JP6979568B2 - モータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫 - Google Patents

モータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫 Download PDF

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Description

本発明はインバータ制御によりブラシレスDCモータを駆動するモータ駆動装置および、これを用いた冷蔵庫に関するものである。
従来この種のブラシレスDCモータの駆動装置は、PWM(Pulse Width Modulation)制御の矩形波120度通電を基本としてブラシレスDCモータを駆動し、PWM制御のオンデューティが100%となったとき通電区間を120度以上に拡張することで、高速・高負荷駆動領域を拡張している(例えば特許文献1参照)。
図9は特許文献1に記載されたモータ駆動装置を示すものである。図9に示すように、インバータ3を構成する、各スイッチング素子3aから3fが、オフからオンに移行する際、オンタイミング制御手段103により進角制御を行い、オンからオフに移行する際は、オフタイミング制御手段104で進角制御を行わないことで、オーバーラップ通電を行う。
またモータ駆動電力が目標電力値となるように導通角と進み角およびインバータ入力直流電圧を制御して高出力、高回転を可能としつつ低損失化している(例えば特許文献2参照)。図10は特許文献2に記載されたモータ駆動装置を示すものである。図10に示すようにブラシレスDCモータの駆動制御手段201は、駆動電力を検出する電力検出手段202と、インバータの駆動信号パターンの生成とインバータ入力電圧を設定する通電パルス信号生成制御手段203を有し、駆動電力が目標設定電力値に一致するように、インバータ入力電圧値と通電角および進角を制御する。
特開2006−50804号公報 特開2008−167525号公報
しかしながら上記特許文献1の構成では、スイッチング素子のターンオンを早くしてブラシレスDCモータへの電力供給区間を120度以上に広げることで高負荷・高速駆動領域を拡張することは可能であるが、低負荷・低速駆動領域でPWM制御を行うためスイッチング素子のオン/オフに伴う損失が発生する。さらにPWM制御による高周波スイッチングはモータ鉄損の増加が伴うという課題を有していた。
また、上記特許文献2に記載の構成では、ブラシレスDCモータの通電角増減による速度制御は、制御可能なタイミングは転流時(例えば4極モータでは、モータ1回転中12回)に限られる。さらに一定の通電角増減は、120度未満と120度以上の通電角における単位角度あたりのモータ電流変化量が異なるため、一律の制御周期または制御量では、ブラシレスDCモータの加速度が不均一になり、急な加速による脱調停止、緩慢な加減速による機器の共振周波数帯域の通過による振動および騒音の原因といった課題を有していた。
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、モータ駆動装置の低損失化による機器の高効率化と、低振動・低騒音化および信頼性の向上を図ることを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明のモータ駆動装置は、ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフすることで前記ブラシレスDCモータに供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線に対し電気角90度以上150度以下の範囲で電力を供給する通電相を決める通電相制御手段と、前記通電相制御手段により設定した通電相状態に応じて、前記ブラシレスDCモータを所定の速度で駆動するための前記ブラシレスDCモータの通電相に通電する電気角を制御量として調整する制御量調整部を有し、前記制御量調整部は、前記ブラシレスDCモータの電力供給状態応じて、ブラシレスDCモータの速度制御における制御量を調整するようにしている。
