以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10の縦断面を模式的に示した図である。図2は、図1のA−A断面を示す図である。
ハイブリッド加熱炉10は、図1に示すように、炉本体20と、炉本体20の上部に配置された燃焼装置30と、炉本体20内の加熱ガスを排出する排気通路40と、排気通路40に設けられた熱交換器50と、炉本体20の内壁に配置された電気式ヒータ60とを備える。また、ハイブリッド加熱炉10は、ハイブリッド加熱炉10を制御する制御装置90を備える。なお、炉本体20の上部とは、炉本体20の鉛直方向の上部をいう。
上記したように、ハイブリッド加熱炉10は、被加熱物を加熱する機構として、燃焼装置30および電気式ヒータ60を備えている。
炉本体20は、例えば、筒状の側壁部21と、この側壁部21の上端開口を塞ぐ上蓋22と、側壁部21の下端開口を塞ぐ下蓋23と、側壁部21、上蓋22、下蓋23のそれぞれの内面に設けられた断熱材24とを備える。なお、断熱材24は、炉本体20の内壁として機能する。
側壁部21、上蓋22、下蓋23は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料で構成される。断熱材24は、例えば、耐火断熱材などで構成される。なお、側壁部21、上蓋22、下蓋23および断熱材24の材料は、特に限定されるものではない。
図2に示すように、炉本体20の側壁部21の、排気通路40が形成される側とは異なる側の一つの側壁部21aは、開閉可能に構成されている。側壁部21aは、隣り合う側壁部21に、例えば、ヒンジ26などによって開閉可能に接続されている。このように側壁部21aを開閉可能に構成することで、炉本体20内に被加熱物を配置し、または炉本体20内から被加熱物を取り出すことができる。
炉本体20内の底部には、被加熱物を配置するための載置台70が備えられている。載置台70は、図1に示すように、被加熱物を置く載置板71と、載置板71を下方から支持する脚部72とを備える。載置板71と炉本体20内の底面との間には、所定の高さの隙間が形成されている。また、図2に示すように、載置板71と炉本体20の内壁(断熱材24)との間には、加熱ガスが流れるための隙間が設けられている。
炉本体20の側壁部21の、排気通路40が形成される側の下部には、炉本体20内と排気通路40とを連通させるための連通口25が形成されている。なお、炉本体20の下部とは、炉本体20の鉛直方向の下部をいう。
なお、ここでは、図2に示すように炉本体20の水平断面形状が矩形である一例を示しているが、この構成に限られるものではない。炉本体20の水平断面形状は、例えば、円形、多角形などであってもよい。
炉本体20の上部には、燃焼装置30が配置されている。燃焼装置30は、被加熱物を加熱するための加熱ガスとしての燃焼ガスを生成する。
燃焼装置30は、例えば、図1に示すように、パイロットバーナ100とメインバーナ110を備える。パイロットバーナ100は、中央に配置され、パイロットバーナ100の周囲にメインバーナ110が配置されている。
パイロットバーナ100は、燃焼装置30の作動時にイグナイタなどの点火装置(図示しない)によって着火される。なお、パイロットバーナ100によって発生する熱量は、メインバーナ110によって発生する熱量よりも小さい。
パイロットバーナ100は、中央に燃料を噴出する管状のパイロット用燃料噴出部101と、パイロット用燃料噴出部101の周囲に酸化剤を噴出する環状のパイロット用酸化剤噴出部102を備える。パイロット用酸化剤噴出部102の環状の通路には、例えば、通過した酸化剤の流れに旋回成分を与えるスワーラ103が備えられる。なお、スワーラ103は、火炎を安定して保持する保炎器としても機能する。
パイロット用燃料噴出部101は、パイロット用燃料供給管104を介して燃料供給源106から供給された燃料を炉本体20内に噴出する。パイロット用燃料供給管104には、パイロット用燃料噴出部101に供給される燃料の流れを遮断する遮断弁104aが介在している。なお、パイロット用燃料噴出部101に供給される燃料の流量は、所定の流量になるように調整されている。
パイロット用酸化剤噴出部102は、パイロット用酸化剤供給管32を介して供給された酸化剤を炉本体20内に噴出する。なお、パイロット用酸化剤噴出部102に供給される酸化剤の流量は、所定の流量になるように調整されている。
パイロット用燃料噴出部101から炉本体20内に噴出された燃料と、パイロット用酸化剤噴出部102から炉本体20内に噴出された酸化剤とが燃焼して、パイロット火炎を形成する。
メインバーナ110は、パイロット用酸化剤噴出部102の周囲に燃料を噴出する環状のメイン用燃料噴出部111と、メイン用燃料噴出部111の周囲に酸化剤を噴出する環状のメイン用酸化剤噴出部112を備える。メイン用酸化剤噴出部112の環状の通路には、例えば、通過した酸化剤の流れに旋回成分を与えるスワーラ113が備えられる。なお、スワーラ113は、火炎を安定して保持する保炎器としても機能する。
メイン用燃料噴出部111は、メイン用燃料供給管105を介して燃料供給源106から供給された燃料を炉本体20内に噴出する。メイン用燃料供給管105には、メイン用燃料噴出部111に供給する燃料の流量を調整する燃料流量調整弁105aおよびメイン用燃料噴出部111に供給される燃料の流れを遮断する遮断弁105bが介在している。また、例えば、遮断弁105bと燃料供給源106との間には、メイン用燃料噴出部111に供給される燃料の流量を検出する燃料流量計105cが介在している。
メイン用酸化剤噴出部112は、メイン用酸化剤供給管33を介して供給された酸化剤を炉本体20内に噴出する。メイン用酸化剤供給管33には、メイン用酸化剤噴出部112に供給する酸化剤の流量を調整する酸化剤流量調整弁33aおよびメイン用酸化剤噴出部112に供給される酸化剤の流量を検出する酸化剤流量計33bが介在している。
