以下、本発明の光学シートおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光学シート(第1実施形態)を備えるサングラスの斜視図である。図2は、本発明の光学シート(第1実施形態)を備えるサンバイザーの斜視図である。図5は、図1に示す光学部品の断面図である。図7は、図1に示す光学シートが備える光吸収層(特定波長吸収層)の光スペクトルを示すグラフである。
なお、図1、図2、図5(図6についても同様)では、上側を「上方」または「上」と言い、下側を「下方」または「下」とも言う。また、本明細書で参照する図面では、厚さ方向の寸法を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
図1、図2および図5に示す本発明の光学シート1は、樹脂と、少なくとも2種の光吸収剤とを含む材料で構成され、可視光域における特定の波長域の光を吸収する光吸収層を備え、光吸収層は、光吸収スペクトルにおいて、575nm以上620nm以下の間に吸収率のピーク波長P1を有する第1ピークと、630nm以上730nm以下の間に吸収率のピーク波長P2を有する第2ピークと、を有し、かつ、ピーク波長P1における光の透過率をT1[%]とし、ピーク波長P2における光の透過率をT2[%]とし、第1ピークにおける半値幅をW1[nm]とし、第2ピークにおける半値幅をW2[nm]としたとき、T1>1.5×T2なる関係を満足し、かつ、W1<W2なる関係を満足する。
これにより、使用者に対して、緑色の光(波長域が500nm以上570nm以下程度の光)を確実に強調することができるとともに、緑色以外の色の識別を行うことができる。また、上記を満足することにより、光学シート1(光学部品10)の色目を自然な緑色に調色することができる。自然な緑色に調色することにより、強調したい色だけを強調して、他の色はより自然のままの色に見せることができる。具体的には、C光源を用いて視野角2°で測定した色相a値(以下、単に「a値」と言う)が-14以上-6以下、色相b値(以下、単に「b値」と言う)が-6以上+2以下の自然な緑色に調色することができる。
a値は、-14以上-6以下であることが好ましく、-13以上-7以下であることがより好ましく、-12以上-8以下であることがさらに好ましい。b値は、-6以上+2以下であるのが好ましく、-5以上+1以下あるのがより好ましく、-4以上+0以下であるのがさらに好ましい。
なお、T1≦1.5×T2であった場合、575nm以上620nm以下の光の透過率が低すぎて、波長域が575nm以上620nm以下の光の識別を正確に行えないことがあったり、波長域が630nm以上730nm以下の光の透過率が高すぎて緑色の光を強調するという効果が十分に得られない可能性が有る。また、黄色光の吸収が強くなるため、b値が+4以上になり、レンズが青味を帯びてしまう。
また、W1≧W2であった場合、光学シート1(光学部品10)が緑色光を吸収するため、緑色を強調することが難しくなる。
このような光学シート1は、図1に示すサングラス(光学部品10)や、図2に示すサンバイザー(光学部品10’)に用いられる。
図1に示すように、サングラス(光学部品10)は、使用者の頭部に装着されるフレーム2と、フレーム2に固定された光学シート付レンズ3(光学部品)とを備えている。なお、本明細書中においては、「レンズ」とは、集光機能を有するもの、集光機能を有していないものの双方を含む。
図1に示すように、フレーム2は、使用者の頭部に装着されるものであり、リム部21と、ブリッジ部22と、使用者の耳に掛けられるテンプル部23と、ノーズパッド部24を有している。各リム部21は、リング状をなしており、内側に光学シート付レンズ3が装着される部分である。
ブリッジ部22は、各リム部21を連結する部分である。テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21の縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の耳に掛けられる部分である。ノーズパッド部24は、サングラス(光学部品10)を使用者の頭部に装着した装着状態において、使用者の鼻と当接する部分である。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
なお、フレーム2の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
本発明の光学部品は、レンズ4(基材)と、レンズ4の表側(装着状態における人の目とは反対側)の面に積層された光学シート1と、を有する。これにより、前述した光学シート1の利点を享受しつつ、サングラスとしての機能を発揮することができる。
図2に示すように、サンバイザー(光学部品10’)は、使用者の頭部に装着されるリング状の装着部5と、装着部5の前方に設けられたツバ6とを有している。ツバ6は、光透過性部材7(基材)と、光透過性部材7の上面に設けられた光学シート1とを有する。これにより、前述した光学シート1の利点を享受しつつ、サンバイザーとしての機能を発揮することができる。
なお、レンズ4および光透過性部材7の構成材料としては、光透過性を有していれば特に限定されず、各種樹脂材料や各種ガラス等が挙げられるが、光学シート1のポリカーボネートと同種のポリカーボネートであるのが好ましい。これにより、レンズ4または光透過性部材7と、光学シート1との密着性を高めることができる。
以下、光学シート1について詳細に説明する。なお、以下では、レンズ4(基材)上に積層した場合について代表的に説明する。
図5に示すように、光学シート1は、特定波長吸収層11を有している。この特定波長吸収層11は、ポリカーボネートを主材として、光吸収剤と、紫外線吸収剤と、を含んでいる。
<樹脂>
樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、これらの中でもポリカーボネートであるのが好ましい。
ポリカーボネートとしては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネートであることが好ましい。芳香族系ポリカーボネートは、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、光学シート1の強度をより優れたものとすることができる。
この芳香族系ポリカーボネートは、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
(式(1)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
