JP6983077B2 - フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、耐リジング性と加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板、およびその製造方法に関する。
フェライト系ステンレス鋼の冷延焼鈍鋼板を成形加工すると、成形品の表面にリジングと呼ばれる縞模様が発生することがあり、しばしば外観品質上の問題となる。リジングは鋳造組織に起因する不均一な組織状態が冷延焼鈍鋼板中に残留していることによって生じるとされる。
特許文献1には、保温炉を備えた可逆式圧延機で鋼板温度を850℃以上に維持しながら強圧下の熱間圧延を行い、その後900℃以上の温度で4時間以上のバッチ式焼鈍を行う手法により、フェライト系ステンレス鋼板の耐リジング性を改善する技術が記載されている。しかし、Bを含有する鋼は適用されておらず、表面凹凸の高さと波長の両方を加味した厳しいリジング評価基準において十分満足できる鋼板は実現困難である。
特許文献2には、フェライト+オーステナイト混合組織の状態で熱間圧延を施し、熱延焼鈍鋼板に強圧下での冷間圧延を施したのち焼鈍する手法により、フェライト系ステンレス鋼板のr値や耐リジング性を改善する技術が記載されている。しかし、Bを含有する鋼は適用されていない。また、オーステナイト相が安定に存在する混合組織温度域での熱間圧延では、優れた耐リジング性と加工性の両立は難しい。
特許文献3には、鋳片に高温で圧下を加えたのち再加熱して、粗圧延機と連続仕上圧延機により850℃以上の温度で熱延板とし、熱延板焼鈍を行うことなく大径のワークロールによる冷間圧延を施す工程にて、フェライト系ステンレス鋼板の耐リジング性を改善する技術が記載されている。しかし、Bを含有する鋼は適用されていない。また、この文献の熱間圧延もα+γの2相域で行うものである。この手法で優れた耐リジング性と加工性を両立させることは困難である。
特許文献4には、700〜850℃で熱間圧延を終了する方法により熱延鋼板中に歪エネルギーを蓄積させ、その歪エネルギーを焼鈍時の再結晶の駆動力として利用する手法により、フェライト系ステンレス鋼板の耐リジング性を改善する技術が記載されている。しかし、Bを含有する鋼は適用されていない。この文献の技術では表面凹凸の高さと波長の両方により評価される優れた耐リジング性を実現することは困難である。
特許文献5には、スラブ凝固時の柱状晶を破壊するために第1の熱間圧延を1000℃より高温で行い、次いで結晶粒微細化のために第2の熱間圧延を低温での強圧下圧延で行う工程を採用して、フェライト系ステンレス鋼板の耐リジング性を改善する技術が記載されている。しかし、Bを含有する鋼は適用されていない。この文献の技術では厳しい評価基準による優れた耐リジング性を実現することは困難である。
特許文献6、7には、γ相の軟質化を図るためにBを添加し、1100℃以上の高温で累積40%以上の強圧下粗圧延を行い、熱間圧延して600℃以下で巻き取り、熱延板焼鈍を施すことなく、冷間圧延と最終焼鈍を行う工程により、ローピング(微少うねり)の低減されたフェライト系ステンレス鋼板を得る技術が記載されている。しかし、特許文献6の段落0005および特許文献7の段落0006に教示されているように、成形加工時のリジング発生と冷間圧延時のローピング発生には必ずしも良い対応があるとは言えない。これらの文献に開示の技術では、厳しい評価基準による優れた耐リジング性と優れた加工性を両立させることは困難である。
特許文献8には、1000℃以上で累積80%以上の粗圧延を施し、仕上圧延後に700℃以上で巻き取る手法により、ローピングの低減されたフェライト系ステンレス鋼板を得る技術が記載されている。Nを固定する目的でBを添加した鋼が採用されているが、この文献に開示の技術でも、厳しい評価基準による優れた耐リジング性と優れた加工性を両立させることは困難である。
特許文献9には、熱間圧延の粗圧延後段のパスで30%以上の圧下率を確保することにより歪を蓄積させ、仕上げ圧延前に再結晶を促進することにより、ローピング特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得る技術が開示されている。しかし、この技術では、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応と再結晶化をAr1変態点以下の温度域で一挙に進行させることは困難であり、厳しい評価基準による優れた耐リジング性は実現できない。
特許文献10には、冷間圧延工程で中間焼鈍を施すことにより形状凍結性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得る技術が開示されている。しかし、熱間加工工程(鍛造、熱間圧延)には従来一般的な手法が適用され、厳しい評価基準による優れた耐リジング性と優れた加工性を両立させることは困難である。
特許文献11には、1000〜1150℃で粗圧延を施す際にひずみ速度やロールとの摩擦係数を適正化することにより、耐リジング性を改善する技術が開示されている。しかし、この技術でもフェライト相と炭化物への分解反応と再結晶化をAr1変態点以下の温度域で一挙に進行させることは困難であり、厳しい評価基準による優れた耐リジング性は実現できない。
特許文献12には、熱延板に昇温・冷却速度を適正化した予備焼鈍と本焼鈍の2回の熱処理を施す手法や、熱間圧延で高温で強圧下を施したのち均質化焼鈍を施す手法などにより、コロニーの分断を図り、中間焼鈍を有する冷間圧延工程を実施することで耐リジング性を改善する技術が開示されている。しかし、この技術では、フェライト相と炭化物への分解反応と再結晶化をAr1変態点以下の温度域で一挙に進行させることは困難であり、厳しい評価基準による優れた耐リジング性は実現できない。
特許文献13には、中間焼鈍を有する冷間圧延工程を実施することで、面内異方性が小さく、深絞り性に優れたクラッド鋼用フェライト系ステンレス鋼板を製造する技術が開示されている。しかし、熱間圧延は従来一般的な手法(タンデム式連続熱延機を使用したと考えられる。)が適用され、厳しい評価基準による優れた耐リジング性と優れた加工性を両立させることは困難である。
特開2010−270399号公報 特公昭61−50126号公報 特公昭62−34803号公報 特公平7−51727号公報 特開平11−256230号公報 特開平10−176223号公報 特開平10−36911号公報 特開平10−60543号公報 特開平9−256064号公報 特開2002−322548号公報 特開平7−310122号公報 特開2006−328524号公報 特開2008−127671号公報
フェライト系ステンレス鋼板は種々の製品への加工素材として広く使用されている。昨今では、例えば鍋などの日用品の分野においても、製品形状や表面外観の点で、より優れた意匠性が求められる場合が多くなってきた。その要求に応えるために、素材鋼板には従来にも増して優れた加工性と耐リジング性の両立が要求される。特にリジングに関しては、加工後の表面に筋状に現れる凹凸の高さ的要素だけでなく、間隔的要素も、外観の美麗さを評価する上で重要になってくることがわかってきた。一方、優れた耐リジング性を得るためにはオーステナイト相がフェライト相と共存する温度域で強圧下の熱間圧延を施すことが有利であるとされるが、その場合、優れた加工性との両立を図ることが難しい。
上述のように、これまで、フェライト系ステンレス鋼板のリジングやローピングを低減する手法が種々検討されており、それぞれの技術において所定の効果が得られている。しかし、それらの技術に従っても、昨今の厳しい意匠性の要求に対応しうる優れた耐リジング性と加工性を両立させることは難しい。本発明は、加工性に優れ、かつ、表面凹凸の高さと波長の両方を加味した厳しい基準で評価される耐リジング性に極めて優れるフェライト系ステンレス鋼板の提供を目的とする。
