図1(A)は第一実施形態に係る電子機器1の斜視図、図1(B)は図1(A)に示すI−I線で電子機器1を切断した断面図である。図2(A)は、第一実施形態に係る筐体2を説明するための図である。図2(B)は、第一実施形態に係る圧電素子10の配置を説明するための図であり、圧電素子10を筐体2の外側から見た時の平面図である。なお、筐体2を有する電子機器1を例示したが、電子機器1はあくまで一例であり、これに限るものではない。また、図2(B)に示す圧電素子10はあくまで一例であり、これに限るものではなく同様な機能を有するものであれば、これに代えて使用することができる。以下、筐体2の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。
図1(A)、図1(B)及び図2(A)に示すように、電子機器1は、略直方体形状の筐体2を備える。筐体2は、側面3、底面7、及び開口部8を備える。すなわち、筐体2は、上面が開放されたいわゆるバスタブ型の構造物(バスタブ型筐体)である。筐体2は、上面の代わりに下面が開放された構造物であってもよい。なお、電子機器1は、開口部8に平板状の蓋部4を有していてもよく、蓋部4は筐体2における上面に位置する。
筐体2は、側面3の外側の一部にボタン領域5を有する。ボタン領域5は、後から説明する第一領域R1及び第二領域R2を含む。電子機器1は、ボタン領域5に対応する側面3の内側に圧電素子10を備える。圧電素子10は、側面3の内側に、例えば粘着テープや接着剤等で貼り付けられている。電子機器1は、筐体2の内側に検出部6を備える。検出部6は、圧電素子10と電気的に接続されており、圧電素子10から発生した電圧を検出する。検出部6は、圧電素子10と共にセンサを構成している。本実施形態において、圧電素子10は筐体2の内側に貼り付けられていることが好ましい。圧電素子10が筐体2内部に配設されることにより、圧電素子10は直接触れられないため、耐久性が向上する。また、圧電素子10は直接触れられず、筐体2の変形に伴って変形するため、筐体2を把持した時などによる力の負荷を直接受けないために、不要な検出を抑制できる。例えば、ユーザがボタン領域5以外の箇所に触れることにより筐体2を把持した場合、ボタン領域5の内側に貼り付けられた圧電素子10は変形しない、又はボタン領域5を押された時に比べて変形が小さく、圧電素子10から出力される電圧はゼロ又は小さい。このため、ボタン領域5が押された時と、そうではない場合とを判別することができる。なお、圧電素子10及び検出部6は、必ずしも筐体2内部に配設される必要はなく、筐体2外部に配設されてもよい。以下、圧電素子10について説明する。
圧電素子10は、第一領域R1及び第二領域R2を有する。第一領域R1及び第二領域R2は、Y方向に並んで、隣接して配置されている。ここで、隣接とは、第一領域R1及び第二領域R2は、互いに一部が接するように、又は少し間を開けて配置されていることを意味する。第一領域R1及び第二領域R2が隣接して配置されていることにより、第一領域R1及び第二領域R2が重なり、出力が相互に打ち消されて検出されない領域が生じることが防止される。第一領域R1及び第二領域R2の境界は、開放された上面(蓋部4)又は底面7に対して垂直な方向、すなわち、Z方向と平行である。以下、本明細書においてZ方向を第一方向ともいう。また、本明細書においてZ方向と直交するY方向を、第二方向ともいう。
圧電素子10は、第一圧電素子11及び第二圧電素子12を有する。第一圧電素子11は第一領域R1に、第二圧電素子12は第二領域R2にそれぞれ配置される。このため、図2(B)に示すように、第一圧電素子11及び第二圧電素子12は、互いにY方向に並んで、隣接して配置される。
図3(A)は、第一実施形態に係る圧電素子10のX−Y平面における断面図である。図3(B)は、第一実施形態に係る圧電フィルム30を説明するためのY−Z平面における平面図である。図3(B)では、圧電素子10のうち圧電フィルム30以外の図示は省略している。
