(実施例1)
以下、本発明の実施例1の眼科装置を、図面に基づいて説明する。
[眼科装置の全体構成]
実施例1の眼科装置10の全体構成を、図1〜図3を参照しながら説明する。実施例1の眼科装置10は、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼Eの特性測定を両眼同時に実行可能な両眼開放タイプの眼科装置である。実施例1の眼科装置10は、図1に示すように、床面に設置された基台11と、検眼用テーブル12と、支柱13と、支持部としてのアーム14と、駆動機構15と、一対の測定ヘッド16と、を備えている。
この眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に額を当てた状態で被検眼Eの情報を取得する。なお、本明細書を通じて図1に記すように、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ヘッド16の奥行き方向(被検者側を手前側とする))をZ方向とする。
検眼用テーブル12は、検者用コントローラ24や被検者用コントローラ25(図3参照)を置いたり検眼に用いる用具等を置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に伸びるように基台11により支持され、先端にアーム14が設けられる。アーム14は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能に設けられている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向およびZ方向に移動可能に設けられていてもよい。このアーム14の先端の取付ベース部14aに、駆動機構15が取り付けられている。この駆動機構15により吊り下げられた状態で、両測定ヘッド16が支持されている。このため、支柱13およびアーム14は、検眼用テーブル12から上方に伸びて、先端に駆動機構15が設けられる支持部として機能する。
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部18が、制御ボックス18bに収納されて設けられている。なお、制御部18には、図2に示すように電源ケーブル18cを介して図示しない商用電源から電力供給がなされる。そして、制御部18から制御/電源ケーブル18dを介して駆動機構15および眼情報取得部21に電力が供給される。
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼Eに個別に対応するように、一対設けられている。本明細書では、個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16Lおよび右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼Eの情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼Eの情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称に構成されている。
図1または図2に示すように、各測定ヘッド16には、偏向部材20(左偏向部材20Lおよび右偏向部材20R)と、被検眼Eの眼情報を取得する眼情報取得部21(左眼情報取得部21Lおよび右眼情報取得部21R)と、が設けられている。各測定ヘッド16では、偏向部材20を通じて眼情報取得部21により、対応する被検眼E(左眼ELおよび右眼ER)の情報が取得される。このため、眼科装置10では、被検者が左右の両眼を開放した状態で、被検眼Eの情報を両眼同時に取得することができる。
各眼情報取得部21で取得される眼情報は、被検眼Eの画像や、被検眼Eの眼底の画像や、被検眼Eの網膜の断層画像や、被検眼Eの角膜内皮画像や、被検眼Eの屈折力や、被検眼Eの角膜形状や、被検眼Eの眼圧等をいう。各眼情報取得部21は、提示する視標を切り替えつつ視力検査を行う視力検査装置、矯正用レンズを切り換えて配置させて被検眼Eの適切な矯正屈折力を取得するフォロプタ、屈折力を測定するレフラクトメータや波面センサ、眼底の画像を撮影する眼底カメラ、網膜の断層画像を撮影する断層撮影装置(OCT)、角膜内皮画像を撮影するスペキュラマイクロスコープ、角膜形状を測定するケラトメータ、眼圧を測定するトノメータ等が、単独でまたは複数組み合わされて構成される。
