以下、図面を参照しながら実施形態に係るX線診断装置1を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
本実施形態に係る被検体は、乳房であるとする。
図1は、X線診断装置1の構成を示す図である。X線診断装置1は、撮像機構2を有する。図2は、X線診断装置1の外観の一例を示す図である。図2に示すように、撮像機構2は、載置台支持機構3とX線管支持機構4を有する。載置台支持機構3とX線管支持機構4とは、支柱5に水平に取り付けられた軸部6に接続されている。載置台支持機構3とX線管支持機構4とは、軸部6の軸心を回転中心軸Rとして個別に回転可能に支柱5により支持される。回転中心軸R回りの回転方向をβ方向とする。
X線管支持機構4の端部にはX線管7が設けられている。X線管7は、高電圧発生部8から高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。
載置台支持機構3の端部にはX線管7に対向する向きに載置台9が装備されている。載置台9の内部にはX線検出器10が設けられている。X線検出器10は、例えば平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)により実現される。FPDは、2次元状に配列された複数の素子を有する。各素子は、X線管7から発生されたX線を検出し、検出されたX線を電気信号に変換する。各素子において発生された電気信号は、図示しないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを画像発生部21に出力する。
X線管支持機構4の回転角度は、円軌道Oの最上部を0°とした回転中心軸R回りの回転角度として規定される。載置台支持機構3の回転角度は、X線管支持機構4と同じ円軌道Oの最上部を0°とした回転中心軸R回りの回転角度として規定される。載置台支持機構3の回転角度が0°のとき、X線検出器10の検出面は、X線診断装置1の設置面に対して水平である。
載置台9は、X線管7に対向する面に載置面11を有する。圧迫板12は載置面11とX線管7との間に、載置面11と接近又は離反する方向に移動可能に載置台支持機構3に取り付けられている。載置面11と圧迫板12とが接近又は離反する方向を、矢印α方向とする。載置面11は、矢印α方向に移動可能に載置台支持機構3に支持された圧迫板12とともに、乳房をスラブ状に圧迫するために設けられている。
また、載置台支持機構3は載置台9の上方に標本採取機構13を装備している。標本採取機構13には、採取制御部14の制御によって、標本採取機構13を駆動させ組織標本を採取するための採取駆動部15が内蔵されている。標本採取機構13は、組織標本を採取するための収集針16を有する。収集針16は、採取駆動部15の動力により、矢印α方向に移動可能である。収集針16が圧迫板12中央に形成された貫通孔を通過可能に、標本採取機構13や収集針16は位置決めされる。なお、標本採取機構13は、載置台支持機構3以外の部位に装備されてもよい。なお、標本採取機構13は、撮像機構2に対して着脱可能な構成を有してもよい。
本実施形態に係わるX線診断装置1は、撮像機構2とともに、画像発生部21、画像処理部22、再構成部23、関連付け部24、入力部25、記憶部26、表示部27、インターフェース部28、撮影制御部29、X線制御部30、駆動制御部31、システム制御部32、を備えている。
画像発生部21は、X線検出器10から出力されたディジタルデータに前処理を施して、X線画像を発生する。画像前処理とは、X線検出器10におけるチャンネル間の感度不均一の補正、及び脱落に関する補正等である。画像発生部21は、発生したX線画像を後述する記憶部26に出力する。
画像処理部22は、後述する記憶部26から取得したX線画像に対して、コントラスト処理、周波数処理、ダイナミックレンジ処理、ノイズ低減処理などを行う。
再構成部23は、X線管7の複数の位置に関する複数のX線画像に基づいて断面画像を再構成する。
関連付け部24は、乳房を撮影対象としたステレオ撮影による画像(以下、乳房ステレオ画像と呼ぶ)、標本を撮影対象としたX線画像(以下、標本X線画像と呼ぶ)、及びマンモグラフィ検査によって発生された乳房全体を撮影対象としたX線画像(以下、乳房X線画像と呼ぶ)を、同一被検者のDICOM画像として関連付ける。なお、乳房と標本との双方を撮影対象としたX線画像も、同一被検者のDICOM画像として関連付けてもよい。
入力部25は、検査者が所望するX線条件、X線撮影位置、X線撮影の開始及び終了などを入力する。入力部25は、検査者などからの各種指示、命令、情報、選択、設定などを後述するシステム制御部32に入力する。
記憶部26は、入力部25から供給される検査者の指示を記憶する。記憶部26は、種々のデータを記憶する。なお、切替え対応表は、入力部25を介して検査者によって変更されてもよい。また、記憶部26は、画像発生部21で発生されたX線画像、画像処理部22で画像処理されたX線画像、再構成部23で再構成されたX線画像等を記憶しても良い。記憶部26は、記憶したX線画像を適宜、画像処理部22、再構成部23、表示部27、インターフェース部28などへ出力する。
表示部27は、種々の情報をモニタに表示する。例えば、表示部27は、画像発生部21により発生されたX線画像や画像処理部22により画像処理されたX線画像を表示する。また、表示部27は、記憶部26に記憶されている任意の画像データを読み込み表示しても良い。
インターフェース部28は、ネットワークを介して図示していないPACS(Picture Archiving and Communication Systems)や他のコンピュータに接続される。
撮影制御部29は、X線制御部30と駆動制御部31とを制御し、撮像機構2にX線撮影を行わせる。撮影制御部29は、X線管支持機構4と照射野限定器33とを制御することにより、X線管7から発生されたX線の載置面11における照射野を、載置面11における乳房載置部分P1と標本載置部分P2との間で選択的に切り替える。マンモグラフィ検査の場合には、撮影制御部29は、照射野を、X線検出器10の検出面全体に切り替える。
