本発明の第1の態様によれば、作業面を破壊するための衝撃ハンマーが提供され、衝撃ハンマーは、
・収容面の少なくとも一部分を形成する少なくとも1つの内側側壁を有するハウジングと、
・駆動機構と、
・ハウジング内に少なくとも部分的に位置する往復運動ハンマーウエイトであって、往復運動ハンマーウエイトは、往復運動軸に沿って往復運動することが可能であり、往復運動ハンマーウエイトの往復運動サイクルは、往復運動軸がほぼ垂直軸上にあるときに、
往復運動ハンマーウエイトが駆動機構によって往復運動軸に沿って上方に移動させられる上昇行程、および
往復運動ハンマーウエイトが往復運動軸に沿って下方に移動する下降行程
を含む、往復運動ハンマーウエイトと、
・被駆動端および作業面衝撃端を有するストライカピンであって、作業面衝撃端がハウジングから突出するようにハウジング内に位置するストライカピンと、
・ストライカピンに結合された衝撃吸収装置と、
・可変容積の真空チャンバであって、
収容面の少なくとも一部分と、
ハンマーウエイトに結合された少なくとも1つの上部真空シーリングと、
下降行程の少なくとも一部において可変容積の真空チャンバから流体を逃がすことを可能にするように動作することができる少なくとも1つの下降行程ベントと
を含む可変容積の真空チャンバと、
を備え、
可変容積の真空チャンバは、少なくとも1つの下部真空シーリングを含み、可変容積の真空チャンバは、上昇行程の少なくとも一部において大気圧未満の圧力を有するように構成されて、往復運動ハンマーウエイトは、下降行程の少なくとも一部において大気と大気圧未満の圧力との間の圧力差によってストライカピンに向かって駆動される。
本発明は、往復運動経路に沿って移動することができる往復運動ハンマーウエイトを含んでいる装置を提供し、往復運動ハンマーウエイトは、このハンマーウエイトの往復運動の最中に装置の収容面と少なくとも部分的なシーリング接触をなすように構成および配置される。
往復運動ハンマーウエイトを含むこのような装置は、多数の形態をとることができ、本発明は、いかなる特定の構成にも限定されない。そのような装置の例として、機械式衝撃ハンマー、重力落下ハンマー、動力式落下ハンマー、ジャッキハンマー、杭打ち機、岩石破砕機、などが挙げられる。
本明細書において使用されるとき、用語「往復運動」は、装置の動作の最中に往復運動コンポーネントを直線状の経路、非直線の経路、中断のある経路、環状の経路、不規則な経路、およびこれらの任意の組み合わせなどの同じ経路に沿って繰り返し移動させる装置のあらゆる動作サイクルを含む。
本明細書において使用されるとき、用語「部分的な接触」は、収容面との時間および/または距離ならびにこれらの任意の組み合わせに関して断続的な接触、連続的な接触、中断のある接触、瞬間的な接触、部分的な接触、不定期な接触、周期的な接触、および不規則な接触を含む。
本明細書において使用されるとき、用語「収容面」は、装置の動作の最中に往復運動コンポーネント、その一部分、またはその付属品に少なくとも部分的に接触するように配置された任意の構造、表面、物体、などを含む。
本明細書において使用されるとき、用語「作業面」は、装置による衝撃、接触、操作、または移動を被る任意の表面、材料、または物体を含む。本明細書に開示される多数の実施形態において、作業面は、典型的には、岩石、鋼、コンクリート、または破損されるべき他の材料を含む。
本明細書において使用されるとき、用語「大気」および「大気の」は、装置を取り囲む気体の塊または膜を指し、あるいは装置を取り囲む気体の塊または膜に関連し、気体の塊は、流体を含む。
本明細書において使用されるとき、用語「真空」は、大気圧よりも低いあらゆる圧力を含み、すなわち大気よりも低い流体圧力を有する。したがって、「真空」への言及を、絶対真空を必要とすると解釈すべきではない。
本明細書において使用されるとき、用語「ベント」は、受動的であるか、あるいは能動的であるかにかかわらず、流体の通過を許す任意の造作、機構、またはシステムを含む。
本明細書において使用されるとき、用語「弁」は、流体の通過を選択的に防止するように構成することができる任意のベントを含む。
本明細書において使用されるとき、用語「真空シーリング」は、互いに相対移動が可能な少なくとも2つの表面の間のシーリングを指し、相対移動の最中に表面の間に少なくとも部分的なシールを維持することができる任意の可撓、可変、および/または摺動可能なシールを含む。
本明細書において使用されるとき、用語「駆動機構」は、往復運動コンポーネントを重力の作用に逆らって持ち上げるなど、往復運動コンポーネントを作業面から遠ざかるように移動させるために使用される任意の機構を含むとともに、持ち上げの駆動機構とは別の駆動部または持ち上げの駆動機構の一体の一部分として、重力の作用との組み合わせにおいて往復運動コンポーネントを降下させるなど、往復運動コンポーネントを作業面に向かって駆動するために使用される任意の下方への駆動機構を含む。駆動機構は、油圧ラムまたは回転チェーン駆動装置など、任意の好都合な形態をとることができる。本明細書においては、例示の目的で、チェーン駆動による下方への駆動機構がさらに詳細に検討されるが、これが決して限定ではないことを、理解できるであろう。
本発明は、機械式の衝撃ハンマーにおける使用にとくに適しており、分かり易さのため、および冗長さをさらに減らすために、本明細書においては、本発明を機械式の衝撃ハンマーにおける使用に関して説明する。しかしながら、これは単なる例示であり、本発明が必ずしもこれに限定されないことを、理解できるであろう。
典型的には、重力式の衝撃ハンマーは、岩石、コンクリート、石、金属、アスファルト、などを砕くために、大きなウエイトの形態で設けられた往復運動コンポーネントを周期的に上昇および落下させ、ここで、ウエイトは、何らかの形態(例えば、油圧)の動力式の駆動機構によって持ち上げられ、重力のもとで自由に落下する。このような重力式の衝撃ハンマーの開発において、本発明の発明者は、ウエイトが表面に衝撃を与えるために下方へと積極的に駆動される動力式の衝撃ハンマー(特許文献7に記載されており、本明細書に援用される)を考案した。
本明細書におけるウエイト、ハンマーウエイト、衝撃マス、などへの言及は、「往復運動コンポーネント」も指すものと理解されるべきである。
いくつかの実施形態において、用語「ハンマーウエイト」は、往復運動サイクルにおいてハンマーウエイトと一緒に移動するようにハンマーウエイトに取り付けられ、結合し、接続され、あるいは他のやり方で係合した任意のコンポーネント、アイテム、または中間要素も含むことができる。
ハンマーは、横断面が不規則、矩形、正方形、または円形であるなど、任意の形状に形成されてよいが、典型的には鉛直方向に細長く、直線状の衝撃軸の周りで上昇および下降させられる。
ウエイト自体を、ハンマーとして直接形成してもよく、その場合、ウエイトの1つ以上の遠位端が、作業面を打撃するように形作られたツール端を備えて形成される。あるいは、ウエイトを、下降行程において作業面を打撃するためのストライカピンへと落下する任意の好都合な形状のブロックとして単純に形成してもよい(本明細書に援用される本発明の発明者の先行の刊行物である特許文献1〜4を参照)。
ウエイトは、装置の脆弱部分を保護するとともに、打撃動作からのデブリの進入による装置の汚損を軽減するハウジング内に少なくとも部分的に配置され、そのようなハウジング内で動作する。さらに、ハウジングは、装置の損傷および/または不安定の発生を防止するために、上昇または下降の行程におけるウエイトの経路が横方向について拘束された状態であることを保証するためのガイドとしても機能する。理想的には、ウエイトは、ハウジングの内側に触れることなく上下に移動することで、有害な摩擦を回避する。
実際には、打撃作業は、さまざまな傾きで行われ、完全に鉛直であることはまれである。さらに、作業面の性質ゆえに、破砕が生じるまでに複数回の衝撃が必要とされる可能性があり、したがって、ハンマーまたはストライカピンが、破壊されていない作業面から跳ね返る可能性がある。ハンマー/ストライカピンの跳ね返りの方向は、横方向の成分を主に含むことにより、ハンマー/ストライカピンをハウジングの内側側壁に接触させる。本発明の一実施形態においては、ハンマーの往復運動部とハウジングの収容面との間の接触の望ましくない影響を緩和するために、クッションスライドが利用される。クッションスライドの構成および実装は、後でさらに詳しく検討される。