これにより、ブラシレスDCモータの電力供給状態、即ち通電角状態によらず、常に一定の加速度が得られるようになる。
本発明のモータ駆動装置は、インバータとブラスレスDCモータの損失低減で高効率化を図るとともに、低騒音、低振動、高信頼性を確保するものである。
本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のブロック図 (a)、(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1における各部の波形とタイミングチャート図 スイッチング素子オフタイミング調整制御開始判定フローチャート図 PWM制御からオフタイミング調整制御への移行フローチャート図 ブラシレスDCモータの速度制御を示すフローチャート図 制御量調整を示すフローチャート図 (a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれブラシレスDCモータの端子電圧波形を示す図 (a)、(b)はそれぞれブラシレスDCモータの相電流波形を示す図 特許文献1のモータ駆動装置のブロック図 特許文献2のモータ駆動装置の制御ブロック図
第1の発明は、ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフすることで前記ブラシレスDCモータに供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線に対し電気角90度以上150度以下の範囲で電力を供給する通電相を決める通電相制御手段と、前記通電相制御手段により設定した通電相状態に応じて、前記ブラシレスDCモータを所定の速度で駆動するための前記ブラシレスDCモータの通電相に通電する電気角を制御量として調整する制御量調整部を有し、前記制御量調整部は、前記ブラシレスDCモータの電力供給状態応じてブラシレスDCモータの速度制御における制御量を調整するようにしている。
これにより、高効率化を図ることができるとともに、駆動状態によらず、安定した加速性能を得ることが可能となるため、加減速時における騒音や振動の発生を抑制でき、装置の低騒音・低振動化が可能となり、その結果、信頼性を向上させることができる。
第2の発明は、特に第1の発明の制御量調整部は、前記通電相制御手段により設定した前記ブラシレスDCモータへの電力供給区間が電気角120度を境として通電する電気角が120度より大きい時の速度偏差に対する変更量が、120度以下での速度偏差に対する変更量よりも大きくなるよう制御量を切換えるようにしたものである。これにより、ブラシレスDCモータの通電角が120度以上での駆動における加速度を120度未満時の加速度と同等にすることで、ブラシレスDCモータの駆動速度が機器の共振周波数帯域通過時の振動・騒音を抑制でき、装置の低振動・低騒音化を可能とする。また、共振周波数帯域通過時の振動の抑制は、振動に起因する機器の故障防止に繋がり、信頼性の高い装置を提供することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明のモータ駆動装置により駆動されるブラシレスDCモータが、冷凍サイクルの圧縮機を駆動するものである。これにより圧縮機COPの向上と、共振による振動を抑制することで、冷凍サイクルを構成する配管の破損を防止でき、高効率・高信頼性の冷凍サイクルを提供できる。
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれか一つのモータ駆動装置により駆動される圧縮機を有する冷蔵庫である。これにより高効率高信頼性の冷凍サイクルにより、低消費電力で信頼性の高い冷蔵庫が提供できるとともに、加減速時における冷蔵庫の低振動・低騒音化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるわけではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のブロック図を示すものである。
