図1には、本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成が示されている。本実施形態に係る電力変換装置は、磁気部品10と、AC/ACコンバータ12と、交流電源14と、直流電源16と、スイッチング回路18,20と、直流負荷22と、制御部24とを含む。電力変換装置は、交流電源14の代わりに交流負荷を含んでもよい。磁気部品10は、絶縁トランスとしての機能と昇圧リアクトルとしての機能とを有する。直流負荷22は、例えば、モータジェネレータとインバータとを含む。電力変換装置は、例えば、モータジェネレータの駆動力によって走行する電動車両に搭載される。もちろん、モータジェネレータ及びインバータ以外の負荷が、直流負荷22として用いられてもよい。また、電力変換装置は、電動車両以外の装置等に搭載されてもよい。
電力変換装置は、例えば、電力変換モード又は充電モードを実行する。電力変換モードにおいては、電力変換装置は、直流電源16から供給された電力を、直流負荷22に含まれるモータジェネレータに供給することでモータジェネレータを駆動する。また、電力変換装置は、モータジェネレータが回生制動によって充電した電力を直流電源16に供給することで直流電源16を充電する。充電モードにおいては、電力変換装置は、交流電源14から供給された電力を直流電源16に供給することで直流電源16を充電する。交流電源14は、例えば商用電源である。
電力変換モードにおいては、AC/ACコンバータ12がスイッチングを停止し、スイッチング回路18,20と、直流負荷22に含まれるインバータとが動作する。充電モードにおいては、直流負荷22に含まれるインバータがスイッチングを停止し、AC/ACコンバータ12とスイッチング回路18,20とが動作する。AC/ACコンバータ12とスイッチング回路18,20とは、磁気部品10によって結合されており、電力変換モード及び充電モードの両者において磁気部品10が共用される。
スイッチング回路18は、ハーフブリッジU1,V1とコンデンサC1とを含む。ハーフブリッジU1は、スイッチング素子S1,S2によって構成されている。ハーフブリッジV1は、スイッチング素子S3,S4によって構成されている。ハーフブリッジU1においては、スイッチング素子S1の一端とスイッチング素子S2の一端とが接続されている。スイッチング素子S1の両端には、スイッチング素子S2との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S2の両端には、スイッチング素子S1との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S1,S2として、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。この場合、スイッチング素子S1としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S2としてのIGBTのコレクタとが接続される。スイッチング素子S1,S2として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてもよい。この場合、スイッチング素子S1としてのMOSFETのソースと、スイッチング素子S2としてのMOSFETのドレインとが接続される。
同様に、ハーフブリッジV1においては、スイッチング素子S3の一端と、スイッチング素子S4の一端とが接続されている。スイッチング素子S3の両端には、スイッチング素子S4との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S4の両端には、スイッチング素子S3との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S3,S4として、例えばIGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S3としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S4としてのIGBTのコレクタとが接続される。また、スイッチング素子S3,S4として、MOSFETが用いられてもよい。この場合、スイッチング素子S3としてのMOSFETのソースと、スイッチング素子S4としてのMOSFETのドレインとが接続される。
