以下、本発明に基づき構成される人事管理システムについて、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
図1には、本発明に基づき構成される人事管理システムの一例を模式的に示している。本実施形態の人事管理システム1は、部署(部署A〜部署C)毎に割り当てられている端末手段Y1〜Y3と、該端末手段Y1〜Y3が接続される管理サーバ10と、評価部署端末20と、該端末手段Y1〜Y3、評価部署端末20と、該管理サーバ10とを接続する接続手段としての通信ネットワーク2とを含んでいる。なお、図では説明の便宜上評価対象となる部署を3つのみ示しているが、当然これに限定されるわけではなく、当該企業が、2部署、或いは、これより多数の部署により組織された場合も含む。また、図1では、一点鎖線を境に、左側に企業内を、右側に当該企業とは会計を異にする外部組織を示す。なお、当該外部組織には、民間企業、公的機関、個人等が含まれる。
管理サーバ10は、コンピュータから構成され、高速な中央演算処理装置(CPU)、大規模な記憶手段(RAM、ROM等の主記憶装置、磁気ディスク等の補助記憶装置等)を備えたものであることが好ましいが、これに限定されるものではない。該管理サーバ10には、コントロール手段、口座記憶手段等が備えられており、詳細については、後述する。
本実施形態では、説明の便宜上端末手段Y1〜Y3を部署毎に配置した例を示すが、必ずしも部署毎に1台である必要はなく、従業員1人に1台ずつ割り当てるようにしてもよい。該端末手段Y1〜Y3は、パーソナルコンピュータを使用することができるが、これに限らず携帯型のタブレット型端末を使用する等、後述する業務情報を入力し、管理サーバ10に情報を送信できる機能を備えるものであれば、どのような端末を使用することもできる。
通信ネットワーク2は、一般的に知られたインターネット回線を利用することができる。インターネット回線を利用することを想定して通信ネットワーク2を構成することで、端末手段Y1〜Y3が当該企業の外部にある状態でも管理サーバ10にアクセスして必要な情報の入力が可能になる。なお、本発明はこれに限定されず、企業内のみに限定したLAN(Local Area Netwaork)回線のみで当該通信ネットワーク2を構成すること、或いはインターネット回線と企業内のLANを組み合わせて構成することも可能であり、有線、無線を含め端末手段Y1〜Y3と管理サーバ10とを接続することが可能なあらゆるネットワーク手段を採用することができる。
図に示すように、各部署A〜Cには、各部署A〜Cに所属する従業員(仮に、a1〜a12、b1〜b8、c1〜c10とする。)が紐付けされており、被評価対象となる各部署A〜Cと従業員がグループ化されている。なお、本発明における「部署」とは、複数の従業員が所属する集合体を指すものであればよく、形式や名称により限定されず、部門、部、課、係、グループ等、いかなる集合体をも含む。
図に示すように、管理サーバ10は、金銭の授受が発生することが想定される外部組織G(サプライヤー、官公庁、輸送会社、ユーザー、ライセンサー、ライセンシー等)と通信ネットワーク2を介して接続されており、外部組織Gと当該企業との業務、及び該業務に対する支払い金額の情報が管理サーバ10で管理されるように構成されている。
本実施形態における人事管理システム1の管理サーバ10について、図2を用いてさらに詳細に説明する。管理サーバ10には、少なくとも、コントロール手段12と、口座記憶手段14が備えられている。該コントロール手段12は、本発明に基づき構成されたポイント設定部12a、ポイント交換部12b、外部支出入管理部12c、人事評価部12d、及び個人経費管理部12eにより構成される。外部支出入管理部12cは、外部支出管理部121と、外部収入管理部122とから構成され、人事評価部12dは、部署評価部123と、個人評価部124とから構成されている。該コントロール手段12を構成するポイント設定部12a、ポイント交換部12b、外部支出入管理部12c、人事評価部12d、個人経費管理部12eは、コンピュータプログラムから構成され、該コンピュータプログラムは、管理サーバ10のメモリに登録され、端末手段Y1〜Y3から入力された情報に基づき、割り当てられた処理を適宜実行する。また、該口座記憶手段14は、磁気ディスク等の補助記憶装置により構成され、ポイント交換部12bにより管理される。
