JP6973196B2 - モータコアの焼鈍装置及びモータコアの焼鈍方法 - Google Patents

モータコアの焼鈍装置及びモータコアの焼鈍方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板を素材とするモータコアの打ち抜きやかしめ、溶接等によるひずみを除去するための焼鈍を行う焼鈍装置及び該焼鈍装置を用いたモータコアの焼鈍方法に関するものである。
モータコア(motor core)には、モータ回転軸(出力軸、出力シャフト)回りに固定されて回転する回転子(rotor;ロータ)コアと、回転子コアと同軸でモータケースに固定され、モータ使用時には回転子の外周と自身の内周との電磁力の相互作用で回転子に回転力を生じさせる固定子(stator;ステータ)コアとがあるが、両者を総称してモータコアという場合もある。
無方向性電磁鋼板から所定形状に打ち抜かれた素材を多数枚積層し、かしめやビス止め、溶接等により固着して製作されるモータコア(鉄心)は、当該鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じるひずみにより鉄損が悪化することから、通常、このひずみを除去するために、連続式またはバッチ式の焼鈍炉により所定の時間加熱される。焼鈍炉においては、例えば電熱ヒータなどからの輻射熱及び雰囲気ガスによる伝導熱により加熱される(特許文献1の背景技術を参照)。
また近年、電熱ヒータなど輻射加熱とは異なる焼鈍方法として、例えば特許文献1〜3等に開示されるような、誘導加熱を用いた方法が知られている。なお、特許文献1〜3に開示の方法では、モータコアの全体の焼鈍だけでなく、例えば特許文献1の「固定子コアの内周部のスロット(slot;鉄心溝)周辺の部分焼鈍」においても、当該モータコアの外側に設けられた誘導コイルにより加熱している。
特開昭62−272843号公報 特開2003−342637号公報 特開昭58−104125号公報
ところで近年、高い生産性が求められるハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)等の駆動モータや発電機のモータコアの生産においては、焼鈍時間を短縮することが求められている。しかしながら、電熱ヒータなどを用いた輻射加熱では、加熱時間の短縮には限界がある。また、輻射加熱による短時間焼鈍では、モータコアの高さ方向や、打ち抜き時のひずみが特に大きなティース(teeth;歯)部の奥と手前とで、温度分布が一様にならないという問題がある。
また、特許文献1〜3に開示される誘導加熱によるモータコアの焼鈍装置は、焼鈍すべきひずみが主に内周側に形成された固定子コアの焼鈍の場合でも、モータコアの外側に誘導コイルを配設していること等により、加熱に時間を要するため、焼鈍の短時間化には限界があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、モータコアを構成する電磁鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じたひずみを除去するためのモータコアの焼鈍を、短時間で行うことを目的としている。
前記の目的を達成するための本発明は、打ち抜き後の電磁鋼板を積層して形成されるモータコアを1個または複数個積層して焼鈍する装置であって、前記1個または複数個積層したモータコア(以下、複数個の場合も含め単に被焼鈍モータコアという。)の外方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記電磁鋼板の積層方向(モータコアの軸方向に一致し、以下、軸方向という。)の厚さが小さい環状の外側誘導コイル、及び、前記被焼鈍モータコアの内方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記軸方向の厚さが小さい環状の内側誘導コイルのうちのいずれか一方または双方を有し、さらに、前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルに交流電流を印加する交流電源と、前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルと前記被焼鈍モータコアとの前記軸方向の相対位置を変化させる移動機構と、を有することを特徴としている。
本発明によれば、積層され、かしめやビス止め、溶接等により固着されてモータコア状となった打ち抜き後の電磁鋼板を、その用途に応じて、誘導加熱により加熱し、モータコア用電磁鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じたひずみを除去するための焼鈍を、短時間で行うことができる。また、外側誘導コイル及び内側誘導コイルの軸方向の厚さが被焼鈍モータコアより小さいため、交流電源の電源容量を小さくすることができる。なお、本発明が対象とするモータコアは、固定子コア(ステータ)、回転子コア(ロータ)のいずれも含むものである。
さらに、例えば印加する交流電流の周波数を調整することで、表皮効果により渦電流の浸透深さを調整したり、外側誘導コイル及び内側誘導コイルにより発生する磁束を制御することで、加熱する部位を調整することができるので、例えばティース部(図3等参照)の奥と手前といった、輻射加熱では温度分布の制御が困難な箇所についても、最適な条件で焼鈍を行うことができる。
前記移動機構は、前記被焼鈍モータコアを軸方向に移動させてもよい。例えば、被焼鈍モータコアが軸方向を鉛直方向になるようにして水平方向の載置板に載置されるように構成される場合、この載置板を前記軸方向に移動させるようにしてもよい。
前記移動機構は、少なくとも前記被焼鈍モータコアのスロットが形成された側に対向する側の誘導コイルを軸方向に移動させてもよい。
前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有する場合、前記移動機構は、前記外側誘導コイルと、前記内側誘導コイルとを同期させて前記軸方向に移動させてもよい。
