[第一実施形態]
本発明の実施形態に係る複合スラブの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、複合スラブ1は、箱本体2、中間部材3,4及び封止体5で主に構成されている。複合スラブ1は、圧延工程又は鍛造工程等を施して薄くすることにより複層クラッド材を製造する際に用いられる部材である。つまり、複合スラブ1は、例えば、熱間圧延する際に、圧延ローラに挿入する部材である。複合スラブ1は、内部に中間部材3,4が収容されるとともに、箱本体2と封止体5とが接合されることで一体化(密閉)されている。なお、以下では「裏面」の反対側の面を「表面」として説明する。
箱本体2は、複合スラブ1のベースとなる部材であって、箱状を呈する。箱本体2は、底部11と、周壁部12とで構成されている。底部11は、矩形板状を呈する。周壁部12は、底部11の周縁から矩形枠状に立ち上がる部位である。底部11と周壁部12とで凹部13が形成されている。周壁部12には、壁厚方向に貫通する排気流路14が形成されている。排気流路14は、後記する真空引き工程を行う際に空気が流通する流路である。排気流路14の外側の端部には、真空引き用治具15が接続されている。真空引き用治具15は、後記する真空引き工程を行う際に真空引き装置に接続される。箱本体2の材料は特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金製である。
中間部材3,4は、矩形板状を呈する金属部材である。中間部材3,4は、図2に示すように、凹部13に収容される。中間部材3,4は、本実施形態では二枚としているが、一枚でもよいし、三枚以上であってもよい。中間部材3,4は、本実施形態ではいずれも銅又は銅合金製になっている。中間部材3,4は、本実施形態では同種の材料としているが、それぞれ異なる材料であってもよい。中間部材3,4の材料は、箱本体2及び封止体5の少なくとも一方とは異なる材料から適宜選択される。換言すると、本発明の中間部材は、箱本体2に一枚又は複数枚挿入されており、当該中間部材のうち少なくとも一枚は、箱本体2及び封止体5の少なくとも一方とは異なる材料にする。また、中間部材3,4の板厚は、本実施形態では同一としているが、異なる板厚であってもよい。
中間部材3,4の間には剥離剤(又は剥離部材)6が介設されている。剥離剤6は、例えば、剥離剤LBN(昭和電工株式会社製)を用いることができる。また、剥離部材として薄板状のアルミニウム合金A5083−Oを用いることができる。当該剥離部材は、2質量%以上のMgが含まれている。さらに、剥離部材として、表面及び裏面の少なくとも一方に陽極酸化処理が施された薄板状のアルミニウム又はアルミニウム合金部材を用いることができる。
剥離剤6又は剥離部材は、複合スラブ1を圧延又は鍛造した後、剥離剤6又は剥離部材を境に圧延後又は鍛造後の部材を分割(剥離)するために用いられる。剥離剤6及び剥離部材の材質、性質等は、中間部材3,4の材料や圧延条件、鍛造条件に応じて適宜選択すればよい。
封止体5は、矩形板状を呈する金属部材である。封止体5は、図2に示すように、凹部13に収容されるとともに、中間部材4の上方を覆う部材である。封止体5の表面5aと、周壁部12の周壁端面12aとは面一になっている。封止体5と箱本体2とは全周に亘って接合されている。接合方法は、溶接(TIG溶接、MIG溶接、レーザー溶接等)や摩擦攪拌接合等、密閉可能であれば特に制限されない。封止体5の材料は特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金製である。なお、箱本体2及び封止体5のように、中間部材3,4の周囲を覆う部材を「密閉用部材」とも言う。
次に、複合スラブの製造方法について説明する。本実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。
準備工程は、箱本体2、中間部材3,4、封止体5等を準備する工程である。箱本体2の周壁部12に、排気流路14に連通するように真空引き用治具15を予め接続しておく。
突合せ工程は、図2に示すように、中間部材3,4を箱本体2に収容するとともに、箱本体2と封止体5とを突き合わせる工程である。中間部材3,4は、凹部13内に概ね隙間なく配置される。封止体5の側面5cと、周壁部12の内側面12bとが突き合わされることにより突合せ部J1が形成される。封止体5の表面5aと、周壁部12の周壁端面12aとは面一になる。
真空引き工程は、箱本体2及び封止体5の内部を真空にする工程である。真空引き工程では、真空引き用治具15に図示しない真空引き装置を設置して行う。真空引き工程は、密閉工程を行う前に行ってもよいし、密閉工程の後に行ってもよいし、密閉工程の前から遮断工程を行うまで継続して行ってもよい。なお、真空引き工程は省略してもよい。