なお、前記式(1)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、ポリカーボネートとしては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネートを主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネートを用いることにより、光学シート1は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
このようなポリカーボネートの平均分子量は、粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下であるのが好ましく、23000以上28000以下であるのがより好ましく、24000以上27500以下であるのがさらに好ましい。
これにより、光学シート1の強度を十分に高めることができる。また、ポリカーボネートの溶融状態において、流動性を十分に高めることができる。これにより、光学シート1を、例えば、押出し成形により製造する際、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤を十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。よって、成形後に光吸収剤が過剰に凝集した状態となるのを防止することができる。さらに、ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下であるため、十分な強度を有するものとなる。以上より、本発明の光学シート1は、光吸収剤が凝集するのを防止するとともに、十分な強度を有する。
また、ポリカーボネートは、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、3g/10min以上30g/10min以下であるのが好ましく、15g/10min以上25g/10min以下であるのがより好ましい。これにより、溶融状態において、ポリカーボネートの流動性を十分に高めることができる。よって、例えば、押出し成形により光学シート1を製造する際、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。
また、ポリカーボネートは、吸水率が、0.02%以上0.2%以下のものであるのが好ましく、0.04%以上0.15%以下のものであるのがより好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを十分に混合した状態で押出し成形を行うことができる。よって、光吸収剤が過剰に凝集するのを防止することができる。
なお、本明細書中での吸水率は、アクアトラック3E(ブラベンダー社製)にて測定した値とされる。
また、特定波長吸収層11中のポリカーボネートの含有量は、87wt%以上99.949wt%以下であるのが好ましく、90wt%以上99.87wt%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
<光吸収剤>
光吸収剤は、特定の波長の光を吸収するものである。本明細書中では、「光を吸収する」とは、可視光領域が420nm~780nmの最大吸収波長の値をλ1とし、λ1より20nm低波長側の値をλ2、20nm高波長側の値をλ3とした場合、吸光度λ1/λ2あるいは吸光度λ1/λ3が、1.0以上であることを言う。
光吸収剤としては、350nm以上780nm以下の波長域の光のうち、特定の波長の光を吸収するものであれば特に限定されないが、例えば、キノリン系色素、アントラキノン系色素、ぺリレン系色素、ポリメチン色素、ポルフィリン錯体色素、フタロシアニン色素等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
キノリン系色素としては、例えば、2-メチルキノリン、3-メチルキノリン、4-メチルキノリン、6-メチルキノリン、7-メチルキノリン、8-メチルキノリン、6-イソプロピルキノリン、2,4-ジメチルキノリン、2,6-ジメチルキノリン、4,6,8-トリメチルキノリン等のアルキル置換キノリン化合物、2-アミノキノリン、3-アミノキノリン、5-アミノキノリン、6-アミノキノリン、8-アミノキノリン、6-アミノ-2-メチルキノリン等のアミノ基置換キノリン化合物、6-メトキシ-2-メチルキノリン、6,8-ジメトキシ-4-メチルキノリン等のアルコキシ基置換キノリン化合物、6-クロロキノリン、4,7-ジクロロキノリン、3-ブロモキノリン、7-クロロ-2-メチルキノリン等のハロゲン基置換キノリン化合物等が挙げられる。
このようなキノリン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長域が350nm以上550nm以下の光を吸収することができる。なお、400nm以上550nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
アントラキノン系色素としては、例えば、(1)2-アニリノ-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(2)2-(o-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(3)2-(p-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(4)2-(m-エトキシカルボニルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(5)2-(o-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(6)2-(p-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(7)2-(m-シアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(8)2-(o-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(9)2-(p-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(10)2-(m-ニトロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(11)2-(p-ターシャルブチルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