一般に、フェライト系ステンレス鋼板の耐リジング性を改善するうえで、圧延方向に伸びたフェライト結晶コロニーの分断化が重要であることはよく知られている。しかし、発明者らは詳細な研究の結果、うねりの高さと波長の両方を考慮した厳しい基準の耐リジング性を安定して顕著に改善するためには、単にフェライト結晶コロニーが分断化されているだけではなく、更に、フェライト結晶の<111>方向が板厚方向に近い角度に配向した結晶粒の集団(後述の{111}コロニー)のうち、ある程度サイズの大きいものが、比較的均等なサイズで分布した組織状態を呈していることが重要であることを知見した。具体的には、後述(A)で定義される{111}コロニーのうち、円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径が300μm以下である組織状態によって特徴付けられる「ランダム化された結晶配向」を有する鋼板であることが極めて有効である。
また、優れた耐リジング性と加工性を両立させるためには、(i)高温で過剰にオーステナイト相が生成しないようにγmax値を厳しく規制し、かつ適量のBを含有させて熱間圧延前に高温でのオーステナイト結晶粒を微細化しておくこと、(ii)熱間圧延工程での仕上熱延を再結晶温度以上かつAr1変態点以下の温度域で入念に行って、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応とフェライト相の再結晶化を熱間圧延工程で一挙に進行させること、(iii)適量のTiあるいはAlを積極添加してAr1変態点を高めておき、上記のフェライト相と炭化物への分解反応をできるだけ高温で行うこと、(iv)上記の熱間圧延を終えた鋼板に対して、中間焼鈍を挟んだ冷間圧延、および仕上焼鈍を施す手法を適用して上述のランダム化された結晶配向を実現すること、が極めて有効であることがわかった。また、(v)熱延板焼鈍を行う場合は、仕上熱延での上限温度をAr1変態点より少し高い温度まで許容できるようになることが確認された。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
上記目的を達成するために、本明細書では以下の発明を開示する。
[1]質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有し、下記(A)で定義される{111}コロニーのうち、円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径が300μm以下である結晶配向を有し、JIS13B号引張試験片による圧延方向の破断伸び(JIS Z2241:2011)が28.0%以上であるフェライト系ステンレス鋼板。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
(A)板厚方向(ND)に垂直な板厚1/4位置の断面についてEBSD(電子線後方散乱回折法)により測定された、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を表示するマッピング画像において、その領域の輪郭をたどることによって形成される、当該領域を囲む1つの閉じた輪郭線の内部領域を、1つの「{111}コロニー」と定義する。
[2]下記(B)で定義されるリジング指標Wa×WSm値が8200以下である上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
(B)長手方向が圧延方向となるように採取されたJIS5号引張試験片を用いて、平行部での伸び率が20%となるまで引張ひずみを付与したのち除荷し、除荷後の試験片平行部に圧延直角方向の測定ラインを5mm間隔で5本定め、JIS B0601:2013に従い、各測定ライン上で基準長さ20mmの表面プロフィールを測定し、カットオフ値λf=8.0mm、λc=0.5mmとして波長成分0.5〜8.0mmのうねり曲線を定め、5本の測定ライン毎に上記うねり曲線から算術平均うねりWa(μm)およびうねり曲線要素の平均長さWSm(μm)を求め、各測定ラインでのWaの加算平均値Wa(AVE)とWSmの加算平均値WSm(AVE)との積、Wa(AVE)×WSm(AVE)を算出する。この試験を3本の試験片について行い、計6個(試験片3本×両面)のWa(AVE)×WSm(AVE)値の加算平均値を、当該鋼板のリジング指標である「Wa×WSm値」とする。
[3]板厚が0.3mm以上2.0mm未満である上記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[4]質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有する鋼の鋳片を1050〜1150℃で加熱する工程(鋳片加熱工程工程)、
前記加熱後の鋳片に粗圧延を施す工程(粗圧延工程)、
粗圧延を終えた板材に、各パス間で850℃以上Ar値で表される温度(℃)以下での加熱保持を行う方法で、複数パスによる合計圧下率80%以上の熱間圧延を施す工程(仕上熱延工程)、
冷間圧延と、それに続く焼鈍を1回以上行う工程(冷延−中間焼鈍工程)、
圧延率50%以上の最終的な冷間圧延と、それに続く最終的な焼鈍を行う工程(仕上冷延−仕上焼鈍工程)、
を上記の順に有し、最初の冷間圧延開始直前の板厚から、最終的な冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を75%以上とする、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
[5]質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有する鋼の鋳片を1050〜1150℃で加熱する工程(鋳片加熱工程)、
前記加熱後の鋳片に粗圧延を施す工程(粗圧延工程)、
粗圧延を終えた板材に、各パス間で850℃以上Ar値+20で表される温度(℃)以下での加熱保持を行う方法で、複数パスによる合計圧下率80%以上の熱間圧延を施す工程(仕上熱延工程)、
前記熱間圧延によって得られた鋼板に、800℃以上Ar値で表される温度(℃)以下の焼鈍を施す工程(熱延板焼鈍工程)、
冷間圧延と、それに続く焼鈍を1回以上行う工程(冷延−中間焼鈍工程)、
圧延率50%以上の最終的な冷間圧延と、それに続く最終的な焼鈍を行う工程(仕上冷延−仕上焼鈍工程)、
を上記の順に有し、最初の冷間圧延開始直前の板厚から、最終的な冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を75%以上とする、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
[6]冷延−中間焼鈍工程、仕上冷延−仕上焼鈍工程での各焼鈍を、いずれも加熱温度850〜1000で行う、上記[4]または[5]に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
板厚h0(mm)からh1(mm)まで、1パスまたは複数パスの圧延によって板厚を減じる場合の合計圧下率RT(%)は下記(3)式によって定まる。
T=(h0−h1)/h0×100 …(3)
単に「合計圧下率」と言うときには、途中の圧延パス間での熱履歴は問わない。
一方、冷間圧延における「圧延率」は、圧延パス間での熱処理を伴わない一連の冷間圧延パスによる、上記(3)式の合計圧下率RT(%)を意味する。
本発明によれば、表面凹凸の高さと波長の両方で評価される優れた耐リジング性を有するフェライト系ステンレス鋼板が、工業的に安定して提供可能となった。この鋼板は加工性も良好であり、種々の製品への加工に広く適用可能である。優れた耐リジング性を活かすことにより加工の設計自由度も拡大できることが期待され、加工製品の意匠性向上に寄与しうる。
パス間加熱を施す手法で得られた本発明に従うフェライト系ステンレス鋼の熱延鋼板(後述No.A1のas hot材)と、タンデムミルを用いて製造した熱延鋼板に830℃9時間保持の熱延板焼鈍を施して得られた従来一般的なフェライト系ステンレス鋼の熱延焼鈍鋼板(後述No.B20)についての、板厚方向(ND)に垂直な面(表層、板厚1/4位置、板厚中央)のEBSD測定によるIPFマップに基づく、隣接する結晶粒方位差の角度が15°以上の結晶粒界を例示した図。 本発明例No.A1の冷延焼鈍鋼板について、板厚方向(ND)に垂直な断面のEBSD測定による001極点図に基づく結晶方位マップを例示した図。 図2の結晶方位マップを二値化し、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を黒で表示したマッピング画像。 図3から定めた{111}コロニーを黒で塗りつぶしたマッピング画像。 比較例No.B20の冷延焼鈍鋼板について、板厚方向(ND)に垂直な断面のEBSD測定による001極点図に基づく結晶方位マップを例示した図。 図5の結晶方位マップを二値化し、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を黒で表示したマッピング画像。 図6から定めた{111}コロニーを黒で塗りつぶしたマッピング画像。