前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有する場合、前記交流電源は、前記外側誘導コイルと内側誘導コイルとで囲まれる領域内に、同方向の交流磁束を発生させるように、前記外側誘導コイル及び内側誘導コイルに交流電流を印加してもよい、
前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有する場合、前記外側誘導コイルと前記内側誘導コイルは、前記交流電源に対して直列の回路を形成するように接続されていてもよい。
前記交流電源により印加される交流電流の周波数は、10kHz以上であってもよい。
前記被焼鈍モータコアを内部に収容する焼鈍雰囲気調整用の隔壁と、前記隔壁の外方または内方を覆う断熱材と、をさらに有していてもよい。
前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルにより加熱された被焼鈍モータコアの加熱部を冷却する冷却装置を有していてもよい。
前記被焼鈍モータコアと前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルとを相対的に回転する回転駆動機構を有していてもよい。
別な観点による本発明は、上記モータコアの焼鈍装置を用いて前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面に導入されているひずみを除去するモータコアの焼鈍方法であって、前記ひずみの導入深さに応じた下記式(1)における浸透深さδとなるように決定された交流電源の周波数fの交流電流により、前記被焼鈍モータコアを誘導加熱し、前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させることを特徴としている。
δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
ここで、
δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
μ:前記被焼鈍モータコアの透磁率
f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz)である。
前記被焼鈍モータコアの内部の温度を500℃以下に抑えながら前記外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させてもよい。
本発明によれば、モータコアを構成する電磁鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じたひずみを除去するためのモータコアの焼鈍を、短時間で行うことができる。
本発明の第1実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。 外側誘導コイル及び内側誘導コイルの間に被焼鈍モータコアを配置した状態を示す斜視図である。 モータコアを貫通孔方向から見た上面図で、周方向の一部を切り出した部分上面図である。 本発明の第1実施形態にかかる内側載置台、中間載置台及び外側載置台の説明図である。 モータコアの一部を切り出して斜めから見た説明図である。 モータコアの一部を切り出して斜めから見た説明図である。 モータコアの一部を切り出して斜めから見た説明図である。 モータコアの一部を切り出して斜めから見た説明図である。 本発明の第2実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態にかかる焼鈍装置が備える回転駆動部の説明図である。 本発明の第3実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。 第3実施形態にかかる焼鈍装置を用いた焼鈍処理を説明するためのものであって、焼鈍装置の隔壁内の様子を示す図である。 第3実施形態にかかる焼鈍装置を用いた焼鈍処理を説明するためのものであって、焼鈍装置の隔壁内の様子を示す図である。 本発明の第4実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。 本発明の第4実施形態にかかる焼鈍装置により焼鈍された被焼鈍モータコアの部位による温度履歴の差異を示す図である。 交流電流の周波数と発熱密度及び表面からの深さの関係を示すグラフである。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。図2は、外側誘導コイル及び内側誘導コイルの間に被焼鈍モータコア(焼鈍対象のモータコアを1個または複数個軸方向にならべたモータコアの集合体をいう場合と、被焼鈍モータコアが占める領域であり、装置の説明の便宜上、その領域にあたかも被焼鈍モータコアが存在するものとして扱う場合とがある。)を配置した状態を示す概略斜視図である。図3は一般的なモータコア(固定子コア)の一部を部分上面図で模式的に示す図である。なお、モータコアには、モータ回転軸側の回転子コアとその外側の固定子コアがあり、以下の説明では主に固定子コアの焼鈍を例にして説明するが、本発明は回転子コアの焼鈍にも適用できることから両者を区別する必要はなく、両者を総称するモータコアの用語を用いている。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1の焼鈍装置1は、無方向性電磁鋼板から所定形状に打ち抜かれた素材を複数枚積層し、かしめやビス止め、溶接等により固着して製作されたモータコアCの焼鈍を行い、打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じたひずみ(以下、「打ち抜き等によるひずみ」という場合がある。)を除去するものである。この焼鈍装置1は、加熱用誘導コイル10と、当該加熱用誘導コイル10の外方を囲う焼鈍雰囲気調整用の隔壁11と、隔壁11の外方を囲う断熱材12を有している。
隔壁11は、例えば下面が開口した略円筒形状の蓋部11aと、上面が開口した有底の容器部11bを有しており、例えば水封により隔壁11の内部を気密に維持することができる。蓋部11aには、隔壁11の内部に例えば窒素などの雰囲気ガスを供給するガス供給管13が接続されている。
