以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施形態1〕
本発明を適用可能な実施形態1の撮像装置について説明する。図1は実施形態1の撮像装置である。
撮像装置1はレンズユニット10とセンサーユニット20を有する。レンズユニット10とセンサーユニット20は、接合されており、一体化されている。
レンズユニット10は、撮像レンズ11と光学フィルター12と開口絞り13からなる撮像光学系である。撮像レンズ11と光学フィルター12は、接合されており、一体化されている。センサーユニット20は、電子撮像素子21とカバーガラス22とスペーサ23を有する。スペーサ23は、電子撮像素子21とカバーガラス22とが所定の間隔になるように電子撮像素子21とカバーガラス22との間に配置されている。電子撮像素子21とカバーガラス22とスペーサ23は、接合されており、一体化されている。
撮像レンズ11の入射面111には屈折面が形成されており、撮像レンズ11の射出面112には回折面が形成されている。入射面111の有効範囲外113の上には遮光膜が塗布されており、開口絞り13が形成されている。射出面112の回折面は、平面ベースの回折面であり、平面を加工することによって形成された面である。
物体からの光束は、開口絞り13によって光束幅を制限され、撮像レンズの入射面111で屈折し、撮像レンズの射出面112で回折し、光学フィルター12及びカバーガラス22を透過して、電子撮像素子21の撮像面211上に導かれる。
本実施形態の撮像レンズ11は、所謂ウェハーレベル・オプティクスであり、製造技術上の困難性を回避しつつ大量生産を可能とし、低コストかつ超小型で良好な光学性能を有する。
具体的には、ウェハーとしての石英基板の両面を露光プロセスで加工し、一方の面に屈折面、他方の面に回折面を形成している。また、石英基板上に撮像レンズ11と同構成の撮像レンズを数千個の配置し、一度の製造工程で数千個の撮像レンズ11を製作可能として大量生産に適した製造方法を実現するものである。これにより、低コストかつ超小型なレンズを製造可能となる。
しかしながら、露光プロセスでは、加工可能なレンズ面のサグ量に限界があり、通常のレンズに用いるような曲面形状を加工することができない。
そこで、本実施形態では、サグ量が少ない光学面のみを用いることで、露光プロセスで製造可能な撮像レンズを実現し、低コストかつ超小型なレンズユニット(撮像光学系)、ならびにそのレンズユニットを用いた撮像装置を提供するものである。
以下の表1に本実施形態の撮像装置の構成を示す。
撮像レンズ11の入射面111は、物体側に凸形状を向けた屈折面であり、正のパワーを有している。また、面形状は撮像光学系(撮影レンズ)の光軸110を中心とした回転対称非球面としており、以下の式(1)式で表現される。
ここで、zは非球面形状の光軸方向のサグ量(mm)、cは光軸上における曲率(1/mm)、rは半径方向の光軸からの間隔(mm)である。A,B,C,D,E,F,Gはそれぞれ4次項、6次項、8次項、10次項、12次項、14次項、16次項の係数である。また、非球面形状の表現式(1)において、第1項がベース球面のサグ量を表現しており、非球面におけるベース球面の曲率半径はr=1/cである。また、第2項以降はベース球面上に付与した非球面のサグ量を表現している。
本実施形態の撮像レンズ11では、石英基板の一面を掘り込んで入射面111の曲面部を形成している。入射面111の有効範囲外は石英基板を掘り込まず元々の平面形状を残しておき、平面部に遮光膜である酸化クロムを塗布して開口絞り13を形成している。これにより、本実施形態では、開口絞り13から屈折面111までの距離L=0.000mmであり、レンズユニットの焦点距離f=1.2mmで、L/f=0.000あることから以下の式(2)を満足する構成としている。
|L/f|≦0.1 ・・・(2)
このように、開口絞り13の近傍に正パワーを有するレンズ面を配置することで、レンズユニット11の集光力として必要な正パワーと比較的明るい絞り値F/2.8を確保した上で、レンズ面のサグ量を小さく抑えることができる。本実施形態の入射面111のサグ量は40μmであり、露光プロセスで加工できる100μm以下のサグ量に抑えることができた。さらには、開口絞り13近傍に物体側に凸面を向けたレンズ面を配置することで、非点収差を抑えて周辺画角での光学性能を向上させることができる。
