[1]エレベータの全体構成
図1は、エレベータの全体構成を示した概念図である。また、図2の上図は、特定階Fp(ロビー階など)でのエレベータの乗場の構成を示した概念図であり、図2の下図は、一般階Fq(特定階Fp以外の各階)でのエレベータの乗場の構成を示した概念図である。尚、図2では、乗場が符号Hで示されている。
本実施形態では、エレベータは、乗りかご100と、特定階Fpに設けられた規制装置101Aと、各階の乗場に設置された行先階登録装置101Bと、セキュリティサーバ102と、エレベータ制御装置103と、群管理制御装置104と、を備える。また、規制装置101A及び行先階登録装置101Bには、それらを識別するための装置情報Pdが設定されている。尚、特に限定されるものではないが、図面においては、エレベータの一例として、乗りかご100が3つ、規制装置101Aが特定階Fpに2つ、行先階登録装置101Bが各階に1つずつ設置された構成が示されている。
<規制装置>
規制装置101Aは、セキュリティゲートなど、特定階Fpにおいてエレベータの乗場への進入を規制する装置である。そして、規制装置101Aには、利用者が所持する記録媒体Q(ICカードや磁気カードなど)から情報を読み取る読取装置1Aと、利用者が乗車すべき乗りかご100の情報などを表示する表示装置2Aと、が設けられている。ここで、記録媒体Qには、それを所持する利用者の識別情報Pi(記録媒体Qを識別する固有の情報。固有IDなど)が記録されており、読取装置1Aは、記録媒体Qから識別情報Piを読み取る。また、表示装置2Aには、乗りかご100の情報として、当該乗りかご100を識別する情報(番号や記号など。以下、この情報を「乗りかご情報Pg」と称す)などが表示される。
尚、読取装置1Aによる記録媒体Qの読取り方法は、接触式のものであってもよいし、NFC(Near Field Communication)等の近距離通信で情報を読み取る非接触式のものであってもよく、特に限定されるものではない。また、記録媒体Qは、カード状のものに限らず、スティック状やチップ状のものであってもよい。更に、読取装置1Aとの近距離通信(NFC等)が可能なスマートフォン等の携帯情報端末が、記録媒体Qとして用いられてもよい。
読取装置1Aで読み取られた識別情報Piは、セキュリティサーバ102において、規制装置101Aの通行を利用者に対して許可するか否かの判断を行うための認証などに用いられる。そこで、規制装置101Aは、読取装置1Aが識別情報Piを読み取った場合、その識別情報Piをセキュリティサーバ102に送信する(図1参照)。このとき、規制装置101Aは、識別情報Piの送信元である自身の位置をセキュリティサーバ102に認識させるために、自身の装置情報Pdを、識別情報Piと共にセキュリティサーバ102に送信する。尚、規制装置101Aは、装置情報Pdとして、自身に設けられている読取装置1A(即ち、識別情報Piを読み取った読取装置1A)の装置情報をセキュリティサーバ102に送信してもよい。
そして本実施形態では、規制装置101Aの読取装置1Aで読み取られた識別情報Piに対するセキュリティサーバ102での認証が成功した場合、その後の利用者の操作を何ら必要とせずに自動的に、認証された識別情報Piに対応付けられている情報(即ち、呼び登録に必要な情報)がセキュリティサーバ102から群管理制御装置104に送信され、当該情報から得られる利用者の出発階Fc1及び行先階Fc2が、1つの乗場呼びとして群管理制御装置104にて何れか1つの乗りかご100に割り当てられる。尚、これらの詳細について後述する。
<行先階登録装置>
行先階登録装置101Bは、乗場から乗りかご100を呼んだり、行先階Fc2を変更したりする際に用いられる登録装置である。そして、行先階登録装置101Bには、利用者が所持する記録媒体Qから情報を読み取る読取装置1Bと、利用者が乗車すべき乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)などを表示する表示装置2Bと、が設けられている。読取装置1Bによる記録媒体Qの読取り方法は、上述した読取装置1Aと同様である。
本実施形態では、行先階登録装置101Bとして、特定階Fpの乗場に行先階登録装置101Bpが設置され、一般階Fqの乗場に行先階登録装置101Bqが設置されている。行先階登録装置101Bpは、規制装置101Aの通過時に割り当てられた乗りかご100に乗り遅れた場合において利用者が再び乗りかご100を呼ぶ場合や、利用者が行先階Fc2を変更する場合などに用いられる。また、行先階登録装置101Bqは、利用者が一般階Fqから乗りかご100を呼ぶ場合に用いられる。