容器部11bには、外側誘導コイル及び内側誘導コイルと被焼鈍モータコアとの軸方向(図1のZ方向。外側誘導コイル、内側誘導コイル、被焼鈍モータコアのいずれの軸方向も一致する。)の相対位置を変化させる移動機構の一例として、後述の内側載置台14、中間載置台15及び外側載置台16が設けられている。これら載置台14〜16の詳細については後述するが、これら載置台14〜16のうち、被焼鈍モータコアCが載置される中間載置台(以下、モータコア載置台ともいう。)15は軸方向(図1のZ方向)に沿って被焼鈍モータコアCを移動可能に構成されている。
断熱材12は、配設すればモータコアの焼鈍装置の熱効率を高めることができ好ましい。なお、断熱材12の材質や形態等は特に限定されるものではなく、例えば公知の珪酸カルシウムやアルミナ等の無機系材料等の素材を綿状、布状、板状、発泡体状等の様々な形態に加工したものを用いることができる。また、図1では、断熱材12の設置位置として隔壁11の外方を囲うように配設されている例を示しているが、これに限らず、被焼鈍モータコアC、外側誘導コイル20及び隔壁11等と干渉しない位置であれば、隔壁11の内方を覆うように配設されていてもよい。
加熱用誘導コイル10は、例えば図2に示すように、被焼鈍モータコアCの外方に、当該被焼鈍モータコアCと同心円状に配置された環状の外側誘導コイル20と、被焼鈍モータコアCの内方に、当該被焼鈍モータコアCと同心円状に配置された環状の内側誘導コイル21と、を有している。なお、ここでのモータコアCは、固定子コアであり円筒状に形成され、図3に示すように、該モータコアCの内周部に等間隔で形成されたスロット(slot;鉄心溝)Ccと、スロットCc間に設けられた隔壁であるティース(teeth;歯)部Caと、ティース部Caの外周端を連結するバックヨーク(back yoke;後ヨーク、後継鉄)部Cbとを有する。また、スロットCcは、モータコアCにおける軸方向(図2のZ方向。電磁鋼板の積層方向に一致。)の全長にわたって形成されている。
図1及び図2の説明に戻る。
外側誘導コイル20と内側誘導コイル21は共に、被焼鈍モータコアCより軸方向の厚さが小さく形成されており、例えば、これらの厚さは被焼鈍モータコアCの厚さの1/5である。
外側誘導コイル20と内側誘導コイル21には、交流電流を印加する交流電源30が、例えば直列の回路を形成するように、換言すれば、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21とに印加する電流値を同じにするように接続されている。また、各外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21は、交流電流を印加することで、被焼鈍モータコアCの軸方向(図2のZ方向)に沿って磁束が発生するように構成されている。
交流電源30は、例えば周波数可変に構成されており、本実施の形態では、例えば周波数10kHzの交流電流を印加するように設定されている。なお、電源周波数可変の作用効果については後述する。
上述のように、外側誘導コイル20、内側誘導コイル21及び交流電源30により被焼鈍モータコアCの軸方向(図2のZ方向)に沿って磁束が発生するため、被焼鈍モータコアCに誘導電流が生じ、該誘導電流により被焼鈍モータコアCを加熱することができる。特に、本実施の形態によれば、被焼鈍モータコアCの外方に設けられた外側誘導コイル20による誘導電流によって主として被焼鈍モータコアCの外側部分を加熱し、内側誘導コイル21による誘導電流によって主として被焼鈍モータコアCの内側部分を加熱することで、後で図5〜図8を用いて詳述するように、被焼鈍モータコアCの内周部と外周部の外表面の全域を、誘導加熱により浸透深さ(後述の式(1)、図16等、参照。)に応じて加熱することができる。したがって、モータコアを構成する電磁鋼板の打ち抜きの際や、かしめやビス止め、溶接等による固着の際に生じたひずみは、モータコアの内周部と外周部の外表面の表層に局在しており、このような局在したひずみを除去するための焼鈍を、短時間で行うことができる。
なお、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21は、被焼鈍モータコアCに比べて軸方向の厚さが薄く形成されているが、後述のように、被焼鈍モータコアCが軸方向に移動可能であるため、すなわち、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとの軸方向の相対位置を変化させることが可能であるため、被焼鈍モータコアCを軸方向全体にわたって加熱することができる。
続いて、外側誘導コイル及び内側誘導コイルと被焼鈍モータコアとの軸方向の相対位置を変化させる移動機構の一例である内側載置台14、中間載置台15及び外側載置台16について、図4を用いて説明する。図4(A)は、中間載置台15による被焼鈍モータコアCの軸方向への移動前の隔壁11内の様子を示し、図4(B)は移動後の隔壁11内の様子を示す。
図4の内側載置台14、中間載置台15及び外側載置台16は、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとの軸方向の相対位置を変化させる移動機構を構成するが、本発明の移動機構はこれに限定されるものではない。
内側載置台14は、内側誘導コイル21が載置されるものであり、該誘導コイル21が載置される載置板14aと、該載置板14aを支持する脚部14bとを有する。
外側載置台16は、外側誘導コイル20が載置されるものであり、該外側誘導コイル20が載置される載置板16aと、該載置板16aを支持する脚部16bとを有する。なお、載置板16aにおける外側誘導コイル20の載置面と、内側載置台14の載置板14aにおける内側誘導コイル21の載置面とは、その軸方向の高さが等しくなっている。
中間載置台15は、被焼鈍モータコアCが載置されるものであり、該被焼鈍モータコアCが載置される載置板15aと、該載置板15aを支持する脚部15bとを有する。内側載置台14及び外側載置台16の脚部14b、16bの上記軸方向の長さは固定であるのに対し、中間載置台15の脚部15bは、被焼鈍モータコアCの軸方向長さに応じて、例えば伸縮自在に構成され、その上記軸方向の長さは可変である。
