JP6972932B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム組成物、より詳細には耐摩耗性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
近年、自動車のタイヤに要求される特性は、低燃費性(転がり抵抗特性)のほか、ウェットグリップ性能(操縦安定性)、耐摩耗性など多岐にわたり、これらの性能を向上するために種々の工夫がなされている。
耐摩耗性を向上させる方法として、例えば、ゴム成分として天然ゴムやブタジエンゴムを使用する方法が知られているが、この方法を用いると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。また、耐摩耗性およびウェットグリップ性能を両立する方法として、例えば、カーボンブラックやシリカ等の補強剤を増量する方法が挙げられるが、この方法を用いると、低燃費性が悪化する傾向がある。このように、低燃費性、ウェットグリップ性能および耐摩耗性はそれぞれ相反する関係にあり、これらの性能をバランス良く改善することは困難であった。
特許文献1には、低燃費性および耐摩耗性をバランス良く向上できる技術として、シリカと相互作用を有する官能基を有する変性ブタジエンゴムと、非変性ブタジエンゴムと、スチレンブタジエンゴムと、シリカと、シランカップリング剤とを含み、ゴム成分中の変性ブタジエンゴムの含有量を所定のものとするゴム組成物が開示されている。
特開2014−118513号公報
しかしながら、特許文献1記載の発明では、耐摩耗性についてなお改善の余地がある。
そこで、本発明は、耐摩耗性をさらに向上させたゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、ゴム成分(a):所定の末端変性率を有し、所定のスチレン含有量および所定の分子量を有するシリカ用変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(b):所定のスチレン含有量および所定の分子量を有する非変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(c):所定の末端変性率を有し、所定の分子量を有するシリカ用変性ブタジエンゴム、およびゴム成分(d):所定のシス含量および所定の分子量を有する非変性ブタジエンゴムを所定の割合でシリカと共に配合することにより、得られるゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができることを見出し、前記課題を解決した。
すなわち、本発明は、
[1]ゴム成分とシリカとを含むゴム組成物であって、ゴム成分が
ゴム成分(a):スチレン含有量が15〜50質量%、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜45質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、好ましくは50万〜150万、より好ましくは80万〜130万、さらに好ましくは80万〜110万、末端変性率が30〜100%、好ましくは45〜100%、より好ましくは60〜100%のシリカ用変性スチレンブタジエンゴム、
ゴム成分(b):スチレン含有量が15〜50質量%、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜45質量%、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万、好ましくは70万〜180万、より好ましくは90万〜160万の非変性スチレンブタジエンゴム、
ゴム成分(c):重量平均分子量(Mw)が10万以上、好ましくは20万〜100万、より好ましくは20万〜90万、さらに好ましくは40万〜80万、末端変性率が30〜100%、好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%のシリカ用変性ブタジエンゴム、および
ゴム成分(d):シス含量が90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上、重量平均分子量(Mw)が20万以上、好ましくは20万〜100万、より好ましくは30万〜90万、さらに好ましくは30万〜80万の非変性BRからなり、全ゴム成分中の各ゴム成分の含有量が、0質量%より多く、かつ下記(式A)〜(式C)を満たすゴム組成物
(式A) (a)+(b)+(c)+(d)=100質量%
(式B) 40質量%≧(c)+(d)≧10質量%、好ましくは35質量%≧(c)+(d)≧15質量%、より好ましくは30質量%≧(c)+(d)≧20質量%
(式C) 90質量%≧(a)+(b)≧60質量%、好ましくは85質量%≧(a)+(b)≧65質量%、より好ましくは80質量%≧(a)+(b)≧70質量%、
[2]ゴム成分(b)のスチレン含有量がゴム成分(a)のスチレン含有量の±10%以内である上記[1]記載のゴム組成物、
[3]テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂およびスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する上記[1]または[2]記載のゴム組成物、ならびに
[4]上記[1]〜[3]に記載のゴム組成物により構成されるトレッドを備えるタイヤ
に関する。
本発明によれば、ゴム成分とシリカとを含むゴム組成物において、ゴム成分を、ゴム成分(a):スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(b):スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万の非変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(c):重量平均分子量(Mw)が10万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性ブタジエンゴム、およびゴム成分(d):シス含量(シス1,4結合含有率)が90質量%以上、重量平均分子量(Mw)が20万以上の非変性BRからなるものとし、全ゴム成分中の各ゴム成分の含有量を、0質量%より多く、所定の関係式が成立するものとすることによりゴム組成物の耐摩耗性をより向上させることができる。
本発明は、ゴム成分とシリカとを含むゴム組成物であって、ゴム成分が、ゴム成分(a):スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(b):スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万の非変性スチレンブタジエンゴム、ゴム成分(c):重量平均分子量(Mw)が10万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性ブタジエンゴム、およびゴム成分(d):シス含量が90質量%以上、重量平均分子量(Mw)が20万以上の非変性BRからなり、全ゴム成分中の各ゴム成分の含有量が、0質量%より多く、かつ下記(式A)〜(式C)を満たすゴム組成物とすることを特徴とする。
(式A) (a)+(b)+(c)+(d)=100質量%
(式B) 40質量%≧(c)+(d)≧10質量%
(式C) 90質量%≧(a)+(b)≧60質量%
本発明のゴム組成物は、ミクロ構造の近い、所定のシリカ用変性SBR(ゴム成分(a))と所定の高分子量非変性SBR(ゴム成分(b))とをブレンドすることで、シリカを取り込みにくい所定の高分子量非変性SBRへのシリカ分散を良好にできるとともに、SBRに比べてシリカを取り込みにくい非変性のハイシスBR(ゴム成分(d))に、所定のシリカ用変性BR(ゴム成分(c))をブレンドすることで、耐摩耗性に有効なハイシスBRへのシリカ分散を良好にでき、耐摩耗性の大幅な向上が達成されたと考えられる。また、SBRにもBRにも相溶性が高く、両ゴム成分を繋ぐ役割を果たすテルペン系樹脂を配合することにより、シリカのポリマーへの分配がさらに均一になり、より耐摩耗性が向上したと考えられる。
本明細書では、ヒドロカルビル基は炭化水素から1個の水素原子を除いた1価の基を表す。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を除いた2価の基を表す。ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロキシ基の水素原子がヒドロカルビル基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。置換アミノ基は、アミノ基の少なくとも1個の水素原子が、水素原子以外の1価の原子または1価の基に置き換えられた構造を有する基、またはアミノ基の2個の水素原子が2価の基で置き換えられた構造を有する基を表す。置換基を有するヒドロカルビル基(以下、置換ヒドロカルビル基と記すこともある。)は、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素原子が置換基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。ヘテロ原子を有するヒドロカルビレン基(以下、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基と記すこともある。)とは、ヒドロカルビレン基の水素原子が除かれている炭素原子以外の炭素原子および/または水素原子が、ヘテロ原子(炭素原子、水素原子以外の原子)を有する基で置き換えられた構造を有する2価の基を表す。
