以下に、本発明で用いる、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)含リン化合物、及び(D)(C)成分以外の含リン化合物、含窒素化合物、及び含ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの難燃剤について説明する。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物の使用用途は特に限定されるものではなく、例えば、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、注型材、フィルム材、接着剤、電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、及び粉体塗料等に使用することができる。本発明においては、特に電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、及び注型材等に使用することが好ましく、積層板に使用することが最も好ましい。
本発明で使用する(A)エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を少なくとも2つ有するものである限り、分子構造、分子量等に特に制限はなく、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択することができるが、使用する用途によって使い分けることが好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、ジシクロペンタジエンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシルプロパン(水素化ビスフェノールA)、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物などの多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−2−メチルアニリン、N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3−エポキシプロポキシ)アニリン、N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル)−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、あるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
上記したエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。難燃性エポキシ樹脂組成物が積層版用である場合、(A)エポキシ樹脂としては、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物を使用することが好ましく、その中でも、ノボラック型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが、安価で入手がしやすい点でより好ましい。
また、難燃性エポキシ樹脂組成物が封止剤用である場合、(A)エポキシ樹脂としては、多価アルコール類のポリグリシジルエーテル、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、及び、ナフタレン型エポキシ樹脂の中から選択される、少なくとも1種のエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
難燃性エポキシ樹脂組成物が注型材用である場合、(A)エポキシ樹脂としては、多価アルコール類のポリグリシジルエーテル、多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールAのグリシジルエーテルがより好ましい。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物においては、難燃性エポキシ樹脂組成物を所望の粘度に調整するために、(A)エポキシ樹脂と共に反応性希釈剤を併用することができる。このような反応性希釈剤としては、エポキシ樹脂組成物を硬化させた時の、硬化物の耐熱性やガラス転移温度の低下を抑制する観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する希釈剤を使用することが好ましい。
上記反応性希釈剤に含まれるエポキシ基の数は、1個でも2個以上でもよく、特に限定されるものではない。エポキシ基の数が1個の反応性希釈剤としては、例えばn−ブチルグリシジルエーテル、C12〜C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、及び3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
エポキシ基の数が2個の反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基の数が3個の反応性希釈剤としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及びグリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記反応性希釈剤のエポキシ樹脂に対する配合量は、特に限定されるものではないが、使用する用途によって使い分けることが好ましい。積層板に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合には、製品のガラス転移温度の低下を避ける観点から、反応性希釈剤を使用しないことが好ましい。封止剤に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合には、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して3〜50質量部配合することが好ましく、5〜30質量部配合することがより好ましい。また、注型材に用いられるエポキシ樹脂組成物の場合にも、エポキシ樹脂100質量部に対して3〜50質量部配合することが好ましく、5〜30質量部配合することがより好ましい。
次に、本発明に用いられる(B)硬化剤について説明する。(B)硬化剤としては、フェノール樹脂類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、潜在性硬化剤、及び酸無水物類が挙げられる。本発明においては、これらの硬化剤を用途によって使い分けることが好ましい。