〔化学組成〕
本明細書において、鋼の化学組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、オーステナイト生成元素であり、熱間圧延中のフェライト結晶粒粗大化防止のために有効である。検討の結果、本発明では0.020%以上のC含有量を必要とする。ただし、C含有量が多くなりすぎると加工性の低下を招く。C含有量は0.120%以下に制限される。
Siは、脱酸作用を有する元素であるが、多量に含有すると加工性、靱性が低下する。一方、過度の低Si化は精錬コストの増大に繋がる。Si含有量は0.10〜1.00%とする。0.20〜0.70%の範囲に管理してもよい。
Mnは、オーステナイト生成元素であり、熱間圧延中のフェライト結晶粒粗大化防止のために有効であり、0.10%以上のMn含有量を確保する。0.25%以上とすることがより好ましい。多量のMn含有は加工性、耐食性の低下を招く。Mn含有量は1.00%以下に制限される。
Niは、オーステナイト生成元素であり、熱間圧延中のフェライト結晶粒粗大化防止のために有効である。また、靱性や耐食性の向上にも有効である。これらの作用を発揮させるために0.01%以上のNi含有量を確保する。0.05%以上とすることがより好ましい。ただし、過剰なNi含有は原料コストの増大に繋がるので、Ni含有量は0.60%以下とする。0.30%以下の範囲に管理してもよい。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保する上で11.00%以上の含有量を必要とする。フェライト系ステンレス鋼の代表的鋼種であるSUS430並の耐食性を安定して確保するためにはCr含有量を15.00%以上とすることが好ましい。ただし、多量のCr含有は加工性低下、靱性低下、コスト増大を招く。Cr含有量は19.00%以下の範囲とする。
Nは、オーステナイト生成元素であり、熱間圧延中のフェライト結晶粒粗大化防止のために有効であり、0.010%以上のN含有量を確保する。ただし、N含有量が多くなると加工性が低下しやすい。N含有量は0.050%以下に制限される。0.035%以下であることがより好ましい。
Bは、高温でのオーステナイト相を微細分散化するとともに、オーステナイト相の分解を早める作用がある。本発明では0.0020%以上のB含有量を確保する必要があり、0.0035%以上に管理してもよい。多量のB含有は溶接高温割れを引き起こす要因となるので、0.0100%以下の含有量とする。
Alは、オーステナイト相生成温度領域を縮小し、オーステナイト相が安定化する温度を上昇させる作用が大きい。すなわち後述(2)式のAr値上昇への寄与が大きい。この作用により、オーステナイト相が安定に存在できない温度域で仕上熱延を行うに際し、より高温での仕上熱延が可能となり、それによってオーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応が促進される。熱間圧延中にこの分解反応を十分に進行させることが加工性の向上をもたらす。また、AlはNを固定する作用を有し、高純度化にも寄与する。後述のTiもAlと同様の作用を発揮するので、本発明ではAl、Tiの1種以上を含有させる。種々検討の結果、Al添加によって上記作用を十分に得るためには、0.050%以上のAl含有量を確保することが有効である。ただし、Alは強力なフェライト生成元素であり、過剰の添加は高温でのオーステナイト相生成量を必要以上に低下させる要因となるので、Al含有量は0.200%以下に制限される。
Tiは、上記Alと同様、オーステナイト相生成温度領域を縮小してオーステナイト相が安定化する温度を上昇させる作用が大きい。すなわち後述(2)式のAr値上昇への寄与が大きい。この作用は上述の通り、熱間圧延時に、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応を進行させるうえで有利に機能し、加工性の向上に寄与する。また、TiはN、Cを固定し高純度化にも寄与する。本発明では上述のようにAl、Tiの1種以上を含有させる。種々検討の結果、Ti添加によって上記作用を十分に得るためには、0.050%以上のTi含有量を確保することが有効である。ただし、過剰のTi添加は高温でのオーステナイト相生成量を必要以上に低下させる要因となり、また加工性を低下させる要因にもなるので、Ti含有量は0.180%以下に制限され、0.150%以下であることがより好ましい。
Moは、Cr含有鋼の耐食性改善に有効であり、必要に応じて添加することができる。0.01%以上のMo含有量を確保することがより効果的である。過剰のMo含有は加工性低下、コスト増大を招く。Moを添加する場合は0.50%以下の範囲で行うことが望ましく、0.15%以下、あるいは0.10%以下の範囲に管理してもよい。
Cuは、オーステナイト生成元素であり、熱間圧延中のフェライト結晶粒粗大化防止のために有効であることから、必要に応じて添加することができる。0.01%以上のCu含有量を確保することがより効果的である。過剰のCu含有は耐食性や加工性の低下を招く。Cuを添加する場合は0.50%以下の範囲で行うことが望ましく、0.15%以下、あるいは0.10%以下の範囲に管理してもよい。
Nb、Vは、鋼中のCを固定し高純度化するとともにAr値上昇に有効であり、Coは、耐食性、靭性向上や鋼中のC固定による高純度化に有効であることから、必要に応じてこれらの元素の1種以上を添加することができる。ただし、これらの元素は過剰に添加するとコストの増大や硬質化による加工性の低下を招くため、Nb含有量は0.10%以下、V含有量は0.20%以下、Co含有量は0.10%以下の範囲とすることが望ましい。
不可避的不純物として混入するP、Sについては、従来一般的なフェライト系ステンレス鋼と同様、P:0.050%以下、S:0.030%以下の含有量範囲であれば問題ない。
下記(1)式により定まるγmax値は、1100℃で等温保持し平衡状態に至った場合のオーステナイト量(体積%)を成分組成から推定する指標である。γmax値が100以上である場合は、その鋼の最大オーステナイト量は100%であると推定される。
γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
ここで、(1)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
本発明ではγmax値が20.0〜44.0の範囲に入るように各成分元素の含有量が調整された鋼を使用する。発明者らの研究によれば、フェライトコロニーの粉砕を熱間圧延中に進行させることが、耐リジング性の顕著な改善に繋がる。γmaxが20.0を下回る鋼の場合、高温で生じるオーステナイト相の量が少ないために上記のコロニー粉砕効果が十分に享受されない場合がある。一方、γmax値が44.0を超えるとオーステナイト相の生成量が多くなり、フェライトコロニーの粉砕効果は高まるが、仕上熱延のパス間で加熱処理を行う手法を適用しても、条件によっては熱間圧延中にオーステナイト相の全部を分解できない場合がある。分解されずに残ったオーステナイト相は、硬質なマルテンサイト相に変態して熱延鋼板中に残存し、加工性低下の要因となり、熱間圧延により耐リジング性と加工性を一挙に改善することが困難となる。
下記(2)式により定まるAr値は、オーステナイト相が安定に存在する温度域から降温した場合のオーステナイト−フェライト変態点(Ar1変態点)(℃)を成分組成から推定する指標である。
Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
ここで、(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