採取制御部14は、採取駆動部15を制御し、標本採取機構13に組織標本を採取させる。採取制御部14は、採取駆動部15を制御し、載置面11に載置された乳房から標本を採取する。
システム制御部32は、X線診断装置1の中枢として機能する。システム制御部32は、X線診断装置1に含まれる各構成要素を統括的に制御し、本実施形態に係る各種動作を実現する。
以下、本実施形態に係るX線診断装置1の動作例を説明する。
まず、載置面11について説明する。図3は、図1の載置面11の一例を示す図である。載置面11は、載置台9のうちX線管7に対向する面の一部である。載置面11は、乳房載置部分P1と乳房から採取された標本載置部分P2とを有する。標本載置部分P2は、載置面11のうちの載置台支持機構3が設置されている側に設けられている。乳房載置部分P1は、載置面11のうちの他方の側に設けてられている。乳房載置部分P1と標本載置部分P2とは、離間して設けられる。なお、乳房載置部分P1と標本載置部分P2は、図3では載置面11の端部に設けられているが、端部よりも載置面11の内側に設けられても良い。また実際には、標本載置部分P2は載置面11のうちの、マンモグラフィ検査及びバイオプシ検査の邪魔にならない部分に設けられる。また、載置面11は、乳房及び標本を載置した状態で傾けられるため、樹脂等の高摩擦係数を有する滑りにくい素材により形成されると良い。標本載置部分P2は、第1標本載置部分P21と第2標本載置部分P22とを有する。なお、標本載置部分P2は、1つでもよいし3つ以上でもよい。図4は、図1の載置面11の他の例を示す図である。乳房載置部分P1と標本載置部分P2の大きさとが異なる場合を示している。図4のように、乳房載置部分P1と標本載置部分P2の大きさとは異なってもよい。
次に、乳房載置部分P1と標本載置部分P2との間での、システム制御部32の制御のもとに行われる照射野切替えについて説明する。図5は、照射野切替えに関する切替え対応表の一例を示す図である。切替え対応表は、複数の照射野の照準各々について、X線管支持機構4の回転角度と、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状とを関連付ける。照射野の照準は、X線管支持機構4の回転角度と照射野限定器33の開口の大きさ及び形状により決定される。具体的には、本実施形態に関する照射野は、バイオプシ検査のための照射野とマンモグラフィ検査のための照射野とに分類される。バイオプシ検査のための照射野は照射野F1、F2、F3、マンモグラフィ検査のための照射野は照射野F4である。照射野F1は乳房載置部分P1に照準する照射野に規定されている。照射野F1におけるX線管支持機構4の回転角度はθ1+γまたはθ1−γ、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状はA1である。照射野F2は第1標本載置部分P2に照準する照射野に規定されている。照射野F2のX線管支持機構4の回転角度はθ2、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状はA2である。照射野F3は第2標本載置部分P2に照準する照射野に規定されている。照射野F3のX線管支持機構4の回転角度はθ3、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状はA3である。照射野F4は、マンモグラフィ検査に関する照射野である。照射野F4はX線検出器10の検出面全体に照準する照射野に規定されている。照射野F4におけるX線管支持機構4の回転角度はθ4、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状はA4である。切替え対応表は、予め記憶部26に記憶される。
検査者が、入力部25を介して照射野F1への切替え指示を入力すると、システム制御部32は、記憶部26から切替え対応表を読み出し、照射野を乳房載置部分P1に切り替える。X線管支持機構4の回転角度をθ1±γ、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状をA1とすることで、照射野は乳房載置部分P1に切替えられる。検査者が、入力部25を介して照射野F2への切替え指示を入力すると、システム制御部32は、記憶部26から切替え対応表を読み出し、照射野を第1標本載置部分P21に切り替える。X線管支持機構4の回転角度をθ2、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状をA2とすることで、第1標本載置部分P21に切替えられる。検査者が、入力部25を介して照射野F3への切替え指示を入力すると、システム制御部32は、記憶部26から切替え対応表を読み出し、照射野を第2標本載置部分P22に切り替える。X線管支持機構4の回転角度をθ3、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状をA3とすることで、照射野は第2標本載置部分P22に切替えられる。検査者が、入力部25を介して照射野F4への切替え指示を入力すると、システム制御部32は、記憶部26から切替え対応表を読み出し、照射野をX線検出器10の検出面全体に切り替える。X線管支持機構4の回転角度をθ4、照射野限定器33の開口の大きさ及び形状をA4とすることで、照射野はX線検出器10の検出面全体に切替えられる。なお、標本載置部分P2にかかる圧力を感知する感知部を具備し、感知部が所定の値以上の圧力を感知したことを契機に照射野切替えが開始されてもよい。