具体的には、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を積層板の製造に用いる場合、(B)硬化剤として、フェノール樹脂類又は潜在性硬化剤を使用することが好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、又はジシアンジアミド型潜在性硬化剤を使用することがより好ましい。封止剤に用いる場合には、(B)硬化剤として、フェノール樹脂類、潜在性硬化剤又は酸無水物類を使用することが好ましい。注型材に用いる場合には、(B)硬化剤として、脂肪族アミン、芳香族アミン、又は酸無水物類を使用することが好ましい。これらの硬化剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記フェノール樹脂類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリスフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)、及び、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
上記フェノール樹脂類からなる(B)硬化剤の(A)エポキシ樹脂に対する配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1個に対し、フェノール樹脂類中の水酸基が0.3〜1.5個になるように配合することが好ましく、0.8〜1.2個になるように配合することがより好ましい。
上記脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、及びメタキシレンジアミン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、適宜混合した混合物として用いることもできる。
上記脂肪族アミン類からなる(B)硬化剤の(A)エポキシ樹脂に対する配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1個に対し、脂肪族アミン中の活性水素が0.6〜1.5個になるように配合することが好ましく、0.8〜1.2個になるように配合することがより好ましい。
上記芳香族アミン類としては、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
上記芳香族アミン類からなる(B)硬化剤の(A)エポキシ樹脂に対する配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1個に対し、芳香族アミン中の活性水素が0.6〜1.5個になるように配合することが好ましく、0.8〜1.2個になるように配合することがより好ましい。
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド型、イミダゾール型、ポリアミン型化合物等の、室温でエポキシ樹脂と混合した時に、混合物の粘度変化や物性変化が小さい潜在性硬化剤が挙げられる。
上記ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド単独、若しくは必要に応じて、後述するエポキシ樹脂硬化促進剤を併用したものが挙げられる。
上記イミダゾール型潜在性硬化剤は、例えば、活性水素を含有したイミダゾール化合物に対して、50〜150℃にて、1〜20時間、必要に応じて溶媒を用いてエポキシ化合物を反応させることによって得ることができる。溶媒を用いた場合は、反応終了後、溶媒を80〜200℃、常圧若しくは減圧により除去する。
上記イミダゾール型潜在性硬化剤の製造に用いられる上記イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
上記イミダゾール型潜在性硬化剤の製造に用いられる上記エポキシ化合物としては、例えば、上記(A)エポキシ樹脂にて例示した化合物が挙げられる。
上記イミダゾール型潜在性硬化剤の製造に用いられる上記溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられる。
上記ポリアミン型潜在性硬化剤は、例えば、ポリアミンに対して、50〜150℃にて、1〜20時間、必要に応じて、上記例示した溶媒を用いてエポキシ化合物を反応させることによって得ることができる。溶媒を用いた場合は、反応終了後、溶媒を80〜200℃、常圧若しくは減圧により除去する。
上記ポリアミン型潜在性硬化剤の製造に用いられる上記ポリアミンとしては、例えば、上記脂肪族アミン類、芳香族アミンで例示した化合物が挙げられる。上記ポリアミン型潜在性硬化剤の製造に用いられるエポキシ化合物及び溶媒としては、上記イミダゾール型潜在性硬化剤の製造に用いられたものと同様なものを用いることができる。
上記潜在性硬化剤は、組成物の貯蔵安定性を向上させるために、上記例示したフェノール樹脂類を併用してもよい。
潜在性硬化剤の具体的なものとしては、市販品である、アデカハードナー EH−3636AS(株式会社ADEKA製、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−4351S(株式会社ADEKA製、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5011S(株式会社ADEKA製、イミダゾール型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5046S(株式会社ADEKA製、イミダゾール型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−4357S(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)、アデカハードナー EH−5057P(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)、及びアデカハードナー EH−5057PK(株式会社ADEKA製、ポリアミン型潜在性硬化剤)等が挙げられる。これらを単独で、又は適宜混合した混合物として用いることができる。
上記潜在性硬化剤からなる硬化剤(B)のエポキシ樹脂(A)に対する配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂100質量部に対して1〜70質量部であることが好ましく、3〜60質量部であることがより好ましい。
