JP6984625B2 - 鉄鋼スラグの処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鉄工程で発生した鉄鋼スラグを製鉄原料やセメント原料などとして利材化するために、鉄鋼スラグを利材化に適した状態に処理するための処理方法に関する。
鉄鋼製造プロセスにおいて、脱炭精錬や溶銑予備処理などの精錬工程から発生する製鋼スラグは、精錬プロセスにより、脱炭スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグ、脱燐スラグなど様々な発生形態がある。通常、これらの製鋼スラグの中には20〜50質量%程度のFeが含まれており、スラグをそのまま処分すると鉄鋼製造におけるFe歩留りが低下することから、Fe分(主に金属鉄)とスラグ分(Ca、Si、Alなど)に分離し、Fe分を製銑または製鋼工程でリサイクルすることが行われている。また、スラグ分については、路盤材などの土木材料のほかに、セメント原料などとしてリサイクルすることが行われている。
製鋼スラグをFe分とスラグ分に分離する方法としては、磁力選別による分離が一般的であり、ヤードに排滓された高温スラグに散水して冷却した後、篩(グリズリなど)による粒度調整、粉砕機(ハンマークラッシャー、ロッドミルなど)による粉砕処理、乾燥装置による乾燥処理の各工程を経て、磁力選別機による磁力選別が行われる。
また、従来、製鋼スラグをFe分とスラグ分に分離し、利材化に適した状態に処理する方法として様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、製鋼スラグをセメント原料として利材化するための処理方法が提案されている。この処理方法は、製鋼スラグを処理ヤードで散水冷却してから、スラグの大きい塊を破砕して地金を除去した後、スラグを一旦積み付け、スラグに含有されたCaOの反応熱により水分を10重量%以下にしてからスラグを破砕し、このスラグに含まれる金属鉄(粒鉄)を選別して除去するものである。
特開2001−48605号公報
例えば、磁力選別で分離されたスラグ分(非磁着物)をセメント原料化する場合、そのスラグ分に金属鉄(粒鉄)が残存していると、金属鉄に起因した鉄さびが発生する懸念があるため、高品質のセメント原料とするためにはスラグ中の金属鉄残存率を極力低くする必要がある。一方、磁力選別で分離されたFe分(磁着物)を製鉄原料化する場合には、金属鉄の含有率を極力高くする必要がある。
しかし、製鋼スラグをFe分とスラグ分に分離するために従来行われている磁力選別では、Fe分とスラグ分の分離が十分でなく、高品質のセメント原料や製鉄原料が得られにくい問題がある。この点は、特許文献1の処理方法でも同様であり、特許文献1の実施例の記載をみると、製品スラグ中の金属鉄の残存率が8質量%程度もあり、高品質なセメント原料が得られているとは言い難い。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、鉄鋼スラグをセメント原料や製鉄原料などとして利材化するために行う処理において、鉄鋼スラグを磁力選別する際の選別精度(Fe分とスラグ分の分離性)を高め、鉄鋼スラグを利材化に適した状態に効率的に処理することができる処理方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、処理対象である鉄鋼スラグを従来法のように一括して磁力選別するのではなく、複数の粒度範囲(例えば、3〜5程度の粒度範囲)に分級した上で、特定の磁力選別手段を用いて各粒度範囲のスラグ毎に磁力選別することにより、選別精度(Fe分とスラグ分の分離性)が効果的に高められること、また、その際に各粒度範囲の鉄鋼スラグに最適な磁場変化周波数で磁力選別することにより、選別精度がより高められることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]製鉄工程で発生した鉄鋼スラグを回収して複数の粒度範囲に分級する分級工程(A)と、該分級工程(A)で分級された各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物(x)と非磁着物(y)に分別する磁力選別工程(B)を有し、
該磁力選別工程(B)では、ベルトコンベアを構成するプーリ(1)の1つが磁場印加手段を内蔵するプーリ式磁力選別機であって、前記磁場印加手段がプーリ本体に対して独立して回転駆動する磁石ロール(2)からなり、該磁石ロール(2)は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極(3)を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極(3)が異なる極性を有する磁力選別機を用いて、各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[2]上記[1]の処理方法において、分級工程(A)では、鉄鋼スラグを3つ以上の粒度範囲に分級することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[3]上記[1]又は[2]の処理方法において、さらに、分級工程(A)で分級する前の鉄鋼スラグを破砕する破砕工程(C)を有することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[4]複数の粒度範囲に分級された鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物(x)と非磁着物(y)に分別する磁力選別工程(B)を有し、