耐リジング性と加工性を顕著に改善するには、再結晶温度以上Ar1変態点以下の温度域で仕上熱間圧延を行うことが極めて有効である。Ar1変態点以下の温度域はオーステナイト相が安定に存在しない温度域であるため、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応が促進される。Ar1変態点が高温であるほど、拡散速度の大きい高温での仕上熱延が可能となり、耐リジング性の向上だけでなく、生産性の面でも有利となる。(2)式のAr値が870以上に調整された化学組成の鋼を適用することが好ましい。過度に高いAr値に調整する必要はない。Ar値は例えば1100以下、あるいは1050以下の範囲で調整すればよい。
〔金属組織〕
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、再結晶したフェライト結晶粒で構成されるマトリックス中に炭化物粒子が分散している金属組織を呈する。マトリックスが十分に再結晶していない場合や、マルテンサイト相が残存する場合は、加工性が悪くなる。
〔結晶配向〕
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、表面凹凸(うねり曲線)の高さと波長の両方を加味した厳しい基準で評価される優れた耐リジング性を呈する。前述のように、そのような優れた耐リジング性を呈するためには、フェライト結晶コロニーが十分に分断化されていることに加え、フェライト結晶の<111>方向が板厚方向に近い角度に配向した結晶粒の集団のうち、ある程度サイズの大きいものが、比較的均等なサイズで分布していることが重要であることがわかった。本明細書では、フェライト結晶の<111>方向が板厚方向に近い角度に配向した結晶粒の集団を「{111}コロニー」と呼び、具体的には下記(A)のように定義している。
(A)板厚方向(ND)に垂直な板厚1/4位置の断面についてEBSD(電子線後方散乱回折法)により測定された、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を表示するマッピング画像において、その領域の輪郭をたどることによって形成される、当該領域を囲む1つの閉じた輪郭線の内部領域を、1つの「{111}コロニー」と定義する。
ここで、「板厚1/4位置」は、板厚がt(mm)である鋼板において、板面(圧延面)からの板厚方向深さがt/4(mm)である位置である。すなわち、圧延面からt/4の深さまで研磨することによって調製した表面についてEBSD測定を行い、結晶方位のマッピング画像を得る。
以下において、上記(A)に記載の「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を、単に「<111>領域」と言う。
上記「当該領域を囲む1つの閉じた輪郭線」の記載における「当該領域を囲む」とは、閉じた輪郭線に接する<111>領域が、その閉じた輪郭線の内部領域側に存在することを意味する。また、上記の「当該領域を囲む1つの閉じた輪郭線の内部領域」には、往々にして<111>領域以外の領域が存在する。すなわち、{111}コロニーは、その内部に<111>領域以外の領域を含むことがある。その場合、{111}コロニーの内部に存在する「<111>領域以外の領域」も、当該{111}コロニーの一部であるとみなして、当該{111}コロニーの面積を定める。また、上記の輪郭をたどる手法によって画定される、ある{111}コロニーが、同様の手法によって画定される別の{111}コロニーの内部に含まれることとなった場合、内部の{111}コロニーは、それを含む別の{111}コロニーの一部であるとみなし、内部の{111}コロニーの存在については無視する。
EBSD測定は、短辺が1.5mm以上である矩形の測定視野を、合計測定面積が10mm2以上となるように無作為に1つまたは複数選択し、それぞれの測定視野について、ステップサイズ(測定ピッチ)0.5μm以下で電子線を照射して行い、結晶方位マップを得る。その結晶方位マップから、<111>領域(すなわち、フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域)を他の領域と識別できるように表示したマッピング画像を作成し、そのマッピング画像に基づいて上記の{111}コロニーを定める。その際、各測定視野において、ある<111>領域が、当該視野を画定する境界線(矩形領域の4辺。以下「視野境界線」という。)によって切断されている場合、その切断されている部分の視野境界線も、当該<111>領域の輪郭の一部であるとみなして、上記(A)に従う「1つの閉じた輪郭線」の画定を試みる。したがって、1つの測定視野に見られる{111}コロニーは、形式的に、「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」と、「輪郭線に視野境界線を含む{111}コロニー」の2種類に分類される。
本発明では、フェライト結晶粒の結晶方位が鋼板内でどの程度ランダムに配向しているかを表すために、「{111}コロニーの円相当径」という指標を導入する。ある{111}コロニーの円相当径は、そのコロニーと同じ面積を有する円の直径である。発明者らの検討によれば、フェライト系ステンレス鋼の冷延焼鈍鋼板において、表面凹凸の高さと波長の両方で評価される厳しい基準の耐リジング性を顕著に改善するためには、円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径が300μm以下である結晶配向にコントロールすることが極めて有効であることがわかった。これは、ある程度の大きさを有する{111}コロニーが比較的均等なサイズで分布した組織状態であると言うことができる。このような態様で「結晶配向のランダム化」が実現しているときに、上記の厳しい基準での優れた耐リジング性と、優れた加工性(延性)を両立させることができるのである。
ここで、平均円相当径は、上述した2種類に分類される{111}コロニーのうち、「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」のみを対象として求める。すなわち、全測定視野について、「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」の中から「円相当径が200μm以上である{111}コロニー」を全て抽出し、それらの円相当径の相加平均値を算出し、その値を「円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径」として採用する。
もし、短辺が1.5mm以上である1つまたは複数の矩形視野について合計測定面積10mm2以上を測定した際に、上記の手法で「円相当径が200μm以上である{111}コロニー」を抽出することができないときは、円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径は「測定不能」と記録され、当該鋼板は本発明の範囲外であると判定する。具体的には以下のようなケースが考えられる。
(i)「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」は存在するが、その中で最もサイズが大きい{111}コロニーの円相当径が200μm未満である場合。
(ii)「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」が存在しないこと、またはその面積割合が極めて少ないことに起因して、「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」が全測定視野内に見当たらない場合。
(iii){111}コロニーが粗大であることに起因して、全測定視野内に観測される{111}コロニーの全てが「輪郭線に視野境界線を含む{111}コロニー」である場合。
上記(i)(ii)のケースでは、フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である結晶方位以外の結晶方位(以下「他の結晶方位」という。)が優勢な集合組織を呈していると判断され、十分にランダム化された結晶配向を有しているとは言えない。しかし、本発明に従う製造方法によれば、上記(i)(ii)のケースとなることはなく、他の結晶方位が優勢であることに起因する結晶配向のランダム化不足は生じない。一方、上記(iii)のケースは、粗大な{111}コロニーが存在することに起因して結晶配向のランダム化不足を生じている場合である。本発明に従う製造方法によれば、フェライト結晶コロニーの分断化は十分に進行するので、この種のランダム化不足も回避される。