図6は、照射野F1への照射野切替えを説明するための図である。照射野F1は、乳房ステレオ撮影の場合に用いられる。図6において、照射野は、載置面11における乳房載置部分P1に照準されていることを示している。入力部25を介して照射野F1への切替え指示が入力されると、システム制御部32は、記憶部26に記憶された切替え対応表のうち、照射野F1に関する項目を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて撮影制御部29を制御し、照射野切替えを行う。撮影制御部29は、駆動制御部31に、照射野切替えの指示信号を出す。駆動制御部31は、X線管支持機構4の回転角度と照射野限定器33の開口とを変化させることで、照射野を乳房載置部分P1に切り替える。具体的には、X線管支持機構駆動部34は、駆動制御部31の制御によって、X線管支持機構4の回転角度をθ1+γまたはθ1−γにする。説明を具体的にするために、θ1は0°、γは15°とし、回転角度θ1±γは±15°とする。ここで、回転角度θ1±γは、乳房ステレオ撮影における正側の回転角度及び負側の回転角度である。開口駆動部41は、駆動制御部31の制御によって、照射野限定器33の絞り羽根を移動し、開口の大きさ及び形状をA1に変形する。開口の大きさ及び形状A1を実現するための絞り羽根の開度は、予め記憶部26に記憶される。なお、以上の説明を簡単にするため、載置台支持機構3の回転角度は0°としている。載置台支持機構駆動部35は、駆動制御部31の制御によって、載置台支持機構3の回転角度を変化させる。載置台支持機構3の回転角度がωの時は、以下の説明において、X線管支持機構4の回転角度を+ωとして読み替える。なお、照射野F1は、乳房ステレオ撮影ではなく通常の乳房X線撮影に用いられてもよい。
図7は、照射野F2への照射野切替えを説明するための図である。図7において、照射野は、載置面11における第1標本載置部分P21に照準されていることを示している。入力部25を介して照射野F2への切替え指示が入力されると、システム制御部32は、記憶部26に記憶された切替え対応表のうち、照射野F2に関する項目を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて撮影制御部29を制御し、照射野切替えを行う。撮影制御部29は、駆動制御部31に、照射野切替えの指示信号を出す。駆動制御部31は、X線管支持機構4の回転角度と照射野限定器33の開口とを変化させることで、照射野を第1標本載置部分P21に切り替える。具体的には、X線管支持機構駆動部34は、駆動制御部31の制御によって、X線管支持機構4の回転角度をθ2にする。説明を具体的にするために、例えば、回転角度θ2は15°としている。開口駆動部41は、駆動制御部31の制御によって、照射野限定器33の絞り羽根を移動し、開口の大きさ及び形状をA2に変形する。開口の大きさ及び形状A2を実現するための絞り羽根の開度は、予め記憶部26に記憶される。
図8は、照射野F3への照射野切替えを説明するための図である。図8において、照射野は、載置面11における第2標本載置部分P22に照準されていることを示している。入力部25を介して照射野F3への切替え指示が入力されると、システム制御部32は、記憶部26に記憶された切替え対応表のうち、照射野F3に関する項目を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて撮影制御部29を制御し、照射野切替えを行う。撮影制御部29は、駆動制御部31に、照射野切替えの指示信号を出す。駆動制御部31は、X線管支持機構4の回転角度と照射野限定器33の開口とを変化させることで、照射野を第2標本載置部分P22に切り替える。具体的には、X線管支持機構駆動部34は、駆動制御部31の制御によって、X線管支持機構4の回転角度をθ3にする。説明を具体的にするために、例えば、回転角度θ3は−15°としている。開口駆動部41は、駆動制御部31の制御によって、照射野限定器33の絞り羽根を移動し、開口の大きさ及び形状をA3に変形する。開口の大きさ及び形状A3を実現するための絞り羽根の開度は、予め記憶部26に記憶される。
図9は、マンモグラフィ検査の際の照射野F4への照射野切替えを説明するための図である。照射野F4は、マンモグラフィ検査の場合に用いられる。図9において、照射野は、載置面11におけるX線検出器10の検出面全体に照準されていることを示している。入力部25を介して照射野F4への切替え指示が入力されると、システム制御部32は、記憶部26に記憶された切替え対応表のうち、照射野F4に関する項目を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて撮影制御部29を制御し、照射野切替えを行う。撮影制御部29は、駆動制御部31に、照射野切替えの指示信号を出す。駆動制御部31は、X線管支持機構4の回転角度と照射野限定器33の開口とを変化させることで、照射野をX線検出器10の検出面全体に切り替える。具体的には、X線管支持機構駆動部34は、駆動制御部31の制御によって、X線管支持機構4の回転角度をθ4にする。説明を具体的にするために、回転角度θ4は0°としている。開口駆動部41は、駆動制御部31の制御によって、照射野限定器33の絞り羽根を移動し、開口の大きさ及び形状をA4に変形する。開口の大きさ及び形状A4を実現するための絞り羽根の開度は、予め記憶部26に記憶される。
続いて、照射野切替えに伴いシステム制御部32の制御のもとに行われる、X線条件切替えと画像処理切替えとについて説明する。図10は、照射野切替えに関する各照射野についてのX線条件と画像処理との対応を示す対応表の一例を示す図である。対応表は、それぞれの照射野に対して、X線条件及び画像処理を規定する。照射野F1の場合、X線条件はX1、画像処理はP1である。照射野F2の場合、X線条件はX2、画像処理はP2である。照射野F3の場合、X線条件はX3、画像処理はP3である。照射野F4の場合、X線条件はX4、画像処理はP4である。対応表は、予め記憶部26に記憶される。照射野F1への切替え時、X線条件はX1、画像処理はP1に切替えられる。照射野F2への切替え時、X線条件はX2、画像処理はP2に切替えられる。照射野F3への切替え時、X線条件はX3、画像処理はP3に切替えられる。照射野F4への切替え時、X線条件はX4、画像処理はP4に切替えられる。
