以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置を例示する斜視図である。
図1に表したトイレ装置10は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「大便器」と称する)800と、便座装置100と、を備える。大便器800は、汚物を受ける凹状のボウル部801を有する。便座装置100は、大便器800の上部に設置されている。
便座装置100は、ケーシング400(本体部)と、使用者が着座する着座部200(便座)と、便蓋300と、を有する。着座部200と便蓋300とは、それぞれ、ケーシング400に対して開閉自在に軸支されている。図1の状態は、着座部200が閉じた状態(下げられた状態)であり、便蓋300が開いた状態(上げられた状態)である。便蓋300は、閉じた状態では、着座部200の座面を上方から覆う。
ケーシング400の内部には、着座部200に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が着座部200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が着座部200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの手動操作部500を操作すると、洗浄ノズル(以下説明の便宜上、単に「ノズル」と称する)473を大便器800のボウル部801内に進出させることができる。なお、図1に表した便座装置100では、ノズル473がボウル部801内に進出した状態を表している。
ノズル473の先端部には、ひとつ又は複数の吐水口474が設けられている。そして、ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、着座部200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。
なお、本願明細書において、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左側方」及び「右側方」のそれぞれは、開いた便蓋300に背を向けて着座部200に座った使用者から見た方向である。
図2は、実施形態に係るトイレ装置の一部を例示する断面図である。
図2に示すように、ボウル部801の上部は、リム部805となっている。リム部805は、大便器800の上縁部を形成する環状部分である。ボウル部801内には、溜水801wが溜められている。
また、大便器800は、ボウル部801の上に位置するリム上面806を有する。リム上面806は、リム部805の上面であり、例えば、閉じられた着座部200の裏面204と向き合う。
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係るトイレ装置の一部を例示する模式図である。
図3(a)は、大便器800を例示する斜視図であり、図3(b)は、大便器800を例示する平面図である。大便器800は、リム部805に設けられた吐水口811を有する。吐水口811は、汚物(例えば使用者の排泄物等)をボウル部801内から排出するための洗浄水を、ボウル部801内に吐水する。
例えば、使用者が、リモコン等に設けられたスイッチによって便器洗浄の操作を行うと、または、使用者が着座部200から立ち上がると、吐水口811からボウル部801内に洗浄水を供給する便器洗浄が実行される。これにより、ボウル部801内の汚物が排出され、ボウル部801の表面が洗浄される。
図3(a)に示す矢印A5のように、吐水口811は、後方に向けて洗浄水を吐出する。吐水口811から吐出された洗浄水は、リム部805に沿って設けられた棚状部805Bの上を流れ、図3(b)に示すように、ボウル部801内を旋回する旋回流SFを形成する。
ボウル部801は、洗浄水が通る洗浄領域801Aと、洗浄領域801Aよりも上かつリム上面806よりも下に位置する非洗浄領域801Bと、を有する。洗浄領域801Aは、ボウル部801の内面のうち、洗浄水が通過して濡れる領域である。非洗浄領域801Bは、ボウル部801の内面のうち、洗浄水が通過しない領域である。図3(b)のように、上方から見たときに、非洗浄領域801Bは、リム部805に沿って概ね環状であり、その内側に洗浄領域801Aが位置する。
例えば、図2に示すように、洗浄領域801Aは、棚状部805Bから下の領域であり、非洗浄領域801Bは、棚状部805Bの上に位置するリム部805の立面(リム部内壁面)を含む。
なお、実施形態において、洗浄水は旋回流SFを形成する形態でなくてもよい。例えば、吐水口811は、リム部805から下方に向けて洗浄水を吐水してもよい。このような場合でも、ボウル部801は、洗浄水が通る洗浄領域と、リム上面と洗浄領域との間に位置し洗浄水が通らない非洗浄領域と、を有する。
図4は、実施形態に係る便座装置の要部構成を例示するブロック図である。
なお、図4は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
便座装置100は、電磁弁431、除菌装置450、切替弁472、噴霧装置481、ノズルモータ476、ノズル473、ノズル洗浄室478、及び流路110〜113などを有する。これらは、例えばケーシング400内に配置されている。
流路110は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を噴霧装置481やノズル473などに導くための流路である。流路110の上流側には、電磁弁431が設けられている。電磁弁431は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御装置405からの指令に基づいて水の供給を制御する。
流路110上において、電磁弁431の下流には、除菌水を生成する除菌装置450が設けられている。除菌装置450は、例えば次亜塩素酸などを含む除菌水を生成する。除菌装置450としては、例えば、電解槽ユニットが挙げられる。電解槽ユニットは、制御装置405からの通電の制御によって、陽極板(図示せず)と陰極板(図示せず)との間の空間(流路)を流れる水道水を電気分解する。なお、除菌水は、次亜塩素酸を含むものには限定されない。例えば、除菌水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む溶液、電解塩素やオゾンなどを含む溶液、酸性水、または、アルカリ水などでもよい。除菌装置450は電解槽に限らず、除菌水を生成可能な任意の構成でよい。
流路110上において、除菌装置450の下流には、切替弁472が設けられている。切替弁472の下流には、ノズル473、ノズル洗浄室478及び噴霧装置481が設けられている。流路110は、切替弁472により、ノズル473へ水を導く流路111、ノズル洗浄室478へ水を導く流路112、および、噴霧装置481へ水を導く流路113に分岐している。切替弁472は、制御装置405からの指令に基づいて、流路111、流路112および流路113のそれぞれの開閉を制御する。つまり、切替弁472は、ノズル473、ノズル洗浄室478および噴霧装置481への水の供給を制御する。また、切替弁472は、その下流に供給する水の流量を切り替える。
ノズル473は、ノズルモータ476からの駆動力を受け、便器800のボウル部801内に進出したり後退したりする。つまり、ノズルモータ476は、制御装置405からの指令に基づいてノズル473を進退させる。ノズル473は、非使用時には、ケーシング400内に収納されている。ノズル473は、ケーシング400から前方へ進出した状態で、吐水口474から水を吐出して、人体局部を洗浄する。
ノズル洗浄室478は、その内部に設けられた吐水口から除菌水あるいは水道水を噴射することにより、ノズル473の外周表面(胴体)を洗浄する。
噴霧装置481は、水道水又は除菌装置450で生成された除菌水をミスト状にする。噴霧装置481は、ボウル部801、リム部805、及び着座部200などに、ミストM(除菌水のミスト又は水道水のミスト)を噴霧する。言い換えれば、噴霧装置481は、除菌水のミスト又は水道水のミストを、ボウル部801、リム部805、及び着座部200などに着水させる。なお、本願明細書において「着水」とは、水(除菌水又は水道水)が物体の表面に付着することをいう。特に「直接着水」という場合には、水(除菌水又は水道水の微粒子p)が空中から物体の表面に到着することを意味する。
また、ケーシング400の内部には、便座用モータ511(回動装置)、便蓋用モータ512(回動装置)、送風装置513および温風ヒータ514が設けられている。
便座用モータ511は、制御装置405からの指令に基づいて、電動で着座部200を回動させ開閉する。便蓋用モータ512は、制御装置405からの指令に基づいて、電動で便蓋300を回動させ開閉する。
送風装置513は、例えばケーシング400の内部に設けられたファンである。送風装置513は、制御装置405からの指令に基づいて動作する。例えば、送風装置513のモータの回転に伴い羽根が回転する。これにより、送風装置513は、大便器800内(例えばボウル部801内)に向けて送風することができる。また、送風装置513は、着座部200に座った使用者の局部に送風してもよい。温風ヒータ514は、送風装置513によってケーシング400の外部へ送られる空気を温める。これにより、使用者の局部に向けて温風を送り、局部を乾燥させることができる。
便座ヒータ515(乾燥装置)は、例えば、着座部200の内部に設けられている。便座ヒータ515は、例えば、着座部200の中央に形成された開口200a(図1)の周りに沿って設けられた環状の金属部材を有する。制御装置405からの指令に基づいて便座ヒータ515に通電が行われることで、便座ヒータ515は、着座部200を温める。便座ヒータ515としては、例えば、チュービングヒータや、シーズヒータ、ハロゲンヒータ、カーボンヒータなどを用いてもよい。金属部材は、例えば、アルミニウムや銅などで構成される。また、金属部材の形状は、シート状やワイヤ状、メッシュ状など、種々の形状を採用することができる。
制御装置405には、図示しない電源回路から電力を供給される回路が用いられる。例えば、制御装置405は、マイコンなどの集積回路を含む。制御装置405は、使用者を検知する検知センサ402(例えば人体検知センサ403又は着座検知センサ404)の検知情報または、手動操作部500の操作情報に基づいて、電磁弁431、除菌装置450、切替弁472、ノズルモータ476、噴霧装置481、送風装置513、温風ヒータ514、便座ヒータ515、便座用モータ511、及び便蓋用モータ512を制御する。
手動操作部500は、使用者が例えば任意のタイミングで除菌水の噴霧を行うための操作部である。例えば、手動操作部500は、スイッチ又はボタンなどを有するリモコンであり、使用者が手動操作部500を操作すると、除菌水の噴霧を指示する操作情報(信号)が制御装置405に送られる。制御装置405は、その操作情報に基づいて除菌装置450や噴霧装置481を制御する。これにより、使用者は、手動操作部500を操作することで、除菌水の噴霧を行うことができる。
また、手動操作部500は、除菌水の噴霧だけでなく、使用者が便座装置100の各機能を操作するためのスイッチやボタンなどを有していてもよい。各機能に対応した操作が行われると、その操作情報が制御装置405に送られ、制御装置405は、その操作情報に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
着座検知センサ404は、使用者の着座部200への着座状態(着座の有無)を検知することができる。着座検知センサ404は、使用者の着座及び離座を検知する。着座検知センサ404には、マイクロ波センサ、測距センサ(赤外線投光式センサ)、超音波センサ、タクトスイッチ、静電容量スイッチ(タッチセンサ)、または歪みセンサを用いることができる。この例では、着座検知センサ404には、ケーシング400に設けられた測距センサが用いられている。
なお、タクトスイッチ、静電センサ及び歪みセンサなどの接触式センサを用いる場合には、これらの接触式センサは、着座部200に設けられる。着座部200に使用者が座ると、使用者の体重によってタクトスイッチが押下される。または、使用者が静電センサに接触する。または、使用者の体重によって歪みセンサに圧力が加えられる。これらのセンサからの電気信号により、使用者の着座を検知することができる。
