JP6973738B2 - 極細線引張試験装置および極細線引張試験方法 - Google Patents
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Description
以上の極細線を直接挟持することによる破断防止のため、試験片の両端をドラム状巻枠方式が提案されている(特許文献1)。しかし、ドラム状巻枠に巻回されている試験片の端部は幾重になり、荷重が負荷されると巻回部分同士の摩擦力による破断や非巻回部との境界付近にドラム状巻枠への大きな摩擦力が作用しこの部分での極細線の破断が生じやすくなる。
しかし、極細線試験片の挟持・把持チャックに必要なすべりとめ、破断防止に効果が期待できるが先端組立品の作製に時間を要するとともに複雑な方式である。
しかし、接着剤が硬化した把持部あるいは把持部との境界に応力が集中して、その位置で破断しやすい。また、接着剤の種類、極細線試験片の直径に対する接着剤の厚み不足や不均等厚さによる接着強度が足りない場合には、試験片が厚紙から滑りやすくなって外れたりして試験が行えなくなるという問題があった。
さらに、引張試験のための試験片を把持するチャッキング部材を簡易かつ容易に作製して引張試験に供試できることが求められている。
一般に、接着剤は液体状態(液状)からなり、被着体に塗布すると化学反応により硬化して固体に変化して接着力が上昇する。固体化することにより、把持部あるいは挟持部に応力が集中しやすくなる。
一方、粘着剤は液状からなり、かつ反応は完了していることから被着体に接着しても化学反応は起こらないで液状のままで使用状態が維持できる。この粘着剤が一定の厚さからなる粘着層は、液状であることから加圧すると粘着層内には等方的な加圧力を生じて静水圧が発生し、粘着層内の試験片にはこの静水圧的な機械的固定力による把持が期待できる。
さらに、この静水圧的機械的固定は応力集中を発生させないと考えられる。
なお、粘着とは、接着の一種であり、特徴として水、溶剤、熱などを使用せずに、常温で短時間、僅かな圧力を加えるだけで接着することをいう。また、粘着は、粘着テープの例にあるように使用後は剥がすことを前提にしている。
すなわち、長い極細径の試験片の両側から粘着層を線接触で挟んで接着(挟持・接着)し、粘着層に荷重を負荷すると、2つの粘着層はお互いに接着するとともに試験片は粘着層に埋没して、把持される。
この状態で、試験片の長手方向に荷重を加えても、先ず粘着剤の保持力、粘着力により試験片は外れなくなる(分子間力による化学的固定)。さらに、粘着層に荷重を負荷すると、一体化した2つの粘着層は液状物質のために埋没している試験片の外周に静水圧が発生し、この静水圧による機械的固定力により、試験片は一層外れにくくなる。
粘着テープには、支持体、粘着層(粘着面ともいわれる。)からなる片面粘着テープと、粘着層、支持体、粘着層および剥離紙からなる両面テープとの2種類があるが、いずれでもよい。化学的固定と機械的固定を行なうことができるチャッキング部材であればよい。
また、チャッキング装置と支持体との間に粘着剤から粘着層を備えていてもよい。
極細線の引張試験機において、チャッキング装置は極細線試験片を把持するチャッキング部材を挟持し、チャッキング部材は直径5〜50μm、引張強度150〜300kg/mm 2 からなる極細線試験片を把持する液状の粘着剤からなる粘着層と粘着層を支持する支持体とを備えてなり、極細線試験片は粘着剤による化学的固定力とチャッキング装置から支持体を介して粘着層に平面的に加えられた加圧力が粘着層内において変換された静水圧的機械的固定力とにより把持されている。
また、チャッキング装置と支持体との間に液状の粘着剤からなる粘着層を備えていてもよい。
図1は、本発明のチャッキング装置にチャッキング部材を挟持した極細線用引張試験機の引張試験機の外観正面図であり、図2は下部チャッキング装置にチャッキング部材を挟持している状態を示す。図3は線接触により極細線試験片を把持している図であって、試験片断面方向(図3a)および試験片長手方向(図3b)を示す図であり、図4はチャッキング装置に荷重を負荷したときの静水圧による試験片に対する応力方向を示す図であって、試験片断面方向(図4a)および試験片長手方向(図4b)を示す図である。図5は引張試験における代表的な荷重・変位グラフを示す。
なお、図3および図4では、両面テープによる実施形態を示している。
直径100μm以下の極細線であって、好ましくは5〜50μmである。極細線の引張強度は、150kg/mm2以上であって好ましくは200kg/mm2から300kg/mm2以下である。
極細線の直径が小さすぎると、極細線の表面積が小さくなって分子間力が小さくなって粘着力・保持力が低下する一方で極細線の断面積が小さくなって静水圧の効果も期待できなくなるので、直径は5μmとする。
また、極細線の直径が大きくなると、粘着剤の粘着力・保持力が相対的に小さくなって外れやすくなるため50μm以下とする。