各眼情報取得部21は、固視投影系、観察系、アライメント検出系、測定系等の光学系が設けられて構成され、各光学系には適宜光源やセンサ、駆動部等が設けられる。固視投影系は、被検眼Eに固視標を呈示して、被検眼Eの視軸を固定する。観察系は、被検眼Eの前眼部を撮影し、その画像(観察画像)を表示部や接続された外部機器等に表示させる。これにより、被検眼Eの状態の確認を可能とするとともに、画像中の基準点(瞳孔や虹彩など)や投影した視標像に基づく光軸に直交する方向(XY方向)のアライメント情報の取得を可能とする。アライメント検出系は、各眼情報取得部21の光軸方向(Z方向(作動距離方向))のアライメント情報やXY方向のアライメント情報を取得する。そのアライメント情報は、各眼情報取得部21の被検眼Eに対するアライメント(位置合わせ)に用いる情報である。測定系は、被検眼Eの眼特性を取得するための光束を被検眼Eに照射し、反射光を受光することで眼特性を取得する。
駆動機構15は、図2に示すように、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用駆動機構15Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用駆動機構15Rと、を有している。左眼用駆動機構15Lは、左鉛直駆動部22Lと左水平駆動部23Lと左回旋駆動部としての左Y軸回旋駆動部30Lおよび左X軸回旋駆動部50Lと、を有している。右眼用駆動機構15Rは、右鉛直駆動部22Rと右水平駆動部23Rと右回旋駆動部としての右Y軸回旋駆動部30Rおよび右X軸回旋駆動部50Rと、を有している。
この左眼用駆動機構15Lの各駆動部の構成と、右眼用駆動機構15Rの各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称に構成されている。以下、個別に述べる時を除くと、単に鉛直駆動部22と水平駆動部23とY軸回旋駆動部(水平方向回旋駆動部)30とX軸回旋駆動部(鉛直方向回旋駆動部)50ということがある。左右に対称に設けられる他の構成部品についても同様である。駆動機構15では、上から鉛直駆動部22、水平駆動部23、Y軸回旋駆動部30、X軸回旋駆動部50の順に設けられており、アーム14に対して対応する測定ヘッド16を移動させる。
鉛直駆動部22は、アーム14の先端の取付ベース部14aに固定され、アーム14に対して水平駆動部23、Y軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は、鉛直駆動部22に固定され、鉛直駆動部22に対してY軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50を、X方向およびZ方向(水平方向)に移動させる。鉛直駆動部22と水平駆動部23とは、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構と、が設けられて構成される。水平駆動部23は、例えばX方向とZ方向とで個別にアクチュエータおよび伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
Y軸回旋駆動部30は、水平駆動部23に連結されている。Y軸回旋駆動部30は、水平駆動部23に対して対応する測定ヘッド16およびX軸回旋駆動部50を、対応する被検眼Eの眼球回旋点P(左眼球回旋点PLおよび右眼球回旋点PR)を通り鉛直方向(Y方向)に延びる眼球回旋軸(図2の左眼EL、右眼ERに一点鎖線で示す「Y軸」)を中心(回転軸)として、水平方向(左右方向)に回旋させる。本明細書では、このようなY軸を回転軸とした水平方向への回旋を「Y軸回旋」ということがある。
X軸回旋駆動部50は、Y軸回旋駆動部30に連結されている。このX軸回旋駆動部50に測定ヘッド16が吊り下げられている。X軸回旋駆動部50は、Y軸回旋駆動部30に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋点P(左眼球回旋点PLおよび右眼球回旋点PR)を通り水平方向(X方向)に延びる眼球回旋軸(図2の左眼EL、右眼ERに二点鎖線で示す「X軸」)を中心(回転軸)として、鉛直方向(上下方向)に回旋させる。本明細書では、このようなX軸を回転軸とした鉛直方向への回旋を「X軸回旋」ということがある。
以上の構成により、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向およびZ方向に移動できるとともに、各測定ヘッド16をX軸、Y軸を中心に鉛直方向及び水平方向へ回転(X軸回旋及びY軸回旋)させることができる。
[制御部]
制御部18は、眼科装置10の各部を統括的に制御する。制御部18には、図2、図3に示すように、上記した各眼情報取得部21と、駆動機構15としての各鉛直駆動部22、各水平駆動部23、各Y軸回旋駆動部30および各X軸回旋駆動部50と、に加えて、検者用コントローラ24と被検者用コントローラ25と記憶部26と、が接続されている。