読取装置1Bで読み取られた識別情報Piは、セキュリティサーバ102において、行先階登録装置101Bの利用を利用者に対して許可するか否かの判断を行うための認証などに用いられる。そこで、行先階登録装置101Bは、読取装置1Bが識別情報Piを読み取った場合、その識別情報Piをセキュリティサーバ102に送信する(図1参照)。このとき、行先階登録装置101Bは、識別情報Piの送信元である自身の位置をセキュリティサーバ102に認識させるために、自身の装置情報Pdを、識別情報Piと共にセキュリティサーバ102に送信する。尚、行先階登録装置101Bは、装置情報Pdとして、自身に設けられている読取装置1B(即ち、識別情報Piを読み取った読取装置1B)の装置情報をセキュリティサーバ102に送信してもよい。
そして本実施形態では、規制装置101Aの読取装置1Aで識別情報Piが読み取られた場合だけでなく、行先階登録装置101Bの読取装置1Bで識別情報Piが読み取られた場合においても、その識別情報Piに対するセキュリティサーバ102での認証が成功した場合には、その後の利用者の操作を何ら必要とせずに自動的に、認証された識別情報Piに対応付けられている情報(即ち、呼び登録に必要な情報)がセキュリティサーバ102から群管理制御装置104に送信され、当該情報から得られる利用者の出発階Fc1及び行先階Fc2が、1つの乗場呼びとして群管理制御装置104にて何れか1つの乗りかご100に割り当てられる。
尚、行先階登録装置101Bは、利用者が手動で行先階Fc2を入力して乗りかご100を呼ぶものに適宜変更されてもよい。その場合、表示装置2Bには、タッチパネルなどの操作機能が持った表示装置が用いられる。そして、読取装置1Bで読み取られた識別情報Piに対するセキュリティサーバ102での認証が成功した場合、群管理制御装置104からの指令により、行先階登録装置101Bでの行先階Fc2の入力(表示装置2Bの画面操作など)が許可される。そして、行先階登録装置101Bにて行先階Fc2が入力された場合、当該行先階Fc2が、行先階登録装置101Bから群管理制御装置104へ送信されることにより、群管理制御装置104での呼び登録(割当て)に用いられる。
<セキュリティサーバ>
セキュリティサーバ102は、高いセキュリティを維持するべく、規制装置101A及び行先階登録装置101Bから送信されてくる識別情報Piの認証を行い、認証に成功した場合にのみ、規制装置101Aの通行や行先階登録装置101Bの利用を利用者に対して許可すると共に、その利用者を対象とした呼び登録に必要な情報を群管理制御装置104に送信する(認証処理)。以下、認証処理の詳細について説明する。
図3は、セキュリティサーバ102で実行される認証処理を示したフローチャートである。認証処理は、セキュリティサーバ102が規制装置101A又は行先階登録装置101Bから識別情報Piを受信した場合に開始される。認証処理が開始されると、セキュリティサーバ102は、受信した識別情報Piの認証を行う(ステップS101)。
セキュリティサーバ102は、ステップS101にて識別情報Piの認証に成功した場合、その識別情報Piの送信元である装置(規制装置101A又は行先階登録装置101B)を、識別情報Piと共に送信されてきた装置情報Pdに基づいて特定する(ステップS102)。
具体的には、セキュリティサーバ102は、装置管理データD1を有している。図4(A)は、本実施形態で用いられる装置管理データD1の一例を示した概念図である。装置管理データD1では、装置情報Pdごとに、当該装置情報Pdで識別される装置(規制装置101A及び行先階登録装置101B)への情報送信に使用される装置アドレスPa(IPアドレスなど)と、その装置の種類を特定するための属性情報Pb(即ち、規制装置101A及び行先階登録装置101Bのどちらであるのかを特定するための情報)と、装置情報Pdで識別される装置の設置階Fsと、が対応付けられている。図4(A)では、属性情報Pbとして、規制装置101Aと行先階登録装置101Bとを区別するために、それぞれに対応させて「0」と「1」とが用いられている。
そして、セキュリティサーバ102は、受信した装置情報Pdに対応する装置アドレスPa及び属性情報Pbを装置管理データD1から読み出すことにより、識別情報Piの送信元である装置(規制装置101A又は行先階登録装置101B)を特定する。このとき、属性情報Pbは、識別情報Piが規制装置101A(読取装置1A)及び行先階登録装置101B(読取装置1B)のどちらで読み取られたのか(即ち、どの種類の装置で読み取られたのか)を特定するために用いられる。