ハーフブリッジU1とハーフブリッジV1とは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S1の一端がスイッチング素子S2の一端に接続され、スイッチング素子S3の一端がスイッチング素子S4の一端に接続され、スイッチング素子S1の他端がスイッチング素子S3の他端に接続され、スイッチング素子S2の他端がスイッチング素子S4の他端に接続されている。
スイッチング素子S1とスイッチング素子S3との接続点と、スイッチング素子S2とスイッチング素子S4の接続点との間には、コンデンサC1が接続されている。
スイッチング回路20は、ハーフブリッジU2,V2とコンデンサC2とを含む。ハーフブリッジU2は、スイッチング素子S5,S6によって構成されている。ハーフブリッジV2は、スイッチング素子S7,S8によって構成されている。ハーフブリッジU2においては、スイッチング素子S5の一端とスイッチング素子S6の一端とが接続されている。スイッチング素子S5の両端には、スイッチング素子S6との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S6の両端には、スイッチング素子S5との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S5,S6として、例えばIGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S5としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S6としてのIGBTのコレクタとが接続される。スイッチング素子S5,S6として、MOSFETが用いられてもよい。この場合、スイッチング素子S5としてのMOSFETのソースと、スイッチング素子S6としてのMOSFETのドレインとが接続される。
同様に、ハーフブリッジV2においては、スイッチング素子S7の一端と、スイッチング素子S8の一端とが接続されている。スイッチング素子S7の両端には、スイッチング素子S8との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S8の両端には、スイッチング素子S7との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S7,S8として、例えばIGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S7としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S8としてのIGBTのコレクタとが接続される。また、スイッチング素子S7,S8として、MOSFETが用いられてもよい。この場合、スイッチング素子S7としてのMOSFETのソースと、スイッチング素子S8としてのMOSFETのドレインとが接続される。
ハーフブリッジU2とハーフブリッジV2とは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S5の一端がスイッチング素子S6の一端に接続され、スイッチング素子S7の一端がスイッチング素子S8の一端に接続され、スイッチング素子S5の他端がスイッチング素子S7の他端に接続され、スイッチング素子S6の他端がスイッチング素子S8の他端に接続されている。
スイッチング素子S5とスイッチング素子S7との接続点と、スイッチング素子S6とスイッチング素子S8の接続点との間には、コンデンサC2が接続されている。
磁気部品10は、1次側のコイルL1,L2,L3,L4と、2次側のコイルL5,L6とを含む。コイルL1,L2,L3、L4は、スイッチング回路18,20側に配置されている1次側のコイルであり、コイルL5,L6は、AC/ACコンバータ12側に配置されている2次側のコイルである。
磁気部品10は、磁気部品10A,10Bを含む。1次側のコイルL1,L2と2次側のコイルL5とによって、磁気部品10Aが構成されている。1次側のコイルL3,L4と2次側のコイルL6とによって、磁気部品10Bが構成されている。1次側のコイルL1,L2,L3,L4は並列接続され、2次側のコイルL5,L6は直列接続されている。
磁気部品10Aは、1次側のコイルL1,L2と2次側のコイルL5とを含む。コイルL1の一端は、スイッチング素子S1,S2の接続点に接続されている。コイルL2の一端は、スイッチング素子S3,S4の接続点に接続されている。コイルL1の他端はコイルL2の他端に接続されている。コイルL1,L2の接続点は、直流電源16の正極端子に接続されている。直流電源16の負極端子は、スイッチング素子S2,S4,S6,S8に接続されている。