ゴム成分
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分は、以下ゴム成分(a)〜ゴム成分(d)の4種類のゴム成分からなる。
ゴム成分(a):シリカ用変性SBR
本発明のゴム組成物に用いるシリカ用変性SBR(ゴム成分(a))は、スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、末端変性率が30〜100%のスチレンブタジエンゴムであれば、特に限定されるものではなく、溶液重合SBR(S−SBR)、乳化重合SBR(E−SBR)のいずれも使用することができ、また、末端変性のみならず、主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされたSBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)も使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
末端変性基としては、シリカと親和性のある基であれば特に限定されるものではなく、導入される基は、例えば、アルコキシシリル基、アミノ基、水酸基、グリシジル基、アミド基、カルボキシル基、エーテル基、チオール基、シアノ基、炭化水素基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、オキシ基、エポキシ基、スズやチタンなどの金属原子などが一例として挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、1,2,3級アミノ基(特に、グリシジルアミノ基)、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)、炭化水素基が好ましい。具体的には、下記式(1)で表される化合物により変性されたSBRがより好ましく用いられる。
Figure 0006972932
(式(1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表し、R13は、水素原子、または炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素原子数1〜8のアルキリデン基、または炭素原子数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
式(1)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数5〜8のシクロアルキル基を表す。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、炭素原子数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロペンチル、4−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
13は水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロペンチル、4−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素原子数1〜8のアルキリデン基または炭素原子数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。炭素原子数1〜8のアルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられ、炭素原子数5〜8のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基などが挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル メタクリレート、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルベンジル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−[1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−[1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル メタクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル]−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル メタクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル]−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−エチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル]−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル]−4−イソプロピルフェニル アクリレートなどが挙げられる。
式(1)で表される化合物は、好ましくは、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−[1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル]−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル]−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル]−4−プロピルフェニル アクリレートまたは2−t−ブチル−6−[1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル]−4−イソプロピルフェニル アクリレートであり、より好ましくは、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレートまたは2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートであり、さらに好ましくは、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレートである。
本発明において、式(1)で表される化合物で変性して得られるシリカ用変性SBRは、主鎖中が変性されたSBRであっても、末端が変性されたSBRであってもよく、好ましくは、末端が変性されたSBRである。また、さらに他の変性剤により変性させることもでき、少なくとも一方の重合体鎖末端に窒素原子含有基を有するように変性されたものが好ましい。
そのような窒素原子含有基としては、置換アミノ基が挙げられる。置換アミノ基としては、下記の式(1−1)で表される置換アミノ基が挙げられる。
Figure 0006972932
(R14およびR15は、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基、または、トリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R14はR15に結合しており、R14がR15に結合した基が酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。)
14およびR15のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびアラルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基およびイソプロペニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基が挙げられる。
14およびR15のヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは1〜2である。R14およびR15のヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
