以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明に係る治具は、被測定物の疲労損傷度の測定のために、前記被測定物の測定表面に疲労センサを貼り付ける作業、並びに、一定の試験期間の経過後に前記疲労センサを観察する作業の際に用いられる治具である。測定対象となる被測定物には特に限定はなく、例えば車両類や船舶等を構成する各種のフレーム構造体、建築物や橋梁などの躯体構造物を例示することができる。
[疲労センサについて]
先ず、本発明に係る治具によって測定表面に貼り付けられ、観察される疲労センサについて説明する。図1(A)、(B)は、疲労センサ1を示す平面図、側面図である。疲労センサ1は、被測定物Tの測定表面TSに貼り付けられ、被測定物Tの疲労損傷度を測定するセンサである。図1(B)には、被測定物Tの歪み方向Dが示されている。疲労センサ1は、センサ箔11及びベース箔12を含む。センサ箔11の下方にベース箔12が配置され、両者は溶着部13によって一体化されている。
センサ箔11は、歪み方向Dに長い矩形の金属箔からなる。センサ箔11の長辺方向の中央領域には、センサ箔11の肉厚が薄肉化された検知領域14が備えられている。検知領域14には、一の長辺から内側へ短辺方向に切れ込むスリット15が付設されている。スリット15の内側端部には、き裂部16が連なっている。き裂部16は、センサ箔11破損部位であり、被測定物Tの疲労損傷度に応じて短辺方向に進展する。
ベース箔12は、センサ箔11よりも大きい平面サイズを有する矩形の金属箔からなる。このサイズの相違に基づき、ベース箔12上にセンサ箔11が重畳された状態では、図1(A)に示すように、ベース箔12の周縁部121が露出する。ベース箔12は、センサ箔11が取り付けられる上面と、測定表面TSに貼り付けられる下面とを有する。センサ箔11は、当該センサ箔11の歪み方向Dの両端付近において、ベース箔12の上面に溶着部13によって固着されている。つまり、センサ箔11は、検知領域14を挟んだ両側に、ベース箔12に対する固着部分を有している。ベース箔12の下面は、接着剤17によって測定表面TSに貼り付けられている。
測定表面TSに疲労センサ1が貼り付けられると、被測定物Tに生じる歪み方向Dの応力が、ベース箔12を介してセンサ箔11に伝達される。被測定物Tの歪みが繰り返しセンサ箔11に伝達されると、き裂部16が進展する。つまり、き裂部16の長さが長くなる。従って、き裂部16の長さを観測することで、被測定物Tの疲労損傷度を推定することができる。既述の通り、従来技術では、レプリカフィルムへの転写によって、き裂部16の進展長さが計測される。これに代えて、本実施形態では、測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1のセンサ箔11を、カメラ(デジタル顕微鏡2)で直接撮像して、き裂部16の進展長さを計測する。
[疲労センサ用治具群の全容]
疲労センサ用治具は、役目の異なる複数の個別治具の群からなる。これら治具群の全容を、図2、図3に示す。図2は、本実施形態に係る疲労センサ1用の治具群が、デジタル顕微鏡2(カメラ)に組み付けられている状態を示す斜視図、図3は、前記治具群の分解斜視図である。前記治具群は、被測定物Tの測定表面TSにおける疲労センサ1の貼り付け位置において使用されるものであって、マウント3、カバー4、貼り付け治具5、アタッチメント6、ブラケット7及びホルダ8を含む。
デジタル顕微鏡2は、疲労センサ1(き裂部16)の画像を撮像する撮像装置であり、前記撮像のための撮像光学系及び撮像素子を内蔵している。デジタル顕微鏡2は、通常の顕微鏡のように接眼レンズを備えず、その代わりに前記撮像素子が画像をキャプチャーする。キャプチャーされた画像は、例えばパーソナルコンピュータ等の外部機器のディスプレイで表示が可能であると共に、その表示画像上で長さの計測を行うことが可能である。すなわち、き裂部16の進展長さを表示画像上で測定することができる。
デジタル顕微鏡2は、略円柱体の形状を有し、撮像のための開口を備えた先端部21と、上述の撮像光学系及び撮像素子や回路基板等を収容する胴部22とを備える。胴部22の下端付近には、外径が先端部21に向けて緩やかに小さくなるテーパ面23が備えられている。胴部22の上端からは、上記の外部機器とデジタル顕微鏡2とを電気的に接続するケーブル24が延出している。
マウント3は、被測定物Tの測定表面TSにおける疲労センサ1の貼り付け位置に固着される治具である。マウント3は、測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1のセンサ箔11を露出させた状態で、当該疲労センサ1の周囲を取り囲む。マウント3は、疲労センサ1の保護を図ると共に、疲労センサ1の撮像に際してデジタル顕微鏡2の位置決めを行わせる機能を果たす。カバー4は、マウント3に着脱可能な蓋体であり、マウント3と共に疲労センサ1を塵埃や外力から保護するための治具である。
貼り付け治具5は、疲労センサ1を測定表面TSの所定の貼り付け位置へ貼り付けるための治具である。疲労センサ1は脆弱な薄葉体であり、貼り付け時には疲労センサ1(とりわけスリット15)に損傷を与えないように留意する必要がある。貼り付け治具5は、疲労センサ1を損傷させることなく、マウント3の開口内において測定表面TSに疲労センサ1を貼り付ける役目を果たす。
アタッチメント6は、デジタル顕微鏡2の先端部21に装着される治具である。また、アタッチメント6は、マウント3に対して密に外嵌が可能であり、デジタル顕微鏡2の位置決め機能も果たす。すなわち、デジタル顕微鏡2に装着されたアタッチメント6がマウント3に嵌合されると、デジタル顕微鏡2の視野に、測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1のき裂部16(所定位置)が入る。また、前記嵌合により、デジタル顕微鏡2の焦点が、き裂部16に合焦するようになる。
ブラケット7は、デジタル顕微鏡2のテーパ面23に取り付けられる治具である。ブラケット7は、デジタル顕微鏡2を撮像光軸方向に移動可能とするに際し、被ガイド部となる部分をデジタル顕微鏡2側に具備させるために取り付けられる。なお、デジタル顕微鏡2に被ガイド部となり得る部分が予め装備されている場合は、ブラケット7の取り付けは省かれる。
ホルダ8は、デジタル顕微鏡2を保持する治具である。ホルダ8は、ブラケット7の装着によってデジタル顕微鏡2に提供された被ガイド部と係合し、デジタル顕微鏡2を撮像光軸方向に移動可能に保持する。ホルダ8は、アタッチメント6が装着されたデジタル顕微鏡2を測定表面TSに対して固定する役目、さらには、アタッチメント6を測定表面TSに押し付けるように付勢する役目を果たす。
[疲労損傷度測定のための作業の概要]
図4(A)〜(E)は、上掲の疲労センサ用治具群を用いた、被測定物Tの疲労損傷度測定のための作業手順を概略的に示す図である。図4(A)は、疲労センサ1及びマウント3を被測定物Tの測定表面TSに貼り付ける工程を示している。先ず、貫通開口であるセンサ孔35を備えるマウント3が、測定表面TSの所定位置に固着される。前記所定位置は、疲労センサ1の貼り付け位置としてユーザが指定した位置である。マウント3は、センサ孔35と前記所定位置とを位置合わせして固着される。続いて、疲労センサ1が測定表面TSに貼り付けられる。疲労センサ1の貼り付け位置は、マウント3のセンサ孔35内である。疲労センサ1及びマウント3の測定表面TSへの貼り付け作業は、初回の作業時のみに行われる。