分かり易くするために、本発明およびその構成要素の向きが、往復運動コンポーネントを往復運動経路に沿って移動させることによって動作する装置を、実質的に鉛直な往復運動軸の周りで使用する場合について言及され、したがって「下」および「上」という記述子は、それぞれ「作業面」に近い位置および「作業面」から遠い位置を相対的に指すものとされる。しかしながら、この向きの呼び方が、あくまでも説明の目的のためのものにすぎず、決して装置を鉛直軸における使用に限定するものではないことを、理解できるであろう。実際に、本発明の好ましい実施形態は、以下でさらに説明されるように、広範囲の向きにて動作することができる。
一態様によれば、往復運動コンポーネントの往復運動経路は、直線状の衝撃軸を含む。好ましくは、ハンマーウエイトは、衝撃軸に沿った一定の方向における往復運動経路の大きさに等しい行程長を有する。
一実施形態において、装置は、ハウジングを含み、収容面は、衝撃ハンマーのハウジングの内側側壁を含む。
一態様によれば、本発明は、ハンマーウエイトと収容面の少なくとも一部分との間に形成された可変容積の真空チャンバを提供し、真空チャンバは、往復運動の少なくとも一部分において大気圧よりも低い圧力を有する。
好ましくは、真空チャンバは、真空チャンバに流体連通する少なくとも1つのベントを含む。
好ましくは、真空チャンバは、
・少なくとも1つの可動真空ピストン面、および
・ハンマーウエイトと収容面の少なくとも一部分との間の少なくとも1つの真空チャンバ真空シーリング(本明細書においては、上部真空シーリングと称される)
を含む。
好ましくは、真空ピストン面は、ハンマーウエイトの一部分によって形成される。
代案の実施形態によれば、真空ピストン面は、ハンマーウエイトの一部として一体的に形成されてもよく、あるいはハンマーウエイトの付属物を含んでもよい。好ましくは、真空ピストン面は、往復運動経路に平行または同軸な経路に沿って移動可能である。
好ましくは、真空チャンバは、
・ハンマーウエイトと収容面との間の上部真空シーリング、および
・下部真空シーリング
を含む。
下部真空シーリングの位置および構成は、衝撃ハンマーのウエイトが、自身の衝撃エネルギーをストライカピンを介して作業面に伝達するウエイトとして構成されているか、あるいは作業面を直接打撃するためのツール端を備えて形成されているかに依存する。前者の場合、下部真空シーリングを、ウエイトの下部付近またはストライカピンアセンブリの周りのいずれかに形成することができる。後者の場合、下部真空シーリングは、上部真空シーリングよりも下方の位置においてハンマーウエイトと収容面との間に位置することができる。
どちらのウエイトの構成においても、ウエイトと収容面との間の移動は、シーリングが両者の間の相対的な摺動運動に対応できることを言外に要求する。シーリングを、ウエイト、ストライカピンアセンブリ、収容面、またはこれらの組み合わせに取り付けることができ、これらの変種は、後でさらに詳細に検討される。
さらに、可能な上述のウエイトの構成の違いにもかかわらず、上述した同じ真空チャンバ構成基準を採用することができる。動作時、装置の完全な往復運動サイクルは、上昇行程、上部行程移行、下降行程、および下部行程移行からなる4つの基本段階(さらに詳しくは後述される)を含む。
これらの4つの段階において、真空チャンバにおけるそれぞれの結果は、以下のとおりである。
・上昇行程:ウエイトが駆動機構によって作業面から遠ざかるように駆動される(すなわち、鉛直に向けられた衝撃軸において、ウエイトが上昇する)につれて、真空チャンバの容積が増加する。真空チャンバは、収容面、ウエイトの表面、および上下の真空シーリングによって空気の進入から封止されているため、チャンバの容積の膨張は、上下の真空シーリングの漏れに応じて、真空チャンバと、典型的には1バールの大気圧である真空チャンバの外側の圧力との間に、対応する圧力差を生じさせる。シーリングの損失の影響にもかかわらず、ハンマーウエイトが往復運動経路の上昇行程の移動限界まで移動するとき、真空チャンバの圧力差は維持される。
・上部行程移行:ポテンシャルエネルギー最大の位置(すなわち、鉛直な往復運動軸における最大高さに対応する上昇行程の移動限界)において、ウエイトは解放され(下方への駆動機構が使用されている場合には、その作用にかかわらず)、重力およびウエイトに作用する圧力差の両方のもとで、作業面に向かって移動する。
・下降行程:ウエイトが作業面/ストライカピンに移動するとき、ウエイトが下降行程の終わりに達するまで、真空チャンバの容積が減少する。
・下部行程移行:真空チャンバの容積は、ウエイトが往復運動サイクルの最下部に位置するウエイトから作業面へのエネルギー伝達の瞬間に、最小になる。次いで、このサイクルが繰り返される。
すでに示したように、上記の説明は、真空チャンバの容積の増加によって上昇行程において生じる圧力差を小さくすると考えられるシーリングの損失の影響を無視している。
したがって、本発明の一態様によれば、衝撃ハンマーが提供され、この衝撃ハンマーは、
・内側側壁を有するハウジングと、
・直線状の衝撃軸に沿って往復移動することができるハンマーウエイトであって、このハンマーウエイトの往復移動時にインパクトハンマーのハウジング内側側壁を含む収容面と少なくとも部分的なシーリング接触をなすように構成および配置されたハンマーウエイトと、
・ハンマーウエイトと収容面の少なくとも一部分との間に形成された可変容積の真空チャンバと
を含む衝撃ハンマーが提供される。
好ましくは、鉛直に向けられたときの直線状の衝撃軸に沿ったハンマーウエイトの完全な往復運動サイクルが、
・ハンマーウエイトのポテンシャルエネルギーが最小である下方の初期位置からハンマーウエイトのポテンシャルエネルギーが最大であるハウジングの遠位端に位置する上方位置までのハンマーウエイト上昇行程長に等しい距離にわたって、ハンマーウエイトが衝撃軸に沿って移動する上昇行程と、
・ハンマーウエイトの移動が、衝撃軸に沿った方向の反転に先立って静止する上部行程移行と、
・ハウジングの遠位端に位置する上方位置から下方位置までのハンマーウエイト下降行程長に等しい距離にわたって、ハンマーウエイトが再び衝撃軸に沿って移動する下降行程と、
・ハンマーウエイトの移動が、後の上昇行程に先立って静止する下部行程移行と
で構成される4つの段階を含む。
好ましくは、ハンマーウエイトのポテンシャルエネルギーは、
・ハンマーウエイトの上昇行程開始位置からの鉛直変位量に重力による力を乗算したものに等しい重力ポテンシャルエネルギーと、
・真空ピストン面の面積と、真空チャンバと大気との間の圧力差との積に、ハンマーウエイト行程長を乗算したものに等しい真空チャンバが発生させるポテンシャルエネルギーと
を含む。
衝撃ハンマーの構成によれば、ハンマーウエイトの上昇行程長とハンマーウエイトの下降行程長とは、等しくてもよいし、わずかに異なっていてもよい。後者の場合、例えば、ストライカピンが摺動可能な結合を備えている場合に、上昇行程の開始時のハンマーウエイトの精密な位置が、作業者がストライカピンをハウジング内に部分的に押し込むかどうかによって決まる。
一態様によれば、収容面は、衝撃軸を取り囲んで実質的に細長く、上部遠位端および反対側の下部遠位端を有する。
好ましくは、収容面の下端は、衝撃ハンマーをキャリアに取り付けるための取り付け位置の近くにある。
好ましくは、往復運動の動作サイクルの際に、収容面の上部および下部遠位端において、ハンマーウエイトは、それぞれ最大および最小のポテンシャルエネルギーを有する。
一態様によれば、ハウジングは、衝撃軸を取り囲んで実質的に細長く、上部遠位端および反対側の下部遠位端を有する。
好ましくは、収容面の下端は、衝撃ハンマーをキャリアに取り付けるための取り付け位置の近くにある。
衝撃ハンマーの分野における本発明の意義を充分に理解するために、適用可能な衝撃ハンマーの構成の範囲およびそれらの顕著な特徴の結果を、考慮することが有用である。
2つの主要な代案のウエイト構成、すなわち
ケース1.衝撃ハンマーのウエイト自体が遠位ツール端を有するハンマーを直接形成するウエイト構成、または