人体検知センサ403は、大便器800の前方にいる使用者、すなわち着座部200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ403は、トイレ室に入室して着座部200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサとして、例えば、焦電センサ、マイクロ波センサ、超音波センサ、または測距センサ(赤外線投光式センサ)を用いることができる。この例では、人体検知センサ403には、ケーシングに設けられた焦電センサが用いられている。また、人体検知センサ403は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室する直前の使用者、すなわちトイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知してもよい。例えば、マイクロ波センサを用いた場合には、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。
制御装置405は、人体検知センサ403の検知情報(使用者の存在の有無を示す信号)や、着座検知センサ404の検知情報(使用者の着座の有無を示す信号)を受信し、受信した検知情報に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
制御装置405は、アフターミストモード、プレミストモード、及び手動ミストモードの3種類のミストモードを実行可能である。
アフターミストモードは、例えば、使用者のトイレ装置10の使用後に、検知センサ402の検知情報に基づいて、除菌水のミストを自動で噴霧する動作モードである。プレミストモードは、例えば、使用者のトイレ装置10の使用前に、検知センサ402の検知情報に基づいて、除菌水又は水道水のミストを自動で噴霧する動作モードである。手動ミストモードは、手動操作部500の操作情報に基づいて、除菌水のミストを噴霧する動作モードである。
図5(a)〜図5(e)は、実施形態に係るトイレ装置を例示する平面図及び斜視図である。
図5(a)は、トイレ装置10の一部を前方から見た状態を示す。
図5(b)は、図5(a)の一部を拡大して表す。なお、図5(b)では、見易さのため、噴霧装置481の前方に位置するケーシング400の一部を省略している。
噴霧装置481、ノズルダンパ479、及び送風ダンパ516は、便座装置100が大便器800の上部に設置された状態において、ボウル部801の後方側上部に位置する。
ノズルダンパ479は、ケーシング400に対して回動可能に軸支されている。ノズル473は、ケーシング400の内部に後退している状態では、ノズルダンパ479の後方に位置する。人体局部の洗浄時等において、ノズル473は、ノズルダンパ479に当接し、ノズルダンパ479を回動させて開き、ケーシング400の内部から進出する。
図5(c)〜図5(e)は、ノズルダンパ479及び送風ダンパ516の周辺を拡大して表す斜視図である。
送風ダンパ516は、ケーシング400に対して回動可能に軸支されている。送風ダンパ516の後方には、送風装置513が配置されている。送風ダンパ516は、ケーシング400の開口516aを覆う。送風装置513から送られた空気は、開口516aを通って、大便器800内へ送られる。
図5(c)は、送風装置513が動作を停止した状態であり、図5(d)及び図5(e)は、送風装置513が作動し、ボウル部801内に向けて送風している状態を示す。
図5(c)に示すように、送風が停止した状態においては、送風ダンパ516は、閉じている。
図5(d)に示すように、送風装置513が作動すると、送風ダンパ516は、送風装置513から送られる空気の圧力(風圧)により回動して開く。これにより、送風装置513は、例えば矢印A1のように、ボウル部801内の後方上部からボウル部801内の前方下部へ向けて送風する。
図5(e)の状態においては、図5(d)の状態に比べて、送風装置513が送る風量が多い(又は風速が高い)。この場合には、送風ダンパ516は、図5(d)の状態に比べて、さらに回動して開く。これにより、送風装置513は、例えば矢印A2のように、ボウル部801内の後方上部からボウル部801内の前方上部へ向けて送風する。
このように、送風装置513から送られる風の方向は、送風ダンパ516によって変化する。言い換えれば、送風装置513は、風量(風速)によって送風方向を制御することができる。送風装置513からの送風によって生じる気流に、噴霧装置481から噴霧されたミストを乗せることで、ミストが着水する範囲、及び、各範囲におけるミストの着水量(各範囲に着水する除菌水又は水道水の量)を制御してもよい。
図6(a)〜図6(c)は、実施形態に係る噴霧装置を例示する模式図である。
図6(a)は、噴霧装置481の斜視図であり、図6(b)は、噴霧装置481の側面図である。
噴霧装置481は、モータ481aと、モータ481aの下方に接続されたディスク481bと、を有する。モータ481aの回転は、制御装置405によって制御される。モータ481aが回転すると、回転の駆動力がディスク481bに伝達され、ディスク481bが回転する。
図6(b)に示すように、ディスク481bの上面には、水W(水道水又は除菌装置450で生成された除菌水)が供給される。ディスク481bの回転中に、水Wが供給されることで、噴霧装置481は、水Wをミスト状にして噴霧する。
図6(c)は、ディスク481bの一部を上方から見た拡大図である。回転するディスク481bの上面に滴下された水Wは、遠心力によって、ディスク481b上で膜状に広がり、ディスク481bから放射される。このとき、水Wは、ディスク481bの縁付近から膜状のまま分裂したり、糸状となった後に分裂したりし、その後、微粒子p(ミスト)となる。ディスク481bの回転速度、すなわち、モータ481aの回転速度によって、ミストの粒径(微粒子pの径)を制御することができる。回転速度が高い程、ミストの粒径は小さくなる。例えば、回転速度が1000(rotation per minute:rpm)程度の低速回転、回転速度が10000rpm程度の中速回転、または、回転速度が20000rpm程度の高速回転が適宜用いられ、所望の粒径が得られる。また、給水口481cから噴霧装置481に供給される水Wの流量を調整することにより、ミストの粒径を制御することもできる。
なお、本願明細書において、粒径とは、トイレ装置10に着水する前の空中に存在する微粒子pの粒径であり、例えばザウター平均粒径(総体積/総表面積)である。本願明細書における「粒径」の測定方法については、図34に関して後述する。また、ミストとは、粒径が10マイクロメートル(μm)以上300μm以下の範囲をいう。ミストの粒径が10μm未満であると、ボウル部801、リム部805、着座部200などの対象部位を濡らすために長い時間が必要となってしまう。また、次亜塩素酸を含む除菌水を用いた場合、ミストの粒径が10μm未満であると、ミスト中の次亜塩素酸の濃度が減衰しやすく、除菌性能が低下しやすい。一方、ミストの粒径が300μmより大きいと、ミストが拡散しにくく、広範囲にミストを噴霧することが困難となる。また、以下の説明において、大粒径のミストとは、粒径が100μm以上300μm以下、好ましくは150μm以上300μm以下の範囲のミストであり、中粒径のミストとは、粒径が50μm以上200μm以下、好ましくは60μm以上150μm以下の範囲のミストであり、小粒径のミストとは、粒径が10μm以上100μm以下、好ましくは10μm以上60μm以下の範囲のミストである。
例えば、給水口481cの位置や数、ディスク481bの回転方向(時計回り又は反時計回り)によって、噴霧装置481から大便器800内へ向かって噴霧されるミストの粒径、流量、方向などを調整することも可能である。これにより、噴霧装置481から噴霧されたミストが着水する範囲、及び各範囲におけるミストの着水量を制御してもよい。また、ディスク481bの周囲に、ミストが噴霧される方向を制御するカバーなどを適宜設けてもよい。
図7は、実施形態の変形例に係るトイレ装置の一部を例示する断面図である。
図7は、図5(a)に示すA−A’線における断面を示す。
図7に示すように、ケーシング400には、スリットSが設けられている。この例では、噴霧装置481はケーシング400内に配置されており、スリットSは、噴霧装置481の前方下部に位置する。例えば、スリットSの上端面S1の高さ(上下方向における位置)は、ディスク481bの底面B1の高さと同じであり、上端面S1と底面B1とは同一平面上である。または、上端面S1は、底面B1よりも低くてもよい。
ディスク481bの上面は、水平から傾いており、ディスク481bは、ミストMを水平よりも若干下方へ向けて噴霧する。ディスク481bから噴霧されたミストMは、スリットSを通過し、ボウル部801内へ向けて噴霧される。これにより、トイレ装置10のデザイン性や清掃性を損ねることなく、尿などの汚れYが噴霧装置481に付着することを防止することができる。なお、ディスク481bの形状は、平らな円板状でもよいし、適宜凹凸を設けたり、円錐形状や球体を用いたりしてもよい。これにより、ミストの噴霧方向や、ミストの粒径などを調節することもできる。
噴霧装置481は、便座装置100が大便器800の上部に設置された状態において、着座部200の一部の下方に配置され(図2参照)、大便器800内に向けてミストを噴霧する。
なお、実施形態において、噴霧装置は、図6及び図7に関して説明した装置に限らない。例えば、噴霧装置として、超音波霧化装置を用いてもよい。超音波霧化装置は、液体に超音波を照射することで、液体をミスト状にする。また、例えば、噴霧装置として2流体ノズルを用いてもよい。2流体ノズルは、気体と液体とを共に噴射することで、液体をミスト状にする。ただし、図6及び図7に関して説明した装置を用いた場合には、送風装置513によって噴霧範囲を制御しやすいメリットがある。また、目詰まりのリスクも低く、コンプレッサなどの付帯装置も不要である。
図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る別のトイレ装置を例示する斜視図である。 この例では、噴霧装置481の前方にミストダンパ482が設けられている。ミストダンパ482は、閉じた状態において、噴霧装置481の前方のスリットSを覆う。
ミストダンパ482は、例えばノズルダンパ479に対して固定されており、ノズルダンパ479と連動する。ノズルダンパ479が開くことでミストダンパ482も開き、ノズルダンパ479が閉じることでミストダンパ482も閉じる。
図8(b)及び図8(c)は、ノズルダンパ479及びミストダンパ482の周辺を拡大して表す。図8(b)は、ノズル473がケーシング400の内部に後退した状態である。このとき、ノズルダンパ479は、閉じた状態であり、ノズル473の前方を覆う。また、ミストダンパ482は、閉じた状態であり、スリットSの前方を覆う。
噴霧装置481の不使用時には、図8(b)のように、ミストダンパ482によって噴霧装置481をボウル部801側から隠蔽する。これにより、噴霧装置481に尿や汚れが付着することをより防止することができる。
図8(c)は、ノズル473が前方へ進出し、ノズルダンパ479を回動させた状態である。このときのノズル473の前方への進出距離は、人体局部洗浄時の前方への進出距離よりも短くてよい。例えば、ノズル473の先端がノズルダンパ479に当接している。また、図8(c)において、ミストダンパ482は、ノズルダンパ479と共に回動し、開いている。ミストダンパ482によって、ミストが噴霧される方向や範囲を制御してもよい。
図9は、実施形態に係る便座装置の動作を例示するフローチャートである。
図10(a)及び図10(b)は、実施形態に係る便座装置の動作を例示する模式図である。
図10(b)には、除菌水又は水道水のミストが着水する対象部位(P1〜P4)を示す。図10(a)は、各ミストモードにおける、各対象部位の着水量(単位面積あたりの着水量)の一例を、「大」、「中」、「小」、「極小」の4段階で示す。
制御装置405は、検知センサ402が使用者を検知していない状態から使用者を検知している状態となったときに、自動的に噴霧装置481を制御して、水道水のミスト又は除菌水のミストをボウル部801内に噴霧するプレミストモードを実行可能である。