14およびR15のトリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基が挙げられ、炭素原子数が3〜9のトリアルキルシリル基が好ましく、ケイ素原子に結合したアルキル基が炭素原子数1〜4のアルキル基であるトリアルキルシリル基がより好ましく、トリメチルシリル基がさらに好ましい。
14がR15に結合した基において、酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基とは、ヒドロカルビレン基、またはヘテロ原子として酸素原子を有する置換ヒドロカルビレン基を表す。ヒドロカルビレン基としては、アルキレン基が挙げられ、アルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのポリメチレン基が挙げられる。酸素原子を有する置換ヒドロカルビレン基としては、−CH2CH2−O−CH2CH2−で表される基が挙げられる。
14がR15に結合した基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、3〜8がより好ましく、4〜6がさらに好ましい。
14がR15に結合した基において、酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、ヒドロカルビレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、ポリメチレン基がさらに好ましい。
窒素原子含有基としては、R14およびR15が炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基、あるいはR14がR15に結合し、R14がR15に結合した基が炭素原子数3〜8のポリメチレン基である上記式(1−1)で表される置換アミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基が特に好ましい。
シリカ用変性SBRは、1,3−ブタジエンおよびスチレンを主な構成単量体単位とするSBRであれば、それらの単量体単位の他に、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物に由来する単位や、下記の式(1−2)で表される化合物に由来する単位など他の単量体単位を含有していてもよい。
16SiAm17 3-m (1−2)
(式中、R16は重合性炭素−炭素二重結合を有するヒドロカルビル基を表し、Aは置換アミノ基を表し、Aが複数ある場合は、複数あるAはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、R17はヒドロカルビル基を表し、R17が複数ある場合は、複数あるR17はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、mは1〜3の整数を表す。)
式(1−2)において、mは1〜3の整数であり、1または2が好ましく、2がさらに好ましい。
式(1−2)において、R16の重合性炭素−炭素二重結合を有するヒドロカルビル基としては、下式(1−3)で表される基が挙げられる。
Figure 0006972932
(式中、kは0または1であり、X1はヒドロカルビレン基を表す。)
式(1−3)において、X1のヒドロカルビレン基としては、アリーレン基、アルケンジイル基が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基が挙げられる。アルケンジイル基としてはビニレン基が挙げられる。
式(1−3)で表される基のうち、好ましい基としては、kが0であるビニル基、kが1でありX1がフェニレン基である4−ビニルフェニル基、kが1でありX1がビニリデン基である1−メチレン−2−プロペニル基が挙げられる。
式(1−3)で表される基として、さらに好ましくはビニル基である。
式(1−2)において、Aの置換アミノ基としては、下記式(1−4)で表される置換アミノ基を挙げられる。
Figure 0006972932
(式中、X2およびX3は、それぞれ、ヒドロカルビル基、または、トリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、X2はX3に結合しており、X2がX3に結合した基が酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。)
式(1−4)において、X2およびX3のヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびアラルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基およびイソプロペニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基を挙げることができる。アラルキル基としては、ベンジル基が挙げられる。
2およびX3のヒドロカルビル基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、1〜4がより好ましい。
2およびX3のヒドロカルビル基としては、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
2およびX3のトリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基が挙げられる。
2およびX3のトリヒドロカルビルシリル基としては、炭素原子数が3〜9のトリアルキルシリル基が好ましく、ケイ素原子に結合したアルキル基が炭素原子数1〜4のアルキル基であるトリアルキルシリル基がより好ましく、トリメチルシリル基がさらに好ましい。
2がX3に結合した基の、酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基とは、ヒドロカルビレン基、またはヘテロ原子として酸素原子を有する置換ヒドロカルビレン基を表す。ヒドロカルビレン基としては、アルキレン基が挙げられ、アルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのポリメチレン基が挙げられる。ヘテロ原子として酸素原子を有する置換ヒドロカルビレン基としては、−CH2CH2−O−CH2CH2−で表される基が挙げられる。
2がX3に結合した基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、3〜8がより好ましく、4〜6がさらに好ましい。
2がX3に結合した基の、酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、ヒドロカルビレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、ポリメチレン基がさらに好ましい。
式(1−4)で表される置換アミノ基としては、非環状の置換アミノ基、環状の置換アミノ基が挙げられる。非環状の置換アミノ基は、式(1−4)において、X2およびX3がヒドロカルビル基またはトリヒドロカルビルシリル基である置換アミノ基であり、環状の置換アミノ基は、式(1−4)において、X2がX3に結合し、X2がX3に結合した基が酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基である置換アミノ基である。
非環状の置換アミノ基のうち、式(1−4)においてX2およびX3がヒドロカルビル基であるものとしては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基が挙げられる。
非環状アミノ基のうち、式(1−4)においてX2およびX3がトリヒドロカルビルシリル基であるものとしては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチル−ジメチルシリル)アミノ基などのビス(トリアルキルシリル)アミノ基が挙げられる。
環状の置換アミノ基のうち、式(1−4)において、X2がX3に結合しており、X2がX3に結合した基がヒドロカルビレン基であるものとしては、1−アジリジニル基、1−アゼチジニル基、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、1−ヘキサメチレンイミノ基が挙げられる。
環状の置換アミノ基のうち、式(1−4)において、X2がX3に結合しており、X2がX3に結合した基がヘテロ原子として酸素原子を有する置換ヒドロカルビレン基であるものとしては、モルホリノ基が挙げられる。
式(1−2)のAの置換アミノ基としては、式(1−4)で表される置換アミノ基であって、式(1−4)においてX2およびX3がヒドロカルビル基またはトリヒドロカルビルシリル基である非環状の置換アミノ基、あるいはX2がX3に結合しており、X2がX3に結合した基がヒドロカルビレン基である環状の置換アミノ基が好ましい。式(1−4)で表される置換アミノ基であって、式(1−4)においてX2およびX3が直鎖アルキル基またはトリアルキルシリル基である非環状の置換アミノ基、あるいはX2がX3に結合しており、X2がX3に結合した基がポリメチレン基である環状の置換アミノ基がより好ましい。