ケース2.衝撃ハンマーのウエイトがストライカピンに衝撃を加えるマスであり、ストライカピンが作業面に衝撃を加えるウエイト構成
が存在し、どちらも、それぞれの種類のウエイト構成に適用することができる2種類の構成にさらに分類することができる。
ケース1またはケース2のいずれにおいても、往復運動サイクルの下降行程を、
・持ち上げたウエイトを重力のもとでのみ落下させ、その運動エネルギーを作業面に伝達するように構成でき、あるいは
・ウエイトを作業面に向かって積極的に駆動して、衝突面に伝達される運動エネルギーを、重力のみによってもたらされる運動エネルギーと比べて増加させるように構成できる。
さらに、上述したハンマーウエイトおよび駆動機構の構成の各々における装置の有効性および効率は、以下の核となる性能パラメータ、すなわち
・装置の全体としての質量(および、サイズ);ならびに、装置の動作および操作に必要なキャリアのサイズおよび出力への相応する影響、
・必要とされる衝撃エネルギー;ならびに、必要な衝撃エネルギーレベルを生み出すためにハンマーウエイトに必要なハンマー質量および高さ、
・必要とされる衝撃エネルギーの頻度;ならびに、駆動機構および/またはハウジングへの悪影響を伴うことなく対応する時間枠内でウエイトを往復運動させる衝撃ハンマーの能力
に左右される。
従来からの重力式衝撃ハンマーの場合、上記のパラメータのいずれかを他のパラメータへの悪影響を伴うことなく改善するための随意選択肢が、きわめて限られる。エネルギー生成量は、通常は、ハンマーウエイトの重力加速度と鉛直落下距離との積から、摩擦、鉛直からの角度、またはリフト機構からの引き摺りによって引き起こされる損失を引き算したものである。作業面にもたらされる衝撃エネルギーは、すべてがウエイトの運動エネルギーによってもたらされ、ハンマーウエイトの質量と速度の2乗との積に比例する。したがって、既存の衝撃ハンマーにおける上記のパラメータの相互依存性は、総質量、衝撃エネルギー、または衝撃頻度を、残りの2つのパラメータの一方または両方に悪影響を及ぼすことなく大幅に改善することを、著しく妨げる。
従来からの重力式衝撃ハンマーにおけるパラメータの相互依存性の限界は、以下の求められる3つの主要な性能改善に関して、さらに充分に説明される。
・衝撃エネルギーを維持しつつハンマーの重量を減らすこと:所与の運動エネルギーをより軽量なハンマーウエイトを使用して達成することは、それに対応して衝撃ハンマーがより軽量になり、したがってキャリアをより軽量にできる可能性があるという潜在的利益をもたらす。しかしながら、これは、求められる衝突速度の必要な増加を達成するために、(落下高さを増加させるための)行程長の増加を必要とすると考えられる。しかしながら、往復運動周期および/または装置の使い勝手/操作性に悪影響を及ぼすことなく実現できる最大のウエイト高さには、実施上の制約が存在する。
追加の落下高さは、追加の装置構造を必然的に必要とし、結果として、キャリアが支えるべき質量を増やす。さらに、距離の増加にもかかわらず同じリフト時間を維持するために、より強力な駆動機構を使用することで、装置の重量および費用が容赦なく増加する。あるいは、同じ出力の駆動機構を使用すると、サイクル時間が長くなると考えられる。さらに、ハンマーウエイトは、往復運動経路にて再び戻る前に上部行程移行において停止しなければならないため、非現実的なほどに頑丈でますます大柄な衝撃吸収用の緩衝器を必要とすることなくウエイトを停止まで減速させるために、実行できるハンマーウエイトの上昇速度に不可避の限界が存在する。そのような緩衝器がないならば、アセンブリハウジングの高さを、重力の作用および駆動機構の摩擦のみによってハンマーウエイトを減速させることができるように、さらにもっと高くしなければならない。
すでに述べたように、これは、結果として、追加の必要なウエイトの移動距離ゆえに、より強力な駆動機構の利益を無効にし、達成可能な衝撃頻度をさらに低下させる。このように、ハンマー重量の軽減による利益が、衝撃頻度の減少、使い勝手/操作性の低下、および上述の他の重量増加によって弱められてしまう。
・ハンマーの重量を増加させることなく衝撃エネルギーを大きくする:落下高さを大きく(上述した同じ付随の欠点を伴う)しない限り、従来からの衝撃ハンマーの衝撃エネルギーをハンマー重量を増やさずに増大させることは、ほぼ不可能である。
・ハンマーの重量を減らさずに衝撃頻度を増やす:ハンマーの重量を減らさずに衝撃頻度を増すためには、落下高さを減らさなければならず、あるいは駆動機構のリフト速度を高めなければならない。しかしながら、前者の場合、衝撃エネルギーはそれに応じて減少する。後者の場合、高くなったハンマーウエイトの速度を下降行程の前に停止させる必要があるという困難が、依然として存在する。上述のように、これは、より大きな落下高さおよび/または緩衝器を必要とし、どちらも総重量を増加させると考えられる。
これらの要因が、重力式衝撃ハンマーのウエイトの衝突速度を高める別の方法を奨励する。そのような方法の1つは、下降行程においても駆動機構を利用して下向きの力を加えること、すなわち下降駆動機構である。第2の方法は、上昇行程においてウエイトを持ち上げる際に利用可能な駆動機構からの余剰の未利用の力を蓄え、衝撃の下降行程において使用することで、第1の方法を補う。これらの方法は、どちらも、ハンマーの重量の削減、上昇高さの低減、衝撃エネルギーの増加、または往復運動周期の短縮を含む衝撃ハンマーパラメータのうちの1つ以上を好都合に変更する能力を提供する。
これらの方法はどちらも、特許文献7および9にそれぞれ記載された本発明の発明者の先行の発明において取り組みがなされている。これらの方法のどちらも上述の利点をもたらすが、下降駆動機構およびエネルギー貯蔵コンポーネントならびに下降行程におけるウエイトへの結合の手段は、本質的に装置の複雑さおよび重量を増す。
本明細書に記載の装置は、本発明の発明者の上述の両方の方法と同様の利点をもたらすだけでなく、それらを装置の重量または複雑さを増すことなく達成する。好都合には、本明細書に記載の装置を、随意により、上述の方法の一方または両方に加えて使用して、さらに改善された装置をもたらすことができる。
往復運動経路の上昇行程におけるウエイトの上昇時に真空チャンバ内に真空を作り出すことで、真空チャンバと大気との間の圧力差に起因する対応する反対向きの力が生じる。ウエイトは往復運動経路へと拘束されているため、ウエイトに加わる大気圧の力は、往復運動経路に沿って下方に向かい、ハンマーウエイトに作用する重力と合成される。
しかしながら、(ウエイトを介して)真空チャンバの真空ピストン面に加わる大気圧は、キャリアまたは駆動機構からのいかなる追加のエネルギーも必要とせずに、下降行程に作用する。また、真空チャンバアセンブリは、追加の外部貯蔵装置の追加の重量および複雑さを必要としない。とくに、無視できる程度であるシーリングの重量を除き、真空チャンバ自体は、必ずしも装置の質量を増やさない。ハンマーウエイトおよび衝撃ハンマーの関連のハウジングは、ハンマーウエイトの下方にきわめて大きな真空の発生を可能にするかなりの断面を有する。
したがって、衝撃エネルギー、時間あたりのトン数発生速度、または衝撃ハンマー重量などのパラメータの改善を、残りの衝撃ハンマー性能変数を実質的に一定に保ちつつ個々に確認することによって、先行技術の重力のみの衝撃ハンマーに対する本明細書に記載の衝撃ハンマーの比較評価を行うことが可能である。主な例として、衝撃ハンマーの軽量化(ひいては、より軽量な掘削機を使用できることによるコスト節約)の利点を比較するために、比較される衝撃ハンマーが、例えば同じ衝撃エネルギーまたは他の適切な性能指標を示すことが必要である。関連のキャリア/掘削機の全体的なコストに対する衝撃ハンマーの軽量化の重要性は、次のように説明される。
掘削機市場は、充分に確立されており、商業的、伝統的、および慣習的理由から、掘削機は、指定されたバンドまたはクラスに該当する仕様で製造される。とくに、掘削機は、主として、以下のクラスに該当する総重量にて構成されている。
・20〜25トン
・30〜36トン
・40〜55トン
・65〜80トン
・100〜120トン