例えば、図9に示すように、使用者がトイレ室に入室して、人体検知センサ403が使用者の入室を検知すると、使用者の入室を示す信号(検知情報)が制御装置405に送信される。制御装置405は、その信号に基づいて、自動的にプレミストモードを実行する。プレミストモードにおいて、制御装置405は、噴霧装置481に水道水のミストを噴霧させ、対象部位にミストを着水させる。プレミストモードにおける対象部位は、図10(a)及び図10(b)に示すように、対象部位P3(ボウル部801の非洗浄領域801B)及び対象部位P4(ボウル部801の洗浄領域801A)である。プレミストモードにおいては、着座部200及びリム部805のリム上面806は、噴霧の対象部位ではない。
このように、プレミストモードにおいて噴霧装置481から噴霧されたミストは、洗浄領域801Aだけでなく非洗浄領域801Bにも着水し、洗浄領域801A及び非洗浄領域801Bに水膜を形成する。これにより、非洗浄領域801Bを含む大便器800の広範囲において、汚物の付着や固着を抑制することができる。
制御装置405は、検知センサ402が使用者を検知している状態から使用者を検知していない状態となったときに、自動的に噴霧装置481を制御して、除菌水のミストを大便器800内および着座部200に噴霧するアフターミストモードを実行可能である。
例えば、図9に示すように、使用者がトイレ室から退室して、人体検知センサ403が使用者の退室を検知すると、使用者の退室を示す信号(検知情報)が制御装置405に送信される。制御装置405は、その信号に基づいて、自動的にアフターミストモードを実行する。アフターミストモードにおいて、制御装置405は、除菌装置450に除菌水を生成させ、噴霧装置481に除菌水のミストを噴霧させ、対象部位にミストを着水させる。アフターミストモードにおける対象部位は、図10(a)及び図10(b)に示すように、対象部位P1(着座部200の表面203)、対象部位P2(着座部200の裏面204及びリム上面806)、対象部位P3及び対象部位P4である。
このように、アフターミストモードの実行によって、使用者の便座装置100の使用後に、大便器800内及び着座部200に除菌水を自動的に着水させることができる。これにより、大便器800だけでなく着座部200などの広い範囲において自動的に菌や汚れの発生を抑制することができる。
制御装置405は、使用者が手動操作部500を操作したときに、噴霧装置481を制御して、除菌水のミストを大便器800内および着座部200に噴霧する手動ミストモードを実行可能である。
例えば、図9に示すように、使用者がトイレ室に入室中(例えばプレミストモードの実行後)に、手動操作部500を操作すると、操作に応じた信号(操作情報)が制御装置405に送信される。制御装置405は、その信号に基づいて、手動ミストモードを実行する。手動ミストモードは、便座装置100の使用前・使用後・掃除時などのタイミングで実行される。手動ミストモードにおいて、制御装置405は、除菌装置450に除菌水を生成させ、噴霧装置481に除菌水のミストを噴霧させ、対象部位にミストを着水させる。手動ミストモードにおける対象部位は、図10(a)及び図10(b)に示すように、対象部位P1、対象部位P2、対象部位P3及び対象部位P4である。
このように、手動ミストモードにより、手動操作部500が操作されたタイミングで大便器800内及び着座部200に除菌水を着水させることで、大便器800内だけでなく着座部200を含む広い範囲において菌や汚れの発生を抑制することができる。また、使用者は、着座部200に着水した除菌水のミストを拭き取ることで、着座部200に発生した菌や汚れを除去することができる。例えば、アフターミストモードによって抑制することが困難な固着汚れに対して、着水した除菌水をトイレットペーパー等を用いて拭き取ることにより、除菌することができる。また、例えば、便座装置100の使用前に着座部200の汚れが気になる使用者は、手動ミストモードによって着座部200を除菌することができる。使用者自らの操作に基づいて除菌が実行されるため、使用者の安心感や満足感を高めることができる。
図11は、実施形態に係る便座装置のプレミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図11に示すようにボウル部801の非洗浄領域801Bは、前端側非洗浄領域801Fを有する。前端側非洗浄領域801Fは、非洗浄領域801Bの前端部であり、例えばボウル部801の左右方向における中央に位置する。前端側非洗浄領域801Fは、非洗浄領域801Bの最も前方の端を含み、洗浄領域801Aの上端からリム上面806まで上下に延びる領域である。
ボウル部801における汚物の付着などを抑制するためには、非洗浄領域801Bにも水膜が形成されるように多くのミストを着水させることが好ましい。そこで、送風装置513を作動させてボウル部801内に気流を発生させ、その気流によりミストを非洗浄領域801Bまで届ける方法が考えられる。しかし、この場合には、気流に乗ったミストが着座部200やリム上面806にも着水することがある。すると、使用者が着座部200に着座したときや、着座部200を手で回動させたときに、使用者の臀部や手が着座部200に着水したミストに触れ、不快感が生じるおそれがある。また、リム上面806は略水平に形成されているため、リム上面806に着水したミストが大便器800の外へ垂れる恐れがある。
そこで、プレミストモードにおいて制御装置405は、ボウル部801内に上昇気流を発生させる送風装置513を作動させない。また、プレミストモードにおいて制御装置405は、リム上面806に着水したミストが大便器800の外に垂れることなく、前端側非洗浄領域801Fにミストを直接着水させるために、噴霧装置481から噴霧されたミストが直進状態を維持したまま前端側非洗浄領域801Fまで到達するように、噴霧装置481が噴霧するミストの速度を制御する。
これにより、多くのミストを非洗浄領域801Bに着水させつつも、ミストが送風装置513によって発生する上昇気流に乗って浮遊することがないため、リム上面806や着座部200に着水するミストの量を抑えることができる。これにより、リム上面806に着水したミストが大便器800外へ垂れることを抑制できる。また、着座部200がミストによって濡れることを抑制でき、使用者が着座部200に着座したときや、着座部200を手で回動させたときに、使用者の臀部や手が着座部200に着水したミストに触れることを抑制できる。
なお、本願明細書において「着水したミスト」とは、ミストが着水した後に、凝集することなどによって形成される水滴や水膜を含む。
例えば、プレミストモードにおいて制御装置405は、噴霧装置481のディスク481bの回転速度を制御することにより、ミストの速度(微粒子pが飛行する速度)や、ミストの粒径を制御する。例えば、ミストの速度が高いほど、ミストは直進状態を維持しやすい。
図11(及び後述する図14、図17、図20、図24、図25、図27、図28、図30、図31)では、噴霧装置481から噴霧されるミストMの経路を、矢印によって表している。矢印が太いほど、ミストの量が多いことを表す。図11に示したように、ミストが噴霧される範囲は、上下に広がりを有する。
図12は、実施形態に係る噴霧装置が噴霧するミストを例示する模式図である。
噴霧装置481から噴霧されたミストの粒径は、分布を有する。例えば、図12に示すように、噴霧装置481からは、小粒径のミストM1(水道水又は除菌水の微粒子p1)と、中粒径又は大粒径のミストM2(水道水又は除菌水の微粒子p2)と、が噴霧される。ミストM2の微粒子p2は、自重が大きいため、水平又は下方へ進行しやすい。一方、ミストM1の微粒子p1は、自重が小さいため、気流の影響により上方へ進行する場合がある。
このため、図11に示したように、前端側非洗浄領域801Fに着水するミストの量にも分布が生じる。前端側非洗浄領域801Fのうち最も多くのミストが直接着水する部分がボリュームゾーンBZである。実施形態においては、ボリュームゾーンBZに到達するミストが直進状態を維持するように、制御装置405は、噴霧装置481を制御する。
図13は、ミストの直進状態を説明するための模式図である。
噴霧装置481から噴霧されたミストが直進状態を維持しているか否かは、以下のようにして判定される。
噴霧装置481(ディスク481b)から水平方向に距離Lだけ離れた位置に、噴霧対象物OBが配置されている。距離Lは、例えば、噴霧装置481と前端側非洗浄領域801Fとの間の水平方向に沿った距離(300〜400mm程度)である。
噴霧装置481から噴霧対象物OBにミストを噴霧し、噴霧対象物OBにおけるミストの着水ポイントPt1を測定する。着水ポイントPt1とは、噴霧対象物OBのうち最も多くのミストが直接着水するポイントである。例えば、感水試験紙又は透明な板などでミストを受け、水滴の分布を観察することによって、着水ポイントPt1を可視化することができる。
噴霧装置481がミストを噴霧する噴霧方向Ds(噴霧角度θs)を測定する。噴霧方向Dsは、噴霧装置481の近傍において、最も多くのミストが噴霧される方向である。なお、噴霧装置481の近傍とは、噴霧装置481からの距離が例えば50mm以内の範囲である。例えば、噴霧方向Dsは、ミストを噴霧している噴霧装置481の画像を取得し、画像処理により測定することができる。または、ミストにシートレーザーを照射することで、噴霧されたミストを可視化し、噴霧方向Dsを測定してもよい。噴霧角度θsは、水平方向と噴霧方向Dsとの間の角度である。
噴霧装置481から噴霧方向Dsに延びる直線L1と、噴霧対象物OBと、の交点Pt2の高さh1を算出する。高さh1は、噴霧装置481と交点Pt2との間の上下方向に沿った距離であり、L×tanθsにより算出される。また、実際の着水高さh2を測定する。着水高さh2は、噴霧装置481と着水ポイントPt1との間の上下方向に沿った距離である。
着水高さh2が高さh1と同じ場合、噴霧装置481から噴霧されたミストが直進状態を維持したまま噴霧対象物OBに到達したと判定する。なお、着水高さh2が高さh1と同じという範囲は、着水高さh2と高さh1との差が、20mm以内である場合を含むものとする。
図14は、実施形態に係る便座装置のプレミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図14は、図11に示した前端側非洗浄領域801Fの周辺を拡大して示す。
図14に示すように、前端側非洗浄領域801Fは、上部領域821と下部領域822とを有する。また、上部領域821は、アール部823とミストガイド部824とを有する。
アール部823は、前端側非洗浄領域801Fの上端を含み、ボウル部801の内側へ向かう下り傾斜を有する曲面状である。ミストガイド部824は、アール部823の下方に設けられ、ボウル部801の外側へ向かう下り傾斜を有する。または、ミストガイド部824は、鉛直方向に延びていてもよい。ミストガイド部824は、アール部823と連続している。
アール部823は、リム上面806の近傍に位置する。そのため、噴霧装置481がミストを噴霧する噴霧方向Dsが、アール部823に多くのミストが着水するような方向の場合、リム上面806が濡れやすい。この場合、リム上面806に着水したミストが大便器800の外へ垂れる恐れがある。また、アール部823は、ボウル部801の内側へ向かう下り傾斜を有するのため、アール部823に到達したミストは、アール部823において反射されてリム上面806側に飛散しやすい。特に、ミストが直進状態を維持したまま非洗浄領域801Bに到達するようにミストの速度を高くすると、ミストが飛散しやすくなってしまう。
これに対して、実施形態においては、噴霧装置481がミストを噴霧する噴霧方向Dsは、噴霧装置481から噴霧され直進状態を維持したまま前端側非洗浄領域801Fまで到達するミストがアール部823よりも下方に着水するように設定されている。これにより、アール部823の上方に位置するリム上面806に着水するミストの量を少なくすることができる。また、直進状態を維持するためにミストの速度を高くした場合であっても、ミストがリム上面806側に飛散することを抑制することができる。
また、図14に示す例では、ミストガイド部824は、ボウル部801の外側へ向かう下り傾斜を有し、前端側非洗浄領域801Fに到達したミストを下方へ誘導する。例えば、ミストガイド部824に到達したミストは、下方へ向けて反射される。これにより、ミストが直進状態を維持したまま前端側非洗浄領域801Fに到達するようにミストの速度を高くした場合であっても、ミストがリム上面806側に飛散することを抑制することができる。