磁気部品10Bは、1次側のコイルL3,L4と2次側のコイルL6とを含む。コイルL3の一端は、スイッチング素子S5,S6の接続点に接続されている。コイルL4の一端は、スイッチング素子S7,S8の接続点に接続されている。コイルL3の他端はコイルL4の他端に接続されている。コイルL3,L4の接続点は、直流電源16の正極端子に接続されている。また、コイルL1,L2の接続点とコイルL3,L4の接続点とが接続されている。
コイルL5の一端はコイルL6の一端に接続されている。コイルL5の他端はAC/ACコンバータ12に接続され、コイルL6の他端はAC/ACコンバータ12に接続されている。
コイルL1とコイルL5とは磁気的に結合し、コイルL2とコイルL5とは磁気的に結合する。これにより、コイルL1,L2,L5は、磁気結合回路としての磁気部品10Aを構成している。同様に、コイルL3とコイルL6とは磁気的に結合し、コイルL4とコイルL6とは磁気的に結合する。これにより、コイルL3,L4,L6は、磁気結合回路としての磁気部品10Bを構成している。
AC/ACコンバータ12には、交流電源14又は交流負荷が接続されている。
スイッチング素子S1、スイッチング素子S3及びコンデンサC1の接続点と、スイッチング素子S2、スイッチング素子S4及びコンデンサC1の接続点との間には、直流負荷22が接続されている。同様に、スイッチング素子S5、スイッチング素子S7及びコンデンサC2の接続点と、スイッチング素子S6、スイッチング素子S8及びコンデンサC2の接続点との間には、直流負荷22が接続されている。
スイッチング回路18には、コンデンサC1の端子間電圧を検出し、その検出値を制御部24に出力する電圧センサ(図示されていない)が設けられている。また、直流電源16の正極端子からコイルL1,L2の接続点に流れる電流を検出し、その検出値を制御部24に出力する電流センサ(図示されていない)が設けられている。同様に、スイッチング回路20には、コンデンサC2の端子間電圧を検出し、その検出値を制御部24に出力する電圧センサ(図示されていない)が設けられている。また、直流電源16の正極端子からコイルL3,L4の接続点に流れる電流を検出し、その検出値を制御部24に出力する電流センサ(図示されていない)が設けられている。制御部24は、上記の検出値に基づいて、各スイッチング素子を制御するための制御信号を生成し、各スイッチング素子に制御信号を出力することで、各スイッチング素子のオンオフを制御する。制御信号がハイを示す場合、スイッチング素子はオンとなり、制御信号がローを示す場合、スイッチング素子はオフとなる。このように、各スイッチング素子は、制御部24によって、オフからオン、又は、オンからオフに制御される。
以下、電力変換装置の動作について説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、コイルL1,L2,L3,L4に流れる電流の方向を制御することで、磁気部品10を昇圧リアクトル又は絶縁トランスとして機能させる。つまり、電力変換装置は、コイルL1,L2,L3,L4に流れる電流の方向を変えることで、磁気部品10の機能を昇圧リアクトルとしての機能から絶縁トランスとしての機能へ切り替えたり、磁気部品10の機能を絶縁トランスとしての機能から昇圧リアクトルとしての機能へ切り替えたりする。例えば、コイルL1,L2の位相を同相(例えば位相が0度)に定め、コイルL3,L4の位相を逆相(例えば位相が180度)に定めることで、磁気部品10は昇圧リアクトルとして機能する。コイルL1,L3の位相を同相(例えば位相が0度)に定め、コイルL2,L4の位相を逆相(例えば位相が180度)に定めることで、磁気部品10は絶縁トランスとして機能する。
図2には、磁気部品10を昇圧リアクトルとして機能させるときの制御方法が示されている。
磁気部品10を昇圧リアクトルとして機能させるときは、図2(a)に示すように、制御部24は、指令値1とキャリア1との比較に基づいて、スイッチング素子S1,S2,S3,S4を制御するための制御信号を生成し、指令値2とキャリア2との比較に基づいて、スイッチング素子S5、S6,S7,S8を制御するための制御信号を生成する。
図2(b)には、キャリア1,2の波形、指令値1,2の波形、及び、スイッチング素子S2,S4,S6,S8の制御信号の波形が示されている。キャリア1とキャリア2との間の位相差は180度である。
図2(c)には、磁気部品10が昇圧リアクトルとして機能するときのコイルL1,L2,L3,L4に流れる電流の方向が、矢印によって示されている。
図3には、磁気部品10を絶縁トランスとして機能させるときの制御方法が示されている。