式(1−2)のAの置換アミノ基としては、式(1−4)で表される置換アミノ基であって、X2およびX3が直鎖アルキル基である非環状の置換アミノ基がさらに好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、またはジ−n−ブチルアミノ基が特に好ましい。
式(1−2)のR17のヒドロカルビル基としては、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、メチル基が好ましくい。
式(1−2)において、R17のヒドロカルビル基の炭素原子数は、1〜4が好ましく、1がより好ましい。
式(1−2)で表される化合物のうち、R16がビニル基であり、R17がメチル基であり、Aが式(1−4)で表される置換アミノ基であって、X2およびX3が直鎖アルキル基である非環状の置換アミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
式(1−2)中のmが1である化合物:(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジメチルビニルシラン。
式(1−2)中のmが2である化合物:ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシラン。
式(1−2)で表される化合物のうち、R16がビニル基であり、R17がエチル基であり、Aが式(1−4)で表され、かつ式(1−4)においてX2およびX3が直鎖アルキル基である非環状の置換アミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
式(1−2)中のmが1である化合物:(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ−n−プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ−n−ブチルアミノ)ジエチルビニルシラン。
式(1−2)中のmが2である化合物:ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ−n−ブチルアミノ)エチルビニルシラン。
置換アミノ基がケイ素原子に結合しているケイ素含有ビニル系単量体は、上記式(1−2)で表される化合物が好ましく、上記式(1−2)で表される化合物であって、上記式(1−2)においてR16が式(1−3)で表される基であり、Aが式(1−4)で表される置換アミノ基である化合物がより好ましく、上記式(1−2)で表される化合物であって、上記式(1−2)においてR16がビニル基であり、R17が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、mが1または2であり、Aが式(1−4)で表される置換アミノ基であって、X2およびX3が炭素原子数1〜10のアルキル基である非環状の置換アミノ基である化合物がさらに好ましく、上記式(1−2)で表される化合物であって、上記式(1−2)においてR16がビニル基であり、R17がメチル基であり、mが2であり、Aが式(1−4)で表される置換アミノ基であって、X2およびX3が炭素原子数1〜4の直鎖アルキル基である非環状の置換アミノ基である化合物が特に好ましく、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ−n−プロピルアミノ)メチルビニルシラン、またはビス(ジ−n−ブチルアミノ)メチルビニルシランがなおさらに好ましい。
本発明におけるシリカ用変性SBRが、式(1−2)で表される化合物に由来する単量体単位を含有する場合、シリカ用変性SBRに含まれる単量体単位のうち、式(1−2)で表される化合物に由来する単量体単位の総含有量は、シリカ用変性SBRに含まれる単量体単位の総量を100質量%として、0.02質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。また、式(1−2)で表される化合物に由来する単量体単位の総含有量は、シリカ用変性SBRに含まれる単量体単位の総量を100質量%として、20質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。式(1−2)で表される化合物に由来する単量体単位の総含有量を上記範囲内とすることにより、シリカ分散が良好になる傾向がある。
上述の変性剤によるスチレンブタジエンゴムの変性は、例えば、炭化水素溶媒中においてアルカリ金属触媒を用いて、1,3−ブタジエンおよびスチレン、ならびにその他の単量体を重合させ、分子鎖の一端が活性なリビング共役スチレンブタジエンゴムを得、該リビング共役スチレンブタジエンゴムと上記式(1)で表される化合物とを反応させることにより行うことができる。
また、変性SBRが少なくとも一方の重合体鎖末端に窒素原子含有基を有する変性SBRである場合、そのような変性SBRの製造方法としては、アルカリ金属触媒として、窒素原子含有基を有する有機アルカリ金属化合物を用いて単量体成分を重合することにより、窒素原子含有変性SBRを製造する方法が挙げられる。
シリカ用変性SBRのスチレン含有量は、15質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。シリカ用変性SBRのスチレン含有量が15質量%未満であると、ウェットグリップ性能が劣る傾向がある。また、シリカ用変性SBRのスチレン含有量は、50質量%以下であり、45質量%以下が好ましい。シリカ用変性SBRのスチレン含有量が50質量%を超えると、低燃費性が悪化する恐れや、低温環境下でクラックが発生する可能性がある。なお、本明細書において、SBRのスチレン含有量はH1−NMR測定により算出される。
シリカ用変性SBRのビニル結合量は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましい。また、シリカ用変性SBRのビニル結合量は、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。なお、本明細書において、SBRおよびBRのビニル結合量は赤外分光分析法により算出される。
シリカ用変性SBRの重量平均分子量(Mw)は、20万以上であり、50万以上が好ましく、80万以上がより好ましい。シリカ用変性SBRの重量平均分子量(Mw)が20万未満であると、耐摩耗性が著しく低下する傾向がある。また、シリカ用変性SBRの重量平均分子量(Mw)は、150万以下が好ましく、130万以下がより好ましく、110万以下がさらに好ましい。
シリカ用変性SBRの末端変性率は、30%以上であり、45%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。シリカ用変性SBRの末端変性率が30%未満であると、シリカ分散を向上させる効果が発揮できない恐れがある。また、シリカ用変性SBRの末端変性率の上限は特に限定されるものではなく、100%とすることができる。
本明細書において、シリカ用変性SBRおよびシリカ用変性BRにおいて規定される「末端変性率(%)」は、重合開始剤および/または停止剤の量に占める変性剤の割合により測定した値である。
ゴム成分(b):非変性SBR
本発明のゴム組成物に用いる(b)非変性SBRは、スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万のスチレンブタジエンゴムであれば、特に限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非変性SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられる。
非変性SBRのスチレン含有量は、15質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。非変性SBRのスチレン含有量が15質量%未満であると、ウェットグリップ性能が劣る傾向がある。また、非変性SBRのスチレン含有量は、50質量%以下であり、45質量%以下が好ましい。非変性SBRのスチレン含有量が50質量%を超えると、低温環境下でクラックが発生する可能性がある。
非変性SBRのビニル結合量は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましい。また、非変性SBRのビニル結合量は、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。