本引張試験方法の対象として引張強度150kg/mm2以上の極細線とし、本発明は引張強度の大きな極細線の引張試験に適しており、好ましくは200kg/mm2以上であるが、300kg/mm2を超えると分子間力による化学的固定と静水圧による機械的固定の和による把持力では耐え切れなくなって外れやすくなるため好ましくない。
一般的な微小荷重引張試験機1などで、最小荷重0.1gにて最大荷重50kgで十分であり、直径50μmの極細線にて引張強度300kg/mm2とすると、荷重計は750gとなる。
チャッキング装置(12、14)は、偏心ロール形状のタイプで回動によりチャッキング部材13に線接触で押付け力による荷重を負荷することができる。極細線の直径に対しては円弧の線接触面は、面接触と近似できる。ここで、ロール径は15mmである。
ロールタイプのチャッキング装置は、チャッキングがすべって外れにくい一方で応力集中が生じやすい。非ロールタイプである平面タイプのチャッキング装置は、応力集中が発生しにくい一方で引張力が大きくなるとすべって外れやすくなる。
チャッキング部材13は、液状の粘着剤を支持体に塗布して粘着層あるいは粘着面が形成されている粘着テープである。極細線試験片の両側から2つの粘着層でもって把持するような粘着テープで接着する方法が簡易的である。
粘着テープには、支持体、粘着層からなる片面粘着テープと、粘着層、支持体、粘着層および剥離紙からなる両面粘着テープとの2種類があるが、いずれでもよい。化学的固定と機械的固定を行なうことができるチャッキング部材であればよい。
先ず、粘着テープの厚さでは、機械的固定のための静水圧を発生させる粘着層21の厚さ(2つの粘着層の合わせた厚さ)が、試験片(極細線)23の直径の2〜40倍とする。したがって、市販の粘着テープの粘着層21bの厚さでは、30〜50μm程度が少なくとも必要である。
片面粘着テープの場合には、支持体と接着部の厚さの合計は、取扱い性・作業性およびチャッキング装置による挟持性を考慮して300〜500μm程度が好ましい。
両面粘着テープの場合には、試験片に接着する第1接着部21b、支持体22、第2接着部21aおよび剥離紙からなり、第1粘着層21bの厚さは同様に30〜50μ程度は少なくとも必要である。従って、両面粘着テープとしての厚さは、取扱い性・作業性およびチャッキング装置による挟持性を考慮して300〜800μm程度が好ましい。
粘着層の幅が試験片の直径の10倍より小さいと静水圧の発生が不十分となるからである。粘着テープの幅が5mm未満の場合には、その中央に試験片を接着する調整作業が容易ではなく、20mmを超える場合にはチャッキング装置の幅を超えて余分なチャッキング部材となる。
また、両面粘着テープを使用する場合には、第2接着部をチャッキング装置に粘着させるため、試験終了後の剥離作業が困難になることから最大幅で20mmとする。
本発明の引張試験に際しては、粘着テープに極細線試験片を貼り、長さ方向に静荷重をかけたときの粘着剤がズレに耐える力と定義されている保持力が十分であれば、外れにくくなる。保持力は、極細線試験片との接触面積にも比例することから、極細線試験片の外周面の面積である外周距離と長さとの積に比例する。
極細線の引張試験方法は、次のステップで行なう。
チャッキング部材として、液状の粘着剤からなる粘着層と支持体からなるチャッキング部材を用いて、
チャッキング部材の粘着層は、極細線試験片を接着・挟持し、さらに極細線試験片が挟持されているチャッキング部材はチャッキング装置により挟持され、
次いで、チャッキング装置はチャッキング部材に荷重を負荷し、極細線試験片を粘着・挟持している両側の2つの粘着層を密着させて一体化した粘着層とすることにより、極細線試験片は粘着層により把持されるとともに粘着剤との分子間力による化学的固定力を生ぜしめ、
さらに、チャッキング装置に荷重を負荷して、チャッキング装置から支持体を介して粘着層に平面的に加えられた加圧力が粘着層内において変換された静水圧的機械的固定力を発生させた後に引張試験を行なう。
試験片の両側から粘着テープの粘着層と試験片を接着・挟持する際に、2枚の粘着両面テープ(図4a)を用いて行なう方法と、1枚の粘着テープを折り曲げて行なう方法がある。1枚の粘着テープを折り曲げて使用すると、接着部が加圧されたときに静水圧作用がより大きくなり、試験片への把持力(機械的固定力)が増大する。
試験に供した極細線は、Co基合金のアモルファスワイヤにて直径5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μmの6種類で、試験片として長さ100mmである。
チャッキング部材は、例えば、ニチバン(株)製の「超強力タイプ ナイスタック」の粘着力 レベル4の超強力の両面テープにて、両面テープの厚さは0.62mm、粘着面の厚さは50μm、両面テープの幅は15mmの両面テープを長さ15mmで切断して調整した。