上記酸無水物類としては、無水ハイミック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水メチルハイミック酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、及び水素化メチルナジック酸無水物等が挙げられる。
上記酸無水物類からなる硬化剤(B)のエポキシ樹脂(A)に対する配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1個に対し、酸無水物類中の酸無水物基の数が0.7〜1.6個であることが好ましく、0.9〜1.2個であることがより好ましい。
本発明においては、上記(B)硬化剤と共に、必要に応じて公知のエポキシ樹脂硬化促進剤を併用することができる。これらの硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;前記イミダゾール類と、トリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩であるイミダゾール塩類;ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類;トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;3−(p−クロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、イソホロンジイソシアネート−ジメチルウレア、トリレンジイソシアネート−ジメチルウレア等のウレア類;及び、三フッ化硼素と、アミン類やエーテル化合物等との錯化合物等を例示することができる。これらの硬化促進剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂硬化促進剤の含有量は特に制限はなく、難燃性エポキシ樹脂組成物の用途に応じ適宜設定することができる。
次に、本発明で使用する、下記式(1)で表される(C)成分の含リン化合物について説明する。
上記式(1)中のmは2〜10の整数を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、R
3は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでいる場合がある炭化水素基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は―NR
4―を表し、R
4は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
本発明で用いられる(C)成分の含リン化合物は、下記式(3)に示す反応式により、エポキシ基と反応する化合物である。
上記式(3)中のmは2〜10の整数を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R
3は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでいる場合がある炭化水素基を表し、R
8はアルキル基又はアリール基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は―NR
4―を表し、R
4は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
上記式(1)中のmは2〜7であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。mが1であると、エポキシ基と反応する官能基が1つとなり、エポキシ樹脂を硬化した時の硬化物のガラス転移温度や、強度が著しく低下するので好ましくない。mが10より大きい数の場合には、含リン化合物を製造する際に、粘度が高くなって製造が困難となるので好ましくない。
上記式(1)中のR1、R2及びR4表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、上記R1又はR2で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、R1及び/又はR2が、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数が2〜5のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、エチル基又はプロピル基であることが最も好ましい。
上記式(1)中のR3で表される炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エタンジイル基、オクタンジイル基等のアルカンジイル基;メチレントリイル、1,1,3−エチレントリイル基等のアルカントリイル基;1,1,2,2−エチレントリイル等のアルカンテトライル基;及び、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物残基;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の、多核多価フェノール化合物残基が挙げられる。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、製造するための原料が容易に入手可能であるという観点から、Xが酸素原子であり、且つYが酸素原子であることが好ましい。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の物性の観点から、本発明で用いられる(C)成分の含リン化合物は、骨格に芳香環を少なくとも1個含む化合物であることが好ましく、下記式(2−1)、(2−2)及び(2−4)〜(2−6)で表される基を含有する化合物であることが特に好ましい。
上記式(2−1)中、R
5は水素原子、もしくは炭素数が1〜4のアルキル基を表す。
上記式(2−2)中のnは0〜3の整数、oは0〜50の整数を表し、R
6は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、R
7は、酸素原子又は硫黄原子を含んでもよい炭化水素基を表し、Zは水酸基又は下記式(2−3)で表される官能基である;
上記式(2−3)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す;
上記式(2−1)中のR5、及び上記式(2−2)中のR6で表される炭素数が1〜4のアルキル基としては、上記式(1)中のR1、R2及びR4で表されるアルキル基として例示したもの中の、炭素数が1〜4のものが挙げられる。
上記式(2−2)中のR7で表される炭化水素基としては、上記式(1)中のR3で表される炭化水素基と同じものが挙げられる。