非変性SBRの重量平均分子量(Mw)は、50万以上であり、70万以上が好ましく、90万以上がより好ましい。非変性SBRの重量平均分子量(Mw)が50万未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、非変性SBRの重量平均分子量(Mw)は、200万以下であり、180万以下が好ましく、160万以下がより好ましい。非変性SBRの重量平均分子量(Mw)が200万を超えると、粘度が高くなり、混練加工性が悪化する傾向がある。
ゴム成分(c):シリカ用変性ブタジエンゴム
本発明のゴム組成物に用いる(c)シリカ用変性BRは、重量平均分子量(Mw)が10万以上、末端変性率が30〜100%のブタジエンゴムであれば、特に限定されるものではない。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリカ用変性BRとしては、シリカと相互作用する官能基を有する化合物により変性されたブタジエンゴムであれば、さらにゴムの主鎖が変性されたものであってもよいし、例えば四塩化スズ、四塩化ケイ素等の多官能型の変性剤により変性されて一部に分岐構造を有するものであってもよく、特に限定されるものではない。このようなシリカと相互作用する官能基を有する化合物により変性されたBRとしては、上述のシリカと相互作用する官能基を有する化合物により変性されたシリカ用変性SBRの骨格成分であるスチレンブタジエンゴムをブタジエンゴムに置き換えたものを使用すればよい。なかでも、シリカ用変性BR(c)としては、シリカ分散に優れるという観点から、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性されたブタジエンゴムが好ましく、例えば、下記式(2)で表される低分子化合物により変性されたシリカ用変性ブタジエンゴムが好ましい。
Figure 0006972932
(式中、R21およびR22は、同一または異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、および3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R23およびR24は、同一若しくは異なって、水素原子、または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、および3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R25は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。mは1〜6の整数を表す。)
21およびR22は、炭素数1〜10のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)が好ましい。R23およびR24は、水素原子が好ましい。R25は、炭素数3〜20の炭化水素基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数8)が挙げられ、下記式などで表されるシクロアルキル基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
Figure 0006972932
また、mは2〜3であることが好ましい。上記式で表される化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
シリカ用変性BRとしては、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物と、この低分子化合物の2量体以上のオリゴマーとの混合物により変性された変性ブタジエンゴムがより好ましい。そのようなシリカ用変性BRとしては、特開2009−275178号公報などに記載されているものが挙げられる。
上記オリゴマーは、上記低分子化合物の2量体〜10量体が好ましい。また、上記低分子化合物は、分子量が1000以下の有機化合物であり、下記式(2−1)の化合物が好適なものとして挙げられる。
Figure 0006972932
上記式(2−1)において、Rは2価の炭化水素基またはエーテル、エポキシ、ケトン等の酸素を含む極性基、チオエーテル、チオケトン等の硫黄を含む極性基、3級アミノ基、イミノ基等の窒素を含む極性基から選ばれる少なくとも一種の極性基を有する2価の有機基である。2価の炭化水素基としては、飽和または不飽和の直鎖状、分岐状、環状であってもよく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基などを含む。具体的には、例えば、メチレン、エチレン、ブチレン、シクロヘキシレン、1,3−ビス(メチレン)−シクロヘキサン、1,3−ビス(エチレン)−シクロヘキサン、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン、m−キシレン、p−キシレン、ビス(フェニレン)−メタンなどが挙げられる。
上記式(2−1)で表される低分子化合物の具体例としては、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、4,4−メチレン−ビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4−(4−グリシジルピペラジニル)−(N,N−ジグリシジル)アニリン、2−[2−(N,N−ジグリシジルアミノ)エチル]−1−グリシジルピロリジン等が挙げられる。なかでも、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
上記オリゴマー成分としては、下記式(3)で表される2量体や、下記式(4)で表される3量体が好適な例として挙げられる。
Figure 0006972932
Figure 0006972932
上記低分子化合物と、上記オリゴマーとの混合物により変性する場合、変性剤(混合物)100質量%中、上記低分子化合物の含有量は75〜95質量%、上記オリゴマーの含有量は25〜5質量%であることが好ましい。
変性剤における低分子化合物とオリゴマー成分の比率はGPCにより測定できる。具体的には、低分子化合物からオリゴマー成分まで測定できるカラムを選択し、測定する。得られたピークにおいて、低分子化合物由来のピークの高分子側の最初の変曲点から垂線を下ろし、低分子側成分の面積と高分子側成分の面積比を求める。この面積比が低分子化合物とオリゴマー成分の比率に相当する。なお、オリゴマー成分の高分子側ピークは、標準ポリスチレン換算分子量から求めた該低分子化合物の分子量の10倍以下の分子量となる点、あるいは該低分子化合物の分子量の10倍以下の分子量となる点までに成分ピークが0となる場合は成分ピークが0となる点までを積算する。
リチウム化合物などの重合開始剤を用いたアニオン重合により合成された活性末端を有するブタジエンのポリマーと変性剤との反応は、前記変性剤をポリマーの活性末端と反応させることにより行う。分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物、または該化合物とそのオリゴマーとの混合物によるブタジエンゴムの変性方法としては、従来公知の変性剤によるブタジエンゴムの変性方法を使用することができる。例えば、ブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性することができ、具体的には、アニオン重合によるブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
シリカ用変性BRのビニル結合量は、5モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。また、シリカ用変性BRのビニル結合量は、20モル%以下が好ましく、18モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。
シリカ用変性BRの重量平均分子量(Mw)は、10万以上であり、20万以上が好ましく、40万以上がより好ましい。また、シリカ用変性BRの重量平均分子量(Mw)は、100万以下が好ましく、90万以下がより好ましく、80万以下がさらに好ましい。
シリカ用変性BRの末端変性率は、30%以上であり、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。シリカ用変性BRの末端変性率が30%未満であると、シリカ分散が向上しない可能性がある。また、シリカ用変性BRの末端変性率の上限は特に限定されるものではなく、100%とすることができる。
ゴム成分(d):非変性BR
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分(d)は、シス含量が90質量%以上であり、重量平均分子量(Mw)が20万以上の非変性のブタジエンゴムであれば、特に限定されるものではない。例えば、JSR(株)、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)などにより製造販売されるハイシスBRなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非変性BRのシス含量は、90質量%以上であり、92質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。非変性BRのシス含量が90質量%未満であると、十分な耐摩耗性向上効果が得られない傾向がある。BR中のシス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