なお、合計測定面積に占める「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」の面積割合は25〜60%であることが好ましい。
〔加工性〕
本発明に従うフェライト系ステンレス鋼板はマトリックスがフェライト再結晶粒からなる金属組織を有し、加工性が良い。具体的には、JIS13B号引張試験片による圧延方向の破断伸び(JIS Z2241:2011)が28.0%以上という、良好な延性を呈する。
〔耐リジング性〕
本発明に従うフェライト系ステンレス鋼板は、表面凹凸の高さと波長の両方を加味した厳しい基準で評価される優れた耐リジング性を有する。その具体的評価指標として、下記(B)で定義されるリジング指標「Wa×WSm値」を採用することができる。
(B)長手方向が圧延方向となるように採取されたJIS5号引張試験片を用いて、平行部での伸び率が20%となるまで引張ひずみを付与したのち除荷し、除荷後の試験片平行部に圧延直角方向の測定ラインを5mm間隔で5本定め、JIS B0601:2013に従い、各測定ライン上で基準長さ20mmの表面プロフィールを測定し、カットオフ値λf=8.0mm、λc=0.5mmとして波長成分0.5〜8.0mmのうねり曲線を定め、5本の測定ライン毎に上記うねり曲線から算術平均うねりWa(μm)およびうねり曲線要素の平均長さWSm(μm)を求め、各測定ラインでのWaの加算平均値Wa(AVE)とWSmの加算平均値WSm(AVE)との積、Wa(AVE)×WSm(AVE)を算出する。この試験を3本の試験片について行い、計6個(試験片3本×両面)のWa(AVE)×WSm(AVE)値の加算平均値を、当該鋼板のリジング指標である「Wa×WSm値」とする。
発明者らの検討によれば、後述する熱間圧延手法を適用して、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応を熱間圧延工程中に促進させることにより、Wa×WSm値が例えば12000以下となる冷延焼鈍鋼板を得ることができる。Wa×WSm値が12000以下であれば、従来一般的なフェライト系ステンレス鋼板と比べ、表面凹凸の高さと波長の両方を加味した厳しい基準での耐リジング性は、かなり改善されていると評価できる。しかしながら本発明では、更に高レベルの優れた耐リジング性を有するフェライト系ステンレス鋼板を目指す。具体的にはWa×WSm値が8200以下という耐リジング性を目指す。このような優れた耐リジング性を呈する冷延焼鈍鋼板は、(i)特定範囲に限定された化学組成、(ii)オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応を仕上熱延工程中に促進させる熱間圧延プロセス、(iii)中間焼鈍を挟んだ冷間圧延・焼鈍プロセス、を組み合わせることによって作り分けることができる。上記に加えて更に、(iv)熱延板焼鈍工程の挿入、を組み合わせると、Wa×WSm値が6000以下という非常に優れた耐リジング性を実現することができる。
〔製造工程〕
本発明に従うフェライト系ステンレス鋼板は、例えば以下のような工程によって製造することができる。
鋳片加熱→熱間圧延→(熱延板焼鈍)→冷間圧延→中間焼鈍→仕上冷間圧延→仕上焼鈍
上記のうち「熱延板焼鈍」の工程は、特に優れた耐リジング性の実現を重視する場合などに選択的に採用することができる。「冷間圧延→中間焼鈍」の工程は必要に応じて複数回行うことができる。なお、上記工程中には「酸洗」の記載を省略しているが、酸洗は常法に従い適宜実施される。以下、上記の各工程について説明する。
〔鋳片加熱〕
熱間圧延前の鋳片加熱は1050〜1150℃の温度範囲で行うことが望ましい。鋳片加熱温度が高すぎると鋳片加熱炉から抽出したときのオーステナイト量が少なくなる。オーステナイト相はフェライト相と比較して硬質であるため、圧延時にはオーステナイト相の量が多いほどフェライト相へのひずみの導入が促進されやすく、フェライト結晶コロニーの消失化に有利となる。したがって、鋳片加熱温度を高くしすぎないことが耐リジング性向上には有利となる。一方、鋳片加熱温度が低すぎると、変形抵抗が大きくなり圧延負荷が増大する。
〔熱間圧延〕
熱間圧延は、粗圧延機と仕上圧延機を用いて行うことができる。仕上圧延機は、熱延鋼板の最終目標板厚まで圧下することができる熱間圧延機である。以下、粗圧延機で行う熱間圧延を「粗圧延」、仕上圧延機で行う熱間圧延を「仕上熱延」と言う。
粗圧延では、オーステナイト相が十分に存在する状態で圧下を加えることによって、フェライト結晶コロニーの分断化を図る。そのためには、例えば、950〜1050℃の温度範囲で合計圧下率85%以上の粗圧延を施すことが好ましい。鋳片が厚さ100mm以上のスラブであれば、鋳片加熱炉からの抽出温度を1050℃以上とすることによって、上記好ましい条件での粗圧延が可能である。なお、γmax値が低すぎる場合や、鋳片加熱温度が上記より高い場合はオーステナイト相の存在量が少なくなり、フェライト結晶コロニーの分断効果が十分に得られない。
仕上熱延では、再結晶温度以上、かつ(2)式のAr値で表される温度(℃)以下の温度範囲で行うことによって、耐リジング性と加工性の向上を図る。そのためには、コイラーファーネスを有するリバース式熱延機を使用し、各仕上熱延のパス間において、再結晶温度以上Ar値で表される温度(℃)以下で加熱することが極めて有効である。ただし、後述の熱延板焼鈍を施す場合は、再結晶温度以上Ar値+20で表される温度(℃)以下で加熱することで効果が得られる。Ar値以下の温度域は、オーステナイト相が平衡論的に安定に存在できない温度域に相当する。このような温度域で圧下と加熱を繰り返すことによって、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応が促進される。また、Ar値より少し高くても、Ar値+20℃以下の温度域では、平衡論的に安定に存在できるオーステナイト相の量はかなり少ない。Ar値を少し超える温度域に入っても、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応は進行するが、Ar値以下の場合に比べると分解反応の駆動力は弱く、場合によっては熱延鋼板中にマルテンサイトが生成することも考えられる。しかし、そのマルテンサイト生成量はごく僅かであることから、熱延板焼鈍を施すことによりマルテンサイトは消失し、加工性の低下は回避される。
再結晶温度以上で仕上熱延を終了させることによって、マトリックスは再結晶したフェライト結晶となる。この手法によって、再結晶したフェライト結晶中に炭化物が析出した組織状態の熱延鋼板が得られる。なお、本発明の対象鋼種の再結晶温度は800℃前後である。そのため、例えば850℃以上の温度域で仕上熱延を行えば「再結晶温度以上で熱間圧延を行う」という要件を十分に満たすことができる。したがって、本発明では仕上熱延でのパス間加熱温度の下限を850℃に規定している。
仕上熱延での初パス開始前の板厚から最終パス終了後の板厚までの合計圧下率は80%以上とすることが好ましく、熱延鋼板の目標板厚に応じて例えば95%以下の範囲で設定すればよい。仕上熱延の圧延パス数は例えば5〜7パスとすることができる。また、仕上熱延の初パス開始から最終パス終了までの所要時間は、パス間加熱の保持時間を含めて、例えば5〜15分の範囲とすることが好ましい。熱延鋼板の板厚は例えば2.0〜8.0mmの範囲で調整すればよい。
ここで開示の熱間圧延手法は、熱間圧延時にオーステナイト相を直接、フェライト相と炭化物へ分解させてしまうものである。このようにして得られた熱延鋼板を使用すると、熱間圧延後の焼鈍で炭化物の析出を図る従来一般的な手法と比べ、冷延焼鈍鋼板における結晶方位のランダム化が増大し、うねり曲線の高さに関するパラメータと波長に関するパラメータの積によって評価されるような厳しい基準での優れた耐リジング性を顕著に向上させることができる。タンデムミルを用いた一般的な仕上熱延では、オーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応を十分に進行させる時間的余裕がない。