人事評価部12dは、口座記憶手段14に記憶された口座のポイント残高の情報を参照しながら部署評価、個人評価を実行するものであり、人事評価部12dによって実行され得られた人事評価の情報は、管理サーバ10にアクセスする端末手段の内、人事評価を担う担当者がアクセスしていることが識別された評価部署端末20からのみ閲覧することができるように設定される。
個人経費管理部12eは、口座記憶手段14に記憶された部署口座、個人口座のポイント残高を参照しつつ、従業員に対して支給される個人経費額の算出を実施する。算出方法の詳細についてはおって説明する。
本発明の人事管理システム1は、概ね以上のように構成されており、人事管理システム1で流通するポイントがどのようにして各口座に蓄積されるのかについて、業務及びポイントの流れの例を図3に、部署口座及び個人口座の具体的な構成例を図4に示しながら説明する。なお、図3、4に基づいてなされる説明では、部署A〜C、及び部署A〜Cに所属する従業員個人に関連した業務、及びポイントの流れを説明する。
本発明において扱われる部署、及び部署に所属する従業員の個人口座の一例が図4(a)に示されている。部署Aの口座は、部署Aのポイントを管理する部署口座XAと、部署Aに紐付けされた従業員(全12名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座a1〜a12と、から構成されている。
部署Bの口座は、上記した部署Aと同様に、部署Bのポイントを管理する部署口座XBと、部署Bに紐付けされた従業員(全8名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座b1〜b8とから構成され、部署Cの口座も上記と同様に、部署Cのポイントを管理する部署口座XCと、部署Cに紐付けされた従業員(全10名)に割り当てられ個人の業務遂行により発生するポイントを管理するための個人口座c1〜c10とから構成されている。ここで、「部署口座」とは、部署、及び所属する従業員に部署外から振り込まれたポイント、及び部署、及び所属する従業員が外部の部署、又は個人口座に振り込んだポイントを管理するための口座であり、「個人口座」とは、従業員個人が業務を依頼し、或いは請け負った業務に関連して交換されたポイントを管理するためのものである。より具体的に言えば、部署口座、又は従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込まれた従業員の個人口座にポイントが加算されると共に、該ポイントが振り込まれた従業員の個人口座が紐付けされた部署の部署口座にも同額のポイントが加算される。また、部署に所属する従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込んだ従業員の個人口座からポイントが減算されると共に、振り込んだ個人口座が紐付けされた部署の部署口座からも該ポイントが減算される。そして、部署に所属する従業員の個人口座の間、あるいは部署に所属する従業員の個人口座と部署口座との間においてポイントの交換があった場合は、当該部署の部署口座は変動しない。
上述した各口座の残高の情報は、管理サーバ10に備えられた口座記憶手段14に記憶されるものであり、人事評価の対象となる所定の期間の期初、例えば年度の初めにおける各部署の部署口座XA、XB、XC、及び各個人口座a1〜a12、b1〜b8、c1〜c10のポイント残高はすべて0に設定される。そして、各部署A〜Cに割り当てられた端末手段Y1〜Y3によって、各部署、各従業員によって遂行される業務、該業務に応じて設定されるポイント、及び各業務が完了した旨の情報等が入力されることにより、各口座のポイント残高が変化する。実際に業務が発生してから各口座のポイント残高が増減する過程を、より具体的に説明する。
先ず、外部組織Gに分類されるユーザーUが、当該企業の製品P(1,000万円)を購入すべく営業を担当する部署Cに発注したものとする(図3中(ア))。本業務は、外部組織Gからの収入となる業務であるため、本件業務を割り当てられた部署Cに所属する従業員c1が、端末手段Y3から、管理サーバ10内に構成されたコントロール手段12の外部支出入管理部12cの外部収入管理部122にアクセスし、部署Cが1,000万円で製品Pを受注したこと、従業員c1に1,000,000ポイントで当該業務が割り当てられたことを入力する。