非変性BRの重量平均分子量(Mw)は、20万以上であり、30万以上が好ましく、50万以上がより好ましい。非変性BRの重量平均分子量(Mw)が20万未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、非変性BRの重量平均分子量(Mw)は、100万以下が好ましく、90万以下がより好ましく、80万以下がさらに好ましい。
これら4種のゴム成分のゴム成分100質量%中の含有量は、それぞれ所定の関係式を満たすものでなければならない。つまり、ゴム成分(a)とゴム成分(b)との組み合わせのゴム成分100質量%中の含有量は、60質量%以上であり、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。ゴム成分(a)とゴム成分(b)との含有量が60質量%未満であると、ウェットグリップ性能が劣る傾向がある。また、ゴム成分(a)とゴム成分(b)との組み合わせのゴム成分100質量%中の含有量は、90質量%以下であり、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。ゴム成分(a)とゴム成分(b)との含有量が90質量%を超えると、耐摩耗性が劣る傾向がある。
また、ゴム成分(c)とゴム成分(d)との組み合わせのゴム成分100質量%中の含有量は、10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。ゴム成分(c)とゴム成分(d)との含有量が10質量%未満であると、耐摩耗性が劣る傾向がある。また、ゴム成分(c)とゴム成分(d)との組み合わせのゴム成分100質量%中の含有量は、40質量%以下であり、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。ゴム成分(c)とゴム成分(d)との含有量が40質量%を超えると、ウェットグリップ性能が劣る傾向がある。
シリカ
シリカとしては、特に限定されるものではなく、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、120m2/g以上がさらに好ましい。シリカのN2SAを120m2/g以上とすることにより、高い弾性率と耐摩耗性を担保する傾向がある。また、シリカのN2SAは、300m2/g以下が好ましく、280m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。シリカのN2SAを250m2/g以下とすることにより、混練りの加工性悪化を防ぐことができる。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、50質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましい。シリカの含有量を50質量部以上とすることにより、ウェットグリップ性能を向上させる傾向がある。また、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、150質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、110質量部以下がさらに好ましい。
その他の配合剤
本発明ゴム組成物には、上記成分以外にも、必要に応じて、従来ゴム工業で一般に使用される配合剤、例えば、シリカ以外の補強用充填剤、シランカップリング剤、軟化剤、各種老化防止剤、ワックス、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤などを適宜含有させることができる。
その他の補強用充填剤
シリカ以外の補強用充填剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、従来からタイヤ用ゴム組成物において用いられているものを配合することができる。
カーボンブラック
カーボンブラックとしては、例えば、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラックなどが挙げられ、2種類以上のコロイダル特性の異なるものを併用してもよい。具体的にはGPF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、なかでも、ISAFが好適である。また、具体的には、N110、N121、N134、N220などを用いることができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上であり、70m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましい。カーボンブラックのN2SAを50m2/g以上とすることにより、弾性率を高くできる傾向がある。また、カーボンブラックのN2SAは、300m2/g以下が好ましく、250m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K6217のA法に準じて測定される値である。
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、低燃費性および耐摩耗性の性能バランスが顕著に改善される傾向がある。
シランカップリング剤
本発明においてはシリカと共にシランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト系、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリメトキシシランなどのチオエーテル系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、低燃費性能に優れるという観点からスルフィド系のシランカップリング剤、チオエーテル系のシランカップリング剤が好ましく、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランを組み合わせて用いることが好ましい。
シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内の場合は、良好な加工性、ゴム強度および耐摩耗性を確保できる傾向がある。
軟化剤
前記軟化剤としては、樹脂、オイルならびに液状ジエン系重合体などが挙げられる。
(樹脂)
樹脂としては、芳香族系石油樹脂などの従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂が挙げられる。芳香族石油樹脂としては例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などが挙げられる。フェノール系樹脂としては例えばコレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)などが挙げられる。クマロンインデン樹脂としては例えばニットレジン クマロン(日塗化学(株)製)、ネオポリマー(新日本石油化学(株)製)などが挙げられる。スチレン系樹脂としては例えばSylvatraxx 4401 (Arizona chemical社製)などが挙げられる。テルペン系樹脂としては例えばTR7125(Arizona chemical社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリマーへの相溶性の観点からクマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂が好ましく、特に、SBRにもBRにも相溶性が高く、両ポリマーを繋ぐ役割を果たし、シリカのポリマーへの分配を均一にする効果が得られることから、テルペン系樹脂が好ましい。
テルペン系樹脂としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ジペンテンなどのテルペン原料から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂(水素添加されていないテルペン系樹脂)、ならびにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。これらテルペン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどが挙げられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