検査者が入力部25を介して照射野切替えの指示を入力すると、照射野切替えに連動してX線条件切替えが行われる。具体的には、システム制御部32は、記憶部26に記憶された対応表を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて撮影制御部29を制御し、X線制御部30にX線条件切替えの指示信号を出す。X線制御部30は、照射野F1、F2、F3に応じて、X線条件をX1、X2、X3、X4に切り替える。X線条件X1、X2、X3、X4は、予め記憶部26に記憶される。なお、X線条件X1、X2、X3、X4は、入力部25を介して検査者により変更されてもよい。X線条件X1、X2、X3、X4の相違は、例えば、X線管電圧、管電流時間積、陽極材質、線質補償フィルタなどである。X線条件X1、X2、X3、X4は、それぞれの照射野に適切なX線条件、あるいは検査者の好みに応じたX線条件が設定される。
検査者が、入力部25を介して照射野切替えの指示を入力すると、照射野切替えに連動して、画像処理切替えが行われる。具体的には、システム制御部32は、記憶部26に記憶された対応表を読み出す。システム制御部32は、読み出された対応表に基づいて画像処理部22に画像処理切替えの指示信号を出す。画像処理部22は、照射野X1、X2、X3、X4に応じて、画像処理をP1、P2、P3、P4に切り替える。画像処理P1、P2、P3、P4は、予め記憶部26に記憶される。なお、画像処理P1、P2、P3、P4は、入力部25を介して検査者により変更されてもよい。画像処理P1、P2、P3、P4の相違は、例えば、解像度やコントラストなどである。画像処理P1、P2、P3、P4は、それぞれの照射野に適切な画像処理方法、あるいは検査者の好みに応じた画像処理方法が設定される。
照射野切替えが完了すると、入力部25を介して検査者が指示を入力することにより、システム制御部32は、X線撮影を実行する。X線撮影において画像発生部21は、X線検出器10における照射野範囲に含まれる複数の素子からの検出信号に基づいて、X線画像を発生する。詳細には、X線検出器10に含まれる複数の素子のうち照射範囲に含まれる素子に限定して、X線検出器10は、検出信号を読み出す。画像発生部21は、限定して読み出された検出信号によって、X線画像を発生する。X線検出器10は、照射野切替えに伴い、検出信号の読み出し範囲を切り替える。照射野と検出信号の読み出し範囲との対応表は、記憶部26に記憶される。すなわち、照射野照準が乳房載置部分P1の場合、画像発生部21は、乳房載置部分P1に載置された乳房が描出されたX線画像を発生する。照射野照準が第1標本載置部分P21の場合、画像発生部21は、第1標本載置部分P21に載置された標本が描出されたX線画像を発生する。照射野照準が第2標本載置部分P22の場合、画像発生部21は、第2標本載置部分P22に載置された標本が描出されたX線画像を発生する。照射野照準は、図5の照射野切替え対応表に規定されており、記憶部26に記憶される。なお、X線画像のマトリクスサイズは照射野照準の大きさに対応する。図3のように乳房載置部分P1の大きさと標本載置部分P2の大きさとが同じ場合、乳房載置部分P1に載置された乳房が描出されたX線画像、第1標本載置部分P21に載置された標本が描出されたX線画像、及び第2標本載置部分P22に載置された標本が描出されたX線画像のマトリクスサイズは等しくなる。マンモグラフィ検査の場合は照射野照準がX線検出器10の検出面全体であるため、マンモグラフィ検査で発生される乳房X線画像はバイオプシ検査で発生される各種X線画像よりも大きい。
以下、図11を参照しながら、本実施形態における一連の動作例を説明する。図11は、本実施形態に係るバイオプシ検査の典型的な流れを模式的に示す図である。
まず、位置決めのためのステレオ撮影が行われる。ステレオ撮影の前に、撮影制御部29は、検査者により駆動制御部31入力部25を介して入力されたX線検出器10の検出面全体から乳房載置部分P1への切替え指示を受けて、駆動制御部31を制御し、X線検出器10の検出面全体から乳房載置部分P1へ照射野を切り替える。照射野切替えに伴い、撮影制御部29は、X線制御部30を制御して、X線検出器10の検出面全体のためのX線条件から乳房載置部分P1のためのX線条件に切り替える。また、システム制御部32は、照射野切替えに伴い、画像処理部22を制御し、マンモグラフィ検査における乳房X線画像のための画像処理からバイオプシ検査における乳房ステレオ画像のための画像処理に切り替える。なお、バイオプシ検査において、ステレオ撮影を始める前にマンモグラフィ検査用の照射野に設定されている必要はない。照射野は、標本載置部分P2に設定されていてもよいし、乳房載置部分P1に設定されていてもよい。
被検者の乳房が載置面11に載せられ、ステレオ撮影の準備が整うと、検査者は、入力部25を介して撮影開始指示を入力する。指示が入力されたことを契機として、システム制御部32は、撮像機構2に、乳房のステレオ撮影を実行させる(ステップS1)。ステップS1においてシステム制御部32は、撮影制御部29に撮影開始指示を送信する。撮影制御部29は、撮影開始指示に従って、X線制御部30と駆動制御部31とを制御し、X線管支持機構4の2つの回転角度で、乳房載置部分P1に載置された乳房をX線撮影する。画像発生部21あるいは再構成部23は、正側の回転角度におけるX線検出器10からの検出信号に基づいて、正側の乳房ステレオ画像を発生し、負側の回転角度におけるX線検出器10からの検出信号に基づいて、負側の乳房ステレオ画像を発生する。図12は、乳房ステレオ画像の一例を示す図である。表示部27は、乳房ステレオ画像I1を表示する。乳房ステレオ画像I1は、正側の乳房ステレオ画像I11と負側の乳房ステレオ画像I12とを有する。なお、ステレオ撮影ではなく回転角度0°での通常のX線撮影が実行されてもよい。ただし、ターゲットとなる石灰化領域はコントラストが低いため、本実施形態ではターゲットの描出確度を上げるためにステップS1では通常のX線撮影ではなくステレオ撮影を行っている。