密閉工程は、図3〜5に示すように、箱本体2と封止体5とを接合して密閉する工程である。密閉工程では、箱本体2と封止体5とを密閉可能に接続できれば接合方法は問わないが、本実施形態では摩擦攪拌接合により密閉する。図4に示すように、密閉工程では、ショルダ部G1と、攪拌ピンG2とを備えた第一回転ツールGを用いる。密閉工程では、図5に示すように、突合せ部J1に設定した開始位置Sp1に右回転する第一回転ツールGを挿入し、突合せ部J1に沿って移動させる。第一回転ツールGの移動軌跡には塑性化領域W1が形成される。図4に示すように、密閉工程では、ショルダ部G1の下端面を周壁端面12a及び封止体5の表面5aにわずかに押し込み、かつ、攪拌ピンF2が中間部材4に接触しない状態で摩擦攪拌を行う。第一回転ツールGの挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態のように摩擦攪拌の際に、異種金属材料同士が混ざらないようにすることが好ましい。
図5に示すように、塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせて第一回転ツールGを一周させたら周壁端面12aに設定した終了位置Ep1で周壁端面12aから第一回転ツールGを離脱させる。
遮断工程は、図6,7に示すように、排気流路14の連通を遮断する工程である。本実施形態では、第二回転ツールFを用いて摩擦攪拌によって遮断する。第二回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。第二回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、第二回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、第二回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、箱本体2の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
遮断工程では、図6に示すように、周壁端面12aに設定した開始位置Sp2に右回転する第二回転ツールFを挿入し、排気流路14を挟んで開始位置Sp2の反対側に設定した終了位置Ep2まで第二回転ツールFを移動させる。つまり、排気流路14に対して直交するように第二回転ツールFを移動させる。図7に示すように、第二回転ツールFの挿入深さは、攪拌ピンF2のみが周壁部12と接触するように、つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で移動させる。また、遮断工程では、攪拌ピンF2が排気流路14に達するように第二回転ツールFの挿入深さを設定する。
なお、遮断工程は、密閉工程と同じ回転ツールを用いて行ってもよい。その場合は、密閉工程と遮断工程とを連続して行うことができる。また、遮断工程は、例えば、周壁部12を塑性変形させて排気流路14を潰して遮断してもよい。また、遮断工程は、排気流路14に充填剤又は充填部材を押入して排気流路14を遮断してもよい。
以上の工程によって、複合スラブ1が完成される。なお、遮断工程の後に、箱本体2及び封止体5の表面に残存するバリを除去するバリ除去工程を行ってもよい。
複合スラブ1が完成したら、複層クラッド材を成形するために圧延工程を行う。圧延工程は、圧延ロールを備えた圧延装置(図示省略)を用いて、複合スラブ1を圧延する。本実施形態に係る圧延工程では、温度を例えば約500℃に設定して熱間圧延を行う。これにより、箱本体2の底部11と中間部材3とが接合されるとともに、封止体5と中間部材4とが接合される。一方、中間部材3,4の間には、剥離剤6(又は剥離部材)が介設されているため、当該熱間圧延を行っても中間部材3,4同士は接合されない。熱間圧延の温度は、金属の材料に応じて適宜設定すればよいが、例えば、460〜600℃、好ましくは470〜550℃で行う。熱間圧延の温度は、本実施形態のように剥離剤6(又は剥離部材)を用いる場合は、熱間圧延によって箱本体2の底部11と中間部材3、及び、封止体5と中間部材4とがそれぞれ接合されるとともに、中間部材3,4同士は接合されない範囲で適宜設定される。
複合スラブ1が所望の薄さになったら、図8に示すように、中間部材3,4の間に塗付された剥離剤(図2の剥離剤6)を境に中間部材3,4を分割(剥離)する。これにより、銅又は銅合金部材とアルミニウム又はアルミニウム合金とで構成された複層クラッド材N1,N2を得ることができる。なお、圧延工程に代えて、複合スラブ1に対して鍛造工程を行うことで、複層クラッド材を成形してもよい。
以上説明した本実施形態に係る複合スラブの製造方法によれば、箱本体2と封止体5の内部に中間部材3,4を封入するため、密閉作業を容易に行うことができる。つまり、箱本体2に対する中間部材3,4及び封止体5の位置決めを容易に行うことができるため、摩擦攪拌接合も容易に行うことができる。また、密閉工程の方法は特に制限されないが、摩擦攪拌接合とすることで容易に接合することができる。