メイン用燃料噴出部111から炉本体20内に噴出された燃料と、メイン用酸化剤噴出部112から炉本体20内に噴出された酸化剤とが燃焼して、メイン火炎を形成する。
ここで、燃料としては、特に限定されないが、例えば、都市ガスやプロパンガスなどのガス燃料が挙げられる。酸化剤としては、空気などが挙げられる。
また、パイロット用酸化剤供給管32およびメイン用酸化剤供給管33は、酸化剤供給管31が分岐した管である。なお、この酸化剤供給管31については後述する。
上記したように、パイロット用酸化剤噴出部102やメイン用酸化剤噴出部112の環状の通路には、スワーラ103、113が備えられる。
ここで、スワーラ103、113によって与えられる流れの旋回成分を大きくすることで、図1に示すように、コーン状の火炎35の周方向への広がりを大きくするとともに、火炎35の長さ(下方方向の長さ)を短くすることができる。このように旋回成分を大きくして火炎35の広がりを大きくすることで、炉本体20内の全体に行き渡る加熱ガスの流れ場を形成することができる。このように加熱ガスが炉本体20内の全体に対流することによって、被加熱物を均一な温度で加熱することができる。
なお、燃焼装置30における加熱は、いわゆるガス加熱方式であり、上記した対流加熱以外にも、例えば、火炎からの熱放射による加熱なども作用する。
また、被加熱物を配置する領域、いわゆる炉内有効加熱領域37は、火炎35が直接接触しない領域に設定される。上記したように、火炎35の長さを短くすることで、炉本体20内において炉内有効加熱領域37を広く設定することができる。
この炉内有効加熱領域37は、被加熱物を均一な温度で加熱することができる領域である。図1において、載置台70上の炉内有効加熱領域37の境界を破線で示している。この破線内が炉内有効加熱領域37となる。
なお、ここでは、パイロットバーナ100およびメインバーナ110の燃焼方式として、燃料と酸化剤をそれぞれ別々に炉本体20内に噴出して燃焼させる拡散燃焼方式を採用した一例を示したが、この構成に限られない。パイロットバーナ100とメインバーナ110における燃焼方式は、燃料と酸化剤とを混合した混合気を炉本体20内に噴出して燃焼させる予混合燃焼方式であってもよい。
なお、予混合燃焼方式を採用する場合においても、予混合気をスワーラを通過せて炉本体20内に噴出することで、前述したような周方向に広がったコーン状の短炎を形成することができる。
排気通路40は、被加熱物を加熱した加熱ガスを炉本体20内から排気口41に導く。排気通路40は、排気筒42内に形成される。排気筒42は、側壁部43と、側壁部43の内面に設けられた断熱材44とを備える。排気通路40は、炉本体20の側壁部21の下部に形成された連通口25と排気口41との間における断熱材44の内側の通路によって構成される。
なお、側壁部43および断熱材44を構成する材料は、炉本体20を構成する側壁部21および断熱材24とそれぞれ同様である。
排気通路40には、熱交換器50が備えられている。この熱交換器50は、酸化剤供給管31に介在している。すなわち、酸化剤供給管31内を流れる酸化剤が熱交換器50内を流れ、排気通路40を流れる加熱ガスが熱交換器50の外側を流れる。
そして、熱交換器50において、排気通路40を流れる加熱ガスと酸化剤供給管31を流れる酸化剤との間で熱交換がなされ、酸化剤が加熱される。
ここで、酸化剤供給管31には、例えば、ブロアなどの送風機36が介在する。そして、送風機36によって、大気(空気)を酸化剤供給管31に導入する。
酸化剤供給管31は、熱交換器50よりも下流側で分岐され、前述したパイロット用酸化剤供給管32およびメイン用酸化剤供給管33を構成する。そのため、熱交換器50において加熱された酸化剤は、酸化剤供給管31から、パイロット用酸化剤供給管32またはメイン用酸化剤供給管33に導入される。
なお、熱交換器50を通過することで熱量を放出した加熱ガスは、排気口41から大気中に放出される。
炉本体20の内壁として機能する断熱材24には、電気式ヒータ60が配置されている。電気式ヒータ60は、熱放射によって被加熱物および加熱ガスを加熱するとともに、熱伝達によっても加熱ガスを加熱する。
電気式ヒータ60は、図1および図2に示すように、炉内有効加熱領域37を囲むように、断熱材24の内壁面24aに周方向に設けられている。周方向に設けられた電気式ヒータ60は、例えば、図2に示す炉本体20の内壁を構成する4つの面のそれぞれに、高さ位置を同じにして設けられている。
また、電気式ヒータ60は、図1に示すように、炉本体20の高さ方向に複数段配置されている。ここでは、炉本体20の高さ方向に、電気式ヒータ60を3段備えた構成を例示している。なお、上段の電気式ヒータには60a、中段の電気式ヒータには60b、下段の電気式ヒータには60cの符号を付している。
電気式ヒータ60a、60b、60cは、断熱材24に形成された溝部24bに嵌合されている。そして、電気式ヒータ60a、60b、60cの炉内有効加熱領域37側の面は、露出している。
電気式ヒータ60a、60b、60cは、火炎35に直接曝されないように配置されている。電気式ヒータ60a、60b、60cは、炉本体20内を流れる加熱ガスの温度に耐えることができる材料で構成されている。電気式ヒータ60a、60b、60cとしては、例えば、電流を流すことで発生するジュール熱によって発熱するヒータなどが使用される。
なお、図示しないが、各電気式ヒータ60a、60b、60cには、電力を供給する電力供給ラインがそれぞれ接続されている。
ここで、図1に示すように、炉本体20内には、加熱ガスの流れ場の温度を検出する温度検出部80が設けられている。温度検出部80は、加熱ガスが強制対流することで形成される流れ場における加熱ガスの代表的な温度を検出できる位置に配置されることが好ましい。この際、温度検出部80は、例えば、電気式ヒータ60a、60b、60cにおける熱放射による影響を受けにくい位置に配置されることが好ましい。