図4(B)は、デジタル顕微鏡2で疲労センサ1を撮像する際の準備工程を示している。デジタル顕微鏡2に、先に図2及び図3で示したように、アタッチメント6とブラケット7とが取り付けられる。さらに、ブラケット7とホルダ8とを係合させることによって、ホルダ8にデジタル顕微鏡2を保持させる。
図4(C)は、疲労センサ1の撮像工程、つまり、き裂部16の進展長さの測定工程を示している。この工程では、デジタル顕微鏡2を保持するホルダ8が測定表面TSへ固定される。この固定の際、アタッチメント6がマウント3に嵌合される。当該嵌合によって、デジタル顕微鏡2の視野及び焦点が、疲労センサ1のき裂部16に合う。この状態で、デジタル顕微鏡2が撮像動作を行い、外部機器のディスプレイ等に撮像画像を表示する。使用者は、その表示画像上において、き裂部16の進展長さを測定する。なお、初回の測定工程では、き裂部16が正常なデフォルト長であるか否かを確認する測定となる。
き裂部16の進展長さの測定後、デジタル顕微鏡2を保持するホルダ8が、測定表面TSから取り外される。図4(D)は、前記取り外しの後、マウント3にカバー4が外嵌された状態を示している。カバー4の装着によって、マウント3のセンサ孔35が上から塞がれる。これにより、疲労センサ1が塵埃や雨水に曝されたり、疲労センサ1に異物が衝突したり、或いは小動物が侵入したりする不具合を防止できる。なお、必要に応じて、カバー4の上に防湿処理や他の目的の保護層を設けるようにしても良い。
図4(E)は、次回の測定作業が行われる状況を示している。この際、マウント3からカバー4が取り外され、センサ孔35を通して疲労センサ1が露出される。その後、図4(B)の準備工程、図4(C)の測定工程が行われる。2回目以降の測定工程では、き裂部16がデフォルト長からどの程度進展しているかを求める測定となる。測定後、図4(D)に示すように、再びマウント3にカバー4が装着され、次回の測定に備える。
以下、図4(A)〜(D)に示した被測定物Tの疲労損傷度測定のための各工程の詳細を、使用する治具の詳細構造と共に説明する。
[マウントの貼り付け工程]
図5(A)は、図4(A)に示す貼り付け工程で用いられるマウント3の斜視図、図5(B)、(C)は、各々図5(A)のVB−VB線、VC−VC線断面図である。図5(D)は、マウント3に装着されるカバー4の斜視図である。マウント3は、マウント本体部31、上述したセンサ孔35、及び固着面3Pを備えている。
マウント本体部31は、概ね円錐台の外形形状を有する。マウント本体部31の平面視のサイズは、疲労センサ1のサイズよりも大きく、マウント本体部31の厚さも、疲労センサ1の厚さよりも大きく設定されている。マウント本体部31は、測定表面TSと対向する第1面32と、第1面32と反対側の第2面33と、側周面34(テーパ面)とを有する。
第1面32及び第2面33は、共に平坦な面からなる。測定表面TSが上向きの面である場合、第1面32が下面に、第2面33が上面となる。側周面34は、第1面32と第2面33との間に延びており、第1面32から第2面33に向けて径が縮小するテーパ面とされている。後記で詳述するが、この側周面34にはアタッチメント6が密に嵌合される。
センサ孔35は、第1面32から第2面33までマウント本体部31を貫通するように設けられた貫通孔である。センサ孔35の孔サイズは、疲労センサ1を第2面33側から測定表面TSに貼り付け可能なサイズとされている。つまり、センサ孔35は、疲労センサ1を第2面33から第1面32へ通過させることができるサイズを有している。このようなサイズを有する結果、センサ孔35は、測定表面TSにおいて疲労センサ1が配置される領域を区画する開口となる。
センサ孔35は、第1面32に開口する第1開口351と、第2面33に開口する第2開口352とを備える。第1開口351は、平面視で矩形の疲労センサ1と同じサイズ若しくは若干大きいサイズの矩形開口である。なお、第1開口351の開口形状は、疲労センサ1と必ずしも同一又は相似の形状とせずとも良く、例えば疲労センサ1の長辺よりも長い直径を有する円形としても良い。第2開口352は、第1開口351よりも長辺及び短辺が長い矩形開口である。例えば、疲労センサ1が密にフィットするサイズに第1開口351が設定されているならば、第2開口352は余裕を持って疲労センサ1を通過させ得るサイズに設定される。
上記の通りサイズの異なる矩形の第1開口351及び第2開口352の各長辺・各短辺間には、テーパ内壁353が存在している。各テーパ内壁353は、第2面33から第1面32に向けて、マウント本体部31の径方向内側へ傾斜する斜面からなる。このようなテーパ内壁353によってセンサ孔35は、第2面33から第1面32に向けて開口面積が徐々に減少する貫通孔とされている。もちろん、テーパ内壁353を鉛直壁としたセンサ孔35としても良い。
マウント本体部31は、テーパ型の側周面34の一部が切り欠かれてなる切り欠き部36を有している。図5(C)に示されているように、切り欠き部36は鉛直方向に延びる側面である。本実施形態では、矩形のセンサ孔35の一つの短辺に隣接する位置に、切り欠き部36が配置されている。これによりマウント本体部31は、テーパ型の側周面34を備えた円錐台の形状部分37と、その側周面の周方向の一部が鉛直壁とされた部分(切り欠き部36)とを備えるDカット形状を有している。
固着面3Pは、第1面32に配置され、測定表面TSに固着される面である。本実施形態では、第1面32はフラットな面であるので、第1面32全体が固着面3Pとなる。固着面3Pには、耐水性、耐候性に優れた接着剤が塗布される。図示の態様の他、第1面32に環状の凸面を設け、当該凸面の頂面を固着面3Pとしても良い。
カバー4は、マウント3を覆う部材であって、マウント本体部31に対して外嵌が可能な形状を有する。カバー4は、被覆面41、カバー側周面42及びフラット部43を含む。被覆面41は、マウント本体部31の第2面33に開口するセンサ孔35の第2開口352を覆う面である。被覆面41は、第2面33よりもやや大きいサイズを有している。カバー側周面42は、マウント本体部31の側周面34よりやや大きい内径及び高さを有している。フラット部43は、切り欠き部36に対応する鉛直壁部分である。
図6(A)は、特定の構造物9へのマウント3の設置状況を示す斜視図、図6(B)は、図6(A)の要部拡大図である。例示されている構造物9は、水平フレーム91と垂直フレーム92とが溶接ビード93によって溶着されてなる構造物である。溶接ビード93は、水平フレーム91と垂直フレーム92との交差部において直線状に延びている。ここでは、水平フレーム91の表面が測定表面9Sであり、測定表面9Sにおける溶接ビード93に近い特定位置が、構造物9の疲労損傷度を測定する指定位置P(疲労センサ1の貼り付け位置)として設定されている例を示している。