また、真空引き工程を行うことにより、内部が真空の複合スラブ1を形成することができる。これにより、圧延工程又は鍛造工程を行って複層クラッド材N1,N2を形成する際に、複層クラッド材N1,N2内に酸化皮膜が生成されるのを防ぐことができる。また、遮断工程を行うことで、複合スラブ1の真空状態を保持することができる。また、遮断工程を摩擦攪拌で行うことにより、排気流路14を容易に遮断することができる。
また、複合スラブ1の中間部材3,4の間に剥離剤6が介設されているため、圧延工程又は鍛造工程を行った後、中間部材3,4間で剥離することで銅又は銅合金と、アルミニウム又はアルミニウム合金とから構成される複層クラッド材N1,N2を製造することができる。つまり、圧延工程によって箱本体2の底部11と中間部材3とが接合されるとともに、中間部材4と封止体5とが接合されるが、剥離剤6を介設することで中間部材3,4が接合されることを回避できる。これにより、剥離剤6を境に両者を剥離することで、複層クラッド材N1,N2を形成することができるため、生産性を高めることができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜設計変更が可能である。また、箱本体2及び封止体5で構成される「密閉用部材」は、上記の形態は一例であって特に制限されない。中間部材3,4を収容しつつ、内部を真空状態に形成できればどのような形態であってもよい。また、その際の突合せ形態も特に制限されるものではない。例えば、一対の箱本体で中間部材の周囲を覆ってもよいし、複数の板状部材で中間部材の周囲を覆ってもよい。また、排気流路14は、「密閉用部材」の一部に設ければよく、例えば、底部11や封止体5等に設けてもよい。
また、剥離剤6及び剥離部材は、用いなくてもよい。例えば、第一実施形態で剥離剤6又は剥離部材を設けないと、熱間圧延工程によって中間部材3,4同士も接合され、Al/Cu/Alの三層からなる複層クラッド材を得ることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る複合スラブの製造方法について説明する。図9に示すように、第二実施形態に係る複合スラブの製造方法では、中間部材の数と突合せ形態が第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第二実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。図9に示すように、準備工程では、箱本体2、封止体5及び中間部材21〜23を準備する。
アルミニウム又はアルミニウム合金製の箱本体2Aの周壁部12の内周縁に沿って段差部16が形成されている。段差部16は、段差底面16aと、段差底面16aから立ち上がる段差側面16bとで構成されている。中間部材21,22,23は、箱本体2Aの凹部13に収容される部材である。中間部材21,22,23の材料及び板厚は適宜選択すればよい。中間部材21〜23の全てが単一の材料(例えば、銅又は銅合金)であってもよいし、それぞれ異なる材料であってもよい。また、中間部材21,22が同じ材料で、中間部材23が中間部材21,22とは異なる材料であってもよい。本実施形態では、例えば、中間部材21,23は銅又は銅合金で形成し、中間部材22はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成している。剥離剤又は剥離部材は、所望の複層クラッド材に応じて各中間部材の間、底部11と中間部材21との間又は封止体5と中間部材23との間に適宜介設してもよい。アルミニウム又はアルミニウム合金製の封止体5の板厚と段差側面16bの高さ寸法は同一になっている。
突合せ工程では、図10に示すように、箱本体2の凹部13に中間部材21〜23を収容するとともに、封止体5で封止する工程である。最も上に位置する中間部材23の表面23aと段差底面16aとは面一になる。封止体5の側面5cと段差側面16bとが突き合わされて突合せ部J2が形成される。真空引き工程、密閉工程及び遮断工程は、第一実施形態と共通である。このようにして、複合スラブ1Aが形成される。
以上説明した第二実施形態に係る複合スラブの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第二実施形態のように中間部材21,22,23を三枚用いてもよい。また、箱本体2Aに段差部16を設けて封止体5と突き合わせてもよい。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る複合スラブの製造方法について説明する。図11に示すように、第三実施形態に係る複合スラブの製造方法では、中間部材の数と突合せ形態が第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第三実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。図11に示すように、準備工程では、箱本体2、封止体5B及び中間部材31〜34を準備する。