図1において、交流電源1は一般的な商用電源であり、日本国内の場合実効値100V50Hzまたは60Hzである。コンバータ回路2は交流電源1を直流電圧に変換する。図1におけるコンバータ回路2は4個のダイオードをブリッジ接続した整流回路2aとコンデンサによる平滑回路2b、出力電圧を切換えるスイッチ部2cで構成することで、出力電圧を倍電圧整流と全波整流の2段階に切り替える構成としている。
インバータ回路3は6個のスイッチング素子3a〜3fで構成され、本実施の形態1ではMOSFETを用いる。そして、各スイッチング素子を3相ブリッジ接続し、任意のスイッチング素子のオン/オフを切り替えることで、入力直流電圧を3相交流電圧に変換する。
ブラシレスDCモータ4は3相巻線を有する固定子と永久磁石を有する回転子により構成され、インバータ回路3からの3相交流電力により駆動される。
位置検出手段5はブラシレスDCモータ4の磁極位置を検出するものであり、本発明の実施の形態1ではモータ端子電圧から、回転子の回転により固定子巻線に発生する誘起電圧の位相(ゼロクロスポイント)を検出する方式としている。ただし、ホールIC等の位置センサを用いる方法や、電流センサ等による電流検出方法等でも構わない。
速度検出手段6は位置検出手段5の出力信号からブラシレスDCモータ4の駆動速度を検出するものであり、本実施の形態1ではブラシレスDCモータ回転子の回転により固定子巻線に生じる誘起電圧のゼロクロス周期を基に算出する。
速度誤差検出回手段7は、速度検出手段6により得たブラシレスDCモータ4の駆動速度と目標速度との差を検出する。
通電相制御手段8は位置検出手段5からの信号を基に、前記ブラシレスDCモータ固定子巻線に電気角90度以上150度以下の範囲で電力を供給する相を設定する。また通電相制御手段8はスイッチング素子3a〜3fをターンオンおよびターンオフするタイミングを設定するオンタイミング制御部8aと、オフタイミング制御部8bとを有しているため、インバータ3のスイッチング素子のオン、オフのそれぞれのタイミングを個別に設定することができる。従って、通電相制御手段8は、各スイッチング素子のオン・オフタイミングを調整することで、ブラシレスDCモータ4への電力供給区間を調整し、目標速度で駆動するように速度制御を行う。
また通電相制御手段8は電力供給間の設定値(即ち、速度制御における制御量)を調整する制御量調整部8cを有している。制御量調整部8cは特に加減速時におけるスイッチング素子のオン・オフタイミング(時間)を調整するもので、その時の電力供給区間に応じて調整を行うようにしている。
PWM制御手段11は、インバータ回路3からの3相交流出力をPWM制御で出力電圧を調節し、ブラシレスDCモータ4が目標速度で駆動するように制御する。ここで『ブラシレスDCモータ巻線への電力を供給する電気角最小値の2倍から電気角120度を引いた値』を『電気角120度』で除した値より大きいPWMオン時間時比率で駆動している場合、PWM制御手段はオン時間の時比率が最大値(100%)となるようにオフタイミング制御部10はスイッチング素子のターンオフタイミングを早く行っていく。具体的には、電力供給区間の最小値90度の場合、(90度×2−120)÷120=50[%]となり、PWMオン時間比率が50%以上で駆動している場合、オン時間比率100%となるように、スイッチング素子のオフタイミングを早く行うようにしていく。
また、電力供給区間が120度、PWM制御のオン時間時比率が100%の状態で、ブラシレスDCモータの駆動速度が目標速度より遅い場合は、PWM制御のオン時間時比率100%を保ちながら、スイッチング素子のオン時間を進めていくことで、オーバーラップ通電となり駆動領域を拡張する。
ターンオフおよびオンタイミングの変更は、ブラシレスDCモータの動作状態への急激な変化を防ぐため、徐々に早めて行くことが望ましいが、1度の制御周期で行っても特に問題ない。なお、PWM制御手段11によるオン時間時比率調整でのブラシレスDCモータ4の速度制御は、先述したPWM制御のオン時間時比率以下で駆動している場合に限られるため、起動時や、低速駆動時、低負荷駆動時、および倍電圧入力時における、比較的低負荷、低速駆動時に行われる。それ以外の安定した駆動状態では、PWM制御手段11はオン時間時比率が100%となるように、通電相制御手段8によるスイッチング素子のオフおよびオンタイミングを制御してブラシレスDCモータ4への電力供給区間調整による速度制御を行う。