マウント3は、指定位置Pに取り付けられる。すなわち、マウント3の固着面3Pに接着剤が塗布され、そのマウント3が指定位置Pに載置及び押下されることで、マウント3が指定位置Pに固着される。マウント3は、指定位置Pに対して着脱される類いのものではなく、構造物9の疲労損傷度をウォッチングする期間中、指定位置Pに常設される。
図6では、指定位置Pの近傍に障害物(溶接ビード93)が存在する例を示している。この場合、切り欠き部36が溶接ビード93と対峙する固着姿勢とすることで、マウント3と溶接ビード93との干渉が生じないようにすることができる。つまり、切り欠き部36を利用して障害物を回避し、マウント3を指定位置Pへ設置することができる。なお、切り欠き部36が溶接ビード93との間には隙間Gが設けられる。この隙間Gは、カバー4でマウントを被覆する際にカバー側周面42が嵌合する隙間であり、且つ、後述のアタッチメント6が嵌合する隙間である。
マウント3が指定位置Pに固着された後、次述の貼り付け治具5を用いて、疲労センサ1がセンサ孔35を通して指定位置Pに貼り付けられる。必要ならば、測定表面9Sとマウント本体部31の第1面32の外周縁との界面に、コーキング処理を施しても良い。デジタル顕微鏡2による疲労センサ1の観察後、図5(D)に示したカバー4がマウント3に被せられる。
以上説明した通り、本実施形態の疲労センサ用治具によれば、マウントを測定表面に固着すると、センサ孔を通して測定表面の一部が露出する一方で、その周囲がマウント本体部に取り囲まれた状態を形成することができる。センサ孔の孔サイズは、第2面から指定位置に貼り付け可能な孔サイズとされている。従って、構造物の指定位置に、固着面を用いてマウントを固着するだけで、疲労センサの貼り付け準備作業並びに防湿準備作業等を簡単に完了させることができる。また、カッターナイフ等を用いた作業も一切不要となる。さらに、マウントで疲労センサが常時取り囲まれた状態を形成できるので、疲労センサに対する表面保護層の形成作業及びその剥離作業を簡素化することができる。
また、第2面におけるセンサ孔の開口を覆う被覆面を有し、マウント本体部に対して外嵌が可能なカバーを備える。このため、カバーをマウント本体部に外嵌するだけで、概ね表面保護層の形成作業を完了させることができる。また、次回測定時においても、カバーをマウント本体部から取り外すだけで、センサ孔の第2開口から疲労センサを観察可能な状態とすることができる。従って、表面保護層を剥離することなく測定できるため、測定作業性を一層向上させることができ、さらには疲労センサの破損を防止することができる。
[疲労センサの貼り付け工程]
図7(A)は、図4(A)に示す疲労センサ1の貼り付け工程で用いられる貼り付け治具5の斜視図、図7(B)は、貼り付け治具5の要部の断面図である。貼り付け治具5は、ヘッド部51と、使用者によって把持される把持部52と、ヘッド部51と把持部52との間に介在されるスポンジ53(弾性部材)とを備える。
ヘッド部51は、マウント3のセンサ孔35の開口形状に合致する外形形状を有している。具体的にはヘッド部51は、矩形のセンサ孔35に嵌め込み可能な矩形直方体の形状を有している。好ましくは、センサ孔35の第1開口351の開口サイズと、ヘッド部51の水平断面サイズとが略同一とされる。ヘッド部51の下端面は、疲労センサ1を仮保持する保持面51Sである。また、ヘッド部51の水平断面サイズは、疲労センサ1の平面サイズと略同一とすることが望ましい。
保持面51Sは、押圧部511及びキャビティ512を備えている。押圧部511は、保持面51Sの周縁に相当する部分であり、疲労センサ1のベース箔12を測定表面TSへ向けて押圧可能な部分である。つまり、押圧部511は、ベース箔12の周縁部121に対応した形状を備えている。キャビティ512は、押圧部511の内周側に設けられた窪みであり、センサ箔11を収容可能な空間サイズを有している。疲労センサ1の仮保持のため、押圧部511には接着力の弱い粘着剤が塗布されている。
把持部52は、使用者が手指で容易に持つことができるサイズに設定される。滑り止めのための摩擦部や、手指の形状に応じた凹部等を、把持部52の外周面に設けても良い。図7(B)に示すように、把持部52の内部には空洞部521が備えられている。スポンジ53は、把持部52の下端面とヘッド部51の上端面との間に介在されている。スポンジ53としては、例えばウレタン系スポンジ、天然ゴム系スポンジ、ポリエチレン系スポンジを用いることができる。スポンジ53に代えて、他の弾性部材(ゴムや発泡材)等を用いても良い。
把持部52、スポンジ53及びヘッド部51は、これら部材を貫通するボルト54と、空洞部521内に配置されボルト54に締結されるナット55とによって一体化されている。但し、ボルト54は、ヘッド部51の貫通部分とはネジ係合しているものの、把持部52の貫通部分とはネジ係合していない。従って、使用者が把持部52から下方へ押圧力を与えると、スポンジ53が圧縮され、前記押圧力とスポンジ53の弾発力とがヘッド部51に加わる。
使用者は、把持部52を持ち、ヘッド部51に疲労センサ1を仮保持させ、疲労センサ1の裏面に接着剤を塗布する。その後、使用者は、マウント3のセンサ孔35にヘッド部51を挿入すると共に測定表面TSに向けて強く押圧する。これにより、保持面51Sに仮保持された疲労センサ1が、測定表面TSに転載される。以上の手順を、図8に基づき、さらに詳述する。
図8(A)〜(C)は、貼り付け治具5を用いた疲労センサ1の測定表面TSへの貼り付け手順を示す図である。ここでは、簡略化のため貼り付け治具5のうちヘッド部51だけを描いている。図8(A)は、ヘッド部51の保持面51Sへ、疲労センサ1を仮保持させる状況を示している。ここでは、保持面51Sと疲労センサ1とが同一のサイズである例を示している。
キャビティ512は、センサ箔11を収容可能な平面サイズを有する。すなわち、キャビティ512の短辺及び長辺は、センサ箔11の短辺及び長辺と同等、若しくはやや大きいサイズを有している。また、キャビティ512の押圧部511に対する深さd1は、センサ箔11の厚さd2よりも大きく設定されている(d1>d2)。これにより、キャビティ512の周囲の押圧部511は、センサ箔11と干渉することなく、ベース箔12(周縁部121)と当接が可能である。
使用者は、疲労センサ1を摘まみ、図8(A)に矢印a1で示すように、ヘッド部51の保持面51Sに真下からアプローチさせる。そして、図8(B)に示すように、センサ箔11の部分をキャビティ512に嵌め込むようにして、押圧部511にベース箔12の周縁部121を軽く押し付ける。すると、押圧部511には粘着剤が塗布されているので、疲労センサ1は保持面51Sに仮保持されるようになる。この際、上記のd1>d2の関係により、センサ箔11はキャビティ512の底面には接触しない。仮保持された疲労センサ1(ベース箔12)の裏面には、接着剤17が塗布される。接着剤17としては、例えばシアノアクリレート系の接着剤を用いることができる。
続いて使用者は、図8(C)に矢印a2で示すように、疲労センサ1を仮保持させたヘッド部51を、マウント3のセンサ孔35に嵌め込む。この際、第2開口352は疲労センサ1及びヘッド部51よりも大きい開口サイズを有し、また、テーパ内壁353がヘッド部51のセンサ孔35の進入をガイドする。従って、第2開口352からスムースに疲労センサ1を測定表面TSに接面させることができる。また、第1開口351と疲労センサ1とは同一の平面サイズであるので、前記接面によって自ずと疲労センサ1の位置決めを達成することができる。
