以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸に平行な向きでタイヤ回転軸を通る断面である子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40(図2参照)とがそれぞれ複数形成されている。トレッド面3には、これらの複数の周方向主溝20やラグ溝40によって複数の陸部10が画成されており、複数の陸部10は、タイヤ幅方向における少なくとも一方の端部が、周方向主溝20により区画されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部30が位置しており、ビード部30は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。一対のビード部30のそれぞれにはビードコア31が設けられており、それぞれのビードコア31のタイヤ径方向外側にはビードフィラー35が配設されている。ビードコア31は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー35は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア31の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、一対の交差ベルト7a,7bとベルトカバー7cとを積層した多層構造をなし、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。このうち、少なくとも一対の交差ベルト7a,7bは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。
ベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。カーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア31間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部30のうち、一方のビード部30から他方のビード部30にかけて配設されており、ビードコア31及びビードフィラー35を包み込むようにビード部30でビードコア31に沿ってタイヤ幅方向内側から外側に向かって巻き返されている。このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール材から成るカーカスコードであるスチールコードが用いられ、複数のスチールコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。即ち、カーカス6は、スチールカーカス材を使用して構成されている。
また、カーカス6の内側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。周方向主溝20は、3本がタイヤ幅方向に並んで設けられ、周方向主溝20によって区画される陸部10は、4列がタイヤ幅方向に並んで設けられている。3本の周方向主溝20のうち、タイヤ幅方向における中央に位置する周方向主溝20はセンター周方向主溝21として設けられ、タイヤ幅方向における最外側に位置する2本の周方向主溝20はショルダー周方向主溝22として設けられている。つまり、2本のショルダー周方向主溝22は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設されており、センター周方向主溝21は、タイヤ幅方向における2本のショルダー周方向主溝22の間に位置すると共にタイヤ赤道面CL上に配設されている。これらの周方向主溝20は、全てタイヤ周方向に直線状に延びて形成されている。
周方向主溝20は、全てタイヤ周方向に直線状に延びて形成されており、溝幅が4mm以上8mm以下の範囲内で、溝深さが10mm以上20mm以下の範囲内になっている。なお、周方向主溝20は、直線状以外の形状で形成されていてもよく、例えば、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し傾斜する波状、或いはジグザグ状の形状で形成されていてもよい。
ラグ溝40としては、隣り合うセンター周方向主溝21とショルダー周方向主溝22との間に配設されるセンターラグ溝41と、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向における外側に配設されるショルダーラグ溝42とが設けられている。このうち、ショルダーラグ溝42は、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向における外側に位置しており、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10をタイヤ幅方向に貫通している。つまり、ショルダーラグ溝42は、タイヤ幅方向における内側の端部が、ショルダー周方向主溝22に対してタイヤ幅方向外側から開口しており、タイヤ幅方向における外側の端部が、ショルダー部4に位置してタイヤ幅方向外側に向かって開口している。
ショルダーラグ溝42は、このようにショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10をタイヤ幅方向に貫通するため、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に位置する陸部10は、ショルダー周方向主溝22とショルダーラグ溝42とによりショルダーブロック12として区画されている。つまり、ショルダーブロック12は、タイヤ幅方向における内側がショルダー周方向主溝22によって区画され、タイヤ周方向における両側がショルダーラグ溝42によって区画されている。このように形成されるショルダーブロック12は、複数がタイヤ周方向に並んで配設されており、このため、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向における外側には、ショルダーブロック12がタイヤ周方向に配列されたショルダーブロック列13が配設されている。ショルダーブロック列13は、2本のショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向における外側の2箇所に配設されている。
また、ショルダーラグ溝42は、溝深さが異なる第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とを有している。第1ラグ溝70の溝深さは第2ラグ溝80の溝深さよりも深くなっており、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、タイヤ周方向に交互に配設されている。なお、この場合における第1ラグ溝70と第2ラグ溝80の溝深さの比較は、溝深さを溝面積によって重み付けした平均の深さである、いわゆる加重平均した溝深さ同士を比較したものになっている。つまり、第1ラグ溝70は、加重平均の溝深さが、第2ラグ溝80の加重平均の溝深さよりも深くなっている。
また、センターラグ溝41は、タイヤ幅方向における一端がセンター周方向主溝21またはショルダー周方向主溝22に開口し、他端が、センター周方向主溝21とショルダー周方向主溝22との間に位置する陸部10内で終端する片側開口ラグ溝として設けられている。片側開口ラグ溝であるセンターラグ溝41は、隣り合う周方向主溝20同士を貫通していないため、隣り合うセンター周方向主溝21とショルダー周方向主溝22との間に位置する陸部10は、タイヤ周方向に分断されることなくタイヤ周方向に延びるリブ状の陸部10であるセンターリブ11として形成されている。つまり、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、複数の陸部10のうち、ショルダーブロック列13以外の陸部10には、当該陸部10のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の周方向主溝20の双方に開口する溝及びサイプが形成されていない。
センターリブ11は、センター周方向主溝21のタイヤ幅方向における両側2箇所に配設されており、それぞれタイヤ幅方向における内側がセンター周方向主溝21によって区画され、タイヤ幅方向における外側がショルダー周方向主溝22によって区画されている。このため、センターリブ11は、ショルダー周方向主溝22に対してタイヤ幅方向内側から隣接しており、ショルダー周方向主溝22を介して、ショルダーブロック列13と隣り合っている。
センターラグ溝41は、このように形成されるセンターリブ11に設けられており、センターラグ溝41としては、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とが設けられている。このうち、第3ラグ溝50は、一端がショルダー周方向主溝22に開口し、他端がセンターリブ11内で終端している。また、第4ラグ溝60は、一端がセンター周方向主溝21に開口し、他端がセンターリブ11内で終端している。また、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、共に溝深さが第1ラグ溝70の溝深さよりも浅くなっている。
