JP6973196B2 - モータコアの焼鈍装置及びモータコアの焼鈍方法 - Google Patents
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Description
無方向性電磁鋼板から所定形状に打ち抜かれた素材を多数枚積層し、かしめやビス止め、溶接等により固着して製作されるモータコア(鉄心)は、当該鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じるひずみにより鉄損が悪化することから、通常、このひずみを除去するために、連続式またはバッチ式の焼鈍炉により所定の時間加熱される。焼鈍炉においては、例えば電熱ヒータなどからの輻射熱及び雰囲気ガスによる伝導熱により加熱される(特許文献1の背景技術を参照)。
δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
ここで、
δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
μ:前記被焼鈍モータコアの比透磁率
f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz)である。
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。図2は、外側誘導コイル及び内側誘導コイルの間に被焼鈍モータコア(焼鈍対象のモータコアを1個または複数個軸方向にならべたモータコアの集合体をいう場合と、被焼鈍モータコアが占める領域であり、装置の説明の便宜上、その領域にあたかも被焼鈍モータコアが存在するものとして扱う場合とがある。)を配置した状態を示す概略斜視図である。図3は一般的なモータコア(固定子コア)の一部を部分上面図で模式的に示す図である。なお、モータコアには、モータ回転軸側の回転子コアとその外側の固定子コアがあり、以下の説明では主に固定子コアの焼鈍を例にして説明するが、本発明は回転子コアの焼鈍にも適用できることから両者を区別する必要はなく、両者を総称するモータコアの用語を用いている。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
外側誘導コイル20と内側誘導コイル21は共に、被焼鈍モータコアCより軸方向の厚さが小さく形成されており、例えば、これらの厚さは被焼鈍モータコアCの厚さの1/5である。
交流電源30は、例えば周波数可変に構成されており、本実施の形態では、例えば周波数10kHzの交流電流を印加するように設定されている。なお、電源周波数可変の作用効果については後述する。
また、外側誘導コイル20のアンペア巻数(アンペアターン)は、例えば1000AT、内側誘導コイル21のアンペア巻数は、例えば3000ATに設定されている。
δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
ここで、
δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
μ:前記被焼鈍モータコアの比透磁率
f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz)、である。
図9は、本発明の第2実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。図10は、図9の焼鈍装置が備える後述の回転駆動部の説明図である。
図9の焼鈍装置1は、第1実施形態の焼鈍装置と同様の構成部材に加えて、回転駆動部40が設けられている。
本実施形態のように回転駆動部40を設け、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとを相対的に回転させることにより、上述の周方向の温度差が生じるのを防ぐことができる。
図11は、本発明の第3実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図11の焼鈍装置1は、第1実施形態の焼鈍装置と同様の構成部材に加えて、冷却装置50が隔壁11内に設けられている。
冷却装置50は、被焼鈍モータコアCを外側から冷却する外側冷却装置51と、被焼鈍モータコアCを内側から冷却する内側冷却装置52とを有する。
冷却装置50の冷却媒体は、被焼鈍モータコアCに錆が生じるのを防ぐため、窒素ガス等の不活性ガスや水素ガス等の還元性ガスが用いられる。
また、本実施形態では、冷却装置50が、被焼鈍モータコアCの軸方向すなわち被焼鈍モータコアCの移動方向に沿って加熱用誘導コイル10に連なるように設けられているため、冷却装置50による冷却を、加熱用誘導コイル10による加熱に続けて行うことができる。したがって、加熱用誘導コイル10と冷却装置50との間の距離、及び、加熱用誘導コイル10と冷却装置50との間での被焼鈍モータコアCの移動距離を小さくできるので、焼鈍装置1のサイズを大型化させずに短時間で焼鈍を完了させることができる。
このような位置に冷却装置50を設けることにより、加熱用誘導コイル10による加熱が冷却装置50による冷却により阻害されるのを防ぐことができる。
また、以上の例では、交流電源30からの電力供給の停止タイミングは、冷却装置50による冷却を停止する時であったが、被焼鈍モータコアCが加熱用誘導コイル10による加熱領域から外れた時に、上記電力供給を停止してもよい。
図14は、本発明の第4実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。
以上の第1〜第3実施形態の焼鈍装置では、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の両方を有していた。
それに対し、図14に示すように、本実施形態にかかる焼鈍装置1は、加熱用誘導コイル10として内側誘導コイル21のみを有し、この内側誘導コイル21により被焼鈍モータコアCの内周部の表層のみを加熱し、当該内周部のひずみのみを焼鈍する。内側誘導コイル21に供給する交流電源30の周波数は、焼鈍により除去すべきひずみの深さとの関係で、前述の式(1)を満たすものが選択される。また、交流電源30が内側誘導コイル21に印加する交流電流は、被焼鈍モータコアCの内部の温度を500℃以下に抑えながら、ひずみが生じている部分(以下、ひずみ導入部)すなわち加工面を750℃〜850まで加熱することが可能なものが選択される。