図3(A)に示すように、圧電素子10は、平膜状の第一圧電フィルム31、平膜状の第二圧電フィルム32、第一電極13、第二電極14、及びグランド電極15を備える。第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32は、グランド電極15上にY方向に隣接して配置されている。第一電極13は第一圧電フィルム31の上に、第二電極14は第二圧電フィルム32の上に、それぞれ配置されている。このため、第一電極13は第一圧電フィルム31の第一主面に配置され、第二電極14は第二圧電フィルム32の第一主面に配置されている。また、グランド電極15は、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32の第二主面に配置されている。すなわち、第一圧電フィルム31、第一電極13、及びグランド電極15は、第一圧電素子11を第一領域R1に構成している。同様に、第二圧電フィルム32、第二電極14、及びグランド電極15は、第二圧電素子12を第二領域R2に構成している。なお、本実施形態では、第一電極13及び第二電極14は二枚の電極で構成されているが、一枚の電極で構成されていてもよい。
なお、圧電素子10は、図3(A)に示す構造に限られない。例えば、圧電素子10の上部、すなわち第一電極13及び第二電極14の上を絶縁体で被覆する。絶縁体は、第一電極13及び第二電極14において第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32が配置される面と逆の主面に配置される。さらにグランド電極が、絶縁体の上に設けられる。この構造においては、第一電極13及び第二電極14間で生じるノイズによる誤検知を軽減することができる。また、圧電素子10は、第一電極13及び第二電極14の両主面に圧電フィルムをそれぞれ設ける構造にすることができる。この構造においては、圧電フィルムが積層される。このため、電圧を生じる圧電フィルムが増加するため、押圧検知の感度を高めることができる。
図3(B)に示すように、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32は、矩形状に形成されたフィルムである。なお、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32の形状は矩形状のものを挙げたが、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32の形状はこれに限らない。
第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32は、キラル高分子から形成されるフィルムからなる。キラル高分子として、第一実施形態では、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)を用いる。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32の平板面が押圧されねじれることにより、電位を発生する。この際、発生する電位量は、平板面に与えられるねじれの伸びと縮みのベクトルに依存する。
第一実施形態では、第一圧電フィルム31(PLLA)の一軸延伸方向は、図3(B)の矢印901に示すように、Z方向に対して平行としている。第二圧電フィルム32(PLLA)の一軸延伸方向は、矢印902に示すように、Y方向に対して平行としている。すなわち、第一圧電フィルム31は、第一方向に延伸され、第二圧電フィルム32は、第一方向と直交する第二方向に延伸されている。なお、ここで平行とは、Z方向又はY方向に対して0度の角度を成す方向としている。この0度には、例えば0度±10度程度を含む角度を含む。これにより、第一圧電フィルム31が押圧操作を受けて変形することにより発生する電位と、第二圧電フィルム32が押圧操作を受けて変形することにより発生する電位とは逆の極性となる。すなわち、第一圧電フィルム31を有する第一領域R1が変形することにより発生する信号は、第二圧電フィルム32を有する第二領域R2が変形することにより発生する信号とは逆の極性となる。
PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDF又はPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。従って、周囲環境に影響されることなく、押圧による変位を高感度に検出することができる。
第一電極13、第二電極14、及びグランド電極15は、アルミニウムや銅等の金属系の電極を用いるのが好適である。このような第一電極13、第二電極14、及びグランド電極15を設けることで、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32が発生する電荷を電位差として取得でき、変形量に応じた電圧値の検出信号を外部へ出力することができる。