図1に、上記のパス間加熱を施す手法で得られた本発明に従うフェライト系ステンレス鋼の熱延鋼板(後述No.A1のas hot材)と、タンデムミルを用いて製造した熱延鋼板に830℃9時間保持の熱延板焼鈍を施して得られた従来一般的なフェライト系ステンレス鋼の熱延焼鈍鋼板(後述No.B20)について、板厚方向(ND)に垂直な面(表層、板厚1/4位置、板厚中央)のEBSD測定によるIPF(逆極点図)マップに基づく、隣接する結晶方位差が15°以上の結晶粒界を例示する。図中に示してあるスケールの長さはいずれも300μmである。本発明に従うas hot材は、従来法による熱延焼鈍鋼板よりも、板厚深部まで再結晶フェライト粒が微細化かつ整粒化されていることがわかる。このような均質化された組織が、冷延−焼鈍工程での集合組織の過度な発達を抑制し、結晶配向がランダム化された組織状態の冷延焼鈍鋼板の形成に寄与しているものと考えられる。
上述の特許文献1には、パス間加熱を行いながら850℃以上で仕上熱延を行う手法が開示されている。しかし、Al、Tiを含有しない鋼を対象としており、850℃以上の温度域は特許文献1に開示の鋼にとってオーステナイト相が安定して存在する領域に相当すると考えられる。そのため、熱間圧延時にオーステナイト相を直接、フェライト相と炭化物へ分解させてしまうことができない。また、この文献ではBを含有しないNb添加鋼を対象としており、適用鋼種が異なる。特許文献1の技術では本発明で意図する優れた耐リジング性を実現することは困難である。
〔熱延板焼鈍〕
必要に応じて熱延板焼鈍を行うことができる。上述のWa×WSm値が例えば6000以下という非常に優れた耐リジング性を狙う場合は、熱延板焼鈍を行うことが望ましい。長時間のバッチ式焼鈍を行っても構わないが、連続焼鈍酸洗ラインでの短時間の焼鈍でも大きな効果が得られる。バッチ式焼鈍では例えば800℃以上Ar値(℃)で表される温度以下で9〜24時間保持する条件が適用できる。連続焼鈍では例えば800℃以上Ar値(℃)で表される温度以下、より好ましくは850℃以上Ar値(℃)で表される温度以下の範囲に定めた所定温度で0〜60秒保持する条件が適用できる。保持時間0秒とは、所定の温度に到達したのち直ちに冷却するヒートパターンを意味する。上記の熱延手法で得られた熱延鋼板(as hot材)は、既に再結晶したフェライト結晶粒で構成されるマトリックス中に炭化物粒子が分散した金属組織を有しているが、熱延板焼鈍を施すことにより組織の均質化が一層進行し、これが耐リジング性の更なる向上をもたらすものと考えられる。なお、上述したように、仕上熱延でのパス間加熱温度がAr値を少し超える条件で行った熱延鋼板(as hot材)では、ごく僅かにマルテンサイト相が存在していることも考えられる。このようなas hot材であっても、熱延板焼鈍を施すことによってマルテンサイト相を消失させることができ、良好な加工性が得られる。
〔冷間圧延→中間焼鈍→仕上冷間圧延→仕上焼鈍〕
上記の熱間圧延、あるいはさらに熱延板焼鈍を終えた鋼板に対して、中間焼鈍を挟んだ冷間圧延と、最終的な仕上焼鈍を施し、冷延焼鈍鋼板を得る。ここでは、最終的な仕上焼鈍に供する直前の冷間圧延を「仕上冷間圧延」と呼ぶ。従来から、ステンレス鋼板の製造プロセスでは必要に応じて中間焼鈍を挟んだ冷延工程が採用されることがある。しかし、上述のWa×WSm値が8200以下という厳しい基準での優れた耐リジング性を、優れた加工性(延性)と両立させながら実現するためには、熱間圧延時にオーステナイト相を直接、フェライト相と炭化物へ分解させてしまう上述の熱間圧延手法を採用して熱延鋼板を得たのちに、中間焼鈍を挟んだ冷延工程を適用することが極めて有効となる。「冷間圧延」とその後に行われる「焼鈍」のサイクルを繰り返すことにより、集合組織の発達が抑制され、顕著にランダム化された結晶配向を有する冷延焼鈍鋼板が得られ、上記の優れた耐リジング性が付与される。仕上冷間圧延の前に行う「冷間圧延→中間焼鈍」は、必要に応じて複数回行うことができる。
仕上冷間圧延の圧延率は50%以上とすることが好ましく、例えば50〜90%の範囲で仕上冷間圧延率を設定すればよい。また、最初の冷間圧延開始直前の板厚から、最終的な冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を75%以上とすることが好ましく、例えば75〜95%の範囲で上記の合計圧下率を設定すればよい。仕上冷間圧延率が低すぎる場合や、上記の合計圧下率が低すぎる場合には、「冷間圧延」と「焼鈍」のサイクルを繰り返すことによる結晶配向のランダム化作用が十分に発揮されない。中間焼鈍および仕上焼鈍はいずれも、従来公知の方法で行うことができる。これら各焼鈍の条件は例えば850〜1000℃、均熱0〜60秒の範囲で設定すればよい。冷延焼鈍鋼板の板厚は例えば0.3mm以上2.0mm未満である。
表1に示す鋼を溶製し、連続鋳造スラブ(板厚約200mm)を得た。これをスラブ加熱炉で加熱した後、炉から出し、粗圧延および仕上熱延を施し、巻き取ることにより熱延鋼板とした。鋳片(連続鋳造スラブ)の加熱は、表2A、表2B中に示した鋳片加熱温度にて、保持時間120〜300分の範囲で行った。粗圧延によって板厚18mm以上の粗圧延材としたのち、仕上熱延を行った。仕上圧延機は、比較例B18〜B20を除きリバース式のステッケルミルであり、ミルの両側に各圧延パス間で鋼板を巻き取って加熱保持する炉(コイラーファーネス)を備えている。仕上熱延の合計パス数は5〜7パスとし、各パス間でコイラーファーネスにて加熱処理を行った。その加熱温度は表2A、表2B中に示してある。各パス間での加熱温度は一律とした。比較例B18〜B20ではタンデムミルにより仕上熱延を行った。いずれの例においても、仕上熱延の最終パス終了後には熱処理を加えることなく巻き取り、大気中で放冷した。このようにして表2A、表2Bに記載の板厚を有する熱延鋼板を得た。
得られた熱延鋼板からサンプルを採取し、圧延方向および板厚方向に平行な断面(L断面)の光学顕微鏡観察、EBSD(電子線後方散乱回折法)測定および硬さ測定を行った。EBSD測定では、TSL社製、結晶方位解析システム(PEGASUS2300)を使用して結晶方位差が15°以上である結晶粒界を検出させた。これらの調査によりフェライト結晶粒が再結晶化しているかどうかを判定し、再結晶化しているものを○(再結晶化:合格)、それ以外を×(再結晶化:不合格)と評価した。結果を表2A、表2Bに示す。
続いて、一部の例では熱延鋼板にバッチ式焼鈍炉または連続焼鈍炉により熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍の有無あるいは熱延板焼鈍条件は表2A、表2B中に示してある。次いで、酸洗後に、以下に示すA、Bいずれかの工程にて板厚0.7mmの冷延焼鈍鋼板を得た。
(冷延工程A)冷間圧延→中間焼鈍→酸洗→仕上冷間圧延→仕上焼鈍→酸洗
(冷延工程B)仕上冷間圧延→仕上焼鈍→酸洗
冷延工程A、Bの種別、冷延工程Aでの中間焼鈍条件、冷延工程A、Bでの仕上冷間圧延率、冷延工程A、Bでの仕上焼鈍条件、および冷延工程A、Bでの最初の冷間圧延開始直前の板厚から仕上冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を、表2A、表2B中に示してある。
板厚0.7mmの冷延焼鈍鋼板からサンプルを採取し、以下の調査を行った。
〔金属組織〕
L断面について光学顕微鏡観察およびEBSD測定を行い、EBSD測定では前述のように結晶方位差が15°以上である結晶粒界を検出させた。その結果、本発明例の冷延焼鈍鋼板はいずれも、再結晶したフェライト結晶粒で構成されるマトリックス中に炭化物粒子が分散している金属組織を呈していることが確認された。
〔円相当径が200μm以上である{111}コロニーの平均円相当径〕
板厚方向(ND)に垂直な板厚1/4位置の断面について、EBSDにより板厚方向のフェライト結晶方位を測定した。測定面は圧延面をSiCペーパー(JIS R6010:2000に規定される粒度P180、P320、P500およびP1000)で板面から約0.17mm研磨した後バフ研磨仕上げにより平滑に調製した表面とした。無作為に1.5mm×1.5mmの測定視野を5視野選択し、それぞれの視野についてステップサイズ(測定ピッチ)0.5μmで電子線を照射して、001逆極点図に基づくBCC結晶方位マップを作成した。その結晶方位マップから、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を表示するマッピング画像を作成し、前述 (A)の定義に従い{111}コロニーを定め、円相当径が200μm以上である{111}コロニーの平均円相当径を求めた。