また、ミストを噴霧する噴霧部(例えばディスク481b)は、着座部200の一部の下方に設けられている。そして、噴霧装置481がミストを噴霧する噴霧方向Dsは、前端側非洗浄領域801Fに向かう斜め下方に設定されている。これにより、前端側非洗浄領域801Fに到達したミストは、下方に飛散しやすくなる。つまり、ミストは、前端側非洗浄領域801Fにおいて下方に向けて反射されやすい。したがって、ミストが直進状態を維持したまま前端側非洗浄領域801Fに到達するようにミストの速度を高くした場合であっても、ミストがリム上面806側に飛散することを抑制することができる。
さらに、噴霧装置481は、噴霧部(例えばディスク481b)と前端側非洗浄領域801Fとを結ぶ仮想的な線分L2(図11参照)が着座部200と交わらないように配置されている。そして、噴霧方向Dsは、直進状態を維持したまま前端側非洗浄領域801Fまで到達するミストが線分L2に沿って噴霧されるように設定されている。これにより、ミストによって着座部200が濡れることを抑制しつつ、非洗浄領域801Bにミストを着水させることができる。
また、プレミストモードにおいて制御装置405は、前端側非洗浄領域801Fの上部領域821に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量が、前端側非洗浄領域801Fの下部領域822に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量よりも少なくなるように噴霧装置481を制御している。
具体的には、例えば、プレミストモードにおいて制御装置405は、下部領域822に直接着水するミストの粒径が、上部領域821に直接着水するミストの粒径よりも大きくなるように噴霧装置481を制御する。下部領域822に直接着水するミストの粒径を大きくすることにより、下部領域822に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量を多くすることができる。また、上部領域821に直接着水するミストの粒径を小さくすることにより、下部領域822に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量を少なくすることができる。
下部領域822に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量を比較的多くすることで、下部領域822における汚物の付着や固着を抑制することができる。一方、上部領域821に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量を比較的少なくすることで、リム上面806や着座部200に着水するミストの量を抑えることができる。例えば、上部領域821に到達したミストがリム上面806や着座部200に飛散することを抑制できる。これにより、リム上面806に着水したミストが大便器外へ垂れることを抑制できる。また、着座部200がミストによって濡れることを抑制でき、使用者が着座部200に着座したときや、着座部200を手で回動させたときに、使用者の臀部や手が着座部200に着水したミストに触れることを抑制できる。
図15(a)〜図15(c)は、非洗浄領域の上部領域及び下部領域に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量の測定方法を説明するための模式図である。
まず、前端側非洗浄領域801Fの上部領域821を含む第1測定箇所SUと、前端側非洗浄領域801Fの下部領域822を含む第2測定箇所SLと、を設定する。第1測定箇所SU及び第2測定箇所SLの左右方向の範囲は、それぞれ、非洗浄領域801Bの先端を中心とした幅100mmの範囲である。また、第1測定箇所SUの上下方向の範囲は、上部領域821の上下方向の範囲と略同じであり、第2測定箇所SLの上下方向の範囲は、下部領域822の上下方向の範囲と略同じである。
ミストを前端側非洗浄領域801Fに噴霧してから規定時間後に、第1測定箇所SU及び第2測定箇所SLのそれぞれを、キムタオル(日本製紙クレシア製)で拭き取る。これにより、第1測定箇所SU及び第2測定箇所SLのそれぞれに着水したミストをキムタオルに吸水させる。
なお、ミストを噴霧する規定時間は、ミストの噴霧流量Q(L/min)に応じて定められる。噴霧流量QがQ<0.03L/minとなる場合、規定時間は10秒とする。噴霧流量Qが0.03L/min≦Q<0.2L/minとなる場合、規定時間は4秒とする。噴霧流量QがQ≧0.2L/minとなる場合、規定時間は2秒とする。
第1測定箇所SUに着水したミストを吸水したキムタオルの重量と、ミストを着水させる前の当該キムタオルの重量との差が、第1測定箇所SUに着水したミストの着水量である。第1測定箇所SUに着水したミストの着水量を、第1測定箇所SUの面積で除算した値を、上部領域821に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量とする。
同様に、第2測定箇所SLに着水したミストを吸水したキムタオルの重量と、ミストを着水させる前の当該キムタオルの重量との差が、第2測定箇所SLに着水したミストの着水量である。第2測定箇所SLに着水したミストの着水量を、第2測定箇所SLの面積で除算した値を、下部領域822に直接着水するミストの単位面積あたりの平均着水量とする。
なお、キムタオルで各測定箇所を拭き取る代わりに、各測定箇所にキムタオルを貼り付けた状態で噴霧を行い、キムタオルにミストを吸水させてもよい。例えば、元々4つ折りに形成されたキムタオルを広げ、折り畳まれていない状態にしたキムタオルを、各測定箇所に沿う形にカットする。カットしたキムタオルを各測定箇所に貼り付ける。
また、上記の例では、アール部823及びミストガイド部824を上部領域821とし、ミストガイド部824の下端よりも下方を下部領域822としている。これに限らず、上部領域821と下部領域822との境界は、前端側非洗浄領域801Fの上下方向における中央としてもよい。すなわち、前端側非洗浄領域801Fの上下方向における中央よりも上側を上部領域821とし、前端側非洗浄領域801Fの上下方向における中央よりも下側を、下部領域822としてもよい。
図16(a)及び図16(b)は、実施形態に係る大便器の前端側非洗浄領域を例示する断面図である。
図16(a)に示すように、上部領域821は、ボウル部801の外側へ向かって下り傾斜した傾斜面(ミストガイド部824)を有する。既に述べた通り、ミストガイド部824(上部領域821の傾斜面)は、ミストを下方に誘導する。
一方、図16(b)に示すように、下部領域822は、ボウル部801の内側へ向かって下り傾斜した傾斜面を有する。これにより、下部領域822は、下部領域822に到達したミストを上方に誘導する。これにより、下部領域822の到達したミストの一部を上部領域821に着水させ、上部領域821における着水量(間接着水量)を多くすることができる。なお、下部領域822の傾斜面の上には、上部領域821の傾斜面が設けられているため、下部領域822の傾斜面によって上方へ誘導されたミストが上部領域821を越えてリム上面806まで飛散することは、抑制されている。
例えば、上部領域821の傾斜角度θ1は、下部領域822の傾斜角度θ2よりも大きい。傾斜角度θ1は、鉛直方向と上部領域821の傾斜面(ミストガイド部824)との間の角度である。傾斜角度θ2は、鉛直方向と下部領域822の傾斜面との間の角度である。
傾斜角度θ1が大きいことにより、上部領域821に到達したミストをより積極的に下方に誘導することができる。また、傾斜角度θ2が小さいことにより、下部領域822によって上方へ誘導されるミストの量を抑えることができる。傾斜角度θ1が傾斜角度θ2よりも大きいことで、下部領域822によって上部領域821へ誘導されたミストは、上部領域821の傾斜面において減速するため、リム上面806まで飛散しない。
図17(a)及び図17(b)は、便座装置のプレミストモード及びオート便蓋開モードにおける動作を例示する断面図である。
制御装置405は、検知センサ402が使用者を検知していない状態から使用者を検知している状態となったときに、自動的に便蓋用モータ512を制御して便蓋300を閉じた状態から開いた状態とするオート便蓋開モードを実行可能である。
例えば、使用者がトイレ室にいない場合、便蓋300は、閉じた状態である。その後、使用者がトイレ室に入室して、人体検知センサ403が使用者の入室を検知すると、制御装置405は、オート便蓋開モードを実行する。また、制御装置405は、オート便蓋開モードの実行中にプレミストモードを実行する。
例えば、オート便蓋開モードが実行され、図17(a)及び図17(b)の矢印A6のように便蓋300が開くと、ボウル部801内及びボウル部801の周辺には、便蓋300の開動作に伴い上昇気流f1が発生する。図17(a)の例では、プレミストモードによって噴霧されたミストMの一部が、上昇気流f1に乗って、ボウル部801よりも上方まで上昇している。この場合、ボウル部801よりも上方まで上昇したミストが着座部200やリム上面806に着水してしまう。
これに対し、図17(b)の例では、制御装置405は、前端側非洗浄領域801Fに向かって飛行するミストが上昇気流f1によってボウル部801よりも上方に上昇しないように、噴霧装置481が噴霧するミストの粒径を制御している。具体的には、制御装置405は、例えば、ミストの粒径が小さくなり過ぎないように、噴霧装置481のディスク481bの回転速度を制限する。
これにより、オート便蓋開モードによって上昇気流f1が発生しても、リム上面806や着座部200にミストが着水することを抑制しつつ、非洗浄領域801Bにミストを到達させることができる。したがって、リム上面806に着水したミストが大便器800の外へ垂れることを抑制できる。また、着座部200がミストによって濡れることを抑制でき、使用者が着座部200に着座したときや、着座部200を手で回動させたときに、使用者の臀部や手が着座部200に着水したミストに触れることを抑制できる。
なお、ミストが上昇気流f1によってボウル部801よりも上方に上昇しない、という範囲は、全てのミストがボウル部801よりも上方に上昇しない場合だけでなく、使用者に不快感を生じさせない程度の僅かなミストがボウル部801よりも上方に上昇する場合を含んでもよいものとする。
図18は、実施形態に係る便座装置のプレミストモードにおける動作を例示するタイミングチャートである。
図19(a)及び図19(b)は、実施形態に係る便座装置のプレミストモードにおける動作を例示する平面図である。
図18に示すように、例えば、時刻T1において、人体検知センサ403などの入室検知手段により、使用者の入室が検知される。すると、制御装置405は、オート便蓋開モード及びプレミストモードの実行を開始する。これにより、閉状態の便蓋300が開き始め、ミストのボウル部801内への噴霧が開始される。便蓋300の開動作は、時刻T1から時刻T4まで続けられ、時刻T4において便蓋300が全開状態となる。
図19(b)は、時刻T1から時刻T2までの間において、噴霧装置481から噴霧されたミストが着水する範囲を例示している。このように、プレミストモード及びオート便蓋開モードの開始直後の時間帯では、制御装置405は、ボウル部801のうちの非洗浄領域801B以外の領域(洗浄領域801A)にミストが着水するように、噴霧装置481を制御する。
図19(a)は、時刻T2から時刻T3までの間において、噴霧装置481から噴霧されたミストが着水する範囲を例示している。時刻T2から時刻T3までの間では、制御装置405は、非洗浄領域801Bにミストが着水するように、噴霧装置481を制御する。
その後、時刻T3から時刻T4までの間においては、制御装置405は、再び洗浄領域801Aにミストが着水するように、噴霧装置481を制御する。
そして、時刻T4の後の時刻T5までに、オート便蓋開モード及びプレミストモードが終了する。例えば、時刻T5に使用者が着座部200に着座する。