磁気部品10を絶縁トランスとして機能させるときは、図3(a)に示すように、制御部24は、指令値1とキャリア1との比較に基づいて、スイッチング素子S1,S2を制御するための制御信号を生成し、指令値1とキャリア2との比較に基づいて、スイッチング素子S5,S6を制御するための制御信号を生成し、指令値2とキャリア1との比較に基づいて、スイッチング素子S3,S4を制御するための制御信号を生成し、指令値2とキャリア2との比較に基づいて、スイッチング素子S7,S8を制御するための制御信号を生成する。
図3(b)には、キャリア1,2の波形、指令値1,2の波形、及び、スイッチング素子S2,S4,S6,S8の制御信号の波形が示されている。キャリア1とキャリア2との間の位相差は180度である。
図3(c)には、磁気部品10が絶縁トランスとして機能するときのコイルL1,L2,L3,L4に流れる電流の方向が、矢印によって示されている。
図4には、磁気部品10の等価回路が示されている。各部に流れる電流の間の関係を以下に示す。
iin=i1+i2
i1=ia1+ib1
i2=ia2+ib2
電流iinは、直流電源16から供給される電流である。電流i1は、磁気部品10Aに供給される電流である。電流ia1は、コイルL1に流れる電流であり、電流ib1は、コイルL2に流れる電流である。電流i2は、磁気部品10Bに供給される電流である。電流ia2は、コイルL3に流れる電流であり、電流ib2は、コイルL4に流れる電流である。
1次側の電圧と2次側の電圧との関係を以下に示す。
Vn2=Vn2a+Vn2b
Vn2a=Vn1ab×N
Vn2b=Vn1cd×N
Vn1ab=Vn1cd
電圧Vn2は2次側の電圧である。電圧Vn2aは、2次側の電圧であって、コイルL5に印加される電圧である。Vn2bは、2次側の電圧であって、コイルL6に印加される電圧である。電圧Vn1abは、1次側の電圧であって、コイルL1,L2に印加される電圧である。電圧Vn1cdは、1次側の電圧であって、コイルL3,L4に印加される電圧である。Nは電圧比である。
以下、磁気部品10の構成について詳しく説明する。図5には、磁気部品10と配線との接続関係が概略的に示されている。図5に示されている符号a,b,c,dは、図4に示されている各符号と同一のものである。磁気部品10は、1つのコアによって構成されている。これに対して、後述するように、比較例に係る磁気部品は、2つのコアによって構成されている(図17参照)。磁気部品10は1つのコアによって構成されているため、磁気部品10のサイズを、比較例に係る磁気部品のサイズよりも小さくすることができる。
図6には、磁気部品10の外観が示されている。一例として、磁気部品10の外形形状は、矩形状である。もちろん、磁気部品10の外形形状は、丸みを有する形状(例えば円柱状等)であってもよい。磁気部品10は、上面であるU面、上面の反対側の面である下面、及び、4つの側面(A面、B面、C面及びD面)を有する。A面側には、コイルL1,L2,L5が配置されており、B面側には、コイルL2,L3、コイルL5の一部及びコイルL6の一部が配置されており、C面側には、コイルL3,L4,L6が配置されており、D面側には、コイルL1,L4、コイルL5の一部及びコイルL6の一部が配置されている。各コイルの配置関係については後で詳しく説明する。
図7には、磁気部品10をA面側から見たときのコイルの巻回の状態が模式的に示されている。図7中の右側には、1次側のコイルL1と2次側のコイルL5の一部とが示されている。図7中の左側には、1次側のコイルL2と2次側のコイルL5の一部とが示されている。1次側のコイルL1を構成する導線N1と2次側のコイルL2を構成する導線N2とが、交互に重ねて巻回されている。また、コイルL1とコイルL2との間にはギャップ部が設けられている。他のコイルについても同様である。磁気部品10をB面側から見た場合、図7中の右側には、1次側のコイルL2と2次側のコイルL5の一部とが示され、図7中の左側には、1次側のコイルL3と2次側のコイルL6の一部とが示されることになる。磁気部品10をC面側から見た場合、図7中の右側には、1次側のコイルL4と2次側のコイルL6の一部とが示され、図7中の左側には、1次側のコイルL3と2次側のコイルL6の一部とが示されることになる。磁気部品10をD面側から見た場合、図7中の右側には、1次側のコイルL4と2次側のコイルL6の一部とが示され、図7中の左側には、1次側のコイルL1と2次側のコイルL5の一部とが示されることになる。
図8には、磁気部品10に含まれるコア26が示されている。図8は、コア26の断面図である。図8には、上面側であるU面側から見たときのコア26の断面が示されている。