各々のクラスは、大きな重量範囲を含んでいるが、掘削機のコストは、個々の重量によって直接的に左右される。したがって、掘削機の購入者は、必要とされる作業を実行することができる所与のクラス内で最も軽量な掘削機を選択するように強く動機付けられる。例えば、56トンの掘削機を必要とするアタッチメントを有する作業者/購入者は、約10米ドル/kgのコストを被る可能性があり、したがって理論上の56トンの掘削機のコストは、570,000米ドルになるはずである。しかしながら、作業者は実際にはコストが650,000米ドルである65トンの掘削機を使用する必要があり、これは、より軽量なクラスからの掘削機に比べて14%のコスト増である。商業的な実際の現実は、クラスの重量境界の限界に精密に位置する掘削機の入手可能性によってさらに複雑であり、作業者はさらに重い掘削機の使用を強いられる。さらに、キャリアのキログラム当たりのコストは、異なる重量クラスの間で均一ではなく、むしろ重いキャリアクラス(とくには、40トン超)について、利用可能性が限られているため、不釣り合いに増加する。このように、必要な最軽量の掘削機を使用してコストを節約することが、最も重要であると理解することができる。
キャリアの重量と任意のアタッチメントについてのキャリアの重量支持能力との間の相互関係は、この技術分野において周知であり、これにより、比例関係において、キャリア(典型的には、掘削機)はアタッチメントの重量の少なくとも6〜7倍の重量でなければならない。したがって、衝撃ハンマーなどのアタッチメントの軽量化は、アタッチメントの操作に必要な掘削機の重量に、対応する6〜7倍の削減を生み出す可能性を有し得る。以下に、掘削機の重量クラスと、より高い重量クラスからの移行に必要な軽量化との比較を示す。
表1から、あらゆるクラスにおいて、約11〜20%の間の衝撃ハンマー総重量の軽量化が、必要とされる掘削機をより軽量なクラスに変更するために潜在的に充分であることを、見て取ることができる。これらの潜在的な重量の削減は、掘削機クラスの隣接する限界間の移行に必要な最小限の軽量化に基づく。したがって、上記の表は、より軽量なクラスの掘削機を使用できるというきわめて有益なコスト節約につながるアタッチメントの軽量化の最小範囲を本質的に概説している。
さらに大きな軽量化は、作業者がクラス内のより重い掘削機の大幅に広い選択項目から選択を行うことを可能にすると考えられる。実際には、任意の所与の時点/場所における利用可能な掘削機の選択は、最適な重量の掘削機の使用を容易に妨げ、より重い機械の使用を強いる可能性がある。さらに、掘削機の各クラスにおいて、重量帯の中央の重量を有する機械の方が、重量帯の周辺の重量を有する機械よりもはるかに多い。したがって、次のクラスの境界の充分に内側の掘削機の使用を可能にする衝撃ハンマーの軽量化は、掘削機の重量クラスを単にまたぐにすぎない軽量化と比べ、不釣り合いな利益をもたらす。このような軽量化のための本発明の潜在的可能性は、多数の他の性能パラメータに加えて、先行技術との比較において以下に例示される。
当然ながら、上述したように、軽量化自体は、単に衝撃ハンマーの他の性能パラメータに妥協することにより、さまざまな手段によって達成可能である。したがって、意味のある評価は、例えば衝撃ハンマーの重量などの単一のパラメータの先行技術との比較において、特定の重要なパラメータを固定することによってのみ可能である。
したがって、表2〜表3(付録を参照)が、真空アシスト衝撃ハンマーの一実施形態の3つの異なる衝撃ハンマーウエイトについて、最良の性能の同等の先行技術の重力のみの衝撃ハンマーとの比較を示している。挙げられている先行技術のハンマーは、上記の重量クラスの掘削機を必要とする市販の最上の性能の衝撃ハンマーである。DX900およびDX1800は、重力のみのハンマーウエイトをストライカピンへと落下させ、ストライカピンで作業面に衝撃を加えるように構成された異なるサイズ/重量の衝撃ハンマーである。本発明の発明者は、両方のDX装置の創作者である。両方のDX衝撃ハンマーが、本発明に最も近い性能の競争相手を呈するが、SS80およびSS150の形態のさらなる先行技術が、適切な業界の状況を示すために含まれる。SS80およびSS150は、Surestrike International,Incによって製造され、やはりストライカピンへと落下する重力のみのハンマーウエイトによって同様に構成された装置である。
上記の表2および表3(付録を参照)は、実際の先行技術の重力のみの衝撃ハンマーおよび本発明による真空アシスト衝撃ハンマーの重要な物理的パラメータおよび性能パラメータを詳しく示している。先行技術の衝撃ハンマーは、それらの同等なハンマーウエイト質量および行程長ゆえに比較用として選択されている。当然ながら、XT1000、XT2000、およびXT4000と標記された本明細書に開示の実施形態は、とくに先行技術の衝撃ハンマーとの比較を容易にするように構成されているわけではなく、したがって衝撃エネルギーおよび生産性などのいくつかの点で異なっている。本発明の真空アシストの利点の1つは、性能の改善が、異なるサイズの衝撃ハンマーへと本質的に拡大縮小可能であることである。したがって、以下の表4および表5は、先行技術の重力のみの衝撃ハンマーの特定のパラメータに一致するように精密に構成された真空アシスト衝撃ハンマー(1〜8で示されている)について作成されている。
表4(付録を参照)は、先行技術のDX900、SS80、DX188、およびSS150と、同じ衝撃ハンマー総重量(したがって、キャリア重量)および行程長を有する真空衝撃ハンマー1〜4とを比較しており、それぞれ105%、260%、183%、および206%の衝撃エネルギーの改善がもたらされている。鉛直な衝撃軸における生産速度の相応の改善は、それぞれ325%、695%、337%、および505%でさらにもっと異なる。45°の衝撃軸の傾きにおいて、生産速度の改善は、それぞれ712%、1,394%、727%、および1,045%へとさらに大きくなる。
表5(付録を参照)は、衝撃エネルギーを等しくしたときの上記の先行技術の衝撃ハンマーと本発明の真空衝撃ハンマー(5〜8)との間の重量の差に注目している。本発明の衝撃ハンマー(5〜8)とDX900、SS80、DX188、およびSS150との間で得られた重量削減は、それぞれ42%、60%、48%、および58%である。本発明の衝撃ハンマー5〜8は、より軽量なキャリアをより短いサイクル時間(他の箇所でさらに充分に検討する)とともに使用することができる結果として、DX900、SS80、DX188、およびSS150のコストに対してそれぞれ65%、81%、69%、および76%の削減という(鉛直な衝撃軸の向きにおける)生産1時間当たりのトン当たりのキャリアコストの改善をもたらす。
表6(付録を参照)は、生産性をこれまでの例において参照したものと同じ先行技術の衝撃ハンマーのそれぞれと同じにした本発明の衝撃ハンマー(No.9〜12)のさらに4つの構成を示している。すでに見られたように、本発明は、同等の先行技術の衝撃ハンマーと比べて著しく軽い。
したがって、本発明が生産性において先行技術と名目上同一であるように構成されたとしても、その軽量化は、必要なキャリアのコストの大幅な節約、ならびに必要とされるハウジングおよびハンマーウエイトが相応に軽くて済むがゆえの製造コストの節約をもたらす。これらの節約は、鉛直に向けられた衝撃軸において、それぞれDX900、SS80、DX188、およびSS150に対して151%、345%、181%、および274%という真空衝撃ハンマーNo.9〜12による生産1時間当たりのトン当たりのキャリアコストの改善へと変換される。この改善は、45°における生産1時間当たりのトン当たりのキャリアコストの数値によって示されるように、傾斜した衝撃軸の向きにおいてさらに顕著である。
本明細書に記載の実施形態は、先行技術に対するきわめて大きな性能改善を達成するための手段を提供する。衝撃ハンマーの真空アシストは、より軽量なハンマーウエイトの使用を可能にし、これは、衝撃ハンマー自体の材料および製造コストを低減するだけでなく、より軽量な掘削機を使用することに関連する運転コストも低減する。
本発明と先行技術との間の大差は、より控えめな改善(以下に詳述する)であっても本発明の実施形態によってもたらされる本発明の利点の明確な現れを呈するような大差である。
好ましくは、衝撃ハンマーは、
・3.6トンまでの装置総重量において、少なくとも70キロジュールの衝撃エネルギー、