上記式(2−3)中のR1及びR2で表されるアルキル基及びアリール基としては、上記式(1)中のR1、R2及びR4で表されるアルキル基及びアリール基と同じものが挙げられる。
上記式(1)におけるR3が、上記(2−1)〜(2−6)で表される基である含リン化合物の中では、R3が上記(2−1)又は(2−2)で表される構造であるものを使用することが特に好ましい。また、上記(2−1)の構造の中でも、R1、R2が、それぞれ独立にエチル基又はプロピル基であり、R5が水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
一方、上記(2−2)の構造の場合には、nが0又は1、oの平均値が1〜5の数であり、R1、R2がそれぞれ独立にエチル基又はプロピル基、R6がメチル基であり、R7がメチレン基、エタンジイル基、又はプロパンジイル基であることが好ましい。
このような化合物としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−4)で表される化合物が挙げられる。
上記式(4−4)におけるpは1〜50の整数である。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物中における上記(C)含リン化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、後述する(D)成分、及び任意で使用される反応性希釈剤の合計質量における、(C)成分に起因するリン含有量が0.1〜5質量%となる量であることが好ましく、0.5〜3質量%となる量であることがより好ましい。リン含有量が0.1質量%となる量より少ない場合には、エポキシ樹脂組成物の難燃性が著しく低下する場合がある。一方、リン含有量が5質量%となる量より多い場合には、エポキシ樹脂組成物の耐水性が著しく低下する場合がある。
本発明で使用する含リン化合物の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、下記式(5)に表した方法等によって製造することができる。
上記式(5)中におけるmは2〜10の整数、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R
3は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでいる場合がある炭化水素基、Xは酸素原子又は硫黄原子、Yは、酸素原子、硫黄原子、または―NR
4―を表し、R
4は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
上記式(5)で使用される塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン;ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;1−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;等が挙げられる。本発明においては、これらの塩基の中でも3級アミンを使用することが好ましく、トリエチルアミンを使用することが最も好ましい。
上記式(5)で使用される溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒の中では、エーテル類又はハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましく、エーテル類が特に好ましい。
上記の反応は、−80〜100℃、好ましくは室温〜50℃で、0.5時間〜72時間、好ましくは1時間〜24時間かけて行わせることができる。
本発明で用いる(D)成分は、(C)成分以外の含リン化合物、含窒素化合物、及び含ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの難燃剤である。本発明では、エポキシ樹脂と反応性を有する含リン化合物である(C)成分と、(D)成分とを組み合わせることによって、それぞれ単体では到達し得ない難燃性を発現することができる。
上記(C)成分以外の含リン化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステル;リン酸アンモニウム、リン酸メラミン等のリン酸塩;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン等の縮合リン酸塩;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、トリホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、トリホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン、テトラホスフィン酸チタニル等のホスフィン酸の金属塩、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下HCAと表記する)等のホスフィン酸エステル;HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系化合物、ヘキサフェニルシクロトリフォスファゼン等のフォスファゼン誘導体、赤リン等が挙げられる。
上記(C)成分以外の含リン化合物としては、リン含有フェノキシ樹脂(例えば、新日鐵化学(株)製のフェノトートERF−001M30、及びTX−0924K30等)、水酸基含有リン酸エステル(例えば、大八化学工業(株)製のDAIGUARD−580、及びDAIGUARD−610等)、HCA誘導体(例えば、三光(株)製のHCA−HQ、M−Ester、及びME−P8等)等が既に上市されている。
上記含窒素化合物としては、窒化珪素、窒化アルミ、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩を形成する化合物が挙げられる。トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸の塩とは、トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との付加物であり、通常は1対1(モル比)、場合により2対1(モル比)の組成を有する付加物である。トリアジン系化合物のうち、シアヌール酸またはイソシアヌール酸と塩を形成しないものは除外される。
上記トリアジン系化合物の例としては、メラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
また、含窒素化合物としては、下記式(6)で表されるような、リン原子と窒素原子を含んだ化合物が挙げられる。