中間部材31〜34は、箱本体2の凹部13に収容される部材である。中間部材31〜34の材料及び板厚は適宜選択すればよい。中間部材31〜34の全てが単一の材料(例えば、銅又は銅合金)であってもよいし、それぞれ異なる材料であってもよい。また、中間部材31〜34のうち、二枚以上が同じ材料で、他が異なる材料であってもよい。本実施形態では、例えば、中間部材31,33は銅又は銅合金で形成し、中間部材32,34はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成している。剥離剤又は剥離部材は、所望の複層クラッド材に応じて各中間部材の間、底部11と中間部材31との間又は封止体5Bと中間部材34との間に適宜介設してもよい。封止体5Bの大きさは、箱本体2の大きさと同じになっている。
突合せ工程では、箱本体2の凹部13に中間部材31〜34を収容するとともに、封止体5Bで封止する工程である。最も上に位置する中間部材34の表面34aと周壁端面12aとは面一になる。周壁端面12aと封止体5の裏面5bとが突き合わされて突合せ部J3が形成される。封止体5の側面5cと周壁部12の外側面12cとは面一になる。真空引き工程は、第一実施形態と同一である。
密閉工程では、第一回転ツールGを用いて突合せ部J3を摩擦攪拌接合により接合し、密閉する。密閉工程では、右回転させた第一回転ツールGを封止体5の表面5aから挿入し、突合せ部J3に沿って第一回転ツールGを一周させる。攪拌ピンG2が周壁部12に達するように第一回転ツールGの挿入深さを設定する。塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせたら封止体5から第一回転ツールGを離脱させる。遮断工程は、第一実施形態と同一である。このようにして複合スラブ1Bが形成される。
以上説明した第三実施形態に係る複合スラブの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第三実施形態のように中間部材31,32,33,34を4枚用いてもよい。また、第三実施形態のように周壁端面12aに封止体5を重ね合わせるようにして突合せ部J3を形成してもよい。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る複合スラブの製造方法について説明する。図13に示すように、第四実施形態に係る複合スラブの製造方法では、枠部材40を用いている点で第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第四実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。準備工程では、図13に示すように、枠部材40と、底部材41と、封止体42と、中間部材43,44とを準備する工程である。枠部材40と、底部材41と、封止体42とで「密閉用部材」を構成している。
枠部材40は、矩形枠状を呈する。枠部材40の材料は特に制限されないが、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。底部材41及び封止体42は、矩形の板状部材である。枠部材40には内外方向に貫通する排気流路14が形成されている。真空引き用治具15は、排気流路14に連通するように設置されている。底部材41及び封止体42は、枠部材40の内部にほぼ隙間なく配置される大きさになっている。底部材41及び封止体42の材料は特に制限されないが、本実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されている。
中間部材43,44は、「密閉用部材」の内部に収容される部材であって、矩形の板状部材である。中間部材43,44は、枠部材40の内部にほぼ隙間なく配置される大きさになっている。中間部材43,44の材料は特に制限されないが、本実施形態では、銅又は銅合金で形成されている。中間部材43,44の材料は、底部材41及び封止体42との少なくとも一方とは異なる材料から適宜選択される。換言すると、本発明の中間部材は、枠部材40に一枚又は複数枚挿入されており、当該中間部材のうち少なくとも一枚は、底部材41及び封止体42の少なくとも一方とは異なる材料にする。中間部材43,44の間に剥離剤又は剥離部材を介設してもよい。底部材41、封止体42及び中間部材43,44の板厚は、適宜設定すればよい。
突合せ工程では、図14に示すように、枠部材40、底部材41、封止体42及び中間部材43,44を突き合わせて突合せ部J41,J42を形成する工程である。突合せ工程では、枠部材40の内部に底部材41、中間部材43,44及び封止体42の順番で配置する。底部材41の側面41cと、枠部材40の内側面40cとが突き合わされて突合せ部J41が形成される。封止体42の側面42cと、枠部材40の内側面40cとが突き合わされて突合せ部J42が形成される。底部41の裏面41bと枠端面40bとは面一になる。また、封止体42の表面42aと枠端面40aとは面一になる。突合せ部J41,J42は、いずれも矩形枠状に形成される。真空引き工程は、第一実施形態と同一である。