ステレオ撮影が行われると、続いて収集針16の位置決め処理が行われる。システム制御部32は、まず標本採取機構13に収集針16の位置決め処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において画像処理部22は、乳房ステレオ画像I1のうちターゲットTAの写った範囲を強調させるための画像処理を施す。画像処理は、例えば、コントラスト強調処理や解像度向上処理などがある。乳房ステレオ画像I1は、表示部27に表示される。検査者は、表示された乳房ステレオ画像I1を観察し、乳房内部のターゲットTAの位置を特定し、収集針16の挿入位置を決定する。なお、バイオプシ検査の一連の動作において、乳房は載置面11に載置され、圧迫板12により固定されている。検査者は、決定した収集針16を挿入位置まで移動するための指示を、入力部25を介して入力する。採取制御部14は、入力部25を介した移動指示に従って収集針16を移動するように採取駆動部15を駆動し、収集針16を挿入位置に移動させる。収集針16は、外径約3〜4mmの中空構造の針である。なお、収集針16の挿入位置は、乳房X線画像I1に、ターゲットTAの位置を特定する画像認識処理を施すことにより決定されてもよい。
ステップS2が行われるとシステム制御部32は、標本採取機構13により乳房に収集針16を挿入させる(ステップS3)。ステップS3においてシステム制御部32は、入力部25を介して検査者により入力された挿入指示を採取制御部14に送信する。採取制御部14は、システム制御部32からの挿入指示に従い採取駆動部15を駆動させ、標本採取機構13により収集針16を乳房に挿入させる。
ステップS3が行われるとシステム制御部32は、標本採取機構13により乳房から標本を採取させる(ステップS4)。ステップS4においてシステム制御部32は、入力部25を介して検査者により入力された採取指示を採取制御部14に送信する。採取制御部14は、システム制御部32からの採取指示に従い採取駆動部15を駆動させ、乳房に挿入した収集針16で組織細胞を吸引し、標本を採取する。採取された標本は、検査者により標本載置部分P2に載置される。なお、X線診断装置1は採取された標本を標本載置部分P2に載置する標本載置部をさらに具備し、採取された標本は、採取制御部14の制御によって標本載置部分P2に載置されてもよい。
ステップS4が行われるとシステム制御部32は、撮影制御部29に照射野切替えを実行させる(ステップS5)。ステップS5において撮影制御部29は、検査者により駆動制御部31入力部25を介して入力された乳房載置部分P1から標本載置部分P2への切替え指示を受けて、駆動制御部31を制御し、乳房載置部分P1から標本載置部分P2へ照射野を切り替える。照射野切替えに伴い、撮影制御部29は、X線制御部30を制御して、乳房載置部分P1のためのX線条件から標本載置部分P2のためのX線条件に切り替える。また、システム制御部32は、照射野切替えに伴い、画像処理部22を制御し、乳房ステレオ画像のための画像処理から標本X線画像のための画像処理に切り替える。
ステップS5が行われるとシステム制御部32は、撮像機構2に、標本X線撮影を実行させる(ステップS6)。ステップS6において画像発生部21は、標本X線画像I2を発生する。表示部27は、標本X線画像I2を表示する。図13は、標本X線画像I2の一例を示す図である。なお、表示部27は、乳房ステレオ画像I1と標本X線画像I2とを並べて表示してもよい。乳房ステレオ画像I1と標本X線画像I2とは、同一載置面11に載置されて撮影される。従って、システム制御部32は、乳房ステレオ画像I1と標本X線画像I2とを、同一の幾何学的拡大率で撮影することができる。
ステップS6が行われるとシステム制御部32は、入力部25から撮影終了の指示の有無を判定する(ステップS7)。検査者は、標本X線画像I2にターゲットTAが写っていることを確認すると、入力部25に撮影終了の指示を入力する。標本X線画像I2にターゲットTAが写っていることは、乳房の組織標本が採取できたことを意味する。ステップS7において撮影終了の指示有りと判定した場合、本実施形態における一連動作は終了となる。ステップS7において撮影終了の指示無しと判定した場合、ステップS2に戻る。バイオプシ検査では、組織標本採取の失敗がよくあるため、ステップS2乃至ステップS7は繰り返し行われる。従って、載置面11に固定された乳房を外さずに繰り返し組織標本を採取できることで、検査者及び被検者の負担を軽減する。また、組織標本の採取と標本X線撮影とを同一装置で行えることは、検査者及び被検者の負担を軽減する。
上記のとおり、本実施形態に係るX線診断装置1によれば、バイオプシ検査における乳房ステレオ撮影、組織標本の採取及び標本X線撮影を、同一の装置で行うことができる。すなわち、乳房ステレオ撮影、組織標本の採取及び標本X線撮影を、載置面11に固定された乳房を外さずに行うことができる。従って、載置面11に固定された乳房を外さずに組織標本の採取と標本X線撮影とを繰り返し行えることで、検査者及び被検者の負担は軽減される。また、バイオプシ検査と同一の装置でマンモグラフィ検査を行うことができる。すなわち、マンモグラフィ検査で発生された画像とバイオプシ検査で発生された画像とを、同一被検者のDICOM画像として関連付けることができる。従って、マンモグラフィ検査及びバイオプシ検査の検査画像の活用がしやすくなり、複数の検査画像の組み合わせ表示やレポート作成への利用が容易になる。かくして、本実施形態に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査の検査効率を向上させることができる。
次に本実施形態の種々の応用例について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
(応用例1)