・3.6トンまでの装置総重量で、重量が4.5〜6.5トンの間である重力のみの衝撃ハンマーと同等以上の衝撃エネルギーを出力、
・3.6トンまでの装置総重量で、30〜36トンのキャリアを必要とする重力のみの衝撃ハンマーと同等以上の衝撃エネルギーを出力、
・6.0トンまでの装置総重量において、少なくとも150キロジュールの衝撃エネルギー、
・6.0トンまでの装置総重量で、重量が8〜11トンの間である重力のみの衝撃ハンマーと同等以上の衝撃エネルギーを出力、
・6.0トンまでの装置総重量で、65〜80トンのキャリアを必要とする重力のみの衝撃ハンマーと同等以上の衝撃エネルギーを出力、
・11トンまでの装置総重量において、少なくとも270キロジュールの衝撃エネルギー、
・11トンまでの装置総重量で、重量が15〜20トンの間である重力のみの衝撃ハンマーと同等以上の衝撃エネルギーを出力、
・11トンまでの装置総重量で、65〜80トンのキャリアを必要とする重力衝撃ハンマーが出力する衝撃エネルギーの少なくとも50%増に相当する衝撃エネルギーを出力
のうちの1つ以上にて構成される。
掘削機の典型的な資本コストは、おおむねキロ当たり10米ドルまたは6.25ユーロであるため、上記の構成のいずれも、とりわけより重いクラスの掘削機において上述のようにコストが不釣り合いに高くなることに鑑みて、顕著なコスト削減をもたらすことがすぐに分かる。
やはり上記で明らかに実証されているように、作業面への必要な衝撃エネルギーを達成するために、可能な限り最も軽い衝撃ハンマー重量を利用することが、きわめて望ましい。ハンマーウエイト自体が衝撃ハンマー装置の総重量の支配的要因であるため、より軽量なハンマーウエイトが、後で説明される多数の結果的な重量削減(例えば、収容面/ハウジングが軽くて済む)とともに、より軽い装置総重量に直接貢献する。
したがって、本発明の実施形態は、下方駆動機構の使用によって生じる重量増加を伴うことなく、下降行程においてウエイトへと超重力(重力よりも大きい力)を加えることを可能にする。
従来からの重力のみの衝撃ハンマーに対する本発明の実施形態のさらに別の利点は、非鉛直な衝撃軸の向きでの動作における大幅に改善された性能能力である。典型的には、重力のみの衝撃ハンマーは、傾けられるにつれて、有効落下高さが減少する一方で、ハンマーウエイトが周期的な動作においてハウジングにますます支えられるようになるため、摩擦に起因する抵抗が増大する。衝撃軸の鉛直から傾斜角度が60°を超えると、典型的には、重力のみのハンマーにおいては、往復運動するハンマーウエイトが動かなくなってしまう。
しかしながら、衝撃ハンマーの真空アシストによってもたらされるポテンシャルエネルギーは、向きの変化によって減少することはなく、反対に、上向きを含む衝撃軸のいかなる向きでも、変化しないままである。さらに、真空効果は、衝撃ハンマーの質量を増やすことがないため、衝撃ハンマーが傾けられたとき、真空に起因する収容面との摩擦の増加は存在しない。したがって、衝撃エネルギーのうちの真空によって生み出される部分は、傾けられた衝撃ハンマーにおいて摩擦を増やすことなく、より大きな衝撃エネルギーをもたらすがゆえに、傾けられた真空アシスト衝撃ハンマーの総摩擦損失は、同じ衝撃エネルギーを可能にする従来からの重力のみの衝撃ハンマーと比べてはるかに少ない。
数値例にて性能上の利点を説明するために、表8(付録を参照)は、0°および45°の両方の衝撃軸の傾斜において、重力のみの衝撃ハンマーを、真空アシスト衝撃ハンマーの形態の本発明の実施形態と比較している。
上記の比較において分かるように、鉛直な衝撃軸および理論上等しい衝撃エネルギー(30,000J)であっても、重力のみの衝撃ハンマーは、より大きなエネルギー損失を招き、すなわちエネルギー損失が、真空アシスト衝撃ハンマーにおける1,600Jと比較して、4,500Jである。この大きな損失は、より大きなハンマーウエイトによって生じるより大きな摩擦と、より大きい空気変位損失との直接的な結果である。この差は、衝撃軸の傾斜が大きくなるにつれて著しく増加する。衝撃軸の傾斜が45°であるとき、重力のみの衝撃ハンマーおよび真空アシスト衝撃ハンマーの摩擦および空気変位によるエネルギー損失は、今やそれぞれ6,360Jおよび2,350Jであることを見て取ることができる。このように、真空アシスト式衝撃ハンマーは、衝撃軸の傾斜が0°であるとき、重力のみの衝撃ハンマーによって行われる仕事の115%を実行することができ、衝撃軸の傾斜が45°になると194%に増加する。この差は、重力のみの衝撃ハンマーが完全に機能しなくなる点(約65〜70°)まで、傾斜が増加するにつれてますます顕著になる。
好ましくは、衝撃ハンマーは、0°から少なくとも60°までの鉛直からの衝撃軸の傾斜角度で動作可能であるように構成されている。
一実施形態において、鉛直からの動作可能な衝撃軸の傾斜角度は、0〜90°である。
さらなる実施形態において、鉛直からの動作可能な衝撃軸の傾斜角度は、0〜180°である。
一実施形態において、最大の重力によるポテンシャルエネルギーは、最大の真空チャンバによるポテンシャルエネルギーよりも小さい。
好ましくは、ハンマーウエイトは、ストライカピンの長手軸に実質的に同軸な衝撃軸に沿ってストライカピンの被駆動端に衝突する。
好ましくは、ストライカピンは、衝撃端がハウジングから突出するように、ノーズブロックにおいてハウジング内に位置することができ、衝撃吸装置は、ノーズブロックの内部でストライカピンに結合される。
本発明の別の態様によれば、実質的に上述したとおりの衝撃ハンマーを移動式のキャリアによって支持されて備える移動式衝撃ハンマーが提供され、この衝撃ハンマーは、使用時に、0°から少なくとも45°、好ましくは少なくとも60°の鉛直からの衝撃軸の傾斜角度で動作可能である。
好ましくは、移動式衝撃ハンマーは、ハンマーウエイトの往復運動サイクル毎に少なくとも5000ジュールの衝撃エネルギーを与えるように構成される。
このような傾斜角度で動作できる能力は、狭い領域での作業、急峻な岩壁の付近での作業、トンネル掘削、溝掘り、などの重力のみの衝撃ハンマーでは実行不可能な用途における作業を可能にする。
本発明の別の態様によれば、移動式衝撃ハンマーは、この衝撃ハンマーが支持の移動式キャリアの質量と実質的に等しいか、あるいはそれ以上であるように構成される。
さらなる実施形態によれば、衝撃ハンマーは、遠隔操作式および/またはロボット式のトンネル掘削衝撃ハンマーとして構成される。
本発明は、専用のロボット式トンネル掘削衝撃ハンマーが、作業者を危険に曝すデブリの落下の恐れなく、浅い衝撃角度で動作することを可能にする。当然ながら、水平に近い衝撃軸の角度での動作は、衝撃エネルギーの大部分(>80%)を真空効果によって発生させることを必要とし、したがって大きな重量対真空表面積比を必要とする。
理解されるように、衝撃ハンマーが任意の上向き傾斜で動作するように意図される場合、ハンマーウエイトは、索、拘束具、リース、などを備えることができる。このようなハンマーウエイトの拘束は、駆動機構のコンポーネントを傷める可能性および危険を呈する可能性がある真空チャンバのシーリングの不具合の場合のハウジングからのウエイトの滑落を、防止すると考えられる。また、トンネル掘削作業および/または60°超での他の対象への衝撃印加作業が可能な本発明の衝撃ハンマーが、作業の個々の状況に応じて、必ずしもロボット式および/または遠隔制御式でなくてもよいことを、理解できるであろう。本発明の真空アシスト衝撃ハンマーを備える適切に保護された人の操作による掘削機も、このような状況において使用可能である。
好ましくは、駆動機構は、往復運動軸に沿ってハンマーウエイトを上昇させるように動作可能な上昇行程駆動機構である。
好ましくは、駆動機構は、可撓コネクタによってハンマーウエイトに接続された駆動部を含む。可撓コネクタは、ベルト、ケーブル、環索、チェーン、ロープ、ワイヤ、ライン、または他の充分に強い可撓性の接続部を含むことができる。
好ましくは、駆動部は、ハウジングの上部遠位端よりも下方に配置される。
好ましくは、駆動部は、重心をハウジングの上部遠位端とストライカピンの被駆動端との間に位置させてハンマーウエイトの上昇行程の終わりよりも下方に位置する。