ここで、筐体2の側面3が押圧操作を受けたときに発生する電位について説明する。図4は、第一実施形態に係る筐体2の押圧操作を受ける位置を説明するための図である。図5(A)は、第一実施形態に係る筐体2の側面3における所定の位置P1が押圧操作を受け付けた時の変形を説明するための図であり、図5(B)は、その時に筐体2に生じる伸びと縮みのベクトルを説明するための図である。図5(A)及び後で説明する図6(A)においては、筐体2のそれぞれの位置が元の位置から移動した変位の距離に応じてハッチング別にして表している。また、図4、図5(A)及び後で説明する図6(A)においては、筐体2をY方向に沿って半分に切断したものが表されている。
図4に示すように、側面3における所定の位置P1が押圧操作を受け付けると、図5(A)に示すように、側面3は位置P1を中央として筐体2の内側へ向けて倒れるように歪む。所定の位置P1は、図1(A)に示すボタン領域5の中央と同じである。すなわち、所定の位置P1は、第一領域R1及び第二領域R2の境界である。
図5(B)に示すように、第一領域R1においては、矢印801の縮みのベクトルと、矢印801に直交する矢印802の伸びのベクトルとが発生する。矢印801の縮みのベクトル及び矢印802の伸びのベクトルは、Y方向に対して45度の角度を成す。第二領域R2においては、矢印803の伸びのベクトルと、矢印803に直交する矢印804の縮みのベクトルとが発生する。矢印803の伸びのベクトル及び矢印804の縮みのベクトルは、Y方向に対して45度の角度を成す。すなわち、押圧操作を受け付けた位置P1を境にして、第一領域R1及び第二領域R2で異なった方向へのねじれが生じる。
この時、第一領域R1に配置されている第一圧電フィルム31は、位置P1の押圧操作を受け付けてねじれる。これにより、第一圧電フィルム31は第一圧電フィルム31のねじれにより生じるY方向に対して45度の角度を成す縮みのベクトル及び伸びのベクトルに応じた所定の向きの電荷が発生する。これと同時に、第二領域R2配置されている第二圧電フィルム32は、位置P1の押圧操作を受け付けてねじれる。第二圧電フィルム32のねじれる向きは、第一領域R1と第二領域R2との境界で第一圧電フィルム31のねじれる向きと対称となる。これにより、第二圧電フィルム32は第二圧電フィルム32のねじれの向きに応じた所定の向きの電荷が発生する。上述のように、第一圧電フィルム31が押圧操作を受けて変形することにより発生する電位と、第二圧電フィルム32が押圧操作を受けて変形することにより発生する電位とは逆の極性となるため、第一領域R1及び第二領域R2は、極性が同一の信号を出力する。これにより、圧電素子10全体としては、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32が出力した同一の極性の電位の和が検知される。従って、位置P1のような第一領域R1及び第二領域R2の境界付近が押圧操作を受け付けた場合には、比較的大きな電位が検出されるため、ねじれの変形を的確に検知できる。
ここで、圧電フィルムとして、延伸方向から45度の角度を長手方向として切り出した矩形片を用いた場合、このような圧電フィルムは、圧電テンソルd14を持つため、長矩形片が長手方向に伸縮するように変形し、長手方向のみの変形しか検知できない。本実施形態に係る筐体2の変形はねじれであり、直交する二種類の方向のベクトルが発生するため、このような圧電フィルムを用いた場合、いずれか一方向のベクトルの歪しか検知できない。
これに対して、本実施形態に係る第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32において、生じる伸び方向と、縮み方向のベクトルはPLLAの延伸方向に対して共に45度の方向である。これにより、伸びと、縮みにより与えられる歪みを両方とも検出することができる。従って、側面3に与えられる変形量が小さい場合であっても、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32から大きな出力を得ることができる。
図6(A)は、第一実施形態に係る筐体2の側面3における位置P2が押圧操作を受け付けた時の変形を説明するための図であり、図6(B)は、その時に筐体2に生じる伸びと縮みのベクトルを説明するための図である。
図6(A)に示すように、側面3における所定の位置P2が押圧操作を受け付けると、側面3は位置P2を中央として筐体2の内側へ向けて倒れるように歪む。位置P2は、筐体2の側面3における第一領域R1及び第二領域R2以外の場所である。図6(B)に示すように、第一領域R1においては、矢印803の伸びのベクトルと、矢印804の縮みのベクトルとが発生する。第二領域R2においては、矢印803の伸びのベクトルと、矢印804の縮みのベクトルとが発生する。すなわち、第一領域R1及び第二領域R2で同一方向へのねじれが生じる。