これらの第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、タイヤ周方向に向かって第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とが交互に設けられることにより、千鳥配置となって配設されている。換言すると、センターラグ溝41は、タイヤ周方向における所定の方向に向かって、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とが交互に配設されることにより、ショルダー周方向主溝22に開口するセンターラグ溝41とセンター周方向主溝21に開口するセンターラグ溝41とが、互い違いに配設されている。
また、センターリブ11には、センターラグ溝41におけるセンターリブ11内で終端する側の端部の延長線上に位置して周方向主溝20に開口する切欠き90が複数設けられている。詳しくは、切欠き90は、センター周方向主溝21に開口する切欠き90である第1切欠き91と、ショルダー周方向主溝22に開口する切欠き90である第2切欠き95とが、それぞれ複数設けられている。このうち、第1切欠き91は、第3ラグ溝50におけるセンターリブ11内で終端する側の端部54の延長線上に位置しており、第2切欠き95は、第4ラグ溝60におけるセンターリブ11内で終端する側の端部64の延長線上に位置している。
なお、ここでいう切欠き90は、トレッド面3から凹んで形成される凹みのうち、タイヤ幅方向における幅が5mm未満のものをいい、センターラグ溝41、即ち、ラグ溝40は、タイヤ幅方向における幅が5mm以上のものをいう。また、切欠き90は、切欠き90の全ての部分が、センターラグ溝41におけるセンターリブ11内で終端する側の端部54、64の延長線上に位置していなくてもよい。切欠き90は、センターラグ溝41が設けられるセンターリブ11を区画する2本の周方向主溝20のうち、センターラグ溝41が開口する周方向主溝20とは異なる周方向主溝20に向かってセンターラグ溝41を延長した場合における、センターラグ溝41の溝幅の範囲内に、切欠き90の少なくとも一部が位置していればよい。
それぞれ同じ周方向主溝20に開口するセンターラグ溝41と切欠き90とは、タイヤ周方向において交互に配設されている。つまり、同じショルダー周方向主溝22に開口する第3ラグ溝50と第2切欠き95とは、タイヤ周方向において交互に配設されており、同じセンター周方向主溝21に開口する第4ラグ溝60と第1切欠き91とは、タイヤ周方向において交互に配設されている。
また、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60が、タイヤ周方向に向かって交互に設けられることに伴い、第1切欠き91と第2切欠き95とも、タイヤ周方向に向かって交互に設けられている。即ち、第1切欠き91と第2切欠き95とは、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60と同様に、タイヤ周方向に向かって第1切欠き91と第2切欠き95とが交互に設けられることにより、千鳥配置となって配設されている。さらに、それぞれ複数設けられるセンターラグ溝41と切欠き90とのそれぞれが千鳥配置となって配設されることにより、センターラグ溝41と切欠き90とも、千鳥配置となって配設されている。
図3は、図2のB部詳細図である。第1ラグ溝70は、溝壁が第1ラグ溝70の長さ方向における中央付近で屈曲することにより、一定の溝幅で形成される一定幅部71と、溝幅が変化する拡幅部72とを有している。第2ラグ溝80も同様に、溝壁が第2ラグ溝80の長さ方向における中央付近で屈曲することにより、一定の溝幅で形成される一定幅部81と、溝幅が変化する拡幅部82とを有している。第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、共に一定幅部71、81が、拡幅部72、82のタイヤ幅方向における内側に位置し、拡幅部72、82が、一定幅部71、81のタイヤ幅方向における外側に位置している。つまり、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、一定幅部71、81がショルダー周方向主溝22に開口し、拡幅部72、82が、ショルダー部4でタイヤ幅方向外側に向かって開口している。
図4は、図3のC部詳細図である。第1ラグ溝70の一定幅部71は、ショルダー周方向主溝22への第1ラグ溝70の開口部分である内側開口部74から、タイヤ幅方向におけるショルダーブロック12の中央付近までタイヤ幅方向外側に向かって延びている。なお、本実施形態では、第1ラグ溝70の一定幅部71は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜しており、内側開口部74に面取りが施されている。
第1ラグ溝70の拡幅部72は、一定幅部71におけるタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向外側に向かって延びている。つまり、第1ラグ溝70の溝壁は、タイヤ幅方向におけるショルダーブロック12の中央付近に屈曲部73を有しており、拡幅部72は、屈曲部73からタイヤ幅方向外側に延びて形成されている。また、拡幅部72は、一定幅部71との境界位置となる屈曲部73の位置では溝幅が一定幅部71の溝幅と同じ大きさになっており、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って溝幅が大きくなっている。即ち、屈曲部73は、第1ラグ溝70の溝幅が変化する位置になっており、第1ラグ溝70は、屈曲部73からタイヤ幅方向内側は溝幅が一定に形成され、屈曲部73からタイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向外側に向かうに従って溝幅が広くなっている。なお、屈曲部73は、第1ラグ溝70の対向する溝壁の双方に形成されていてもよく、対向する溝壁の一方の溝壁のみに形成されていてもよい。
第1ラグ溝70は、このように一定幅部71と拡幅部72とを有することにより、タイヤ幅方向における第1ラグ溝70の中央付近の位置での溝幅よりも、タイヤ幅方向外側端部の位置での溝幅の方が大きくなっている。詳しくは、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向における一方の端部からショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの40%以上60%以下の範囲である測定領域AM内に位置する部分において最も狭い溝幅を最小溝幅W11とし、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅を溝幅W12とする。この場合に、第1ラグ溝70は、最小溝幅W11と溝幅W12との関係が、1.3≦(W12/W11)≦1.7の範囲内になっている。
つまり、第1ラグ溝70は、一定幅部71と拡幅部72との境界位置である屈曲部73が測定領域AM内に位置しており、最小溝幅W11は、測定領域AM内に位置する一定幅部71の溝幅になっている。また、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12は、拡幅部72における、ショルダー部4でタイヤ幅方向外側に向かって開口している部分である外側開口部75の溝幅になっている。第1ラグ溝70は、最小溝幅W11に対する外側開口部75の溝幅W12の比率が、1.3以上1.7以下の範囲内になっている。
なお、第1ラグ溝70の最小溝幅W11は、4mm以上8mm以下の範囲内であるのが好ましく、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12は、6mm以上12mm以下の範囲内であるのが好ましい。
図5は、図3のD部詳細図である。第2ラグ溝80も第1ラグ溝70と同様に、第2ラグ溝80の一定幅部81は、ショルダー周方向主溝22への第2ラグ溝80の開口部分である内側開口部84から、タイヤ幅方向におけるショルダーブロック12の中央付近まで、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向外側に向かって延びている。また、第2ラグ溝80も、溝壁のタイヤ幅方向におけるショルダーブロック12の中央付近に屈曲部83を有しており、拡幅部82は、屈曲部83からタイヤ幅方向外側に延びて形成されている。また、拡幅部82は、一定幅部81との境界位置となる屈曲部83の位置では溝幅が一定幅部81の溝幅と同じ大きさになっており、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って溝幅が大きくなっている。即ち、屈曲部83は、第2ラグ溝80の溝幅が変化する位置になっており、第2ラグ溝80は、屈曲部83からタイヤ幅方向内側は溝幅が一定に形成され、屈曲部83からタイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向外側に向かうに従って溝幅が広くなっている。なお、第2ラグ溝80の屈曲部83も第1ラグ溝70の屈曲部73と同様に、第2ラグ溝80の対向する溝壁の双方に形成されていてもよく、対向する溝壁の一方の溝壁のみに形成されていてもよい。