コア26は、コイルを構成する導線が巻回される4つのコア脚(例えばコア脚28,30,32,34)と、各コア脚の間に設けられたギャップ部(例えばギャップ部36,38,40,42)とによって構成されている。磁気部品10のU面側からコア26を見たときのコア26の形状は、全体として正方形の形状である。各コア脚は、その正方形の四隅に配置されている。各コア脚は、例えば、正方形の断面形状を有する角柱状の形状を有する部材である。もちろん、各コア脚は、円形の断面形状を有する円柱状の形状を有する部材であってもよい。ここでは、一例として、各コア脚は、正方形の断面形状を有するものとする。4つのコア脚によって単位コア脚群が構成される。
コア26は、1又は複数の単位コア脚群を含む。図8に示す例では、コア26は、1つの単位コア脚群を含んでいるが、2つ以上の単位コア脚群を含んでもよい。すなわち、コア26は、4の倍数(すなわち、4,8,12,・・・)個のコア脚を含んでもよい。
各コア脚は、コア26の中心位置Oを回転軸として互いに回転対称の位置に設けられている。例えば、コア脚30は、中心位置Oを回転軸として、コア脚28に対して90度の位置に設けられている。コア脚32は、中心位置Oを回転軸として、コア脚30に対して90度の位置に設けられている。コア脚34は、中心位置Oを回転軸として、コア脚32に対して90度の位置に設けられている。
コア脚28とコア脚30との間にはギャップ部36が設けられている。コア脚30とコア脚32との間にはギャップ部38が設けられている。コア脚32とコア脚34との間にはギャップ部40が設けられている。コア脚34とコア脚28との間にはギャップ部42が設けられている。コア脚とギャップ部との間には、巻線が設けられるスペースが形成されている。各ギャップ部は、例えば、矩形状の断面形状を有する角柱状の形状を有する部材である。もちろん、各ギャップ部は、円形の断面形状を有する円柱状の形状を有する部材であってもよい。ここでは、一例として、各ギャップは、矩形状の断面形状を有するものとする。
コア脚28には、1次側のコイルL1を構成する導線が巻回される。コア脚30には、1次側のコイルL2を構成する導線が巻回される。コア脚32には、1次側のコイルL3を構成する導線が巻回される。コア脚34には、1次側のコイルL4を構成する導線が巻回される。また、コア脚28,30には、2次側のコイルL5を構成する導線が巻回される。コア脚32,34には、2次側のコイルL6を構成する導線が巻回される。
図9には、コア26の各部のサイズが示されている。長さlaは、コア脚28の外側の端からコア脚30の外側の端までの長さである。コア脚32の外側の端からコア脚34の外側の端までの長さも、長さlaである。長さlbは、コア脚28の外側の端からコア脚34の外側の端までの長さである。コア脚30の外側の端からコア脚32の外側の端までの長さも、長さlbである。
長さla1は、コア脚28の外側の端からギャップ部36の中間位置までの長さである。コア脚34の外側の端からギャップ部40の中間位置までの長さも、長さla1である。長さla2は、コア脚30の外側の端からギャップ部36の中間位置までの長さである。コア脚32の外側の端からギャップ部40の中間位置までの長さも、長さla2である。長さlb1は、コア脚28の外側の端からギャップ部42の中間位置までの長さである。コア脚30の外側の端からギャップ部38の中間位置までの長さも、長さlb1である。長さlb2は、コア脚34の外側の端からギャップ部42の中間位置までの長さである。コア脚32の外側の端からギャップ部38の中間位置までの長さも、長さlb2である。
長さlL1は、コア脚28の断面における対角線の長さである。長さlL2は、コア脚30の断面における対角線の長さである。長さlL3は、コア脚32の断面における対角線の長さである。長さlL4は、コア脚34の断面における対角線の長さである。
以下に、各長さの関係を示す。
la=lb
la=la1+la2
la1=la2
lb=lb1+lb2
lb1=lb2
lL1=lL2=lL3=lL4
コア脚28,30,32,34のそれぞれの断面の形状と大きさは互いに同じであり、それぞれの断面積は互いに同じである。つまり、コア脚28において対角線の長さlL1を有する断面の形状と、コア脚30において対角線の長さlL2を有する断面の形状と、コア脚32において対角線の長さlL3を有する断面の形状と、コア脚34において対角線の長さlL4を有する断面の形状とは、互いに同じであり、これらの断面の面積は互いに同じである。
また、ギャップ部36,38,40,42のそれぞれの断面の形状と大きさは互いに同じであり、それぞれの断面積は互いに同じである。