また、入射面111を非球面の一種のコーニック面としている。コーニック係数を負に設定することで、光軸上から周辺部へ掛けて徐々に曲率が緩くなる非球面形状としている。これにより、球面収差を補正するだけでなく、ベース球面に対してサグ量を小さくする効果を奏する。
一方、撮像レンズ11の射出面112には回折面を形成している。露光プロセスでは、微細形状の加工は比較的容易に形成できるため、回折格子の製造を得意とする。特に、回折格子の格子形状を階段状(バイナリ格子形状)に構成したバイナリ・オプティクス(バイナリ格子)は、露光プロセスで製造し易く、階段の段数を8段以上設ければ回折効率も高い。そのため、本実施形態における回折面にはバイナリ・オプティクスを形成している。
本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面について、図2を用いて説明する。
図2(a)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面における位相関数を示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に光軸上を基準とした位相差(λ)としている。位相関数は、光軸から離れるに従ってマイナス方向に徐々に大きくなり、光軸上から周辺部へ向う途中で変曲点を設けて、更に光軸から離れるに従ってマイナスが小さくなるように設定している。なお、マイナス方向とは位相が早くなることを意味しており、光を進めた状態である。
図2(b)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面のパワーを示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に回折パワーとしている。図2(b)に示したように光軸上の回折パワーには正のパワーを持たせている。回折面はアッベ数νd=-3.45と強力な色補正効果を有する。また、アッベ数の符号が負であることから回折面に正パワーを付与することで、屈折面の正パワーで発生する色収差を補正することができる。このように、回折面によって撮像レンズ11の光軸上での軸上色収差を補正している。
また、表1に示したように、屈折面111のパワーφr=0.716に対して、回折面112のパワーφb=0.190であり、屈折パワーに対する回折パワーの比φb/φr=0.266であって、以下の式(3)を満足する。
0.2≦φb/φr≦0.6…(3)
これにより、回折パワーで屈折パワーの一部を分担して屈折面の曲率半径を大きくすることにより、屈折面のサグ量を小さく抑えている。
また、光軸上から周辺部へ向うに連れて、回折パワーを正のパワーからゼロ、そして負のパワーへと、回折パワーをマイナスの方向へ単調変化させるように構成している。これにより、光軸上は軸上色収差を補正して良好な結像性能を実現するとともに、光軸から遠く離れた位置においては、回折パワーを負のパワーとすることで物体側に倒れた像面湾曲を補正している。
図3には本実施形態のレンズユニット11における縦収差図を示す。
C線、d線、F線のピント面はともに撮像面近傍に集めており、軸上色収差や球面収差を良好に補正している。
サジタルの像面湾曲、メリジオナルの像面湾曲も0.10mm以内に抑えており良好に補正しており、回折パワーにおける像面湾曲補正が良好に実施していることが分かる。
回折パワーで像面湾曲を補正すると、C線のような長波長側では像面湾曲の補正量が大きく、F線のような短波長側では像面湾曲の補正量が小さくなり、像面湾曲に色収差が発生し易くなる。
そこで、式(3)の構成を取ることによって像面湾曲の色収差と軸上色収差とを相殺して、各色の像面位置が撮像面と一致し易くなるように構成している。
具体的には、3次収差係数では、非点収差係数をIII、ペッツバール像面をPとしたとき、メリジオナル像面湾曲ΔM=3×III+P、サジタル像面湾曲はΔS=III+Pと表現される。メリジオナル像面湾曲はサジタル像面湾曲に対してペッツバール像面Pからの移動量が大きい。図3でもサジタル像面湾曲と比べてメリジオナル像面湾曲が像側(プラス側)に移動しているのが分かる。また、メリジオナル像面湾曲、サジタル像面湾曲ともに色収差が発生している。回折パワーでの像面湾曲の変動量が大きくなる長波長側は、他の波長よりもプラス側へ移動し、メリジオナル像面ではプラス側へ湾曲して過補正の状態にあり、サジタル像面湾曲ではマイナス側の湾曲量が小さく抑えられている。一方で、回折パワーでの像面湾曲の変動量が小さくなる短波長側は、他の波長よりもマイナス側にあり、メリジオナル像面、サジタル像面湾曲共に補正不足である。