被焼鈍モータコアCを加熱する際は、まず、例えば、図4(A)に示すように、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の上端部と外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21との上記軸方向の高さが一致している状態で、交流電源30から外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21への電力供給を開始する。その後、脚部15bを伸長させて、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の下端部が外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21に近づくように、被焼鈍モータコアCが載置された載置板15aを、上記軸方向に沿って移動させる。すなわち、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとの上記軸方向の相対位置を変化させる。これにより、被焼鈍モータコアC全体が加熱されるようにする。そして、図4(B)に示すように、被焼鈍モータコアCの下端部と外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の下端部との上記軸方向の高さが一致するまで、載置板15aを移動させたところで、交流電源30からの電力供給を停止し、被焼鈍モータコアCの加熱が完了する。
このように、本実施形態の焼鈍装置1は、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとの軸方向の相対位置を変化させる移動機構を有するため、小型の誘導コイルで焼鈍することができる。言い換えると、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21として、被焼鈍モータコアより上記軸方向の厚さが小さいものを使用することができる。したがって、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21に電力を供給する交流電源30の電源容量を小さくすることができる。例えば、外側誘導コイル及び内側誘導コイルの上記軸方向の厚さを被焼鈍モータコアと等しくしこれらの上記軸方向の位置関係を相対的に変化させない固定式の場合に100kWの電源が必要であるとする。この場合に、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の上記軸方向の厚さを被焼鈍モータコアCの1/5としてこれらの上記軸方向の位置関係を相対的に変化させる移動式で加熱した場合、必要な電源容量は20kWとなる。
なお、上述の例では、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21が載置された外側載置板16a及び内側載置板14aの上記軸方向の位置を固定とし、被焼鈍モータコアCが載置された中間載置板15aの上記軸方向の位置を可変としていたが、外側載置板16a及び内側載置板14aの上記軸方向の位置を可変とし、中間載置板15aの上記軸方向の位置を固定としてもよい。また、外側載置板16a、内側載置板14a及び中間載置板15aの全てについて、上記軸方向の位置を可変としてもよい。外側載置板16a及び内側載置板14aの上記軸方向の位置を可変とする場合、蓋部11aの上記軸方向の寸法を小さくすることができる。なお、外側載置板16a及び内側載置板14aの上記軸方向の位置を可変とする場合、外側載置板16aと内側載置板14aとを同期させて上記軸方向に移動させることが好ましい。これにより効率的に加熱することができるからである。
次に、焼鈍装置1で被焼鈍モータコアCの打ち抜き等によるひずみを除去するための誘導加熱を行う方法について、図5〜図8を用いて説明する。図5〜図8は、被焼鈍モータコアCの周方向の1/96、被焼鈍モータコアCの軸方向(電磁鋼板積層方向)の1/5を切り出して斜めから見た図であり、スロットCcを挟んだティース部Caのうちの片側、バックヨーク部Cbを示している。また、ティース部Ca側には内側誘導コイル21を、バックヨーク部Cb側には外側誘導コイル20を、それぞれ描図している。
外側誘導コイル20に、高周波の電流Iaが、ある瞬間で例えばY方向の正方向に向かうように流れたときに、内側誘導コイル21に、同じ瞬間に高周波の電流IbがY方向の負方向に向かって流れるように、交流電源30は加熱用誘導コイル10に接続されている。
また、外側誘導コイル20のアンペア巻数(アンペアターン)は、例えば1000AT、内側誘導コイル21のアンペア巻数は、例えば3000ATに設定されている。
そして、交流電源30により加熱用誘導コイル10に交流電流を印加すると、例えば図5に示すように、外側誘導コイル20により、ある瞬間で被焼鈍モータコアCの主にバックヨーク部Cbを上から下に向かう方向(図5のZ方向負方向)で通過する磁束Φaが発生する。また、内側誘導コイル21により、同じ瞬間で被焼鈍モータコアCの主にティース部Caを通過するような、磁束Φaと同方向(図5のZ方向負方向)の磁束Φbが発生する。そうすると、磁束Φaと磁束Φbの両方の密度が大きい被焼鈍モータコアC上面では、この磁束Φaと磁束Φbとが強め合うと共に、該被焼鈍モータコアC上面に磁束Φaと磁束Φbが垂直に進入する。その結果、例えば図6に示すように、被焼鈍モータコアCの上面では、この磁束Φaと磁束Φbとにより強め合う磁束を打ち消すべく、同じ瞬間でY方向に沿って互いに逆向きに、磁束Φaによる誘導電流In1aと磁束Φbによる誘導電流In1bとが流れる。また、内側誘導コイル21による磁束Φbにより、同じ瞬間でティース部Caの表面(バックヨーク部Cbの内周面を含む)では、磁束Φbを打ち消すべくティース部Caを周回するように誘導電流In2が流れ、さらに、外側誘導コイル20による磁束Φaにより、バックヨーク部Cbの外周面には、磁束Φaを打ち消すべく該外周面を周回するように誘導電流In3が流れる。