また、コア脚28とギャップ部36との間の長さと、コア脚30とギャップ部36との間の長さと、コア脚30とギャップ部38との間の長さと、コア脚32とギャップ部38との間の長さと、コア脚32とギャップ部40との間の長さと、コア脚34とギャップ部40との間の長さと、コア脚34とギャップ部42との間の長さと、コア脚28とギャップ部42との間の長さとは、互いに同じである。
各コア脚の断面積、各ギャップ部の断面積、及び、コア脚とギャップ部との間の長さを調整することで、インダクタンスを増減することができる。
図10及び図11には、別のサイズを有するコア脚とギャップ部とが示されている。図10には、図9に示されているコア脚及びギャップ部よりも大きいサイズを有するコア脚とギャップ部とが示されている。図11には、図9に示されているコア脚及びギャップ部よりも小さいサイズを有するコア脚とギャップ部とが示されている。図10及び図11に示されているコア26においても、各部間の長さの関係は、図9に示されているコア26における関係と同じである。
図12及び図13には、各コイルの巻回方向が模式的に示されている。図12及び図13は、コア26の断面図である。図12及び図13には、上面側であるU面側から見たときのコア26の断面が示されている。図12には、1次側のコイルの巻回方向が示されている。図13には、2次側のコイルの巻回方向が示されている。図12及び図13には、コイルの巻回方向が、コイルに流れる電流の方向として示されている。図12及び図13に示されている符号a,b,c,d,N2a,N2bは、図4に示されている各符号と同一のものである。符号aは、コイルL1の一端に対応する部分を示している。符号bは、コイルL2の一端に対応する部分を示している。符号cは、コイルL3の一端に対応する部分を示している。符号dは、コイルL4の一端に対応する部分を示している。符号N2aは、コイルL5の一端に対応する部分を示している。符号N2bは、コイルL6の一端に対応する部分を示している。
1次側のコイルL1,L2,L3,L4が並列接続されるように、1次側のコイルを構成する導線が巻回されている。図12に示すように、コア脚28に導線が巻回されることでコイルL1が構成される。具体的には、コア脚28とギャップ部36との間のスペースと、コア脚28とギャップ部42との間のスペースとを通して、導線がコア脚28に巻回されることでコイルL1が構成される。また、コア脚30に導線が巻回されることでコイルL2が構成される。具体的には、コア脚30とギャップ部36との間のスペースと、コア脚30とギャップ部38との間のスペースとを通して、導線がコア脚30に巻回されることでコイルL2が構成される。また、コア脚32に導線が巻回されることでコイルL3が構成される。具体的には、コア脚32とギャップ部38との間のスペースと、コア脚32とギャップ部40との間のスペースとを通して、導線がコア脚32に巻回されることでコイルL3が構成される。また、コア脚34に導線が巻回されることでコイルL4が構成される。具体的には、コア脚34とギャップ部40との間のスペースと、コア脚34とギャップ部42との間のスペースとを通して、導線がコア脚34に巻回されることでコイルL4が構成される。コイルL1,L2,L3,L4の巻回方向は同じ方向である。つまり、コア脚28に巻回されている1次側用の導線の巻回方向と、コア脚30に巻回されている1次側用の導線の巻回方向と、コア脚32に巻回されている1次側用の導線の巻回方向と、コア脚34に巻回されている1次側用の導線の巻回方向とは、互いに同じ方向である。
2次側のコイルL5,L6が直列接続されるように、2次側のコイルを構成する導線が巻回されている。図13に示すように、コア脚28に巻回されている2次側用の導線と、コア脚30に巻回されている2次側用の導線とによって、コイルL5が構成されている。具体的には、コア脚28とギャップ部36との間のスペースと、コア脚28とギャップ部42との間のスペースとを通して、導線がコア脚28に巻回され、更に、コア脚30とギャップ部36との間のスペースと、コア脚30とギャップ部38との間のスペースとを通して、導線がコア脚30に巻回されることで、コイルL5が構成される。コア脚30に巻回されている状態の2次側用の導線は、コイルL5の一部を構成する部分コイルともいえる。同様に、コア脚30に巻回されている状態の2次側用の導線は、コイルL5の一部を構成する部分コイルともいえる。コア脚28に巻回されている2次側用の導線によって構成されている部分は、2次側のコイルL5において、1次側のコイルL1に対応する部分である。コア脚30に巻回されている2次側用の導線によって構成されている部分は、2次側のコイルL5において、1次側のコイルL2に対応する部分である。