上記製品Pは、ベースとなる製品に対してユーザーUの要求仕様に合わせたカスタマイズが必要であるため、従業員c1は、ユーザーUの要求仕様に基づくカスタマイズを、設計担当の部署Bの従業員b1に依頼する(図3中(イ))。この際、従業員c1と、従業員b1との間で、業務に必要な負荷、時間を考慮し、当該設計に係る業務に応じたポイントが設定される。本実施形態では、当該設計業務に応じたポイントを1,000,000ポイントと設定し、請け負った従業員b1は、所属する部署の端末手段Y2から、管理サーバ10のコントロール手段12にアクセスし、ポイント設定部12aに、依頼元の部署情報、当該業務内容、それに応じたポイントを入力する。
従業員b1は要求仕様に従いカスタマイズ設計を行い、受注した上記設計業務を完了させる。製品Pの設計図面が完成した旨を従業員c1に報告し(図3中(ウ))、正式に受領されれば、従業員b1が遂行した業務が完了した旨の情報を、端末手段Y2からコントロール手段12にアクセスして入力する。本件業務は、部署Cから請け負った業務であるため、コントロール手段12のポイント交換部12bは、部署Cの部署口座XCから従業員b1の個人口座b1に対して1,000,000ポイントを振り込むポイント交換を実施する。なお、本実施形態では、部署口座XCから直接個人口座b1にポイントを振り込むようにしたが、これに限定されず、形式的に部署口座Cから担当している従業員である個人口座c1に1,000,000ポイントを振り込み、個人口座c1を経由して部署Bの個人口座b1に振り込むようにしてもよい。この時点では、部署B、部署Cの部署口座XB、XC、従業員b1の個人口座b1は、以下のように変化する。
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−1,000,000ポイント
補足すると、本発明の「ポイント交換部12b」の作用により、部署口座、又は従業員の個人口座から他の部署に所属する従業員の個人口座にポイントが振り込まれた場合は、振り込まれた従業員の個人口座にポイントが加算されると共に、該従業員が所属する部署の部署口座にも同ポイントが加算されるようになっている。よって、上記したケースでは部署Cの部署口座XCから他の部署Bの従業員b1の個人口座b1に1,000,000ポイントが振り込まれているため、部署口座XBにも同ポイントが加算されている。
完成した設計図面に基づき従業員c1は、製造を担当する部署Aに製品Pの製造を依頼する。従業員b1によって作成された該設計図面は、製造を担当する部署Aに送られ、部署Aが請け負う製品Pの製造業務の負荷、製造に必要な部品代等の製造コストを考慮して8,000,000ポイントが設定され発注される(図3中(エ))。製品Pの製造は、部署Aに所属する複数の従業員によってなされるものであり、従業員個人ではなく部署Aに発注される。部署Aでは、当該製品Pの製造を担当する担当者として従業員a1〜a4の4名を割り当て、当該製造業務に応じ1人につき500,000ポイントが設定される。そして、該担当者は、部署Aが部署Cから製品Pの製造を8,000,000ポイントで受注したこと、該製造業務を部署A内の従業員a1〜a4に割り当て、従業員a1〜a4が製造に係る業務を500,000ポイントで請け負ったことを、部署Aの端末手段Y1から管理サーバ10にアクセスし、ポイント設定部12aに入力する。なお、本実施形態では、部署Cから部署Aに対して製品Pの製造を依頼したが、例えば、設計を担当する部署Bに対して製造を含めた業務を依頼し、部署Bから部署Aに対して製品Pの製造が依頼されるようにしてもよい。
部署Aでは、製品Pを製造するに当たり、部品p1、p2を外部のサプライヤーから購入する必要があるため、外部組織GのサプライヤーSに必要部品p1、p2を600万円で発注する(図3中(オ))。この業務は、外部組織Gに対する支出を伴うものであるため、コントロール手段12の外部支出管理部12cの外部支出管理部121に業務内容、及び実際の支出予定の金額が登録される。なお、説明の都合上、発注する部品をp1、p2のみで記載したが、実際は複数のサプライヤーに対してより多数の部品が発注されることが想定される。