波形合成手段12はPWM制御手段11により生成したPWM信号と通電相制御手段8により生成した信号を合成し、合成した信号を基にドライブ手段13によりインバータ回路3の各スイッチング素子3a〜3fをオンまたはオフ状態にして、生成した任意の3相交流電圧をブラシレスDCモータ4に供給し駆動する。
圧縮要素16は、ブラシレスDCモータ4の回転子の軸に接続され、冷媒ガスを吸入し、圧縮して吐出する。このブラシレスDCモータ4と圧縮要素16とを同一の密閉容器に収納し、圧縮機17を構成する。圧縮機17で圧縮された吐出ガスは、凝縮器18、減圧器19、蒸発器20を通って圧縮機17の吸い込みに戻るような冷凍空調システムを構成し、凝縮器18では放熱、蒸発器20では吸熱を行うので、加熱や吸熱を行うことができる。
なお、必要に応じて凝縮器18や蒸発器20に送風機などを使い、熱交換をさらに促進することもある。また本実施の形態1では、冷凍空調システムは冷蔵庫21の冷凍サイクルとして用い、蒸発器20は断熱壁22で囲われた食品貯蔵室23内を冷却するために用いる。
以上のように構成されたモータ駆動装置について以下その動作と作用を説明する。
図2(a)、(b)は本発明の実施の形態1におけるモータ駆動装置のタイミングチャート図である。図2(a)は一般的な120度通電での駆動波形およびタイミング図であり、図2(b)はオフタイミング制御部8bによりスイッチング素子のオフタイミングを調整してブラシレスDCモータを駆動したときの波形とタイミングを示している。ブラシレスDCモータ4の回転により発生する誘起電圧をE、端子電圧をVuとして示している。両波形ともU相のみを示しているが、V相およびW相波形はそれぞれ位相が120度ずれた同形状の波形となっている。高圧側に接続したスイッチング素子3a、3b、3cの駆動信号をU+、V+、W+として示し、低圧側接続のスイッチング素子3d、3e、3fの駆動信号はそれぞれの高圧側SW素子の駆動信号から180度位相がずれた波形となる。
固定子巻線の通電相の切換えタイミング(図示せず)を図るために、回転子磁極相対位置検出に誘起電圧のゼロクロスポイントを位置信号として検出する。ゼロクロスポイントの検出は当該相巻線への電圧印加がされていない(図2に示すU相では、スイッチング素子3a、3dの両方がオフとなる)区間(C1、C2、C3、C4)に現れる誘起電圧とインバータ入力電圧Vdcの1/2との大小関係が反転するポイント(P1、P2)を検出する。よって電気角1周期あたり各相2回、3相合計で6回、電気角60度毎に位置信号が発生する。
図2(a)に示す120度通電におけるスイッチング素子(高圧側接続の3a、3b、3c)の通電パターン(U+、V+、W+)を見ると、位置検出後(P1)電気角30度後にW+のオフと同時にU+(スイッチング素子3a)をオンすることで、電気角360度全範囲で常に3相いずれかの巻線が通電される。一方、図2(b)では位置検出(P1)後、電気角30度経過する前にW+(スイッチング素子3c)をオフにしたのち、電気角30度後にU+をオンするようにしている。
C1〜C4区間で誘起電圧が現れるのは他相のスイッチング素子がオンしている、即ちPWMのオン期間のみである。従って、スイッチング素子のターンオフは、ターンオンより早く行い、ブラシレスDCモータへの電力供給区間を短くしている。これにより固定子巻線の電力供給区間が短くなり、PWM制御によるオン・オフ回数が少なくなるので、インバータ回路の損失が抑制できる。更に、電力供給区間を短くすることで、PWM制御のオン時間が長くなり、位置検出信号の取得可能期間が長くなるので、位置検出精度が向上することになる。
さらに、スイッチング素子をオフするタイミングは位置検出直後から、位置検出後電気角30度経過(位置検出P1に対して区間A1の範囲)後までとして、当該位置検出(P1)で確実に転流可能な範囲且つ、誘起電圧に対して進み位相となるようにして、遅れ位相によるトルク低下が発生しないように考慮している。