上記の実施形態の通り、X線診断装置1を用いたバイオプシ検査において、画像発生部21は標本X線画像I2を発生する。また、マンモグラフィ検査において、画像発生部21は乳房X線画像I3を発生する。応用例1に係る表示部27は、乳房X線画像I3に標本X線画像I2を重ねて表示することで、バイオプシ検査の検査効率の向上を図る。
図14は、応用例1に係る表示部27による乳房X線画像I3と標本X線画像I2との表示例を示す図である。表示部27は、乳房X線画像I3を表示する。表示部27は、入力部25で入力された検査者の指示に基づいて、乳房X線画像I3の所定の表示位置を中心点とし、標本X線画像I2を重ねて表示する。所定の表示位置は、入力部25を介した検査者の指示によって変更される。所定の表示位置は、乳房X線画像I3における乳房領域に標本X線画像I2が重ならないように設定される。
表示部27に表示された乳房X線画像I3への標本X線画像I2の表示について、具体的に説明する。例えば、検査者は、表示部27に表示された標本X線画像I2の表示/非表示を切り替えるアイコンをマウス操作でクリックすることで、表示部27に表示された乳房X線画像I1の所定の範囲に、標本X線画像I2を重ねて表示する。なお、表示部27は、乳房X線画像I3における乳房内部のターゲット領域TRと標本X線画像I2との対応関係を示すためのマークM1を、併せて表示してもよい。マークM1とは、具体的には、図14に示されているターゲット領域TRを囲む円や、ターゲット領域TRと標本X線画像I2とを結ぶ直線などである。例えば、操作者がターゲット領域TRを指定するマウスのドラッグ操作を契機に、表示部27は、ターゲット領域TRを囲む円と、ターゲット領域TRと標本X線画像I2とを結ぶ直線を、上記画像にさらに重ねて表示する。なお記憶部26は、乳房X線画像I3、ターゲット領域TRと標本X線画像I2との対応関係を描出するマークM1、及び乳房X線画像I1の表示画面をDICOM画像として記憶しても良い。
乳房X線画像I3の乳房領域に標本X線画像I2が重なり、標本X線画像I2と重なる乳房領域の部分が不可視になることがある。その際、検査者は、表示部27に表示された標本X線画像I2の表示位置を、マウスのドラッグ操作で移動できる。標本X線画像I2の表示位置を移動することにより、標本X線画像I2によって不可視になっていた乳房領域を可視にすることができる。
上記のとおり、応用例1に係るX線診断装置1によれば、表示部27は、マンモグラフィ検査によって発生された乳房X線画像I3に、バイオプシ検査によって発生された標本X線画像I2を重ねて表示することができる。すなわち、乳房領域と標本領域が、一枚の画像で読影可能となる。また、上記画像に、マークM1をさらに重ねて表示することができる。マークによって、乳房領域内のターゲット領域TRと標本X線画像I2との対応関係を示すことができる。従って、乳房X線画像I3と標本X線画像I2の検査者による読影が容易になる。かくして、応用例1に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査の検査効率を向上させることができる。
(応用例2)
応用例2に係る表示部27は、バイオプシ検査においてターゲットが採取されたか否かを判断するためのレイアウトで乳房ステレオ画像と標本X線画像とを表示する。
図15は、応用例2に係る表示部27による乳房ステレオ画像と標本X線画像との表示例を示す図である。乳房ステレオ画像は、標本採取前の乳房ステレオ画像と標本採取後の乳房ステレオ画像とを有する。図15に示すように、応用例2において表示部27は、バイオプシ検査においてターゲットTAが採取されたか否かを判断するため、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像を並べて表示する。図15に示すように、表示部27は、ターゲットTAが採取されたか否かの検査者による判断を支援するため、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像を時系列に沿って縦方向に並べて表示する。標本採取前の乳房ステレオ画像は、標本採取前の正側の回転角度における乳房ステレオ画像と、標本採取前の負側の回転角度における乳房ステレオ画像とを有する。標本採取後の乳房ステレオ画像は、標本採取後の正側の回転角度における乳房ステレオ画像と、標本採取後の負側の回転角度における乳房ステレオ画像とを有する。各画像に描出されたターゲットTAの対応関係を正確に行うため、各画像は、同一のサイズで表示されると良い。この際、表示部27は、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像を適宜縮小することにより一画面で表示しても良い。これにより、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像の一覧性が向上し、これら画像の観察が容易になる。なお記憶部26は、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像の表示画面をDICOM画像として記憶しても良い。
また、表示部27は、図15に示すように、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本領域X線画像の各々に描出されたターゲットTA間の対応関係を示すマークM2を表示してもよい。マークM2により関連付けられた双方のターゲットTAは、同一物であることを意味する。具体的には、マークM2は、標本X線画像におけるターゲットTAと標本採取前の乳房ステレオ画像におけるターゲットTAとを結ぶ直線などである。直線マークは、操作者により入力部25を介して指定された始点と終点とを結ぶ直線により規定される。表示部27は、操作者により始点と終点とが指定された場合、指定された始点と終点とを結ぶマークM2を、標本採取前の乳房ステレオ画像や標本採取後の乳房ステレオ画像、標本X線画像に重ねて表示する。例えば、図15においては、標本採取前の乳房ステレオ画像にはターゲットTAが描出されており、バイオプシ検査においてターゲットTAが採取されたとする。