疲労センサ1の前記接面の後、使用者は、把持部52を下方に強く押圧する。その押圧力は、スポンジ53を介してヘッド部51へ伝達される。すると、ヘッド部51の押圧部511がベース箔12の周縁部121を押下する。これにより、接着剤17が測定表面TSに密に付着し、疲労センサ1が測定表面TSに貼り付けられる。この際、把持部52とヘッド部51との間にスポンジ53からなる弾性層が介在されているので、ヘッド部51から与えられる押圧力を、周縁部121の全周に均等に伝達させることができる。従って、疲労センサ1の測定表面TSへの良好な接着状態を形成することができる。
以上の通り、本実施形態の貼り付け治具によれば、保持面に疲労センサ1を仮保持させた状態で、ヘッド部をマウントのセンサ孔に嵌め込むだけで、疲労センサ1をセンサ孔内の測定表面TSに貼り付けることができる。従って、疲労センサの測定表面への指定位置への貼り付け作業を、極めて簡素化することができる。また、疲労損傷度の測定部位であるスリットを有するセンサ箔は、保持面のキャビティに収容される。このため、疲労センサの貼り付け時に、センサ箔が損傷を受けないようにすることができる。
また、貼り付け治具は、使用者によって把持される把持部と、前記ヘッド部と前記把持部との間に介在される弾性部材とを備える。この構成によれば、使用者が把持部から与える押圧力と弾性部材の弾発力とがヘッド部に加わる。このため、操作性が良く、ヘッド部の押圧部から疲労センサのベース箔へ強い力を均等に与えることができる。従って、疲労センサの測定表面への貼り付け作業を、一層簡単且つ確実に行わせることができる。
さらに、貼り付け治具のヘッド部は、センサ孔の開口形状に合致する外形形状を有している。このため、貼り付け治具の位置合わせが容易となる。
[撮像の準備工程]
次に、図4(B)に示した、疲労センサ1の撮像準備工程について詳述する。この準備工程では、デジタル顕微鏡2に、アタッチメント6、ブラケット7及びホルダ8が取り付けられる。
<アタッチメント>
図9(A)、(B)は、デジタル顕微鏡2の先端部21に取り付けられるアタッチメント6の斜視図である。アタッチメント6は、アタッチメント本体61、テーパ突起62、受け面63及び内周面64(嵌合部)を備える。アタッチメント本体61は、円筒形状を備え、その円筒形状の一端面である先端面611と、他端面である基端面612とを有する。先端面611は、測定表面TSに当接される面である。基端面612は、デジタル顕微鏡2の先端部21に嵌め込まれる側の面である。先端面611には、前記円筒形状の一部が切り欠かれた切り欠き部613が設けられている。
テーパ突起62は、アタッチメント本体61の外周面から径方向外側へ突設されている。本実施形態では、3つの円弧型のテーパ突起62が、アタッチメント本体61の外周面に間隔を置いて配置されている例を示している。テーパ突起62の径方向外側への突出長は、先端面611側から基端面612側に向かうにつれ、大きくなっている。受け面63は、各テーパ突起62の最も突出した部分の上端面である。3つのテーパ突起62の3つの受け面63が周方向に並ぶことで、環状の受け面63が形成されている。
受け面63は、基端面612よりもやや下方に位置している。受け面63と基端面612との間には、径方向への突起の無い筒状周面からなる上部周面614が存在する。上部周面614は、デジタル顕微鏡2の先端部21に嵌め込まれる部分であり、受け面63は先端リング25に当止する部分である。一方、内周面64は、マウント3に嵌合する嵌合部となる。内周面64は、先端面611から基端面612まで同径の、フラットな円筒面である。内周面64は、マウント3の第1面32における径と略一致する内径を有する円筒内面からなる。但し、切り欠き部613において、前記円筒面の一部が欠けている。
図10は、アタッチメント6のデジタル顕微鏡2への装着状況を示す斜視図であり、図10(A)はアタッチメント6の装着前の状態、図10(B)は装着後の状態を各々示している。アタッチメント6は、デジタル顕微鏡2の先端部21に備えられている先端リング25に装着される。先端リング25は、撮像光軸方向の長さが比較的短い円筒体からなり、基準面251、リング内面252及びレンズ開口253を含む。基準面251は、先端リング25の先端面(下端面)であって、受け面63に対向する環状面である。リング内面252は、上部周面614の外径に略等しい内径を有している。レンズ開口253は、光像をデジタル顕微鏡2内へ取り入れる開口である。
アタッチメント6は、上部周面614がリング内面252に軽く圧入される態様で、デジタル顕微鏡2へ装着される。前記圧入は、アタッチメント6の受け面63が先端リング25の基準面251に当接する状態をもって完了となる。つまり、基準面251が、アタッチメント6を装着する際の位置決め基準面となる。
アタッチメント6は、デジタル顕微鏡2の撮像時の照明用に用いられる光線に対して透光性を有する部材によって形成されている。例えば、白色LEDが照明光源として用いられる場合、その波長の光を透過させる透明な部材にてアタッチメント6を構成することが望ましい。これにより、デジタル顕微鏡2にアタッチメント6を装着した場合でも、照明光の疲労センサ1への照射を阻害しないようにすることができる。
図11(A)〜(C)は、アタッチメント6の装着とデジタル顕微鏡2の合焦位置及び視野との関係を説明するための図である。図11(A)は、デジタル顕微鏡2に装着されたアタッチメント6がマウント3に嵌合されると共に、先端面611が測定表面TSに当接されている状態を示している。後記で詳述するが、ホルダ8が発生する付勢力によって、先端面611は測定表面TSに押し付けられる。
アタッチメント6は、測定表面TSに固着されたマウント3に、真上から外嵌される。図11(C)を参照して、マウント3の側周面34は、上方に向けて径小となるテーパ形状を有している。そして、アタッチメント6の内周面64は、側周面34の下端の大径部(第1面32)に略等しい内径を有する円筒内面である。このため内周面64は、前記外嵌の際に、側周面34のテーパ形状によって撮像光軸AX方向にガイドされる。そして、先端面611が測定表面TSに接面すると、アタッチメント6はマウント3に密に嵌合した状態、つまり位置決めされた状態となる。従って、テーパ形状の側周面34を利用して、アタッチメント6のマウント3への嵌合、並びに位置決めを容易に行わせることができる。
既述の通り、デジタル顕微鏡2に装着されたアタッチメント6が、上記のようにマウント3に嵌合されると、デジタル顕微鏡2の焦点及び視野が疲労センサ1のき裂部16に合致する。焦点の合致に関しては、先端リング25の基準面251とアタッチメント6の受け面63との位置関係によって達成されている。図11(B)に示すように、デジタル顕微鏡2には、複数のレンズを含む撮像光学系26と、撮像光学系26が作る光像を撮像する撮像素子27とが内蔵されている。