第2ラグ溝80も、第1ラグ溝70と同様に一定幅部81と拡幅部82とを有することにより、タイヤ幅方向における第2ラグ溝80の中央付近の位置での溝幅よりも、タイヤ幅方向外側端部の位置での溝幅の方が大きくなっている。詳しくは、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向における一方の端部からショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの40%以上60%以下の範囲である測定領域AM内に位置する部分において最も狭い溝幅を最小溝幅W21とし、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅を溝幅W22とする。この場合に、第2ラグ溝80は、最小溝幅W21と溝幅W22との関係が、1.1≦(W22/W21)≦1.5の範囲内になっている。
つまり、第2ラグ溝80は、一定幅部81と拡幅部82との境界位置である屈曲部83が測定領域AM内に位置しており、最小溝幅W21は、測定領域AM内に位置する一定幅部81の溝幅になっている。また、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22は、拡幅部82における、ショルダー部4でタイヤ幅方向外側に向かって開口している部分である外側開口部85の溝幅になっている。第2ラグ溝80は、最小溝幅W21に対する外側開口部85の溝幅W22の比率が、1.1以上1.5以下の範囲内になっている。
なお、第2ラグ溝80の最小溝幅W21は、4mm以上8mm以下の範囲内であるのが好ましく、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22は、5mm以上10mm以下の範囲内であるのが好ましい。
さらに、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、第2ラグ溝80の外側開口部85における溝幅W22よりも、第1ラグ溝70の外側開口部75における溝幅W12の方が大きくなっている。詳しくは、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、第1ラグ溝70の外側開口部75における溝幅W12と、第2ラグ溝80の外側開口部85における溝幅W22との関係が、1.1≦(W12/W22)≦1.3の範囲内になっている。
図6は、図4のE−E断面図である。図7は、図5のF−F断面図である。図8は、図3のG−G断面図である。図9は、図3のH−H断面図である。第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、加重平均の溝深さが互いに異なっており、第2ラグ溝80の荷重平均の溝深さよりも、第1ラグ溝70の加重平均の溝深さの方が深くなっている。つまり、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、第1ラグ溝70の溝底76の形態と、第2ラグ溝80の溝底86の形態とが異なっており、これにより、加重平均の溝深さが互いに異なっている。
詳しくは、第2ラグ溝80は、内側開口部84側から外側開口部85側にかけて、溝深さが大きく変化せず、ほぼ一定であるのに対し、第1ラグ溝70は、内側開口部74側よりも外側開口部75側の方が、溝深さが深くなっている。より詳しくは、第1ラグ溝70は、内側開口部74の位置からタイヤ幅方向外側における所定の位置まで、溝深さがほぼ一定の深さになっており、この所定の位置からタイヤ幅方向外側に向かうに従って溝深さが深くなっている。
具体的には、第1ラグ溝70は、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向内側の端部からタイヤ幅方向外側に向かってショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの20%の位置Pinでの溝深さD13が、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。第2ラグ溝80も同様に、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向内側の端部からタイヤ幅方向外側に向かってショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの20%の位置Pinでの溝深さD23が、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。
また、第2ラグ溝80は、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向内側に向かってショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの20%の位置Poutでの溝深さD24が、1mm以上5mm以下の範囲内になっている。これに対し、第1ラグ溝70は、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向内側に向かってショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの20%の位置Poutでの溝深さD14が、6mm以上15mm以下の範囲内になっている。
なお、この場合における第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とのタイヤ幅方向外側の端部は、トレッド面3のショルダー部4のタイヤ幅方向における位置になっている。
また、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、第1ラグ溝70や第2ラグ溝80のタイヤ幅方向内側の端部からタイヤ幅方向外側に向かってショルダーブロック12のタイヤ幅方向における幅WBの40%の範囲AHに、タイヤ幅方向における位置が同じ位置での溝深さが同一となる部分を有している。この場合における、溝深さが同一となる部分を有するとは、タイヤ幅方向における位置が同じ位置における溝深さの差が0.3mm以下となる部分が、タイヤ幅方向に連続して2mm以上形成されることをいう。なお、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80との溝深さが同一となる部分は、タイヤ幅方向における幅が5mm以上であることがより好ましい。
さらに、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、第1ラグ溝70の最大溝深さD15と第2ラグ溝80の最大溝深さD25との関係が、0.1≦(D25/D15)≦0.5の範囲内になっている。この場合における第1ラグ溝70の最大溝深さD15は、例えば、第1ラグ溝70の外側開口部75付近での溝深さ、或いはショルダー部4近傍の位置での第1ラグ溝70の溝深さになっている。第2ラグ溝80の最大溝深さD25も同様に、例えば、第2ラグ溝80の外側開口部85付近での溝深さ、或いはショルダー部4近傍の位置での第2ラグ溝80の溝深さになっている。
また、第1ラグ溝70は、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部からタイヤ幅方向内側に10mmの領域である規定領域A12における溝深さD12と、ショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの関係が、0.6≦(D12/DC)≦1.0の範囲内になっている。この場合における規定領域A12の第1ラグ溝70の溝深さD12は、規定領域A12における第1ラグ溝70の溝深さを加重平均した溝深さになっている。第1ラグ溝70は、規定領域A12における溝深さを加重平均した溝深さD12が、第1ラグ溝70が開口するショルダー周方向主溝22の溝深さDCに対して、0.6以上1.0以下の比率となる形状で形成されている。
図10は、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80の外側領域についての説明図である。第1ラグ溝70は、内側開口部74寄りの位置での溝深さよりも外側開口部75寄りの位置での溝深さの方が深くなっているのに対し、第2ラグ溝80は、タイヤ幅方向における位置に関わらず、溝深さがほぼ一定になっている。このため、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、特にタイヤ幅方向外側寄りの位置での深さが大きく異なっている。具体的には、第1ラグ溝70の外側領域A11の溝深さをD11とし、第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さをD21とする場合に、第1ラグ溝70の溝深さD11と第2ラグ溝80の溝深さD21との関係が、0.2≦(D21/D11)≦0.5の範囲内になっている。
この場合における第1ラグ溝70の外側領域A11は、第1ラグ溝70における屈曲部73の位置から、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部、即ち外側開口部75までの領域である。同様に、第2ラグ溝80の外側領域A21は、第2ラグ溝80における屈曲部83の位置から第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部、即ち外側開口部85までの領域である。また、第1ラグ溝70の外側領域A11の第1ラグ溝70の溝深さD11は、外側領域A11における第1ラグ溝70の溝深さを加重平均した溝深さになっている。同様に、第2ラグ溝80の外側領域A21の第2ラグ溝80の溝深さD21は、外側領域A21における第2ラグ溝80の溝深さを加重平均した溝深さになっている。