このようにスイッチング素子(3a〜3f)のオフタイミングを位置検出直後から30度以内とすることで、3相巻線への通電角を90度以上120度以下に調節して、電力供給休止区間(A1、A2、A3)が短いほど大きな進角B(電力無供給区間の電気角の1/2)が自動的に付加されるようになり、モータトルクが増加し電力無供給区間があるにもかかわらず脱調等無く安定した駆動が可能となる。
負荷の増加等によりスイッチング素子のオフタイミングが位置検出後30度となったときが、120度通電で駆動可能な最大負荷である。この時オフタイミングを位置検出後30度の位置に固定し、PWM制御のオン時間時比率を100%とした状態で、オンタイミングを最大30度まで進める(即ち位置検出信号取得と同時に転流)ことで150度まで通電角を広げることができ駆動可能な負荷領域を拡張できる。
次にSW素子のオン・オフタイミング調整によるブラシレスDCモータの速度制御について、フローチャートを用い、その動作を説明する。
図3はスイッチング素子のオフタイミング制御の開始を判断するフローチャート図である。図3において、まずS11において、PWM制御手段11で生成したスイッチング素子のオン時間時比率が所定値より大きくなっているかを確認し、所定値より大きい場合はS12に進みオフタイミング調整制御を開始し、所定値より小さい場合はPWM制御を行うようにする。オン時間時比率の所定値の設定は、本実施の形態1では巻線への最小電力供給区間を電気角90度としているため、{(90度×2)−120度}/120度から50%としているが、用途により適正な任意の値を選定する。
このようにスイッチング素子のオフタイミング調整制御の開始を所定のPWMオン時間時比率以上の時としてPWM制御と併用することで、起動時等の極端に駆動速度が低い場合や、低速駆動時で非常に負荷が低い場合、倍電圧入力時で比較的負荷が軽い時や低速時などで巻線への電力供給区間が極端に短くなることによる起動の失敗や不安定な運転状態、あるいは極端なトルク低下等を防止し、あらゆる負荷条件でも安定した駆動が実現できるようにしている。
図4はPWM制御からオフタイミング調整への移行を示すフローチャート図である。図3に示したフローにより、オフタイミング調整制御の開始を決定したとき、S21においてスイッチング素子のオフタイミングを任意の時間早く行い、S22でPWM制御により速度制御を行う。オフタイミングを早くすることで、ブラシレスDCモータへの電力供給区間が短くなっていくため、PWM制御によるオン時間の時比率は増加することになる。S23でPWM制御によるオン時間時比率が100未満であるときS21に戻りその動作を続ける。S23でオン時間時比率が100%に到達した時、S24に進みオン時間時比率を100%の状態を保持して、以降はS25でスイッチング素子のオフタイミングの調整でブラシレスDCモータが目標速度で駆動するように速度制御を行う。さらに、スイッチング素子のオフタイミングが位置検出後30度(即ち120度通電状態)となったときは、オンタイミングを位置検出直後から位置検出後30度までの間で調整を行うオンタイミング制御による速度制御を行うことでブラシレスDCモータの駆動領域を拡張し、目標速度で駆動する。
次にスイッチング素子のオフタイミング調整制御への移行後のブラシレスDCモータの速度制御について図1および図5を用いてその動作を説明する。
図5は本実施の形態1のスイッチング素子のオフタイミング調整制御の動作フローチャート図である。図5においてまずS31において、速度検出手段6で検出したブラシレスDCモータ4の駆動速度と目標速度との偏差を速度誤差検出手段7で検出し、目標速度より早い場合はS32に進む。S32では、PWM制御手段11でのオン時間時比率100%を保持して、オフタイミング制御部8bによりオフタイミングを早くすることが可能か否かを判断し、可能であればスイッチング素子のオフ時間を早めることで巻線への電力供給区間を減じてブラシレスDCモータの速度が低下するように速度制御を行い(S33)、不可能であればPWM制御手段11におけるPWM制御を併用する(S34)。本実施の形態1において、オフタイミングを早くすることが可能か否かの判断は、スイッチング素子のオフタイミングが位置検出直後の場合は、これ以上タイミングを早めることが出来ないと判断する。本実施の形態1では進角を0度としているので固定子巻線への最低通電角は電気角90度となる。通電角120度未満では、非通電区間の電気角に対して2倍の非電力供給区間が生じる。従って90度通電では、30度の非通電区間を有し、60度の非電力供給区間が生じる。即ち120度通電時の出力に対して50%出力が低下する。