検者用コントローラ24は、検者が眼科装置10を操作するために用いられる。被検者用コントローラ25は、被検眼Eの各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。検者用コントローラ24や被検者用コントローラ25は、それぞれ有線または無線の通信路を介して制御部18に接続されている。
制御部18は、接続された記憶部26または内蔵する内部メモリ18aに記憶したプログラムを、例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ24や被検者用コントローラ25に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ18aは、RAM等で構成され、記憶部26は、ROMやEEPROM等で構成される。
眼科装置10は、制御部18の制御下で、自動でアライメントを行って被検眼Eの情報を取得する。詳細には、制御部18は、眼情報取得部21(アライメント検出系)および駆動機構15(鉛直駆動部22、水平駆動部23、Y軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50)を動作させて、上記のアライメント検出系からのアライメント情報に基づいて、対応する被検眼Eに対する眼情報取得部21(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントを行う。その後、制御部18は、適宜眼情報取得部21を駆動して、被検眼Eの各種の眼情報を取得させる。
眼科装置10では、検者が検者用コントローラ24を操作することで、被検眼Eに対して眼情報取得部21をアライメントし、眼情報取得部21を駆動して被検眼Eの各種の眼情報を取得できる。眼科装置10では、被検眼Eの各種の眼情報を取得する際、被検者が被検者用コントローラ25を操作して応答することができ、被検眼Eの各種の眼情報の取得を補助する。
[回旋駆動部]
次に、駆動機構15の回旋駆動部としてのY軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50の構成を、図4A〜図6を参照しながら説明する。図4Aは、Y軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50の側面図(より詳細には、左Y軸回旋駆動部30Lおよび左X軸回旋駆動部50Lの右側面図)であり、図4Bは、その正面図である。図5、図6は、Y軸回旋駆動部30およびX軸回旋駆動部50の構成をそれぞれ示す図である。
まず、Y軸回旋駆動部30の構成を説明する。図4A〜図5に示すように、Y軸回旋駆動部30は、設置部31と、設置部31に設けられたY軸回旋部材(水平方向回旋部材)32、駆動装置としての回旋駆動モータ33及び伝達機構40と、を有している。
回旋駆動モータ33は、本実施例では、本体部33aの両端部から突出する2つのシャフト33b,33cを有するダブルシャフトステッピングモータを用いているが、これに限定されるものではない。伝達機構40は、回旋駆動モータ33の駆動力をY軸回旋部材32に伝達する機能を有している。伝達機構40は、回旋駆動モータ33の一方のシャフト33bに設けられるクラッチ部材41と、クラッチ部材41に設けられるプーリ42と、回旋駆動モータ33の駆動力を出力する回旋出力軸43と、回旋出力軸43の一端に設けられるプーリ44と、両プーリ42,44の間に架け渡されるベルト部材45と、Y軸回旋部材32に設けられる回旋側ギヤ部46と、を有している。
回旋駆動モータ33は、Y軸回旋駆動部30とX軸回旋駆動部50とで共有されている。本実施例では、回旋駆動モータ33の駆動力をY軸回旋駆動部30とX軸回旋駆動部50とに切り替えて伝達したり、双方に伝達したりできるように、クラッチ部材41(X軸回旋駆動部50のクラッチ部材61も同様)を設けている。このクラッチ部材41としては、特に限定されるものではないが、例えば、外径25mm程度のマイクロ電磁クラッチを好適に用いることができる。これにより、回旋駆動モータ33の駆動力の伝達や切替えを、円滑かつ効率的に行うことができるとともに、伝達機構40やY軸回旋駆動部30の小型化や軽量化も可能となる。
設置部31は、板状部材が側面視コ字形(U字形)に屈曲または複数の板状部材が溶接等で接続されて構成され、XZ方向に延びる上部設置部31a及び下部設置部31bと、これらの一側を連結しY方向に延びる連結部31cと、を有している。上部設置部31aには、回旋駆動モータ33が設けられている。下部設置部31bには、Y軸回旋部材32が移動可能に設けられ、Y軸回旋部材32と連結部31cとの間に、回旋出力軸43が設けられている。連結部31cは、水平駆動部23に固定されている。このため、設置部31は、鉛直駆動部22および水平駆動部23により、アーム14に対してY方向(鉛直方向)並びにX方向およびZ方向(水平方向)に移動可能となっている。