サプライヤーSに発注していた部品p1、p2が部署Aに納品されると(図3中(カ))、部署Aからは、部品p1、p2に応じた金額600万円がサプライヤーSに支払われる。端末手段Y1から、部品p1、p2が納品され部品p1、p2の代金が支払われた旨の情報がコントロール手段12に入力されると、外部支出管理部121が実行されることにより、口座記憶手段14のポイントを管理するポイント交換部12bに該情報が伝達され、部署Aの部署口座XAから当該代金に相当するポイント=6,000,000ポイントが差し引かれる。この時点では、部署A〜Cの部署口座XA、XB、XC、及び従業員の個人口座b1の残高は、以下のようになる。
部署A:
部署口座XA=−6,000,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−1,000,000ポイント
部署Aにおいて製品Pの製造を担当する従業員a1〜a4は、割り当てられた当該業務を遂行し、製品Pを組み立てて完成させ、ユーザーUとの窓口となる部署Cに納品する(図3中(キ))。なお、部署A、部署Cは同じ企業内の部署であることから、当該「納品」は、必ずしも製品Pを物理的に部署Cに移動させることを意味せず、製品Pを部署A内に、或いは、当該企業内の所定の完成品置場に保管し、製品Pが完成した旨の報告が部署Cになされることでもよい。そして、製品Pが部署Cに納品された後、製造を担当した部署Aの端末手段Y1から、製品Pの製造業務が完了した旨をコントロール手段12に入力する。これにより、ポイント設定部12aに設定されていたポイントに基づいて、部署Cの部署口座XCから部署Aの部署口座XAに8,000,000ポイントが振り込まれ、それと同時に部署口座XAから部署Aに所属する製造を担当した従業員a1〜a4の個人口座a1〜a4のそれぞれに500,000ポイントが振り込まれる。ここで、本発明に基づき構成されたコントロール手段12は、部署口座から当該部署に所属する従業員にポイントを振り込んだ場合は、部署口座XAの口座を変動させないようにしている。これにより、各口座の残高は以下のようになる。
部署A:
部署口座XA=2,000,000ポイント
個人口座a1=500,000ポイント
個人口座a2=500,000ポイント
個人口座a3=500,000ポイント
個人口座a4=500,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=−9,000,000ポイント
個人口座c1=−9,000,000ポイント
上記の口座残高の変化について補足すると、部署Cの部署口座XCから部署Aに振り込まれた8,000,000ポイントは、部署Aの部署口座XAに振り込まれ、該部署口座XAの残高が−6,000,000ポイントから2,000,000ポイントとなる。そして、部署口座XAから、製品Pの製造を担当した従業員a1〜a4の各個人口座a1〜a4に500,000ポイントが振り込まれる。ここで、上述したように、同じ部署内におけるポイントの交換では部署口座を変動させないようにしているので、部署Aの部署口座XAは2,000,000ポイントのままで変化はしない。
部署Cは、製品Pの完成を受け、当該製品Pを外部のユーザーUに納品する(図3中(ク))。製品Pを受領したユーザーUは、製品Pの代金として1,000万円を当該企業に支払う。この、納品完了、支払完了情報を従業員c1が端末手段Y3から入力する。ユーザーUから支払われた代金1,000万円は、外部組織Gから支払われる現実の金銭であり、図3に示す外部収入管理部122が介在していることにより、ユーザーUから1,000万円の収入があった旨の情報がポイント交換部12bに送られ、代金1,000万円に相当する10,000,000ポイントが部署Cの部署口座XCに振り込まれる。それと同時に当該業務が完了したことにより、部署口座XCから、部署Cにおいて当該業務を担当した従業員c1の個人口座c1に1,000,000ポイント振り込まれる。以上で、製品PがユーザーUから発注され、企業内にて各部署が連携して最終的に製品PがユーザーUに納入されるまでの業務が遂行されたことになる。これにより、各口座の残高は以下のようになる。
部署A:
部署口座XA=2,000,000ポイント
個人口座a1=500,000ポイント
個人口座a2=500,000ポイント
個人口座a3=500,000ポイント
個人口座a4=500,000ポイント
部署B:
部署口座XB=1,000,000ポイント
個人口座b1=1,000,000ポイント
部署C:
部署口座XC=1,000,000ポイント
