JP6980413B2 - 保湿性向上方法、化粧料用保湿性材料及び保湿性化粧料 - Google Patents
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従って、皮膚の保湿性を保持するための化粧料の開発は、化粧品業界で主要な課題であり、これまでも種々の研究がなされてきた。
しかし、ポリオール等の保湿成分を高配合すると、塗布時の皮膚への馴染み感が悪く、塗布後のべたつき感が高まる等、使用感に劣ってしまうという問題がある。
また、本発明の他の目的は、ポリオールのみ、またはポリオールと海洋深層水以外の水、例えば精製水等とを組み合わせた場合よりも、皮膚の保湿性が向上する化粧料用保湿性材料及び当該化粧料用保湿性材料を含む保湿性化粧料を提供することである。
請求項1記載の保湿性向上方法は、海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用することを特徴とする、保湿性向上方法である。
特に、海洋深層水、好ましくはイオン選択処理された海洋深層水をポリオールと特定の重量比で併用することで、ポリオールそのもの、またポリオールと精製水(海洋深層水以外の水)等とを併用した場合と比較して、角層水分量を相乗的に高めることができ、保湿性を向上することができる。
さらに、海洋深層水とポリオールとを特定の重量比で併用することで、柔らかく、肌なじみの良い独特な感触が生まれるため、前記化粧料用保湿性材料を使用した本発明の保湿性化粧料は優れた感触であるとともに、保湿性が向上するため、皮膚のしっとり感をもたらし、肌荒れ改善や肌荒れ防止に有効な効果が期待できる。
本発明の保湿性向上方法は、海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用することにより、保湿性を向上させる方法である。
また、本発明の化粧料用保湿性材料は、海洋深層水とポリオールとの併用材料であり、海洋深層水とポリオールとが重量比率で9:1〜3:7であって、海洋深層水を全体の30重量%以上で含有する化粧料用保湿性材料であり、また本発明の保湿性化粧料は、前記化粧料用保湿性材料を含む化粧料である。
海洋深層水を採水するための取水地としては、静岡県伊東市(伊豆赤沢)を始め、現在9都道県で、15の取水施設が有り(海洋深層水利用学会HP調べ、2017年2月現在)、これらの取水地から採水される海洋深層水のいずれも本発明の適用の対象とすることができ、また前記取水地以外で採水した海洋深層水を用いることも可能である。
また、海洋深層水原水をイオン選択処理する公知の方法であれば他の任意の方法も適用することができる。
更に、特開2000−159655号公報に開示されているように、海洋深層水を逆浸透膜装置(東洋紡株式会社製、HR5155)で脱塩処理した後、電気透析装置(旭ガラス株式会社製、セレミオンCMV、セレミオンASV)によって脱塩処理する方法を適用してもよく、また、特開2010−274214号公報に記載されているような逆浸透膜法で脱塩処理する方法を適用してもよい。
かかるイオン選択処理された海洋深層水のミネラル分の組成が、ポリオールとの併用により皮膚の角層の水分保持量を高め、保湿性を向上させるために特に有効に機能するため、イオン選択処理された海洋深層水を好適に用いる。
なお、一般に、天然にがりは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:2〜25:0〜1:1〜5:10〜50程度であり、天然にがりを用いた水溶液と、イオン選択処理した海洋深層水とはミネラル分の組成が大きく異なり、にがりを用いた水溶液は適用することは望ましくない。
スキンコンダクタンスは値が大きいほど保湿性が高いことを意味し、その測定方法は、スキンコンダクタンスが測定できれば任意の機器を用いることができ、例えば、スキコン(SKICON−200、アイ・ビイ・エス株式会社製)が例示できる。
海洋深層水と上記ポリオールとを重量比率で9:1〜3:7、好ましくは、9:1〜4:6で含有するものであれば、他に精製水を含有していても特に問題はないが、化粧料用保湿性材料中、海洋深層水は、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上含むものが望ましく、また、精製水を含まず、海洋深層水とポリオールとからなる化粧料用保湿性材料であってもよい。
(使用EDミネラル水)
海洋深層水として、伊豆赤沢沖の水深800m程度からくみ上げられた海洋深層水(伊豆赤沢産)を、以下の方法でイオン選択処理した海洋深層水の電気透析水(海洋深層水(EDミネラル水))を用いた(電気伝導度は12.5mS/cm)。
具体的には、電気透析装置「アストム株式会社製、アシライザー25型 100対×3段連続式(海水脱塩仕様)」を用いて、伊豆赤沢産の海洋深層水を電気透析法(イオン交換膜法)によりイオン交換膜を用いて直流電流を負荷することにより、海洋深層水原水中にあるイオン性物質の脱塩・濃縮を行なって、脱塩処理をして、イオン処理した海洋深層水(EDミネラル水)を得た。
かかる海洋深層水(EDミネラル水)は、下記表2に示す成分組成を有する。
海洋深層水中のK、Na、Ca、Mgのイオン含有量はマルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、Cl含有量は高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)、精製水及びグリセリン(新日本理化株式会社製)を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表3の組成の実施例1及び比較例1〜3の化粧料用保湿性材料試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
比較例1.100%海洋深層水(EDミネラル水)
比較例2.100%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例1.10%グリセリン+90%海洋深層水(EDミネラル水)
比較例3.10%グリセリン+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
まず被験者の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
なお、上記保湿性評価試験を被験者7名に実施して、その平均の結果を図1に示す。
また、上記未塗布の場合も同じ被験者7名の平均の結果を図1に示す。