上記式(6)中のqは2〜10の整数を表し、R
8〜R
11はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R
12は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでいる場合がある炭化水素基を表す。
上記式(6)成分で表される化合物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、下記式(7)に示された方法等により、溶媒中で、塩基を併用することによって製造することができる。
上記式(7)中、qは2〜10の整数を表し、R
8〜R
11はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R
12は、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでいる場合がある炭化水素基を表す。
上記式(7)で使用することができる溶媒、塩基は、上述した式(5)の反応で例示したものと同様のものが挙げられる。
上記式(6)及び(7)中のqは2〜7の整数であることが好ましく、2〜5の整数であることがより好ましい。qが1であると、エポキシ基と反応する官能基が1つとなり、エポキシ樹脂を硬化させた硬化物の、Tgや強度が著しく低下するので好ましくない。qが10より大きい数である場合には、含窒素化合物を製造する際の粘度が高くなって製造が困難となるので好ましくない。
上記式(6)及び(7)中のR8〜R11で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。また、上記R8〜R11で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
これらの中においては、R8〜R11は、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、R8、R9の何れかが水素原子で、何れかがメチル基又はエチル基であり、且つ、R10、R11の何れかが水素原子で、何れかがメチル基又はエチル基であることが、より好ましい。
上記式(6)及び(7)中のR12で表される炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エタンジイル基、オクタンジイル基等のアルカンジイル基;メチレントリイル、1,1,3−エチレントリイル基等のアルカントリイル基;1,1,2,2−エチレントリイル等のアルカンテトライル基;及び、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の、多核多価フェノール化合物の芳香族基が挙げられる。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の物性の観点から、上記式(6)及び(7)で表される化合物のR12としては、下記式(8)で表されるものが好ましい。
上記式(8)中の、rは0〜3の数を表し、R
13は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、R
14は単結合、メチレン基、又は−C(CH
3)
2−を表し、R
15、R
16は、独立して、水素原子、又は炭素数が1〜6のアルキル基を表す。
上記式(8)中のR13で表される炭素数が1〜4のアルキル基としては、上記式(1)中のR1、R2及びR4で表されるアルキル基として例示したもの中の、炭素数が1〜4のものが挙げられる。
上記式(8)中のR15及びR16で表される炭素数が1〜6のアルキル基としては、上記式(1)中のR1、R2及びR4で表されるアルキル基として例示したもの中の、炭素数が1〜6のものが挙げられる。
上記含ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸など)、ホウ酸塩(四ホウ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ホウ酸塩、メタホウ酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、ホウ酸亜鉛などの遷移金属塩など)、縮合ホウ酸(塩)(ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、八ホウ酸又はこれらの金属塩など)、窒化ホウ素などが挙げられる。これらの含ホウ素化合物は、含水物(例えば、含水四ホウ酸ナトリウムであるホウ砂など)であってもよい。これらの含ホウ素化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において(D)成分である難燃剤としては、難燃性をより発現できるという点で、(C)成分以外の含リン化合物、又は含窒素化合物であることが好ましく、(C)成分以外の含リン化合物がより好ましく、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(HCA)、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9, 10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(三光(株)製のHCA−HQ)、ヘキサフェニルシクロトリフォスファゼン、又は、下記式(9−1)〜(9−11)の何れかで表される難燃剤であることが更に好ましい。
上記式(9−1)におけるsは1〜50の整数;式(9−2)におけるtは1〜20の整数を表す;
式(9−3)〜(9−5)におけるa、b、cは、それぞれ独立して、1〜5の整数を表す;
式(9−6)及び(9−7)におけるd、eは、それぞれ独立して、1〜10の整数を表す;
式(9−8)におけるfは、1〜50の整数を表し、式(9−11)におけるAは水素原子、又は−OR17を表し、R17は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
式(9−11)におけるA中のR17で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、上記式(1)中のR1、R2及びR4で表されるアルキル基として例示したもの中の、炭素数が1〜6のものが挙げられる。
上記含リン化合物の中では、難燃性の効果が非常に優れているという点で、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシドが特に好ましい。
本発明において(D)成分の使用量としては、(C)成分であるリン化合物100質量部に対して、1〜1000質量部であることが好ましく、20〜200質量部がより好ましく、50〜150質量部が更に好ましい。