好ましくは、駆動部は、重心を収容面の遠位端の間に位置させてハンマーウエイトの上昇行程の終わりよりも下方に位置する。
好ましくは、可撓コネクタは、ハウジングの上部遠位端に位置する少なくとも1つのプーリの周囲を通過し、駆動部は、プーリの周囲の可撓コネクタを介してハンマーウエイトを上方へと引っ張るように構成される。
駆動部は、直線往復運動駆動部である、請求項1に記載の衝撃ハンマー。
一態様によれば、駆動機構は、好ましくは、重心を収容面の遠位端の間に位置させてハンマーウエイトの上昇行程の終わりよりも下方に位置する。
好ましくは、駆動機構は、重心をハウジングの遠位端とストライカピンの被駆動端との間に位置させてハンマーウエイトの上昇行程の終わりよりも下方に位置する。
一実施形態によれば、駆動機構は、
・駆動部と、
・少なくとも1つの環索と、
・少なくとも1つのシーブと
を含む。
好ましくは、駆動機構は、プーリおよび/またはウインチをさらに含む。好ましくは、駆動部は、(直接的に、あるいはプーリまたはウインチを介して)環索によってハンマーウエイトを引っ張るように構成され、ハウジングの上端のシーブの周囲で向きを変える油圧または空気圧ラムなどを含む。
このようにして、衝撃ハンマーは、緩衝器のマス、あるいは駆動機構のラム駆動部、圧力チャンバ、などをハウジング/収容面の上部遠位端に不都合にも加えることなく、傾けられた衝撃軸での動作において効果的な衝撃エネルギーレベルおよび低サイクル時間を提供することができる。これにより、衝撃ハンマーは、キャリアの取り付け点に過度の追加のトルク負荷を加えることなく、依然として従来からのキャリア/掘削機によって移動可能かつ操作可能である。
さらに、真空アシストを備えることで、所与の衝撃エネルギーの達成において、ハンマー重量の削減に加えて、またさらなる結果としての重量節約がもたらされる。
他の箇所で論じられるとおり、動作サイクルにおいて、下降行程の終わりに、ハンマーウエイトがストライカピンの被駆動端に衝突し、運動エネルギーがストライカピンを介して作業面に伝達される。
実際には、下記の事象など、ハンマーウエイトの運動エネルギーのすべてが作業面に伝達されるわけではない。
・作業者が衝撃端を作業面に接触させることなくストライカピンの被駆動端へとハンマーウエイトを落下させたときに、ハンマーウエイトの衝突が衝撃ハンマーを通過する相当の衝撃荷重をもたらし、衝撃ハンマーによって吸収される「ミスヒット」。
・たとえ作業面が打撃によって首尾よく砕けたとしても、衝撃によって吸収されるエネルギーがストライカピンおよびハンマーウエイトの運動エネルギーの一部でしかない可能性がある「オーバーヒット」。そのような場合、衝撃ハンマーへの結果としての影響は、「ミスヒット」に直接匹敵する。
・割れが生じるまでに複数回の衝撃を必要とし、したがってストライカピンまたはハンマーウエイトが破壊されていない作業面から跳ね返り得る作業面の性質。跳ね返るハンマーウエイトの方向は、主に衝撃軸に対して横方向の成分を含み、したがってハンマーウエイトを収容面に接触させる。
実際には、衝撃印加作業は、さまざまな傾きで行われ、衝撃軸を完全に鉛直にして実行されることはまれである。
このような横方向の衝撃からのハンマーウエイトと収容面との間の主な接触領域の位置は、ストライカピンに接触するときのハンマーウエイトに直接隣接する。したがって、ストライカピンとの衝突の時点におけるハンマーウエイトを取り囲む収容面および隣接するハンマーハウジングの横接触領域(本明細書において、ハウジング増強部分と称される)は、ハウジングの残りの部分と比べてさらに強化される。このように、本発明の実施形態は、衝撃軸に平行なハンマーウエイトのサイズの縮小ゆえにハウジング増強部分が短くて済むため、同じ衝撃エネルギーを発生する重力のみの衝撃ハンマーと比較して、さらなる軽量化を図ることができる。
さらなる態様によれば、真空アシスト衝撃ハンマーは、同等の衝撃エネルギーを発生させる同じ断面積の重力のみの衝撃ハンマーとの比較におけるハウジング重量の節約的低減を提供することができ、このハウジング重量の節約的低減は、衝撃軸に沿ったウエイトの寸法の差に比例する。
ハウジング重量の節約的低減は、下記を含むいくつかのさらなる要素ゆえのハンマーウエイトの体積サイズの縮小に比例する。
・真空アシスト衝撃ハンマーは、ハンマーウエイトの体積サイズがより小さいため、より短いハウジングおよび収容面で、衝撃軸に沿った同じハンマーウエイト移動距離を囲むことができる。
・真空アシスト衝撃ハンマーは、ハンマーウエイトの体積サイズがより小さく、質量が小さいため、これに比例してハウジング増強部分への横方向の衝撃力が小さく、したがって必要な増強が少ない。
・真空アシスト衝撃ハンマーは、(同等の横断面積のハンマーウエイトにおいて)衝撃軸に平行なハンマーウエイトの長さが短いため、ハンマーウエイトの横移動から生じる偶力がより小さく、したがって収容面との点荷重の横方向の衝突もより小さく、これに比例して必要な増強が少ない。
上述の理由のいずれか/すべてのために重力のみの衝撃ハンマーが必要とする追加の重量は、全体的な重量の増加がその値の6〜7倍を必要な掘削機の重量に加算する結果となるため、本発明の実施形態と比べた相対的な性能の欠点をさらに悪化させる。
したがって、好ましくは、衝撃軸に沿ったウエイトの寸法の差に比例するハウジング重量の節約的低減は、
・ハンマーウエイト上昇行程長の差に対応するハウジング長の差によるハウジング重量の節約、
・上昇行程の出発位置から衝撃軸に沿ったウエイトの寸法に少なくとも実質的に等しい長さにわたるハウジング増強部分の衝撃軸に平行に延びる寸法の差に比例したハウジング重量の節約、および/または
・上昇行程の出発位置から衝撃軸に沿ったウエイトの寸法に少なくとも実質的に等しい長さにわたるハウジング増強部分の衝撃軸に対して横方向に延びる寸法の差に起因するハウジング重量の節約
のうちの少なくとも1つを含む。
本発明の実施形態のまたさらなる利点は、動作サイクル時間の改善に関する。すでに述べたように、動作時、装置の完全な往復運動サイクルは、上昇行程、上部行程移行、下降行程、および下部行程移行からなる4つの基本段階を含む。往復運動サイクルの支配的な時間成分は、上部行程移行が典型的には瞬時であることに鑑みて、上昇行程および下降行程である。下部行程移行のタイミングは、ハンマーウエイトが最初の衝突後の跳ね返りを停止したことを保証するために必要な時間によって左右されるが、跳ね返りの大きさも、真空チャンバ内に生成された対応する真空の影響によって弱められる。
しかしながら、単純に上昇速度を高めることへの障害は、上昇行程の終わりにおいてハンマーウエイトを停止させるという問題である。駆動機構が上昇行程においてハンマーウエイトを積極的に上昇させることを止めた後に、運動量が、重力ならびに駆動機構および収容面との接触からの摩擦に逆らって、ハンマーウエイトの運動を継続するように作用する。したがって、ハンマーウエイトの上昇速度を大きくすると、駆動機構による積極的な持ち上げの終わりにおけるハンマーウエイトの運動量が大きくなり、ウエイトをウエイトが減速して停止するまで収容および案内するために、より長い収容面が必要になる。
ハンマーウエイトをより短い距離で減速させるために緩衝器または何らかの形態のクッションを追加するという代案も、ほとんど魅力的でない。ハンマーウエイトの大きな質量ゆえに、意味のある効果を提供するため、および充分に堅牢であるために、緩衝器はかなりのものである必要がある。どちらの代案によっても、ハウジングの上端に加えられる追加の重量は、著しい性能への影響を呈する。追加の重量がキャリアへの衝撃ハンマーの取り付けに作用させる追加のトルクは、追加のハウジング長の直接の重量の不利益に加えて、対応する強化を必要とする。
より重要なことに、物理的な緩衝器へのハンマーウエイトの衝撃は、作業者による作業面上の所望の位置(例えば、岩石の中心、または亀裂、など)へのストライカピンの配置を乱すことが避けられず、時間のかかる再配置を必要にし、さらには/あるいは望ましくない「ミスヒット」を引き起こす。
下降行程の継続時間は、単純に有効落下高さと、ハンマーウエイトとハウジングの収容面との間の反対向きの摩擦力と、駆動機構の慣性との関数である。やはり上述したように、衝撃ハンマーの傾きが鉛直な衝撃軸から離れるにつれて、ハンマーウエイトの有効落下高さが減少し、反対向きの摩擦力が増加することを、理解できるであろう。したがって、下降行程の可能な最小の継続時間は、重力のもとで落下する拘束のないウエイトの自由落下時間よりも短くはなり得ない。したがって、実際には、上述の摩擦による拘束ゆえに、下降行程の継続時間は常にこれよりも長い。