この時、第一領域R1に配置されている第一圧電フィルム31は、位置P2の押圧操作を受け付けてねじれる。これにより、第一圧電フィルム31は第一圧電フィルム31のねじれの向きに応じた所定の向きの電荷が発生する。これと同時に、第二領域R2配置されている第二圧電フィルム32は、位置P2の押圧操作を受け付けてねじれる。第二圧電フィルム32のねじれる向きは、第一圧電フィルム31のねじれる向きと同一となる。これにより、第二圧電フィルム32は第二圧電フィルム32のねじれの向きに応じた所定の向きの電荷が発生する。第一領域R1及び第二領域R2は、極性が異なる信号を出力する。圧電素子10全体としては、第一圧電フィルム31及び第二圧電フィルム32が出力した異なる極性の電位の和が検知される。すなわち、第一圧電フィルム31と第二圧電フィルム32との出力は、双方に打ち消される。位置P2のような第一領域R1及び第二領域R2から離れた領域が押圧操作を受け付けた場合には、電位がほとんど検出されないため、ねじれの変形が検知されない。従って、位置P1と位置P2とで、押圧操作を受け付けた場合とで出力の値に差を持たせることができる。このため、筐体2に貼り付けた圧電素子10及び検出部6は、筐体2における所定の位置(例えばボタン領域5)が押圧操作を受け付けた時のみ検出するセンサとしての使用も可能である。
図7は、第一実施形態に係る筐体2の押圧印加位置と出力との関係を説明するためのグラフである。図7では、横軸が押圧印加位置を、縦軸が出力の電位を示す。横軸の0は、図4で示すP1の位置であり、横軸の0から離れるほどP1から遠くなる。図7に示すように、押圧印加位置が0すなわちP1に近いほど大きな出力が検知される。また、押圧印加位置が0から遠くなるほど、検知される出力が小さくなる。従って、第一領域R1及び第二領域R2の境界付近が押圧操作を受け付けた場合には、比較的大きな出力が検知されるため、第一領域R1及び第二領域R2の境界付近をボタンの様に使用することができる。
図8(A)は、第二実施形態に係る圧電素子20のX−Z平面における断面図である。図8(B)は、第二実施形態に係る圧電フィルム80を説明するための図である。第二実施形態では、圧電素子10の代わりに圧電素子20用いることのみ第一実施形態と異なり、後は第一実施形態と同様の構成であるため、圧電素子20のみについて説明する。
図8(A)に示すように、圧電素子20は、第一圧電フィルム31、第三圧電フィルム33、第一電極13、第二電極14、及びグランド電極15を備える。圧電素子20は、第一実施形態と同様の構造であり、第二圧電フィルム32の代わりに第三圧電フィルム33を用いている。第一圧電フィルム31及び第三圧電フィルム33は、二種類のキラル高分子から形成されるフィルムからなるものである。例えば、第一圧電フィルム111としてL型ポリ乳酸(PLLA)を用い、D型ポリ乳酸(PDLA)を用いてもよい。この場合、一軸延伸方向は、図3(B)の矢印901で示すように、Z方向に対して平行な方向としている。これにより、第一圧電フィルム31が押圧されることにより発生する電位と、第三圧電フィルム33が押圧されることにより発生する電位とは逆の極性とすることができる。
図9(A)は、第三実施形態に係る圧電素子40のX−Z平面における断面図である。図9(B)は、第三実施形態に係る第四圧電フィルム34を説明するための図である。第三実施形態では、圧電素子10の代わりに圧電素子40用いることのみ第一実施形態と異なり、後は第一実施形態と同様の構成であるため、圧電素子40のみについて説明する。
図9(A)に示すように、圧電素子40は、第四圧電フィルム34、第一検知電極16、第二検知電極17、第一グランド電極91、及び第二グランド電極92を備える。第一検知電極16及び第二グランド電極92は、第四圧電フィルム34のX方向上方(第四圧電フィルム34の第一主面側)に形成されている。第二検知電極17及び第一グランド電極91は、第四圧電フィルム34のX方向下方(第四圧電フィルム34の第二主面側)に形成されている。第一検知電極16及び第一グランド電極91は、第四圧電フィルム34を挟んで向かい合う位置、すなわち第一領域R1に配置されている。第二検知電極17及び第二グランド電極92は、第四圧電フィルム34を挟んで向かい合う位置、すなわち第二領域R2に配置されている。
第四圧電フィルム34は、第一領域R1及び第二領域R2に亘って形成されている。第四圧電フィルム34は、一種類のキラル高分子から形成されるフィルムからなるものである。例えば、第一圧電フィルム31、第二圧電フィルム32、第三圧電フィルム33と同様の素材を用いることが可能である。