個人口座c1=1,000,000ポイント
なお、上述したポイントの交換等は、単なる一例にすぎず、業務に伴ってポイントが振り込まれる際の振り込み先、ポイント額等、ポイント交換の時期は適宜部署、従業員間において調整される。例えば、上述した実施例では、製品Pのカスタマイズ設計を、部署Bの従業員b1に直接依頼したが、従業員b1個人ではなく、部署Bに対して業務を依頼し、適宜部署B内にて必要業務を適任者に振り分けてもらうようにしてもよく、その場合はカスタマイズ設計の対価となるポイントは部署Cの部署口座XCから部署Bの部署口座XBに一旦振り込まれ、部署口座XBから個人口座b1へ業務に応じたポイントが振り込まれることとなる。
上述した実施形態においては、業務完了までの過程で、各口座の残高が負の値(マイナス)になることがある。よって、この途中の段階で評価を行う場合、各従業員が業務を問題なく遂行しているにも係わらず、口座の残高に基づいて人事評価を実施すると、評価の結果において不公平が生じる場合が想定される。これを防止すべく、業務発生から完了までの間のポイントを一時的に立て替えて振り込む、仮想の「銀行(バンク)」のような役割を担う構成をポイント交換部に備えることもできる。本実施形態でいえば、部署Cの部署口座XCから部署Bの従業員b1の個人口座b1への振り込み、製品Pを製造した部署Aの部署口座XAへのポイント振り込み、或いは、部署Aから外部組織GのサプライヤーSに対する金銭の支払いに伴うポイントの支出を、当該「銀行(バンク)」が立て替えて実施し、各業務の完了に伴いポイントが各口座に振り込まれた時点で、立て替えられていたポイント分を、当該「銀行(バンク)」に返済するようにしてもよい。そのようにすることで、順調に遅滞もなく遂行されている業務であるにも関わらず、評価のタイミングによって不当に低い評価を付けられることが防止される。
上述したように、各部署、従業員が請け負った業務が遂行されることにより、部署口座、個人口座のポイントの残高が増減する。図4(a)では、全ての個人口座についての残高を示しておらず、一部省略されている。ここで、図4(a)に示すように、部署Aの部署口座XAの残高は12,000,000ポイントであり、部署A内の各個人口座の内、最も残高が高い個人口座は個人口座a3の1,250,000ポイント、最も残高が低い個人口座は、個人口座a4の500,000ポイントであったことが理解される。
同様に、部署Bの部署口座XBの残高は12,000,000ポイントであり、部署B内で個人口座の残高が最も高いのは、個人口座b8の1,600,000ポイント、最も低いのは個人口座b2の900,000ポイントであること、さらに、部署Cの部署口座XCの残高は13,000,000ポイントであり、部署C内の個人口座の残高が最も高いのは個人口座c2の2,500,000ポイント、最も低いのは個人口座c10の900,000ポイントであることが理解される。なお、上述したように、各口座の残高は業務を遂行するに伴い単純に増加するものではなく、業務の発注、受注を互いにし合うことで増減するものである。また、部署口座は、各部署に所属する従業員の個人口座のポイントの他に、部署口座に直接振り込まれたポイントも含んでおり、必ずしも個人口座のポイントの合算とならないことは上述した説明から明らかである。
図4(a)には、所定期間、例えば6ケ月間の業務を遂行することにより蓄積された口座のポイント残高と共に、各従業員の職能に関連する等級が示されている。上記した職能に関する等級とは、従業員としての職能資格を表す等級であり、人事規定等によって定義付けられ、一般社員(新入社員、係長クラス)、中級社員(課長クラス)、上級社員(部長以上)等の高低に応じて付与される等級である。該等級は、所有するスキル、経験年数、実績等が考慮され、さらに細分化されていてもよく、本実施形態では、等級が低い1から等級が高い20までの範囲内で各従業員に付与されているものとして例示する。
人事評価部12dの作用について説明する。部署評価部123は、所定の期間の部署の評価を実行すべく、所定の期間の期末日における各部署A〜Cの部署口座XA〜XCの残高を当該部署の所属人数(部署A:12名、部署B:8名、部署C:10名)で除算する。これにより、図4(b)に示されているように、各部署の一人当たりのポイントが算出される。この数値に基づいて部署A〜Cの評価を実施する。図4(b)の例では、最も高い評価を得るのは、部署Bであり、最も低い評価となるのは、部署Aとなる。このように、単純に部署の部署口座の残高が大きくても必ずしもその部署が高評価とはならず、一人当たりの残高が高い部署が、効率よく企業の業績に貢献したとして評価されるのである。