密閉工程は、枠部材40と、底部材41及び封止体42とをそれぞれ接合して密閉する工程である。密閉工程では、図15に示すように、突合せ部J42に回転する第一回転ツールGを挿入して摩擦攪拌接合を行う。第一回転ツールGを突合せ部J42に沿って一周させたら、塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせて枠端面40a上で第一回転ツールGを離脱させる。
また、密閉工程では、突合せ部J41に回転する第一回転ツールGを挿入して摩擦攪拌接合を行う。第一回転ツールGを突合せ部J41に沿って一周させたら、塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせて枠端面40b上で第一回転ツールGを離脱させる。遮断工程は、第一実施形態と同一である。これにより、複合スラブ1Cが形成される。
以上説明した第四実施形態に係る複合スラブの製造方法によっても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。第一実施形態では箱本体2を用いたが、本実施形態のように枠部材40であっても、枠部材40の内部に底部材41、封止体42及び中間部材43,44を収容することができ、位置決め作業や密閉工程を容易に行うことができる。
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る複合スラブの製造方法について説明する。図16に示すように、第五実施形態に係る複合スラブの製造方法では、中間部材の数と突合せ形態が第四実施形態と相違する。本実施形態では、第四実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第五実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。図16に示すように、準備工程では、枠部材50、底部材51、封止体52及び中間部材53,54,55を準備する。
アルミニウム又はアルミニウム合金製の枠部材50の内側面50cの上部及び下部に沿って、段差部56,57が形成されている。枠部材50の上部に形成される段差部56は、段差底面56aと、段差底面56aから立ち上がる段差側面56bとで構成されている。枠部材50の下部に形成される段差部57は、段差底面57aと、段差底面57aから立ち上がる段差側面57bとで構成されている。
中間部材53,54,55は、枠部材50の内部に収容される部材である。中間部材53,54,55の材料及び板厚は適宜選択すればよい。中間部材53〜55の全てが単一の材料(例えば、銅又は銅合金)であってもよいし、それぞれ異なる材料であってもよい。また、中間部材53,55が同じ材料で、中間部材54が異なる材料であってもよい。本実施形態では、例えば、中間部材53,55は銅又は銅合金で形成し、中間部材54はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成している。剥離剤又は剥離部材は、所望の複層クラッド材に応じて各中間部材の間、底部材51と中間部材53との間、又は、封止体52と中間部材55との間に適宜介設してもよい。
突合せ工程では、図17に示すように、枠部材50の段差部57に底部材51を配置するとともに、内部に中間部材53,54,55を配置する。さらに、枠部材50の段差部56に封止体52を配置して封止する。封止体52の側面52cと段差部56の段差側面56bとが突き合わされて突合せ部J52が形成される。底部材51の側面51cと段差部57の段差側面57bとが突き合わされて突合せ部J51が形成される。突合せ部J51,J52は、いずれも矩形枠状に形成される。真空引き工程、密閉工程及び遮断工程は、第四実施形態と同一である。このようにして複合スラブ1Dが形成される。
以上説明した第五実施形態に係る複合スラブの製造方法によっても第四実施形態と略同等の効果を得ることができる。第五実施形態のように中間部材53,54,55を三枚用いてもよい。また、第五実施形態のように枠部材50に段差部56,57を設けて底部材51及び封止体52とそれぞれ突き合わせてもよい。
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態に係る複合スラブの製造方法について説明する。図18に示すように、第六実施形態に係る複合スラブの製造方法では、中間部材の数と突合せ形態が第四実施形態と相違する。本実施形態では、第四実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第六実施形態に係る複合スラブの製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、真空引き工程と、密閉工程と、遮断工程と、を行う。図18に示すように、準備工程では、枠部材60と、底部材61と、封止体62と、中間部材63〜66とを準備する。