また、コア脚32に巻回されている2次側用の導線と、コア脚34に巻回されている2次側用の導線とによって、コイルL6が構成されている。具体的には、コア脚32とギャップ部38との間のスペースと、コア脚32とギャップ部40との間のスペースとを通して、導線がコア脚32に巻回され、更に、コア脚34とギャップ部40との間のスペースと、コア脚34とギャップ部42との間のスペースとを通して、導線がコア脚34に巻回されることで、コイルL6が構成される。コア脚32に巻回されている状態の2次側用の導線は、コイルL6の一部を構成する部分コイルともいえる。同様に、コア脚34に巻回されている状態の2次側の導線は、コイルL6の一部を構成する部分コイルともいえる。コア脚32に巻回されている2次側用の導線によって構成されている部分は、2次側のコイルL6において、1次側のコイルL3に対応する部分である。コア脚34に巻回されている2次側用の導線によって構成されている部分は、2次側のコイルL6において、1次側のコイルL4に対応する部分である。
コア脚28に巻回されている2次側用の導線の巻回方向と、コア脚32に巻回されている2次側用の導線の巻回方向とは、互いに同じである。コア脚30に巻回されている2次側用の導線の巻回方向と、コア脚34に巻回されている2次側用の導線の巻回方向とは、互いに同じである。コア脚28,32のそれぞれに巻回されている2次側用の導線の巻回方向と、コア脚30,34のそれぞれに巻回されている2次側用の導線の巻回方向とは、互いに反対の方向である。つまり、中心位置Oを対称軸として互いに対角線上の位置に設けられたコア脚に巻回されている導線同士の巻回方向は、互いに同じ方向である。換言すると、中心位置Oを対称軸として、互いに180度の回転対称の位置に巻回されている各導線の巻回方向は、互いに同じ方向である。
以下、磁気部品10の作用について説明する。図14には、磁気部品10を昇圧リアクトルとして機能させるときに各コイルに流れる電流の向きが示されている。コイルL1、つまり、コア脚28に巻回されている導線には、電流ia1が流れる。コイルL2、つまり、コア脚30に巻回されている導線には、電流ib1が流れる。コイルL3、つまり、コア脚32に巻回されている導線には、電流ia2が流れる。コイルL4、つまり、コア脚34に巻回されている導線には、電流ib2が流れる。各コイルに流れる電流の値は同じである。電流の流れる方向は、図2(c)に示されている方向と同じである。
コイルに電流が流れることで磁束が発生する。図15には、その磁束の方向が示されている。電流ia1がコイルL1に流れることで、磁束Φ1が発生する。電流ib1がコイルL2に流れることで、磁束Φ2が発生する。電流ia2がコイルL3に流れることで、磁束Φ3が発生する。電流ib2がコイルL4に流れることで、磁束Φ4が発生する。各コア脚の断面積は同じであり、各コイルには同じ値を持った電流が流れるので、各磁束の大きさは同じである。つまり、Φ1=Φ2=Φ3=Φ4の関係が成立する。
磁束Φ1,Φ2,Φ3,Φ4のそれぞれは、以下の成分に分けられる。
Φ1=Φ12+Φ14
Φ2=Φ21+Φ23
Φ3=Φ32+Φ34
Φ4=Φ43+Φ41
磁束Φ12は、コイルL1にて発生し、コア脚28とコア脚30との間に設置されているギャップ部36に向かう磁束である。磁束Φ14は、コイルL1にて発生し、コア脚28とコア脚34との間に設置されているギャップ部42に向かう磁束である。
磁束Φ21は、コイルL2にて発生し、コア脚30とコア脚28との間に設置されているギャップ部36に向かう磁束である。磁束Φ23は、コイルL2にて発生し、コア脚30とコア脚32との間に設置されているギャップ部38に向かう磁束である。
磁束Φ32は、コイルL3にて発生し、コア脚32とコア脚30との間に設置されているギャップ部38に向かう磁束である。磁束Φ34は、コイルL3にて発生し、コア脚32とコア脚34との間に設置されているギャップ部40に向かう磁束である。
磁束Φ42は、コイルL4にて発生し、コア脚34とコア脚32との間に設置されているギャップ部40に向かう磁束である。磁束Φ41は、コイルL4にて発生し、コア脚34とコア脚28との間に設けられているギャップ部42に向かう磁束である。
ギャップ部36においては、磁束Φ12の向きと磁束Φ21の向きとは互いに同じであるため、エネルギーが蓄えられる。他のギャップ部38,40,42においても同様である。
以下に、コイルL1,L2,L3,L4のそれぞれのインダクタンス値を示す。