Y軸回旋部材32は、板状部材が側面視L字形状に屈曲または2枚の板状部材が溶接等で接続されて構成されている。Y軸回旋部材32は、XZ方向に伸びる案内板35と、案内板35からY方向の下側に延びる取付基板36と、を有している。
ここで、Y軸回旋駆動部30は、測定ヘッド16をY軸回旋させるY方向に延びる回転中心が設定される。この回転中心は、上記したように被検眼Eに対して眼情報取得部21(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントが行われると、被検眼Eの眼球回旋点PからY方向に延びる眼球回旋軸(Y軸)と一致する位置関係となっている(図2等参照)。
案内板35には、Y軸を中心とする円弧状に延びる案内溝37が設けられている。この案内溝37には、下部設置部31bからY方向に突出して設けられた一対の案内突起34が挿通されている。案内溝37および両案内突起34による案内作用により、案内板35は、案内溝37が延びる方向すなわち案内溝37が描く円弧に沿って、設置部31に対して、Y軸を回転中心として水平方向(左右方向)に回転することが可能となっている。
また、案内板35の連結部31c側の外縁35aは、Y軸を中心とする円弧状を呈している。この外縁35aに、回旋側ギヤ部46が設けられている。この回旋側ギヤ部46は、回旋出力軸43に設けられた駆動側ギヤ部47に噛み合わされている。このため、回旋出力軸43と案内板35とは、回旋出力軸43の回転力を、Y軸を中心として案内板35を水平方向に回転させる回転力に変換するウォームギヤとして機能する。
取付基板36は、案内板35からY方向の下側に延びる板状部材から構成される。この取付基板36に、X軸回旋駆動部50が取り付けられている。
上述のような構成のY軸回旋駆動部30では、制御部18の制御下で回旋駆動モータ33が駆動されると、シャフト33bに設けられたクラッチ部材41がプーリ42とともに回転する。この回転力がベルト部材45と回旋出力軸43の一端に設けられたプーリ44とによって伝達され、回旋出力軸43がその軸線回りに回転される。この回旋出力軸43の回転力が、駆動側ギヤ部47と回旋側ギヤ部46によって、案内板35をY軸回旋させる回転力に変換される。このため、回旋駆動モータ33の駆動によって、案内板35は案内溝37が描く円弧に沿って移動する。これにより、Y軸回旋駆動部30は、連結部31cが固定された水平駆動部23に対して、取付基板36に取り付けられたX軸回旋駆動部50および測定ヘッド16を、Y軸(回転中心)を中心として水平方向に回転(Y軸回旋)させることができる。
次に、X軸回旋駆動部50の構成を説明する。図4A、図4B、図6に示すように、X軸回旋駆動部50は、X軸回旋部材51(鉛直方向回旋部材)と、駆動装置としてY軸回旋駆動部30と共有される回旋駆動モータ33と、伝達機構60と、を有している。
伝達機構60は、回旋駆動モータ33の駆動力をX軸回旋部材51に伝達する機能を有している。伝達機構60は、回旋駆動モータ33の他方のシャフト33cに設けられるクラッチ部材61と、クラッチ部材61に設けられるプーリ62と、回旋駆動モータ33の駆動力を出力する回旋出力軸63と、回旋出力軸63の一端に設けられるプーリ64と、両プーリ62,64の間に架け渡されるベルト部材65と、X軸回旋部材51に設けられる回旋側ギヤ部66と、を有している。
ここでも、クラッチ部材61として、外径25mm程度のマイクロ電磁クラッチを好適に用いることができる。これにより、必要に応じて回旋駆動モータ33の駆動力の伝達と切替えを、円滑かつ効率的に行うことができるとともに、伝達機構60やX軸回旋駆動部50の小型化や軽量化も可能となる。
回旋出力軸63は、Y軸回旋駆動部30側に設けられ、本実施例では、下部設置部31bの下面に設けられている。このため、回旋出力軸63は、鉛直方向(上下方向)には回転しない構成となっている。
X軸回旋部材51は、Y方向に延びる案内板52と、案内板52の下端からY方向の下側に延びる取付板53と、を有している。取付板53には、側面視L字形でXZ方向に延びる固定板54が、ボルト55により固定されている。固定板54には、Y方向に延びる接続軸58が設けられ、この接続軸58に、対応する測定ヘッド16が固定されている。このため、X軸回旋部材51と測定ヘッド16とは、一体に移動や回旋が可能となっている。