この状態に対して、式(3)を満足する構成にすると、回折パワーによる軸上色収差補正を過補正にすることができる。その結果、長波長側のピント位置を物体側に、短波長側のピント位置を像側に設定した状態と、正のパワーの屈折面で発生する軸上色収差とは逆向きの配置にできる。
長波長側では、プラス側へ湾曲したメリジオナル像面に対して、光軸上のピント位置をマイナス側に配置することで、中間像高において像面を撮像面と一致させる点を作り、長波長側のメリジオナル像面位置の撮像面からのズレ量を小さく抑えることができる。
短波長側では、マイナス側に残存する両方の像面湾曲に対して、光軸上のピント位置をプラス側にずらしておくことで、中間像高にピント位置を撮像面と一致させる点を作り、短波長側の像面位置の撮像面からのずれ量を小さく抑えることができる。
ゆえに、式(3)の構成を取ることによって像面湾曲の色収差と軸上色収差とを相殺して、各色の像面位置が撮像面と一致し易くなるように構成している。
図2(c)には、本実施形態の回折面の回折格子形状を示す。
図2(c)の横軸は光軸からの距離(mm)、縦軸は格子高さ(μm)である。本実施形態の回折格子は、各格子の間を連続的に傾斜させたキノフォームではなく、階段形状に形成したバイナリ格子である。したがって、本実施形態の回折格子は、図2(c)に示したバイナリ格子形状を撮像光学系の光軸の周りに回転させた形状を有している。具体的には、屈折率Nd=1.45844の石英基板に、16段のバイナリ格子で構成した格子高さ1.282μmの回折格子を露光プロセスにより直接掘り込んで、回折格子を形成している。回折格子をバイナリ格子とすることで、4回の露光で効率的に回折格子を形成でき、露光プロセスに適した構成としている。
更には、図2(a)に示した位相関数が光軸と周辺部との間で変曲点を持たせており、図2(c)の回折格子形状も位相関数の変曲点を境に回折格子のブレーズ角が反転する。この場合、キノフォームでは研削機のバイトの刃先の向きを反転させる必要があるなど加工が困難であった。バイナリ格子では回折格子のブレーズ角に関係なく同じ条件で加工が可能なため、光軸から周辺部へ掛けて位相関数の変曲点を有するような複雑な回折格子においても露光プロセスにより容易に製作できるメリットもある。
このように本実施形態では、撮像レンズ11の入射面111を物体側に凸面を向けたレンズ面形状として開口絞り13の近傍に配置し、射出面112をベース平面に回折格子を形成した回折面とすることで、露光プロセスで製造可能な撮像レンズを実現している。
これにより、低コストで超小型なカメラモジュールを提供することができる。
また、本実施形態の光学フィルター12は赤外カットフィルターであり、透過する光束のうち、可視光~近赤外に相当する波長700nm~1100nmの透過率を1%以下に低減する機能を有する。この光学フィルター12は、撮像レンズ11とカバーガラス22と間隔を決めるスペーサとしての機能も兼ねており、撮像レンズ11用のスペーサを不要として部品点数削減により低コスト化するメリットもある。光学フィルター12や本実施形態では用いていない撮像レンズ11用のスペーサ等に対して、撮像レンズ11を当接・接合して位置決めするため、撮像レンズ11の射出面は平面形状のベース面に回折格子を掘り込んだ回折面とすることが好ましい。
〔実施形態2〕
本発明を適用可能な実施形態2の撮像装置について説明する。
本実施形態の撮像装置と実施形態1の撮像装置との相違点は、レンズユニットやセンサーユニットの構成を変更した点である。
図4に本実施形態の撮像装置を示す。
本実施形態のレンズユニット10は、撮像レンズ11と開口絞り13のみからなる撮像光学系で構成され、センサーユニット20と接合して一体化した撮像装置を構成している。
本実施形態の撮像レンズ11の入射面111は物体側に凸面を向けた正パワーの屈折面とし、入射面111の有効領域外に遮光膜を塗布することで開口絞り13を形成している。撮像レンズ11の射出面112は、石英基板を掘り込んで形成したバイナリ格子を形成した回折面としており、撮像レンズ11の射出面112をセンサーユニット20のカバーガラス22の入射面に当接させて接合している。
本実施形態の撮像装置の構成を以下の表2に示す。
本実施形態の撮像装置においても、開口絞り13から屈折面111までの距離L=0.030mmであり、レンズユニットの焦点距離f=1.1mmで、L/f=0.027あることから式(2)を満足する構成としている。