(D)成分である難燃剤中にリン原子が含んでいる場合の(D)成分の使用量としては、エポキシ樹脂組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び任意で使用される反応性希釈剤の合計質量における、(D)成分由来のリン含有量が0.1〜5質量%となる量であることが好ましく、0.5〜3質量%となる量であることがより好ましい。リン含有量が0.1質量%となる量より少ない場合には、エポキシ樹脂組成物の難燃性が著しく低下する場合がある。一方、リン含有量が5質量%となる量より多い場合には、エポキシ樹脂組成物の耐水性が著しく低下する場合がある。
ところで、一般的な難燃剤としては、本発明の(D)成分以外の難燃剤として、ハロゲン系難燃剤が知られており、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロム化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物等のテトラブロモビスフェノールA誘導体;デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、ペンタブロモベンジルアクリレート(モノマー)等の臭素系芳香族化合物;塩素化パラフィン;塩素化ナフタレン;トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステルなどが挙げられる。
これらのハロゲン系難燃剤は、難燃性においては、本発明の(D)成分の代替として、エポキシ樹脂組成物の難燃性を向上させるためには十分な材料であると考えられるが、これらのハロゲン系難燃剤を使用したプリント配線基板などは、火災、若しくは使用後の廃棄処理などで、有毒なガスを発生させることが知られており、近年の環境問題を配慮して、本発明においては、好ましくない材料である。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、粘度調整剤として有機溶剤を含有している場合がある。この場合の有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。本発明においては、これらの溶剤の中から選択される少なくとも一つの溶剤を、本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び任意で使用される反応性希釈剤の総質量に対して、例えば、1〜90質量%の範囲となるように配合することができる。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填剤を含有する場合がある。このような無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭化珪素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
本発明においては、使用する用途によって上記した無機充填剤を使い分けることが好ましい。積層板の用途に関しては、溶融シリカ、水酸化アルミニウム等を使用することが好ましい。封止剤の用途に関しては、溶融シリカ、結晶シリカ等を使用することが好ましく、溶融シリカを使用することが特に好ましい。注型材の用途に関しては、溶融シリカ、結晶シリカ、又は水酸化アルミニウム等を使用することが好ましく、溶融シリカを使用することが特に好ましい。
上記無機充填剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物の全固形分に対して、20〜90質量%となるようにすることが好ましく、25〜80質量%となるようにすることがより好ましい。無機充填剤の配合量が20質量%未満では、硬化物の熱膨張係数の低減効果が低くなる傾向があり、90質量%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、作業性が著しく低下する傾向となる。
また、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、前記無機充填剤以外の添加剤を含有する場合がある。上記添加剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材;ガラスクロス・アラミドクロス、カーボンファイバー等の補強材;顔料;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪族ワックス、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物をあげる事ができる。本発明においては、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、注型材、フィルム材、接着剤、電気絶縁塗料、難燃性の必要な複合材、及び粉体塗料等に使用することができ、特に、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤、注型材に使用するのに好適である。
本発明の積層板は、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグを、1枚又は所定の枚数、例えば2〜20枚重ね合わせ、その片面又は両面に銅やアルミニウム等の金属箔を配置して積層した後、多段プレス機、多段真空プレス機等を用いて、所定の温度、例えば100〜250℃で熱圧着して製造することができる。積層板中に含まれる有機成分((A)〜(D)成分、及び任意で添加される反応性希釈剤、及び添加剤のうちの有機物の総量)は、特に制限されるものではないが、好ましくは46質量%〜50質量%である。46質量%より少ない場合は、耐熱性や難燃性に関しては問題ないものの、積層板中の層間密着性の低下、絶縁性の低下、回路形成金属との密着性低下、平滑性悪化の懸念があり、総合的に積層板の性能が低下する可能性があり、50質量%より多い場合は、寸法安定性(線膨張)の悪化、及び難燃性が低下する可能性がある。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグは、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を基材に含浸させ又は塗布し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
上記プリプレグの基材としては、例えば、ガラス繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等の、公知のものを使用することができる。