(12)2-(o-メトキシアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(13)2-(2,6-ジイソプロピルアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(14)2-(2,6-ジクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(15)2-(2,6-ジフルオロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(16)2-(3,4-ジシアノアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(17)2-(2,4,6-トリクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(18)2-(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(19)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(20)3-(2,3,4,5-テトラフルオロアニリノ)-2-ブトキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(21)3-(4-シアノ-3-クロロアニリノ)-2-オクチルオキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(22)3-(3,4-ジシアノアニリノ)-2-ヘキシルオキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(23)3-(4-シアノ-3-クロロアニリノ)-1,2-ジブトキシ-4-フルオロアントラキノン、(24)3-(p-シアノアニリノ)-2-フェノキシ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(25)3-(p-シアノアニリノ)-2-(2,6-ジエチルフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(26)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(27)3-(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-2-(2,6-ジメトキシフェノキシ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(28)2,3-ジアニリノ-1,4-ジフルオロアントラキノン、(29)2,3-ビス(p-ターシャルブチルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(30)2,3-ビス(p-メトキシアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(31)2,3-ビス(2-メトキシ-6-メチルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(32)2,3-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(33)2,3-ビス(2,4,6-トリクロロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(34)2,3-ビス(2,3,5,6-テトラクロロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(35)2,3-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,4-ジフルオロアントラキノン、(36)2,3-ビス(p-シアノアニリノ)-1-メトキシエトキシ-4-フルオロアントラキノン、(37)2-(2,6-ジクロロアニリノ)-1,3,4-トリクロロアントラキノン、(38)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)-1,3,4-トリクロロアントラキノン、(39)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)-1,4-ジクロロアントラキノン、(40)2-(2,6-ジクロロアニリノ)アントラキノン、(41)2-(2,3,5,6-テトラフルオロアニリノ)アントラキノン、(42)3-(2,6-ジクロロアニリノ)-2-(2,6-ジクロロフェノキシ)アントラキノン、(43)2,3-ビス(2-メトキシ-6-メチルアニリノ)-1,4-ジクロロアントラキノン、(44)2,3-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリノ)アントラキノン、(45)2-ブチルアミノ-1,3,4-トリフルオロアントラキノン、(46)1,4-ビス(n-ブチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(47)1,4-ビス(n-オクチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(48)1,4-ビス(ヒドロキシエチルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(49)1,4-ビス(シクロヘキシルアミノ)-2,3-ジフルオロアントラキノン、(50)1,4-ビス(シクロヘキシルアミノ)-2-オクチルオキシ-3-フルオロアントラキノン、(51)1,2,4-トリス(2,4-ジメトキシフェノキシ-3-フルオロアントラキノン、(52)2,3-ビス(フェニルチオ)-1-フェノキシ-4-フルオロアントラキノン、(53)1,2,3,4-テトラ(p-メトキシフェノキシ)-アントラキノン等が挙げられる。
このようなアントラキノン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が450nm以上600nm以下の光を吸収することができる。なお、500nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ぺリレン系色素としては、例えば、N,N’-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ジメチルペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ジエチルペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-エトキシフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド、N,N’-ビス(4-クロロフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミド等が挙げられるが、N,N’-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミドが特に好ましい。