ブラシレスDCモータの駆動速度が目標速度より遅いと判断(S35)した時S36に進み、スイッチング素子のオフが位置検出から電気角30度経過するまでに行われているかを判断する。オフタイミングが電気角30度経過より前に行われている場合S37に進みスイッチング素子のオフタイミングを遅らせて、ブラシレスDCモータ巻線への電力供給期間を増やし、駆動速度が上昇するように速度制御を行う。S36でオフスイッチング素子のオフタイミングが電気角30度経過位置である場合はS38に進む。S38ではこれ以上スイッチング素子のオフタイミングを遅らせた場合、誘起電圧に対して印加電圧位相が遅れ位相となり、モータトルク低下およびこれに伴う脱調等の可能性があるため、オンタイミングを早めることで巻線への電力供給区間を増やしてブラシレスDCモータの駆動速度が上昇するように速度制御を行う。
本発明の実施の形態1では、オンタイミングを早める上限は位置検出後直後までとして、このときの巻線への最大電力供給区間は電気角150度となり、このときブラシレスDCモータに流れる電流は17%増加することになり、最大出力も17%程度増加する。
なお、駆動速度が目標速度と等しい場合はS45にて制御を抜ける。
また、本実施の形態1では進角を0度としているため、電気角120度通電でスイッチング素子のオフタイミングとオンタイミングが位置検出後30度のタイミングで一致して行われることになる。回転子内部に永久磁石が埋め込まれたIPMモータでは、最適な駆動実現のためには適切な進角を設ける必要がある。従ってIPMモータ等、あらゆるモータを最適に駆動出来るように、スイッチング素子のオフタイミング調整範囲は、位置検出直後から、位置検出から「(電気角30度)−(進角)」まで経過した位置。スイッチング素子のオンタイミングは、位置検出タイミングから「(電気角30度)−(進角)」だけ経過したタイミング(例えば進角10度の場合、ターンオフは位置検出から電気角20度経過までの範囲で調整し、ターンオンは位置検出後電気角20度後)で行い、かつ位置検出からターンオフまでの電気角と、位置検出からターンオンまでの電気角の和を60度以下として、ターンオフをターンオンより電気角0度から30度までの任意の範囲で調整できるようにして、位置検出から電気角30度までの間で進角とオン・オフのタイミングを自由に設定可能としている。
なお、進角を付加したときの巻線の通電角は電気角で「90度+進角」から120度の範囲で調整されることになる。
さらにブラシレスDCモータ4を高速・高負荷で駆動する場合は、ターンオフタイミングを位置検出から「(電気角30度)−(進角)」経過したタイミングとして、ターンオンタイミングを位置検出直後から、位置検出から「電気角30度−進角」だけ経過したタイミングの範囲で調整することで巻線への通電角を電気角120度から「電気角150−進角」の範囲で調整できる。
従って、スイッチング素子のターンオン、ターンオフタイミングの調整により電気角90度から150度までの範囲(進角0度の時)でブラシレスDCモータへの通電角調整で電力供給を調整できることになり、低速・低負荷の駆動から高速・高負荷の駆動まで幅広い負荷・速度状態での駆動に対応可能である。
ここでブラシレスDCモータの加減速時について考える。前述したように通電角120度に対して、30度減じた90度通電では出力電力は50%となり、30度増加した150度通電では17%程度の出力増加となる。つまり、単位通電角あたりの出力電力の増減量が120度通電を境に異なるため、同一レートで通電角を増減した場合、通電角120度以上での加速度は、通電角120度未満時の1/3程度になる。