オート便蓋開モードによる便蓋300の開動作に伴って発生する上昇気流f1の大きさは、便蓋300が閉じた状態から開いた直後(すなわち便蓋の開き始めの時期)に最も大きくなりやすい。これに対して、実施形態においては、制御装置405は、オート便蓋開モードの実行開始後に、前端側非洗浄領域801Fに向かうミストの噴霧を開始する。すなわち、図18に示したように、オート便蓋開モードが開始する時刻T1の後の時刻T2に、前端側非洗浄領域801Fへのミストの噴霧が開始する。これにより、上昇気流f1によって、ミストがボウル部801よりも上方に上昇することをより抑制することができる。
また、オート便蓋開モードによる便蓋300の開動作に伴って発生する上昇気流f1の大きさは、便蓋300が開く速度が高いと大きくなりやすい。これに対して、図18に示すように、制御装置405は、オート便蓋開モードの実行開始直後の第1時間帯(時刻T1から時刻T2まで)において便蓋300が開く速度が、第1時間帯の後の第2時間帯(時刻T2から時刻T3まで)において便蓋300が開く速度よりも低くなるように、便蓋用モータ512を制御する。これにより、オート便蓋開モードの開始直後において、上昇気流f1を小さくすることができる。したがって、オート便蓋開モードによる上昇気流f1によってミストがボウル部801よりも上方に上昇することをより抑制することができる。
さらに、制御装置405は、オート便蓋開モードの実行開始直後の第3時間帯(時刻T1から時刻T2まで)においてミストが前端側非洗浄領域801F以外の領域に着水し、第3時間帯の後の第4時間帯(時刻T2から時刻T3まで)においてミストが前端側非洗浄領域801Fに着水するように噴霧装置481を制御する。これにより、オート便蓋開モードによる上昇気流f1によって、ミストがボウル部801よりも上方に上昇することをより抑制することができる。
図20(a)及び図20(b)は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモード又は手動ミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図20(b)は、図20(a)に示す領域R4の拡大図である。
破線の矢印は、送風装置513によって形成される気流を表す(後述する図24、図27、図28、図30においても同様)。図20(a)に示すように、アフターミストモード又は手動ミストモードにおいて、送風装置513は、前方かつ下方へ向けて送風する。送風装置513から送られた空気の少なくとも一部は、大便器800内(洗浄領域801A又は非洗浄領域801B)に当たり、上方へ向かう。これにより、着座部200よりも下方の大便器800内から、着座部200の上方に巻き上がる上昇気流U1が形成される。
例えば、アフターミストモード又は手動ミストモードにおいて、一部のミストは、噴霧装置481から非洗浄領域801Bへ向けて放射される。また、粒径が比較的大きいミストは、洗浄領域801Aに着水する。粒径が比較的小さいミストは、上昇気流U1によってリム上面806、着座部200及び便蓋300などに着水する。これにより、非洗浄領域801B、リム上面806、着座部200及び便蓋300などを含むトイレ装置10の隅々までを除菌することができる。
一般に、水道水には、スケール成分(例えばナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム等)が含まれることがある。この場合、水道水から生成された除菌水のミストにもスケール成分が含まれる。スケール成分を含むミストが便座装置100等に着水した後に蒸発すると、ミストが着水していた部分にスケールが析出し、短期間で目視可能な水垢汚れが発生してしまうことがある。
そこで、便座装置100の一実施形態において、アフターミストモードは、大便器800及び着座部200にミストを噴霧するモード(第2モード)だけでなく、大便器800内のみにミストを噴霧する第1モードを有する。1回のアフターミストモードにおいて制御装置405は、第1モード及び第2モードのいずれか一方を実行する。
例えば、第1モードにおいて制御装置405は、大便器800内(洗浄領域801A及び非洗浄領域801B)のみにミストが着水するように、送風装置513を停止させたり、ミストの粒径を制御したりする。第1モードにおいては、大便器800内に除菌水のミストを噴霧することにより、大便器800内において菌や汚れが発生することを抑制することができる。また、大便器800内に着水したミストに含まれるスケール成分は、大便器800内に流される洗浄水によって洗い流される。そのため、大便器800内のみにミストを噴霧する第1モードによって、大便器800内の菌や汚れの発生を抑制するとともに、スケール成分に起因した目視可能な水垢汚れがリム上面806、着座部200、便蓋300などに発生することを抑制することができる。
一方、第2モードにおいて制御装置405は、例えば図20の例のように、着座部200等にミストが着水するように、送風装置513を作動させたり、ミストの粒径を制御したりする。第2モードにおいては、大便器800内及び着座部200に除菌水のミストを噴霧することにより、大便器800内だけでなく着座部200においても菌や汚れが発生することを抑制することができる。
そして、アフターミストモードにおいて、制御装置405が第1モード及び第2モードのいずれかを実行することにより、第2モードを毎回実行する場合に比べて、着座部200にミストが付着する頻度を低くすることができる。これにより、付着したミストが蒸発することで析出するスケールが、目視可能な水垢汚れに成長するまでの期間を長くすることができる。したがって、着座部200、便蓋300、リム上面806などの洗浄水が流れない領域において短期間で目視可能な水垢汚れが発生することを抑制することができる。
なお、アフターミストモードにおいて第1、2モードのいずれが実行されても、汚れが発生しやすい大便器800内には除菌水のミストが噴霧されるため、アフターミストモードを実行することで使用者による掃除の頻度を確実に低減することができる。また、着座部200は、大便器800内に比べて汚れが発生しにくい部位であるため、除菌水のミストを毎回、着座部200に噴霧しなくても目視可能な汚れは発生しにくい。
また、第1モードにおいて大便器800内のみにミストが着水するという範囲には、全てのミストが大便器800内に着水する場合だけでなく、目視可能な水垢汚れに寄与しない程度の僅かなミストが着座部200等に着水する場合を含んでもよいものとする。
図21は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモードにおける動作を例示するフローチャートである。
使用者がトイレ室内にいる間は、アフターミストモードは実行されない(ステップS101:No)。使用者がトイレ室から退室して、検知センサ402が使用者を検知している状態から使用者を検知していない状態となると(ステップS101:Yes)、制御装置405は、着座部200及び便蓋300を閉じ、アフターミストモードを開始する。
このとき、制御装置405は、アフターミストモードの第1モード及び第2モードのいずれを実行するかを自動で判断する(ステップS102)。これにより、使用者が第1モード及び第2モードのいずれかを毎回選択しなくてよいため、使用者の負担を小さくすることができる。
例えば、ステップS102において、制御装置405は、第2モードの実行頻度が、第1モードの実行頻度よりも低くなるように判断する。第2モードの実行頻度が低いことにより、スケール成分を含むミストが着座部200に付着する量を少なくすることができる。したがって、スケールが析出して目視可能な水垢汚れに成長するまでの期間を長くすることができる。
より具体的には、制御装置405は、例えば、前回の第2モードの実行から所定時間経過した場合、または、前回の第2モードの実行後に第1モードを所定回数実行した場合(ステップS102:Yes)、第2モードを再び実行し(ステップS103)、アフターミストモードが終了する。これにより、第2モードが定期的に実行されるため、目視可能な水垢汚れが短期間で発生することを抑制しつつ、汚物による菌や汚れの発生を抑制することができる。
一方、制御装置405は、前回の第2モードの実行から所定時間が経過していない場合、または、前回の第2モードの実行後に第1モードを所定回数実行していない場合(ステップS102:No)、第1モードを実行し(ステップS104)、アフターミストモードが終了する。なお、ステップS102における所定時間や所定回数は、水道水に含まれるスケール成分の濃度やミストの噴霧量を考慮して、水垢汚れが短期間で発生しないように適宜定めればよい。
図22は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモードにおける別の動作を例示するフローチャートである。
アフターミストモードにおいて制御装置405は、使用者の手動操作による選択に基づいて、第1モード及び第2モードのいずれを実行するかを判断してもよい。例えば、手動操作部500には、第1モード及び第2モードのいずれを実行するかを使用者が選択するためのスイッチ又はボタンなどが設けられる。
使用者は、手動操作部500において第1モード及び第2モードのいずれかを選択する入力操作を行う。そして、制御装置405は、使用者がどちらのモードを選択したかを示す情報を受信する(ステップS201)。
使用者が手動操作部500において第1モードを選択した場合に、検知センサが使用者の退室を検知すると(ステップS202:Yes)、制御装置405は、第1モードを実行し(ステップS203)、アフターミストモードが終了する。なお、使用者の退室が検知されない場合は、アフターミストモードは実行されない(ステップS202:No)。
使用者が手動操作部500において第2モードを選択した場合に、検知センサが使用者の退室を検知すると(ステップS204:Yes)、制御装置405は、第2モードを実行し(ステップS205)、アフターミストモードが終了する。なお、使用者の退室が検知されない場合は、アフターミストモードは実行されない(ステップS204:No)。
このように、アフターミストモードにおいて制御装置405は、手動操作部500における使用者の選択に基づいて、第1モード及び第2モードのいずれか一方を実行する。つまり、使用者は、手動操作部500を操作することで、第1モード及び第2モードのいずれを実行するかを予め設定しておくことができる。
例えば、設定が変更されなければ、制御装置405は、アフターミストモードにおいて第1モード又は第2モードの一方を毎回実行することとなる。水道水に含まれるスケール成分の濃度は、地域によって異なる。スケール成分の濃度が低い地域では、着座部200にミストを噴霧する第2モードを毎回実行しても、スケール成分に起因した目視可能な水垢汚れが発生するまで期間は長い。このような地域では、アフターミストモードにおいて第2モードを実行することにより、汚物による菌や汚れの発生を抑制し、掃除の頻度を減らすことができる。一方、スケール成分の濃度が高い地域では、着座部200にもミストを噴霧する第2モードを実行すると、スケール成分に起因した目視可能な水垢汚れが短期間で発生しやすい。このような地域では、着座部200にミストを噴霧する第2モードを実行しない方が、掃除の頻度を減らすことができる。使用者が手動操作部500によって第1モード及び第2モードのいずれを実行するかを選択することにより、水道水に含まれるスケール成分の濃度が高い地域及び低い地域の両方において、掃除の頻度を低くすることができる。
また、手動操作部500には、第1モードの実行頻度及び第2モードの実行頻度の少なくともいずれかを使用者が選択するためのスイッチ又はボタンなどが設けられてもよい。例えば、前回の第2モードの実行から所定時間経過した場合に第2モードを実行する場合、使用者は、手動操作部500において、その所定時間を選択することができる。また、例えば、前回の第2モードの実行後に第1モードを所定回数実行した場合に第2モードを実行する場合、使用者は、手動操作部500において、その所定回数を選択することができる。制御装置405は、手動操作部500における使用者の選択(設定された頻度)に基づいて、第1モード及び第2モードの少なくともいずれかを実行する。これにより、便座装置100が使用される地域の水道水に含まれるスケール成分の濃度等に応じて、掃除の頻度が低くなるように、第1モードの実行頻度または第2モードの実行頻度を選択することができる。
図23は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモードにおける別の動作を例示するフローチャートである。