このようなぺリレン系色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が400nm以上800nm以下の光を吸収することができる。なお、600nm以上780nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ポリメチン色素としては、ストレプトシアニンまたは開鎖シアニン、ヘミシアニン、閉鎖シアニン、メロシアニン等が挙げられる。
このようなポリメチン色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が400nm以上700nm以下の光を吸収することができる。なお、450nm以上550nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
ポルフィリン錯体色素としては、テトラアザポルフィリン金属錯体、テトラアリールポルフィリン、オクタエチルポルフィリン等が挙げられる。
このようなポルフィリン錯体色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が500nm以上700nm以下の光を吸収することができる。なお、550nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
フタロシアニン色素としては、CoPc-4-スルホン酸ナトリウム塩、コバルトPcテトラカルボン酸、オクタヒドロキシNiPc等が挙げられる。
このようなフタロシアニン色素を配合することにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が550nm以上750nm以下の光を吸収することができる。なお、550nm以上600nm以下の波長域に吸収ピークを有しているのが好ましい。
以上のような光吸収剤を配合することにより、特定の波長域の光を吸収することができる。よって、例えば、使用者は、装着状態において、物や人の輪郭をはっきりと認識することができ、安全性を高めることができる。
特定波長吸収層11中の光吸収剤(各光吸収剤の合計)の含有量は、0.001wt%以上5wt%以下であるのが好ましく、0.003wt%以上4wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。含有量が少なすぎると、光吸収剤としての効果が十分に得られないおそれがある。一方、含有量が多すぎると、光吸収剤が凝集し易くなる傾向を示す。
また、特定波長吸収層11における光吸収剤(各光吸収剤の合計)の坪量は、0.05mg/m2以上500mg/m2以下であるのが好ましく、1mg/m2以上100mg/m2以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、紫外線(波長域が100nm以上420nm以下の光)を吸収するものである。これにより、使用者の目に紫外線が照射されるのを緩和することができ、使用者の目を保護することができる。さらに、光吸収剤が紫外線により劣化するのを防止することができる。すなわち、紫外線吸収剤は、光吸収剤の劣化を防止する劣化防止剤として機能する。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、トリアジン系化合物が好ましく用いられる。これにより、特定波長吸収層11(ポリカーボネートおよび光吸収剤)の紫外線による劣化を防止または抑制することができ、光学シート1の耐候性を高めることができる。
トリアジン系化合物としては、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物や2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)、「アデカスタブLA-F70」(ADEKA製)等が挙げられる。
特定波長吸収層11が、上述したような100nm以上420nm以下の波長域の光を吸収する紫外線吸収剤をさらに含むことにより、特定波長吸収層11に入射する光のうち、波長が100nm以上420nm以下の光を吸収することができる。これにより、特定波長吸収層11(ポリカーボネートおよび光吸収剤)の紫外線による劣化を防止または抑制することができ、光学シート1の耐候性を高めることができる。
特定波長吸収層11中の紫外線吸収剤の含有量は、0.05wt%以上8wt%以下であるのが好ましく、0.07wt%以上6wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。含有量が少なすぎると、紫外線吸収剤としての効果が十分に得られないおそれがある。一方、含有量が多すぎると、紫外線吸収剤が凝集し易くなる傾向を示す。
また、特定波長吸収層11における紫外線吸収剤の坪量は、0.01g/m2以上100g/m2以下であるのが好ましく、0.1g/m2以上10g/m2以下であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
このような特定波長吸収層11の厚さは、特に限定されないが、0.05mm以上1.5mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上0.7mm以下であるのがより好ましい。これにより、取扱い性を高めることができるとともに、光学部品全体として無駄に厚くなるのを防止することができる。
また、特定波長吸収層11は、延伸して製造されたものであってもよく、延伸せずに製造されたものであってもよいが、その延伸度が10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。これにより、延伸時に色ムラ、光吸収剤のムラ、紫外線吸収剤のムラが生じるのを防止または抑制することができる。
また、ポリカーボネートの融点をt1とし、光吸収剤の融点をt2としたとき、t1<t2を満足するのが好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと光吸収剤とを混合する際、光吸収剤が熱により変質または変色するのを防止することができる。