枠部材60はアルミニウム又はアルミニウム合金製であって、矩形枠状を呈する。底部材61及び封止体62は、アルミニウム又はアルミニウム合金製であって、枠部材60と概ね同じ大きさで形成されている。
中間部材63〜66は、枠部材60の内部に配置される部材である。中間部材63〜66の材料及び板厚は適宜選択すればよい。中間部材63〜66の全てが単一の材料(例えば、銅又は銅合金)であってもよいし、それぞれ異なる材料であってもよい。また、中間部材63〜66のうち、二枚以上が同じ材料で、他が異なる材料であってもよい。本実施形態では、例えば、中間部材63,65は銅又は銅合金で形成し、中間部材64,66はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成している。剥離剤又は剥離部材は、所望の複層クラッド材に応じて各中間部材の間、底部材61と中間部材63との間、又は、封止体62と中間部材66との間に適宜介設してもよい。
突合せ工程では、底部材61の上に枠部材60を配置するとともに、枠部材60の内部に中間部材63〜66を配置し、さらに中間部材66及び枠部材60の上に封止体62を配置する。中間部材66の表面66aと枠端面60aとは面一になり、中間部材63の裏面63bと枠端面60bとは面一になる。封止体62の裏面62bと、枠端面60aとが突き合わされて突合せ部J62が形成される。また、底部材61の表面61aと枠端面60bとが突き合わされて突合せ部J61が形成される。底部材61の側面61c、封止体62の側面62c及び枠部材60の側面60cとは面一になる。
密閉工程では、図19に示すように、第一回転ツールGを用いて突合せ部J61,J62を摩擦攪拌接合により接合し、密閉する。密閉工程では、右回転させた第一回転ツールGを封止体62の表面62aから挿入し、突合せ部J62に沿って第一回転ツールGを一周させる。攪拌ピンG2が枠部材60に達するように第一回転ツールGの挿入深さを設定する。塑性化領域W1の始端と終端とをオーバーラップさせたら封止体62から第一回転ツールGを離脱させる。突合せ部J61に対しても、突合せ部J62と同様にして摩擦攪拌接合を行う。遮断工程は、第一実施形態と同一である。このようにして複合スラブ1Eが形成される。
以上説明した第六実施形態に係る複合スラブの製造方法によっても第四実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第六実施形態のように中間部材63,64,65,66を4枚用いてもよい。また、第六実施形態のように枠部材60に底部材61及び封止体62を重ね合わせるようにして突合せ部J61,J62を形成してもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。図20は、実施例の試験体を示す概略断面図である。本実施例では、複合スラブを作成した後に、熱間圧延工程を行い、最終的にAl/Cuの二層からなる複層クラッド材を形成し、その接合状態等を確認することを目的としている。
本実施例では、本発明の複合スラブの試験体T1,T2,T3,T4の4形態を作成した。図20に示すように、試験体は、箱本体101と、封止体102と、中間部材103とで構成されている。中間部材103は一枚又は二枚とした。箱本体101は、アルミニウム合金A1050を用いている。箱本体101の全板厚は30mmになっており、凹部110の深さは14mmになっている。
中間部材103は、銅合金C1020を用いている。図21に示すように、中間部材103は、試験体T1〜T3では板厚3mmのものを二枚用いている。試験体T4では板厚6mmのものを一枚用いている。封止体102はアルミニウム合金A1050を用いている。封止体102の板厚は8mmになっている。
試験体T1〜T4は、前記した第一実施形態と同じ方法で各複合スラブを作成した。図21に示すように、その後、熱間圧延工程を行って、所望の厚さになるまで薄くした。各試験体における熱間圧延工程における素材加熱温度は、試験体T1では約350℃、試験体T2では約450℃、試験体T3,T4では約500℃とした。
熱間圧延工程後、試験体T1の厚さは9.3mm(圧下率69.0%)となった。熱間圧延工程後、試験体T1は、中間部材103,103が接合されず分離した。Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、又は、封止体102と中間部材103間)には接合不良があった。