温度検出部80は、例えば、図1に示すように、炉本体20内の上部であり、炉内有効加熱領域37の上部となる位置に配置される。この位置では、流れ場を形成する、燃焼装置30で生成した加熱ガスとしての燃焼ガスの温度を検出することができる。
また、炉本体20内には、炉内有効加熱領域37内における加熱ガスの温度を検出する温度検出部81a、81b、81cが設けられている。温度検出部81a、81b、81cは、炉本体20の高さ方向に3段配置された電気式ヒータ60に対応して、それぞれ設置されている。すなわち、各電気式ヒータ60に対応して、3箇所に温度検出部が備えられている。温度検出部80、81a、81b、81cは、例えば、熱電対などで構成される。
なお、温度検出部80は、加熱ガスの流れ場の複数個所に設けられてもよい。また、温度検出部81a、81b、81cは、それぞれが配置された高さ位置の複数個所に設けられてもよい。そして、複数個所に設けられた温度検出部からの出力に基づいて算出された平均温度を代表温度としてその温度検出部によって検出された温度としてもよい。
なお、温度検出部80は、第1の温度検出部として機能し、温度検出部81a、81b、81cは、第2の温度検出部として機能する。
ここで、図3は、制御装置90の構成を示すブロック図である。
制御装置90は、演算素子(CPU)、メモリなどを備える演算機能ブロックである。なお、制御装置90が実行する処理は、例えば、マイクロコンピュータなどのコンピュータ装置などで実現される。
制御装置90は、演算部91と、記憶部92と、燃焼装置制御部94と、電気式ヒータ制御部95とを備える。また、制御装置90は、外部の機器と信号の入出力を行う入出力インターフェース93を備える。
入出力インターフェース93は、温度検出部80、81a、81b、81c、燃料流量計105c、酸化剤流量計33b、ハイブリッド加熱炉10の運転設定条件などを入力する入力装置(図示しない)、時間を計測するタイマ(図示しない)などと各種信号の入出力が可能に接続されている。
演算部91は、記憶部92に格納されたプログラムやデータベースなどを用いて各種の演算処理や判定などを実行する。また、演算部91は、コンピュータプログラムの起動や、入出力インターフェース93を介して入力された情報の各機能ブロックへの伝達などを行う。
記憶部92は、例えば、ハイブリッド加熱炉10を起動するためのプログラム、温度検出部80によって検出された加熱ガスの温度に基づいて燃焼装置30や電気式ヒータ60a、60b、60cから供給される熱量を調整するためのデータベース、設定炉内温度に基づく燃料流量および酸化剤流量のデータベース、設定炉内温度に基づく電気式ヒータ60a、60b、60cに負荷する電力のデータベースなどが記憶されている。また、記憶部92は、入出力インターフェース93を介して入力された各種情報なども記憶する。
なお、記憶部92が記憶するデータベースなどは、これらに限られない。記憶部92は、実行処理に必要な他のデータベースなども記憶している。
燃焼装置制御部94は、例えば、演算部91からの演算処理に基づいて燃焼装置30の各機器を制御する。例えば、燃焼装置制御部94は、演算部91からの演算処理に基づいて、遮断弁104a、105b、燃料流量調整弁105a、送風機36および酸化剤流量調整弁33aなどを制御する。
電気式ヒータ制御部95は、例えば、演算部91からの演算処理に基づいて電気式ヒータ60a、60b、60cに負荷する電力を制御する。
次に、ハイブリッド加熱炉10の作用について説明する。
図4は、ハイブリッド加熱炉10の作用を説明するためのフローチャートである。
演算部91は、入出力インターフェース93を介して、操作パネル(図示しない)などの外部スイッチから炉内温度の設定に係る信号が入力された場合、その情報を記憶部92に記憶させる(ステップS120)。
演算部91は、入出力インターフェース93を介して、操作パネルなどの外部スイッチから加熱時間の設定に係る信号が入力された場合、その情報を記憶部92に記憶させる(ステップS121)。
ここで、加熱時間は、例えば、炉本体20内の加熱ガスの温度が設定温度になった時点からの加熱時間である。
演算部91は、入出力インターフェース93を介して、操作パネルなどの外部スイッチからガス加熱出力と電気加熱出力との比率設定に係る信号が入力された場合、その情報を記憶部92に記憶させる(ステップS122)。
ここで、ガス加熱出力と電気加熱出力との比率とは、燃焼装置30から供給される熱量と、電気式ヒータ60a、60b、60cから供給される熱量の比率である。例えば、操作パネルなどにおいて、ガス加熱出力を70%、電気加熱出力を30%と入力する。
なお、この比率設定は、需要家先の総電力消費量の削減に寄与できる範囲で設定されることが好ましい。そのため、ここでは、この比率設定は、後述する調整出力が50%を超える範囲において適用される。
演算部91は、入出力インターフェース93を介して、操作パネルなどの外部スイッチから運転開始に係る信号が入力された場合、その情報を燃焼装置制御部94に出力する。
燃焼装置制御部94は、運転開始に係る信号が入力された場合、送風機36を駆動して、例えば、パージ処理を行う。このパージ処理では、パイロット用酸化剤噴出部102およびメイン用酸化剤噴出部112から炉本体20内に酸化剤が噴出される。
このパージ処理は、例えば、炉本体20内や排気通路40内に燃料などが残存していることを想定して、燃料を外部に排出するために安全対策として実行される。
パージ処理後、燃焼装置制御部94は、送風機36を駆動した状態で、パイロットバーナ100を運転する。具体的には、燃焼装置制御部94は、点火装置(図示しない)を作動し、パイロット用燃料供給管104に介在する遮断弁104aを開く。そして、パイロット用燃料噴出部101から炉本体20内に噴出された燃料と、パイロット用酸化剤噴出部102から炉本体20内に噴出された酸化剤とが燃焼して、パイロット火炎を形成する。