そして本実施の形態では、焼鈍の必要がない被焼鈍モータコアCの貫通孔方向から見た上面では、誘導電流In1a、In1bが打消し合うことで、誘導加熱による発熱が極わずかに抑えられる。その一方、特に焼鈍を行う必要があるティース部Caでは、浸透深さ(後述の式(1)、図16等、参照。)に応じた表層域を誘導電流In2が打ち消し合うことなく一方向に流れるので、表層に局在したひずみの焼鈍が誘導加熱により所定の温度で行われる。また、同じく焼鈍を行う必要があるバックヨーク部Cbの外周面でも、浸透深さに応じた表層域を誘導電流In3が打ち消し合うことなく流れるので、表層に局在したひずみの焼鈍を誘導加熱により所定の温度で行うことができる。
また、本実施の形態では、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21で囲まれる領域内、具体的には被焼鈍モータコアCに対応する領域に対して、同方向の磁束Φa、Φbを発生させるように交流電流を印加するにあたり、外側誘導コイル20のアンペア巻数と、内側誘導コイル21のアンペア巻数を異なる値に設定している。したがって、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21とを交流電源30に直列の回路を形成するように接続している場合でも、換言すれば、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21とに印加する電流値が同じであっても、各外側誘導コイル20と内側誘導コイル21から発生する磁束Φa、Φbの強度(磁束密度)を変化させ、それにより、誘導電流In1a、In1bが打消し合う領域を調整できる。したがって、加熱が不要な領域で誘導電流In1a、In1bが打消し合うようにアンペア巻数を設定することで、所望の領域のみを効率的に加熱し、誘導加熱にかかる消費電力を低減することができる。
なお、例えば図7に示すように、ある瞬間で内側誘導コイル21に流れる電流Ibが図5に示す向きと逆になるように交流電源30を接続すると、被焼鈍モータコアCに対応する領域に対して磁束Φa、Φbが逆方向に発生する。そうすると、図8に示すように、被焼鈍モータコアCの貫通孔方向から見た上面では、前述の図6の場合のように磁束を打ち消す必要がないためY方向に沿って互いに強め合うように誘導電流In1a、In1bが流れる。その結果、例えば被焼鈍モータコアCの上面のバックヨーク部Cbにおいても不必要な誘導加熱が生じ、当該誘導加熱に伴い電力がむだに消費される。したがって、本実施の形態に係る加熱用誘導コイル10を用いて被焼鈍モータコアCを加熱する場合は、図5、図6に示すように、外側誘導コイル20による磁束Φaと、内側誘導コイル21による磁束Φbが、被焼鈍モータコアCに対応する領域において同方向となるようにすることが好ましい。
また、以上の実施の形態では、交流電源30の周波数が可変であるので、例えば印加する交流電流の周波数を調整することで、表皮効果により、誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さを調整できる。したがって、例えば被焼鈍モータコアCのひずみの態様に応じて交流電源30の周波数を調整して、最適な領域を誘導加熱することができる。交流電源30の周波数fは、下記式(1)に基づいて、誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さδが、焼鈍により除去すべきひずみの導入深さに応じたものとなるように、決定される。
δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
ここで、
δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
μ:前記被焼鈍モータコアの透磁率
f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz)、である。
具体的には、交流電源の周波数fは、例えば、誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さδが、焼鈍により除去すべきひずみの導入深さと略同じになるように、決定される。上記渦電流の浸透深さδと上記ひずみの導入深さが略同じであれば、当該渦電流による加熱と、当該渦電流により加熱された部分からの伝熱により、被焼鈍モータコアC内に導入されたひずみを完全に除去することができる。
なお、以上の実施の形態では、交流電源30に対して外側誘導コイル20と内側誘導コイル21とを直列の回路を形成するように接続したが、例えば外側誘導コイル20と内側誘導コイル21に対して独立した交流電源を接続してもよい。かかる場合、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21に印加する電流値を制御することで、各磁束Φa、Φbの強度分布を制御することができる。但し、図7に示すように、磁束Φa、Φbを逆方向に発生させるためには、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21に印加する交流電流の周波数及び位相を同期させる必要があるので、本実施の形態のように、交流電源30に対して外側誘導コイル20と内側誘導コイル21とを直列の回路を形成するように接続し、各磁束Φa、Φbの強度分布の制御は、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21のアンペア巻数の設定により行うことが好ましい。
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。図10は、図9の焼鈍装置が備える後述の回転駆動部の説明図である。
図9の焼鈍装置1は、第1実施形態の焼鈍装置と同様の構成部材に加えて、回転駆動部40が設けられている。