ここで、X軸回旋駆動部50は、測定ヘッド16を鉛直方向に回転させるX方向に延びる回転中心が設定される。この回転中心は、上記したように被検眼Eに対して眼情報取得部21(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントが行われると、被検眼Eの眼球回旋点PからX方向に延びる眼球回旋軸(X軸)と一致する位置関係となっている(図2等参照)。
案内板52には、X軸を中心とする円弧状に延びる案内溝56が設けられている。この案内溝56には、Y軸回旋駆動部30の取付基板36にX方向に突出して設けられた一対の案内突起57が挿通されている。案内溝56および両案内突起57による案内作用により、案内板52は、取付基板36に対して、案内溝56が延びる方向すなわち案内溝56が描く円弧に沿って、X軸(回転中心)を中心として鉛直方向に回転することが可能となっている。
また、案内溝56は、図6に示すように、中心よりも手前側すなわち被検者側に長く延びる非対称な形状を呈している。そして、案内板52の初期位置では一方の案内突起57が案内溝56の検者側(奥側)の端縁56aの近傍に位置するが、他方の案内突起57は、案内溝56の途中に位置し、被検者側(手前側)の端縁56bとの間に相対的に移動可能な余裕がある位置合わせとなっている。このような位置合わせにより、案内板52は初期位置から検者の方向(下方)への回転(X軸回旋)が許容される。この案内板52の回転により、案内板52に固定された測定ヘッド16が、X軸を中心(回転軸)として下方に回転(X軸回旋)する。
また、案内板52の回旋出力軸63側の外縁52aは、X軸を中心とする円弧状を呈している。この外縁52aに、回旋側ギヤ部66が設けられている。この回旋側ギヤ部66は、回旋出力軸63に設けられた駆動側ギヤ部67に噛み合わされている。このため、回旋出力軸63と案内板52とは、回旋出力軸63の回転力を、X軸(回転中心)を中心として案内板52を鉛直方向に回転させる回転力に変換するウォームギヤとして機能する。
また、案内溝56に一対の案内突起57を挿通したことで、取付基板36にX軸回旋駆動部50が、鉛直方向に回転(X軸回旋)可能に吊り下げられて支持される。したがって、X軸回旋駆動部50および測定ヘッド16は、Y軸回旋駆動部30とともに、鉛直駆動部22および水平駆動部23により、アーム14に対してY方向(鉛直方向)、X方向およびZ方向(水平方向)に移動可能で、Y軸を中心に水平方向に回転(Y軸回旋)可能となっている。
上述のような構成のX軸回旋駆動部50では、制御部18の制御下で回旋駆動モータ33が駆動されると、シャフト33cに設けられたクラッチ部材61がプーリ62とともに回転する。この回転力がベルト部材65と回旋出力軸63の一端に設けられたプーリ64とによって伝達され、回旋出力軸63がその軸線回りに回転される。この回旋出力軸63の回転力が、駆動側ギヤ部67と回旋側ギヤ部66によって、案内板52を、を鉛直方向に回転移動させる回転力に変換される。このため、回旋駆動モータ33の駆動によって、案内板52は案内溝56が描く円弧に沿って移動する。これにより、Y軸回旋駆動部30に対して、X軸回旋部材51および測定ヘッド16を、X軸(回転中心)を中心として鉛直方向に回転(X軸回旋)させることができる。
駆動機構15は、上記したように鉛直駆動部22および水平駆動部23により被検眼Eに対する眼情報取得部21(測定ヘッド16)のXYZ方向のアライメントを行うことで、Y軸回旋駆動部30で設定した回転中心が被検眼Eの鉛直方向に延びる眼球回旋軸(Y軸)と一致される。駆動機構15は、この状態において、Y軸回旋駆動部30により、Y軸を中心とする回転方向にY軸回旋部材32(案内板35)を移動させる。これにより、Y軸回旋駆動部30にX軸回旋駆動部50を介して吊り下げられた測定ヘッド16を、対応する被検眼Eの眼球回旋軸(Y軸)を中心に左右方向に回旋(Y軸回旋)させることができる。このとき、Y軸回旋駆動部30は、左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとを左右逆方向に回旋させることで、被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりできる。
また、駆動機構15は、X軸回旋駆動部50により水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心とする回転方向にX軸回旋部材51(案内板52)を移動させる。これにより、X軸回旋駆動部50に吊り下げられた測定ヘッド16を、対応する被検眼EのX軸を中心に鉛直方向へ回旋(X軸回旋)させることができる。このとき、両測定ヘッド16を下方に回旋させることで、被検眼Eを下方に回旋させて、視軸を下に向けさせたり、視軸の方向に対応した位置に両測定ヘッド16を配置したりすることができる。その後、回旋駆動モータ33を逆回転させて両測定ヘッド16を上方に回転させることで、被検眼Eを上方に回旋させ、視軸を元に戻すこと等ができる。