図11(A)に示すように、基準面251が受け面63に当接するようアタッチメント6がデジタル顕微鏡2に装着された状態で、アタッチメント6の先端面611が測定表面TSに当接したとする。すると、撮像光学系26が、測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1のき裂部16(疲労センサの所定位置)の合焦光像を、撮像素子27の受光面に作る。このように、基準面251と受け面63との位置関係は、先端面611が測定表面TSに当接したとき、デジタル顕微鏡2の焦点が疲労センサ1のき裂部16に合焦する位置関係に設定されている。つまり、アタッチメント6の先端面611を測定表面TSに当接させるだけで、合焦状態でき裂部16の撮像が行える状態となる。従って、使用者はデジタル顕微鏡2の合焦動作を省くことができ、疲労センサ1の観察作業を簡素化することができる。
上記の視野の合致に関しては、アタッチメント6とマウント3との嵌合によって達成される。図11(C)に基づき上述した通り、アタッチメント6はマウント3に密に嵌合する。詳しくは、アタッチメント本体61の内周面64(嵌合部)が、マウント本体部31の側周面34にガイドされ、最終的には先端面611における内周面64が第1面32における側周面34と嵌合する。そして、内周面64の内径と、第1面32における側周面34の外径は略同一である。これにより、デジタル顕微鏡2の位置が決まる。
デジタル顕微鏡2が位置決めされると、図11(C)に示すように、撮像光学系26によって作られるデジタル顕微鏡2の撮像光軸AX上に、測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1のき裂部16が位置する。つまり、アタッチメント6の内周面64は、デジタル顕微鏡2の視野が疲労センサ1のき裂部16に合うように、マウント本体部31に嵌合する。なお、必ずしも撮像光軸AX上にき裂部16が位置していなくとも良く、少なくともスリット15若しくは検知領域14が撮像光軸AX上に位置していれば良い。
このように、アタッチメント6とマウント3とを嵌合させるだけで、き裂部16がデジタル顕微鏡2の視野に入ると共に合焦する。このため、前記嵌合の状態においてデジタル顕微鏡2が撮像する画像にて、き裂部16の進展長さを直ちに測定可能な状態とすることができる。また、マウント3がテーパ面からなる側周面34を備えるので、アタッチメント6の内周面64のマウント本体部31への嵌合を容易に行わせることができる。すなわち、マウント本体部31は、第2面33側では比較的径小である。このため、内周面64を、容易にマウント本体部31へ進入させ得る。その後、内周面64はテーパ面の側周面34に案内されるので、マウント本体部31に対して内周面64を第1面32の位置まで容易に嵌合させることができる。そして、第1面32までの嵌合が完了すると、内周面64とマウント本体部31とは密に嵌合する。従って、カメラの視野合わせを的確に行わせることができる。
上記の嵌合の際、アタッチメント6の切り欠き部613と、マウント3の切り欠き部36とが位置合わせされる。図6に基づき説明した通り、マウント3の切り欠き部36は、溶接ビード93のような障害物との干渉を回避するために設けられている。このような切り欠き部36に、アタッチメント6の切り欠き部613が重畳されるよう嵌合させることで、溶接ビード93を回避し、アタッチメント6付のデジタル顕微鏡2を設置することが可能となる。
以上の通り、本実施形態のアタッチメントは、カメラの視野が測定表面に貼り付けられた疲労センサの所定位置に合うように、マウント本体部に嵌合する嵌合部を有する。このため、嵌合部をマウント本体部に嵌合させると、疲労センサの所定位置がカメラの視野に入る。従って、所定位置をセンサ箔のスリット部分に設定しておけば、前記カメラが撮像する画像にて、き裂の進展長さを直ちに測定可能な状態とすることができる。
また、マウント本体部は、アタッチメントの嵌合部が嵌合する側周面を備えた円錐台の形状を備え、側周面は、第1面から第2面に向けて径が縮小するテーパ面であり、嵌合部は、側周面の第1面における径と一致する内径を有する円筒内面とされている。このため、アタッチメントのマウント本体部への嵌合を容易に行わせることができる。すなわち、アタッチメントの円筒内面は、第2面側ではマウント本体部は比較的径小であるので、容易にマウント本体部へ進入させ得る。その後、円筒内面はテーパ面に案内されるので、アタッチメントを第1面の位置まで容易に嵌合させることができる。そして、第1面まで嵌合されると、アタッチメントとマウント本体部とは密に嵌合するので、カメラの視野合わせを的確に行わせることができる。
さらに、マウント本体部は、アタッチメントの嵌合部が嵌合する側周面を備えた円錐台の形状部分と、側周面の一部が切り欠かれてなる切り欠き部分とを備える。このため、測定表面の近傍に障害物が存在する場合に、切り欠き部分を利用して前記障害物を回避し、マウントを設置することができる。
<ブラケット>
続いて、デジタル顕微鏡2のテーパ面23に取り付けられるブラケット7について説明する。図12(A)は、ブラケット7の斜視図、図12(B)は、ブラケット7の半割れ片71の斜視図、図7(C)は、ブラケット7のデジタル顕微鏡2への装着状況を示す斜視図である。ブラケット7は、一対の半割れ片71の組み立て体からなり、筒部72と、一対の羽根部73(被ガイド部)とを有している。
筒部72は、デジタル顕微鏡2のテーパ面23のサイズに合致した内周面を有する筒体である。筒部72の内周面は、テーパ面23と同様なテーパ面である。羽根部73は、筒部72の外周面から径方向外側に延出する平板状の部分である。本実施形態では、一の羽根部73と他の羽根部73とが、筒部72の周方向に180度の間隔を置いて配置されている例を示している。
半割れ片71は、筒部72の半筒片である半筒部721と、羽根部73の重ね合わせ片である一対の羽根片731とを含む。一の半割れ片71及び他の半割れ片71が各々備える羽根片731同士が重ね合わされることにより、羽根部73が形成され、また、筒部72が形成される。一対の半割れ片71の組み立て方法としては、テーパ面23に一対の羽根片731を抱き合わせた上で、羽根片731への接着剤の塗布による接合、羽根片731同士のスポット溶接、或いは、羽根片731に穿孔されている接合孔732を用いたネジやリベットによる結合、等を例示することができる。若しくは、テーパ面23に接着剤を塗布し、筒部72の内周面と接合させても良い。
図12(C)に示すように、ブラケット7が装着されたデジタル顕微鏡2は、テーパ面23の位置において側周面に、胴部22のどの部分よりも径方向外側に突出した平板状の羽根部73を具備するようになる。従って、羽根部73を被ガイド部として他の部材(本実施形態ではホルダ8)にガイドさせることで、デジタル顕微鏡2を撮像光軸AX方向に移動させ易くすることができる。
<ホルダ>
次に、デジタル顕微鏡2を撮像光軸方向に移動可能に保持するホルダ8について説明する。図13(A)、(B)は、斜視方向を異ならせたホルダ8の斜視図である。図14(A)は、ホルダ8の上面図、図14(B)は、図14(A)のXIVB−XIVB線断面図である。ホルダ8は、ホルダ本体部81、線バネ82(付勢部材)、固定ピン83(ピン部材)、磁石部材84(固定部)、保持凹部85、スリット溝86(ガイド部)及びバネ溝87を備えている。なお、図13(A)〜図14(B)には、説明の便宜のために、XYZの方向表示が付されている。なお、Z方向が、デジタル顕微鏡2を撮像光軸方向である。測定表面TSが上向き又は下向きの水平面であれば、Z方向が上下方向となる。