該磁力選別工程(B)では、ベルトコンベアを構成するプーリ(1)の1つが磁場印加手段を内蔵するプーリ式磁力選別機であって、前記磁場印加手段がプーリ本体に対して独立して回転駆動する磁石ロール(2)からなり、該磁石ロール(2)は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極(3)を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極(3)が異なる極性を有する磁力選別機を用いて、各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[5]上記[4]の処理方法において、磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグが3つ以上の粒度範囲に分級されていることを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの処理方法において、磁力選別工程(B)では、下記(1)式で定義される磁石ロール(2)の磁場変化周波数F(Hz)を10〜1000Hzとし、且つ各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ異なる磁場変化周波数Fで磁力選別することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
F=(x・P)/60 …(1)
ここで x:磁石ロール(2)の回転数(rpm)
P:磁石ロール(2)が周方向で備える磁極数(但し、N極・S極のペアで1磁極とする)
[7]上記[6]の処理方法において、磁力選別工程(B)では、複数の粒度範囲の鉄鋼スラグのうち、小さい粒度範囲の鉄鋼スラグほど磁場変化周波数Fを高くすることを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[8]上記[6]又は[7]の処理方法において、磁力選別工程(B)で各粒度範囲の鉄鋼スラグを磁力選別する際の磁場変化周波数Fを、各粒度範囲の鉄鋼スラグ毎に予め定めておき、磁力選別工程(B)では、予め定められた磁場変化周波数Fで各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかの処理方法において、磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグは、目開きが10mmの篩の篩下となる粒度を有することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかの処理方法において、磁力選別工程(B)では、磁力強度が1000〜15000ガウスの磁力選別手段で磁力選別を行うことを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかの処理方法において、鉄鋼スラグが製鋼スラグであることを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[12]上記[1]〜[11]のいずれかの処理方法において、さらに、磁力選別工程(B)で分別された非磁着物(y)を造粒する造粒工程(D)を有することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[13]上記[1]〜[12]のいずれかの処理方法において、さらに、磁力選別工程(B)で分別された磁着物(x)を塊成化する塊成化工程(E)を有することを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
[14]上記[12]の処理方法における造粒工程(D)で得られた造粒物をセメント原料として用いることを特徴とする鉄鋼スラグの利材化方法。
[15]上記[13]の処理方法における塊成化工程(E)で得られた塊成化物を製鉄原料として用いることを特徴とする鉄鋼スラグの利材化方法。
[16]上記[12]の処理方法により、セメント原料となる非磁着物(y)の造粒物を得ることを特徴とするセメント原料の製造方法。
[17]上記[13]の処理方法により、製鉄原料となる磁着物(x)の塊成化物を得ることを特徴とする製鉄原料の製造方法。
本発明によれば、鉄鋼スラグをセメント原料や製鉄原料などとして利材化するために行う処理において、鉄鋼スラグを磁力選別する際の選別精度(Fe分とスラグ分の分離性)を高め、鉄鋼スラグを利材化に適した状態に効率的に処理することができる。すなわち、セメント原料に好適な金属鉄濃度が低い非磁着物と、製鉄原料に好適な金属鉄濃度が高い磁着物を得ることができる。
また、磁力選別で分別された非磁着物を造粒工程で造粒することにより、搬送性が良好でセメント原料として好適な造粒物を得ることができ、また、磁力選別で分別された磁着物を塊成化工程で塊成化することにより、搬送性が良好で製鉄原料として好適な塊成化物を得ることができる。
本発明の一実施形態の処理フローを示す説明図 本発明の磁力選別工程で用いるプーリ式磁力選別機の一実施形態とその使用状況を示す説明図 本発明の磁力選別工程で用いるプーリ式磁力選別機の他の実施形態とその使用状況を示す説明図 本発明法及び従来法において、鉄鋼スラグを磁力選別工程で磁力選別する際の磁場変化周波数と分別された磁着物の金属鉄含有量との関係を示すグラフ
本発明は、従来法のように処理対象の鉄鋼スラグを一括して磁力選別するのではなく、複数の粒度範囲(例えば、3〜5程度の粒度範囲)に分級し、各粒度範囲の鉄鋼スラグ毎に磁力選別を行うものである。すなわち、本発明の第一の処理方法は、製鉄工程で発生した鉄鋼スラグを回収して複数の粒度範囲に分級する分級工程(A)と、この分級工程(A)で分級された各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物xと非磁着物yに分別する磁力選別工程(B)を有し、この磁力選別工程(B)では、特定の磁力選別機を用いて各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別するものである。また、必要に応じて、分級工程(A)で分級する前の鉄鋼スラグを破砕する破砕工程(C)を有することができる。さらに、必要に応じて、磁力選別工程(B)で分別された非磁着物yを造粒する造粒工程(D)と、同じく磁力選別工程(B)で分別された磁着物xを塊成化する塊成化工程(E)を有することができる。