また、ポリカーボネートの融点をt1とし、紫外線吸収剤の融点をt3としたとき、t1<t3を満足するのが好ましい。これにより、溶融状態のポリカーボネートと紫外線吸収剤とを混合する際、紫外線吸収剤が熱により変質または変色するのを防止することができる。
なお、ポリカーボネートの融点t1は、250℃以上400℃以下であるのが好ましく、270℃以上350℃以下であるのがより好ましい。
光吸収剤の融点t2は、300℃以上400℃以下であるのが好ましく、330℃以上360℃以下であるのがより好ましい。また、紫外線吸収剤の融点t3は、310℃以上370℃以下であるのが好ましく、340℃以上360℃以下であるのがより好ましい。融点t1~t3を上記数値範囲とすることにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
なお、特定波長吸収層11には、上記で挙げた色素とは異なる色素が含まれていてもよい。この色素としては、特に限定されないが、例えば、顔料、染料等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン等のアゾ系顔料、アントラピリミジンイエロー、アントラキノニルレッド等のアントラキノン系顔料、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケルジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料、ペリノンオレンジ等のペリノン系顔料、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料、ジケトピロロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料のような有機顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等の炭素系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩系顔料、カドミウムイエロー、カドミウムリトポンイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリトポンオレンジ、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッド、硫化等の硫化物系顔料、オーカー、チタンイエロー、チタンバリウムニッケルイエロー、べんがら、鉛丹、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック等の酸化物系顔料、ビリジアン等の水酸化物系顔料、紺青等のフェロシアン化物系顔料、群青等のケイ酸塩系顔料、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等のリン酸塩系顔料、その他(例えば硫化カドミウム、セレン化カドミウム等)のような無機顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
染料としては、特に限定されないが、例えば、金属錯体色素、シアン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素、テトラアゾポルフィリン化合物等のポルフィリン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さて、光学シート1では、前述したような光吸収剤を配合することにより、特定の波長域の光を吸収することができ、使用者は、装着状態において、物や人の輪郭をはっきりと認識することができ、安全性を高めることができる。
また、光吸収剤によって吸収する光の波長域を調整することによって、所定の色の光を使用者に対して強調することができる。特に、緑色の光(例えば、500nm以上570nm以下の波長域の光)を使用者に強調することにより、樹脂・芝生などの緑色の彩度を高めるのとともに、明るい視界を確保することができる。
従来では、緑色の光以外の波長域の光を吸収する光吸収剤を単に配合することによって、緑色の光を強調させている。しかしながら、緑色の光以外の波長域の光を吸収する光吸収剤が多すぎると、緑色の光以外の波長域の光の透過率が低すぎて、緑色の光が強調され過ぎる可能性がある。その結果、色の識別が困難になることがある。また、緑色の光以外の波長域の光を吸収する光吸収剤が少なすぎると、緑色の光を強調させるという効果が十分に得られないことがある。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ね、特定波長吸収層11を下記のような構成とすることにより、上記問題を解決するうえで有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、このことについて説明する。
図7は、横軸が波長[nm]、縦軸が透過率[%]で表される特定波長吸収層11(光吸収層)の光吸収スペクトルを示すグラフである。なお、縦軸の透過率は、光の吸収率と相関性があるものとし、光吸収率が大きければ透過率は小さくなり、光吸収率が小さければ透過率は大きくなることとする。
図7に示すように、特定波長吸収層11の光吸収スペクトルは、第1ピークPaと、第2ピークPbとを有する曲線で表される。
第1ピークPaは、575nm以上620nm以下の間に吸収率のピーク波長P1を有する。一方、第2ピークPbは、630nm以上730nm以下の間に吸収率のピーク波長P2を有する。
また、ピーク波長P1における光の透過率T1[%]と、ピーク波長P2における光の透過率T2[%]とは、T1>1.5×T2なる関係を満足する。
そして、第1ピークPaにおける半値幅W1[nm]と、第2ピークPbにおける半値幅W2[nm]とは、W1<W2なる関係を満足する。
なお、第1ピークPaにおける半値幅は、次のように定義される。まず、ピーク波長P1から2nm刻みで、ピーク波長P1の両サイドにおいて、外側に向って吸光度を測定していき、吸光度の変化が0.005以下になる最初の波長(中心より30nm以上遠い)を2つ検出し、これらのうち透過率が高い方の波長をボトム波長とする。そして、ボトム波長の透過率とピーク波長P1の透過率との差の半分の値のときの、第1ピークPaの幅を第1ピークPaにおける半値幅とする。
第2ピークPbにおける半値幅は、上記と同様にして次のように定義される。まず、ピーク波長P2から2nm刻みで、ピーク波長P2の両サイドにおいて、外側に向って吸光度を測定していき、吸光度の変化が0.005以下になる最初の波長(中心より10nm以上遠い)を2つ検出し、これらのうち透過率が高い方の波長をボトム波長とする。そして、ボトム波長の透過率とピーク波長P2の透過率との差の半分の値のときの、第2ピークPbの幅を第2ピークPbにおける半値幅とする。