ホルダ本体部81は、Z方向において互いに対向する上面811及び下面812(当接面)と、Y方向において互いに対向する表面813及び裏面814を含む。また、ホルダ本体部81は、X方向中央において上面811から下面812までZ方向に延びる保持凹部85と、保持凹部85のX方向両側に位置する一対の側壁部81Sとを有する。保持凹部85は、表面813から裏面814に向けて半円柱状に窪んだ凹部である。保持凹部85は、胴部22(カメラの側周面)の一部を露出させた状態でデジタル顕微鏡2を保持する。
スリット溝86は、デジタル顕微鏡2のZ方向への移動をガイドする溝であって、Z方向に直線的に延びている。スリット溝86は、一対の側壁部81Sに各々設けられ、デジタル顕微鏡2に装着されたブラケット7の一対の羽根部73を各々収容する。つまりスリット溝86は、ブラケット7付のデジタル顕微鏡2とホルダ8とが係合する部分である。保持凹部85の壁面に、スリット溝86の開口端が位置している。スリット溝86のX方向の深さ及びY方向幅は、羽根部73の径方向突出長及び厚さよりもやや長く設定されている。スリット溝86は、上面811から下面812までZ方向の全長に亘って延在している。
バネ溝87は、線バネ82を収容する溝であって、一対の側壁部81Sに各々、Y方向に延びるように設けられた細幅の溝である。バネ溝87は、上面811及び表面813に開口端を有している。Y方向においてバネ溝87は、保持凹部85よりも深い深さを有している。バネ溝87は、X方向に延びるスリット溝86を横切ってY方向に直進している。一対の側壁部81Sは各々、スリット溝86とバネ溝87とが直交(交差)する交差部88を有する。Z方向においてバネ溝87は、上面811から側壁部81SのZ方向全長の1/4程度の深さを有している。
線バネ82は、バネ性を備えた金属の線材からなる。線バネ82は、スリット溝86に係合されたブラケット7の羽根部73を、測定表面TSに向かう方向に付勢する。かかる付勢によって、デジタル顕微鏡2に装着されたアタッチメント6の先端面611は、測定表面TSに押し付けられる。線バネ82が羽根部73を付勢(接触)する位置は、交差部88である。
図14(B)に示すように、線バネ82は、バネ溝87内において片持ち支持されている。具体的には、線バネ82の根元部821は、ホルダ本体部81(側壁部81S)に穿孔された細孔に密に嵌め込まれ、固定されている。一方、根元部821以外の、線バネ82の他の部分は、バネ溝87内において変形可能な可動部822となっている。本実施形態の可動部822は、羽根部73の付勢時には、先端部がバネ溝87から飛び出し、上面811の上方へ突出するほどの変形が可能である。このように、バネ溝87内に配置された線バネ82は、羽根部73の延在方向(X方向)と交差する方向(Y方向)から、交差部88において羽根部73を付勢する。従って、効率良く線バネ82の付勢力を羽根部73に与えることができる。
固定ピン83は、金属の線材からなり、羽根部73のストッパとしての機能を有する。換言すると固定ピン83は、ブラケット7付のデジタル顕微鏡2のホルダ8からの抜け止めの役目を果たす。固定ピン83は、線バネ82よりも測定表面TSに近い側において、ホルダ本体部81に固定的に保持されている。図14(B)に示すように、固定ピン83は、線バネ82の真下の方向(Z方向)に、線バネ82に対して所定間隔を置いて平行に配置されている。自然状態の線バネ82と固定ピン83との間のZ方向の長さは、羽根部73のZ方向幅と同一に設定されている。固定ピン83は、側壁部81SにY方向へ穿孔された細孔に大部分が挿入されて隠れているが、スリット溝86において露出している。固定ピン83は、前記細孔に密に嵌め込まれ、実質的に変形ができないように固定されている。
ホルダ本体部81において、測定表面TSに接面する当接面は、下面812である。磁石部材84は、磁力によって測定表面TSに下面812を固定する固定部として機能する。磁石部材84は、円柱型の永久磁石からなり、下面812に吸着面が表出するようにホルダ本体部81に組付けられている。磁石部材84は、一対の側壁部81Sに各々配置されている。
一方の側壁部81Sの磁石部材84と、他方の側壁部81Sの磁石部材84とは、保持凹部85を挟んでX方向に並んでいる。つまり、デジタル顕微鏡2を挟んだ2点の固定部で、ホルダ8が測定表面TSに固定される。このような固定部は、被測定物Tが強磁性体である場合、ワンタッチでホルダ8を測定表面TSに固定することができるので好ましい。また、3点以上で磁石固定する場合に比べて、ホルダ8の測定表面TSからの取り外しも容易となるので好ましい。なお、被測定物Tが強磁性体でない場合は、挟持機構、ネジ固定機構、吸盤などをホルダ8の固定部として採用することができる。
図15(A)は、ホルダ8のデジタル顕微鏡2への装着状況を示す上方からの斜視図、図15(B)は、前記装着状況の下方からの斜視図であって一部破断箇所を含む図である。デジタル顕微鏡2に一体化されたブラケット7の一対の羽根部73が、ホルダ8が備える一対のスリット溝86に各々嵌め込まれることによって、ホルダ8がデジタル顕微鏡2へ装着されている。この嵌め込みの際には、線バネ82の先端部が交差部88から外れるまで持ち上げられる。嵌め込み後は、図15(B)の破断部に示されているように、羽根部73の下端が固定ピン83に当止すると共に、羽根部73の上端に線バネ82が当接する。
ホルダ8の保持凹部85は、デジタル顕微鏡2の胴部22の全周を取り囲んで保持するのではなく、胴部22の一部を露出させた状態でデジタル顕微鏡2を保持する。このようなホルダ8であれば、胴部22の露出部分では、ホルダ8がスペースを占有することはない。このため、測定表面TSが狭隘な箇所に存在したり、測定表面TSの近傍に垂直フレーム92や溶接ビード93(図6)のような障害物が存在したりする場合であっても、デジタル顕微鏡2を設置し易くすることができる。
なお、ブラケット7の羽根部73は、ホルダ8のスリット溝86に所定の遊びをもって係合することが望ましい。また、前記遊びによってデジタル顕微鏡2が揺動可能なように、胴部22と保持凹部85の内面との間には所定幅の隙間を具備させることが好ましい。測定表面TSは高度に平坦な面とは限らず、若干の凹凸が存在することある。もし、デジタル顕微鏡2にホルダ8がリジットに係合されていると、ホルダ8の下面812が前記凹凸への接面によって傾きが生じた場合に、デジタル顕微鏡2も傾いてしまう。この場合、撮像光軸AXに傾きが生じ、デジタル顕微鏡2の焦点や視野がき裂部16からズレてしまう。
本実施形態では、線バネ82の付勢力で先端面611が測定表面TSに押し当てられることにより、デジタル顕微鏡2が測定表面TSに貼り付けられた疲労センサ1に位置決めされる仕組みを有する。従って、デジタル顕微鏡2がホルダ8に対して少々揺動しても、デジタル顕微鏡2の焦点及び視野に影響は生じない。むしろ、リジットな係合であると、測定表面TSの表面状態によっては、線バネ82によるデジタル顕微鏡2の位置決め状態を破壊してしまう。従って、デジタル顕微鏡2は、ホルダ8に対して所定の裕度を持って係合させることが望ましい。