なお、パイロットバーナ100を運転する際、燃焼装置制御部94は、メイン用酸化剤供給管33に介在する酸化剤流量調整弁33aを開いている。そのため、メイン用酸化剤噴出部112からも炉本体20内に酸化剤が噴出される。
メイン用酸化剤噴出部112から炉本体20内に酸化剤を噴出することで、炉本体20内全体に行き渡る流れ場を形成することができる。これによって、炉本体20内における加熱ガスの温度の均一化を図ることができる。
パイロット火炎が形成された後、燃焼装置制御部94は、メインバーナ110を運転する。具体的には、燃焼装置制御部94は、メイン用燃料供給管105に介在する燃料流量調整弁105aおよび遮断弁105bを開く。そして、メイン用燃料噴出部111から炉本体20内に噴出された燃料と、メイン用酸化剤噴出部112から炉本体20内に噴出された酸化剤とが燃焼して、メイン火炎を形成する。
演算部91は、パージ処理完了に係る情報を燃焼装置制御部94から入力した場合、その情報を電気式ヒータ制御部95に出力する。
電気式ヒータ制御部95は、パージ処理完了に係る情報を入力した場合、電気式ヒータ60a、60b、60cに電力を供給し、電気式ヒータ60a、60b、60cを加熱する。
ここで、運転開始から所定時間は、炉本体20を構成する断熱材24などにも熱量が奪われるため、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cは、設定されたガス加熱出力と電気加熱出力との比率を維持した状態で、それぞれ最大出力で運転される。
最大出力で運転するため、燃焼装置制御部94は、記憶部92に記憶された設定炉内温度に基づく燃料流量および酸化剤流量のデータベースを参照する。そして、参照したデータベースにおける最大出力とするための燃料流量および酸化剤流量を参照し、入出力インターフェース93を介して入力された燃料流量計105cおよび酸化剤流量計33bからの信号に基づいて、燃料流量調整弁105a、送風機36および酸化剤流量調整弁33aを制御する。
具体的には、燃焼装置制御部94は、参照したデータベースにおける最大出力とするための燃料流量および酸化剤流量となるように、燃料流量調整弁105a、送風機36および酸化剤流量調整弁33aを制御する。
また、最大出力で運転するため、電気式ヒータ制御部95は、記憶部92に記憶された設定炉内温度に基づく電気式ヒータ60a、60b、60cに負荷する電力のデータベースを参照する。そして、参照したデータベースにおける最大出力とするための電力を参照し、その電力を電気式ヒータ60a、60b、60cに供給する。
ここで、炉本体20内を通過した加熱ガスは、炉本体20の側壁部21の下部に形成された連通口25から排気通路40内に流入する。排気通路40内に流入した加熱ガスは、排気口41に向かって流れる。
そして、排気通路40内に流入した加熱ガスは、熱交換器50の外側を流れ、排気口41から大気中に放出される。加熱ガスが熱交換器50の外側を流れる際、熱交換器50内を流れる酸化剤に熱量を与える。これによって、加熱された酸化剤がパイロット用酸化剤供給管32およびメイン用酸化剤供給管33に導入される。
このように酸化剤を廃熱を利用して加熱することで、保炎性能が向上するとともに、CO(一酸化炭素)やTHC(全炭化水素)などの未燃焼成分の排出が抑制され、熱効率も向上する。また、パイロットバーナ100のみを運転する際に、メイン用酸化剤噴出部112からも炉本体20内に酸化剤が噴出されるが、加熱された酸化剤であるため、パイロット火炎の燃焼性が損なわれることはない。
燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cの運転開始後、演算部91は、入出力インターフェース93を介して温度検出部80、81a、81b、81cからの信号を入力する(ステップS123)。
続いて、炉本体20内の温度調整するために、燃焼装置制御および電気式ヒータ制御を実行する(ステップS124)。
具体的には、例えば、演算部91は、入出力インターフェース93を介してステップS123において入力された温度検出部80、81a、81b、81cからの信号、記憶部92に記憶された設定された炉内温度に基づいて、温度検出部80、81a、81b、81cによって検出された温度と設定された炉内温度とを比較する。
そして、燃焼装置制御部94は、温度検出部80からの信号に係る加熱ガスの温度と記憶部92に記憶された設定された炉内温度とを比較した演算部91からの出力に基づいて、燃焼装置30の出力を調整する。
また、電気式ヒータ制御部95は、温度検出部81a、81b、81cからの信号に係る加熱ガスの温度と記憶部92に記憶された設定された炉内温度とを比較した演算部91からの出力に基づいて、電気式ヒータ60a、60b、60cの出力を調整する。
燃焼装置制御部94および電気式ヒータ制御部95は、演算部91によって比較された温度結果に基づいて、炉本体20内の加熱ガスの温度を、例えば、フィードバック制御している。このフィードバック制御として、例えば、広く行われているPID(Proportional-Integral-Differential)制御が挙げられる。
ここで、図5は、演算部91によって比較された温度結果に基づいて、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cの出力を調整して、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cから供給する熱量を変化させる際のデータベースの一例を示す図である。
なお、図5において、電気式ヒータにおいては、各電気式ヒータ60a、60b、60cにおける供給熱量の変化が示されている。また、このデータベースは、燃焼装置制御部94および電気式ヒータ制御部95が、記憶部92に記憶されたデータベースを参照することで得られる。