ステップS102の後、セキュリティサーバ102は、ステップS102にて装置管理データD1から読み出した属性情報Pbが、規制装置101Aに対応したもの(Pb=0)であるのか、それとも行先階登録装置101Bに対応したもの(Pb=1)であるのかを判断する(ステップS103)。
セキュリティサーバ102は、ステップS103にて「規制装置101Aに対応したもの(Pb=0)である」と判断した場合、ステップS102で装置管理データD1から読み出した装置アドレスPaで特定される規制装置101Aの動作を制御することにより、当該規制装置101Aの通行を利用者に対して許可する(ステップS104)。その後、ステップS105へ移行する。一方、セキュリティサーバ102は、ステップS103にて「行先階登録装置101Bに対応したもの(Pb=1)である」と判断した場合、本実施形態では行先階登録装置101Bに対して何もせずに、ステップS105へ移行する。
ステップS105では、セキュリティサーバ102は、ステップS101での認証に成功した識別情報Pi(本実施形態では、規制装置101Aの通行や行先階登録装置101Bの利用が許可された利用者の識別情報Pi)に対応付けられている情報(即ち、呼び登録に必要な情報)を群管理制御装置104に送信する。具体的には、セキュリティサーバ102は、特定階Fp又は一般階Fqにて読取装置1A又は1Bが読み取った識別情報Piのうちの認証に成功した識別情報Piごとに、呼び登録に必要な情報を群管理制御装置104に送信する。
より具体的には、セキュリティサーバ102は、上述した装置管理データD1に加えて、対応管理データD2を更に有している。そして、セキュリティサーバ102は、群管理制御装置104での呼び登録に必要な情報を、装置管理データD1及び対応管理データD2から読み出す。
図4(B)は、対応管理データD2の一例を示した概念図である。対応管理データD2では、記録媒体Qの識別情報Piごとに、その識別情報Piで識別される利用者に許可する降車階として初期設定された初期設定階Fdが対応付けられている。また、対応管理データD2では、識別情報Piの漏洩を防止するべく、記録媒体Qの識別情報Piごとに、その識別情報Piに1対1で対応する管理情報Pj(例えば、ICカードに付される通し番号のようなもの)が対応付けられている。
そして、セキュリティサーバ102は、ステップS101での認証に成功した識別情報Piに対応付けられている管理情報Pj及び初期設定階Fdを対応管理データD2から読み出す。また、群管理制御装置104は、ステップS101での認証に成功した識別情報Piと共に規制装置101Aから送信されてきた装置情報Pdを用いて、当該装置情報Pdに対応付けられている設置階Fsを装置管理データD1から読み出す。
その後、セキュリティサーバ102は、読み出した情報(管理情報Pj、初期設定階Fd、及び設置階Fs)を群管理制御装置104に送信する(図1参照)。このとき、セキュリティサーバ102は、ステップS102で読み出した装置アドレスPa及び属性情報Pbも群管理制御装置104に送信する。尚、セキュリティサーバ102に代わって、上述した装置管理データD1及び対応管理データD2内のデータの少なくとも一部が、群管理制御装置104で管理されてもよい。この場合、群管理制御装置104が、呼び登録に必要な情報の少なくとも一部を、自身が管理するデータから読み出すことになる。
セキュリティサーバ102は、ステップS101にて識別情報Piの認証に失敗した場合、認証に成功した場合(ステップS102)と同様の方法で、その識別情報Piの送信元である装置(規制装置101A又は行先階登録装置101B)を、識別情報Piと共に送信されてきた装置情報Pdに基づいて特定する(ステップS106)。
ステップS106の後、セキュリティサーバ102は、ステップS103と同様に、ステップS106で装置管理データD1から読み出した属性情報Pbが、規制装置101Aに対応したもの(Pb=0)であるのか、それとも行先階登録装置101Bに対応したもの(Pb=1)であるのかを判断する(ステップS107)。
セキュリティサーバ102は、ステップS107にて「規制装置101Aに対応したもの(Pb=0)である」と判断した場合、ステップS106で装置管理データD1から読み出した装置アドレスPaで特定される規制装置101Aの動作を制御することにより、当該規制装置101Aにおける利用者の通行を規制(具体的には、禁止)する(ステップS108)。