回転駆動部40は、中間載置台15を回転するものであり、例えば、モータ等から構成され、中間載置台15の載置板15aを支持する脚部15bの根元に設けられる。中間載置台15の回転軸を被焼鈍モータコアCの中心軸と一致させておき、回転駆動部40で中間載置台15を回転させることにより、被焼鈍モータコアCをその中心軸を中心として回転させることができる。すなわち、回転駆動部40は、被焼鈍モータコアCを回転するものでもある。また、中間載置台15の回転軸を被焼鈍モータコアCの中心軸だけでなく、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の中心軸と一致させておき、回転駆動部40で中間載置台15を回転させることにより、図10に示すように、被焼鈍モータコアCを外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21に対して回転させることができる。すなわち、回転駆動部40は、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとを相対的に回転させることができる。
ところで、回転駆動部を有しない第1実施形態では、外側誘導コイル20の巻き方によっては、該コイル20が発生させる磁束が、外側誘導コイル20の周方向すなわち被焼鈍モータコアCの周方向で不均一となる場合がある。その場合、上記磁束により被焼鈍モータコアC内に生じる誘導電流が当該被焼鈍モータコアCの周方向で不均一となり、その結果、上記誘導電流により加熱された被焼鈍モータコアCには周方向に温度差が発生する。内側誘導コイル21についても同様である。
本実施形態のように回転駆動部40を設け、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCとを相対的に回転させることにより、上述の周方向の温度差が生じるのを防ぐことができる。
なお、回転駆動部40による回転速度は、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21による加熱時間の間に少なくとも1回転するような速度であり、好ましくは上記加熱時間の間に10回転するような速度である。
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図11の焼鈍装置1は、第1実施形態の焼鈍装置と同様の構成部材に加えて、冷却装置50が隔壁11内に設けられている。
冷却装置50は、加熱用誘導コイル10により加熱された被焼鈍モータコアCを冷却するものである。本例では、冷却装置50は、被焼鈍モータコアCの軸方向に沿って加熱用誘導コイル10に連なるように設けられており、加熱用誘導コイル10より鉛直方向下方に位置する。
冷却装置50は、被焼鈍モータコアCを外側から冷却する外側冷却装置51と、被焼鈍モータコアCを内側から冷却する内側冷却装置52とを有する。
冷却装置50の冷却媒体は、被焼鈍モータコアCに錆が生じるのを防ぐため、窒素ガス等の不活性ガスや水素ガス等の還元性ガスが用いられる。
また、本実施形態の焼鈍装置1では、隔壁11内を低酸素雰囲気とするために、ガス供給管13を介して例えば窒素ガス等の雰囲気ガスが当該隔壁11内に供給される。なお、図示は省略するが、隔壁11の蓋部11aには、隔壁11内の圧力が所定の範囲内に収まるように排気管が接続されている。
続いて、本実施形態の焼鈍装置1を用いた被焼鈍モータコアCの焼鈍処理について、図12及び図13を用いて説明する。図12は、中間載置台15による被焼鈍モータコアCの軸方向への移動前の隔壁11内の様子を示し、図13は移動後の隔壁11内の様子を示す。
被焼鈍モータコアCを焼鈍する際は、例えば、図12に示すように、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の下端部と加熱用誘導コイル10とが対向する状態で、交流電源30から加熱用誘導コイル10への電力供給を開始し、被焼鈍モータコアCの加熱を開始する。その際、冷却装置50からの冷却媒体の噴出、具体的には、外側冷却装置51から内側へ向けた冷却媒体の噴出、及び、内側冷却装置52から外側へ向けた冷却媒体の噴出も開始させる。その後、脚部15bを縮めさせて、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の上端部が加熱用誘導コイル10に近づくように、被焼鈍モータコアCが載置された載置板15aを、上記軸方向に沿って移動させる。これにより、被焼鈍モータコアC全体が加熱されるようにすると共に、被焼鈍モータコアCにおける加熱用誘導コイル10で加熱された部分が冷却装置50により冷却されるようにする。そして、図13に示すように、被焼鈍モータコアCの上端部と冷却装置50とが対向する位置まで、載置板15aを移動させたところで、交流電源30からの電力供給及び冷却装置50からの冷却媒体の噴出を停止し、被焼鈍モータコアCの焼鈍が完了する。
モータコアの焼鈍では、モータコアを加熱した後、所定温度まで冷却する必要がある。本実施形態では、上述のように、加熱用誘導コイル10に加えて冷却装置50が設けられているため、上記所定温度までの冷却を含めた被焼鈍モータコアCの焼鈍に要する時間を大幅に短縮することができる。
また、本実施形態では、冷却装置50が、被焼鈍モータコアCの軸方向すなわち被焼鈍モータコアCの移動方向に沿って加熱用誘導コイル10に連なるように設けられているため、冷却装置50による冷却を、加熱用誘導コイル10による加熱に続けて行うことができる。したがって、加熱用誘導コイル10と冷却装置50との間の距離、及び、加熱用誘導コイル10と冷却装置50との間での被焼鈍モータコアCの移動距離を小さくできるので、焼鈍装置1のサイズを大型化させずに短時間で焼鈍を完了させることができる。
なお、冷却装置50は、加熱用誘導コイル10を基準とした所定の位置、例えば、加熱用誘導コイル10からモータコア1個分離れた位置に設けられる。具体的には、例えば、加熱用誘導コイル10により加熱領域の下端から冷却装置50による冷却領域の上端までの距離L(図11参照)が、1つの被焼鈍モータコアCの軸方向の長さ以上となるような位置に、冷却装置50は設けられる。
このような位置に冷却装置50を設けることにより、加熱用誘導コイル10による加熱が冷却装置50による冷却により阻害されるのを防ぐことができる。
以上の例では、冷却装置50は、外側冷却装置51及び内側冷却装置52の両方を有していたが、これら装置51、52のうちの一方を有していてもよい。
なお、以上の例では、冷却媒体の噴出開始タイミングは、被焼鈍モータコアCの加熱開始時であったが、被焼鈍モータコアCが冷却装置50による冷却領域に差し掛かった時に、冷却媒体の噴出を開始してもよい。