図23に示す例では、アフターミストモードは、除菌水のミストを大便器800内のみに噴霧するように制御される。言い換えれば、前述の第1モードが毎回実行される。また、図23は、手動ミストモードにおける動作も例示している。この例において、手動ミストモードは、図9及び図20に関して説明した例と同様に、除菌水のミストを大便器800内及び着座部200に噴霧する。
使用者がトイレ室から退室して、検知センサ402が使用者を検知している状態から使用者を検知していない状態となると(ステップS301:Yes)、制御装置405は、アフターミストモードを開始する。大便器800内のみに除菌水のミストが噴霧され(ステップS302)、アフターミストモードが終了する。アフターミストモードにおいて、着座部200等には除菌水を噴霧しないことにより、スケール成分に起因した目視可能な水垢汚れが短期間で発生することを抑制することができる。
使用者がトイレ室から退室しない場合(ステップS301:No)、使用者が手動操作部500を操作すると(ステップS303:Yes)、制御装置405は、手動ミストモードを開始する。大便器800及び着座部200に除菌水のミストが噴霧され(ステップS304)、手動ミストモードが終了する。なお、使用者が手動操作部500を操作しない場合(ステップS303:No)、手動ミストモードは実行されない。
手動ミストモードは、使用者がミスト後ペーパー等で拭き取るモードであるため、手動ミストモードの実行頻度は、アフターミストモードの実行頻度に比べて低い傾向がある。そのため、図23に示す例のように、アフターミストモードにおいては大便器800内のみにミストを噴霧し、手動ミストモードにおいては大便器800内及び着座部200にミストを噴霧することで、着座部200にミストが付着する頻度を低くすることができる。これにより、付着したミストが蒸発することで析出するスケール成分が、目視可能な水垢汚れに成長するまでの期間を長くすることができる。したがって、着座部200などの洗浄水が流れない領域において短期間で目視可能な水垢汚れが発生することを抑制することができる。
図24(a)及び図24(b)は、実施形態に係る便座装置のプレミストモード及びアフターミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図24(a)に示すように、プレミストモードは、水道水又は除菌水のミストを洗浄領域801A及び非洗浄領域801Bに噴霧し、水道水又は除菌水を洗浄領域801A及び非洗浄領域801Bに滞留させて水滴WD1又は水膜WF1を形成する。例えば、制御装置405は、ミストの粒径を小さくしたり、プレミストモードにおけるミストの着水量を制御したりすることにより、着水したミストを滞留させる。
その後、使用者がトイレ室から退室すると、アフターミストモードが実行される。図24(b)に示すように、アフターミストモードは、プレミストモードにおいて非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1に除菌水のミストを着水させる。これにより、アフターミストモードは、水滴WD1又は水膜WF1の体積を増やすことで水滴WD1又は水膜WF1を洗い流す。すなわち、体積が増え自重が大きくなることにより、非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1は、洗浄領域801Aに流下する。
プレミストモードにおいて噴霧されたミストは、洗浄領域801A及び非洗浄領域801Bに滞留し、例えばアフターミストモードが実行されるまで水滴WD1又は水膜WF1が流されない。これにより、ただボウル部801内が濡れている場合に比べて、汚物の付着や固着をより抑制することができる。また、アフターミストモードにおいては、噴霧装置481から噴霧された除菌水のミストが非洗浄領域801Bに着水する。これにより、洗浄水によって洗い流されない汚物による菌や汚れの発生を抑制することができる。
また、プレミストモードによって形成された水滴WD1又は水膜WF1が非洗浄領域801Bに付着したまま残存した場合、水滴WD1又は水膜WF1が蒸発することでスケールが析出し、非洗浄領域801Bに水垢汚れが発生することがある。これに対して、アフターミストモードによって非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1を洗い流すことで、水滴WD1又は水膜WF1が非洗浄領域801Bに残存することを抑制することができる。これにより、水垢汚れの発生を抑制することができる。したがって、非洗浄領域801Bを含む大便器800の広い範囲において菌や汚れが発生することを抑制しつつ、非洗浄領域801Bにおいて短期間で目視可能な水垢汚れが発生することを抑制できる。
図25(a)及び図25(b)は、実施形態に係る便座装置のプレミストモードにおける別の動作を例示する断面図である。
この例では、プレミストモードは、図25(a)に示す第1工程と、図25(b)に示す第2工程と、を有する。
図25(a)に示すように、第1工程は、非洗浄領域801Bにミストを着水させ、非洗浄領域801Bに水滴WD1又は水膜WF1を形成する。なお、第1工程は、洗浄領域801Aにもミストを着水させ、水滴又は水膜を形成してもよい。
図25(b)に示すように、第2工程は、第1工程において非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1にミストを着水させる。これにより、第2工程は、水滴WD1又は水膜WF1の体積を増やすことで水滴WD1又は水膜WF1を洗い流す。すなわち、体積が増え自重が大きくなることにより、非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1は、洗浄領域801Aに流下する。プレミストモードにおいて、第1工程と第2工程とは時間的に連続したものであっても良い。
例えば、誤入室などにより検知センサ402が使用者を検知してプレミストモードの第1工程が実行された場合に、第2工程を実行して、非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1を流下させる。
第1工程によって非洗浄領域801Bに形成された水滴WD1又は水膜WF1を第2工程によって洗い流すことで、水滴WD1又は水膜WF1が非洗浄領域801Bに残存することを抑制することができる。これにより、水垢汚れの発生を抑制することができる。したがって、非洗浄領域801Bを含む大便器800の広い範囲において菌や汚れが発生することを抑制しつつ、非洗浄領域801Bにおいて短期間で目視可能な水垢汚れが発生することを抑制できる。
また、プレミストモードにおいて、着水したミストがすぐに流れ落ちるようにミストを噴霧すると、ミストの粒径や流量が大きいため、ミストがボウル部801内で跳ねて、大便器800の外へ飛び散ってしまう恐れがある。これに対して、この例では、第1工程によって水滴WD1又は水膜WF1を形成した後に、第2工程によって水滴WD1又は水膜WF1の体積を増やすことで水滴WD1又は水膜WF1を流下させている。これにより、ミストが大便器の外へ飛び散ることを抑制することができる。
図26(a)及び図26(b)は、実施形態に係る大便器及び便座を例示する平面図である。
図26(a)は、着座部200の裏面204側を表している。着座部200の裏面204には、便座脚部210が設けられている。便座脚部210は、裏面204から突出するように設けられており、着座部200が閉じた状態において、大便器800のリム上面806に接触する。この例では、合計4つの便座脚部210が設けられているが、便座脚部210の数や形状は任意である。
図26(b)に示すように、大便器800のリム上面806は、着座部200が閉じた状態において、便座脚部210が接触する領域810を有する。
除菌水のミストをリム上面806及び着座部200に噴霧するミストモード(例えばアフターミストモード又は手動ミストモード)において、便蓋300が開いた状態であると、大便器800及び便座装置100の外部へミストが飛散してしまう恐れがある。そのため、ミストの飛散を抑えるためには、便蓋300及び着座部200が閉じた状態であることが望ましい。一方、除菌水のミストをリム上面806及び着座部200に噴霧するミストモードにおいて、便蓋300及び着座部200が閉じた状態であると、リム上面806の領域810と便座脚部210とが互いに接触しているため、領域810及び便座脚部210にミストを着水させることができない。また、便蓋300及び着座部200が閉じた状態では、リム上面806と着座部200とが近接しているため、着座部200の裏面204の外周部204eや、リム上面806の外周部806eにもミストが届きにくい。
そこで、便座装置100の一実施形態において、アフターミストモード又は手動ミストモードは、以下に説明する第1工程及び第2工程を有する。
図27(a)及び図27(b)は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモード又は手動ミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図27(a)が第1工程を表し、図27(b)が第2工程を表す。図27(a)に示すように、第1工程においては、制御装置405は、便座用モータ511や便蓋用モータ512を制御して、着座部200及び便蓋300を閉じた状態(全閉状態)とする。便蓋300が閉じた状態において、第1工程は、除菌水のミストをリム上面806及び着座部200に噴霧する。第1工程においては、便蓋300が閉じた状態であるため、大便器800及び便座装置100の外部にミストが飛散することを抑制しつつ、多くのミストをリム上面806や着座部200に噴霧することができる。
図27(b)に示すように、第2工程においては、制御装置405は、便座用モータ511や便蓋用モータ512を制御して、着座部200及び便蓋300を開いた状態とする。着座部200及び便蓋300開いた状態において、第2工程は、除菌水のミストをリム上面806及び着座部200に噴霧する。これにより、第2工程は、リム上面806の便座脚部210が接触する領域810に除菌水のミストを噴霧する。第2工程においては、着座部200が開いた状態であるため、便座脚部210や、リム上面806の領域810にもミストを着水させることができる。また、リム上面806の外周部806e及び着座部200の外周部204eにもミストが着水しやすい。
制御装置405は、1回のアフターミストモード及び手動ミストモードにおいて、例えば第1工程を実行した後に、第2工程を実行する。または、第2工程の後に第1工程が実行されてもよい。以上説明した第1工程と第2工程とによって、大便器800及び便座装置100の外部にミストが飛散することを抑制しつつ、リム上面806の便座脚部210が接触する領域810を含む広い範囲に多くのミストを着水させ、菌や汚れの発生を抑制することができる。
なお、アフターミストモード又は手動ミストモードの第2工程において、着座部200及び便蓋300が開いた状態という範囲は、全開状態だけでなく、半開状態も含むものとする。全開状態は、通常の使用において開度が最大の状態である。半開状態は、全開状態よりも開度が小さい状態である。つまり、半開状態とは、全開状態と全閉状態との間の状態であり、開度が全開状態の半分であることに限らない。
第2工程において、着座部200が全開状態であると、便座脚部210がリム上面806から遠いため、便座脚部210にミストを着水させることが困難となる。これに対して、図27(b)に示す例では、制御装置405は、第2工程において、着座部200が半開状態となるように便座用モータ511を制御している。このため、着座部200が全開状態である場合に比べて、便座脚部210とリム上面806との間の距離を短くすることができる。これにより、第1工程において除菌水のミストが届きにくい便座脚部210にも、第2工程において除菌水のミストを着水させることができる。