一方、セキュリティサーバ102は、ステップS107にて「行先階登録装置101Bに対応したもの(Pb=1)である」と判断した場合、ステップS106で装置管理データD1から読み出した装置アドレスPaに、行先階登録装置101Bの利用を許可しない不許可信号を送信する(ステップS109)。そして、行先階登録装置101Bqが不許可信号を受信した場合、当該行先階登録装置101Bqは、例えば、許可できない旨を利用者に通知する。
このような認証処理は、セキュリティサーバ102内に回路を構築することによってハードウェアで構成された処理部で実行されてもよいし、セキュリティサーバ102が備えるCPU等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成された処理部で実行されてもよい。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものがセキュリティサーバ102の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置103は、乗りかご100に1つずつ対応させて設けられており、自身に対応する乗りかご100の動作を制御する。そして、エレベータ制御装置103は、群管理制御装置104によって一元的に管理及び制御される。
<群管理制御装置>
群管理制御装置104は、セキュリティサーバ102から情報(管理情報Pj、初期設定階Fd、設置階Fs、装置アドレスPa、及び属性情報Pb)を受信するごとに、受信した当該情報(以下、「受信情報Pr」と称す)に基づいて呼び登録を行う(呼び登録処理。図5参照)。以下、呼び登録処理の概要について説明する。尚、呼び登録処理の詳細については後述する。
呼び登録処理では、群管理制御装置104は、受信情報Pr内の設置階Fsを、利用者が乗りかご100に乗車する出発階Fc1として用い、受信情報Pr内の初期設定階Fdを、利用者が乗りかご100から降車する行先階Fc2として用いる。そして、群管理制御装置104は、出発階Fc1及び行先階Fc2を、1つの乗場呼びとして何れか1つの乗りかご100に割り当てる。その後、群管理制御装置104は、割り当てた乗りかご100を識別する情報(乗りかご情報Pg)を、受信情報Pr内の装置アドレスPaで特定される規制装置101A(表示装置2A)又は行先階登録装置101B(表示装置2B)に表示させる。これにより、利用者は、表示装置2A又は2Bに表示された乗りかご情報Pgを確認することにより、自身が乗車すべき乗りかご100を認識できる。
従来、規制装置101Aの通行が許可される場面及び行先階登録装置101Bから乗りかご100が呼ばれる場面の何れにおいても、乗場呼びと利用者とが1対1で対応していることを前提として、乗りかご100への割当てが行われていた。しかし、行先階登録装置101Bから乗りかご100が呼ばれる場面においては、上記前提が成立しない状況が生じ得る。
そこで本実施形態では、呼び登録処理として、乗場呼びと利用者とが必ずしも1対1で対応するとは言えない状況下であっても高い輸送効率を維持できる処理が、群管理制御装置104にて実行される。
このような呼び登録処理は、群管理制御装置104内に回路を構築することによってハードウェアで構成された処理部で実行されてもよいし、群管理制御装置104が備えるCPU等の処理装置にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成された処理部で実行されてもよい。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で記憶されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、ダウンロードされたものが群管理制御装置104の記憶部(不図示)に記憶されてもよい。
[2]制御システムで実行される制御処理
<呼び登録処理>
図5は、群管理制御装置104で実行される呼び登録処理を示したフローチャートである。呼び登録処理は、エレベータの運行開始に伴って開始され、エレベータの運行中は群管理制御装置104にて繰り返し実行される。
呼び登録処理が開始されると、群管理制御装置104は先ず、変数N(X,Y,Z)及びC(Y,Z)を全て「0」にリセットする(ステップS201)。ここで、変数Xは、乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)が代入される変数であり、変数Yは、出発階Fc1が代入される変数であり、変数Zは、行先階Fc2が代入される変数である。変数N(X,Y,Z)は、変数Xに代入された乗りかご情報Pgで識別される乗りかご100に乗車する利用者のうちの、変数Yに代入された出発階Fc1で乗車し、且つ、変数Zに代入された行先階Fc2で降車する利用者の予測人数を表すための変数である。変数C(Y,Z)は、変数Y及びZにそれぞれ代入された出発階Fc1及び行先階Fc2が乗場呼びとして割り当てられた乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)を特定するための変数である。