図16(A)、(B)は、デジタル顕微鏡2を保持したホルダ8の、測定表面TSへの取り付け状況を示す一部破断側面図である。図16(A)は、線バネ82がデジタル顕微鏡2と一体の羽根部73を実質的に付勢しない自然状態である第1状態を示す。図16(B)は、線バネ82が羽根部73に対して付勢を行っている第2状態を示している。
図16(A)の第1状態は、磁石部材84が測定表面TSへ固定されていない状態である。第1状態では、羽根部73の下端が固定ピン83に当止している。つまり、羽根部73が最も深い位置までスリット溝86に嵌まり込んだ状態である。このとき、デジタル顕微鏡2に装着されているアタッチメント6の先端面611(カメラに一体化されたカメラ先端部)は、ホルダ本体部81の下面812(当接面)から距離d3だけ突出した状態となる。この距離d3が、デジタル顕微鏡2の撮像光軸AX方向への変位代となる。
図16(B)の第2状態では、磁石部材84が測定表面TSに磁力によって吸着し、ホルダ8の下面812が測定表面TSに固定されている状態である。この固定によって、アタッチメント6は上方へ退行する。つまり、羽根部73がスリット溝86にガイドされて上方へ移動し、これに伴いデジタル顕微鏡2も上方へ移動する。これにより、先端面611と下面812とが面一となる。このときの先端面611の移動量d4は、上記の距離d3に等しい。
羽根部73の上方への移動に伴って、羽根部73の下端が固定ピン83から離間する。一方、羽根部73の上端によって、線バネ82が移動量d4の分だけ上方へ押される。これにより、線バネ82は上向きに撓むようになる。すなわち、線バネ82が羽根部73を下方へ押圧する付勢力を発生するようになる。従って、先端面611は、移動量d4に応じた線バネ82の付勢力によって測定表面TSに押し付けられる。このため、図11(C)に示したような、デジタル顕微鏡2の視野及び焦点が定まる如き先端面611の測定表面TSへの接面を、安定的に達成することができる。
しかも、使用者が行う作業は、先端面611が突出した状態でデジタル顕微鏡2を保持しているホルダ8を、磁石部材84によって測定表面TSにワンタッチ固定作業だけである。このワンタッチ固定によって、自ずと先端面611がホルダ8内に没入し、線バネ82の付勢力が羽根部73に作用する。従って、先端面611を極めて簡単に測定表面TSに押し付けることができる。なお、磁石部材84の測定表面TSへの吸着力は、線バネ82のバネ力よりも十分に強いものであることが望ましい。
以上の通り、本実施形態によれば、測定表面TSに対し、デジタル顕微鏡2を保持したホルダ8を固定することができる。このため、測定現場においてデジタル顕微鏡2にて、測定表面TSに貼り付けられた状態の疲労センサ1の画像を直接撮像させることができる。つまり、上述したレプリカフィルムへの転写、測定室での撮像といったオフラインでの作業が不要となる。従って、き裂部16の進展長さの測定作業の大幅な簡素化を実現できる。また、デジタル顕微鏡2と一体の羽根部73が、スリット溝86によってガイドされて撮像光軸AX方向に移動する。このため、デジタル顕微鏡2を、撮像光軸AX回りの回動を規制した状態で、撮像対象の疲労センサ1にセッティングすることができ、デジタル顕微鏡2の位置決めを容易に行わせることができる。さらに、線バネ82がカメラの羽根部73を測定表面TSへ向かう方向に付勢するので、デジタル顕微鏡2を測定表面TSに安定的に接眼させることができる。
[き裂進展長さの測定工程]
図17は、マウント3内に貼り付けられた疲労センサ1の、デジタル顕微鏡2による撮像状況を示す側面図である。すなわち、図4(C)に示した、き裂部16の進展長さの測定工程を示す図である。図17では、図6(A)に例示した構造物9の指定位置Pに固着されたマウント3に、デジタル顕微鏡2に装着されたアタッチメント6が嵌合されている例を示している。なお、ホルダ8の記載を省いている。アタッチメント6の切り欠き部613が、マウント3の切り欠き部36と共に溶接ビード93と対峙するように、アタッチメント6はマウント3に嵌合されている。図示は省いているが、ホルダ8の表面813が垂直フレーム92する姿勢で、ホルダ8はデジタル顕微鏡2に係合している。
デジタル顕微鏡2のケーブル24は、パーソナルコンピュータPCに接続されている。デジタル顕微鏡2が撮像する画像は、パーソナルコンピュータPCのディスプレイ94に表示される。図16(B)に示したような操作により、既に観察対象となる疲労センサ1のき裂部16がデジタル顕微鏡2の視野に入り、且つ合焦している。使用者は、デジタル顕微鏡2に撮像を実行させると共に、その撮像画像をディスプレイ94に表示させる操作を行う。使用者は、ディスプレイ94に表示されたき裂部16及びその周辺の画像上において、き裂部16の進展長さを測定する。
[カバーの装着工程]
図18は、図4(D)に示した工程に対応するものであって、マウント3へのカバー4の装着状況を示す斜視図である。き裂部16の進展長さの測定後、デジタル顕微鏡2を保持するホルダ8が、測定表面TSから取り外される。すると、マウント3のセンサ孔35を通して、疲労センサ1が外部へ露出した状態となる。疲労センサ1に塵埃や雨水等が付着して汚濁したり、飛来物や小動物等が干渉して破損したりすると、疲労センサ1のセンシング精度を悪化させる。これらの不具合を防止するために、マウント3にカバー4が装着される。
カバー4のフラット部43とマウント3の切り欠き部36とを位置合わせして、カバー4はマウント3に外嵌される。カバー4が装着されると、被覆面41は、マウント本体部31の第2面33に当接し、センサ孔35を塞ぐ。また、カバー側周面42は、マウント本体部31の側周面34に近接乃至は当接する。カバー4は、単にマウント3に嵌め込むだけでなく、マウント3への何らかの結合手段を施与しておくことが望ましい。例えば、マウント本体部31の第2面33又は側周面34に、接着剤を塗布しておき、カバー4とマウント3とを接合させることができる。
図19は、測定表面TS上においてカバー4が装着されたマウント3の断面図であって、カバー4とマウント3との結合手段の一例を示す図である。図9では、インロー部44によって、カバー4とマウント3とが係合されている例を示している。インロー部44は、マウント3の側周面34の下端に設けられた環状の凹溝と、カバー側周面42の下端の内周面に突設された環状の凸条とからなる。マウント3の前記凹溝にカバー4の前記凸条が嵌まり込むことで、マウント3がカバー4に係合される。
なお、疲労センサ1による疲労損傷度の測定期間中は、カバー4をマウント3に複数回着脱することになる。すなわち、次回の測定時にはマウント3からカバー4が取り外され、センサ孔35を通して疲労センサ1が露出される。その次回の測定後、再びマウント3にカバー4が装着され、次々回の測定に備える。このため、前記結合手段として接着剤を採用する場合は、その接着剤は易剥離性のものを用いることが望ましい。また、インロー部44も比較的容易にカバー4をマウント3から離脱可能な構造とすることが望ましい。なお、一般的な車両用構造物の場合、疲労損傷度の測定期間は、半年〜数年程度、測定インターバルは数ヶ月程度である。
[工程チャート]