第一検知電極16は第四圧電フィルム34に対して、第二検知電極23が形成されている第二主面と逆の第一主面に形成されている。このため、第四圧電フィルム34が同一の変形を受け付けたとき、第一検知電極16が検出する電位と、第二検知電極17が検出する電位とは極性が逆になる。従って、第四圧電フィルム34において押圧される位置によって、第四圧電フィルム34から生じる電位が異なる。すなわち、同一の変形を受け付けた場合において、第一検知電極16が設けられた第一領域R1と、第二検知電極17が設けられた第二領域R2とで、第四圧電フィルム34から生じる電位の極性が異なる。これにより、一枚の圧電フィルムであっても、異なる極性の電位を発生させることができる。圧電フィルム21が一枚で構成されているため、圧電素子40の構造が単純なものとなり製造が容易となる。
図10(A)は、第四実施形態に係る圧電素子50のX−Z平面における断面図である。図10(B)は、第四実施形態に係る第四圧電フィルム34を説明するための図である。第四実施形態では、圧電素子10の代わりに圧電素子50用いること、及び増幅器36を備えることのみ第一実施形態と異なり、後は第一実施形態と同様の構成であるため、圧電素子50及び増幅器36について説明する。
図10(A)に示すように、第四実施形態において、圧電素子50は、増幅器36、第四圧電フィルム34、第一検知電極16、及び第二検知電極17、及びグランド電極15を備える。第一検知電極16及び第二検知電極17は、第四圧電フィルム34のX方向上方(第四圧電フィルム34の第一主面側)に形成されている。グランド電極15は、第四圧電フィルム34のX方向下方(第四圧電フィルム34の第二主面側)に形成されている。第一検知電極16は、第一実施形態と同様に第一領域R1に配置されており、第二検知電極17は、第二領域R2に配置されている。第四圧電フィルム34については、第三実施形態と同様のものが用いられる。
第一検知電極16は増幅器36の反転入力端子に接続され、第二検知電極17は増幅器36の非反転入力端子に接続されている。このため、第一検知電極16及び第二検知電極17は第四圧電フィルム34の主面の同一方向に形成されるため製造が容易となる。また、増幅器36において、第一検知電極16が反転入力端子に接続され、第二検知電極17が非反転入力端子に接続されている。このため、第四圧電フィルム34が同一の変形を受け付けたとき、第一検知電極16が検出する電位と、第二検知電極17が検出する電位とは極性が逆になる。これにより、一枚の圧電フィルムであっても、異なる極性の電位を発生させることができる。圧電フィルム21が一枚で構成されているため、圧電素子40の構造が単純なものとなり製造が容易となる。
なお、実施形態において筐体2として上面が開放されたいわゆるバスタブ型の構造物のものを挙げたが、筐体2の形状はこれに限らない。以下、筐体2と異なる構造を有する変形例について説明する。
図11は、変形例を説明するための図である。図11に示すように、変形例に係る筐体202は、側面203、底面207、及びリブ208を備える。筐体202は、側面203が三方に形成されている点、及びリブ208を備える点において実施形態に係る筐体2と異なる。筐体202の側面203は、四面のうち一面において開放されている。底面207は、その一辺204が他の部材によって固定されていない。リブ208は、側面203と同等の強度を有するもので形成されている。これにより、リブ208に接する底面207は強度が補強されているため、変形が抑制される。このため、底面207の開放されている側は筐体2の側面3と、リブ208は筐体2の底面7に対応する。
圧電素子210は、圧電素子10と同様のものが使用できる。圧電素子210は、底面207の内側に貼り付けられている。圧電素子210は、底面207におけるリブ208より一辺204側に配置されている。すなわち、圧電素子210は、側面203の二面とリブ208の三面に囲まれた底面207に貼り付けられている。