図5において、燃焼装置30では、調節出力が0から50%までの範囲では、パイロットバーナ100とメインバーナ110が作動する。この際、パイロットバーナ100およびメインバーナ110から供給される熱量は、それぞれ一定に維持される。これによって、燃焼装置30から供給される熱量は、一定となる。
ここで、調整出力とは、演算部91における、温度検出部80からの信号に係る加熱ガスの温度と記憶部92に記憶された設定された炉内温度とを比較した温度結果に基づいて調整される燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cの出力である。
換言すれば、この調整出力は、設定温度を大きく超えるオーバーシュートなどを生じずに設定温度に調整できるように、徐々に上昇する炉内温度に対して、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量を徐々に減少させるために設定される出力である。
なお、調節出力が0の場合における供給熱量は、炉本体20内の加熱ガスの温度が設定温度に維持された状態となった後、その設定温度を維持するために供給される熱量である。
ここでは、温度検出部80からの信号に基づいて、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cの調節出力を設定している。そのため、燃焼装置30の調整出力の動向と、電気式ヒータ60a、60b、60cの調整出力の動向とが真逆になるようなことはない。これによって、炉内温度の乱調などを抑制できる。
調整出力が50%を超える範囲では、パイロットバーナ100から供給する熱量を一定のまま、メインバーナ110から供給する熱量を比例制御する。具体的には、調整出力の増加に伴って、燃焼装置30から供給される熱量を増加させる。
このように燃焼装置30においては、調整出力によって、供給する熱量を図5に示したラインに沿って変化させている。
図5において、電気式ヒータ60a、60b、60cでは、例えば、調節出力が0から100%まで、単調に供給熱量を増加させている。
このように電気式ヒータ60a、60b、60cにおいては、調整出力によって、供給する熱量を図5に示したラインに沿って変化させている。
なお、調整出力が50%を超える範囲では、燃焼装置30からの供給熱量(ガス加熱出力)と電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量(電気加熱出力)の比率は、ステップS122において取得された比率となるように調整される。
ここで、前述したように運転開始から所定時間は、最大出力で運転するため、調整出力は100%となる。そのため、燃焼装置制御部94は、燃焼装置30から供給される熱量が図5のデータベースの調整出力100%における熱量となるように、燃料流量調整弁105a、送風機36および酸化剤流量調整弁33aを制御する。
また、電気式ヒータ制御部95は、電気式ヒータ60a、60b、60cから供給される熱量が図5のデータベースの調整出力100%における熱量となるように、電気式ヒータ60a、60b、60cに供給する電力を制御する。
そして、燃焼装置制御部94は、演算部91によって比較された温度結果、および比較された温度結果と調整出力との関係に係るデータベースに基づいて、加熱ガスの温度が設定温度に近づくごとに、例えば、図5に示す調整出力を減少させる。すなわち、燃焼装置制御部94は、加熱ガスの温度が設定温度に近づくごとに、調整出力に応じて燃焼装置30から供給する熱量を図5に示すラインに沿って変化させる。
同様に、電気式ヒータ制御部95は、演算部91によって比較された温度結果、および比較された温度結果と調整出力との関係に係るデータベースに基づいて、加熱ガスの温度が設定温度に近づくごとに、例えば、図5に示す調整出力を減少させる。すなわち、電気式ヒータ制御部95は、加熱ガスの温度が設定温度に近づくごとに、調整出力に応じて電気式ヒータ60a、60b、60cから供給する熱量を図5に示すラインに沿って変化させる。
なお、上記した比較された温度結果と調整出力との関係に係るデータベースは、記憶部92に記憶されている。そのため、このデータベースは、燃焼装置制御部94および電気式ヒータ制御部95が記憶部92を参照することで得られる。
このように、フィードバック制御を繰り返し、加熱ガスの温度が設定温度となるように制御する。
炉本体20内は、燃焼装置30からの加熱ガスとしての燃焼ガスによって、加熱ガスの流れ場が形成される。すなわち、燃焼装置30からの加熱ガスによって、被加熱物は、対流加熱される。
この対流加熱によって被加熱物を加熱する際、加熱ガスの流れによっては、炉内有効加熱領域37内に温度斑が発生する。この温度斑が発生した場合、炉本体20の高さ方向に、例えば、3段配置された電気式ヒータ60a、60b、60cの出力を調整することで、温度斑を無くすことができる。
例えば、図5に示した一例は、温度斑を発生する炉内有効加熱領域37内において、例えば、温度検出部81a(上段)によって検出された温度が設定温度よりも大きく下回り、温度検出部81b(中段)によって検出された温度が設定温度よりも少し下回る場合における、電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量の制御例を示している。
そこで、電気式ヒータ60aからの供給熱量を、電気式ヒータ60bからの供給熱量よりも増加させることで、炉内有効加熱領域37内における温度斑を無くすことができる。
このように、電気式ヒータ60a、60b、60cにおいて緻密な温度制御をすることで、例えば、炉内有効加熱領域37内を設定温度±5℃の範囲内の温度に調整することができる。
なお、各電気式ヒータ60a、60b、60cから供給される熱量は、炉内有効加熱領域37内の加熱ガスの温度分布によって異なるため、図5に示した各電気式ヒータ60a、60b、60cの供給熱量のラインは一例にすぎない。そのため、例えば、中段において加熱ガスの温度が設定温度よりも最も低くなる場合には、電気式ヒータ60bからの供給熱量が最も大きくなるように設定される。