上述の両方の制約とは対照的に、真空アシストの追加は、上述の欠点のいずれも伴うことなく、全体としてのサイクル時間の明らかな短縮をもたらす。真空チャンバへの大気圧は、向きにかかわらず、真空チャンバを圧縮するようにウエイトを駆動するように作用する。したがって、上昇行程において、駆動機構によるハンマーウエイトの上昇の停止後に、真空チャンバの膨張(すなわち、衝撃軸に沿って上昇するハンマーウエイトの継続した移動)に逆らう力が、重力の作用に加えて、ハンマーウエイトを減速させて停止させるように依然として働く。同様に、下降行程において、真空チャンバに作用する大気の復元力は、重力に加えて、ハンマーウエイトへの力を増加させる。この明白かつ大きな利点を説明するために、表9が、5mという同じ落下高さ、同じハンマーウエイト、および同じ駆動機構を有しており、本発明の衝撃ハンマーが真空アシストを備える点においてのみ異なっている同等の衝撃ハンマー間の比較を行っている。重力のみの衝撃ハンマーおよび真空アシスト衝撃ハンマーの数値は、両方とも、典型的な引き摺り要因を有する鉛直に向けられた衝撃軸から得られている。表9の例において、真空対重量比は2:1である。より大きな真空比により、それに対応する短いサイクル時間をもたらすことができることを、理解できるであろう。
実際には、ハンマーウエイトについて選択される停止距離は、他の衝撃ハンマー性能基準の重要性に応じて、200mmから500mmまでさまざまであり得る。しかしながら、意味のある比較を保証するために、重力のみの衝撃ハンマーおよび真空アシスト衝撃ハンマーの停止距離の間の一致は、3m/sおよび5m/sというそれぞれのハンマーウエイト速度で達成される420mmである。
したがって、実際の最小サイクル時間が、重力のみの衝撃ハンマーの場合に約3.27秒であり、真空アシスト衝撃ハンマーの場合に約1.91秒であると、理解することができる。このサイクル時間の短縮は、真空アシスト衝撃ハンマーに重力のみ衝撃ハンマーに対する171%の改善をもたらす。衝撃ハンマーの生産性は作業面への打撃の頻度に直接的に関係するため、このサイクル時間の短縮は、生産性の向上に直接的につながる。
ハンマーウエイトへの駆動機構の作用の停止後の上昇行程におけるハンマーウエイトの運動の減速または制動における真空の効果は、本質的に緩衝作用をもたらす。真空によるポテンシャルエネルギーの大きさは、上昇行程の終わりにおいてピークにある。しかしながら、シーリングの損失にもかかわらず、真空チャンバに対して(ハンマーウエイトを介して)作用する大気圧の力は、上昇行程の全体を通して一定であり、したがって駆動機構がハンマーウエイトを積極的に進めることを止めた後でさえ、ハンマーウエイトの運動に制動作用を加え続ける。したがって、大気の圧力差が、重力の減速効果と複合して、サイクルのこの部分からサイクル時間を大幅に減少させるように作用する。
このような強い制動効果を物理的な緩衝システムで再現することには、非常に問題がある。第1に、ハウジングの上部遠位端に配置された追加の質量の位置が、衝撃ハンマーが運動時に掘削機の取り付けへと生じさせるトルク負荷を、激化させると考えられる。第2に、追加の重量の大きさは、上述したように、掘削機の重量に6〜7倍の増加を加えると考えられる。第3に、衝撃軸の傾きが大きくなると、重力の減速効果がさらに減少するので、さらに強力であり、したがってより重い緩衝器が必要になると考えられる。対照的に、真空による制動力は、角度の向きに影響されない。
一実施形態によれば、本発明は、衝撃ハンマーであり、
衝撃ハンマーは、
・内側側壁を有するハウジングと、
・直線状の衝撃軸に沿って往復移動することができるハンマーウエイトであって、ハンマーウエイトの往復移動の際に衝撃ハンマーの収容面と少なくとも部分的なシーリング接触をなすように構成および配置され、収容面はハウジングの内側側壁を含んでいるハンマーウエイトと、
・駆動機構と
を含み、
動作時に、鉛直に向けられたときの直線状の衝撃軸に沿ったハンマーウエイトの完全な往復運動サイクルが、
・ハンマーウエイトが、初期の被駆動部分と非駆動部分とからなるハンマーウエイト上昇行程長に等しい距離にわたって衝撃軸に沿って移動し、ハンマーウエイトは、駆動機構によって下方の初期位置から被駆動部分に沿って移動させられた後に、非駆動部分に沿ってハウジングの遠位端に位置する最終的な上方位置に移動する上昇行程と、
・ハンマーウエイトの移動が、衝撃軸に沿った上昇行程に対して往復運動方向を反対にする前に停止する上部行程移行と、
・ハンマーウエイトが、ハウジングの遠位端に位置する上方位置から下方位置までのハンマーウエイト下降行程長に等しい距離にわたって、再び衝撃軸に沿って移動する下降行程と、
・ハンマーウエイトの移動が、後の上昇行程に先立って停止される下部行程移行と
で構成される4つの段階を含み、
衝撃ハンマーは、
・ハンマーウエイトと収容面の少なくとも一部分との間に形成された可変容積の真空チャンバ
を含む大気上昇行程ブレーキをさらに含み、
上昇行程における衝撃軸に沿ったハンマーウエイトの移動が、真空チャンバと衝撃ハンマー大気との間に圧力差を生じさせ、上昇行程大気ブレーキは、非駆動部分におけるハンマーウエイトの移動に対して圧力差を印加して、ハンマーウエイトの上昇行程の移動を減速させる。
好ましくは、ハンマーウエイトの上面の少なくとも一部分は、大気に開放されている。
さらなる態様によれば、本発明は、上昇行程大気ブレーキを含む実質的に上述したとおりの移動式キャリアおよび真空アシスト衝撃ハンマーを提供し、衝撃ハンマーは、0°から少なくとも45°、好ましくは少なくとも60°の鉛直からの衝撃軸の傾斜角度で動作可能である。
本明細書において参照される本発明の多数の構成から気付くことができるとおり、真の多用途性が、それ自体、真空アシストハンマーの注目すべき特徴である。衝撃エネルギーを増やし、重量を削減し、装置をコンパクトにし、運転および製造コストを削減し、生産性を高め、サイクル時間を短くする、などの真空アシストの能力は、種々の作業者の優先順位に適するように衝撃ハンマーを最適に設定するために設計者にとって利用可能な広範囲の可変のパラメータを示す。以下の比較表が、さまざまな性能の優先順位を有する作業者に本発明が対応するいくつかの幅広くさまざまな状況を示す。各々の状況における本発明の真空アシスト衝撃ハンマーが、最も近い性能の先行技術の重力のみの衝撃ハンマーと比較される。先行技術の衝撃ハンマーのいずれも、それぞれの性能基準を満たすうえで、ほとんど太刀打ちできないことに注意すべきである。
図面から分かるように、本発明について考えられるさまざまな表出ならびに先行技術に対するその利点の実装の柔軟性は、それ自体が独特の利点を呈する。
上述したように、表1が、(一定の衝撃エネルギーにおいて)所与の重量クラス内の最も軽い掘削機によって運転される衝撃ハンマーを隣接するより軽量なクラス内の最も重い掘削機によって運転できるようにするために必要な最小限の衝撃ハンマーの軽量化を示している。これは、運転におけるきわめて大きな経済的節約をもたらすが、作業者に最大限の理論的汎用性を与えるために、理想的な重量削減は、或るクラスの重量下限と次のクラスの重量上限との間の移行を可能にすると考えられる。
例として、表11が、2つの最も重い最も強力な重力のみの衝撃ハンマー、すなわちSS150およびDX1800のそれぞれの時間当たりの生産トン数に依然として匹敵しつつ、可能な限り最も軽い掘削機で担持することができる衝撃ハンマーを求める作業者の状況を示している。時間当たりの生産トン数が、衝撃印加の作業における生産性の主要な指標であるが、キャリアのコストが、単一の最大の運転コストである。