以上により、眼科装置10は、開散運動および輻輳運動のテストを行うことや、両眼視の状態で遠用検査や近用検査を行って両被検眼Eの各種の眼情報を取得することができる。特に、多焦点レンズや累進レンズを装着した場合は、遠用、中用、近用の各検査を行うときに、それぞれの焦点位置に対応するように両被検眼Eを下方に視軸回旋させて視軸の方向を調整した状態で、両被検眼Eの各種の眼情報を、高精度に取得することができる。そのため、様々な視軸の方向にフレキシブルに対応でき、しかも眼情報の取得性能に優れた眼科装置10とすることができる。
次に、実施例1の眼科装置10の各作用効果を説明する。実施例1の眼科装置10は、被検眼Eの眼情報を取得する眼情報取得部21を収容する測定ヘッド16と、測定ヘッド16を吊り下げて移動可能に支持する駆動機構15と、駆動機構15を吊り下げて支持する支持部としての支柱13およびアーム14と、を備えて構成される。駆動機構15は、測定ヘッド16を被検眼Eの眼球回旋点Pを通り水平方向(X方向)に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に鉛直方向へ回転させるX軸回旋駆動部50を有している。
この構成により、被検眼Eの視軸の方向に応じた適切な位置に簡易かつ自在に眼情報取得部21を配置して、高精度に被検眼Eの情報を取得することができる。特に、累進レンズや多焦点レンズを装着した状態での検査の場合、遠用から近用検査に移行するときに、X軸回旋駆動部50によって測定ヘッド16を、水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に下方に回旋させることで、被検眼Eの視軸の方向を容易に下方に導くことができる。また、この被検眼Eの視軸の方向に対応した位置に測定ヘッド16を配置できることで、被検眼Eの情報を高精度に取得することができる。
また、本実施例の眼科装置10では、X軸回旋駆動部50は、水平方向(X方向)に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心とする円弧状に伸びる案内溝56を有し、案内溝56に沿って、測定ヘッド16を水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に回転させる構成である。この構成により、測定ヘッド16を、被検眼Eの鉛直方向への回転に対応して、より正確かつより容易に回旋(X軸回旋)させることができ、被検眼Eの情報の取得精度をより向上させることができる。
また、本実施例の眼科装置10では、X軸回旋駆動部50は、基板としての取付基板36と、取付基板36に対して移動可能に設けられて測定ヘッド16が固定されるX軸回旋部材51と、X軸回旋部材51を移動させる回旋駆動モータ33と、を有している。そして、X軸回旋部材51に、案内溝56が設けられ、取付基板36は、X軸回旋部材51へ向けて突出して案内溝56に挿通される案内突起57を有している。回旋駆動モータ33が駆動されると、X軸回旋部材51が案内溝56と案内突起57とに案内されて水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に回転する構成である。この構成により、回旋駆動モータ33を駆動するだけの簡易な制御で、測定ヘッド16を、水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に容易に回旋させることができる。
ここで、本実施例では、回転中心を中心とする円周上で間隔を置いて複数(実施例1では2つ)の案内突起57を設けている。このため、案内突起57が、案内溝56と協働して、被検眼Eの水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に鉛直方向にX軸回旋部材51(測定ヘッド16)を回旋できるとともに、X軸回旋部材51の意図しない方向への移動や回転を防止できる。
また、案内溝56を、手前方向に長く延びる非対称な形状としている。この構成により、被検眼Eの眼球回旋軸(X軸)を中心にX軸回旋部材51(測定ヘッド16)を下方に回旋させることができる。そのため、多焦点レンズや累進レンズを装着したときの中用、近用検査に好適に用いることができる。