これらのように、第2ラグ溝80は、溝深さがほぼ一定であるのに対し、第1ラグ溝70は、タイヤ幅方向における位置によって溝深さが異なっており、且つ、ショルダー部4寄りの位置では、溝深さが第2ラグ溝80の溝深さよりも深くなっている。
図11は、図2のJ部詳細図である。図12は、図2のK部詳細図である。センターリブ11に形成されてショルダー周方向主溝22に開口する第3ラグ溝50は、一定の溝幅で形成される一定幅部51と、溝幅が変化する拡幅部52とを有すると共に、拡幅部52がショルダー周方向主溝22に開口している。このうち、一定幅部51は、拡幅部52におけるショルダー周方向主溝22に開口している側の反対側の部分から、第3ラグ溝50におけるセンターリブ11内で終端する側の端部54にかけて延びている。また、拡幅部52は、一定幅部51が接続されている位置では、溝幅が一定幅部51の溝幅とほぼ同じ大きさになっており、一定幅部51側からショルダー周方向主溝22に開口している側に向かうに従って、溝幅が大きくなっている。このように形成される拡幅部52における、ショルダー周方向主溝22に開口している部分が、第3ラグ溝50におけるショルダー周方向主溝22に対する開口部53になっている。
第3ラグ溝50と同様に、センターリブ11に形成されてセンター周方向主溝21に開口する第4ラグ溝60は、一定の溝幅で形成される一定幅部61と、溝幅が変化する拡幅部62とを有すると共に、拡幅部62がセンター周方向主溝21に開口している。このうち、一定幅部61は、拡幅部62におけるセンター周方向主溝21に開口している側の反対側の部分から、第4ラグ溝60におけるセンターリブ11内で終端する側の端部64にかけて延びている。また、拡幅部62は、一定幅部61が接続されている位置では、溝幅が一定幅部61の溝幅とほぼ同じ大きさになっており、一定幅部61側からセンター周方向主溝21に開口している側に向かうに従って、溝幅が大きくなっている。このように形成される拡幅部62における、センター周方向主溝21に開口している部分が、第4ラグ溝60におけるセンター周方向主溝21に対する開口部63になっている。
なお、第3ラグ溝50は、一定幅部51の溝幅が3mm以上8mm以下の範囲内で、一定幅部51の溝深さが1mm以上5mm以下の範囲内で形成されるのが好ましい。第4ラグ溝60も、一定幅部61の溝幅が3mm以上8mm以下の範囲内で、一定幅部61の溝深さが1mm以上5mm以下の範囲内で形成されるのが好ましい。
また、センターリブ11に形成される切欠き90は、切欠き90が開口する周方向主溝20に対してタイヤ幅方向に離れた位置から周方向主溝20に近付くに従ってタイヤ周方向における幅が大きくなる、台形状の形状で形成されている。つまり、センター周方向主溝21に開口する第1切欠き91は、センター周方向主溝21に対してタイヤ幅方向に離れた位置からセンター周方向主溝21に近付くに従って、タイヤ周方向における幅が大きくなっている。同様に、ショルダー周方向主溝22に開口する第2切欠き95は、ショルダー周方向主溝22に対してタイヤ幅方向に離れた位置からショルダー周方向主溝22に近付くに従って、タイヤ周方向における幅が大きくなっている。
このように形成される切欠き90は、第3ラグ溝50の拡幅部52や第4ラグ溝60の拡幅部62と、ほぼ同じ形状で形成されている。つまり、切欠き90と、拡幅部52、62とは、タイヤ周方向における幅やタイヤ幅方向における幅が同程度の大きさになっており、タイヤ径方向における深さも同程度の深さになっている。
図13は、図11のM−M断面図である。第3ラグ溝50は、一定幅部51と拡幅部52とで溝深さが大きく異なっており、拡幅部52の溝深さが、一定幅部51の溝深さよりも深くなって形成されている。具体的には、第3ラグ溝50は、一定幅部51の最小溝深さD31が、拡幅部52の最大溝深さD32に対して、0.2≦(D31/D32)≦0.5の範囲内になっている。
また、第3ラグ溝50の拡幅部52は、溝深さがショルダー周方向主溝22の溝深さと同程度の大きさになっており、拡幅部52の最大溝深さD32は、拡幅部52が開口するショルダー周方向主溝22の溝深さDCに対して、0.8≦(D32/DC)≦1.0の範囲内になっている。
図14は、図12のN−N断面図である。第4ラグ溝60も、一定幅部61と拡幅部62とで溝深さが大きく異なっており、拡幅部62の溝深さが、一定幅部61の溝深さよりも深くなって形成されている。具体的には、第4ラグ溝60は、一定幅部61の最小溝深さD41が、拡幅部62の最大溝深さD42に対して、0.2≦(D41/D42)≦0.5の範囲内になっている。
また、第4ラグ溝60の拡幅部62は、溝深さがセンター周方向主溝21の溝深さと同程度の大きさになっており、拡幅部62の最大溝深さD42は、拡幅部62が開口するセンター周方向主溝21の溝深さDCに対して、0.8≦(D42/DC)≦1.0の範囲内になっている。
さらに、第3ラグ溝50は、一定幅部51の最小溝深さD31が、第2ラグ溝80の外側領域A21(図10参照)の溝深さD21に対して、0.8≦(D31/D21)≦1.2の範囲内になっている。第4ラグ溝60も同様に、一定幅部61の最小溝深さD41が、第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さD21に対して、0.8≦(D41/D21)≦1.2の範囲内になっている。つまり、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、一定幅部51、61の溝深さが、第2ラグ溝80の溝深さと同程度の大きさになっている。
図15は、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80と第3ラグ溝50との位置に関係についての説明図である。第1ラグ溝70や第2ラグ溝80と同様にショルダー周方向主溝22に開口する第3ラグ溝50は、タイヤ周方向における位置が、タイヤ周方向に隣り合う第1ラグ溝70と第2ラグ溝80との間で、ショルダー周方向主溝22に対して開口している。具体的には、第1ラグ溝70がショルダー周方向主溝22に開口する位置から、第2ラグ溝80がショルダー周方向主溝22に開口する位置までのタイヤ周方向における距離をL12とし、第3ラグ溝50がショルダー周方向主溝22に開口する位置から、第1ラグ溝70がショルダー周方向主溝22に開口する位置までのタイヤ周方向における距離をL13とする場合に、距離L12と距離L13との関係が、0.2≦(L13/L12)≦0.8の範囲内になっている。
この場合における距離L12や距離L13は、各ラグ溝40のタイヤ幅方向における中心線とショルダー周方向主溝22との交点のタイヤ周方向における距離になっている。また、ショルダー周方向主溝22に対してラグ溝40が開口する位置に面取りが施されている場合は、面取りを考慮しないラグ溝40の溝幅の中心線と、ショルダー周方向主溝22との交点のタイヤ周方向における距離になっている。つまり、距離L12は、第1ラグ溝70の一定幅部71の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置と、第2ラグ溝80の一定幅部81の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置とのタイヤ周方向における距離になっている。また、距離L13は、第1ラグ溝70の一定幅部71の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置と、第3ラグ溝50の一定幅部51の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置とのタイヤ周方向における距離になっている。
図16は、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との位置関係についての説明図である。第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、センターリブ11に千鳥配置となって配設されるため、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、タイヤ周方向における位置が互いに異なる位置に配設されている。具体的には、タイヤ周方向に隣り合う第3ラグ溝50同士のショルダー周方向主溝22への開口位置のタイヤ周方向における距離をL33とし、タイヤ周方向に隣り合う第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とにおける、ショルダー周方向主溝22への第3ラグ溝50の開口位置と、センター周方向主溝21への第4ラグ溝60の開口位置とのタイヤ周方向における距離をL34とする場合に、距離L33と距離L34との関係が、0.3≦(L34/L33)≦0.5の範囲内になっている。
この場合における距離L33と距離L34も、距離L12や距離L13と同様に、面取りは考慮しないラグ溝40の溝幅の中心線と周方向主溝20との交点のタイヤ周方向における距離になっている。つまり、距離L33は、タイヤ周方向に隣り合う第3ラグ溝50のそれぞれの一定幅部51の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置同士のタイヤ周方向における距離になっている。また、距離L34は、第3ラグ溝50の一定幅部51の中心線がショルダー周方向主溝22に交差する位置と、第4ラグ溝60の一定幅部61の中心線がセンター周方向主溝21に交差する位置とのタイヤ周方向における距離になっている。