圧電素子210は、リブ208から所定の距離(D1)以内に設けられることが好ましい。所定の距離は、例えば、圧電素子210のY軸方向の幅(D2)の三倍以内であることが好ましい。所定の距離がY軸方向の幅(D2)の三倍を超えると、リブ208の影響が小さくなりねじれの変形が少なくなる。このためユーザが圧電素子210の貼り付けられた外側の底面207を押圧すると、曲げの変形が優位となる。よって、圧電素子210は電位を発生し難くなる。これに対して、所定の距離(D1)がY軸方向の幅(D2)の三倍以内であると、圧電素子210の貼り付けられた外側の底面207が押圧操作を受けた時に、底面207は実施形態に係る圧電素子10と同様に、筐体202の内側へ向けてねじれるように歪む。従って、圧電素子10は筐体202の歪みにより電位を発生する。これにより、筐体202において、底面207側にボタン機能を持たせることができる。なお、リブ208は、底面207の変形を抑制するものであればこれに限られず、その他の形状のものを用いることができる。例えば、底面207の一部の材質を、他の部分より硬度の高い素材で構成することができる。これにより、筐体202の内部空間を広く形成することができる。
なお、実施形態において筐体2として直方体形状のものを挙げたが、筐体2の形状はこれに限らない。筐体2の形状として、例えば、円柱、多角柱、球体、多角錐等の他の形状が挙げられる。また筐体2としては、直方体形状の角を面取りした形状のものも挙げられる。
なお、実施形態において、ボタン領域5はそれぞれ一か所にのみ設けられたが、複数個所に設けられていてもよい。例えば、ボタン領域5は、側面の一面に3つ並べて形成されていてもよい。これにより、それぞれのボタン領域5毎に別の機能を持たせることができる。例えば、一つをミュートON/OFFの切り替えボタンとして、後の二つを音声調節用のボタン(大又は小)として機能させることができる。
以下、ボタン領域が複数個所に設けられている場合の実施形態について説明する。
図12(A)は、第五実施形態に係る電子機器の斜視図、図12(B)は、第五実施形態に係る圧電素子の配置を説明するための図である。図13(A)及び図13(B)は、第五実施形態に係る筐体の押圧印加位置と出力との関係を説明するためのグラフである。図13(C)は、第五実施形態に係る筐体がひねられた時の出力を説明するためのグラフである。第五実施形態では、ボタン領域5に加えてボタン領域115を有することのみ第一実施形態と異なり、後は第一実施形態と同様の構成であるため、異なる点のみについて説明する。
図12(A)及び図12(B)に示すように、電子機器1において、筐体2は、側面3の外側の一部にボタン領域5及びボタン領域115を有する。ボタン領域115は、圧電素子110を備える。圧電素子110は、圧電素子10と同様の第一圧電素子11及び第二圧電素子12を有する。
ボタン領域115は、第一領域R3及び第二領域R4を含む。第一領域R3はボタン領域5の第一領域R1と同様であり、第二領域R4はボタン領域5の第二領域R2と同様の構成である。言い換えると、第五実施形態に係る電子機器1は、側面3に並んで配置された二つのボタン領域5を有する。
ここで、図13(A)は、ボタン領域5が押圧操作を受け付けた時の出力を説明するためのグラフであり、図13(B)は、ボタン領域115が押圧操作を受け付けた時の出力を説明するためのグラフである。
例えば、ボタン領域5が押圧操作を受け付けた時、ボタン領域5の変形はボタン領域115と比べて大きい。このとき、図13(A)に示すように、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)より大きい。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V1/V2)は1より大きくなる。
ボタン領域115が押圧操作を受け付けた時、ボタン領域115の変形はボタン領域5と比べて大きい。このとき、図13(B)に示すように、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)より小さい。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V1/V2)は1より小さくなる。逆に示すと、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V2/V1)は1より大きくなる。
一方、電子機器1の筐体2がひねられた時、ボタン領域5及びボタン領域115の双方に同様な変形が加わるため、図13(C)に示すように、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)と同様な出力となる。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V1/V2)は1程度となる。