ステップS201の後、群管理制御装置104は、セキュリティサーバ102での識別情報Piの認証が成功するごとに当該セキュリティサーバ102から送信されてくる情報(管理情報Pj、初期設定階Fd、設置階Fs、装置アドレスPa、及び属性情報Pb)を受信したか否かを判断する(ステップS202)。そして、群管理制御装置104は、ステップS202にて「受信した(Yes)」と判断できるまで、ステップS202を繰り返し実行する。
群管理制御装置104は、ステップS202にて「受信した(Yes)」と判断した場合、受信情報Pr内の設置階Fsを出発階Fc1として変数Yに代入し、受信情報Pr内の初期設定階Fdを行先階Fc2として変数Zに代入する(ステップS203)。
その後、群管理制御装置104は、認証に成功した利用者が特定階Fp及び一般階Fqのどちらから乗車しようとしているのかを判断するべく、変数Yに代入されている出発階Fc1が特定階Fpであるか否かを判断する(ステップS204)。ここで、変数Yに代入されている出発階Fc1は、受信情報Pr内の設置階Fsであり、認証に成功した利用者の識別情報Piが読み取られた階(即ち、当該利用者が乗車しようとしている階)である。従って、群管理制御装置104は、ステップS204にて「特定階Fpである(No)」と判断した場合には、その判断を以て、利用者は特定階Fpから乗車しようとしていると判断できる。また、群管理制御装置104は、ステップS204にて「特定階Fpでない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、利用者が一般階Fqから乗車しようとしていると判断できる。
特定階Fpでは、利用者は、乗りかご100に乗車するために必ず規制装置101Aを通過しなければならない。また、規制装置101Aの通過後に行先階登録装置101Bpを利用する利用者がいたとしても、行先階登録装置101Bpの利用が必要になるのは、乗りかご100に乗り遅れた場合や行先階Fc2を変更する場合であるので、その数はそれほど多くはないと考えられる。このため、特定階Fpにて規制装置101Aの通行が利用者に対して許可されるごと、更には利用者が行先階登録装置101Bpを用いて乗りかご100を呼ぶ(行先階Fc2の変更を含む)ごとに、当該利用者の乗場呼びを乗りかご100に割り当てつつ、割当数をカウントしてカウント後の割当数を利用者の予測人数としたとしても、当該予測人数と実際の乗車人数との間には隔たりが生じにくい。
そこで、群管理制御装置104は、ステップS204にて「特定階Fpである(Yes)」と判断した場合には、変数Y及びZにそれぞれ代入されている出発階Fc1及び行先階Fc2を1つの乗場呼びとし、当該乗場呼びを、輸送効率などを考慮して何れか1つの乗りかご100に割り当てる(ステップS205)。そして、群管理制御装置104は、割当て対象になった乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)を変数Xに代入する。
その後、群管理制御装置104は、ステップS205及びS203にて値が代入された変数X〜Zに対する変数N(X,Y,Z)に「1」を加算する(ステップS206)。即ち、群管理制御装置104は、出発階Fc1及び行先階Fc2が同じである乗場呼びの、同じ乗りかご100への割当数をカウントすることにより、変数N(X,Y,Z)(即ち、予測人数)を更新する。
このように、ステップS204〜S206の一連の処理によれば、特定階Fpにて規制装置101Aの通行が利用者に対して許可されるごとに、当該利用者の乗場呼びが何れか1つの乗りかご100に割り当てられると共に、同じ特定階Fpにて同じ乗りかご100に乗車する利用者の予測人数(変数N(X,Y,Z))が、同じ乗りかご100への乗場呼びの割当数をカウントすることによって更新される。これにより、特定階Fpからの利用者の乗車人数が精度良く予測され、その結果として、効率の良い割当てを実現することが可能になる。