このように、開口絞り13の近傍に正パワーを有するレンズ面を配置することで、レンズユニット11の集光力として必要な正パワーと比較的明るい絞り値F/2.8を確保した上で、レンズ面のサグ量を小さく抑えることができる。本実施形態の入射面111のサグ量は70μmであり、露光プロセスで加工できる100μm以下のサグ量に抑えることができた。さらには、開口絞り13近傍に物体側に凸面を向けたレンズ面を配置することで、非点収差を抑えて周辺画角での光学性能を向上させることができる。
また、入射面111を非球面としている。
図5に、屈折面111の非球面における非球面量を示す。
式(1)の第2項以降がベース球面上に付与した非球面のサグ量を表現している。
図5に示したように、光軸上から周辺部へ掛けて徐々にマイナスの方向(物体側)に変位する非球面形状としている。これにより、球面収差を補正するだけでなく、ベース球面に対してサグ量が小さくする効果を有する。
次に、図6を用いて本実施形態の回折面について説明する。
図6(a)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面における位相関数を示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に光軸上を基準とした位相差(λ)としている。位相関数は、光軸から離れるに従ってマイナス方向に徐々に大きくなり、光軸上から周辺部へ向う途中で変曲点を設けて、更に光軸から離れるに従ってマイナスが小さくなるように設定している。なお、マイナス方向とは位相が早くなることを意味しており、光を進めた状態である。
図6(b)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面のパワーを示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に回折パワーとしている。図6(b)に示したように光軸上の回折パワーには正のパワーを持たせている。アッベ数の符号が負であることから回折面に正パワーを付与することで、屈折面の正パワーで発生する色収差を補正することができる。このように、回折面によって撮像レンズ11の光軸上での軸上色収差を補正している。
また、表2に示したように、屈折面111のパワーφr=0.723に対して、回折面112のパワーφb=0.385であり、屈折パワーに対する回折パワーの比φb/φr=0.533であって、式(3)を満足する。
これにより、回折パワーで屈折パワーの一部を分担して屈折面の曲率半径を大きくすることにより、屈折面のサグ量を小さく抑えている。
また、光軸上から周辺部へ向うに連れて、回折パワーを正のパワーからゼロ、そして負のパワーへと、回折パワーをマイナスの方向へ単調変化させるように構成している。これにより、光軸上は軸上色収差を補正して良好な結像性能を実現するとともに、光軸から遠く離れた位置においては、回折パワーを負のパワーとすることで物体側に倒れた像面湾曲を補正している。
図7には本実施形態のレンズユニット11における縦収差図を示す。
C線、d線、F線のピント面はともに撮像面近傍に集めており、軸上色収差や球面収差を良好に補正している。
サジタルの像面湾曲、メリジオナルの像面湾曲も0.10mm以内に抑えており良好に補正しており、回折パワーにおける像面湾曲補正が良好に実施していることが分かる。
回折パワーで像面湾曲を補正すると、C線のような長波長側では像面湾曲の補正量が大きく、F線のような短波長側では像面湾曲の補正量が小さくなり、像面湾曲に色収差が発生し易くなる。
本実施形態においても、式(3)を満足する構成にすることで回折パワーによる軸上色収差補正が過補正とし、長波長側のピント位置をマイナス側(物体側)に、短波長側のピント位置をプラス側(像側)に設定した。さらに、長波長側では、プラス側へ湾曲したメリジオナル像面に対して、光軸上のピント位置をマイナス側に配置することにより、中間像高において像面を撮像面と一致させる点を作っている。その結果、長波長側のメリジオナル像面位置の撮像面からのズレ量を小さく抑えることができる。
短波長側では、マイナス側に残存するメリジオナル・サジタルの両方の像面湾曲に対して、光軸上のピント位置をプラス側にずらしておくことで、短波長側の像面位置の撮像面からのずれ量を小さく抑えることができる。
ゆえに、式(3)の構成を取ることによって像面湾曲の色収差と軸上色収差とを相殺して、各色の像面位置が撮像面と一致し易くなるように構成している。
図6(c)には、本実施形態の回折面の回折格子形状を示す。