これにより、圧電素子10から出力される電圧(V1)が所定の押圧閾値(T1)以上であり、かつ(V1/V2)が1より大きい所定の閾値(T2)以上である場合、ボタン領域5が押圧操作を受け付けたと判定することができる。また、圧電素子110から出力される電圧(V2)が所定の押圧閾値(T1)以上であり、かつ(V2/V1)が1より大きい所定の閾値(T2)以上である場合、ボタン領域115が押圧操作を受け付けたと判定することができる。
これに対して、圧電素子10及び圧電素子110から出力される電圧の比(V1/V2)又は(V2/V1)のいずれか一方が、1より大きい所定の閾値(T2)より小さい場合、電子機器1の筐体2がひねられたと判定することができる。このため、各圧電素子から出力される電圧の比により、電子機器1の筐体2がひねられたかもしくは押圧操作を受け付けたかを判定することができる。また、各圧電素子から出力される電圧の比により、押圧操作を受け付けた位置を判定することができる。従って、ユーザの意図しない操作によるひねりなどの誤操作が生じた時でも、誤検知を防止することができる。
図14(A)は、第六実施形態に係る電子機器の斜視図、図14(B)は、第六実施形態に係る圧電素子の配置を説明するための図である。図15(A)、図15(B)、及び図15(C)は、第六実施形態に係る筐体の押圧印加位置と出力との関係を説明するためのグラフである。図15(D)は、第六実施形態に係る筐体がひねられた時の出力を説明するためのグラフである。第六実施形態では、ボタン領域5及びボタン領域115に加えてボタン領域116を有することのみ第五実施形態と異なり、後は第五施形態と同様の構成であるため、異なる点のみについて説明する。
図14(A)及び図14(B)に示すように、電子機器1において、筐体2は、側面3の外側に並んだボタン領域5、ボタン領域115、及びボタン領域116を有する。ボタン領域116は、圧電素子112を備える。圧電素子112は、圧電素子10と同様の第一圧電素子11及び第二圧電素子12を有する。
ボタン領域116は、第一領域R5及び第二領域R6を含む。第一領域R5はボタン領域5の第一領域R1と同様であり、第二領域R6はボタン領域5の第二領域R2と同様の構成である。
ここで、図15(A)は、ボタン領域5が、図15(B)は、ボタン領域115が、図15(C)は、ボタン領域116が、それぞれ押圧操作を受け付けた時の出力を説明するためのグラフである。
例えば、ボタン領域5が押圧操作を受け付けた時、ボタン領域5の変形はボタン領域115又はボタン領域116と比べて大きい。このとき、図15(A)に示すように、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)又は圧電素子112から出力される電圧(V3)より大きい。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V1/V2)又は(V1/V3)は1より大きくなる。
同様に、ボタン領域115が押圧操作を受け付けた時、ボタン領域115の変形はボタン領域5又はボタン領域116と比べて大きい。このため、図15(B)に示すように、圧電素子110から出力される電圧(V2)は、圧電素子10から出力される電圧(V1)又は圧電素子112から出力される電圧(V3)より大きい。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V2/V1)又は(V2/V3)は1より大きくなる。
同様に、ボタン領域116が押圧操作を受け付けた時、ボタン領域116の変形はボタン領域5又はボタン領域115と比べて大きい。このため、図15(C)に示すように、圧電素子112から出力される電圧(V3)は、圧電素子10から出力される電圧(V1)又は圧電素子110から出力される電圧(V2)より大きい。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V3/V1)又は(V3/V2)は1より大きくなる。
一方、電子機器1の筐体2がひねられた時、ボタン領域5、ボタン領域115、及びボタン領域116の双方に同様な変形が加わるため、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)と同様な出力となる。このため、二つの圧電素子から出力される電圧の比(V1/V2)又は(V2/V1)は、1程度となる。これに対して、圧電素子112の位置は、筐体2の長手方向の中心付近に位置する。このため、圧電素子112の位置は、ひねりの支点に近く、変形が小さい。従って、V3は、V1又はV2より小さくなる。