また、距離L34は、第4ラグ溝60のタイヤ周方向における両側の2本の第3ラグ溝50のうち、ショルダー周方向主溝22に対して開口する位置が、第4ラグ溝60がセンター周方向主溝21に対して開口する位置に対して近い方の第3ラグ溝50のショルダー周方向主溝22に対する開口位置と、第4ラグ溝60のセンター周方向主溝21に対する開口位置とのタイヤ周方向における距離になっている。このため、(L34/L33)は、最大で0.5になる。
図17は、異なるセンターリブ11に設けられる第4ラグ溝60同士の位置関係についての説明図である。センター周方向主溝21を挟んでタイヤ幅方向に隣り合う2列のセンターリブ11のそれぞれに設けられる第4ラグ溝60は、2列のセンターリブ11の第4ラグ溝60同士で、センター周方向主溝21への開口位置がタイヤ周方向に10mm以上ずれて配設されている。つまり、センター周方向主溝21を挟んで隣り合う2列のセンターリブ11のそれぞれに設けられる第4ラグ溝60の、センター周方向主溝21への開口位置のタイヤ周方向における距離L4は、少なくとも10mm以上の大きさになっている。
この場合における距離L4も、面取りは考慮しない第4ラグ溝60の溝幅の中心線とセンター周方向主溝21との交点のタイヤ周方向における距離になっている。つまり、距離L4は、第4ラグ溝60の一定幅部61の中心線がセンター周方向主溝21に交差する位置同士のタイヤ周方向における距離になっている。
これらのように構成される本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の、乗用車と比較して大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が周方向主溝20やラグ溝40に入り込み、これらの溝でトレッド面3と路面との間の水を排出しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、ショルダーブロック12を区画するショルダーラグ溝42は、相対的な溝深さが深い第1ラグ溝70と、相対的な溝深さが浅い第2ラグ溝80とがタイヤ周方向に交互に配設されているため、ショルダーブロック12の剛性が低くなり過ぎることを抑制でき、ショルダーブロック12の剛性を確保することができる。これにより、例えば、ヒール&トウ摩耗のような、ショルダーブロック12の偏摩耗を抑制することができる。
また、空気入りタイヤ1が回転する際には、路面に対して陸部10が接地する際に打音が発生し、この打音がショルダーラグ溝42を通って周囲に広がることが、騒音の一因になる。これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ショルダーラグ溝42に、溝深さが浅い第2ラグ溝80が用いられている。このため、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向内側の領域で発生した音は、ショルダーラグ溝42のうち第2ラグ溝80に流れ難くなり、ショルダーラグ溝42を通ってタイヤ幅方向外側に流れる音の量が少なくなる。これにより、空気入りタイヤ1の接地領域から、接地領域の外に流れる音の量が少なくなり、通過音を低減することができるため、車両の走行時における低騒音化を図ることができる。
また、雪上路面を走行する場合には、トラクション性能を確保するために、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着して走行することがあるが、タイヤチェーンは、空気入りタイヤ1のトレッド面3を覆うように装着し、トレッド面3に形成される溝に一部のチェーンが引っ掛かることにより、空気入りタイヤ1とタイヤチェーンとの間のタイヤ周方向における相対的なずれを抑制することができる。本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ショルダーラグ溝42に、溝深さが深い第1ラグ溝70が用いられているため、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、一部のチェーンを第1ラグ溝70に容易に引っ掛けることができる。つまり、第1ラグ溝70は、溝深さが深いため、チェーンが第1ラグ溝70に入り込んだ際におけるチェーンの抜けを低減することができ、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かった状態を維持することができる。これにより、空気入りタイヤ1とタイヤチェーンとの間でのずれの発生を抑制することができる。これらの結果、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保しつつ、低騒音化を図ることができる。
また、センターリブ11に設けられる第3ラグ溝50は、一端がショルダー周方向主溝22に開口し、他端がセンターリブ11内で終端するため、センターリブ11の剛性を確保することができる。これにより、より確実に偏摩耗を抑制することができる。また、第3ラグ溝50は、センターリブ11内で終端するため、陸部10の接地時に発生する音が、センター周方向主溝21側からショルダー周方向主溝22側に流れることを抑制でき、空気入りタイヤ1の接地領域から、接地領域の外に流れる音の量を、より確実に少なくすることができる。これにより、車両の走行時における通過音を、より確実に低減することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とのタイヤ周方向における距離L12と、第3ラグ溝50と第1ラグ溝70とのタイヤ周方向における距離L13との関係が、0.2≦(L13/L12)≦0.8の範囲内であるため、より確実に偏摩耗を抑制すると共に、通過音の低減を図ることができる。つまり、距離L12と距離L13との関係が、(L13/L12)<0.2であったり、(L13/L12)>0.8であったりする場合は、第3ラグ溝50と、第1ラグ溝70または第2ラグ溝80との距離が近くなり過ぎるため、その周囲の陸部10の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、第3ラグ溝50と、第1ラグ溝70または第2ラグ溝80との距離が近くなり過ぎることにより、第3ラグ溝50内からショルダー周方向主溝22に流れた音が第1ラグ溝70や第2ラグ溝80に流れ易くなるため、車両の走行時における通過音を低減し難くなる虞がある。
これに対し、距離L12と距離L13との関係が、0.2≦(L13/L12)≦0.8の範囲内である場合は、第3ラグ溝50と、第1ラグ溝70及び第2ラグ溝80との距離が近くなり過ぎることを抑制することができるため、第3ラグ溝50の周囲の陸部10の剛性をより確実に確保することができ、より確実に偏摩耗を抑制することができる。また、第3ラグ溝50と、第1ラグ溝70及び第2ラグ溝80との距離が近くなり過ぎることを抑制することができるため、第3ラグ溝50内からショルダー周方向主溝22に流れた音が第1ラグ溝70や第2ラグ溝80に流れることを抑制することができ、車両の走行時における通過音を、より確実に低減することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、センターリブ11には、第3ラグ溝50の他に、センター周方向主溝21に開口してセンターリブ11内で終端する第4ラグ溝60が設けられるため、センターリブ11の剛性を、センター周方向主溝21側とショルダー周方向主溝22側とで同程度にすることができる。これにより、センターリブ11のタイヤ幅方向における内側と外側との剛性差に起因して発生する偏摩耗を抑制することができる。また、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは千鳥配置となって配設されるため、タイヤ周方向において隣り合う第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との距離の差を、均等に近付けることができる。これにより、タイヤ周方向において隣り合う第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との距離に大きな差が生じることに起因して発生するセンターリブ11の剛性差を低減することができ、剛性差に起因して発生する偏摩耗を抑制することができる。また、第4ラグ溝60は、センターリブ11内で終端するため、陸部10の接地時に発生する音が、センター周方向主溝21側からショルダー周方向主溝22側に流れることを抑制でき、車両の走行時における通過音を、より確実に低減することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、タイヤ周方向に隣り合う第3ラグ溝50同士のタイヤ周方向における距離L33と、タイヤ周方向に隣り合う第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とのタイヤ周方向における距離L34との関係が、0.3≦(L34/L33)≦0.5の範囲内であるため、より確実に偏摩耗を抑制することができる。つまり、距離L33と距離L34との関係が、(L34/L33)<0.3である場合は、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との距離が近くなり過ぎるため、その周囲のセンターリブ11の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。これに対し、距離L33と距離L34との関係が、0.3≦(L34/L33)≦0.5の範囲内である場合は、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との距離が近くなり過ぎることを抑制することができるため、第3ラグ溝50及び第4ラグ溝60の周囲のセンターリブ11の剛性をより確実に確保することができ、より確実に偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を確保することができる。