樹脂の軟化点は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。樹脂の軟化点を30℃以上とすることにより、ウェットグリップ性能が向上する傾向がある。また、樹脂の軟化点は、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。樹脂の軟化点を180℃以下とすることにより、ドライグリップ性能が向上する傾向がある。なお、本発明における樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。樹脂の含有量を2質量部以上とすることにより、ドライおよびウェットグリップ性能が向上する傾向がある。また、樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。樹脂の含有量30質量部以下とすることにより、耐摩耗性とドライおよびウェットグリップ性能とのバランスが取れる傾向がある。
(オイル)
オイルとしては、例えば、特に限定されるものではないが、たとえば、プロセスオイル、植物油脂またはその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、たとえば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく30質量部以下がさらに好ましい。オイルの含有量を上記範囲内とすることにより、オイルを含有させる効果が充分に得られ、良好な耐摩耗性を得ることができる。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
(液状ジエン系重合体)
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性と走行中の安定した操縦安定性能がバランスよく得られるという理由から、液状SBRが好ましい。なお、本明細書における液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性、破壊特性、耐久性の観点から、1.0×103以上が好ましく、3.0×103以上がより好ましい。また、生産性の観点から2.0×105以下が好ましく、1.5×104以下がより好ましい。なお、本明細書における液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ジエン系重合体を含有する場合のゴム成分100質量部に対する液状ジエン系重合体の含有量は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、液状ジエン系重合体の含有量は、50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。液状ジエン系重合体の含有量が上記範囲内である場合は、ドライグリップ性能が高くなり、本発明の効果が得られやすい傾向がある。
軟化剤の含有量(粘着樹脂、オイル、および液状ジエン系重合体の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、軟化剤の含有量は、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、45質量部以下がさらに好ましい。軟化剤の含有量が上記範囲内である場合は、本発明の効果がより好適に得られる。
ワックスとしては、特に限定されるものではないが、日本精鑞(株)製のオゾエース0355、パラメルト社製のOK5258Hなどのパラフィンワックスが好ましい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、ワックスのゴム成分100質量部に対する含有量は、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。ワックスの含有量を上記範囲内とすることにより、オゾンクラック性能に優れる傾向がある。
老化防止剤
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩などの老化防止剤を適宜選択して配合することができ、これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでもアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−4−メチル−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリール−p−フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系がより好ましく、なかでもN−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンおよび2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を組み合わせて用いることが好ましい。
老化防止剤を配合する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(2種以上の老化防止剤を配合する場合にはそれらの合計含有量)は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好まく、3質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましい。老化防止剤の含有量を上記範囲内とすることにより、オゾンクラックおよび耐熱性能に優れる傾向がある。
その他、ステアリン酸、酸化亜鉛などは、従来ゴム工業で使用されるものを用いることができる。
加硫剤
加硫剤としては特に限定されず、従来ゴム工業で用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、オイル分を含む可溶性硫黄などの硫黄などが挙げられる。
加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、加硫剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、3.0質量部以下であり、2.5質量部以下が好ましく、2.0質量部以下がより好ましい。
加硫促進剤
加硫促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系もしくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられ、なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなどが挙げられる。チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどが挙げられる。チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)などが挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られる点からCBSおよびDPGを組み合わせて使用することが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、6質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ部材をはじめ、加硫ブラダー、防振ゴム、ベルト、ホース、その他のゴム製工業製品等にも用いることができる。特に、耐摩耗性、ドライおよびウェットグリップ性能に優れることから、本発明のゴム組成物はトレッドに好適に使用されるものであり、さらにトレッドがキャップトレッドとベーストレッドとからなる2層構造のトレッドである場合はキャップトレッドに好適に使用されるものである。
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りし(ベース練り工程)、その後、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし(仕上げ練り工程)、加硫する方法などにより製造できる。
タイヤ
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、上記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、4種の所定のゴム成分にシリカ、および上記の配合剤を必要に応じて配合した上記ゴム組成物を、トレッドなどの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱および加圧することにより、タイヤを製造することができる。トレッドの形成は、シート状にした未加硫ゴム組成物を、所定の形状に貼り合せる方法、または2本以上の押出機に挿入して押出し機のヘッド出口で2相に形成する方法によっても作製することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