この場合、標本X線画像に算出されたターゲットTAが描出され、標本採取後の乳房ステレオ画像には当該ターゲットTAが描出されない。すなわち、標本採取前後で消失した、つまり採取ターゲットTAは採取されたことを示している。このような状況下の場合、検査者は、標本採取前の乳房ステレオ画像に描出されたターゲットTAと標本X線画像に描出されたターゲットTAとを関連付けるように入力部25を介して指示する。この指示を受けて表示部27は、両ターゲットTAを関連付けるマークM2を表示する。マークM2を表示することにより表示部27は、マークM2により関連付けられた複数のターゲットTAが同一物であることを観察者に明瞭に把握させることがきる。なお記憶部26は、マークM2が描出された標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像、及び標本X線画像の表示画面をDICOM画像として記憶しても良い。なお、標本採取後の乳房ステレオ画像、標本X線画像、及びマークM2が描出された標本採取前の乳房ステレオ画像は、関連付け部24で同一検査のDICOM画像として関連付けられてもよい。
上記のとおり、応用例2に係る表示部27は、標本採取前の乳房ステレオ画像、標本採取後の乳房ステレオ画像及び標本X線画像を並べて表示する。また、マークM2を用いて、複数画像間の同一の採取ターゲットTAを関連付けることができる。これにより、応用例2に係る表示部は、ターゲットTAが採取されたか否かを容易に判断させることが可能となる。かくして、応用例2に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査の検査効率を向上させることができる。
(応用例3)
応用例3に係る表示部27は、バイオプシ検査においてターゲットTAが採取されたか否かを判断するためのレイアウトで、乳房のトモシンセシス撮影によって発生される画像と標本X線画像とを表示する。
図16は、応用例3に係る表示部27による乳房断面画像と標本X線画像との表示例を示す図である。図16に示すように、応用例3において表示部27は、バイオプシ検査においてターゲットTAが採取されたか否かを判断するため、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像を並べて表示する。ターゲットTAとなる石灰化領域の近傍に乳腺がある場合、ステレオ撮影及び通常のX線撮影ではターゲットTAがX線画像に描出されない場合がある。ターゲットTAの描出確度をより向上させるため、乳房を立体的に撮影するトモシンセシス撮影により発生される断面画像が表示されると良い。以下、トモシンセシス撮影により発生された乳房X線画像を再構成することで発生された断面画像を乳房断面画像と呼ぶことにする。
標本採取前の乳房トモシンセシス画像を撮影する場合、照射野は乳房載置部分P1に照準される。検査者は、標本採取前において入力部25を介してトモシンセシス撮影の開始指示を行う。トモシンセシス撮影の開始指示を契機に、撮影制御部29は、X線制御部30と駆動制御部31とを制御し、X線管支持機構4の複数の回転角度で、乳房載置部分P1に載置された乳房をX線撮影する。複数の回転角度とは、例えば、−φ以上かつφのような、0°を挟んだ複数の回転角度に設定されると良い。具体的には、例えば、トモシンセシス撮影は、X線管7をX線管支持機構4の回転角度−15°の位置から開始し、β方向に連続的に移動させながら一定間隔でX線発生・画像収集を繰り返す。X線撮影は、X線管7がX線管支持機構4の回転角度15°の位置で終了する。画像発生部21は、複数の回転角度におけるX線検出器10からの検出信号に基づいて、複数のX線画像を発生する。記憶部26は、トモシンセシス撮影によって発生された複数の乳房X線画像を記憶する。再構成部23は、複数の乳房X線画像を再構成し、乳房のボリュームデータを生成する。画像処理部22は、乳房のボリュームデータに基づいて、複数の並行した断面を表す標本採取前の乳房断面画像を発生させる。標本採取後の乳房断面画像も同様に撮影される。
図16に示すように、表示部27は、複数の乳房断面画像を断層位置に対応させて縦方向に並べて表示する。これにより、検査者は、標本採取前の乳房断面画像に描出されるターゲットTAを、断面画像により立体的に把握することができる。従って、特にターゲットTAとなる石灰化領域の近傍に乳腺がある場合、乳房ステレオ画像及び乳房X線画像を観察する場合に比して、ターゲットTAの把握が容易になる。
図16に示すように、表示部27は、ターゲットTAが採取されたか否かの検査者による判断を支援するため、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像を時系列に沿って横方向に並べて表示する。なお、表示部27は、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像を適宜縮小することにより一画面で表示しても良い。これにより、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像の一覧性が向上し、これら画像の観察が容易になる。なお記憶部26は、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像の表示画面をDICOM画像として記憶しても良い。