コイルL1のインダクタンス値=L1a+M12+M13+M14
コイルL2のインダクタンス値=L2a+M21+M23+M24
コイルL3のインダクタンス値=L3a+M31+M32+M34
コイルL4のインダクタンス値=L4a+M41+M42+M43
L1a=L2a=L3a=L3b=自己インダクタンス
M12=M13=M14=相互インダクタンス
M21=M23=M24=相互インダクタンス
M31=M32=M34=相互インダクタンス
M41=M42=M43=相互インダクタンス
上記のように、4つのコア脚(コア脚28,30,32,34)と4つのギャップ部(ギャップ部36,38,40,42)とを利用することで、インダクタンスを増加させることができる。
図16には、磁気部品10を絶縁トランスとして機能させるときに発生する磁束の向きが示されている。磁気部品10を絶縁トランスとして機能させるときの電流の方向は、図3(c)に示されている方向と同じである。
ギャップ部36においては、磁束Φ12の向きと磁束Φ21の向きとが、互いに反対になる。磁束Φ12の大きさと磁束Φ21の大きさとは互いに同じであるため、ギャップ部36において、磁束同士が打ち消し合う。他のギャップ部38,40,42においても同様である。その結果、磁気部品10はリアクトルとして機能しない。この場合、2次側のコイルL5,L6に逆起電圧が発生し、磁気部品10は絶縁トランスとして機能する。
以下、図17を参照して、比較例に係る磁気部品について説明する。比較例に係る磁気部品は2つの磁気部品44,46を含む。磁気部品44,46はそれぞれ、コアと、コアに巻回された導線からなるコイルとを含む。つまり、比較例に係る磁気部品は2つのコアを含む。磁気部品44は、上述したコイルL1,L2,L5を含み、磁気部品46は、上述したコイルL3,L4,L6を含む。磁気部品44の1次側は、スイッチング回路18に接続されている。磁気部品46の1次側は、スイッチング回路20に接続されている。磁気部品44,46には、直流電源16から電流が供給される。
図18及び図19には、本実施形態に係る磁気部品10と比較例に係る磁気部品との比較結果が示されている。図18には、1次側コイルの巻回数とインダクタンスとの関係が示されている。図19には、スイッチング周波数と電流リップルとの関係が示されている。
図18において、横軸は1次側コイル(例えばコイルL1,L2,L3,L4)の巻回数を示しており、縦軸はインダクタンス[H]を示している。グラフ48は、本実施形態に係る磁気部品10の特性を示している。グラフ50は、比較例に係る磁気部品の特性を示している。本実施形態に係る磁気部品10によれば、比較例に係る磁気部品と比較して、より高いインダクタンスが得られる。つまり、1次側コイルの巻回数が同じであっても、より高いインダクタンスが得られる。より高いインダクタンスが得られるため、本実施形態に係る磁気部品10によれば、比較例に係る磁気部品と比較して、電流リップルの増大が抑制される。それ故、互いに電流リップルが同じになるように、本実施形態に係る磁気部品10と比較例に係る磁気部品とを設計した場合、本実施形態に係る磁気部品10によれば、比較例に係る磁気部品と比べて、スイッチング周波数を低減することができる。図19には、その比較結果が示されている。図19において、横軸はスイッチング周波数[kHz]を示しており、縦軸は電流リップル[A]を示している。グラフ52は、本実施形態に係る磁気部品10の特性を示している。グラフ54は、比較例に係る磁気部品の特性を示している。例えば、電流リップルが20[A]の場合、比較例におけるスイッチング周波数は300[kHz]であるのに対して、本実施形態におけるスイッチング周波数は185[kHz]となる。
以上のように、本実施形態に係る磁気部品10によれば、コア26の数が1つであるため、磁気部品10を小型化することができる。また、高いインダクタンスが得られ、スイッチング損失の増大が抑制されるので、磁気部品10の効率を向上させることができる。
図20には、本実施形態に係る磁気部品10の動作時にコイルに流れる電流を示すグラフが示されている。本実施形態に係る制御方法によって、昇圧リアクトルと絶縁トランスの2つの機能を実現させることができることが確認できた。つまり、磁気部品10の機能を、昇圧リアクトルの機能から絶縁トランスの機能へ切り替えたり、絶縁トランスの機能を昇圧リアクトルの機能へ切り替えたりすることができることが確認できた。また、磁気部品10が昇圧リアクトルとして動作しているときの電流リップルと、磁気部品10が絶縁トランスとして動作しているときの電流リップルとを同じに設計することができることが確認できた。