このような構成とすることにより、緑の補色である赤色の波長域である725nm付近を局所的に吸収することができる。また、色を極端な緑にしないために、580nm付近を局所的に吸収させて若干の赤みを足すことで、色味をナチュラルな緑色とすることができる。その結果、緑色の光を確実に強調することができるとともに、緑色以外の色の識別を行うことができる。さらに、眼鏡規格「ANSI Color Limit」に不適合にならないナチュラルな緑色のレンズを実現することができる。
ピーク波長P1が短すぎると、緑色光を吸収してしまい、光学シート1(光学部品10)で、緑色を強調する効果を得られなくなる。一方、ピーク波長P1が長すぎると、a値が-14以下となり色目が極端に緑色に寄り、光学シート1(光学部品10)で、緑以外の色を識別することが難しくなる。
ピーク波長P2が短すぎると、赤色光を吸収できないため、光学シート1(光学部品10)で、緑色を強調する効果を得られなくなる。ピーク波長P2が長すぎても、赤色光を吸収できないため、緑色を強調できない。
なお、T1≦1.5×T2であった場合、575nm以上620nm以下の光の透過率が低すぎて、波長域が575nm以上620nm以下の光の識別を正確に行えないことがあったり、波長域が630nm以上730nm以下の光の透過率が高すぎて緑色の光を強調するという効果が十分に得られない可能性が有る。また、黄色光の吸収が強くなるため、b値が+4以上になり、レンズが青味を帯びてしまう。
また、W1>W2であった場合、光学シート1(光学部品10)が緑色光を吸収するため、緑色を強調することが難しくなる。
また、ピーク波長P1における光の透過率T1は、20%以上60%以下であるのが好ましく、25%以上40%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
また、ピーク波長P2における光の透過率T2は、0%以上20%以下であるのが好ましく、0%以上10%以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
また、半値幅W1[nm]は、5nm以上50nm以下であるのが好ましく、15nm以上25nm以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
また、半値幅W2[nm]は、20nm以上80nm以下であるのが好ましく、30nm以上60nm以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に得ることができる。
以上説明したような光吸収スペクトルは、例えば、光吸収剤の種類、含有量を調整することにより得ることができる。
第1ピークPaの形成に寄与する光吸収剤を第1光吸収剤とし、第2ピークPbの形成に寄与する光吸収剤を第2光吸収剤としたとき、第1光吸収剤と第2光吸収剤とは、それぞれ、前述したキノリン系色素、アントラキノン系色素、ぺリレン系色素、ポリメチン色素、ポルフィリン錯体色素、フタロシアニン色素のうちの少なくとも一種であり、これらの好ましい組み合わせ、含有量は以下の通りである。
第1光吸収剤は、ポルフィリン錯体色素であり、第2光吸収剤は、フタロシアニン色素であるのが好ましい。また、この場合、第1光吸収剤の特定波長吸収層11中の含有量Aと、第2光吸収剤の特定波長吸収層11中の含有量Bとの比A/Bは、0.05以上2以下であるのが好ましく、0.1以上1以下であるのがより好ましい。これにより、特定波長吸収層11を、上記で説明したような光吸収スペクトルを有するものとすることができる。
また、特定波長吸収層11中の第1光吸収剤の含有量は、0.0001wt%以上1wt%以下であり、特定波長吸収層11中の第2光吸収剤の含有量は、0.0001wt%以上1wt%以下であるのが好ましい。これにより、上記のような光吸収スペクトルを有する特定波長吸収層11を得ることができる。
次に、光学シートの製造方法および光学部品の製造方法について説明する。以下では、押出法を用いて光学シートを製造する場合を一例に説明する。
(光学シートの製造方法)
まず、本製造方法に用いる光学シート製造装置について説明する。
図3は、図1に示す光学シートを製造する光学シート製造装置を模式的に示した側面図である。図4は、図1に示す光学部品を製造する光学部品製造装置を模式的に示した断面図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図3に示す光学シート製造装置100は、シート供給部200と、シート成形部300とを有している。
シート供給部200は、本実施形態では、押出機210と、押出機210の溶融樹脂吐出部に配管を介して接続されたTダイ220とで構成されている。このTダイ220により、溶融状態または軟化状態の帯状のシート1’がシート成形部300に供給される。
Tダイ220は、押出法で溶融状態または軟化状態のシート1’を帯状のシートとした状態で押し出す押出成形部である。Tダイ220には、前述した光学シート1を構成する構成材料が溶融状態で装填されており、この溶融状態の材料をTダイ220から押し出すことで、帯状をなすシート1’が連続的に送り出される。
シート成形部300は、タッチロール310と、冷却ロール320と、後段冷却ロール330とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、冷却されることで、連続的に送り出されるようになっている。このシート成形部300に、シート1’を連続的に送り込むことにより、シート1’の表面が平坦化されるとともに、シート1’が所望の厚さに設定されて冷却される。そして、この冷却されたシート1’を所定の長さに切断することにより、光学シート1が得られる。
以上のような光学シート製造装置100を用いた光学シートの製造方法により、本実施形態の光学シートが製造される。
光学シートの製造は、押出工程と、成形工程と、冷却工程とを有している。
まず、帯状をなす溶融状態または軟化状態のシート1’を押し出す(押出工程)。この押出工程では、押出機210に、光学シート1の構成材料(ポリカーボネート、光吸収剤および紫外線吸収剤等)が装填される。また、光学シート1の構成材料は、押出機210内において、溶融または軟化した状態となっている。ここで、前述したように、本発明では、ポリカーボネートは、粘度平均分子量Mvが20000以上30000以下のものであるため、ポリカーボネート、光吸収剤および紫外線吸収剤が十分に混合された状態となる。そして、この十分に混合された状態でこれらを押し出すことにより、後述する成形工程および冷却工程を経て得られる光学シート1では、光吸収剤および紫外線吸収剤等が過剰に凝集してしまうのを防止することができる。