また、表示部27は、図16に示すように、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像の各々に描出されたターゲットTA間の対応関係を示すマークM3を表示してもよい。マークM3により関連付けられた双方のターゲットTAは、同一物であることを意味する。具体的には、マークM3は、標本X線画像におけるターゲットTAと標本採取前の乳房断面画像におけるターゲットTAとを結ぶ直線などである。直線マークは、操作者により入力部25を介して指定された始点と終点とを結ぶ直線により規定される。表示部27は、操作者により始点と終点とが指定された場合、指定された始点と終点とを結ぶマークM3を、標本採取前の乳房断面画像や標本採取後の乳房断面画像、標本X線画像に重ねて表示する。例えば、図16においては、標本採取前の乳房断面画像にはターゲットTAが描出されており、バイオプシ検査においてターゲットTAが採取されたとする。この場合、標本X線画像に採取されたターゲットTAが描出され、標本採取後の乳房断面画像には当該ターゲットTAが描出されない。すなわち、標本採取前後で消失した、つまり採取ターゲットTAは採取されたことを示している。このような状況下の場合、検査者は、標本採取前の乳房断面画像に描出されたターゲットTAと標本X線画像に描出されたターゲットTAとを関連付けるように入力部25を介して指示する。この指示を受けて表示部27は、両ターゲットTAを関連付けるマークを表示する。マークM3を表示することにより表示部27は、マークM3により関連付けられた複数のターゲットTAが同一物であることを観察者に明瞭に把握させることがきる。なお記憶部26は、マークM3が描出された標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像、及び標本X線画像の表示画面をDICOM画像として記憶しても良い。
さらに、画像処理部22は、標本採取前の乳房断面画像と標本採取後の乳房断面画像とに画像解析を施すことで、ターゲットTAが採取されたか否かを判定してもよい。具体的には、画像解析は、パターン認識処理などによって実現される。判定結果は表示部27に表示される。なお、図16に示すように、表示部27は、上記表示画面に解析結果をさらに並べて表示することで、ターゲットTAが採取されたか否かの検査者による判断を支援する。
上記のとおり、応用例3に係る表示部27は、標本採取前の乳房断面画像、標本採取後の乳房断面画像及び標本X線画像を並べて表示する。これにより、検査者は、標本採取前の乳房断面画像に描出されるターゲットTAを、断面画像により立体的に把握することができる。また、マークM3を用いて、複数画像間の同一の採取ターゲットTAを関連付けることができる。これにより、応用例3に係る表示部は、ターゲットTAが採取されたか否かを容易に判断させることが可能となる。従って、収集針16の位置決めの精度が向上する。さらに、標本採取前の乳房断面画像と標本採取後の乳房断面画像とに画像解析を施すことで、ターゲットTAが採取されたか否かを判定し、解析結果を表示することができる。かくして、応用例3に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査の検査効率の向上させることができる。
(応用例4)
上記の実施形態において、X線診断装置1を用いたバイオプシ検査では、X線撮影を複数回行うため、検査者は被検者の被曝線量を評価する必要がある。バイオプシ検査の際には、被曝線量を評価するために被曝線量に関するレポートが作成される。また、バイオプシ検査のレポートにおいて、採取された標本の体積などの情報も重要である。応用例4において表示部27は、標本X線画像、検査中の積算被曝線量及び標本の体積に関する情報を、並べて表示する。
図17は、応用例4に係るバイオプシ検査レポートの一例を示す図である。応用例4に係る画像処理部22は、線量計算機能と体積計算機能とを有する。線量計算機能において画像処理部22は、バイオプシ検査における、被検者の積算被曝線量を計算する機能である。例えば、画像処理部22は、平均乳腺線量(Average Glandular Dose:以下、AGDと呼ぶ)や入射表面線量(Entrance Skin Dose:以下、ESDと呼ぶ)を計算する。体積計算機能において画像処理部22は、標本の体積を計算する機能である。図17では、標本の体積として、Total、Max、Min、Aveの4つが表示されている。Totalは、採取した標本の総体積を示す。Maxは、採取した標本のうち最も体積の大きな標本の体積を示す。Minは、採取した標本のうち最も体積の小さな標本の体積を示す。Aveは、採取した標本の体積の平均値を示す。なお記憶部26は、図17のバイオプシ検査レポートの表示画面をDICOM画像として記憶してもよい。
上記のとおり、応用例4に係る表示部27は、標本X線画像、検査中の積算被曝線量及び標本の体積に関する情報を、並べて表示する。これにより、応用例4に係る表示部27は、バイオプシ検査における積算被曝線量と標本画像や標本情報とを、容易に把握させること可能となる。かくして、応用例4に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査の検査効率を向上させることができる。
(応用例5)
上記の実施形態において、X線診断装置1を用いたバイオプシ検査では、X線撮影を複数回行うため、被検者への被曝線量を低減する必要がある。応用例5においてX線診断装置1は、被検者への被曝線量を低減するためのX線防護機構42をさらに具備する。X線防護機構42は、照射野が標本載置部分P2に照準されている場合における被検者への被曝線量を低減する。
図18は、応用例5に係る載置台設置型のX線防護機構42の一例を示す図である。載置台設置型のX線防護機構42は、載置台9に設置されている。X線防護機構42は、X線を遮蔽するための鉛などの重金属により形成される。X線防護機構42は、X線管7で発生され被検者に照射されるX線を遮蔽するように形状や大きさが設計される。また、X線防護機構42は、載置面11やX線検出器10などで反射され被検者に照射されるX線を遮蔽する。X線防護機構42は、X線が標本載置部分P2及び乳房載置部分P1への入射を妨げないように設置される。X線防護機構42は、載置台9あるいは標本採取機構13に設置される。なお、載置台設置型のX線防護機構42は、載置台9あるいは標本採取機構13に、ねじなどで着脱可能に固定されてもよい。なおX線防護機構42は、図19に示すように、標本採取機構13に設置されても良い。
かくして、応用例5に係るX線診断装置1は、バイオプシ検査における被検者の被曝線量を低減させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。