また、例えば、制御装置405は、第1工程においてリム上面806側に噴霧する除菌水のミストの総量(ml)が、第2工程においてリム上面806側に噴霧する除菌水のミストの総量(ml)よりも多くなるように、噴霧装置481を制御する。例えば、第1工程においてリム上面806に着水する除菌水のミストの総量は、第2工程においてリム上面806に着水する除菌水のミストの総量よりも多い。第1工程において多くの除菌水のミストがリム上面806に着水することで、リム上面806における菌や汚れの発生をより抑制することができる。このとき、第1工程においては、便蓋300が閉じた状態であるため、多くのミストを噴霧しても、ミストが大便器800及び便座装置100の外へ飛散してしまう恐れは小さい。一方、着座部200と共に便蓋300が開いている第2工程においては、第1工程と比べて、ミストが大便器800及び便座装置100の外へ飛散しやすい。そこで、第2工程では比較的少量のミストをリム上面806に着水させることで、ミストが大便器800及び便座装置100の外部に飛散することを抑制することができる。
具体的には、例えば制御装置405は、第1工程においてリム上面806側に除菌水のミストを噴霧する時間が、第2工程においてリム上面806側に除菌水のミストを噴霧する時間よりも長くなるように、噴霧装置481を制御する。すなわち、例えば、第1工程が実行される時間は、第2工程が実行される時間よりも長い。これにより、第1工程においてリム上面806側に噴霧されるミストの総量を、第2工程においてリム上面806側に噴霧されるミストの総量よりも多くすることができる。
図28(a)及び図28(b)は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモード又は手動ミストモードの第2工程における動作を例示する断面図である。
アフターミストモード又は手動ミストモードの第2工程において、制御装置405は、リム上面806側に除菌水のミストを噴霧している状態で、便座用モータ511及び便蓋用モータ512を制御して、着座部200及び便蓋300の少なくともいずれかを移動させてもよい。図28(a)は、第2工程において、着座部200を開方向へ移動させている状態を示す。矢印A7のように着座部200を下方から上方へ回動させると、リム上面806の近傍に気流f2(上昇気流)が発生する。除菌水のミストが気流f2に乗ることによって、リム上面806のより広範囲に除菌水のミストを着水させることができる。
また、図28(b)は、第2工程において、着座部200を閉方向へ移動させている状態を示す。矢印A8のように着座部200を上方から下方へ回動させると、リム上面806の近傍に気流f3が発生する。これにより、リム上面806の近傍のミストが拡散し、リム上面806のより広範囲に除菌水のミストを着水させることができる。
図28(a)及び図28(b)に示す例では、制御装置405は、着座部200を移動させているが、同様に便蓋300を移動させてもよい。第2工程において、制御装置405は、着座部200及び便蓋300の一方を停止させて他方を移動させてもよいし、両方を移動させてもよい。
図29は、実施形態に係るトイレ装置を例示する平面図である。
図29では、大便器800を実線で表す。また、大便器800の上面、すなわちリム上面806に載置される便座装置100のケーシング400を破線で表している。
便座装置100のケーシング400(本体部)は、リム上面806の後部に載置される。すなわち、リム上面806は、ケーシング400が載置されない非載置部806fと、ケーシング400が載置される載置部806rと、を有する。載置部806rは、非載置部806fの後方に位置する。載置部806rとは、リム上面806のうち、鉛直方向においてケーシング400と重なる部分をいい、載置部806rはケーシング400と接していなくてもよい。
また、ケーシング400とリム上面806の載置部806rとの間には、パッキン490が設けられている。パッキン490は、ケーシング400の形状に合わせて、載置部806rの前方部に配置されている。これにより、洗浄水やミスト、汚物などがパッキン490よりも後方側に侵入することを防ぐことができる。
パッキン490よりも前方側において、載置部806rとケーシング400との間には隙間SPが生じている。例えば、アフターミストモード又は手動ミストモードにおいて、ボウル部801内だけでなくリム上面806にも除菌水のミストを噴霧する場合、隙間SPに除菌水のミストが入り込むことがある。隙間SPは使用者が目視しにくい部分であるため、隙間SPに入り込み載置部806rに着水したミストが、知らず知らずのうちに大きな水滴WD2又は水膜WF2となって、大便器800外へ垂れる漏水が発生することがある。
そこで、アフターミストモード又は手動ミストモードにおいて、噴霧装置481は、非載置部806fに着水する除菌水の単位面積あたりの平均着水量が、載置部806rに着水する除菌水の単位面積あたりの平均着水量よりも多くなるように、除菌水を噴出する。噴霧装置481は、非載置部806fに除菌水を着水させるとともに、載置部806rには除菌水を着水させないことが望ましい。
載置部806rに比べて多くの除菌水を非載置部806fに着水させることで、非載置部806fにおける菌や汚れの発生を抑制できる。非載置部806fは、載置部806rに比べて空気が滞留しにくいため乾燥しやすい部位であり、且つ、使用者が見易く拭き取りが容易な部位である。そのため、リム上面806の非載置部806fに除菌水が着水しても、知らず知らずのうちに、非載置部806fにおいて除菌水が凝集し大きな水滴又は水膜となって、大便器800の外へ垂れる可能性は低い。また、載置部806rに着水する除菌水が比較的少ないことにより、知らず知らずのうちに、載置部806rにおいて除菌水が凝集し大きな水滴又は水膜となって、大便器800の外へ垂れることを抑制することができる。したがって、大便器800のリム上面806に除菌水のミストを噴霧したときに、大便器800外への漏水を抑制することができる。
なお、単位面積あたりの平均着水量は、以下のようにして測定できる。
まず、アフターミストモード又は手動ミストモードの実行後に、非載置部806fに着水したミストをキムタオルで拭き取る。ミストを拭き取る前のキムタオルの重量と、ミストを拭き取った後の重量と、の差を、拭き取った非載置部806fの面積で除することにより、非載置部806fに着水した除菌水の単位面積あたりの平均着水量が算出される。 同様に、アフターミストモード又は手動ミストモードの実行後に、パッキン490よりも前方側の載置部806rに着水したミストをキムタオルで拭き取る。ミストを拭き取る前のキムタオルの重量と、ミストを拭き取った後の重量と、の差を、拭き取った載置部806rの面積で除することにより、載置部806rに着水した除菌水の単位面積あたりの平均着水量が算出される。
図30は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモード又は手動ミストモードにおける動作を例示する断面図である。
図31(a)及び図31(b)は、実施形態に係る便座装置のアフターミストモード又は手動ミストモードにおける動作を例示する斜視図である。
この例では、噴霧装置481は、第1吐水部51と、第2吐水部52と、を有する。第1吐水部51には、例えば、水道水又は除菌水を噴出(噴霧)可能なノズルが用いられる。第2吐水部52には、例えば前述のディスク481bが用いられる。
噴霧装置481へ水を導く流路113は、第1吐水部51に給水する流路と、第2吐水部52に給水する流路と、に分岐している。各吐水部への給水は、制御装置405によって制御されている。第1吐水部51と第2吐水部52とは、例えば同時に除菌水を噴出(噴霧)する。
図31(a)は、アフターミストモード又は手動ミストモードにおける第2吐水部52の動作を例示している。第2吐水部52は、リム上面806の非載置部806fに除菌水を着水させる。また、第2吐水部52は、ボウル部801内の第2吐水部52よりも前方側にも除菌水を着水させる。
例えば、第2吐水部52は、前方かつ下方へ除菌水のミストを噴霧する。噴霧されたミストの一部は、送風装置513によって形成される上昇気流U1に乗って、リム上面806よりも上方に上昇する。これにより、非載置部806f、着座部200及び便蓋300に除菌水のミストが着水する。
図31(b)は、アフターミストモード又は手動ミストモードにおける第1吐水部51の動作を例示している。第1吐水部51は、後方かつ下方へ除菌水を噴出(噴霧)し、ボウル部801内の第1吐水部51よりも後方側(載置部806r側)に除菌水を着水させる。
噴霧装置481は、ケーシング400の内部又は下方に設けられている。また、噴霧装置481から噴霧された除菌水は、自重によって徐々に落下する。そのため、非載置部806fに除菌水を着水させるためには、高い位置から除菌水を噴霧することが望ましい。そこで、図30に示すように、第2吐水部52は、第1吐水部51(ノズル吐水口)よりも上方に配置される。これにより、より確実に非載置部806fに除菌水を着水させることができる。一方、載置部806rに除菌水を着水することを抑制するためには、低い位置から除菌水を噴出(噴霧)することが望ましい。第1吐水部51(ノズル吐水口)が、第2吐水部52よりも下方に配置されていることにより、載置部806rに除菌水が着水することをより抑制することができる。
また、第2吐水部52は、使用者が触れる可能性があるリム上面806の非載置部806fに除菌水を着水させるため、清潔であることが望まれる。そこで、第2吐水部52は、ケーシング400の内部に配置されている。また、第2吐水部52(ディスク481b)は、リム上面806よりも上方に位置する。これにより、第2吐水部52に汚物が付着することを防ぎ、第2吐水部52の清潔性を確保することができる。
一方、第1吐水部51は、使用者が触れる可能性の低いボウル部801内の載置部806r側に除菌水を着水させるため、第2吐水部52に比べて清潔性が問題になりにくい。そこで、第1吐水部51は、ケーシング400の下方に突出するように配置されている。例えば、第1吐水部51(ノズル吐水口)は、リム上面806よりも下方に位置する。これにより、第1吐水部51を低い位置に配置することができ、載置部806rに除菌水が着水することをより抑制することができる。
また、噴霧装置481(第2吐水部52)は、上面視において噴霧装置481よりも載置部806r側(後方側)に噴出する除菌水の少なくとも一部を、上昇気流U1に乗らない大きさで形成する。一方、噴霧装置481(第1吐水部51)は、上面視において噴霧装置481よりも非載置部806f(前方側)に噴霧する除菌水の少なくとも一部を上昇気流U1に乗る大きさで形成する。
具体的には、噴霧装置481は、上面視において噴霧装置481よりも載置部806r側に噴出する除菌水をシャワー状、膜状または第1粒径のミスト状とする。また、噴霧装置481は、上面視において噴霧装置481よりも非載置部806f側に噴出する除菌水を第1粒径よりも小さい第2粒径のミスト状とする。
これにより、噴霧装置481から非載置部806f側に噴出された除菌水は、載置部806r側に噴出された除菌水よりも上昇気流に乗りやすく、非載置部806fに多くの除菌水を着水させることができる。逆に、噴霧装置481から載置部806r側に噴出された除菌水は、非載置部806f側に噴出された除菌水よりも上昇気流に乗りにくく、載置部806rに除菌水が着水することを抑制することができる。
なお、第1粒径と2粒径との大小の比較には、ミストの粒径分布の平均値又は中央値を用いることができる。また、シャワー状及び膜状は、ミストの微粒子よりも大きい水の形状である。シャワー状及び膜状の除菌水の自重は、第1粒径のミストの粒の自重よりも大きい。シャワー状の除菌水は、糸状でも大粒状でもよい。載置部806r側に噴出される除菌水の形状や大きさは、例えば、第1吐水部51の吐水口の形状などによって調節できる。
図30及び図31では、2つの吐水部が設けられた場合について説明した。但し、吐水部の数は、1でも良いし3以上でも良い。噴霧方向や噴霧範囲、ミストの粒径などを適宜変化させることで、非載置部806fに多くの除菌水を着水させつつ、載置部806rに除菌水が着水することを抑制することができる。
図32は、実施形態に係る便座装置の手動ミストモードにおける動作を例示するフローチャートである。
使用者が手動操作部500を操作すると、制御装置405は、手動操作部500の操作情報に基づいて手動ミストモードを実行可能である。ここで、手動操作部500の操作が短時間の間に連続して行われ、手動ミストモードが短時間の間に連続して実行されると、着座部200が過度に濡れてしまう恐れがある。その結果、着座部200に着水したミストに触れた使用者が不快感を感じたり、着水したミストが大便器800外へ垂れたりしてしまう恐れがある。