ステップS124の処理後、演算部91は、入出力インターフェース93を介して温度検出部80、81a、81b、81cからの信号を入力する(ステップS125)。
続いて、演算部91は、入出力インターフェース93を介してステップS125において入力された温度検出部80、81a、81b、81cからの信号に基づく加熱ガスの温度が、記憶部92に記憶された設定された炉内温度か否かを判定する(ステップS126)。
ステップS126における設定された炉内温度としては、例えば、設定値である炉内温度を中心に±5℃の範囲内の温度(設定値である炉内温度±5℃)をいう。
ステップS126の判定において、加熱ガスの温度が設定された炉内温度ではないと判定した場合(ステップS126のNo)、演算部91は、ステップS125において入力された温度検出部80、81a、81b、81cからの信号に基づいて、ステップS124の処理を実行する。
ステップS126の判定において、加熱ガスの温度が設定された炉内温度であると判定した場合(ステップS126のYes)、演算部91は、入出力インターフェース93を介して入力されたタイマからの出力および記憶部92に記憶された加熱時間に係る情報に基づいて、加熱時間が経過したか否かを判定する(ステップS127)。
ここで、ステップS127における加熱時間とは、例えば、炉本体20内の加熱ガスの温度が設定温度になった時点から演算部91がタイマからの出力に基づいて判定するまでの時間をいう。
ステップS127の判定において、加熱時間が経過していないと判定した場合(ステップS127のNo)、演算部91は、ステップS125の処理を実行する。
ステップS127の判定において、加熱時間が経過したと判定した場合(ステップS127のYes)、演算部91は、燃焼装置制御部94および電気式ヒータ制御部95に運転終了に係る信号を出力する。
終了に係る信号に基づいて、燃焼装置制御部94は、燃焼装置30を停止し、電気式ヒータ制御部95は、電気式ヒータ60a、60b、60cへの電力の供給を停止する(ステップS128)。
燃焼装置制御部94は、具体的には、パイロット用燃料供給管104に介在する遮断弁104aを閉じるとともに、メイン用燃料供給管105に介在する燃料流量調整弁105aおよび遮断弁105bを閉じる。
上記したように、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10によれば、加熱手段として、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cを備え、出力条件を問わず、それぞれを併用することができる。これによって、燃焼装置30における対流加熱および電気式ヒータ60a、60b、60cによる熱放射加熱の効果を同時に得られる。
また、加熱ガスが炉本体20内を対流することで、炉本体20内の全体に行き渡る流れ場が形成される。そのため、電気式ヒータ60a、60b、60cによって供給された熱量を対流を利用して被加熱物に伝達することもできる。これによって、従来の熱放射加熱の際に使用されていた撹拌用のファンが不要となる。さらに、対流加熱と熱放射加熱とを併用することで、被加熱物を高速かつ均一に昇温できる。
また、電気式ヒータ60a、60b、60cを備えることで、燃焼装置30における対流加熱の際に生じる炉内有効加熱領域37における温度斑を無くすことができる。さらに、電気式ヒータ60a、60b、60cにおいて緻密な温度制御をすることで、例えば、炉内有効加熱領域37内を設定温度±5℃の範囲内の温度に調整することができる。
燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cを備えることで、炉本体20内の加熱ガスの温度を、例えば、200℃〜1100℃の幅広い温度帯に設定することができる。
これによって、例えば、低温で行われる乾燥処理と、高温で行われる焼成処理とを一つの加熱炉で行うことができる。そのため、処理温度に応じた加熱炉を別個に備える必要がない。また、低温加熱炉から高温加熱炉へ移動する必要もないため、無駄なエネルギロスを防止できる。さらに、一つの加熱炉全体におけるターンダウン比(TDR)を増大することができる。
また、例えば、大半の熱量を燃焼装置30によって供給することで、電力消費量が抑えられ、電力の受電設備容量や基本料金などを抑えるとともに、一次エネルギ換算で省エネルギ化が図れる。
(調整出力と供給熱量に関する他のデータベースの例)
ステップS124の処理では、図5に示すように、燃焼装置30において、調節出力が0から50%までの範囲をパイロットバーナ100とメインバーナ110とを併用する一例を示したが、これに限られない。
図6、図7および図8は、演算部91によって比較された温度結果に基づいて、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cの出力を調整して、燃焼装置30および電気式ヒータ60a、60b、60cから供給する熱量を変化させる際のデータベースの他の例を示す図である。
図6は、図5に示したデータベースにおいて、調節出力が小さい側における燃焼装置30の作動条件を変えたものである。図7および図8に示されたデータベースでは、調整出力が小さい側において燃焼装置30の作動が停止される。
まず、図6に示されたデータベースについて説明する。
図6に示すように、例えば、調節出力が0から25%までの範囲において、パイロットバーナ100のみを作動させ、調節出力が25%を超え50%までの範囲において、パイロットバーナ100とメインバーナ110とを併用する。
なお、電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量、および調節出力が50%を超える範囲における燃焼装置30からの供給熱量は、図5に示したデータベースにおけるものと同じである。
