと、図10に示すように、流れ込んできたレンズ材料の圧力が角部112に集中し易くなる。種々の条件によっては、光学シート1の角部112が欠損してしまう可能性が有る。この欠損した角部112がレンズ材料に混入してしまうと、成形後のレンズ4において異物となり、その部分の光学特性(特に、光学ひずみ)が変わってしまい、全体として光学特性が低下してしまうことがある。
これに対し、本発明では、図7に示すように、角部112側の面が底面641に密着するように配置した状態で接合工程を行う。これにより、レンズ材料900が供給されて流れ込んできた際、角部112から角部111に向けて円滑に流れて光学シート1の任意の部位に過剰に圧力がかかるのを防止することができる。よって、図10に示すような不具合が生じるのを防止することができる。その結果、光学シート1の構成材料がレンズ4に混入するのを防止することができ、得られた光学シート1は、優れた光学特性を発揮することができる。
また、成形後のレンズ4(基材)に対する特定波長吸収層11(光学機能層)の構成材料の単位面積当たりの混入量は、5mg/cm2以下であるのが好ましく、0.5mg/cm2以下であるのがより好ましい。これにより、光学シート1は、優れた光学特性をより確実に発揮することができる。なお、上記数値範囲以内とするには、本発明の光学部品の製造方法が特に有効である。
なお、光学機能層が特定波長吸収層11以外の層(例えば偏光膜)である場合は、成形後のレンズ4(基材)に対する偏光膜の構成材料の単位面積あたりの混入量が上記数値範囲であるのが好ましい。また、特定波長吸収層11と特定波長吸収層11以外の光学機能層(例えば偏光膜)を有する場合、成形後のレンズ4(基材)に対する特定波長吸収層11の構成材料と偏光膜の構成材料との混入量の合計が上記数値範囲であるのが好ましい。
また、光学機能層として偏光膜を用いる場合、偏光膜の両面側には、ポリカーボネートで構成された保護層が積層されているのが好ましい。この場合、保護層のポリカーボネートがレンズの構成材料と同種のものであっても、レンズ中に混入すると光学特性が低下する。これは、同種のポリカーボネートであっても延伸度が異なるからである。
また、特定波長吸収層11の主材の樹脂と、レンズ4の構成材料である樹脂とが同種のものであった場合、成形後のレンズ4(基材)中に存在する特定波長吸収層11(光学機能層)の構成材料とは、光学機能材のことを言い、その混入率(含有量)は、レンズ4に対して体積基準で0.01%以下であるのが好ましく、0.001%以下であるのがより好ましい。これにより、光学シート1は、優れた光学特性をより確実に発揮することができる。
また、接合工程において溶融または軟化したレンズ材料の温度は、260℃以上320℃以下であるのが好ましく、280℃以上300℃以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ材料の粘度を十分に低くすることができ、キャビティー610内の隅々までレンズ材料がいきわたり易くなる。また、このような温度では、キャビティー610内に供給する単位時間あたりの速度によっては、光学シート1を図9に示す向きで配置した場合、図10に示す現象が比較的生じやすくなるが、レンズ材料の温度を上記範囲内にすることにより、上述したような製造方法であることの効果がより顕著に得られる。
以上説明したように、本発明の光学部品の製造方法は、入射光に対して光学的に機能する特定波長吸収層11(光学機能層)を備えるシート1’(光学シート母材)を打ち抜いて光学シート1を得る打ち抜き工程と、打ち抜いた光学シート1に光透過性を有するレンズ4(基板)を接合することにより、光学シート1とレンズ4(基板)とが積層された光学部品10を得る接合工程を有している。また、打ち抜き工程では、刃700を用いてシート1’(光学シート母材)をその一方の主面側から打ち抜くことにより、厚さ方向に切った断面において、一方の主面側の2つの角部111がそれぞれ鈍角であり、他方の主面側の2つの角部112がそれぞれ鋭角である光学シート1を得、接合工程では、光学シート1の一方の主面側にレンズ4(基板)を接合する。
これにより、いわゆるシートインサート法を用いて、光学シート1とレンズ4とが接合された光学部品(例えば、図1に示す光学部品10や図2に示す光学部品10’)を得る場合、図7に示すような向き、すなわち、角部112側の面がキャビティー610の底面641に密着するように配置して、溶融した樹脂を供給することにより、溶融した樹脂が底面641と光学シート1との間に入り込むのを防止または抑制することができる。さらに、例えば、角部112が欠損して溶融した樹脂中に混入してしまうのを防止することができる。その結果、優れた光学特性を有する光学部品(例えば、図1に示す光学部品10や図2に示す光学部品10’)を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、光学シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
より具体的には、例えば、光学シートは、表面を保護する保護層や、中間層、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。