次に、シート1’の表面を平坦化するとともに、シート1’を所定の厚さに設定する(成形工程)。本工程は、タッチロール310と、冷却ロール320との間で行われる。
次に、シート1’の表面を冷却する(冷却工程)。本工程は、冷却ロール320と、後段冷却ロール330との間で行われる。
以上の工程を経て、光学シート1を得ることができる。次に、光学部品の製造方法について説明する。
(光学部品の製造方法)
まず、本製造方法に用いる光学部品製造装置について説明する。
図4に示す光学部品製造装置400は、樹脂供給部500と、金型600とを有している。樹脂供給部500には、前述したポリカーボネートが充填されている。金型600は、キャビティー610と、キャビティー610の内外を連通する供給口620と、を有する。また、金型600は、上部材630と下部材640とで構成され、これらを組立てた組立状態において、光学部品製造装置400を画成する金型600が構成される。
以上のような光学部品製造装置400を用いた光学部品の製造方法により、本実施形態の光学部品が製造される。
光学部品の製造方法は、光学シート配置工程と、レンズ材料供給工程とを有している。
まず、上部材630と下部材640とを分解した状態において、下部材640の底面641に光学シート1を配置する(光学シート配置工程)。なお、底面641は、湾曲凹面となっており、これにより、レンズ4に湾曲面を形成することができる。また、光学シート1は、可撓性を有しているため、底面641の形状に倣って配置される。
次いで、上部材630と下部材640とを組立状態とし、供給口620を介して、溶融または軟化した状態のレンズ材料を流し込む(レンズ材料供給工程)。そして、溶融または軟化した状態のレンズ材料を冷却することにより、光学シート1とレンズとが積層された積層体を得ることができる。
なお、前記では、いわゆるシートインサート法を一例に挙げて説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、成形されたレンズに接着剤を介して光学シート1を積層する構成であってもよい。
<第2実施形態>
図6は、本発明の光学シート(第2実施形態)を備える光学部品の断面図である。
以下、この図を参照して本発明の光学シートおよび光学部品の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、偏光膜を有すること以外は、前記第1実施形態と同様である。
(偏光膜)
図6に示すように、光学シート1Aは、偏光膜12(偏光層)と、接着剤層13とをさらに有している。偏光膜12は、接着剤層13を介して特定波長吸収層11に積層されている。図示の構成では、偏光膜12は、レンズ4側に配置されている。
偏光膜12は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す機能を有している。これにより、光学シート1を介して目に入射する入射光は、偏光されたものとなる。
偏光膜12の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜12の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
このような偏光膜12の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
これらの中でも、偏光膜12は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜12は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光機能に優れたものとなる。
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシドブラックなどが挙げられる。
この偏光膜12の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
接着剤層13を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。
中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、接着剤層13の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとすることができる。
このような本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、さらに、偏光機能を有するものとなる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明の光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
また、本発明の光学シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
より具体的には、例えば、本発明の光学シートは、表面を保護する保護層や、中間層、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.光学シートの検討
1-1.光学シートの作成
[実施例1]
[1]まず、100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、「ユーピロン E2000FN E5100」)と、0.010質量部の光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDG-005」)と、0.027質量部の光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDR-005」)と、0.007質量部の光吸収剤(山田化学工業株式会社製「FDG-001」)と、0.400質量部の紫外線吸収剤(アデカ社製、「アデカスタブLA-31G」)を撹拌・混合することにより、光学シート形成材料を用意した。
[2]次に、光学シート形成材料を、図3に示す光学シート製造装置100の押出機210に収納、溶融し、Tダイ220より押出し成形を行い、シート材を得た。そして、該シート材をシート成形部300で冷却、成形し、平均厚さ0.3mm、平面視で500mm×500mmの矩形状に切り出し、特定波長吸収層を有する光学シートを作成した。
なお、得られた特定波長吸収層の光吸収スペクトルは、ピーク波長P1が584nmであり、ピーク波長P2が728nmであった。