本実施形態にかかる焼鈍装置1によれば、被焼鈍モータコアCのひずみ導入部である内周部を3分という非常に短い時間で750〜850℃まで昇温できる。また、昇温の際、被焼鈍モータコアCのコア内部は500℃以下に維持されているので、すなわち、焼鈍の際に被焼鈍モータコアC全体に与えられる熱量が抑えられているため、冷却装置50による冷却を行わずとも、約8分という非常に短い時間で200℃まで冷却することができる。冷却装置50を用いればより短時間で冷却することができる。
本実施形態でも、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21のいずれか一方のコイルとして、小型の誘導コイルを使用することができ、したがって、上記いずれか一方に電力を供給する交流電源の電源容量を小さくすることができる。
10 加熱用誘導コイル
11 焼鈍雰囲気調整用の隔壁
11a 蓋部
11b 有底の容器部
12 断熱材
13 ガス供給管
14 内側載置台
14a (内側)載置板
14b 脚部
15 中間載置台(モータコア載置台)
15a (中間)載置板
15b 脚部
16 外側載置台
16a (外側)載置板
16b 脚部
20 外側誘導コイル
21 内側誘導コイル
30 交流電源
C モータコア(被焼鈍モータコア)
Ca ティース部
Cb バックヨーク部
Cc スロット
40 回転駆動部
50 冷却装置
Claims (12)
- 打ち抜き後の電磁鋼板を積層して形成されるモータコアを1個または複数個積層して焼鈍する装置であって、
前記1個または複数個積層したモータコア(以下、複数個の場合も含め単に被焼鈍モータコアという。)の外方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記電磁鋼板の積層方向(モータコアの軸方向に一致し、以下、軸方向という。)の厚さが小さい環状の外側誘導コイル、及び、前記被焼鈍モータコアの内方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記軸方向の厚さが小さい環状の内側誘導コイルのうちのいずれか一方または双方を有し、さらに、
前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルに交流電流を印加する交流電源と、
前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルと前記被焼鈍モータコアとの前記軸方向の相対位置を変化させる移動機構と、を有することを特徴とする、モータコアの焼鈍装置。 - 前記移動機構は、前記被焼鈍モータコアを前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1に記載のモータコアの焼鈍装置。
- 前記移動機構は、少なくとも前記被焼鈍モータコアのスロットが形成された側に対向する側の誘導コイルを前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1または2に記載のモータコアの焼鈍装置。
- 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
前記移動機構は、前記外側誘導コイルと、前記内側誘導コイルとを同期させて前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。 - 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
前記交流電源は、前記外側誘導コイルと前記内側誘導コイルとで囲まれる領域内に、同方向の交流磁束を発生させるように、前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルに交流電流を印加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。 - 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
前記外側誘導コイルと前記内側誘導コイルは、前記交流電源に対して直列の回路を形成するように接続されていることを特徴とする、請求項5に記載のモータコアの焼鈍装置。 - 前記交流電源により印加される交流電流の周波数は、10kHz以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
- 前記被焼鈍モータコアを内部に収容する焼鈍雰囲気調整用の隔壁と、
前記隔壁の外方または内方を覆う断熱材と、をさらに有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。 - 前記外側誘導コイル及び/または内側誘導コイルにより加熱された被焼鈍モータコアの加熱部を冷却する冷却装置を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
- 前記被焼鈍モータコアと、前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルとを相対的に回転する回転駆動機構を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置を用いて前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面に導入されているひずみを除去するモータコアの焼鈍方法であって、
前記ひずみの導入深さに応じた下記式(1)における浸透深さδとなるように決定された交流電源の周波数fの交流電流により、前記被焼鈍モータコアを誘導加熱し、
前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させることを特徴とする、モータコアの焼鈍方法。
δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
ここで、
δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
μ:前記被焼鈍モータコアの比透磁率
f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz) - 前記被焼鈍モータコアの内部の温度を500℃以下に抑えながら前記外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させることを特徴とする、請求項11に記載のモータコアの焼鈍方法。
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