また、第3ラグ溝50と第4ラグ溝60とは、第2ラグ溝80の外側領域A21の第2ラグ溝80の溝深さD21と、第3ラグ溝50の溝深さD31及び第4ラグ溝60の溝深さD41との関係が、0.8≦(D31/D21)≦1.2、0.8≦(D41/D21)≦1.2の範囲内であるため、より確実に偏摩耗を抑制すると共に、通過音の低減を図ることができる。つまり、(D31/D21)<0.8であったり、(D41/D21)<0.8であったりする場合は、第3ラグ溝50の溝深さD31や第4ラグ溝60の溝深さD41が浅過ぎるため、センターリブ11の剛性を適切に低減させるのが困難になり、センターリブ11の剛性とショルダーブロック列13の剛性との剛性差を緩和させ難くなる虞がある。この場合、陸部10の剛性差に起因する偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、(D31/D21)>1.2であったり、(D41/D21)>1.2であったりする場合は、第3ラグ溝50の溝深さD31や第4ラグ溝60の溝深さD41が深過ぎるため、空気入りタイヤ1の接地領域で発生した音が、第3ラグ溝50や第4ラグ溝60を流れることを低減するのが困難になる虞がある。この場合、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向内側の領域で発生した音が、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に流れることを効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、第2ラグ溝80の溝深さD21と、第3ラグ溝50の溝深さD31と、第4ラグ溝60の溝深さD41との関係が、0.8≦(D31/D21)≦1.2、0.8≦(D41/D21)≦1.2の範囲内である場合は、センターリブ11の剛性とショルダーブロック列13の剛性との剛性差を緩和させることにより、陸部10の剛性差に起因する偏摩耗をより確実に抑制することができる。また、第3ラグ溝50内や第4ラグ溝60内での音の流れ易さを低減することにより、陸部10の接地時に発生する音が、ショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に流れることを抑制でき、車両の走行時における通過音を、より確実に低減することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、第1ラグ溝70は、測定領域AMにおける最小溝幅W11と、タイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12との関係が、1.3≦(W12/W11)≦1.7の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、最小溝幅W11と溝幅W12との関係が(W12/W11)<1.3である場合は、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12が小さ過ぎるため、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かり難くなる虞がある。この場合、タイヤチェーンの装着時におけるチェーン掛かり性を確保し難くなる虞がある。また、最小溝幅W11と溝幅W12との関係が(W12/W11)>1.7である場合は、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12が大き過ぎるため、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部付近の剛性が低くなり過ぎたり、ショルダーブロック12の接地時に応力集中が発生し易くなったりする虞がある。この場合、ショルダーブロック12の偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、最小溝幅W11と溝幅W12との関係が1.3≦(W12/W11)≦1.7の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1へのタイヤチェーンの装着時における第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり性を確保しつつ、ショルダーブロック12の剛性を適切な大きさに確保することができ、偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第2ラグ溝80は、測定領域AMにおける最小溝幅W21と、タイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22との関係が、1.1≦(W22/W21)≦1.5の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、空気入りタイヤ1へのタイヤチェーンの装着時は、第1ラグ溝70のみでなく、第2ラグ溝80にもチェーンが引っ掛かることにより、チェーンの掛かり性を確保することができるが、第2ラグ溝80の最小溝幅W21と溝幅W22との関係が(W22/W21)<1.1である場合は、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22が小さ過ぎるため、第2ラグ溝80へのチェーンの掛かり性を確保し難くなる虞がある。この場合、タイヤチェーンの装着時におけるチェーン掛かり性を確保し難くなる虞がある。また、最小溝幅W21と溝幅W22との関係が(W22/W21)>1.5である場合は、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22が大き過ぎるため、ショルダーブロック12における第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部付近の剛性が低くなり過ぎたり、ショルダーブロック12の接地時に応力集中が発生し易くなったりする虞がある。この場合、ショルダーブロック12の偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、最小溝幅W21と溝幅W22との関係が1.1≦(W22/W21)≦1.5の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1へのタイヤチェーンの装着時における第2ラグ溝80へのチェーンの掛かり性を確保しつつ、ショルダーブロック12の剛性を適切な大きさに確保することができ、偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70の外側領域A11の溝深さD11と、第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さD21との関係が、0.2≦(D21/D11)≦0.5の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、溝深さD11と溝深さD21との関係が(D21/D11)<0.2である場合は、第1ラグ溝70の溝深さD11と第2ラグ溝80の溝深さD21との差が大き過ぎるため、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置と第2ラグ溝80寄りの位置との剛性差が大きくなり過ぎ、偏摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。また、溝深さD11と溝深さD21との関係が(D21/D11)>0.5である場合は、第1ラグ溝70の溝深さD11が浅過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かり難くなる虞がある。
これに対し、第1ラグ溝70の溝深さD11と第2ラグ溝80の溝深さD21との関係が、0.2≦(D21/D11)≦0.5の範囲内である場合は、ショルダーブロック12の剛性差が大きくなり過ぎることに起因する偏摩耗を抑制しつつ、第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり性を確保することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70の最大溝深さD15と第2ラグ溝80の最大溝深さD25との関係が、0.1≦(D25/D15)≦0.5の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、第1ラグ溝70の最大溝深さD15と第2ラグ溝80の最大溝深さD25との関係が(D25/D15)<0.1である場合は、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80との最大溝深さ同士の差が大き過ぎるため、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置と第2ラグ溝80寄りの位置との剛性差が大きくなり過ぎ、偏摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。また、第1ラグ溝70の最大溝深さD15と第2ラグ溝80の最大溝深さD25との関係が(D25/D15)>0.5である場合は、第1ラグ溝70の溝深さD11が浅過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かり難くなる虞がある。