これにより、V1が所定の押圧閾値(T1)以上であり、かつ(V1/V2)及び(V1/V3)が1より大きい所定の閾値(T2)以上である場合、ボタン領域5が押圧操作を受け付けたと判定することができる。V2が所定の押圧閾値(T1)以上であり、かつ(V2/V1)及び(V2/V3)が1より大きい所定の閾値(T2)以上である場合、ボタン領域115が押圧操作を受け付けたと判定することができる。また、V3が所定の押圧閾値(T1)以上であり、かつ(V3/V1)及び(V3/V2)が1より大きい所定の閾値(T2)以上である場合、ボタン領域116が押圧操作を受け付けたと判定することができる。
これに対して、(V3/V1)及び(V3/V2)がT2より小さくなる場合、電子機器1の筐体2がひねられたと判定することができる。このため、各圧電素子から出力される電圧の比により、電子機器1の筐体2がひねられたかもしくは押圧操作を受け付けたかを判定することができる。
図16は、第七実施形態に係る圧電素子の配置を説明するための図である。図17(A)及び図17(B)は、第七実施形態に係る筐体の押圧印加位置と出力との関係を説明するためのグラフである。図17(C)は、第七実施形態に係る筐体がひねられた時の出力を説明するためのグラフである。図17(D)は、第七実施形態に係る筐体の比較例がひねられた時の出力を説明するためのグラフである。第七実施形態では、リブを有することのみ第一実施形態と異なり、後は第五実施形態と同様の構成であるため、異なる点のみについて説明する。
図16に示すように、電子機器1において、筐体2は、側面3の外側の一部に圧電素子10及び圧電素子110を備える。電子機器1は筐体2の内部にリブ71を備える。
リブ71は、圧電素子10及び圧電素子110に重ならない位置で、圧電素子10及び圧電素子110の間にリブ71の一端が当接するように配置されている。リブ71の他端は、筐体2における圧電素子10及び圧電素子110が備えられた側と対向する面の側面3に接する。言い換えると、リブ71は、圧電素子10及び圧電素子110の間から筐体2内部に伸びるように配置されている。このため、筐体2がひねりの力を受けると、リブ71がひねりの支点になる。
ここで、ボタン領域5又はボタン領域115押圧操作を受け付けた時についての二つの圧電素子から出力される電圧の比については、第五実施形態と同様であるため、説明は省略する。
電子機器1の筐体2がひねられた時、リブ71がひねりの支点になるため、ボタン領域5及びボタン領域115は互いに反対方向の変形をする。ボタン領域5及びボタン領域115の双方に逆の変形が加わるため、図17(C)に示すように、圧電素子10から出力される電圧(V1)は、圧電素子110から出力される電圧(V2)と逆の極性の出力となる。このため、二つの圧電素子から出力される電圧のいずれか一方の正負を逆転させて比を求めると、電圧の比は1程度となる。従って、第七実施形態においても、第五実施形態と同様に、各圧電素子から出力される電圧の比により、押圧操作を受け付けた位置を判定することができる。従って、ユーザの意図しない操作によるひねりなどの誤操作が生じた時でも、誤検知を防止することができる。
これに対して、リブ71がボタン領域115に接するように、配置された場合の比較例について説明する。比較例の電子機器では、リブ71の位置のみが第七実施形態と異なるので、第七実施形態と同様の説明は省略する。比較例においては、リブ71が接するボタン領域115の位置がひねりの支点になる。このため、図17(D)に示すように、比較例においては、圧電素子110から出力される電圧(V2)が圧電素子10から出力される電圧(V1)に比べて極端に小さくなる。このため、(V1/V2)が大きくなるため、各圧電素子から出力される電圧の比により、操作を判定し難くなる。従って、比較例は、判定の精度が落ちる。
なお、第五実施形態〜第七実施形態のように、ボタン領域が複数個所に設けられている場合、それぞれのボタン領域に所定の機能を対応付けることができる。例えば、ボタン領域5は音量増加、ボタン領域115は音量減少、又は、ボタン領域116は電源のON/OFFの電子機器1の機能と対応付けることができる。
ここで、第五実施形態において、ボタン領域5は電源のON/OFFの電子機器1の機能と対応付け、ボタン領域115は何も対応付けしない場合も可能である。この場合、第五実施形態と同様の判定ができるため、ボタン領域5が押圧操作を受け付けた場合と、ひねりなどの誤操作が生じた時とを判別することができる。このため、電子機器1が誤操作により不要に電源がON又はOFFされることを防止することができる。
なお、実施形態において、電子機器1を挙げたが、電子機器1としては、図1(A)に示すような通信機器だけに限られず、例えば、コントローラ、リモコン等の操作機器などにも採用され得る。