モータ駆動装置を利用する機器において、固有の共振周波数でのブラシレスDCモータの駆動は、振動および騒音の増大や、その増大された振動が原因となる機器故障原因となる懸念が生じるため、避けることが一般的である。よって、加速度の低下は、共振周波数帯を通過する時間が長くなるため、振動および騒音発生の原因となりうるし、頻繁に共振周波数帯を通過する加減速が多い場合、その振動による機器の故障の原因に繋がりかねない。
従って本実施の形態1では、速度制御におけるスイッチング素子のオン・オフタイミングの変化量を、通電角に応じて補正することで、一定の加減速性能を確保出来るようにしている。
図6は本実施の形態1における制御量の調整を示すフローチャート図である。図6においてS41は図5に示すフローチャート内容で、通電相制御手段8におけるスイッチング素子のオンおよびオフタイミングを設定する。S42では設定したスイッチング素子のオンおよびオフタイミングから、通電角が120度以上かどうかを判断し、判断結果に基づいてS43またはS44で電力供給増減レートを選択する。本実施の形態1では、通電角120度以上では、120度未満時に増減する通電角の3倍の通電角を増加するようにしている。例えば、加減速時において120度未満の通電角時では、1制御周期あたり0.1度の通電角を増減するのに対して、120度以上の場合は1制御周期あたり0.3度通電角を増減するようにして、駆動状態によらず、ほぼ一定の加減速性能が得られるようにしている。
次に本実施の形態1におけるブラシレスDCモータの端子電圧について図7を用いて説明する。図7(a)および(b)は図2(a)における区間C1、F1を示し、図7(c)および(d)は図2(b)における区間C3,F2を示している。
図7(a)、(b)に示すように120度通電のPWM制御での波形を示す図2(a)は高周波のPWMキャリア周波数成分(周期f)が重畳されている。また図7(a)に示すようにC1区間では、PWMがオンした瞬間にモータ巻線や浮遊容量等の影響によるリンギングノイズ成分も重畳する。C1区間はブラシレスDCモータの端子電圧Vuとインバータ入力電圧の1/2を比較して、その大小関係が反転するポイントをブラシレスDCモータの誘起電圧のゼロクロス点(P点)として検出するが、リンギングノイズ成分によりPx点と誤検出してしまう。この位置検出ズレは、ブラシレスDCモータの駆動速度の脈動や振動、騒音の増大、駆動効率の低下などの原因となる。
一方で図7(c)に示すように、PWM制御のオン時間時比率を100%とした場合、端子電圧Vuには誘起電圧波形が現れ、正確なゼロクロスポイント(P点)での位置検出が可能であり、低騒音、低振動、低損失な安定した駆動が実現できる。
また区間F1区間では、図7(b)に示すようにPWM制御による高周波でのスイッチング素子のオン・オフに伴うスイッチング損失が発生するが、図7(d)に示すようにオン時間時比率100%の駆動ではスイッチング動作は行われないためスイッチング損失は発生せず、回路損失の低減による高効率化が実現できる。
さらにブラシレスDCモータに流れる電流を図8に示す。図8(a)は120度通電によるPWM制御での波形であり、PWM制御でのスイッチング素子のオン・オフに伴う高周波電流成分が重畳していることが分かる。この高周波電流成分はモータ鉄損の原因となる一方、図8(b)に示すPWMオン時間時比率100%での運転では高周波電流成分の発生はないため、モータ損失の低減によるモータ駆動装置の高効率化が図れる。
以上のように構成したモータ駆動装置で圧縮機を駆動する冷却システムを持つ冷蔵庫について説明する。
近年の冷蔵庫は、真空断熱材の採用など断熱技術の向上により、外部からの熱侵入が非常に少なくなっている。このため扉開閉が頻繁に行われる朝夕の家事時間帯を除けば、1日の大半で冷蔵庫内は安定した冷却状態にあり、圧縮機は冷凍能力を下げた低速・低負荷での駆動が行われている。従って、冷蔵庫の消費電力を削減するためには、圧縮機すなわちブラシレスDCモータの低速・低出力時の駆動効率を上げることが非常に有効である。