そこで、図32に示す例においては、制御装置405は、連続手動ミスト禁止モードを有する。連続手動ミスト禁止モードは、手動ミストモードの実行後の所定時間以内(手動ミストモードの終了から所定時間が経過する前)に再び手動操作部500が操作された場合、手動ミストモードの終了から所定時間が経過するまで手動ミストモードを再び実行することを禁止する。また、連続手動ミスト禁止モードは、手動ミストモードの実行中に再び手動操作部500が操作された場合においても、手動ミストモードの終了から所定時間が経過するまで手動ミストモードを再び実行することを禁止する。
例えば、図32に示すように、使用者が手動操作部500を操作して、手動ミストモードの開始を入力すると(ステップS401:Yes)、制御装置405は、前回の手動ミストモードの終了から所定時間が経過しているかを判断する(ステップS402)。所定時間が経過していた場合(ステップS402:Yes)、制御装置405は、手動ミストモードを実行する(ステップS403)。一方、手動ミストモードの実行中又は前回の手動ミストモードの終了から所定時間が経過しておらず(ステップS402:No)、かつ、後述する拭き取り動作が検知されていない場合(ステップS404:No)、制御装置405は、連続手動ミスト禁止モードを実行する。すなわち、手動ミストモードは実行されない。
このように、手動ミストモードの実行中又は実行後の所定時間以内に手動操作部500が操作されても、連続手動ミスト禁止モードによって再び手動ミストモードが実行されない。これにより、短時間の間にミストを噴霧する手動操作が連続で行われても、着座部200に多過ぎるミストが着水することを抑制することができる。多くのミストが着座部200に着水して使用者が不快感を感じること、及び、着座部200に着水したミストが大便器800外へ垂れることを抑制することができる。
なお、ステップS402における所定時間は、例えば、再び手動ミストモードが実行され着座部200にミストがさらに着水しても、着水したミストが大便器800の外へ垂れない程度の時間に設定される。所定時間は、手動ミストモードにおいて噴霧されるミストの量に応じて適宜定められ、例えば、10秒以上5分以下である。所定時間は、前回の手動ミストモードにおいて着座部200に着水したミストが蒸発する時間でもよい。
使用者は、手動ミストモードによって着座部200に着水したミストをトイレットペーパー等を用いて拭き取ることにより、着座部200に付着した菌や汚れを取り除くことができる。使用者が着座部200に着水したミストのほぼ全てを拭き取った後に、着座部200にまだ汚れが残っている場合には、使用者は、再び手動ミストモードを実行し、残った汚れを拭き取りたい場合がある。このような場合、所定時間を待つことは、使用者にとって不便である。
そこで、制御装置405は、手動ミストモードの終了から所定時間が経過する前に連続手動ミスト禁止モードの実行を解除し、再び手動ミストモードを実行可能とする手動ミスト解除モードを有する。これにより、前回の手動ミストモードから所定時間を経過していなくても、再び手動ミストモードの実行が可能となり、使い勝手を向上させることができる。
便座装置100は、使用者が着座部200に対して拭き取り動作を行ったことを検知する拭き取り動作検知手段を有する。制御装置405は、拭き取り動作検知手段の検知情報に基づいて、手動ミスト解除モードを実行する。
図32に示すように、拭き取り動作検知手段によって使用者が拭き取り動作を行ったことが検知されていた場合(ステップS404:Yes)、手動ミスト解除モードが実行される。すなわち、再び手動ミストモードの実行が可能となり、手動ミストモードが実行される(ステップS403)。
拭き取り動作検知手段としては、例えば着座検知センサ404を用いることができる。制御装置405は、着座検知センサ404の検知情報に基づいて拭き取り動作の有無を推定する。着座検知センサ404を利用することで、より確実に使用者による着座部の拭き取り動作を検知することができる。例えば、着座検知センサ404が着座部200に加えられた荷重を検知可能なセンサである場合、着座部200に加えられた荷重の大きさや、荷重が加えられた時間に基づいて、使用者が拭き取り動作を行ったことを検知することができる。また、例えば、着座検知センサ404が人体までの距離を取得可能なセンサである場合、距離の変化に基づいて、使用者が拭き取り動作を行ったことを検知することができる。
また、使用者が手動ミストモードを実行するために、手動操作部500を操作したにもかかわらず、連続手動ミスト禁止モードによって手動ミストモードが実行されず、ミストが噴霧されない場合、使用者が便座装置100が故障したと誤認するおそれがある。そこで、使用者の拭き取り動作が検知されていない場合(ステップS404:No)、制御装置405は、連続手動ミスト禁止モードを実行したことを報知手段により報知する(ステップS405)。これにより、使用者の誤認を防ぐことができる。報知手段には、音又は光などで報知を行うことができる任意の手段を用いることができる。例えば、報知手段として、スピーカ、LED又は液晶ディスプレイなどを、手動操作部500やケーシング400に適宜設けることができる。
さらに、便座装置100は、使用者が着座部200に対して拭き取り動作を行ったことを入力する操作部(例えば手動操作部500)を有する。制御装置405は、操作部に入力された入力情報に基づいて、手動ミスト解除モードを実行する。例えば、使用者が手動操作部500のスイッチ等を操作すると、入力情報(信号)が制御装置405に送られ、制御装置405は、その入力情報を受信すると手動ミスト解除モードを実行する(ステップS406:Yes)。これにより、再び手動ミストモードの実行が可能となり、手動ミストモードが実行される(ステップS403)。このような操作部を利用することにより、より確実に使用者による着座部200の拭き取り動作を検知し、使い勝手を向上させることができる。なお、使用者は、拭き取り動作を行わなくても、必要に応じて当該操作部を操作してもよい。
使用者が着座部200に対して拭き取り動作を行ったことを入力する操作部を操作しない場合(ステップS406:No)、手動ミストモードの終了から所定時間が経過するまで、手動ミストモードの実行が禁止された状態が維持される。
図33は、実施形態に係る便座装置の手動ミストモードにおける別の動作を例示するフローチャートである。
図33に示す例においては、制御装置405は、第1手動ミストモード及び第2手動ミストモードの2種類の手動ミストモードを有する。第2手動ミストモードにおいて噴霧する除菌水のミストの総量は、第1手動ミストモードにおいて噴霧する除菌水のミストの総量よりも少ない。例えば、第2手動ミストモードの噴霧時間は、第1手動ミストモードの噴霧時間よりも短い。
第1手動ミストモードは、使用者が手動操作部500を操作したときに、噴霧装置481を制御して、除菌水のミストを着座部200に噴霧する動作モードである。
一方、第2手動ミストモードは、第1手動ミストモードの実行後の所定時間以内(第1手動ミストモードの終了から所定時間が経過する前)に再び手動操作部500が操作された場合、噴霧装置481を制御して、除菌水のミストを着座部200に噴霧する。また、第2手動ミストモードは、第1手動ミストモードの実行中に再び手動操作部500が操作された場合においても、噴霧装置481を制御して、除菌水のミストを着座部200に噴霧する。
言い換えれば、第1手動ミストモードの終了から所定時間が経過するまで第1手動ミストモードを再び実行することが禁止され、代わりに第2手動ミストモードが実行される。
例えば、図33に示すように、使用者が手動操作部500を操作して、手動ミストモードの開始を入力すると(ステップS501:Yes)、制御装置405は、前回の第1手動ミストモードの終了から所定時間が経過しているかを判断する(ステップS502)。所定時間が経過していた場合(ステップS502:Yes)、制御装置405は、第1手動ミストモードを実行する(ステップS503)。一方、第1手動ミストモードの実行中又は前回の第1手動ミストモードの終了から所定時間が経過しておらず(ステップS502:No)、かつ、拭き取り動作が検知されていない場合(ステップS504:No)、制御装置405は、第2手動ミストモードを実行する。
このように、第1手動ミストモードの実行中又は実行後の所定時間以内に手動操作部500が操作された場合、第1手動ミストモードに比べてミストの噴霧量が少ない第2手動ミストモードが実行される。これにより、ミストを噴霧する手動操作が連続で行われても、着座部200に多過ぎるミストが着水することを抑制ことができる。多くのミストが着座部200に着水して使用者が不快感を感じること、及び、着座部200に着水したミストが大便器800外へ垂れることを抑制することができる。
なお、ステップS502における所定時間は、例えば、再び第1手動ミストモードが実行され着座部200にミストがさらに着水しても、着水したミストが大便器800の外へ垂れない程度の時間に設定される。所定時間は、噴霧されるミストの量に応じて適宜定められ、例えば、10秒以上5分以下である。所定時間は、前回の第1手動ミストモードにおいて着座部200に着水したミストが蒸発する時間でもよい。
使用者が第1手動ミストモードの実行後に、着座部200に残った汚れをさらに拭き取りたい場合、第2手動ミストモードによってミストの噴霧量が少ないと、汚れが拭き取りにくく不便な場合がある。
そこで、制御装置405は、第1手動ミストモードの終了から所定時間が経過する前に再び第1手動ミストモードを実行可能とする手動ミスト解除モードを有する。これにより、前回の第1手動ミストモードから所定時間を経過していなくても、再び第1手動ミストモードの実行が可能となり、使い勝手を向上させることができる。
図33に示すように、拭き取り動作検知手段によって使用者が拭き取り動作を行ったことが検知されていた場合(ステップS504:Yes)、手動ミスト解除モードが実行される。すなわち、再び第1手動ミストモードの実行が可能となり、第1手動ミストモードが実行される(ステップS503)。
また、使用者が手動操作部500を操作した場合に、第1手動ミストモードが実行されずに第2手動ミストモードが実行され、ミストの噴霧量が少ないと、使用者が便座装置100が故障したと誤認するおそれがある。そこで、使用者の拭き取り動作が検知されていない場合(ステップS504:No)、制御装置405は、第2手動ミストモードを実行したことを報知手段により報知する(ステップS505)。これにより、使用者の誤認を防ぐことができる。
さらに、使用者が着座部200に対して拭き取り動作を行ったことを入力する操作部が操作されると、入力情報(信号)が制御装置405に送られ、制御装置405は、その入力情報を受信すると手動ミスト解除モードを実行する(ステップS506:Yes)。これにより、再び第1手動ミストモードの実行が可能となり、第1手動ミストモードが実行される(ステップS503)。
使用者が着座部200に対して拭き取り動作を行ったことを入力する操作を操作しない場合(ステップS506:No)、第2手動ミストモードが実行される(ステップS507)。
図34(a)及び図34(b)は、実施形態に係る粒径の測定方法を例示する斜視図である。
粒径の測定には、レーザ回折法が用いられる。微粒子にレーザを照射すると、その微粒子から様々な方向に向かう回折散乱光が生じる。回折散乱光の強さは、光が発せられる方向において空間パターンを有する。この空間パターンは、光強度分布パターンと呼ばれる。光強度分布パターンは、微粒子の粒径によって変化する。微粒子の粒径と光強度分布パターンとの相関を利用し、光強度分布パターンを検出することで粒径を算出することができる。
図34(a)及び図34(b)に示すように、粒径の測定装置600は、発光部601と受光部602とを有する。受光部602は、発光部601が発するレーザを受光可能に設けられている。粒径の測定においては、発光部601が発するレーザを噴霧装置481から噴霧されるミストMに照射する。受光部602は、レーザの照射によって生じた回折散乱光を受光する。これにより、光強度分布パターンを検出することができる。測定装置には、エアロトラックLDSA−3500A(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、大便器、便座装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。