これに対し、個人の評価は、個人評価部124を実行することで、個人口座のポイントの残高に基づいて実施される。図4(a)から明らかなように、最も残高が高かった従業員は部署Cに所属する従業員c2であり、最も低かった従業員は部署Aに所属する従業員a4であった。このように、部署の評価、及び当該個人口座のポイントの残高に基づいて部署、個人の評価が実施され、各個人の昇給、昇格については、所属する部署の評価、個人の評価を総合した総合評価によって決定される。
ここで、本発明に基づき構成される人事管理システムにおいては、上記した業務実績に応じて交換が行われて変化する部署口座、個人口座のポイントの貯蓄残高を参照して個人経費管理部12eが実行され、上記評価がなされた期の次の半期(6箇月間)に与えられる個人経費の金額が算出される。当該個人経費管理部12eの作用について、図4乃至7を参照しながら説明する。
図5には、個人経費管理部12eが作用することにより、各従業員の個人経費の金額を決定するまでの演算フローのイメージ図が示されており、より具体的には、個人経費管理部12eは、個人経費原資記憶ステップ、経費原資分配ステップ、経費設定ステップを順次実行する。
企業は、従業員が支出する経費の原資を用意する必要があるが、本実施形態では、上司の決裁を必要とする一般経費と、上司の決裁を必要とせずに、経費を使用する従業員個人が支出の可否を決定できる個人経費とを合わせた総経費原資を用意する。その総経費原資の金額は、所定期間の企業の営業実績に基づき決定されものであり、一人当たり120万円の総経費原資が用意されるものとし、部署A〜Cの従業員合計は、30名であることから、合計3,600万円の総経費原資が用意されるものとする。
本実施形態では、上記した総経費原資3,600万円の内、8割は上司決裁が必要な一般経費として各部署の人数規模、業務内容、予算規模に応じて振り分けられる。よって、本実施形態の個人経費管理部12eは、残りの2割(720万円)の部分について管理するものとなる。
個人経費管理部12eによって個人経費が算出されるに際し、最初に個人経費原資記憶ステップが実行される。本実施形態の個人経費原資記憶ステップでは、企業側から割り当てられる総経費原資の2割、すなわち720万円が個人経費原資として設定され、コントロール手段に記憶される。
上記した個人経費原資記憶ステップが実行されたならば、経費原資分配ステップが実施される。個人経費原資分配ステップは、上記個人経費原資記憶ステップにおいて設定された個人経費原資を各部署に振り分けるものであるが、本実施形態では、企業が設定した該個人経費原資(720万円)を二等分し、部署を構成する人数、各従業員の等級等に応じて各部署に分配する部員構成原資(第一の個人経費原資)として360万円、部署口座に貯蓄されたポイント残高に応じて各部署に分配するための部署成績原資(第二の個人経費原資)として360万円に分ける。
該第一の個人経費原資に割り当てられた360万円を各部署に分配する方法について説明する。該第一の個人経費原資は、各部署の従業員数と、上記した従業員の職能に関する等級を考慮して各部署に分配される。従業員の等級については種々の表記が想定されるが、本実施形態において第一の個人経費原資を各部署に分配する額を決定する際には、図4(a)の表に例示した各従業員の等級を表す20段階の数値を使用する。よって、職能資格が高い程その数値(等級)は大きく、低い程小さくなる。図6に示すように、部署Aの従業員数は12名で等級の合計は108であり、部署Bの従業員数は8名で等級合計は84であり、部署Cの従業員数は10名で等級合計は80である。よって、各部署の等級平均値は、部署A=9/人であり、部署B=10.5/人、部署C=8/人である。そして、該第一の個人経費原資(360万円)は、部員構成(人数と各従業員の等級)が考慮されたパラメータ、即ち等級合計に比例するように各部署に分配される。より具体的には、以下のような算出式に基づいて分配される(図7も参照)。なお、端数については、四捨五入等により総計が360万円になるように適宜微調整される。
部署A:360(万円)×[108/(108+84+80)]