また、以上の例では、交流電源30からの電力供給の停止タイミングは、冷却装置50による冷却を停止する時であったが、被焼鈍モータコアCが加熱用誘導コイル10による加熱領域から外れた時に、上記電力供給を停止してもよい。
(第4実施形態)
図14は、本発明の第4実施形態にかかる焼鈍装置の構成の概略を示す縦断面図である。
以上の第1〜第3実施形態の焼鈍装置では、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の両方を有していた。
それに対し、図14に示すように、本実施形態にかかる焼鈍装置1は、加熱用誘導コイル10として内側誘導コイル21のみを有し、この内側誘導コイル21により被焼鈍モータコアCの内周部の表層のみを加熱し、当該内周部のひずみのみを焼鈍する。内側誘導コイル21に供給する交流電源30の周波数は、焼鈍により除去すべきひずみの深さとの関係で、前述の式(1)を満たすものが選択される。また、交流電源30が内側誘導コイル21に印加する交流電流は、被焼鈍モータコアCの内部の温度を500℃以下に抑えながら、ひずみが生じている部分(以下、ひずみ導入部)すなわち加工面を750℃〜850まで加熱することが可能なものが選択される。
被焼鈍モータコアCがその内周部にスロットが形成された固定子コアである場合、当該内周部のみを焼鈍すれば良い場合がある。そのような場合、本実施形態のように内側誘導コイル21のみを設け当該内側誘導コイル21による誘導加熱で焼鈍することで、第1〜第3実施形態のように内側誘導コイル21および外側誘導コイル20の両方を設ける場合に比べて装置コストを削減することができる。また、上述のように被焼鈍モータコアの内周部のみを焼鈍すればよい場合において、本実施形態のように内側誘導コイル21のみを有する焼鈍装置1で焼鈍することで、特許文献1〜3のように被焼鈍モータコアの外側に設けられた誘導コイルにより当該被焼鈍モータコアの内周部のひずみを焼鈍する場合に比べて、少ない電力で且つ短時間で焼鈍を行うことができる。なぜならば、特許文献1〜3の誘導加熱装置では誘導コイルを被焼鈍モータコアの外側に設けているため、内周部のひずみ導入部のみならずバックヨーク部等のひずみ導入部以外も加熱されるのに対して、本実施形態では、被焼鈍コイルの内側に誘導コイルを設置し、誘導電流の浸透深さを非常に小さくすることで、ひずみ導入部のみを狙って加熱できるからである。
図15は、本実施形態にかかる焼鈍装置1により被焼鈍モータコアCを加熱したとき、具体的には、内側誘導コイル21と被焼鈍モータコアCの位置関係は変えずに、交流電源30から交流電流を3分間内側誘導コイル21に供給して被焼鈍モータコアCを加熱し、その後、冷却装置50による冷却は行わずに被焼鈍モータコアCを自然冷却させたときの温度履歴を示す図である。図15の横軸は時間、縦軸は温度を示す。
本実施形態にかかる焼鈍装置1によれば、被焼鈍モータコアCのひずみ導入部である内周部を3分という非常に短い時間で750〜850℃まで昇温できる。また、昇温の際、被焼鈍モータコアCのコア内部は500℃以下に維持されているので、すなわち、焼鈍の際に被焼鈍モータコアC全体に与えられる熱量が抑えられているため、冷却装置50による冷却を行わずとも、約8分という非常に短い時間で200℃まで冷却することができる。冷却装置50を用いればより短時間で冷却することができる。
なお、本実施形態では、焼鈍装置1の加熱用誘導コイル10が内側誘導コイル21のみを有していたが、被焼鈍モータコアCがその外周部にスロットが形成される回転子コアである場合は、加熱用誘導コイル10が外側誘導コイル20のみを有していてもよい。つまり、本実施形態の焼鈍装置1は、被焼鈍モータコアCの内側と外側のうち、スロットが形成されている側に、誘導コイルを有する。
本実施形態でも、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21のいずれか一方のコイルとして、小型の誘導コイルを使用することができ、したがって、上記いずれか一方に電力を供給する交流電源の電源容量を小さくすることができる。
また、本実施形態では、冷却装置50が内側冷却装置52のみを有しており、前述のように、加熱用誘導コイル10が外側誘導コイル20のみを有する場合は、冷却装置50も外側冷却装置51のみを有していてもよい。このように、冷却装置50として、外側冷却装置51及び内側冷却装置52のうち、加熱用誘導コイル10を有している側と同じ側のものを有していてもよい。
本発明の実施例として、本発明の第1実施形態に係る焼鈍装置1を用いて被焼鈍モータコアCを誘導加熱した場合の発熱密度についてシミュレーションを行った。被焼鈍モータコアCの外径は210mm、内径は134mmとし、1個のモータコアを被焼鈍モータコアCとし、その軸方向の厚さは52mmとした。なお、被焼鈍モータコアCを構成する電磁鋼板の厚みは0.35mmである。また、被焼鈍モータコアCの体積抵抗率は面内で5.2e−7Ω・m、軸方向は無限大とした。加熱用誘導コイル10として、外側誘導コイル20は内径220mm、直径方向の厚み10mm、上記軸方向の厚みを10mmとした。内側誘導コイル21は、内径114mm、直径方向の厚み10mm、上記軸方向の厚みを10mmとした。また、外側誘導コイル20及び内側誘導コイル21の上記軸方向の中心位置と、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の中心位置とを一致させた。そして、外側誘導コイル20と内側誘導コイル21に交流電流を印加する交流電源30の周波数を1kHz、10kHz、50kHzに変化させて、被焼鈍モータコアCの上記軸方向の中心位置について、図16に示すデータを得た。図16の横軸は、表面からの深さであり、縦軸は発熱密度である。