また、本発明の第二の処理方法では、予め複数の粒度範囲に分級された鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物(x)と非磁着物(y)に分別する磁力選別工程(B)を有し、この磁力選別工程(B)では、特定の磁力選別機を用いて各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別するものである。また、必要に応じて、磁力選別工程(B)で分別された非磁着物yを造粒する造粒工程(D)と、同じく磁力選別工程(B)で分別された磁着物xを塊成化する塊成化工程(E)を有することができる。
図1は、本発明の第一の処理方法の一実施形態の処理フローを示しており、以下、この実施形態を例に本発明の詳細を説明する。
なお、以下の説明において、スラグの粒度について「未満」という場合は、その数値の篩目を有する篩の篩下となる粒度を指し、また、「以上」という場合は、その数値の篩目を有する篩の篩上となる粒度を指す。したがって、例えば粒度が1mm未満という場合には、目開きが1mmの篩の篩下となる粒度を意味し、粒度が1mm以上という場合には、目開きが1mmの篩の篩上となる粒度を意味する。
分級工程(A)では、鉄鋼スラグ(以下「スラグ」という)を複数の粒度範囲に分級し、「粗い粒度範囲のスラグ」から「細かい粒度範囲のスラグ」までの複数の粒度範囲のスラグとする。本発明では、次工程である磁力選別工程(B)において特定の磁力選別手段でスラグを磁力選別するものであるが、このような特定の磁力選別手段による磁力選別では、上記のように分級することによって粒径範囲を狭めたスラグ(すなわち粒径をある程度一定に揃えたスラグ)を選別対象とすることにより、Fe分とスラグ分の選別精度が高められることが判った。
分級する粒度範囲の数は特に制限はないが、一般には3つ以上の粒度範囲に分級することが好ましく、3〜5程度の粒度範囲に分級することが特に好ましい。ここで、図1の実施形態では、細粒、中粒、粗粒の3つの粒度範囲のスラグに分級しており、また、後述する実施例では、細粒、細かい中粒、粗い中粒、粗粒の4つの粒度範囲のスラグに分級している。
また、磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグは、粒度(最大粒度)が大きすぎると磁力選別の選別精度が低下するので、分級工程(A)を経て磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグは10mm未満の粒度(目開きが10mmの篩の篩下となる粒度)であることが好ましい。したがって、分級工程(A)では、10mm未満の粒度範囲において、3〜5程度の粒度範囲に分級されることが特に好ましいと言える。
本発明者らの調査では、例えば、10mm未満の粒度範囲において、1mm未満、1mm以上5mm未満、5mm以上の3つの粒度範囲(細粒、中粒、粗粒)に分級し、各粒度範囲のスラグを特定の磁力選別手段により磁力選別することによりスラグ分とFe分の選別精度が向上すること、特にその際に磁力選別条件を最適化することにより、選別精度が特に大きく向上することが確認された。
分級工程(A)において分級する粒度範囲の目安としては、例えば、スラグを3つの粒度範囲(細粒、中粒、粗粒の3つの粒度範囲)に分級する場合は、目開きが0.5〜3mmの篩の篩下を細粒スラグとし、目開きが2〜10mmの篩の篩上を粗粒スラグとし、これら細粒スラグ及び粗粒スラグ以外を中粒スラグとすればよいが、これに限定されるものではない。また、スラグを4つの粒度範囲(細粒、細かい中粒、粗い中粒、粗粒の4つの粒度範囲)に分級する場合、例えば、目開きが0.5〜3mmの篩の篩下を細粒スラグとし、目開きが2〜10mmの篩の篩上を粗粒スラグとし、これら細粒スラグ及び粗粒スラグ以外のスラグ(中粒スラグ)のうち、目開きが1〜5mmの篩の篩下を細かい中粒スラグ、篩上を粗い中粒スラグとすればよいが、これに限定されるものではない。
分級工程(A)では、分級装置として、例えば、振動篩、回転式円筒篩、篩面が波状に振動する波動式スクリーン、ジャンピングスクリーンなどを用いることができる。また、これらの分級装置では、同時に多段の篩目を装着することで効率的な分級処理が可能となる。
また、精錬工程で発生した鉄鋼スラグ(スラグ塊)は、必要に応じて、分級工程(A)で分級する前に破砕工程(C)で所定の粒径に破砕処理してもよい。破砕粒径は鉄鋼スラグの種類によっても異なるが、含まれている金属鉄の単体分離が十分に促進される粒径が好ましく、破砕処理する場合には、10mm未満の適宜な粒度に破砕することが好ましい。
破砕としては、例えば、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールクラッシャーなどを用いることができ、また、ボールミル、ロッドミルなどの粉砕機を用いてもよい。
磁力選別工程(B)では、分級された各粒度範囲のスラグ毎に磁力選別が行われる。図1の実施形態では、細粒、中粒、粗粒の3つの粒度範囲のスラグに対して、磁力選別工程(B1)〜(B3)が実施される。
磁力選別工程(B)では、ベルトコンベアを構成するプーリ1の1つが磁場印加手段を内蔵するプーリ式磁力選別機(当該プーリは「回転ドラム」と呼ばれることもある)であって、前記磁場印加手段がプーリ本体に対して独立して回転駆動する磁石ロール2からなり、この磁石ロール2は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極3を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極3が異なる極性を有する磁力選別機を用いて、各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別する。
図2は、そのようなプーリ式磁力選別機の一実施形態とその使用状況を示す説明図である。図において、11はプーリ式の磁力選別機、16は磁力選別されるスラグ(以下、「スラグa」という)を磁力選別機11に搬送するための搬送コンベア(ベルトコンベア)であり、磁力選別機11は、搬送コンベア16の上方に位置し、搬送コンベア16で搬送されてきたスラグaから磁力により磁着物粒子を上方に吸引して分離する。
磁力選別機11において、1は磁場印加手段を内蔵したコンベア始端部12側のプーリ(ベルトガイドロール)、4はコンベア終端部13側のプーリ(ベルトガイドロール)、6はコンベアベルトであり、このコンベアベルト6がプーリ1、4間に張設されることで、ベルトコンベアが構成される。なお、本実施形態では、プーリ1はプーリ4よりも大径に構成され、プーリ4の回転軸がプーリ1の回転軸よりも上方に位置することにより、コンベアベルト6の上面(プーリ1、4間の上部ベルト部分)はほぼ水平状となっている。