上記基材の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等が挙げられる。これら基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択される。必本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物要により、単独で又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせて使用することができる。
電子部品に用いられる本発明の封止剤は、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を、必要により加熱処理しながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより製造することができる。この場合の、撹拌、溶融、混合、分散に使用する装置は特に限定されるものではなく、本発明においては、撹拌器、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を用いた注型材は、例えば、ミキサー等を用いて本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を混合し、真空脱泡した後、金型を用いて製造することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例等における%は、特に記載がない限り質量基準である。
実施例にて評価した項目としては、プリプレグの外観、銅張積層板の成形性、レジンコンテント(プリプレグ中の樹脂量であり、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び任意で添加される反応性希釈剤、添加剤などの有機成分の総量を指す、以下同じ)、ガラス転移温度(Tg)、難燃性である。
プリプレグの外観は、目視観察した場合に、均一な外観のものを良好と評価し、外観が不均一な物を不良とした。
プリプレグ中のレジンコンテントにおいては、46質量%〜50質量%のものを合格とした。レジンコンテントは、製造した積層板の総質量と、使用したガラスクロスの総質量を測定し、以下の通りに計算した。
<レジンコンテントの計算方法>
レジンコンテント(質量%)={(積層板総質量−ガラスクロス総質量)/積層板総質量}×100
銅張積層板の成形性は、プリプレグを用いて加圧硬化させ、両面銅張積層板を作製した後の外観を目視で観察し、評価した。均一に硬化して、プリプレグが成形されているものを成型性が良好とし、不均一に硬化したプリプレグを、成型性が不良であると評価した。
難燃性については、両面銅張積層板の銅箔をエッチングによって除去し、長さ127mm、幅12.7mmに加工した試験片について、UL(アンダーライターズ ラボラトリース)の「プラスチック材料の燃焼性テストUL 94」に準じて試験をし、下記の様にして判定した。
<判定方法>
試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後バーナーの火を取り除き、試験片に着火した火が消える迄の時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして、着火した火が消える迄の時間を測定した。その操作を5回行った後の、1回目の火が消える迄の時間の平均値(以下、T1とする)、2回目の火が消える迄の時間の平均値(以下、T2とする)を計算した。同時に、5回操作分の合計燃焼時間を計算した。また、落下する火種により、試験片の下に置いた綿が着火するか否かについても同時に評価した。
合計燃焼時間、綿着火の有無等の結果から、UL−94V規格にしたがって燃焼ランクを評価した。燃焼ランクはV−0が最高であり、V−1、V−2となるにしたがって難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとした。
硬化物のガラス転移温度(Tg)は、TMA(熱機械分析装置、株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR TMA/SS−6100)を用いて測定した。
本発明の実施例においては、積層板中のレジンコンテントが46質量%〜50質量%であるものを評価良好とし、その範囲外であるものを評価不良とした。一般的に、レジンコンテント等の有機成分が多い場合は、得られた積層板の難燃性が乏しい傾向にあり、逆に、有機成分が少ない場合は、その有機成分に難燃性の効果がない場合にも、難燃性試験で評価が良好になる一方で、層間密着性や絶縁性など、他の性能が悪化する傾向があるためである。難燃性がV−1以上のものに関しては、Tgが180℃以上のものを評価良好とした。難燃性がV−0であるものは、前述のレジンコンテントの評価を満たしているものを、評価良好とした。その他、プリプレグの外観、銅張積層板の成形性の評価も行い、総合評価を合格、又は不合格と判断した。
[製造例1:含リン化合物(PH―1)の合成]
撹拌羽、還流管、温度計、滴下漏斗及びセプタムを備えた500mLの五口フラスコを、十分に乾燥・窒素置換し、ビスフェノールA45.7g(0.20mol)、トリエチルアミン42.5g(0.42mol)、及び超脱水テトラヒドロフラン300mLを仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリド59.0g(0.42mol)を仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルム500mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加えて良く撹拌し、油水分離した後、水層を除去した。有機層を蒸留水200mLで二回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去し、含リン化合物(PH−1、上記式(4−3)の化合物に相当)78.1g(収率89.4%)を得た。含リン化合物PH−1の理論リン含有量は14.2質量%である。
[製造例2:含リン化合物(PH―2)の合成]