(a)変性SBR:日本ゼオン(株)製のシリカ用変性SBR(S−SBR、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:30モル%、重量平均分子量(Mw):90万、末端変性率:100%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分25質量部を含む油展品(表では、変性SBRのゴム成分量を「(a)変性SBR」の配合量として記載し、変性SBRのオイル分を下記オイル量と合計して「オイル」の配合量として記載する。))
(b)非変性SBR:Trinseo社製の非変性SBR(S−SBR、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:25モル%、重量平均分子量(Mw):150万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部を含む油展品(表では、非変性SBRのゴム成分量を「(b)非変性SBR」の配合量として記載し、非変性SBRのオイル分を下記オイル量と合計して「オイル」の配合量として記載する。))
(c)変性BR:旭化成ケミカルズ(株)製のシリカ用変性BR(シス含量:38質量%、ビニル結合量:12モル%、重量平均分子量(Mw):55万、末端変性率:100%)
(d)非変性BR:宇部興産(株)製の非変性BR(シス含量:97質量%、ビニル結合量:2モル%、重量平均分子量(Mw):50万)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN134(N2SA:148m2/g)
シリカ:エボニック・デグッサ(EVONIK-DEGUSSA)社製のVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤1:エボニック・デグッサ社製のSi266(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT(3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)
オイル:スターリーオイル社製のVivaTec 500(アロマ系プロセスオイル)
樹脂1:SYLVATRAXX 4401(スチレン系樹脂、軟化点:85℃)
樹脂2:日塗化学(株)製のクマロンV−120(クマロンインデン樹脂、軟化点:120℃)
樹脂3:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(テルペン−スチレン樹脂、軟化点:125℃)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の亜鉛華2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:鶴見化学工業(株)製の5%オイル含有粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
実施例1〜8および比較例1〜8
表1に示す配合内容に従い、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を1.77Lのバンバリーミキサーに投入し、排出温度160℃の条件下で3分間混練りし、混練物を得た。得られた混練物に、硫黄および加硫促進剤を、表1の配合内容に従い添加し、オープンロールを用いて、90℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を160℃の条件下で35分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物を使用して、トレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と共に貼り合せて未加硫タイヤを形成し、175℃で18分間加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:215/45R17)を製造した。
各実施例および比較例により得られた加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
<転がり抵抗指数>
シート状の加硫ゴム組成物から幅5mm、長さ50mm、厚さ1.5mmの短冊状試験片を打ち抜き、試験に供した。(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅2%、周波数20Hz、温度50℃で加硫ゴムシートの損失正接(tanδ)を測定し、tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した(転がり抵抗指数)。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく(発熱しにくく、エネルギーロスが低く)、タイヤの転がり抵抗性(低燃費性)に優れることを示している。
(転がり抵抗指数)
=(比較例1のtanδ(50℃))/(各配合のtanδ(50℃))×100
<ウェットグリップ性能指数>
シート状の加硫ゴム組成物から幅5mm、長さ50mm、厚さ1.5mmの短冊状試験片を打ち抜き、試験に供した。(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅2%、周波数20Hz、温度0℃で加硫ゴムシートの損失正接(tanδ)を測定し、tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した(低発熱性指数)。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく(発熱しにくく、エネルギーロスが低く)、タイヤの転がり抵抗性(低燃費性)に優れることを示している。
(ウェットグリップ性能指数)
=(比較例1のtanδ(0℃))/(各配合のtanδ(℃))×100
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト面のテストコースにて実車走行を行った。走行距離1万km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記の式により指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性が良好である。
(耐摩耗性指数)=(各配合の走行距離)/(比較例1の走行距離)×100
Figure 0006972932
表1の結果より、所定の4種のゴム成分(a)〜ゴム成分(d)を所定量含有する実施例1〜8では、ゴム成分(a)〜ゴム成分(d)のうち3種のゴム成分しか含有しない比較例1〜6に比べて顕著に耐摩耗性に優れ、また所定の4種のゴム成分(a)〜ゴム成分(d)を配合しても、ゴム成分(a)+ゴム成分(b)およびゴム成分(c)+ゴム成分(d)の含有量が本発明の所定範囲にない比較例7および8と比較しても格別に耐摩耗性に優れていることが分かる。また、本発明の実施例1〜8では、耐摩耗性の格別な向上のみならず、転がり抵抗指数、ウェットグリップ性能の平均性能も向上していることが分かる。

Claims (5)

  1. ゴム成分とシリカとを含むゴム組成物であって、ゴム成分が、
    ゴム成分(a):スチレン含有量が15〜50質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、
    ゴム成分(b):スチレン含有量が30〜50質量%、ビニル結合量が15〜70モル%、重量平均分子量(Mw)が50万〜200万の非変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、
    ゴム成分(c):ビニル結合量が5〜12モル%、重量平均分子量(Mw)が10万以上、末端変性率が30〜100%のシリカ用変性ブタジエンゴム、および
    ゴム成分(d):シス含量が90質量%以上、重量平均分子量(Mw)が20万以上の非変性BR
    からなり、全ゴム成分中の各ゴム成分の含有量が、0質量%より多く、かつ下記(式A)〜(式C)を満たすゴム組成物。
    (式A) (a)+(b)+(c)+(d)=100質量%
    (式B) 40質量%≧(c)+(d)≧10質量%
    (式C) 90質量%≧(a)+(b)≧60質量%
  2. 前記ゴム成分(b)のスチレン含有量が前記ゴム成分(a)のスチレン含有量の±10%以内である請求項1記載のゴム組成物。
  3. テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂およびスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1または2記載のゴム組成物。
  4. シリカの含有量が、ゴム成分100質量部に対して、70〜150質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物により構成されるトレッドを備えるタイヤ。
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