搬送コンベア16において、17はコンベアベルト、18はコンベア始端部14側のプーリ(ベルトガイドロール)、19はコンベア終端部15側のプーリ(ベルトガイドロール)であり、コンベアベルト17がプーリ18、19間に張設されることで、ベルトコンベアが構成される。また、搬送コンベア16の上方であって、コンベア始端部14寄りの位置には、コンベアベルト17上にスラグaを供給する供給装置20が配置されている。
搬送コンベア16と磁力選別機11は、コンベアベルト17、6の移動方向が逆向きであり、搬送コンベア16のコンベア終端部15の上方(真上)に磁力選別機11のコンベア始端部12が近接して位置している。
磁力選別機11は、プーリ1、プーリ4のいずれが駆動ロールであってもよいが、通常、プーリ4が駆動ロール、プーリ1(プーリ本体7)が非駆動ロールとなる。プーリ1のプーリ本体7は、内部が中空のスリーブ体で構成され、回転可能に支持されている。
プーリ1のプーリ本体7の内側には、磁場印加手段である磁石ロール2が配置されている。この磁石ロール2は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極3(永久磁石)を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極3は異なる極性(N極,S極)を有している。すなわち、ロール周方向で極性(N極,S極)が異なる磁極3が所定の間隔をおいて交互に配置されている。
磁石ロール2は、プーリ本体7に対して独立して回転駆動し、且つプーリ本体7よりも高速で回転する。磁石ロール2の回転方向は、(i)コンベアベルト6の進行方向(プーリ本体7の回転方向)と逆方向、(ii)コンベアベルト6の進行方向(プーリ本体7の回転方向)と同一方向、のいずれでもよい。磁着物粒子には、回転する磁石ロール2の磁場の作用で磁石ロール2の回転方向と逆方向へ動かそうとする運搬力が働くので、上記(i)の場合には、磁場による磁着物粒子の運搬力とコンベヤベルト6の摩擦力(送り力)が同一方向となる。一方、上記(ii)の場合には、磁場による磁着物粒子の運搬力とコンベヤベルト6の摩擦力(送り力)が逆方向となる。ただし、この場合には、コンベアベルト6の摩擦力の方が勝つので、合力としては磁着物粒子はコンベヤベルト6の進行方向へ運搬されていく。以上の(i)と(ii)を較べると、(ii)の場合は、磁場による磁着物粒子の運搬力とコンベヤベルト6の摩擦力(送り力)が逆方向となるので、磁着物粒子がコンベアベルト6上に滞留することがあるが、スラグa中での磁着物粒子の撹拌性は良好である。一方(i)の場合は、スラグa中での磁着物粒子の撹拌性は(ii)の場合よりも小さいが、磁着物粒子がコンベアベルト6上に滞留することはなく、粒子をスムーズに運搬できる利点がある。
この磁力選別機11は、所定の間隔で配置される複数の磁極3と、隣接する磁極3間の間隙部により、磁石ロール2の回転時に磁場がN→ゼロ→S→ゼロ→N→・・・と瞬時に切り替わり、スラグ層中の磁着物粒子に対して吸引→解放→吸引→解放→・・・の作用が繰り返される点に特徴がある。したがって、ロール周方向で隣接する磁極3間の間隙部の広さに特別な制限はないが、スラグ層中の磁着物粒子が磁場から解放されるような磁場:ゼロの状態が適切に生じ、一方において、磁場がゼロの状態があまり長く続きすぎないようにするため、通常、1〜50mm程度が適当である。
なお、回転する磁石ロール周辺の部材は、変化する磁場による渦電流効果の影響を受け、金属部材は非磁性物であっても渦電流によって過熱していく。このため、通常、磁力選別機11のコンベアベルト6とプーリ1のプーリ本体7は、樹脂、セラミックなどの非金属で構成される。
この磁力選別機11は、搬送コンベア16で搬送されてきたスラグa(スラグ層ax)に、コンベア始端部12側のプーリ1に内蔵された磁石ロール2の磁場を作用させ、スラグa中の磁着物粒子を吸引して磁力選別機11の下面側に移行させ、磁着物粒子を分離するものである。したがって、搬送コンベア16のコンベア終端部15と磁力選別機11のコンベア始端部12との間隔は、磁石ロール2の磁力がスラグa中の磁着物粒子に十分作用する大きさであればよいが、一般には、搬送コンベア16のコンベアベルト17で搬送されるスラグ層axの上面が磁力選別機11のコンベア始端部12と接触する(すなわち、スラグ層axが搬送コンベア16のコンベア終端部15と磁力選別機11のコンベア始端部12の間に噛み込まれるような大きさとすることが好ましい。
また、磁力選別機11側に吸引保持された磁着物粒子は、コンベアベルト6で搬送された後、コンベア終端部13から払い出されるので、そのコンベア終端部13の下方には、磁着物回収部21が設けられている。また、非磁着物粒子は、磁力選別機11のコンベア始端部12の下方に落下するので、その位置に非磁着物回収部22が設けられている。
以上のような磁力選別機11によるスラグaの磁力選別では、供給装置20からスラグaが搬送コンベア16のコンベアベルト17上に適度な層厚(粒子が多層状に積層した層厚)で供給され、このスラグa(スラグ層a)はコンベア終端部15まで搬送され、払い出される。コンベアベルト17で搬送されるスラグ層axは、コンベア終端部15付近でその上面が磁力選別機11のコンベア始端部12の下面に接触し(すなわち、スラグ層axが搬送コンベア16のコンベア終端部15と磁力選別機11のコンベア始端部12の間に噛み込まれる)、コンベアベルト17上のスラグ層aがコンベア終端部15から払い出される際に、磁力選別機11の磁石ロール2の磁場が及ぼされる。
これにより、磁石ロール2の磁力によってスラグ層ax内の磁着物粒子が吸引され、この磁着物粒子が非磁着物粒子を抱き込むような形でスラグ層ax(又はその一部)が磁力選別機11の下面側に付着して(保持されて)コンベアベルト6で運ばれる。スラグ層ax中の磁着物粒子は、磁石ロール2が備える磁極3の磁力の作用を受けるが、磁石ロール2の回転により、磁場がN→ゼロ→S→ゼロ→N→・・・と瞬時に切り替わって行くため(磁場の強度及び極性が高速で変化する)、スラグ層ax中の磁着物粒子に対しても吸引→解放→吸引→解放→・・・の作用が繰り返される。