熱間圧延工程後、試験体T2の厚さは8.3mm(圧下率72.3%)となった。熱間圧延工程後、試験体T2は、中間部材103,103が接合されず分離した。Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、又は、封止体102と中間部材103間)には一部接合不良があった。
熱間圧延工程後、試験体T3の厚さは6.4mm(圧下率78.7%)となった。熱間圧延工程後、試験体T3は、Cu同士(中間部材103,103同士)が良好に接合された。また、Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、又は、封止体102と中間部材103間)も良好に接合された。
熱間圧延工程後、試験体T4の圧さは6.6mm(圧下率78.0%)となった。熱間圧延工程後、試験体T4は、Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、又は、封止体102と中間部材103間)は良好に接合された。
試験体T1,T2の結果に示すように、熱間圧延工程の加熱温度が450℃以下であると、Al/Cu間がそもそも接合されないため良好な複層クラッド材は得られないことがわかった。一方、試験体T3,T4の結果に示すように、熱間圧延工程の加熱温度が500℃であると、Al/Cu間が良好に接合された。しかし、試験体T3の結果に示すようにCu同士(中間部材103、103同士)も接合されてしまうため、得られる複層クラッド材はAl/Cu/Alとなる。つまり、所望の二層ではなく、三層構造の複層クラッド材となってしまう。同じように、試験体T4は中間部材103が一枚だけであるため、得られる複層クラッド材はAl/Cu/Alの三層構造の複層クラッド材となってしまう。
図22は、試験体T5を示す断面図である。図22に示すように、試験体T5は、二枚の中間部材103,103の間に剥離剤105を介設している。剥離剤105は、剥離剤LBN(昭和電工株式会社製)を用いている。試験体T5の各寸法は、試験体T1と同一である。
図23は、試験体T6を示す断面図である。図23に示すように、試験体T6は、二枚の中間部材103,103の間に剥離部材106を介設している。剥離部材106は、薄板状のアルミニウム合金A5083−Oを用いている。剥離部材106は、2質量%以上のMgが含まれている。試験体T6の剥離部材106は、厚さを2.0mmとしているため、凹部110の深さが16mmとなっている。
試験体T5,T6は、前記した第一実施形態と同じ方法で各複合スラブを作成した。その後、熱間圧延工程を行って、所望の厚さになるまで薄くした。図24に示すように、各試験体における熱間圧延工程における素材加熱温度は、試験体T5,T6とも約500℃とした。
図24に示すように、熱間圧延工程後の試験体T5の厚さは8.1mm(圧下率73.0%)となった。熱間圧延工程後、試験体T5は、Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、封止体102と中間部材103間)は良好に接合された。一方、中間部材103,103同士は剥離剤105が介設されているため接合されなかった。
図24に示すように、試験体T6の厚さは7.3mm(圧下率75.7%)となった。熱間圧延工程後、試験体T6は、Al/Cu間(箱本体101と中間部材103間、封止体102と中間部材103間)は良好に接合された。一方、中間部材103,103同士は剥離部材106が介設されているため接合されなかった。
図25Aに示すように、熱間圧延工程後の試験体T5を剥離剤105(図22参照)で分割することにより、Al/Cuの二層からなる複層クラッド材5A,5Bを得ることができる。
図25Bに示すように、熱間圧延工程後の試験体T6を剥離部材106で分割することにより、Al/Cuの二層からなる複層クラッド材6A,6Bを得ることができる。
図26に示すように、得られた複層クラッド材5A,5B、複層クラッド材6A,6Bについて比重に対する厚み方向の熱伝導率を計測したところ、共通する相関関係が得られた。つまり、当該実施例における複合スラブの製造方法のように、剥離剤105又は剥離部材106を介設させて、圧延後に剥離剤105又は剥離部材106で分割しても、厚み方向の熱伝導率が比重に比例している複層クラッド材を得ることができる。
また、熱間圧延の温度は、金属の材料に応じて適宜設定すればよいが、例えば、460〜600℃、好ましくは470〜550℃とすることにより、Al/Cu間を良好に接合することができるとともに、Cu/Cu同士は接合されないため容易に分割(剥離)することができる。また、分割することによって、一の複合スラブから二つの複層クラッド材を得ることができるため、生産性を高めることができる。
なお、具体的な図示は省略するが、剥離部材106に代えて、表面又は裏面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム合金製の板状部材を用いても、剥離部材106と同じように容易に分割することができ、Al/Cuからなる二枚の複層クラッド材が得られた。