続いて、疲労センサ1を用いた疲労損傷度測定の実際の作業フローを示す。図20は、初回の疲労センサ1の構造物9(被測定物;図6)への貼付作業の手順を示す工程チャートである。先ず、構造物9の測定表面9Sにおいて、疲労センサ1の貼り付け位置として指定されている指定位置Pの清掃、脱脂が行われる(工程S1)。例えば、所定の薬液を染み込ませた布による指定位置Pの拭き取りが行われる。次に、マウント3の測定表面9Sへの貼り付け面となる第1面32の固着面3P(図5)に、接着剤が塗布される(工程S2)。そして、マウント3が指定位置Pに貼り付けられる(工程S3)。
続いて、図7、図8に示したように、疲労センサ1が、貼り付け治具5のヘッド部51が具備する保持面51Sに仮付けされる(工程S4)。この仮付けは、ヘッド部51の周縁の押圧部511と、ベース箔12の周縁部121との間の仮接着であり、センサ箔11はキャビティ512内に収容される。次に、ヘッド部51に仮保持された疲労センサ1の下面に、測定表面9Sへの本接着用の接着剤が塗布される(工程S5)。その後、図8(C)に示すように、ヘッド部51がマウント3のセンサ孔35に嵌め込まれる。そして、貼り付け治具5が測定表面9Sに向けて強く押圧されることで、疲労センサ1が測定表面9Sに貼り付けられる(工程S6)。
続いて、図10、図12に示したように、デジタル顕微鏡2の先端部21にはアタッチメント6が、胴部22のテーパ面23には羽根部73を有するブラケット7が、各々取り付けられる(工程S7)。さらに、図15に示したように、デジタル顕微鏡2にはホルダ8が取り付けられる(工程S8)。この取り付けの作業は、ホルダ8のスリット溝86にブラケット7の羽根部73を嵌め込む作業である。これにより、デジタル顕微鏡2は、アタッチメント6、ブラケット7及びホルダ8の3つの治具が取り付けられた状態となる。なお、この状態では、図16(A)に示した通り、アタッチメント6の先端面611が、ホルダ本体部81の下面812から距離d3だけ突出している。
次に、デジタル顕微鏡2に装着されているアタッチメント6が、工程S3で測定表面9Sの指定位置Pに固着されたマウント3に嵌め込まれる(工程S9)。さらに、ホルダ8の磁石部材84が測定表面9Sに吸着することで、ホルダ8の下面812が測定表面9Sに固定される(工程S10)。この固定によって、図16(B)に示したように、線バネ82が羽根部73を付勢し、結果としてアタッチメント6の先端面611が測定表面9Sに押し付けられる。この段階でデジタル顕微鏡2の位置決めは完了し、その視野及び焦点が、疲労センサ1のき裂部16に合った状態となる。
その後、図17に示したように、デジタル顕微鏡2による疲労センサ1の撮像が行われる(工程S11)。デジタル顕微鏡2が撮像した画像は外部機器、例えばパーソナルコンピュータPCのディスプレイ94に表示される。その表示画像上で、き裂部16の評価が為される(工程S12)。初回の貼り付け作業時では、この工程S12は、き裂部16が正常なデフォルト長であるか否かを確認する作業となる。一方、次回以降の測定時には、ディスプレイ94への表示画像上において、き裂部16の進展長さを直読する作業となる。
しかる後、デジタル顕微鏡2を保持した状態のホルダ8が、測定表面9Sから取り外される(工程S13)。そして、マウント3にカバー4が装着され(工程S14)、当該指定位置Pでの作業が完了する。構造物9に、他の指定位置Pが存在するならば、その他の指定位置Pに貼り付けられたマウント3に対してホルダ8を組み付け、同様の作業が繰り返される。他の指定位置Pが存在しない場合は、ホルダ8とデジタル顕微鏡2との係合を解除すると共に、必要に応じて、デジタル顕微鏡2からアタッチメント6及びブラケット7も取り外される。
図21は、次回以降に行われる構造物9の点検作業の手順を示す工程チャートである。次回以降は、撮像の準備作業が容易となる。すなわち、マウント3からカバー4を取り外す作業(工程S21)を行うだけで、撮像スタンバイ状態となる。従来のように、ハンマーとスクレーパを用いた作業は不要となり、疲労センサ1を破損させる虞はない。その後、図20に示した工程S7〜S14を実行(工程S22)することで、作業は完了する。
[変形例]
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、マウント3のマウント本体部31が、テーパ型の側周面34を有する円錐台形状のものを例示した。側周面34をテーパ面とせず、鉛直方向に延びる側壁としても良い。また、マウント本体部31が他の形状、例えば四角錐の形状を備えるものとしても良い。さらに、切り欠き部36を備えたマウント本体部31を例示したが、近傍に障害物が存在しない位置が指定位置Pとされている場合は、切り欠き部36を省いても良い。
(2)上記実施形態では、貼り付け治具5として、ヘッド部51及び把持部52と、これらの間に介在されるスポンジ53とを含む治具を例示した。これに変えて、スポンジ53を省き、ヘッド部51と把持部52とが直結された貼り付け治具5としても良い。或いは、ヘッド部51の全体、又は、ヘッド部51の保持面51S近傍を、ゴムのような弾性部材で構成した貼り付け治具5としても良い。
(3)アタッチメント6については、デジタル顕微鏡2の先端部21の形状に応じて、種々態様を変更しても良い。例えば、先端部21において径方向外側に突出するピンが備えられている場合は、アタッチメント本体61に前記ピンが当止する受け面を設けるようにしても良い。また、テーパ突起62及び受け面63を、アタッチメント本体61の外周面ではなく、内周面64側に設けるようにしても良い。
(4)ブラケット7については、被ガイド部として、平板状の羽根部73を有する例を示した。被ガイド部の形態としては、少なくとも線バネ82のような付勢部材から付勢を受け得る形状を有する限りにおいて、種々変更が可能である。例えば直方体(羽根片731を厚肉化したもの)の羽根部73としても良い。
(5)ホルダ8については、付勢部材として線バネ82を備える例を示した。付勢部材は、板バネ、皿バネ或いはコイルバネを用いるようにしても良い。また、固定ピン83で羽根部73を当止させる例を示した。これに代えて、スリット溝86を上面811から固定ピン83の位置までしか設けないようにして、その溝底で羽根部73を当止させるようにしても良い。
(6)上記実施形態では、き裂部16の進展長さの測定時にはカバー4をマウント3から取り外し、測定後にはカバー4をマウント3に被せる例を示した。これに代えて、疲労センサ1を貼り付け、初回の測定を行った後は、カバー4をマウント3に装着したままで、次回の測定を行うようにしても良い。この実施形態では、カバー4としては、デジタル顕微鏡2の照明光を透過する透光性のカバー4が用いられる。また、アタッチメント6の内周面は、カバー4の外周面に合致する内径とされる。
き裂部16の進展長さの測定時には、カバー4が装着された状態のマウント3に、アタッチメント6を取り付けたデジタル顕微鏡2を嵌合させ、カバー4の被覆面41を通してき裂部16の撮像を行う。測定後は、被覆面41に易剥離性の保護シール等を貼り付け、当該被覆面41の汚れや損傷を防止することが望ましい。その次の測定時には、前記保護シールを被覆面41から引き剥がし、上記と同様にカバー4をマウント3に装着したままで、デジタル顕微鏡2によるき裂部16の撮像を行う。この実施形態によれば、カバー4のマウント3に対する着脱作業を省くことができる利点がある。