その後、群管理制御装置104は、受信情報Pr内の装置アドレスPaで特定される装置(規制装置101A又は行先階登録装置101Bp)へ、その装置の表示装置(表示装置2A又は2B)に表示させる情報(表示情報)として、管理情報Pj、行先階Fc2(=初期設定階Fd)、及び乗りかご情報Pgを送信し(ステップS207)、その後、ステップS211へ移行する。そして、表示装置2A及び2Bは、表示情報を受信した場合に当該表示情報(管理情報Pj、行先階Fc2、及び乗りかご情報Pg)を画面に表示する。これにより、利用者は、規制装置101Aの通行が許可されて当該規制装置101Aを通過する際や、行先階登録装置101Bpを用いて乗りかご100を呼んだ際に、表示装置に表示された乗りかご情報Pgを見ることにより、自身が乗車すべき乗りかご100を認識できる。
一方、一般階Fqでは、利用者は、乗りかご100に乗車するために行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼ぶ必要があるが、必ずしも全ての利用者が行先階登録装置101Bqを利用するとは限らず、また、1人の利用者が行先階登録装置101Bqを複数回利用するといった状況などが起こり得る。そのような状況として、例えば、
(1)複数の利用者がグループでエレベータを利用する場合において、当該グループ内の何れか1人の利用者(例えば、代表者)だけが、行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだ場合、
(2)乗場での待ち時間が長くなった場合において、当該乗場で待っている利用者が、行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を何度も呼んだ場合、
(3)悪意のある者が、悪戯で、行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだ場合、
などが想定される。
このような状況下においては、利用者が行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼ぶごとに、当該利用者の乗場呼びを乗りかご100に割り当てつつ、割当数をカウントしたのでは、カウント後の割当数(予測人数)と実際の乗車人数との間に隔たりが生じやすくなり、輸送効率の低下を招くことになる。そこで、群管理制御装置104は、ステップS204にて「特定階Fpでない(No)」と判断した場合には、同じ乗りかご100に乗車する利用者の予測人数を実際の乗車人数に一致させる又は近付けるための処理を実行する。具体的には、以下のとおりである。
群管理制御装置104は、先ず、ステップS203にて変数Y及びZに代入された値(出発階Fc1及び行先階Fc2)に対する変数C(Y,Z)について、その値が「0」であるか否かを判断する(ステップS208)。ここで、変数C(Y,Z)には、変数Y及びZにそれぞれ代入された出発階Fc1及び行先階Fc2が乗場呼びとして乗りかご100に既に割り当てられている場合には、その乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)が代入されており、出発階Fc1及び行先階Fc2が未だ乗りかご100に割り当てられていない場合には、「0」の値が代入されたままである。
従って、群管理制御装置104は、ステップS208にて「0である(Yes)」と判断した場合には、その判断を以て、ステップS203にて変数Y及びZにそれぞれ代入された出発階Fc1及び行先階Fc2(乗場呼び)は、未だ乗りかご100への割当てが行われていない乗場呼びであると判断できる。一方、群管理制御装置104は、ステップS208にて「0でない(No)」と判断した場合には、その判断を以て、ステップS203にて変数Y及びZにそれぞれ代入された出発階Fc1及び行先階Fc2(乗場呼び)は、既に乗りかご100への割当てが行われた乗場呼びと同じものであると判断できる。
そこで、群管理制御装置104は、ステップS208にて「0である(Yes)」と判断した場合には、変数Y及びZにそれぞれ代入されている出発階Fc1及び行先階Fc2を1つの乗場呼びとし、当該乗場呼びを、輸送効率などを考慮して何れか1つの乗りかご100に割り当てる(ステップS209)。そして、群管理制御装置104は、割当て対象になった乗りかご100の情報(乗りかご情報Pg)を変数Xに代入する。
その後、群管理制御装置104は、変数Xに代入された乗りかご情報Pgで識別される乗りかご100に乗車する利用者のうちの、変数Yに代入された出発階Fc1で乗車し、且つ、変数Zに代入された行先階Fc2で降車する利用者の予測人数を、過去の履歴に基づいて算出する(ステップS210)。即ち、群管理制御装置104は、同じ一般階Fqにて同じ乗りかご100に乗車し、且つ同じ行先階Fc2で降車する利用者の予測人数を、過去の履歴に基づいて算出する。そして、群管理制御装置104は、算出した予測人数を変数N(X,Y,Z)に代入する。