ここで、前述したように、炉本体20内の加熱ガスの温度が設定温度に維持された状態となった後には、調節出力は0となる。そのため、図6に示したデータベースを使用する場合には、設定温度となった炉本体20内の加熱ガスの温度を、パイロットバーナ100から供給される熱量で維持できることが条件となる。
このように、調節出力が小さい側の供給熱量を小さくすることで、炉本体20内の加熱ガスの温度の低い側の範囲を広げることができる。そのため、一つの加熱炉全体におけるターンダウン比(TDR)をさらに増大することができる。
次に、図7に示されたデータベースについて説明する。
図7に示すように、例えば、調節出力が0から15%までの範囲においては、電気式ヒータ60a、60b、60cのみを作動させる。この際、各電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量は一定である。すなわち、電気式ヒータ60a、60b、60c全体からの供給熱量は一定である。
なお、この調節出力範囲では、燃焼装置30は停止している。燃焼装置30が停止している際においても、熱交換器50において加熱された酸化剤が、メイン用酸化剤噴出部112やパイロット用酸化剤噴出部102から炉本体20内に噴出される。
メイン用酸化剤噴出部112やパイロット用酸化剤噴出部102から噴出される酸化剤の流れによって、炉本体20内の全体に行き渡る流れ場が形成される。これによって、撹拌用のファンを設けなくても、加熱ガスが炉本体20内を対流する。そのため、電気式ヒータ60からの熱量を熱伝達によって加熱ガスに与えることができる。
図7に示したデータベースを使用する場合には、設定温度となった炉本体20内の加熱ガスの温度を、電気式ヒータ60a、60b、60cから供給される熱量で維持できることが条件となる。
調節出力が15%を超え25%までの範囲において、燃焼装置30のパイロットバーナ100のみを作動させ、調節出力が25%を超え50%までの範囲において、燃焼装置30のパイロットバーナ100とメインバーナ110とを併用する。
なお、調節出力が50%を超える範囲における燃焼装置30からの供給熱量、および調節出力が15%を超える範囲における電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量は、図5に示したデータベースにおけるものと同じである。
このように、調節出力が小さい側の供給熱量を電気式ヒータ60a、60b、60cからの供給熱量によって調整することで、パイロットバーナ100の最低燃焼量を下回る範囲での調整が可能となる。これによって、炉本体20内の加熱ガスの温度の低い側の範囲をさらに広げることができるため、一つの加熱炉全体におけるターンダウン比(TDR)をさらに増大することができる。
次に、図8に示されたデータベースについて説明する。
図8に示されたデータベースは、図7に示されたデータベースにおける調節出力が25%を超え50%までの範囲において、燃焼装置30のパイロットバーナ100とメインバーナ110とを併用するとともに、メインバーナ110をON−OFF制御している。
メインバーナ110をON−OFF制御することで、調節出力に対する燃焼装置30における供給熱量の傾きを変えることができる。
なお、燃焼装置30における25%を超え50%までの供給熱量以外の部分は、図7に示されたデータベースにおけるものと同じである。
このように調節出力に対する燃焼装置30における供給熱量の傾きを変えることで、燃焼装置30においても供給する熱量の微調整が可能となる。
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態のハイブリッド加熱炉11の縦断面を模式的に示した図である。図10は、図9のB−B断面を示す図である。
ここで、第2の実施の形態のハイブリッド加熱炉11は、炉本体20の上部に排気通路40、炉本体20の下部に燃焼装置30Aが備えられた以外は、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10の構成と異なる構成について主に説明する。
なお、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
ハイブリッド加熱炉11は、図9に示すように、炉本体20と、炉本体20の下部に配置された燃焼装置30Aと、炉本体20の上部に配置された排気通路40と、排気通路40に設けられた熱交換器50と、炉本体20の内壁に配置された電気式ヒータ60とを備える。また、ハイブリッド加熱炉11は、ハイブリッド加熱炉11を制御する制御装置90を備える。
図10に示すように、炉本体20の側壁部21のうちの一つの側壁部21aは、開閉可能に構成されている。なお、側壁部21aは、燃焼装置30Aを備えない側壁部21とすることが好ましい。側壁部21aは、隣り合う側壁部21に、例えば、ヒンジ26などによって開閉可能に接続されている。このように側壁部21aを開閉可能に構成することで、炉本体20内に被加熱物を配置し、または炉本体20内から被加熱物を取り出すことができる。
炉本体20の側壁部21の下部には、燃焼装置30Aが配置されている。燃焼装置30Aは、図9に示すように、燃焼装置30Aから排出される加熱ガスとしての燃焼ガスが、載置台70の載置板71よりも下部に噴出されるように配置されている。
また、炉本体20には、図10に示すように、2つの燃焼装置30Aが配置されている。これらの燃焼装置30Aは、対向する側壁部21にそれぞれが対向しないように位置をずらして配置されている。具体的には、図10に示す断面において、一方の燃焼装置30Aは、対向する一方の側壁部21の側端に配置される。他方の燃焼装置30Aは、一方の燃焼装置30Aに対向する側とは反対側となる他方の側壁部21の側端に配置される。