図6(c)の横軸は光軸からの距離(mm)、縦軸は格子高さ(μm)である。本実施形態の回折格子形状もバイナリ格子としており、図6(c)に示した回折格子形状を光軸周りに回転させた形状を有している。屈折率Nd=1.45844の石英基板に、16段のバイナリ格子で構成した格子高さ1.282μmの回折格子を露光プロセスにより直接掘り込んで、回折格子を形成している。回折格子をバイナリ格子とすることで、4回の露光で効率的に回折格子を形成でき、露光プロセスに適した構成としている。
本実施形態の回折面においても、図6(a)に示したように位相関数が光軸と周辺部との間で変曲点を持たせており、図6(c)の回折格子形状も位相関数の変局点を境に回折格子のブレーズ角が反転する。しかし、本実施形態の回折面においてもバイナリ格子としているので露光プロセスにより容易に製作できる。
このように本実施形態では、撮像レンズ11の入射面111を物体側に凸面を向けたレンズ面形状として開口絞り13の近傍に配置し、射出面112をベース平面に回折格子を形成した回折面とすることで、露光プロセスで製造可能な撮像レンズを実現している。
これにより、低コストで超小型なカメラモジュールを提供することができる。
なお、本実施形態の撮像装置では、撮像レンズ11をセンサーユニット20のカバーガラス22に直接当接して接合している。すなわち、撮像レンズ11用のスペーサや、光学フィルター等の光学素子を用いること無く、撮像レンズ11とセンサーユニット20の撮像面211との間隔を位置決めしている。撮像レンズ11の肉厚はウェハーに用いられる石英基板の厚みであり、屈折面111や回折面112の加工前に予め石英基板の厚みを調整しておくことで、撮像レンズ11とセンサーユニット20の撮像面211との間隔を精度良く位置決めすることができる。これにより、部品点数削減による低コスト化を実現した撮像装置を提供することができる。
〔実施形態3〕
本発明を適用可能な実施形態3の撮像装置について説明する。
本実施形態の撮像装置と実施形態2の撮像装置との相違点は、レンズユニットやセンサーユニットの構成を変更した点である。
図8に本実施形態の撮像装置を示す。
本実施形態の撮像レンズ11の入射面111は物体側に凸面を向けた正パワーの屈折面としている。入射面111は非球面形状であるが、一定のサグ量毎に面形状を折り返すフレネル面で構成している。
図9にフレネル面のフレネル形状を示す。
図9中の横軸は光軸からの距離(mm)であり、縦軸はサグ量である。光軸上のサグ量はΔZ=0μmであり、光軸から離れるに従ってサグ量がプラス方向(像側)に大きくなるが、サグ量がΔZ=20μmとなったところでサグ量ΔZ=0μmまで屈折面の位置を戻している。それ以降、周辺部までサグ量がΔZ=20μmとなる度にサグ量ΔZ=0μmまで面の位置を戻すフレネル形状である。
フレネル形状を用いることで、屈折面のサグ量をΔZ=20μmと小さくすることができ、露光プロセスで屈折面を製造し易くしている。なお、サグ量ΔZに関しては、露光プロセスで加工できる100μm以下が好ましく、5μm≦ΔZ≦50μmの範囲に設定することがより好ましい。サグ量を小さくし過ぎると、フレネルゾーンの数が増えすぎて光束の集光状態が劣化する。フレネルゾーンの数は中心ゾーン+3個以下とするのが良い。本実施形態ではフレネルゾーンの数は中心ゾーン+1個と少なく抑えている。一方、サグ量を大きくし過ぎると露光プロセスにおける石英基板の掘り込み量が増えて製造に時間が掛かる。
このように、屈折面をフレネル面とすることで、露光プロセスで製造し易い撮像レンズ11を実現することができる。
撮像レンズ11の射出面112は、石英基板を掘り込んで形成したバイナリ格子を形成した回折面としており、撮像レンズ11の射出面112をセンサーユニット20のカバーガラス22の入射面に当接して接合している。
本実施形態の撮像装置の構成を以下の表3に示す。
本実施形態の撮像装置においても、開口絞り13から屈折面111までの距離L=0.000mmであり、レンズユニットの焦点距離f=1.2mmで、L/f=0.000あることから式(2)を満足する構成としている。
このように、開口絞り13の近傍に正パワーを有するレンズ面を配置することで、レンズユニット11の集光力として必要な正パワーと比較的明るい絞り値F/2.8を確保した上で、レンズ面のサグ量を小さく抑えることができる。本実施形態の入射面111のサグ量は70μmであり、露光プロセスで加工できる100μm以下のサグ量に抑えることができた。さらには、開口絞り13近傍に物体側に凸面を向けたレンズ面を配置することで、非点収差を抑えて周辺画角での光学性能を向上させることができる。