図3aは、極細線試験片23の断面方向を示し、同図における左右方向が両面テープの15mmの幅に相当し、極細線試験片23の直径の300〜1500倍と十分な幅とした。粘着層21bの厚さは50μmより2つの厚さの合計は100μmとなり、極細線試験片23の直径の2〜10倍と十分な厚さとした。図3bは、極細線試験片23の長手方向を示し、同図における左右方向が両面テープの15mmの長さに相当し、極細線試験片23の直径の300〜1500倍と十分な長さとした。
図4aにて、チャッキング装置24に荷重を負荷して加圧を始めると、加圧力は粘着層21a、支持体22を介して粘着層21bに作用して、2枚の両面テープの2つの粘着層21b(厚さ50μm)同士が試験片を挟みながら近づいて接着して一体化した粘着層21(100μm)を形成する。この粘着層21に外周を包囲された試験片は、粘着剤との間に働く分子間力で化学的固定がされる。さらに加圧していくと、支持体22への平面的な加圧力(図面で、上下方向)を介して100μmの厚さからなる粘着層21への加圧力は、粘着層21の液状特性から極細線試験片23の断面の外周に対して、等方的な圧力である静水圧となって加圧される。極細線試験片23の直径に対して、粘着層21は左右には十分な幅があることから、上下からの平面的な加圧力は粘着層21の左右に開放されることなく、等方的な加圧力に変換されて静水圧的な機械的固定力が発生する。
したがって、極細線試験片23の外周面は、粘着層21と間に化学的固定力を生じせしめ、かつ静水圧的機械的固定力により強力に把持される。
また、図4bから極細線試験片23の長さ方向にて、極細線試験片23の十分な長さから化学的固定力、静水圧的機械的固定力により強く把持される。
試験片の種類、引張強度および本数は実施例と同じで、評価方法も同じである。
次に、試験方法はJIS R 7607を参考にして、穴のある厚紙からなる台紙31に接着剤33を塗布して極細線試験片32を貼り付け、その上にクランプ部材を重ねて貼り付けた後、裁断部35を裁断してクランプ部材を引張試験機1のチャッキング装置(12、14)でチャッキングして引張試験に供する。
本発明によれば、極細線試験片の直径5〜50μmについて引張強度150〜300kg/mm2のすべての引張試験は断線しないで行なうことができ、すなわち10本中の10本が引張試験を行なうことができて評価結果はすべて〇であった。
比較例では、極細線試験片の直径が小さいほど、また引張強度が大きいほど断線しなかった本数が少なく、直径5〜50μmの極細線試験片が150kg/mm2を除いて評価は×であった。
接着剤は、液体状であることから塗布の際に厚さが薄くなるとともに硬化して固体化するために、クランプ部材をチャッキングすると機械的挟持となって応力集中が発生することによると考えられる。特に、極細線試験片の直径が小さいほどあるいは引張強度が大きいほど応力集中が発生しやすくなると考えられる。
11:台座、12:下部チャッキング装置、13:チャッキング部材、14:上部チャッキング装置、15:引張荷重測定器、16:駆動部
2:極細線試験片固定
2a:両面テープ(剥離紙の除去後)、21:粘着層、21a:粘着層(剥離紙側)、21b:粘着層(極細線試験側)、22:支持体、23:極細線試験片、24:チャッキング装置
3:比較試験用チャッキング
31:厚紙、32:極細線試験片、33:接着剤、34:クランク部材、35:裁断部
Claims (3)
- 極細線の引張試験機において、
チャッキング装置は、極細線試験片を把持するチャッキング部材を挟持し、
前記チャッキング部材は、前記極細線試験片を把持する液状の粘着剤からなる粘着層と、前記粘着層を支持する支持体とを備えてなり、
前記極細線試験片は、直径5〜50μm、引張強度150〜300kg/mm 2 からなり、
前記粘着剤による化学的固定力と、前記チャッキング装置から前記支持体を介して前記粘着層に平面的に加えられた加圧力が粘着層内において変換された静水圧的機械的固定力とにより把持されていることを特徴とする極細線用引張試験機。 - 請求項1において、
前記チャッキング装置と前記支持体との間に液状の粘着剤からなる粘着層を備えることを特徴とする極細線用引張試験機。 - 極細線の引張試験方法において、
液状の粘着剤からなる粘着層と支持体からなるチャッキング部材を用いて、
前記チャッキング部材の前記粘着層により直径5〜50μm、引張強度150〜300kg/mm 2 からなる極細線試験片は粘着・挟持され、
前記極細線試験片が挟持されている前記チャッキング部材は前記チャッキング装置により挟持され、
次いで、前記チャッキング装置は前記チャッキング部材に荷重を負荷し、前記極細線試験片を粘着・挟持している両側の2つの前記粘着層を密着させて一体化した粘着層とすることにより、前記極細線試験片は前記粘着層により把持されるとともに粘着剤との分子間力による化学的固定力を生ぜしめ、
さらに、前記チャッキング装置に荷重を負荷して、前記チャッキング装置から前記支持体を介して前記粘着層に平面的に加えられた加圧力が粘着層内において変換された静水圧的機械的固定力を発生させた後に引張試験を行なうことを特徴とする極細線引張試験方法。
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