具体的には、群管理制御装置104は、単位時間あたりの利用者の発生率Rq(X,Y,Z)を用いて予測人数を算出する。より具体的には、群管理制御装置104は、ステップS209にて変数Xに代入された乗りかご情報Pgで識別される乗りかご100の動作情報として、ステップS203で変数Zに代入された行先階Fc2に到着する予定時刻Taを取得する。そして群管理制御装置104は、取得した予定時刻Taまでの現在時刻Tからの時間間隔ΔT(=Ta−T)を算出する。ここで、現在時刻Tは、利用者が行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだ時刻であり、そのような時刻として適切なものであれば、ステップS202にてセキュリティサーバ102から情報を受信した時刻や、ステップS209の処理を開始した時刻などであってもよい。そして、群管理制御装置104は、算出した時間間隔ΔTを発生率Rq(X,Y,Z)に乗算することにより、予測人数を算出し、これを変数N(X,Y,Z)に代入する(N=Rq×ΔT)。
ここで、発生率Rq(X,Y,Z)は、変数Xに代入された乗りかご情報Pgで識別される乗りかご100において、変数Yに代入された出発階Fc1で乗車し、且つ、変数Zに代入された行先階Fc2で降車する利用者が生じる割合であり、当該乗りかご100の過去の運行履歴に基づいて算出される。一例として、発生率Rq(X,Y,Z)は、後述するステップS212にて変数N(X,Y,Z)がリセットされてから、変数X(=乗りかご情報Pg)で識別される乗りかご100において、変数Y(=出発階Fc1)で乗車し、且つ、変数Z(=行先階Fc2)で降車する利用者が最初に生じるまでの時間間隔ΔTqの逆数で求められる(Rq=1/ΔTq)。
また、発生率Rq(X,Y,Z)は、過去の運行履歴のうちの、現在時刻Tから見て直前のもの(例えば、直前の5分間の履歴)を用いて算出されてもよい。このように時間的に近い運行履歴は、現在の運行履歴と殆ど同じものになりやすいと推測できる。従って、直前の運行履歴が用いられることにより、現在と殆ど同じ利用状況下での発生率Rqを用いて乗車人数を予測することが可能になる。
尚、発生率Rqには、ステップS210の実行ごとに過去の運行履歴から算出されたものが用いられてもよいし、予め算出されて記憶部(不図示)などに記憶されていたものが用いられてもよい。また、発生率Rqの算出方法は、上述した方法に特に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。更に、発生率Rqは、乗りかご100ごとに算出されるものに限らず、全ての乗りかご100に共通するものとして算出されてもよい。
ステップS210の後、群管理制御装置104は、受信情報Pr内の装置アドレスPaで特定される行先階登録装置101Bqへ、当該行先階登録装置101Bqの当該表示装置2Bに表示させる情報(表示情報)として、管理情報Pj、行先階Fc2(=初期設定階Fd)、及び乗りかご情報Pgを送信し(ステップS207)、その後、ステップS211へ移行する。そして、表示装置2Bは、表示情報を受信した場合に当該表示情報(管理情報Pj、行先階Fc2、及び乗りかご情報Pg)を画面に表示する。これにより、利用者は、行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだ際に、表示装置2Bに表示された乗りかご情報Pgを見ることにより、自身が乗車すべき乗りかご100を認識できる。
一方、群管理制御装置104は、ステップS208にて「0でない(No)」と判断した場合には、ステップS203にて変数Y及びZにそれぞれ代入された出発階Fc1及び行先階Fc2(乗場呼び)と同じ乗場呼びが既に乗りかご100に割り当てられていると判断できる。また、その場合には、同じ一般階Fqにて同じ乗りかご100に乗車し、且つ同じ行先階Fc2で降車する利用者の予測人数が、既にステップS210において算出された後であるので、それ以上は当該予測人数を更新しなくてもよい。
そこで、群管理制御装置104は、ステップS208にて「0でない(No)」と判断した場合には、ステップS209(乗りかご100への割当て)及びステップS210(予測人数の算出)を何れも行わずに、ステップS211へ移行する。即ち、群管理制御装置104は、ステップS210での予測人数の算出後、後述するステップS212にて当該予測人数をリセットするまでは、同じ一般階Fqにて利用者が同じ行先階Fc2へ移動するために行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだとしても、当該利用者の乗場呼びについての乗りかご100への割当て及び予測人数の更新は何れも行わない。