本発明の実施の形態1では、ブラシレスDCモータが低速・低負荷で駆動している状態において、PWM制御による高周波のオン・オフ制御を行わず、PWMオン時間時比率を100%となるように、スイッチング素子のオンまたはオフタイミングを調整しながらブラシレスDCモータの駆動速度制御を行う。これによりインバータ回路3はPWM制御によるスイッチングロスの発生が無くインバータの回路効率を大幅に向上することが出来る。
本実施の形態1では、インバータ回路3のスイッチング素子にはMOSFETを用いている。MOSFETはその構造的特徴から、オン時の出力電流の経路にPN接合を持たないため、特に低電流出力時におけるオン時の損失は、IGBT等の他のパワーデバイスと比較して非常に低くなる。
先述したように冷蔵庫は1日の大半で低速・低負荷での駆動がされているためブラシレスDCモータに流れる電流が低い。従って、本発明を冷蔵庫の圧縮機の駆動に用いるとき、インバータ3のスイッチング素子にMOSFETを用いることは、冷蔵庫の消費電力の低減に非常に有効となる。
また、電力供給状態によらず、一定の加速度による加減速は、速度変更時の騒音および振動を抑え、共振周波数帯を即座に通過するようにして、配管損傷等の発生を回避して信頼性を向上している。
また、PWM制御によるオン・オフ制御を行わないことでブラシレスDCモータの巻線電流には高周波電流成分が無く、モータ鉄損を大幅に抑制できモータ効率の向上が図れる。
更にPWM制御は一般的に1kHから20kHz程度のPWM周波数でのスイッチング動作が行われ、この周波数成分が騒音として発生する。冷蔵庫は昼夜にかかわらず1日中運転しているため、静音設計は非常に重要である。本実施の形態1のモータ駆動装置は、オン時間の時比率が100%であり、PWM制御に起因する騒音の発生が無いため、冷蔵庫の静音設計に非常に有効である。
以上のように本発明にかかるモータ駆動装置は、モータ駆動装置の回路損失の低減およびモータ効率の向上、高信頼性、駆動騒音と振動の低減が可能となるため、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、ポンプ、扇風機、ファン、電気掃除機など、ブラシレスDCモータを用いたあらゆる機器にも適用できる。
3 インバータ回路
4 ブラシレスDCモータ
5 位置検出手段
8 通電相制御手段
8c 制御量調整部
11 PWM制御手段
17 圧縮機
21 冷蔵庫

Claims (4)

  1. ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータに電力を供給する6個のスイッチング素子で構成されるインバータと、前記ブラシレスDCモータの回転子の回転位置を検出する位置検出手段と、前記インバータの出力電圧を前記インバータのスイッチング素子を高周波数でオン/オフすることで前記ブラシレスDCモータに供給する電圧を調整するPWM制御手段と、PWM制御による前記インバータのスイッチング素子のオン時間の時比率が最大となるように前記ブラシレスDCモータの3相巻線に対し電気角90度以上150度以下の範囲で電力を供給する通電相を決める通電相制御手段と、前記通電相制御手段により設定した通電相状態に応じて、前記ブラシレスDCモータを所定の速度で駆動するための前記ブラシレスDCモータの通電相に通電する電気角を制御量として調整する制御量調整部を有し、前記制御量調整部は、前記ブラシレスDCモータの電力供給状態応じてブラシレスDCモータの速度制御における制御量を調整するモータ駆動装置。
  2. 前記制御量調整部は、前記通電相制御手段により設定した前記ブラシレスDCモータへの電力供給区間が電気角120度を境として通電する電気角が120度より大きい時の速度偏差に対する変更量が、120度以下での速度偏差に対する変更量よりも大きくなるよう制御量を切換える請求項1に記載のモータ駆動装置。
  3. 前記ブラシレスDCモータは、冷凍サイクルの圧縮機を駆動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ駆動装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のモータ駆動装置により駆動される圧縮機を有する冷蔵庫。
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