撹拌羽、還流管、温度計、滴下漏斗及びセプタムを備えた500mLの五口フラスコを、十分に乾燥・窒素置換し、HF‐1M(フェノールノボラック樹脂、水酸基当量:107g/eq.、明和化成(株)製)34.2g(0.16mol)、トリエチルアミン34.4g(0.34mol)、及び超脱水テトラヒドロフラン300mLを仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリド47.8g(0.34mol)を仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルム500mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加えて良く撹拌し、油水分離した後、水層を除去した。有機層を蒸留水200mLで二回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去し、含リン化合物(PH−2、上記式(4−4)の化合物に相当)66.4g(収率98.3%)を得た。含リン化合物PH−2の理論リン含有量は14.6質量%である。
[製造例3:含リン化合物(PH−3)の合成]
撹拌羽、還流管、温度計、滴下漏斗及びセプタムを備えた500mLの五口フラスコを、十分に乾燥・窒素置換し、4,4’−ビフェノール29.8g(0.16mol)、トリエチルアミン34.4g(0.34mol)、及び超脱水テトラヒドロフラン300mLを仕込んだ。滴下漏斗にジエチルホスフィン酸クロリド47.8g(0.34mol)を仕込み、反応温度が50℃を超えないように滴下した。滴下終了後、一晩攪拌した。反応溶液を分液漏斗に移し、クロロホルム500mL及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLを加えて良く撹拌し、油水分離した後、水層を除去した。有機層を蒸留水200mLで二回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去し、含リン化合物(PH−3、上記式(4−1)の化合物に相当)60.6g(収率96.1%)を得た。含リン化合物PH−3の理論リン含有量は15.7質量%である。
[製造例4:含リン化合物(PA−1)の合成
<含リン塩化物P−1の合成>
回転子、還流管、温度計及び窒素導入口を備えた300mLの丸底フラスコに、ビスフェノールAを22.8g(0.1mol)、塩化ホスホリルを306.7g(2.0mol)、及び無水塩化マグネシウムを0.3g(3.0mmol)入れて、反応溶液が還流するまで加熱し、24時間撹拌した。その際、反応で発生する塩化水素ガスを、還流管上部から水酸化ナトリウム水溶液に導入してトラップした。反応終了後、エバポレーターを用いて過剰の塩化ホスホリルを除去し、含リン塩化物P−1を得た。得られたP−1をTHF100mLに溶解させ、P−1のTHF溶液を得た。
<塩化物とアミンの反応>
撹拌羽、還流管、滴下漏斗及び温度計を備えた500mLの丸底フラスコに、メチルアミンのTHF溶液を210mL(2.0mol/L、メチルアミン:0.42mol)及びトリエチルアミン42.5g(0.42mol)を入れた。窒素雰囲気下で、反応溶液を撹拌・冷却しながら、上記P−1のTHF溶液を反応温度が0℃を超えないように滴下し、滴下終了後、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒及び過剰の原料を除去し、残渣をクロロホルム300mLで溶解して分液漏斗に移した。蒸留水100mLで2回洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を除去して含リン化合物(PA−1、上記式(6)にて、R8、R10がメチル基であり、R9、R11が水素であり、qが2であり、R12が上記式(8)であり、式(8)においてR13、R15が水素であり、R14が−C(CH3)2−であり、R16がメチル基であり、rが0.16である化合物に相当)を18.8g(収率85.3%)得た。含リン化合物PA−1の理論リン含有量は14.1質量%である。
[実施例1]
EOCN−104S(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製)49.1g、HP−350(水酸化アルミニウム、昭和電工(株)製)59.2g及びSFP−130MC(球状シリカ、電気化学工業(株)製)59.2gをメチルエチルケトン100gに加え、三本ロールで分散させた。次いで、製造例1で得られたPH−1を8.34g、OP−1230(トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、クラリアント社製)を5.15g、メタノール20gに溶解して加えた。更に、EOCN−104S 50.9g、アデカハードナー EH−3636AS(ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、(株)ADEKA製)5g(エポキシ樹脂100質量部に対して5phr)、及びメチルエチルケトン100gを追加してディスパーで分散し、樹脂ワニスを作製した。
得られた樹脂ワニスをガラスクロス(#7628、日東紡績(株)製)に含浸させ、120℃の熱風循環炉で10分間加熱乾燥してプリプレグを作製した。更に、作製したプリプレグを4枚重ね、その両側に厚さ35μmの銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製)を配置し、190℃で、圧力10kg/cm2の条件で120分間熱圧着して、両面銅張積層板を得た。プリプレグの外観、レジンコンテント、及び両面銅張積層板の、外観、成型性、Tg、難燃性の試験を上記の通り行った。評価を表1に示す。
[実施例2〜7、比較例1〜6]
表1、表2に示すような配合に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ、及び両面銅張積層板を作製して各種評価を行った。結果を表1、表2に示す。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグは何れも、難燃剤などの成分がブリード、及び結晶化することなく、外観が良好なものであり、一定量のレジンコンテントを有していても、難燃性とTgのバランスが良好な銅張積層板を得ることができた。実施例3、4、5、6においては特に難燃性とTgの評価が良好な銅張積層板であることが分かった。比較例1及び2の難燃性エポキシ樹脂組成物を高レジンコンテントで用いて得られた銅張積層板は、難燃性及びTgの総合的な評価に関して満足のいく結果が得られなかった。比較例3及び4においては、難燃性に関しては良好な結果であったが、比較例1に比べてレジンコンテントが低いため、相間密着性の低下、絶縁性の低下、回路形成金属との密着性低下、平滑性の低下などが懸念され、銅張積層板の評価としてはよくないものである。比較例5については、HCA−HQと思われる成分が、プリプレグ表面で結晶化していたため、均一なプリプレグを得ることができず、その後の評価も実施できなかった。比較例6は、(C)成分を含まないことに起因して、難燃性が不良であった。