=142.9(万円) ・・・・(1)
部署B:360(万円)×[84/(108+84+80)]
=111.2(万円) ・・・・(2)
部署C:360(万円)×[80/(108+84+80)]
=105.9(万円) ・・・・(3)
上記した算出式を使用することにより、該第一の個人経費原資は、部署を構成する従業員の人数、及び各従業員の等級に応じて各部署に分配されることになり、部署に紐付けされた従業員の人数が多い程、また、等級が高い従業員が多い程高いものとなり、個人経費原資は、人数と所属する従業員の等級を考慮して適切に分配される。
次に、第二の個人経費原資として割り当てられた360万円の分配方法について説明する。第二の個人経費原資の分配は、部署の成績、すなわち、部署口座の残高に応じたものとする。即ち図6に示す部署口座XA、XB、XCの残高を合算して(下記の式(4)を参照)分母とし、各部署の部署口座に貯蓄されたポイントを分子として、第二の個人経費原資(360万円)に乗じて算出した値(下記の式(5)〜(7)を参照。)を各部署に分配する(図7を参照。)。より具体的には、以下の式によって算出される。なお、第一の個人経費原資と同様に端数は適宜四捨五入等により適宜調整され総額が360万になるように適宜微調整される。
部署口座合算値=11,400,000+13,680,000+11,400,000
=36,480,000 ・・・・(4)
部署A:360(万円)×(11,400,000/36,480,000)
=112.5(万円) ・・・・(5)
部署B:360(万円)×(13,680,000/36,480,000)
=135.0(万円) ・・・・(6)
部署C:360(万円)×(11,40,000/36,480,000)
=112.5(万円) ・・・・(7)
以上のようにして、経費原資分配ステップが実行されることにより、図7に示すように第一の個人経費原資及び第二の個人経費原資が、各部署A〜Cに分配され、該第一の個人経費原資、第二の個人経費原資から分配された金額の合算値、すなわち、部署Aには255.4万円、部署Bには、246.2万円、部署Cには、218.4万円が、個人経費の原資として割り当てられる。なお、仮に、所定期間における部署口座のポイント残高が0、又はマイナスになった部署があった場合は、その部署の部署口座の残高を演算には含めないようにし、当該部署に対しては、第二の個人経費原資からの分配は行わないものとする。
上記した個人経費原資分配ステップが実行されたならば、各部署に振り分けられた個人経費原資から、従業員の個人口座のポイント残高に基づいて各従業員の経費を設定する経費設定ステップが実行される。以下に具体的な算出方法について説明する。
該経費設定ステップでは、同じ部署に所属する従業員の個人口座に貯蓄されたポイントを合算して分母とし、各個人口座に貯蓄されたポイントを分子として、各部署に分配された個人経費原資に乗じて得られる金額を従業員の個人経費として設定する。図6には、各部署の部署に所属する個人口座に貯蓄されたポイントを合算して得られた個人口座合計の値が示されている。これを用いた各従業員の個人経費額を設定する具体的な算出方法の一例を以下に示す。なお、各従業員の個人口座のポイント残高は図4(a)を参照して得ることとし、小数点2桁以下は説明の都合上切捨てて表記している。
<個人経費原資>
部署A:255.4万円 部署B:246.2万円 部署C:218.4万円
<各従業員の個人経費算出例>
従業員a1:255.4(万円)×(750,000/8,570,000)
=22.3(万円) ・・・・(8)
従業員b1:246.2(万円)×(1,000,000/9,750,000)
=25.2(万円) ・・・・(9)
従業員c1:218.4(万円)×(1,000,000/9,250,000)
=23.6(万円) ・・・・(10)