また、本実施例では、駆動機構15は、測定ヘッド16を鉛直方向に移動させる鉛直駆動部22と、測定ヘッド16を水平方向に移動させる水平駆動部23と、を有している。そして、鉛直駆動部22および水平駆動部23のいずれかに、X軸回旋駆動部50が設けられている。この構成では、X軸回旋駆動部50を駆動させることで、測定ヘッド16のみを水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に鉛直方向に回旋させることができる。そのため、X軸回旋駆動部50の簡易化や小型化が可能となるとともに、測定ヘッド16のX軸を中心とした鉛直方向への回旋を容易に行うことができる。
また、本実施例では、駆動機構15は、測定ヘッド16を被検眼Eの眼球回旋点Pを通り鉛直方向(Y方向)に延びる眼球回旋軸(Y軸)を中心に回転させる第2の回旋駆動部としてのY軸回旋駆動部30を、有している。このY軸回旋駆動部30により、測定ヘッド16を、鉛直方向に延びる眼球回旋軸(Y軸)を中心に左右方向に回転(Y軸回旋)させて、被検眼Eを開散(開散運動)させたり輻輳(輻輳運動)させたりできる。このように、測定ヘッド16を、水平方向に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に回旋(X軸回旋)させるだけでなく、鉛直方向に延びる眼球回旋軸(Y軸)を中心に回旋(Y軸回旋)させることができるため、様々な方向の視軸に対応させて測定ヘッド16を配置させることができる。このため、開散運動および輻輳運動のテスト、遠用検査や近用検査をより適切に行うことができる。
ここで、X軸回旋駆動部50は、水平方向(X方向)に延びる眼球回旋軸(X軸)を中心に回旋可能に設けられた第1の回旋部材としてのX軸回旋部材51を有し、第2の回旋駆動部としてのY軸回旋駆動部30は、鉛直方向(Y方向)に延びる眼球回旋軸(Y軸)を中心に回旋可能に設けられた第2の回旋部材としてのY軸回旋部材32を有している。駆動機構15は、X軸回旋部材51およびY軸回旋部材32を移動させる駆動装置としての回旋駆動モータ33と、回旋駆動モータ33の駆動力を、X軸回旋部材51及びY軸回旋部材32に切り替えて伝達する伝達機構60,40と、を備えている。この構成により、一つの回旋駆動モータ33をX軸回旋駆動部50とY軸回旋駆動部30とで共有することができ、回旋駆動部をより小型化、軽量化することができ、さらには低コスト化を図ることもできる。
また、左右の被検眼Eに対応して、一対の測定ヘッド16を設けるとともに、鉛直駆動部22と水平駆動部23とY軸回旋駆動部30とX軸回旋駆動部50とを、左右の測定ヘッド16に対応して一対ずつ設けている。このため、眼科装置10は、両眼視の状態で各被検眼Eの眼情報を取得することができる。また、眼科装置10は、Y軸回旋駆動部30のみを駆動するだけで、開散運動および輻輳運動のテストを行うことや、両測定ヘッド16を用いて遠用検査や近用検査を行って両被検眼Eの各種の眼情報を取得することができる。
以上、本発明の眼科装置を実施例に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、上記実施例では、駆動機構15に鉛直駆動部22と水平駆動部23を設け、制御部18の制御により自動で測定ヘッド16をXYZ方向へ移動させているが、これに限定されるものではない。鉛直駆動部22や水平駆動部23を設けずに、手動で測定ヘッド16をXYZ方向へ移動させる構成としてもよく、駆動機構15をより簡素化、軽量化することができる。
また、実施例1では、Y軸回旋駆動部30やX軸回旋駆動部50に、それぞれ2つの案内突起34,57を設けている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、他の例として、例えば、案内突起34,57を3つ以上設けてもよいし、案内突起34,57を、それぞれの案内溝37,56の形状に対応した湾曲する単一の部材で構成してもよい。
また、実施例1では、鉛直駆動部22に水平駆動部23が設けられ、水平駆動部23に回旋駆動部(Y軸回旋駆動部30、X軸回旋駆動部50)が設けられている。しかしながら、回旋駆動部が鉛直方向および水平方向に移動可能であれば、この取り付け順に限定されるものではなく、鉛直駆動部22に回旋駆動部が設けられていてもよいし、他の構成でもよい。
また、実施例1では、1つの駆動装置(回旋駆動モータ33)を、Y軸回旋駆動部30とX軸回旋駆動部50とで共有している。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、それぞれに駆動装置を設けてもよい。また、駆動装置(回旋駆動モータ33)から回旋部材(Y軸回旋部材32、X軸回旋部材51)への駆動力の伝達のために、回旋出力軸43,63と案内板35,52とをウォームギヤとして構成しているが、この構成に限定されるものではなく、駆動装置の駆動によってY軸回旋部材32、X軸回旋部材51をそれぞれの案内溝37,56に沿って移動できるものであれば、他の構成でもよい。