マクロな視野で観察すると、スラグ層axが磁場によって強力に撹拌されているように見え、各粒子の動きをミクロに観察すると、磁極3の切替りとともに磁着物粒子が転動しながら非磁着物粒子(スラグ層ax)の中に潜り込んでいく。何度も吸引・解放が繰り返されていくうちに、スラグ層axの遠い側(上層側)に存在していた磁着物粒子が次第に磁石ロール2側へ移動していき、磁着物粒子に抱き込まれやすい非磁着物粒子は磁石ロール2から遠い側へと排除されていく。
つまり、スラグ層axに作用する磁場の強度及び極を高速に変化させることで、磁着物粒子の吸引と解放が極めて短時間繰り返される現象を発生させ、磁着物粒子による非磁着物粒子の挟み込み・抱き込み現象を解消しつつ、磁着物粒子を磁力選別することができる。
磁力選別機11のコンベア始端部12において、スラグ層axはコンベアベルト6の移動に伴ってプーリ1の円弧に沿って送られるが、プーリ1の円弧の下端からみて1/4回転の領域までに、非磁着物粒子は重力に引かれて自由落下する。一方、磁着物粒子は上記のように吸引・解放が繰り返されるが、この動作が極めて高速に行われるため、少々コンベアベルト6から落下方向に外れてもすぐに吸引される。こうして磁着物粒子はコンベアベルト6の進行方向に送られ、1/2回転以上して磁場エリアから外れ、最終的にコンベア終端部13から払い出される。そして、コンベア始端部12で下方に落下した非磁着物粒子が非磁着物回収部22に回収され、コンベア終端部13から払い出された磁着物粒子は磁着物回収部21に回収される。このように磁着物粒子の払い出しエリアと非磁着物粒子の落下エリアが全く異なっているため、回収物が混ざり合うことはない。
図3は、プーリ式磁力選別機の他の実施形態とその使用状況を示す説明図である。この実施形態の磁力選別機11は、コンベア終端部13側のプーリ1が磁場印加手段である磁石ロール2を内蔵し、コンベアベルト9上に供給されたスラグaがコンベア終端部13から払い出される際に、磁石ロール2の磁力により磁着物粒子を吸引して非磁着物粒子から分離するようにしたものである。
すなわち、磁力選別機11において、1は磁場印加手段を内蔵したコンベア終端部13側のプーリ(ベルトガイドロール)、8はコンベア始端部12側のプーリ(ベルトガイドロール)、9はコンベアベルトであり、このコンベアベルト9がプーリ1、8間に張設されることで、ベルトコンベアが構成される。
また、コンベアベルト9の上方であって、コンベア始端部12寄りの位置には、コンベアベルト9上にスラグaを供給する供給装置20が配置されている。
磁力選別機11は、プーリ1、プーリ8のいずれが駆動ロールであってもよいが、通常、プーリ8が駆動ロール、プーリ1(プーリ本体7)が非駆動ロールとなる。プーリ1のプーリ本体7は、内部が中空のスリーブ体で構成され、回転可能に支持されている。
磁石ロール2を備えたプーリ1の構造・機能、プーリ1のプーリ本体7やコンベアベルト9の材質などは、図2の実施形態と同様である。なお、本実施形態の磁力選別機11では、プーリ1に内蔵された磁石ロール2は、コンベアベルト9の進行方向(プーリ本体7の回転方向)とは逆方向に回転する。
プーリ1の下方(直下)には、コンベアベルト幅方向に沿った仕切板10が配置されるとともに、この仕切板10の上端部とコンベアベルト9(プーリ1で移動方向が反転したコンベアベルト部分)との間に、被選別物の一部(磁着物粒子)を通過させるための隙間Sを設けている。このような形態で仕切板10を設けるのは、非磁着物粒子の落下エリアと磁着物粒子の落下エリアが隣接するため、両粒子が落下中に混じり合わないようにするためである。
また、コンベアベルト移動方向において仕切板10を挟んだ位置に磁着物回収部21と非磁着物回収部22が設けられる。すなわち、仕切板10を挟んでコンベア始端部12側の位置(磁着物粒子の落下エリア)に磁着物回収部21が、コンベア終端部13側の位置(非磁着物粒子の落下エリア)に非磁着物回収部22が、それぞれ設けられている。
以上のような磁力選別機11によるスラグaの磁力選別では、供給装置20からスラグaがコンベアベルト9上に適度な層厚(粒子が多層状に積層した層厚)で供給され、このスラグa(スラグ層a)はコンベア終端部13(プーリ1の位置)まで搬送される。そして、コンベアベルト9上のスラグ層aがコンベア終端部13から払い出される際に、スラグ層ax内の磁着物粒子は、磁石ロール2が備える磁極3の磁力の作用を受けるが、図2の実施形態と同様、磁石ロール2の回転により磁場の強度及び極が高速に変化することで、磁着物粒子の吸引と解放が極めて短時間繰り返され、これにより磁着物粒子による磁着物粒子の挟み込み・抱き込み現象が解消される。
ここで、磁着物粒子には、回転する磁石ロール2の磁場の作用で磁石ロール2の回転方向と逆方向へ動かそうとする運搬力が働き、この運搬力により磁着物粒子は一方向に転動するが、磁石ロール2の回転方向がコンベアベルト9の進行方向(プーリ本体7の回転方向)と逆方向であるため、磁着物粒子はコンベアベルト9の進行方向に転動する。そして、このように磁着物粒子の転動する方向がコンベアベルト9の進行方向と同じであることにより、スラグ層ax中で磁着物粒子をスムーズに磁石ロール2側へと移行させ、取りこぼしすることなく回収することができる。これに対して、磁石ロール2の回転方向がコンベアベルト9の進行方向(プーリ本体7の回転方向)と同一方向である場合には、磁着物粒子はコンベアベルト9の反進行方向に転動するため、磁着物粒子がスラグ層ax中をスムーズに磁石ロール2側へと移行できず、滞留してしまい、適切な回収ができなくなる。
コンベア終端部13において、スラグ層axはコンベアベルト9の移動に伴ってプーリ1の円弧に沿って送られるが、1/4回転〜1/2回転の領域で非磁着物粒子は重力に引かれて自由落下する。一方、磁着物粒子は上記のように吸引・解放が繰り返されるが、この動作が極めて高速に行われるため、少々コンベアベルト9から落下方向に外れてもすぐに吸引される。こうして磁着物粒子はコンベアベルト9の進行方向に送られ、1/2回転以上して磁場エリアから外れると自由落下する。そして、さきに落下した非磁着物粒子が非磁着物回収部22に回収され、その後に落下した磁着物粒子が磁着物回収部21に回収される。この際、仕切板10により非磁着物粒子と磁着物粒子とが混じり合うことが防止される。なお、コンベアベルト9の送り速度やスラグaの落下挙動に応じて、仕切板10の位置を調整するとよい。