図2に、本発明例であるNo.A1の冷延焼鈍鋼板について、板厚方向(ND)に垂直な断面のEBSD測定による001極点図に基づく上記の結晶方位マップを例示する。この結晶方位マップは、フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域を黒、フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<001>方向から15°以内である領域および<011>方向から15°以内である領域をグレー、それ以外の領域を白で表示したものである。図中のスケールは500μm長さである。図3に、上記図2を二値化することにより得られた、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を黒で表示したマッピング画像を例示する。このマッピング画像について、画像解析ソフトウエア(アメリカ国立衛生研究所[NIH]オープンソース;ImageJ)の輪郭追跡アルゴリズムにより、前述(A)の定義に従い、1つの閉じた輪郭線に囲まれた領域を{111}コロニーとみなす処理を実施した。輪郭追跡アルゴリズムにおいては、ImageJの粒子解析機能を利用し、検出粒子サイズ:0〜無限大、検出真円度:0.00〜1.00の設定にて輪郭を検出後、mask処理を施し輪郭内の粒子を黒色で塗りつぶす処理を実施した。図4に、上記図3から定めた{111}コロニーを黒で塗りつぶしたマッピング画像を例示する。このようなマッピング画像を各冷延焼鈍鋼板につき5枚作成し、それら各マッピング画像から上述した「輪郭線に視野境界線を含まない{111}コロニー」を全て抽出して、個々の{111}コロニーの円相当径を画像解析ソフトウエアによって求め、その中から更に円相当径が200μm以上である{111}コロニーを抽出し、それらの円相当径の相加平均値を算出し、その値を、当該冷延焼鈍鋼板の「円相当径が200μm以上である{111}コロニーの平均円相当径」と定めた。表2A、表2Bには、このようにして求めた平均円相当径の値を「≧200μm{111}コロニー平均円相当径」の欄に示してある。図2〜図4に例示した本発明例No.A1の冷延焼鈍鋼板の場合、当該平均円相当径は231μmである。
図5に、比較例であるNo.B20の冷延焼鈍鋼板について、結晶方位マップを例示する。図6に、上記図5を二値化することにより得られた、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を黒で表示したマッピング画像を例示する。図7に、上記図6から上述の画像解析ソフトウエアを用いて定めた{111}コロニーを黒で塗りつぶしたマッピング画像を例示する。これら図5、図6および図7は、それぞれ上で例示した図2、図3および図4と同様の手法で作成したものである。図5〜図7に例示した比較例No.B20の冷延焼鈍鋼板の場合、当該平均円相当径は562μmである。
〔耐リジング性〕
各冷延焼鈍鋼板から長手方向が圧延方向となるようにJIS5号引張試験片を採取した。この試験片に平行部での伸び率が20%となるまで引張ひずみを付与したのち除荷し、リジング測定試料とした。リジング測定試料の平行部に、圧延直角方向(すなわち試験片の長手方向に対して直角方向)の測定ラインを5mm間隔で5本定めた。接触式表面粗さ計(東京精密社製;SURFCOM2900DX)を用いて、JIS B0601:2013に従い、各測定ライン上で基準長さ20mmの表面プロフィールを測定し、カットオフ値λf=8.0mm、λc=0.5mmとして、波長成分0.5〜8.0mmのうねり曲線を定めた。λf=8.0mmとすることで板反りに起因するうねり成分を除去している。5本の測定ラインについて上記うねり曲線から算術平均うねりWa(μm)およびうねり曲線要素の平均長さWSm(μm)を求めた。各測定ラインで求めた5個のWaの加算平均値Wa(AVE)と、同じく各測定ラインで求めた5個のWSmの加算平均値WSm(AVE)との積、Wa(AVE)×WSm(AVE)を当該測定面におけるリジング指標値とした。同様の操作を、同じリジング測定試料の反対側の表面(前記測定面の裏側表面)についても実施し、反対側測定面におけるリジング指標値を求めた。リジング測定試料は各冷延焼鈍鋼板につき3本用意し、それぞれの試料の両面について上記リジング指標値の算出を実施した。このようにして、各冷延焼鈍鋼板につき計6個(試験片3本×両面)のリジング指標値を求めた。そして、上記6個のリジング指標値を加算平均することにより、当該冷延焼鈍鋼板のリジング指標値を定めた。以下、このようにして求めたリジング指標値を本明細書では「Wa×WSm値」と呼んでいる。発明者らの検討によれば、うねりの高さと波長の両方を加味した上記Wa×WSm値が12000以下であれば、多くの加工製品で意匠性の高い平滑な表面外観を得るに足る良好な耐リジング性を呈すると評価することができる。ただし、本発明では、従来安定して製造することが困難であった、Wa×WSm値が8200以下となる優れた耐リジング性を有するフェライト系ステンレス鋼板を提供することを目指している。したがって、ここではWa×WSm値が8200以下のものを合格と判定した。なかでも、Wa×WSm値が6000以下のものは非常に優れた耐リジング性を有すると評価できる。結果を表2A、表2Bに示す。表2A、表2Bには、Wa×WSm値が6000以下のものに◎、6000を超え8200以下のものに○、それ以外に×を付記した。
〔加工性〕
各冷延焼鈍鋼板からJIS13B号引張試験片を採取し、JIS Z2241:2011に従い圧延方向の引張試験を行い、破断後の試験片から破断伸び(%)を測定した。破断伸びが28%以上であるものを○(延性;良好)、それ以外を×(延性;不良)と判定した。結果を表2A、表2Bに示す。
Figure 0006983077
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本発明例のものはいずれも、仕上熱延において、オーステナイト相が安定に存在しない温度域(Ar値よりも低い温度域)でパス間加熱を行いながら圧延を行うことにより、熱間圧延時にオーステナイト相からフェライト相と炭化物への分解反応を十分に促進させたものである。それらの熱延鋼板に由来し、中間焼鈍を含む冷延工程にて製造された本発明例の冷延焼鈍鋼板は、「円相当径が200μm以上である{111}コロニーの平均円相当径」(以下、単に「{111}コロニー径」と言う。)が300μm以下である結晶配向を有し、フェライト結晶方位のランダム化が進んでいる。その結果、優れた耐リジング性が得られた。これらはいずれも、延性についても良好であり、厳しい評価基準での耐リジング性と、加工性の両立が実現されている。また、熱延板焼鈍を施した例では、{111}コロニー径自体には他の本発明例との顕著な違いは見られないが、耐リジング性は一層向上している。これは、熱延板焼鈍によって組織の均質化が進行したためではないかと推察される。