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)又は精製水と、種々のポリオールとを組み合わせた試験液を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表4の組成の実施例2〜5及び比較例4〜7の化粧料用保湿性材料試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
実施例2.10%ブチレングリコール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例4.10%ブチレングリコール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例3.10%プロパンジオール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例5. 10%プロパンジオール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例4.10%ジプロピレングリコール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例6.10%ジプロピレングリコール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例5. 10%ソルビトール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例7. 10%ソルビトール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
まず被験者の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
なお、上記保湿性評価試験を被験者6名に実施して、その平均の結果を図2に示す。
また、上記未塗布の場合も同じ被験者6名の平均の結果を図2に示す。
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)の濃度を種々変化させて、10%グリセリンと併用し、更に必要に応じ精製水を併用した化粧料用保湿性材料試験液を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表5の組成の実施例6〜10及び比較例8〜10の試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
比較例8.10%グリセリン+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
比較例9.10%グリセリン+10%海洋深層水(EDミネラル水)+80%精製水(電気伝導度0mS/cm)
比較例10.10%グリセリン+20%海洋深層水(EDミネラル水)+70%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例6.10%グリセリン+30%海洋深層水(EDミネラル水)+60%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例7.10%グリセリン+50%海洋深層水(EDミネラル水)+40%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例8.10%グリセリン+70%海洋深層水(EDミネラル水)+20%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例9.10%グリセリン+80%海洋深層水(EDミネラル水)+10%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例10.10%グリセリン+90%海洋深層水(EDミネラル水)
まず被験者4名の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
なお、各被験者の上記未塗布のスキンコンダクタンス値を1として、30分経過後の塗布試験部位のスキンコンダクタンス値を相対値で表し、その平均の結果を表6及び図3に示す。
また、表6及び図3中の「無塗布」は、上記被験者4名の上記未塗布の状態のスキンコンダクタンス値を1とし、試験液を塗布しないで30分間、上記恒温室で安静を保持した後に、前記未塗布のスキンコンダクタンスを測定した皮膚の部位と同じ部位を測定したスキンコンダクタンス値を相対値で表わしたものである。
ヒトの皮膚に塗布した場合に、保湿性を特に有意に感じることができるのは、実施例6〜10の海洋深層水(EDミネラル水)の含有量が30重量%以上の場合であり、海洋深層水(EDミネラル水)濃度が高いものとポリオールとを併用することで、保湿性効果が高まることが明らかとなった。
Claims (5)
- 海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用し、海洋深層水は、海洋深層水原水を、逆浸透膜ろ過法、電気透析法又はイオン交換膜法によりイオン処理して、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500となるようにイオン選択処理され、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、保湿性向上方法。
- 請求項1記載の保湿性向上方法において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、保湿性向上方法。
- 海洋深層水とポリオールとの併用材料であり、海洋深層水とポリオールとが重量比率で9:1〜3:7であって、海洋深層水を全体の30重量%以上で含有し、海洋深層水は、含まれるカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500であり、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、化粧料用保湿性材料。
- 請求項3記載の化粧料用保湿性材料において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、化粧料用保湿性材料。
- 請求項3又は4の項記載の化粧料用保湿性材料を含むことを特徴とする、保湿性化粧料。
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