以上のように、本発明で用いる磁力選別機は、旧来の磁力選別機に較べると、磁着物粒子による非磁着物粒子の挟み込み・抱き込み現象を解消しつつ、磁着物粒子を磁力選別することができる高い分離性能を有するものであるが、本発明のようにスラグを複数の粒度範囲(例えば、3〜5程度の粒度範囲)に分級し、粒径範囲を狭めたスラグ(すなわち粒径をある程度一定に揃えたスラグ)毎に磁力選別を行うことにより、磁着物粒子による非磁着物粒子の挟み込み・抱き込み現象がより生じにくくなり、磁着物粒子と非磁着物粒子の選別精度がより高められる。
磁力選別工程(B)で使用する上述した磁力選別手段の磁力強度(磁場強度)は、スラグの種類にもよるが、800〜15000ガウス程度が好ましく、1000〜3000ガウス程度がより好ましい。磁力強度が800ガウス未満では、非磁着物yへの金属鉄の混入量が増加し、磁着物x側の回収歩留りが低下するとともに、非磁着物y側の金属鉄濃度が増加してしまうため、非磁着物yをリサイクル原料として利用する上で不利な条件となる。一方、磁力強度が15000ガウスを超えると、磁着物x側への非磁着物の混入が顕著となり、磁着物x側の金属鉄濃度が低下し、磁着物xをリサイクル原料として利用する上で不利な条件となる。
また、図2や図3に示されるような本発明で用いるプーリ1が磁石ロール2を内蔵したプーリ式磁力選別機では、磁石ロール2によりできるだけ高速な磁場変化(磁場の強度及び極性の高速変化)が生じることが好ましい。具体的には、下記(1)式で定義される磁石ロール2の磁場変化周波数F(Hz)が10〜1000Hz程度であることが好ましく、20〜500Hz程度であることがより好ましい。
F=(x・P)/60 …(1)
ここで x:磁石ロール2の回転数(rpm)
P:磁石ロール2が周方向で備える磁極数(但し、N極・S極のペアで1磁極とする)
磁場変化周波数Fが10Hz未満では、スラグaに作用する磁場の強度及び極の高速変化を十分に生じさせることができない。一方、磁石ロール2の回転数には機械的な上限があり、また磁場変化周波数Fを大きくしても磁場変化の効果が飽和してしまうため1000Hz程度が事実上の上限となる。
例えば、周方向で12極(N極・S極のペアで1磁極と数える)の磁石(例えば、ネオジウム磁石)を配設した場合には、磁石ロール2の回転速度を1000rpmとすると、磁場変化周波数Fは200Hzとなる。また、周方向で24極(N極・S極のペアで1磁極と数える)の磁石を配置して、同じように磁場変化周波数Fを200Hzとする場合、磁石ロール7の回転速度は500rpmでよい。
また、本発明では、各粒度範囲のスラグに最適な磁場変化周波数Fで磁力選別することにより、磁着物粒子と非磁着物粒子の選別精度をより高めることができるので、各粒度範囲のスラグをそれぞれ異なる磁場変化周波数Fで磁力選別することが好ましい。
スラグを1mm未満、1mm以上3mm未満、3mm以上5mm未満、5mm以上10mm未満の4つの粒度範囲に分級し、各粒度範囲のスラグを図3に示す磁力選別機(磁力強度3000ガウス)を用いて異なる磁場変化周波数Fで磁力選別し、磁場変化周波数Fと磁着物の金属鉄濃度(M.Fe濃度)との関係を調査した。また、比較のために分級しないスラグ(粒度10mm未満のスラグ)についても、同様の調査を行った。
その結果を図4に示すが、分級していないスラグ(粒度10mm未満のスラグ)を一括して磁力選別する場合に比べて、本発明のように分級により粒度範囲を細分化し、粒度範囲を狭めたスラグ毎に磁力選別することにより、金属鉄濃度のピーク値が高くなっており、分級により粒度範囲を細分化した上で磁力選別することが、選別精度を高める上で有効であることが判る。また、分級されたスラグの粒度範囲によって、磁着物の金属鉄濃度がピークとなる磁場変化周波数が異なっており、各粒度範囲のスラグに最適な磁場変化周波数があることが判る。具体的には、スラグの粒度範囲が小さいほど金属鉄濃度のピーク値は高磁場変化周波数側となっている。
したがって、磁力選別工程(B)では、複数の粒度範囲のスラグのうち、小さい粒度範囲のスラグほど磁場変化周波数Fを高くすることが好ましい。また、実際の操業では、各粒度範囲のスラグを磁力選別する際の磁場変化周波数Fを、各粒度範囲のスラグ毎に予め定めておき、磁力選別工程(B)では、予め定められた磁場変化周波数Fで各粒度範囲のスラグをそれぞれ磁力選別することが好ましい。
例えば、図4の場合には、磁場変化周波数Fを、1mm未満の粒度範囲のスラグについては250〜350Hz(金属鉄濃度がピーク値となる磁場変化周波数Fは約300Hz)程度に、1mm以上3mm未満の粒度範囲のスラグについては120〜180Hz(金属鉄濃度がピーク値となる磁場変化周波数Fは約150Hz)程度に、3mm以上5mm未満の粒度範囲のスラグについては80〜120Hz(金属鉄濃度がピーク値となる磁場変化周波数Fは約100Hz)程度に、5mm以上10mm未満の粒度範囲のスラグについては40〜60Hz(金属鉄濃度がピーク値となる磁場変化周波数Fは約50Hz)程度に、それぞれ設定して磁力選別を行うことが好ましい。
造粒工程(D)では、磁力選別工程(B)で分別された非磁着物yを造粒し、造粒物とする。金属鉄を分離したスラグ(非磁着物)は、そのままでは粉の飛散など周囲環境への影響が大きく、搬送性能が低い状態にある。造粒処理を施すことで搬送性が向上し、処理後はリサイクル原料(セメント原料など)としての処理が容易となる。
この造粒工程(D)では、各粒度範囲のスラグから分別された非磁着物y毎に造粒を行ってもよいし、各粒度範囲のスラグから分別された非磁着物yの一部又は全部を混合した上で造粒してもよい。