比較例B1〜B7は本発明で規定する化学組成を満たす鋼について、中間焼鈍を含まない冷延工程Bを採用したものである。これらはいずれも{111}コロニー径が大きくなり、耐リジング性に劣った。B8はBを含有せず、B21はB含有量が低いものである。これらはいずれも鋳片加熱時にオーステナイト相の微細分散化が不十分となり、冷延焼鈍鋼板において{111}コロニー径が大きくなった。その結果、耐リジング性に劣った。B9、B10、B11、B22はAl、Tiを含有しないか、Al、Tiの含有量が不足し、Ar値が低いものである。また、B23は適量のTiを含有するが、Ar値が低いものである。これらについて再結晶化が可能なパス間加熱温度を採用した仕上熱延を行ったところ、Ar値を大きく超える温度での圧延となり、熱延鋼板には焼鈍で消失しきれない程度のマルテンサイト相が生成した。その結果、硬質化した冷延焼鈍鋼板が得られ、加工性が悪かった。B12、B13、B14、B16はγmax値が低いので、粗圧延でフェライト結晶コロニーの分断化が不十分となり、耐リジング性に劣った。B15はγmax値が高いのでマルテンサイト相が残存し、良好な加工性との両立が達成されなかった。B17は仕上熱延でパス間加熱を行わなかったので、熱延鋼板はフェライト相が再結晶されていない圧延方向に伸展したバンド状組織を呈した。その結果、{111}コロニー径の大きい冷延焼鈍鋼板が得られ、耐リジング性に劣った。また、Ar値が低く、γmax値が高いのでマルテンサイト相が残存し、加工性にも劣った。B18、B19、B20は仕上熱延をタンデムミルで行ったので、フェライト相の再結晶化を熱間圧延中に十分に進行させることができず、粗大なバンド状組織を呈する熱延鋼板が得られた。その結果、冷延焼鈍鋼板において{111}コロニー径が大きくなり、耐リジング性に劣った。B24は本発明で規定する化学組成を満たす鋼について、パス間加熱温度が高いことを除き、本発明で規定する適正条件にて冷延焼鈍鋼板を作製した例である。この場合、仕上熱延中のマルテンサイト相の分解が不十分であり、熱延後マルテンサイト相が残存し、加工性に劣った。B25は本発明で規定する化学組成を満たす鋼について、鋳片加熱温度が高いことを除き、本発明で規定する適正条件にて冷延焼鈍鋼板を作製した例である。この場合、粗圧延中に十分なオーステナイト量を確保することができず、フェライトコロニーの粉砕が不十分で{111}コロニー径が大きくなり、耐リジング性に劣った。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有し、下記(A)で定義される{111}コロニーのうち、円相当径が200μm以上である{111}コロニーについての平均円相当径が300μm以下である結晶配向を有し、JIS13B号引張試験片による圧延方向の破断伸び(JIS Z2241:2011)が28.0%以上であるフェライト系ステンレス鋼板。
    γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
    Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
    ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
    (A)板厚方向(ND)に垂直な板厚1/4位置の断面についてEBSD(電子線後方散乱回折法)により測定された、「フェライト結晶の板厚方向結晶方位が<111>方向から15°以内である領域」を表示するマッピング画像において、その領域の輪郭をたどることによって形成される、当該領域を囲む1つの閉じた輪郭線の内部領域を、1つの「{111}コロニー」と定義する。
  2. 下記(B)で定義されるリジング指標Wa×WSm値が8200以下である請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
    (B)長手方向が圧延方向となるように採取されたJIS5号引張試験片を用いて、平行部での伸び率が20%となるまで引張ひずみを付与したのち除荷し、除荷後の試験片平行部に圧延直角方向の測定ラインを5mm間隔で5本定め、JIS B0601:2013に従い、各測定ライン上で基準長さ20mmの表面プロフィールを測定し、カットオフ値λf=8.0mm、λc=0.5mmとして波長成分0.5〜8.0mmのうねり曲線を定め、5本の測定ライン毎に上記うねり曲線から算術平均うねりWa(μm)およびうねり曲線要素の平均長さWSm(μm)を求め、各測定ラインでのWaの加算平均値Wa(AVE)とWSmの加算平均値WSm(AVE)との積、Wa(AVE)×WSm(AVE)を算出する。この試験を3本の試験片について行い、計6個(試験片3本×両面)のWa(AVE)×WSm(AVE)値の加算平均値を、当該鋼板のリジング指標である「Wa×WSm値」とする。
  3. 板厚が0.3mm以上2.0mm未満である請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  4. 質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有する鋼の鋳片を1050〜1150℃で加熱する工程(鋳片加熱工程工程)、
    前記加熱後の鋳片に粗圧延を施す工程(粗圧延工程)、
    粗圧延を終えた板材に、各パス間で850℃以上Ar値で表される温度(℃)以下での加熱保持を行う方法で、複数パスによる合計圧下率80%以上の熱間圧延を施す工程(仕上熱延工程)、
    冷間圧延と、それに続く焼鈍を1回以上行う工程(冷延−中間焼鈍工程)、
    圧延率50%以上の最終的な冷間圧延と、それに続く最終的な焼鈍を行う工程(仕上冷延−仕上焼鈍工程)、
    を上記の順に有し、最初の冷間圧延開始直前の板厚から、最終的な冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を75%以上とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
    γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
    Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
    ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
  5. 質量%で、C:0.020〜0.120%、Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜1.00%、Ni:0.01〜0.60%、Cr:11.00〜19.00%、N:0.010〜0.050%、B:0.0020〜0.0100%、Al:0〜0.200%、Ti:0〜0.180%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Nb:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、V:0〜0.20%であり、このうちAl:0.050〜0.200%、Ti:0.050〜0.180%の群から選ばれる1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式により定まるγmax値が20.0〜44.0であり、かつ下記(2)式により定まるAr値が870以上である化学組成を有する鋼の鋳片を1050〜1150℃で加熱する工程(鋳片加熱工程)、
    前記加熱後の鋳片に粗圧延を施す工程(粗圧延工程)、
    粗圧延を終えた板材に、各パス間で850℃以上Ar値+20で表される温度(℃)以下での加熱保持を行う方法で、複数パスによる合計圧下率80%以上の熱間圧延を施す工程(仕上熱延工程)、
    前記熱間圧延によって得られた鋼板に、800℃以上Ar値で表される温度(℃)以下の焼鈍を施す工程(熱延板焼鈍工程)、
    冷間圧延と、それに続く焼鈍を1回以上行う工程(冷延−中間焼鈍工程)、
    圧延率50%以上の最終的な冷間圧延と、それに続く最終的な焼鈍を行う工程(仕上冷延−仕上焼鈍工程)、
    を上記の順に有し、最初の冷間圧延開始直前の板厚から、最終的な冷間圧延終了時の板厚までの合計圧下率を75%以上とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
    γmax=420C−11.5Si+7Mn+23Ni−11.5Cr−12Mo+9Cu−49Ti−52Al+470N+189 …(1)
    Ar=−250C+73Si−66Mn−115Ni+35Cr+60Mo−18Cu+620Ti+750Al−280N+310 …(2)
    ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表される当該元素の含有量が代入され、含有しない元素については0(ゼロ)が代入される。
  6. 冷延−中間焼鈍工程、仕上冷延−仕上焼鈍工程での各焼鈍を、いずれも加熱温度850〜1000℃で行う、請求項4または5に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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