次に、図10を用いて本実施形態の回折面について説明する。
図10(a)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面における位相関数を示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に光軸上を基準とした位相差(λ)としている。位相関数は、光軸から離れるに従ってマイナス方向に徐々に大きくなり、光軸上から周辺部へ向う途中で変曲点を設けて、更に光軸から離れるに従ってマイナスが小さくなるように設定している。なお、マイナス方向とは位相が早くなることを意味しており、光を進めた状態である。
図10(b)には、本実施形態の撮像レンズ射出面の回折面のパワーを示しており、横軸に光軸からの距離(mm)、縦軸に回折パワーとしている。図10(b)に示したように光軸上の回折パワーには正のパワーを持たせている。アッベ数の符号が負であることから回折面に正パワーを付与することで、屈折面の正パワーで発生する色収差を補正することができる。このように、回折面によって撮像レンズ11の光軸上での軸上色収差を補正している。
また、表3に示したように、屈折面111のパワーφr=0.725に対して、回折面112のパワーφb=0.222であり、屈折パワーに対する回折パワーの比φb/φr=0.306であって、式(3)を満足する。
これにより、回折パワーで屈折パワーの一部を分担して屈折面の曲率半径を大きくすることにより、屈折面のサグ量を小さく抑えている。
また、光軸上から周辺部へ向うに連れて、回折パワーを正のパワーからゼロ、そして負のパワーへと、回折パワーをマイナスの方向へ単調変化させるように構成している。これにより、光軸上は軸上色収差を補正して良好な結像性能を実現するとともに、光軸から遠く離れた位置においては、回折パワーを負のパワーとすることで物体側に倒れた像面湾曲を補正している。
図11には本実施形態のレンズユニット11における縦収差図を示す。
C線、d線、F線のピント面はともに撮像面近傍に集めており、軸上色収差や球面収差を良好に補正している。
サジタルの像面湾曲、メリジオナルの像面湾曲も0.10mm以内に抑えており良好に補正しており、回折パワーにおける像面湾曲補正が良好に実施していることが分かる。
回折パワーで像面湾曲を補正すると、C線のような長波長側では像面湾曲の補正量が大きく、F線のような短波長側では像面湾曲の補正量が小さくなり、像面湾曲に色収差が発生し易くなる。
本実施形態においても、式(3)を満足する構成にすることで回折パワーによる軸上色収差補正が過補正とし、長波長側のピント位置を撮像面上に、短波長側のピント位置を撮像面よりも像側(プラス側)に設定した。短波長側では、マイナス側に残存するメリジオナル・サジタルの両方の像面湾曲に対して、光軸上のピント位置を撮像面よりも像側(プラス側)にずらしておくことで、短波長側の像面位置の撮像面からのずれ量を小さく抑えることができる。
ゆえに、式(3)の構成を取ることによって像面湾曲の色収差と軸上色収差とを相殺して、各色の像面位置が撮像面と一致し易くなるように構成している。
図10(c)には、本実施形態の回折面の回折格子形状を示す。
図10(c)の横軸は光軸からの距離(mm)、縦軸は格子高さ(μm)である。本実施形態の回折格子形状もバイナリ格子形状としており、図10(c)に示した回折格子形状を光軸周りに回転させた形状を有している。屈折率Nd=1.45844の石英基板に、16段のバイナリ格子で構成した格子高さ1.282μmの回折格子を露光プロセスにより直接掘り込んで、回折格子を形成している。回折格子をバイナリ格子とすることで、4回の露光で効率的に回折格子を形成でき、露光プロセスに適した構成としている。
本実施形態の回折面においても、図10(a)に示したように位相関数が光軸と周辺部との間で変曲点を持たせており、図10(c)の回折格子形状も位相関数の変曲点を境に回折格子のブレーズ角が反転する。しかし、本実施形態の回折面においてもバイナリ格子としているので露光プロセスにより容易に製作できる。
このように本実施形態では、撮像レンズ11の入射面111を物体側に凸面を向けたレンズ面形状として開口絞り13の近傍に配置し、射出面112をベース平面に回折格子を形成した回折面とすることで、露光プロセスで製造可能な撮像レンズを実現している。
これにより、低コストで超小型なカメラモジュールを提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。