なお、得られたシートをV670(日本分光株式会社製)で測定した結果、C光源視野角2°での色相a値が-9.53であり、色相b値が-1.67であった。
また、得られた特定波長吸収層の光吸収スペクトルは、ピーク波長P1における光の透過率T1[%]と、ピーク波長P2における光の透過率T2[%]とは、T1>1.5×T2なる関係を満足し、かつ、第1ピークにおける半値幅W1[nm]と、第2ピークにおける半値幅W2[nm]とは、W1<W2なる関係を満足するものであった。
また、ポリカーボネートの粘度平均分子量Mvは、27000であり、融点をt1は、250℃であり、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレートが5.3g/10minであり、アクアトラック3E(ブラベンダー社製)にて測定した吸水率が、0.05%であった。
[実施例2]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2の光学シートを得た。
[実施例3]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例3の光学シートを得た。
[実施例4]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例4の光学シートを得た。
[実施例5]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例5の光学シートを得た。
[実施例6]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例6の光学シートを得た。
[実施例7]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例7の光学シートを得た。
[比較例1]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例1の光学性層を得た。
[比較例2]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例2の光学シートを得た。
[比較例3]
光学シートの構成を表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例3の光学シートを得た。
なお、表1中、a1が、ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、「E2000FN E5100」)を示し、a2が、ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製、「H3000」)を示し、a3が、ポリカーボネート(住化ポリカーボネート社製「200-3NAT」)を示し、a4が、ポリカーネート(三菱瓦斯化学社製、「S2000」)を示し、a5が、ポリカーボネート(EG社製「1300-03」)を示している。
また、表1中、b1が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDG-005」)を示し、b2が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDR-005」)を示し、b3が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDG-001」)を示し、b4が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDR-001」)を示し、b5が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDR-002」)を示し、b6が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDG-004」)を示し、b7が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDB-006」)を示し、b8が、光吸収剤(山田化学工業株式会社製、「FDG-002」)を示している。
また、表1中、cが、紫外線吸収剤(アデカ社製、「アデカスタブLA-31G」)を示している。
1-2.評価
各実施例および各比較例の光学シートを、以下の方法で評価した。
(緑色強調性評価)
上記のように製造した光学シートを通して緑色造形物の写真を撮り、この写真を10人にそれぞれ緑色強調の効果があるかを確認した。
A:10人中10人に効果あり。
B:10人中6~9人に効果あり。
C:10人中2~5人に効果あり。
D:10人中1人に効果あり。
(凝集性評価)
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、「VHX-1000」)を用いて、観察を行い、凝集物の大きさを測定し、次のように評価した。
A:凝集物の大きさが0.05mm2未満。
B:凝集物の大きさが0.05mm2以上0.1mm2未満。
C:凝集物の大きさが0.1mm2以上0.5mm2未満。
D:凝集物の大きさが0.5mm2以上。
(強度評価)
ISO 179-1、ISO179-2に準拠して、シャルピー衝撃強さを測定し、次のように評価した。
A:80KJ/m2以上。
B:50KJ/m2以上80KJ/m2未満。
C:25KJ/m2以上50KJ/m2未満。
D:25KJ/m2未満。
(耐候性評価)
キセノンランプ(7.5kw、出力:1.728MJ/m2)(光源のフィルタ:デイライトフィルタ、放射照度:広帯域(300~400nm)、60±2W/m2)を8時間照射し、黄変度(ΔYI)を次のように評価した。
A:ΔYIが1.0未満で外観の変化なし。
B:ΔYIが1.0以上2.0未満で外観変化が少し見られる。
C:ΔYIが2.0以上3.0未満で外観変化が見られる。
D:ΔYIが3.0以上で外観変化が著しく見られる。
(色識別性評価)
上記のように製造した光学シートを通して造形物の写真を撮り、この写真を10人にそれぞれ造形物の色を正しく識別できるかを確認した。
A:10人中10人が識別できた。
B:10人中6~9人が識別できた。
C:10人中2~5人が識別できた。
D:10人中1人が識別できた。
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光学シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
表1に示したように、各実施例における光学シートでは、各比較例以上に緑色を強調することができ、各比較例に対して満足のいく結果となった。