図16に示すように、交流電源30の周波数を高くするほど、表皮効果により表面から深い領域における発熱密度が低下していることが確認できる。したがってこの結果から、交流電源30の周波数を適宜調整することで、誘導加熱により加熱する深さを設定できることが分かる。なお、電磁鋼板の打ち抜きにより発生するひずみの深さは、一般に電磁鋼板の板厚の半分程度であるので、例えば電磁鋼板の板厚が0.35mm程度である場合、交流電源30の周波数は、概ね10kHz以上に設定すればよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、モータコアを構成する電磁鋼板の打ち抜きの際に生じたひずみや、打ち抜かれた複数の電磁鋼板を積層した状態でかしめやビス止め、溶接等により固着してモータコアを形成する際に生じたひずみを除去するために、モータコアを焼鈍する際に有用である。
1 焼鈍装置
10 加熱用誘導コイル
11 焼鈍雰囲気調整用の隔壁
11a 蓋部
11b 有底の容器部
12 断熱材
13 ガス供給管
14 内側載置台
14a (内側)載置板
14b 脚部
15 中間載置台(モータコア載置台)
15a (中間)載置板
15b 脚部
16 外側載置台
16a (外側)載置板
16b 脚部
20 外側誘導コイル
21 内側誘導コイル
30 交流電源
C モータコア(被焼鈍モータコア)
Ca ティース部
Cb バックヨーク部
Cc スロット
40 回転駆動部
50 冷却装置

Claims (12)

  1. 打ち抜き後の電磁鋼板を積層して形成されるモータコアを1個または複数個積層して焼鈍する装置であって、
    前記1個または複数個積層したモータコア(以下、複数個の場合も含め単に被焼鈍モータコアという。)の外方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記電磁鋼板の積層方向(モータコアの軸方向に一致し、以下、軸方向という。)の厚さが小さい環状の外側誘導コイル、及び、前記被焼鈍モータコアの内方に当該被焼鈍モータコアと同心円状に配置され、前記被焼鈍モータコアより前記軸方向の厚さが小さい環状の内側誘導コイルのうちのいずれか一方または双方を有し、さらに、
    前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルに交流電流を印加する交流電源と、
    前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルと前記被焼鈍モータコアとの前記軸方向の相対位置を変化させる移動機構と、を有することを特徴とする、モータコアの焼鈍装置。
  2. 前記移動機構は、前記被焼鈍モータコアを前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1に記載のモータコアの焼鈍装置。
  3. 前記移動機構は、少なくとも前記被焼鈍モータコアのスロットが形成された側に対向する側の誘導コイルを前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1または2に記載のモータコアの焼鈍装置。
  4. 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
    前記移動機構は、前記外側誘導コイルと、前記内側誘導コイルとを同期させて前記軸方向に移動させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  5. 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
    前記交流電源は、前記外側誘導コイルと前記内側誘導コイルとで囲まれる領域内に、同方向の交流磁束を発生させるように、前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルに交流電流を印加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  6. 前記外側誘導コイル及び前記内側誘導コイルの双方を有し、
    前記外側誘導コイルと前記内側誘導コイルは、前記交流電源に対して直列の回路を形成するように接続されていることを特徴とする、請求項5に記載のモータコアの焼鈍装置。
  7. 前記交流電源により印加される交流電流の周波数は、10kHz以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  8. 前記被焼鈍モータコアを内部に収容する焼鈍雰囲気調整用の隔壁と、
    前記隔壁の外方または内方を覆う断熱材と、をさらに有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  9. 前記外側誘導コイル及び/または内側誘導コイルにより加熱された被焼鈍モータコアの加熱部を冷却する冷却装置を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  10. 前記被焼鈍モータコアと、前記外側誘導コイル及び/または前記内側誘導コイルとを相対的に回転する回転駆動機構を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のモータコアの焼鈍装置を用いて前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面に導入されているひずみを除去するモータコアの焼鈍方法であって、
    前記ひずみの導入深さに応じた下記式(1)における浸透深さδとなるように決定された交流電源の周波数fの交流電流により、前記被焼鈍モータコアを誘導加熱し、
    前記被焼鈍モータコアの外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させることを特徴とする、モータコアの焼鈍方法。
    δ=503×(ρ/(μ・f))1/2 …(1)
    ここで、
    δ:誘導加熱を生じさせる渦電流の浸透深さ(m)
    ρ:前記被焼鈍モータコアの体積抵抗率(10nΩ・m)
    μ:前記被焼鈍モータコアの透磁率
    f:前記交流電源により印加される交流電流の周波数(Hz)
  12. 前記被焼鈍モータコアの内部の温度を500℃以下に抑えながら前記外周面及び/または内周面を750〜850℃になるまで昇温させることを特徴とする、請求項11に記載のモータコアの焼鈍方法。
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