造粒処理は、ドラム型、皿形、波型振動コンベアなどを用いた転動造粒法、乾式の圧縮造粒法、混練造粒法などで行うことができる。造粒物の機械的強度を高めるために、(i)非磁着物yにバインダーとして粘結材や水溶性の物質を添加して造粒する、(ii)造粒物を焼成する、などを行ってもよいが、添加物としては水のみを用いるのが製造コストの観点からより経済的である。通常、非磁着物yはCa分を比較的多く含んでいるため、バインダーを添加しなくても水和化して固結し、必要な強度が得られる。造粒された造粒物は、一定期間自然乾燥させるのが好ましい。
また、造粒物の平均粒径は5〜15mm程度が望ましい。平均粒径が5mm未満では、粒子径が細かいため造粒後の搬送中に割れや粒子どうしの衝突による摩耗等が発生した場合、造粒物から欠落した粒子が微粉化しやすく、搬送性が低下しやすい。一方、平均粒径が15mmを超えると、造粒物の強度を確保しにくくなり、搬送中に割れが発生しやすくなって微粉化し、この場合も搬送性が低下しやすい。
塊成化工程(E)では、磁力選別工程(B)で分別された磁着物xを塊成化し、塊成化物とする。金属鉄を主体とする磁着物xは、そのままでは粉の飛散など周囲環境への影響が大きく、搬送性能が低い状態にある。塊成化処理を施すことで搬送性が向上し、処理後はリサイクル原料(高炉原料など)としての処理が容易となる。
塊成化工程(E)において磁着物xを塊成化する方法や装置は任意であるが、圧縮成型により塊成化する方法が簡便且つ経済的であるため好ましく、その場合の塊成化装置としては、回転する1対の成型ロール間で材料を圧縮成型する、いわゆるブリケット成型機などが好ましい。このブリケット成型機は、成型ロール面に周方向で間隔をおいて複数の凹部が設けられており、回転する1対の成型ロール間に供給された材料が、両成型ロールの凹部間で圧縮されることにより塊成化される。この場合のブリケット化時の圧縮荷重は、線圧換算で2.5〜6.0t/cm程度とすることが望ましい。
ブリケット成型機などによる圧縮成型で得られる塊成化物は、磁着物xにバインダーを添加しなくても必要な強度が得られるが、必要に応じて有機系などのバインダー(例えば澱粉)を添加してもよい。圧縮成型で得られた塊成化物は、例えば、製鋼スラグの場合には相当量のCa成分が含まれ、これがバインダーとしての効果を有するため、圧縮成型ままで必要な強度が得られる。
塊成化物の形状は任意であり、例えば、ビロー形、アーモンド形、レンズ形、フィンガー形などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の第二の処理方法では、予め複数の粒度範囲(好ましくは3〜5程度の粒度範囲)に分級されているスラグに対して、磁力選別工程(B)においてスラグ毎に磁力選別が行われる。例えば、図1に準じた実施形態(分級工程(A)を有しない実施形態)では、細粒、中粒、粗粒の3つの粒度範囲のスラグに対して、磁力選別工程(B1)〜(B3)が実施される。この場合も、鉄鋼スラグの粒度(最大粒度)が大きすぎると磁力選別の選別精度が低下するので、磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグは10mm未満の粒度(目開きが10mmの篩の篩下となる粒度)であることが好ましい。この本発明の第二の処理方法の詳細は、上述した本発明の第一の処理方法の磁力選別工程(B)及びその他の工程(C)〜(E)と同様である。
以上述べた本発明の処理方法により得られた非磁着物yの造粒物はセメント原料などに好適なものであり、したがって、本発明の処理方法によれば、鉄鋼スラグ(その一部分)を有価物であるセメント原料として適切に利材化することができ、換言すれば、鉄鋼スラグからセメント原料を適切に製造することができる。同じく、本発明の処理方法により得られた磁着物xの塊成化物は製鉄原料(例えば高炉原料)などに好適なものであり、したがって、本発明の処理方法によれば、鉄鋼スラグ(その一部分)を有価物である製鉄原料として適切に利材化することができ、換言すれば、鉄鋼スラグから製鉄原料を適切に製造することができる。
本発明で処理対象となる製鉄工程で発生する鉄鋼スラグとしては、脱燐スラグ、脱硫スラグ、転炉脱炭スラグ、脱珪スラグ、電気炉スラグなどの製鋼スラグ以外に、溶融還元スラグ、高炉スラグ(高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ)などが挙げられ、これらの1種以上を処理対象とすることができる。
図1に示す処理フローに従い、Fe含有量が21.5重量%の製鋼スラグを多段スクリーンを用いて4つの粒度範囲に分級した後、各粒度範囲のスラグをそれぞれ図3に示す磁力選別機を用いて磁力選別した(本発明例)。また、比較のために、発明例1、発明例3及び発明例5で処理対象としたスラグを、本発明例のように複数の粒度範囲に分級することなく、同じ磁力選別機を用いて一括して磁力選別した(比較例)。
表1及び表2に、本発明例及び比較例の処理条件、磁着物と非磁着物の金属鉄濃度(M.Fe濃度)及び評価結果(非磁着物のセメント原料化の可否、磁着物の製鉄原料化の可否)を示す。
なお、表1の「分級されたスラグ(1)〜(4)の粒度範囲」の欄に記載された数値のなかで、例えば「〜0.5」は0.5mm未満の粒度(目開きが0.5mmの篩の篩下となる粒度)、「0.5〜1」は0.5mm以上1mm未満の粒度(目開きが0.5mmの篩の篩上で、目開きが1mmの篩の篩下となる粒度)を意味し、その他の数値もこれに準じたものである。
磁着物の製鉄原料化の可否については、磁着物の金属鉄濃度(但し、小数点以下を四捨五入した金属鉄濃度)が60質量%以上の場合を“○”、60質量%未満の場合を“×”とした。また、非磁着物のセメント原料化の可否については、非磁着物の金属鉄濃度が4.0質量%未満の場合を“○”、4.0質量%以上の場合を“×”とした。
表1及び表2に示すように、本発明例で得られる磁着物は製鉄原料として利用可能であり、同じく非磁着物はセメント原料として利用可能である。これに対して、比較例で得られる磁着物は、製鉄原料としては金属鉄濃度が低過ぎ、同じく非磁着物はセメント原料としては金属鉄濃度が高すぎ、それぞれ高品質のリサイクル材とは言い難い。
Figure 0006984625
Figure 0006984625
1 プーリ
2 磁石ロール
3 磁極
4 プーリ
5 凹部
6 コンベアベルト
7 プーリ本体
8 プーリ
9 コンベアベルト
10 仕切板
11 磁力選別機