これに対し、第1ラグ溝70の最大溝深さD15と第2ラグ溝80の最大溝深さD25との関係が、0.1≦(D25/D15)≦0.5の範囲内である場合は、ショルダーブロック12の剛性差が大きくなり過ぎることに起因する偏摩耗を抑制しつつ、第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり性を確保することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、タイヤ幅方向内側の端部寄りの位置Pinでの溝深さD13、D23が1mm以上5mm以下の範囲内であるため、ショルダーブロック12のタイヤ幅方向における内側寄りの位置の剛性を、第1ラグ溝70側と第2ラグ溝80側とで同程度にすることができる。これにより、ショルダーブロック12の剛性差に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。また、第1ラグ溝70は、タイヤ幅方向外側の端部寄りの位置Poutでの溝深さD14が6mm以上15mm以下の範囲内であり、第2ラグ溝80は、タイヤ幅方向外側の端部寄りの位置Poutでの溝深さD24が1mm以上5mm以下の範囲内であるため、第1ラグ溝70の溝深さを、第2ラグ溝80の溝深さに対して適切な大きさで深くすることができる。これにより、空気入りタイヤ1のタイヤチェーンを装着した際における第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり易さを、より確実に確保することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70の規定領域A12における溝深さD12と、ショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの関係が、0.6≦(D12/DC)≦1.0の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、第1ラグ溝70の溝深さD12とショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの関係が(D12/DC)<0.6である場合は、第1ラグ溝70の溝深さD12が浅過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かり難くなる虞がある。また、第1ラグ溝70の溝深さD12とショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの関係が(D12/DC)>1.0である場合は、第1ラグ溝70の溝深さD12が深過ぎる虞があり、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置の剛性が低くなり過ぎて、偏摩耗を抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、第1ラグ溝70の溝深さD12とショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの関係が、0.6≦(D12/DC)≦1.0の範囲内である場合は、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置の剛性が低くなり過ぎることに起因する偏摩耗を抑制しつつ、第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり性を確保することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12と、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22との関係が、1.1≦(W12/W22)≦1.3の範囲内であるため、より確実にチェーン掛かり性を確保しつつ、偏摩耗を抑制することができる。つまり、第1ラグ溝70の溝幅W12と第2ラグ溝80の溝幅W22との関係が、(W12/W22)<1.1である場合は、第1ラグ溝70の溝幅W12が小さ過ぎる虞があり、空気入りタイヤ1にタイヤチェーンを装着した際に、チェーンが第1ラグ溝70に引っ掛かり難くなる虞がある。また、第1ラグ溝70の溝幅W12と第2ラグ溝80の溝幅W22との関係が、(W12/W22)>1.3である場合は、第1ラグ溝70の溝幅W12と第2ラグ溝80の溝幅W22との差が大き過ぎるため、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置と第2ラグ溝80寄りの位置との剛性差が大きくなり過ぎたり、ショルダーブロック12の接地時に応力集中が発生し易くなったりする虞がある。この場合、ショルダーブロック12の偏摩耗を効果的に抑制するのが困難になる虞がある。
これに対し、第1ラグ溝70の溝幅W12と第2ラグ溝80の溝幅W22との関係が、1.1≦(W12/W22)≦1.3の範囲内である場合は、空気入りタイヤ1へのタイヤチェーンの装着時における第1ラグ溝70へのチェーンの掛かり性を確保しつつ、ショルダーブロック12の剛性を適切な大きさに確保することができ、偏摩耗を抑制することができる。この結果、より確実に、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保することができる。
また、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とは、タイヤ幅方向内側の所定の範囲AHに、タイヤ幅方向における位置が同じ位置での溝深さが同一となる部分を有するため、ショルダーブロック12における第1ラグ溝70寄りの位置と第2ラグ溝80寄りの位置とで剛性差が大きくなり過ぎることを、より確実に抑制することができる。これにより、ショルダーブロック12の剛性差に起因する偏摩耗を、より確実に抑制することができる。また、第1ラグ溝70におけるショルダー周方向主溝22寄りの位置の溝深さが深くなり過ぎることを抑制できるので、トレッド面3の接地時に発生する音が、ショルダー周方向主溝22から第1ラグ溝70を通ってタイヤ幅方向外側に流れることを、より確実に抑制することができる。これにより、車両の走行時における通過音を、より確実に低減することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、第4ラグ溝60は、センター周方向主溝21を挟んでタイヤ幅方向に隣り合うセンターリブ11に設けられる第4ラグ溝60同士で、センター周方向主溝21への開口位置がタイヤ周方向に10mm以上ずれているため、トレッド面3の接地時に発生する音が、隣り合うセンターリブ11の第4ラグ溝60同士の間で流れることを抑制することができる。これにより、トレッド面3における、センター周方向主溝21よりもタイヤ幅方向の一方側に位置する領域で発生した音が、第4ラグ溝60を通って他方側に流れることを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に低騒音化を図ることができる。
〔変形例〕
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、トレッド面3には周方向主溝20とラグ溝40とが設けられるのみであるが、トレッド面3には、周方向主溝20とラグ溝40以外が設けられていてもよい。図18は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例でありトレッド面3にサイプ100が形成される場合の説明図である。トレッド面3には、複数のサイプ100が形成されていてもよい。サイプ100としては、例えば、図18に示すように、センターリブ11に屈曲サイプ101を設けたり、ラグ溝サイプ102を設けたりしてもよく、ショルダーブロック12にリブエッジサイプ103を設けてもよい。このうち、屈曲サイプ101は、両端がセンターリブ11内で終端する、いわゆるクローズドサイプになっており、タイヤ周方向における位置が、タイヤ周方向において隣り合う第3ラグ溝50と第4ラグ溝60との間に位置している。また、屈曲サイプ101は、タイヤ幅方向に延びつつ2箇所で屈曲することにより、クランク状に形成されている。
また、ラグ溝サイプ102も屈曲サイプ101と同様に、両端がセンターリブ11内で終端するクローズドサイプになっており、タイヤ周方向における位置が第3ラグ溝50のタイヤ周方向における位置や、第4ラグ溝60のタイヤ周方向における位置と同じ位置に配設されている。詳しくは、ラグ溝サイプ102は、第3ラグ溝50や第4ラグ溝60の延在方向に沿って配設されており、一部が第3ラグ溝50や第4ラグ溝60に重なっている。つまり、ラグ溝サイプ102は、一部が第3ラグ溝50や第4ラグ溝60の溝底に形成されている。
また、リブエッジサイプ103は、ショルダーブロック12における、ショルダー周方向主溝22によって区画されるエッジに形成されており、短い長さでタイヤ幅方向に延びると共に一端がショルダー周方向主溝22に開口し、他端がショルダーブロック12内で終端している。図18に示す例では、リブエッジサイプ103は、タイヤ周方向に隣り合う第1ラグ溝70と第2ラグ溝80との間に、2本ずつが配設されている。