このように、ステップS204〜S210の一連の処理によれば、一般階Fqにて利用者が行先階登録装置101Bqを用いて乗りかご100を呼んだ場合において、当該利用者が、予測人数のリセット後(即ち、ステップS201又はS212での変数(N,X,Y)のリセット後)における当該一般階Fqでの最初の利用者であった場合には、当該利用者の乗場呼びが何れか1つの乗りかご100に割り当てられると共に、同じ一般階Fqにて同じ乗りかご100に乗車する利用者の予測人数(変数N(X,Y,Z))が、過去の履歴に基づいて算出される。これにより、一般階Fqからの利用者の乗車人数が精度良く予測され、その結果として、上述した(1)〜(3)の状況下で生じ得る不要な割当てを排除することが可能になる。
ステップS207の実行後、又はステップS208にて群管理制御装置104が「0でない(No)」と判断した場合には、群管理制御装置104は、ステップS211において、何れかの階から乗りかご100が出発したか否かを判断する。尚、ステップS211では、群管理制御装置104は、乗りかご100が出発したか否かを判断することに代えて、出発するための乗りかご100の戸閉が完了したか否かを判断してもよい。
そして、群管理制御装置104は、ステップS211にて「出発した(Yes)」と判断した場合には、リセット処理を実行する(ステップS212)。具体的には、群管理制御装置104は、出発した乗りかご100の情報として出発階Fct及び乗りかご情報Pgtを取得し、当該乗りかご100に関連する変数N(X=Pgt,Y=Fct,Z)のうちの、変数Zが出発階Fctからの当該乗りかご100の行先方向と同じ方向にあるものを全てリセットする。また、群管理制御装置104は、上記出発した乗りかご100の関連する変数C(Y=Fct,Z)のうちの、変数Zが出発階Fctからの上記行先方向と同じ方向にあるものを全てリセットする。これにより、出発階Fctから出発した乗りかご100(乗りかご情報Pgt)について、ステップS210にて新たに出発階Fctからの乗車人数を予測することが可能になる。その後、群管理制御装置104は、ステップS202へ戻って、当該ステップS202からの処理を再び実行する。
一方、群管理制御装置104は、ステップS211にて「出発していない(No)」と判断した場合には、ステップS212を実行せずにステップS202へ戻る。
上述したように、本実施形態の呼び登録処理によれば、特定階Fpからの乗車人数及び一般階Fqからの乗車人数が何れも精度良く予測され、その結果として、効率の良い割当てを実現し、且つ、上述した(1)〜(3)の状況下で生じ得る不要な割当てを排除することが可能になる。よって、乗場呼びと利用者とが必ずしも1対1で対応するとは言えない状況下であっても高い輸送効率を維持できる。
[3]変形例
[3−1]第1変形例
上述した呼び登録処理において、利用者の予測人数(変数N)は、1つの出発階Fc1に対して異なる行先階Fc2ごとに算出される場合に限らず、異なる行先階Fc2に対して纏めて1つの予測人数(変数N(X,Y))が算出されてもよい。
[3−2]他の変形例
上述した呼び登録処理は、特定階Fpが1つである場合に限らず、特定階Fpが複数ある場合にも、必要に応じた変更を適宜行うことで適用できる。
上述した呼び登録処理は、乗りかご100が3つ、規制装置101Aが特定階Fpに2つ、行先階登録装置101Bが各階に1つずつ設けられたエレベータに限らず、それらの数が1又は複数に適宜変更されたエレベータにも適用できる。また、乗りかご100を1つだけ備えたエレベータにおいては、呼び登録処理は、エレベータ制御装置103で実行されてもよい。
上述したエレベータの全体構成は、セキュリティサーバ102を設けずに、規制装置101A及び行先階登録装置101Bで識別情報Piの認証を行うものや、群管理制御装置104で識別情報Piの認証を行うものに変形されてもよい。この場合、管理情報Pjを用いずに識別情報Piでエレベータの制御が行われてもよい。
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態及び変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
尚、上述の実施形態及び変形例からは、発明の対象として、呼び登録処理を実行する制御装置に限らず、当該呼び登録処理の一部などが部分的に抽出されてもよい。