12 コンベア始端部
13 コンベア終端部
14 コンベア始端部
15 コンベア終端部
16 搬送コンベア
17 コンベアベルト
18,19 プーリ
20 供給装置
21 磁着物回収部
22 非磁着物回収部
a スラグ

Claims (15)

  1. 製鉄工程で発生した鉄鋼スラグを回収して複数の粒度範囲に分級する分級工程(A)と、該分級工程(A)で分級された各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物(x)と非磁着物(y)に分別する磁力選別工程(B)を有し、
    該磁力選別工程(B)では、ベルトコンベアを構成するプーリ(1)の1つが磁場印加手段を内蔵するプーリ式磁力選別機であって、前記磁場印加手段がプーリ本体に対して独立して回転駆動する磁石ロール(2)からなり、該磁石ロール(2)は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極(3)を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極(3)が異なる極性を有する磁力選別機を用いて、下記(1)式で定義される磁石ロール(2)の磁場変化周波数F(Hz)を10〜1000Hzとし、且つ各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ異なる磁場変化周波数Fで磁力選別するとともに、複数の粒度範囲の鉄鋼スラグのうち、小さい粒度範囲の鉄鋼スラグほど磁場変化周波数Fを高くすることを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
    F=(x・P)/60 …(1)
    ここで x:磁石ロール(2)の回転数(rpm)
    P:磁石ロール(2)が周方向で備える磁極数(但し、N極・S極のペアで1磁極とする)
  2. 分級工程(A)では、鉄鋼スラグを3つ以上の粒度範囲に分級することを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  3. さらに、分級工程(A)で分級する前の鉄鋼スラグを破砕する破砕工程(C)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  4. 複数の粒度範囲に分級された鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別して磁着物(x)と非磁着物(y)に分別する磁力選別工程(B)を有し、
    該磁力選別工程(B)では、ベルトコンベアを構成するプーリ(1)の1つが磁場印加手段を内蔵するプーリ式磁力選別機であって、前記磁場印加手段がプーリ本体に対して独立して回転駆動する磁石ロール(2)からなり、該磁石ロール(2)は、その外周に沿って所定の間隔をおいて配置される複数の磁極(3)を備えるとともに、ロール周方向で隣接する磁極(3)が異なる極性を有する磁力選別機を用いて、下記(1)式で定義される磁石ロール(2)の磁場変化周波数F(Hz)を10〜1000Hzとし、且つ各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ異なる磁場変化周波数Fで磁力選別するとともに、複数の粒度範囲の鉄鋼スラグのうち、小さい粒度範囲の鉄鋼スラグほど磁場変化周波数Fを高くすることを特徴とする鉄鋼スラグの処理方法。
    F=(x・P)/60 …(1)
    ここで x:磁石ロール(2)の回転数(rpm)
    P:磁石ロール(2)が周方向で備える磁極数(但し、N極・S極のペアで1磁極とする)
  5. 磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグが3つ以上の粒度範囲に分級されていることを特徴とする請求項4に記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  6. 磁力選別工程(B)で各粒度範囲の鉄鋼スラグを磁力選別する際の磁場変化周波数Fを、各粒度範囲の鉄鋼スラグ毎に予め定めておき、磁力選別工程(B)では、予め定められた磁場変化周波数Fで各粒度範囲の鉄鋼スラグをそれぞれ磁力選別することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  7. 磁力選別工程(B)で磁力選別される鉄鋼スラグは、目開きが10mmの篩の篩下となる粒度を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  8. 磁力選別工程(B)では、磁力強度が1000〜15000ガウスの磁力選別手段で磁力選別を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  9. 鉄鋼スラグが製鋼スラグであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  10. さらに、磁力選別工程(B)で分別された非磁着物(y)を造粒する造粒工程(D)を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  11. さらに、磁力選別工程(B)で分別された磁着物(x)を塊成化する塊成化工程(E)を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の鉄鋼スラグの処理方法。
  12. 請求項10に記載の処理方法における造粒工程(D)で得られた造粒物をセメント原料として用いることを特徴とする鉄鋼スラグの利材化方法。
  13. 請求項11に記載の処理方法における塊成化工程(E)で得られた塊成化物を製鉄原料として用いることを特徴とする鉄鋼スラグの利材化方法。
  14. 請求項10に記載の処理方法により、セメント原料となる非磁着物(y)の造粒物を得ることを特徴とするセメント原料の製造方法。
  15. 請求項11に記載の処理方法により、製鉄原料となる磁着物(x)の塊成化物を得ることを特徴とする製鉄原料の製造方法。
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