なお、ここでいうサイプ100は、トレッド面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部10の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部10の変形によって互いに接触するものをいう。
正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
トレッド面3には、屈曲サイプ101、ラグ溝サイプ102、リブエッジサイプ103のようなサイプ100を配設することにより、陸部10の剛性を調節して各部の剛性をより確実に所望の大きさにすることができ、より確実に偏摩耗を抑制することができる。また、サイプ100は、サイプ100が形成されるトレッド面3の接地時には閉じるため、トレッド面3の接地時に発生する音がサイプ100を通ってタイヤ幅方向外側に流れることを抑制することができる。これらの結果、より確実に、耐偏摩耗性を確保しつつ低騒音化を図ることができる。
また、上述した実施形態では、第1ラグ溝70の拡幅部72や第2ラグ溝80の拡幅部82は、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って溝幅が大きくなっているが、拡幅部72、82は、必ずしもタイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って溝幅が大きくなっていなくてもよい。第1ラグ溝70の拡幅部72や第2ラグ溝80の拡幅部82は、例えば、溝幅が一定となる領域を有していてもよい。拡幅部72、82は、それぞれの拡幅部72、82のタイヤ幅方向外側の端部の位置での溝幅が、タイヤ幅方向内側の端部の位置での溝幅よりも大きくなっていれば、拡幅部72、82の端部同士の間の領域の溝幅がどのように変化していてもよい。
また、上述した実施形態では、第1ラグ溝70や第2ラグ溝80は、屈曲部73、83のタイヤ幅方向内側には、溝幅が一定となって形成される一定幅部71、81が位置しているが、屈曲部73、83のタイヤ幅方向内側は、溝幅が一定となって形成されていなくてもよい。屈曲部73、83のタイヤ幅方向内側は、溝幅が一定となる部分と溝幅が変化する部分とが混在していてもよく、または、拡幅部72、82での溝幅の変化の仕方と異なる変化の仕方で、溝幅が変化していてもよい。
また、上述した実施形態では、周方向主溝20は3本配設されているが、周方向主溝20は3本以外でもよい。周方向主溝20は、複数が設けられていればよく、複数の周方向主溝20のうちタイヤ幅方向における最外側に位置するショルダー周方向主溝22のタイヤ幅方向外側に、ショルダー周方向主溝22に開口すると共に互いに深さが異なる第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とがタイヤ周方向に交互に配設されていれば、周方向主溝20の数は問わない。
〔実施例〕
図19A〜図19Dは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、トレッド面3の偏摩耗性に対する性能である耐偏摩耗性と、空気入りタイヤ1の転動に伴って発生する騒音についての性能である通過騒音と、空気入りタイヤ1のタイヤチェーンを装着した場合におけるチェーンの掛かり性についての性能であるチェーン掛かり性とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが205/85R16サイズの空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして、空気圧を正規内圧に調整し、2−Dの試験車両(トラクターヘッド)に装着してテスト走行をすることにより行った。各試験項目の評価方法は、耐偏摩耗性については、試験車両で30,000km走行後のヒール&トウ摩耗の摩耗量、つまり、ショルダーブロック12の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差を測定し、測定した摩耗量の差を、後述する従来例を100とする指数で表示した。この数値が大きいほど、ショルダーブロック12の蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差が小さく、即ち、ヒール&トウ摩耗が少なく、耐偏摩耗性に優れていることを示している。
また、通過騒音については、ECE R117−02(ECE Regulation No.117Revision 2)に定めるタイヤ騒音試験法に従って測定した車外通過音の大きさによって評価した。この試験では、試験車両を騒音測定区間の十分前から走行させ、当該区間の手前でエンジンを停止し、惰行走行させた時の騒音測定区間における最大騒音値dB(周波数800Hz〜1200Hzの範囲の騒音値)を、基準速度に対し±10km/hの速度範囲をほぼ等間隔に8以上に区切った複数の速度で測定し、平均を車外通過騒音とした。最大騒音値dBは、騒音測定区間内の中間点において走行中心線から側方に7.5m、且つ路面から1.2mの高さに設置した定置マイクロフォンを用いてA特性周波数補正回路を通して測定した音圧dB(A)である。通過騒音は、この測定結果を、後述する従来例の通過騒音を基準とし、従来例の通過騒音に対する音圧dBの差で表した。従来例の通過騒音に対して音圧dBが小さいほど、通過騒音に対する性能が優れていることを示している。
また、チェーン掛かり性については、試験車両に装着された試験タイヤにタイヤチェーンを装着し、20km/hからの制動試験を3回実施した後の、試験タイヤに対するタイヤチェーンのずれ量を目視によって評価した。チェーン掛かり性は、後述する従来例を100とする指数で表し、数値が大きいほどタイヤチェーンのずれ量が小さく、チェーン掛かり性が優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例2、3、5〜25と、参考例1、4との26種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、第1ラグ溝と第2ラグ溝とを有しており、第2ラグ溝の溝深さに対して第1ラグ溝の溝深さの方が深くなっているものの、第1ラグ溝と第2ラグ溝とが交互に配置されておらず、特許文献1のようにブロックのピッチの大きさに対応して配置されている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例2、3、5〜25は、全て第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とを有していると共に、第2ラグ溝80の溝深さよりも第1ラグ溝70の溝深さの方が深くなっており、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80とが交互に配置されている。さらに、実施例2、3、5〜25と、参考例1、4に係る空気入りタイヤ1は、第3ラグ溝50の有無や、第1ラグ溝70と第3ラグ溝50の溝深さの相対関係、第1ラグ溝70のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W12と最小溝幅W11との比(W12/W11)、第2ラグ溝80のタイヤ幅方向外側の端部における溝幅W22と最小溝幅W21との比(W22/W21)、第1ラグ溝70の外側領域A11の溝深さD11と第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さD21との比(D21/D11)、第1ラグ溝70の規定領域A12における溝深さD12とショルダー周方向主溝22の溝深さDCとの比(D12/DC)、第1ラグ溝70の外側開口部75における溝幅W12と第2ラグ溝80の外側開口部85における溝幅W22との比(W12/W22)、第1ラグ溝70と第2ラグ溝80で溝深さが同一となる部分の有無、ショルダー周方向主溝22に対する第1ラグ溝70の開口位置と第2ラグ溝80の開口位置との距離L12と、ショルダー周方向主溝22に対する第3ラグ溝50の開口位置と第1ラグ溝70の開口位置との距離L13との比(L13/L12)、隣り合う第3ラグ溝50のそれぞれのショルダー周方向主溝22への開口位置同士の距離L33と、ショルダー周方向主溝22に対する第3ラグ溝50の開口位置とセンター周方向主溝21に対する第4ラグ溝60の開口位置との距離L34との比(L34/L33)、第3ラグ溝50の一定幅部51の最小溝深さD31と第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さD21との比(D31/D21)、第4ラグ溝60の一定幅部61の最小溝深さD41と第2ラグ溝80の外側領域A21の溝深さD21との比(D41/D21)、センター周方向主溝21の両側のセンターリブ11にそれぞれ形成される第4ラグ溝60のセンター周方向主溝21に対する開口位置同士のずれ量が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図19A〜図19Dに示すように、実施例2、3、5〜25の空気入りタイヤ1は、従来例に対して、耐偏摩耗性やチェーン掛かり性が低下することなく、通過騒音が低減することが分かった。つまり、実施例2、3、5〜25に係る空気入りタイヤ1は、耐偏摩耗性及びチェーン掛かり性を確保しつつ、低騒音化を図ることができる。