このように燃焼装置30Aを配置することで、燃焼装置30Aから排出される加熱ガスが、炉本体20内において図10の矢印で示すような旋回する流れ場を形成する。
ここで、図10には、燃焼装置30Aとして、いわゆるハイスピードバーナ構造を有する燃焼装置を例示している。ハイスピードバーナは、高速で噴出ノズル部131から火炎140を噴出するバーナである。
このハイスピードバーナを使用することで、炉本体20内において図10の矢印で示すような旋回する流れ場を容易に形成することができる。なお、燃焼装置30Aとして、第1の実施の形態における周方向に広がったコーン状の火炎を形成する燃焼装置30を備えることもできる。
燃焼装置30Aは、第1の実施の形態における燃焼装置30と同様に、パイロットバーナ100とメインバーナ110を備える。また、パイロットバーナ100およびメインバーナ110に供給される燃料の供給系統および酸化剤の供給系統も、第1の実施の形態におけるそれらと同様である。
燃焼装置30Aは、図10に示すように、流路が狭まった噴出ノズル部131を出口に備えるケーシング130を備える。パイロットバーナ100とメインバーナ110は、このケーシング130の上流端に配置される。
パイロットバーナ100およびメインバーナ110に供給される燃料および酸化剤は、ケーシング130内に噴出される。そして、燃料および酸化剤は、ケーシング130内で燃焼しながら噴出ノズル部131から炉本体20内に噴出される。噴出ノズル部131の下流側には、火炎140が形成される。
なお、パイロットバーナ100に備えられるスワーラ103およびメインバーナ110に備えられるスワーラ113は、火炎を安定して保持する機能を有する構成であればよい。
なお、ここでは、パイロットバーナ100およびメインバーナ110の燃焼方式として、燃料と酸化剤をそれぞれ別々に炉本体20内に噴出して燃焼させる拡散燃焼方式を採用した一例を示したが、この構成に限られない。パイロットバーナ100とメインバーナ110における燃焼方式は、燃料と酸化剤とを混合した混合気を炉本体20内に噴出して燃焼させる予混合燃焼方式であってもよい。
排気通路40は、被加熱物を加熱した加熱ガスを炉本体20内から排気口41に導く。排気通路40は、排気筒42内に形成される。排気筒42は、側壁部43と、側壁部43の内面に設けられた断熱材44とを備える。排気通路40は、断熱材44の内側の通路によって構成される。排気通路40は、炉本体20の上部に形成された連通口25と排気口41との間の通路を構成する。
排気通路40には、熱交換器50が備えられている。なお、熱交換器50の構成および作用は、第1の実施の形態と同様である。
上記した構成を備えるハイブリッド加熱炉11において、燃焼装置30Aによって生成された加熱ガスとしての燃焼ガスは、図10に示すように、旋回する流れ場を形成しながら、載置板71と炉本体20の内壁(断熱材24)との間を上昇する。
そして、炉内有効加熱領域37内を取り囲むように旋回する加熱ガスの流れは、炉本体20内の全体に行き渡る流れ場を形成する。このように加熱ガスが炉本体20内の全体に対流することによって、被加熱物を均一な温度で加熱することができる。
上昇した流れは、連通口25から排気通路40内に流れ込み、熱交換器50の周囲を通り、排気口41から大気中に排出される。
なお、第1の実施の形態と同様に、燃焼装置30Aが停止し、電気式ヒータ60a、60b、60cが作動している際には、熱交換器50において加熱された酸化剤が、メイン用酸化剤噴出部112やパイロット用酸化剤噴出部102から炉本体20内に噴出される。
メイン用酸化剤噴出部112やパイロット用酸化剤噴出部102から噴出される酸化剤の流れによって、炉本体20内の全体に行き渡る流れ場が形成される。これによって、撹拌用のファンを設けなくても、加熱ガスが炉本体20内で対流する。そのため、電気式ヒータ60a、60b、60cからの熱量を熱伝達によって加熱ガスに与えることができる。
ここで、第2の実施の形態のハイブリッド加熱炉11における制御装置90の構成およびハイブリッド加熱炉11の作用効果は、第1の実施の形態のハイブリッド加熱炉10におけるそれらと同様である。
第2の実施の形態のハイブリッド加熱炉11によれば、2つの燃焼装置30Aを対向する側壁部21にそれぞれが対向しないように位置をずらして配置することで、炉本体20内を旋回する流れ場を形成することができる。これによって、炉本体20内の加熱ガスの温度の均一化が図れる。
さらに、このような流れ場を形成することで、電気式ヒータ60a、60b、60cによって供給された熱量を対流を利用して被加熱物に伝達することもできる。これによって、従来の熱放射加熱の際に使用されていた撹拌用のファンが不要となる。
なお、燃焼装置30Aおよび電気式ヒータ60a、60b、60cを備えることによる高精度な温度調整の効果やターンダウン比(TDR)を増大できる効果などは、第1の実施の形態における効果と同様である。
ここで、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、燃焼装置30、30Aの一例を示したが、燃焼装置の構成および配置位置は、これらに限られない。燃焼装置は、生成する加熱ガスとしての燃焼ガスによって、対流加熱を促進し、炉本体20内の全体に行き渡る加熱ガスの流れ場を形成するものであればよい。
また、電気式ヒータ60a、60b、60cのみの運転時において、燃焼装置は、熱交換器50において加熱された酸化剤を炉本体20内に噴出できる構成を備えていればよい。
なお、本実施の形態におけるハイブリッド加熱炉10、11において加熱される被加熱物は、特に限定されない。例えば、低温で行われる乾燥処理から高温で行われる焼成処理までの工程が必要な被加熱物においては、一つの加熱炉で処理することができるので好適である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。