上記した個人経費の金額(8)〜(10)が個人経費として割り当てられる。上記した個人経費の算出例から理解されるように、個人経緯の金額には、部署口座及び個人口座に貯蓄されたポイントの残高が反映されており、従業員b1に割り当てられた個人経費額は、従業員a1に対して2.9万円多く、従業員c1に対しても1.6万円多くなり、部署の成績がいい程、個人の成績がいい程、上司の決裁を必要としない個人経費の使用に関する裁量権がより多く与えられることになるのである。なお、各部署に割り当てられた個人経費を各従業員に割り当てる際、仮に個人口座の残高が0以下であった場合は、その従業員に対する個人経費の分配は実施しないことが好ましい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で種々の変形例が想定され得る。本実施形態では、総経費額の8割を一般経費として、部署の評価に関係なく各部署に支給することとし、残りの2割を部署口座、個人口座のポイント残高に基づいて算出して個人経費とするようにしたが、本発明はこれに限定されず、従業員のモチベーションをより高めるべく、個人経費にもっと多い割合の金額を本発明に基づいて算出し支給するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、個人経費原資記憶ステップにおいて設定して記憶した個人経費原資を、第一の個人経費原資と、第二の個人経費原資とに均等に二分割して各々異なる方法で各部署に分配するようにしたが、これに限定されず、個人経費原資記憶ステップにおいて記憶した個人経費原資の全額を部署成績に基づいて算出する第二の個人経費原資として各部署に分配しても良い。
上記した実施形態では、第一の個人経費原資を分配する際に用いる等級として、20段階で表した職能資格を表す等級を用いたが、演算に用いる等級については、これに限定されず、従業員のレベルを表す他の指標を用いることもできる。例えば、各従業員に支払われる基本給を就業時間で除算した時間当たりの金額を等級として使用してもよい。その場合は、人事規定等に基づいて職能資格を設定しておく必要がなく、支払われる基本給の多寡に応じた等級が得られる。
本実施形態では、上述の人事管理システム1上において流通するポイントは、現実に流通する貨幣と同等の数値をそのまま用いたがこれに限定されず、現実に流通する貨幣と切り離し、仮想通貨として考案された独自のポイントとすることができる。なお、現実に流通する貨幣と同等の数値をポイントとして流通させれば、各従業員、或いは部署が企業に対してどの程度貢献したのかが一目瞭然となる効果が得られるので好ましい。
さらに、本実施形態のコントロール手段12のポイント設定部12bでは、業務が発生する都度、発注者、受注者の間で当該業務の難易度、必要なマンパワー、期間等を考慮した上で交換するポイント額を調整し決定していた。これにより、効率よく業務を遂行する部署、或いは従業員が低いポイントで業務を請け負うことが可能であることが明確になり、依頼しようとする業務の実施に係るコストパフォーマンスに優れた部署、或いは従業員を容易に選択することが可能となる。他方、依頼する業務が、定型業務、或いは定型業務の組み合わせであれば、該業務に相応しいポイント額を、ポイントテーブル等で予め定めておき、端末手段から業務種類を入力するたけでポイントが自動的に設定されるようにしてもよい。このようにすれば、ポイントを設定する際のミスや、定型業務であるにも係わらず、依頼する従業員によって必要なポイントが異なってしまう等の不公平が生じる問題を回避することができる。
また、上述した実施形態の説明においては、外部組織Gとの間における金銭の支出、収入の例として、ユーザーU、サプライヤーSとのやり取りについて説明したが、企業活動における外部組織Gとの間における支出、収入は、他にも様々な例が想定される。例えば、企業において特許出願を扱う部署では、出願業務を遂行する過程で外部組織G、例えば特許庁に対する支出が頻繁に生じる。また、製品の納品に係る輸送を外部の輸送会社に委託した場合は、輸送費用が外部組織G(輸送会社)に対する支出として管理される。さらに、企業が所有する不動産の管理を行う部署であれば、当該不動産を借りているテナントからのテナント料が、外部組織Gからの収入として管理され得る。そして、それぞれの支出、収入に応じたポイントが、当該業務を担当する部署の部署口座から差し引かれたり、振り込まれたりするのである。
上述した本実施形態では、企業内の管理サーバ10にコントロール手段12、口座記憶手段14を配設した例を示したが、該コントロール手段12、口座記憶手段14が現実に配設される場所は特に限定されない。昨今では、災害時等における情報の喪失等を回避するため、企業の外部にサーバを分散して配置することも行われており、通信ネットワーク2を介して企業の外部に配置されたサーバに該コントロール手段12、口座記憶手段14を登録し、人事管理システムを構成することができる。