したがって、前者を同等に維持しつつ、後者を減らすことにより、本発明の一実施形態の真空アシスト衝撃ハンマー(XT1200と標記されている)は、著しく費用効果が高い。さらに、重量が3.9トンであるXT1200が、20〜25トンのクラスからの25トンのキャリアによって担持可能である一方で、先行技術のSS150およびDX1800ハンマーは、どちらも65〜80トンのクラスからのキャリアを必要とすることを、見て取ることができる。したがって、XT1200は、65トンおよび80トンのDX1800およびSS150と比べて完全に2クラス分は軽いキャリアしか必要とせず、キャリアのコスト削減はそれぞれ330,000ドルおよび480,000ドルである。XT1200の優位性は、傾斜した衝撃軸での生産トン数を考慮すると、実際にはさらにもっと顕著になる。表に示されるように、45°の傾斜においてXT1200はSS150およびDX1800の約2倍の出力を生む。
表12は、作業者がトンネル掘削または他の頭上の制限のもとで直面されるような5mの最大高さ制限を有する環境において衝撃ハンマーを動作させることを必要とする典型的な状況を示している。表12のすべての衝撃ハンマーは、ストライカピンの構成を備えており、ストライカピンの構成は、衝撃ハンマーの他の必要な部分とともに5mの高さすき間のうちの2mを占め、最大3mの上昇行程長を可能にしている。しかしながら、重力のみの衝撃ハンマーのウエイトの追加のサイズは、さらに1mを占める。したがって、重力のみの衝撃ハンマーは、最大鉛直上昇行程長が、真空アシスト衝撃ハンマーの3mと比較して、2mである。前述のように、重力のみの衝撃ハンマーは、衝撃軸を鉛直にして動作するときに最大の衝撃エネルギーおよびサイクル時間を生じる。表12は、重力のみのハンマーが、鉛直な向きにて33,354Jの最大衝撃エネルギーを生み、サイクル速度は15であることを示している。
しかしながら、より大きな重力衝撃ハンマーを非鉛直な衝撃軸に傾けて使用することは、損失がより低い衝撃エネルギーおよびより低いサイクル速度を依然としてもたらすため、無益である。一例として、45°に傾けられた2.82mの上昇行程長の衝撃ハンマーは、2mの上昇行程長のハンマーと同じ鉛直落下を有するが、12というサイクル速度で32,212Jの衝撃エネルギーしか生み出さず、すなわち直立の3mの重力のみの衝撃ハンマーよりも3.4%少ない。結果としての生産性も、それぞれ22から低下する。対照的に、45°に傾けられた真空アシスト式の4.24mの上昇行程長の衝撃ハンマー(3mの鉛直に向けられた重力アシスト衝撃ハンマーと同等のハンマーウエイト鉛直落下を有する)は、直立の3mの真空アシスト衝撃ハンマーよりも30%大きい衝撃エネルギーを生み、(より低いサイクル速度にもかかわらず)14%大きい生産性の向上を生む。さらに、45°に傾けられた真空アシスト衝撃ハンマーの生産性は、完全な条件において重力のみの衝撃ハンマーよりも568%も高い。したがって、作業者に、特別製作の短い衝撃ハンマーを注文する代わりに、単により大きな既存の真空アシスト衝撃ハンマーを使用するという随意選択肢が提供される。
表13は、オペレータの優先順位が、所与のキャリア重量に対する生産トン数の速度である状況を示している。このような状況は、騒音および/または交通規制によって衝撃印加の作業が限られた時間の機会に制限され、したがって大幅に重い衝撃ハンマー、およびそれに対応する重量がより大きく、より高価であり、入手性が悪いキャリアに頼ることなく、生産速度を高めることが重要とされる場合に存在し得る。
ここで、真空アシスト衝撃ハンマー(XT2000)が最も近い先行技術の重力のみの衝撃ハンマー(DX900)よりもわずかに軽く、必要なキャリアが40トンの代わりに36トンであるにもかかわらず、その生産性は、63トン/時と比較して315トン/時であり、すなわち5倍高速であることを、見て取ることができる。したがって、傾けられた動作角度において生産速度の差が大きくなる(296対31トン/時、すなわち9.5倍高速)ことを考慮しても、真空アシストハンマーは、想定される5日間の作業を1日で完了すると考えられる。
本発明のさらなる態様によれば、実質的に本明細書において上述したとおりの衝撃ハンマーを、往復運動周期、衝撃エネルギー、往復運動経路長、およびキャリア重量を含むグループのうちの少なくとも2つが重力のみの衝撃ハンマーと同等である対応する重力のみの衝撃ハンマーに対する衝撃ハンマー性能指標の以下の改善のうちの少なくとも1つを選択することによって構成する方法が提供され、
改善は、
・所与の往復運動周期、衝撃エネルギー、ハンマーウエイト、往復運動経路長、およびキャリア重量において、作業面に加える衝撃エネルギーがより大きいこと、
・所与の往復運動周期、衝撃エネルギー、キャリア重量、および往復運動経路長において、ハンマーウエイトがより軽いこと、
・所与のハンマーウエイト、往復運動周期、キャリア重量、および衝撃エネルギーにおいて、往復運動経路がより短いこと、
・所与の往復運動経路長、ハンマーウエイト、キャリア重量、および衝撃エネルギーにおいて、往復運動周期がより短いこと、および/または
・所与の往復運動衝撃エネルギー、経路長、ハンマーウエイト、および衝撃エネルギーにおいて、キャリア重量がより軽いこと
を含む。
上記の列挙がすべてを挙げ尽くしたものではなく、所望の性能結果に応じてパラメータの1つ以上の組み合わせをさまざまな程度に変化させてもよいことは、疑いもなく明らかである。
さらなる態様によれば、本発明は、往復運動周期、衝撃エネルギー、往復運動経路長、ハンマーウエイト、ハウジング重量、衝撃ハンマー重量、およびキャリア重量を含む性能指標を有する重力のみの衝撃ハンマーを改良する方法を提供でき、
この方法は、
重力のみの性能指標のうちの少なくとも2つを実質的に不変に保ちつつ実質的に本明細書において上述したとおりの真空チャンバを取り入れることによる
・往復運動周期の短縮、
・衝撃エネルギーの増大、
・往復運動経路長の短縮、
・キャリア重量の削減、
・ハンマーウエイトの削減、
・ハウジング重量の削減、
・衝撃ハンマー重量の削減、
・鉛直からの動作衝撃角度の増大
を含む改善のグループからの選択を含む。
すでに述べたように、重力ハンマーのエネルギー生成量は、通常は、ハンマーウエイトの重力加速度と落下距離との積から、摩擦、鉛直からの角度の逸脱、駆動機構からの引き摺り、およびハンマーウエイトの下方のガイド柱の下部の空気の圧縮によって引き起こされる損失を差し引いたものである。本発明の真空アシスト衝撃ハンマーの実施形態の場合、同じ力および損失が依然として当てはまる。真空チャンバ内に残留の空気または漏れによる空気が存在すると、そのような空気が上昇行程によって生成される真空の有効性を低下させるように作用する一方で、下降行程における空気の圧縮は、ハンマーウエイトの運動量を減速させる力を生む。真空チャンバ内に残る空気のこれらの明らかに有害な影響は、理想的には軽減される。
シーリングの損失および/または真空チャンバ内の残留空気の影響を考慮する前に、真空チャンバの形成に利用することができるシーリングの随意選択肢およびそれらの性能の結果を検討することが有用である。
下部真空シーリングの位置および構成は、衝撃ハンマーのウエイトが、自身の衝撃エネルギーをストライカピンを介して作業面に伝達する別個のウエイトとして構成されているか、あるいは作業面を直接打撃するためのツール端を備えて形成されているかに依存する。前者の場合、下部真空シーリングを、ハウジングの下部付近またはストライカピンアセンブリの周りのいずれかに形成することができる。後者の場合、下部真空シーリングは、上部真空シーリングよりも下方の位置においてハンマーウエイトと収容面との間に位置することができる。したがって、非ストライカピンの衝撃ハンマーの構成と併せて使用される場合、上部および下部の両方の真空シーリングについて、同じシーリングの構成を複製することが可能である。
どちらのウエイトの構成においても、ウエイトと収容面との間の移動は、シーリングが両者の間の相対的な摺動運動に対応できることを言外に要求する。シーリングを、ウエイト、ノーズブロック/ストライカピンアセンブリ、収容面、またはこれらの組み合わせに取り付けることができ、これらの変種は、後でさらに詳細に検討される。
上部真空シーリングを考えると、位置、構造、および構成は、収容面およびハンマーウエイトの制約ならびに要求される要求性能特性に応じてさまざまであってよい。上部真空シーリングをハンマーウエイト上に位置する(あるいは、ハンマーウエイトに取り付けられた)1つ以上のシールから形成することに、例えば下記のようないくつかの利点が存在する。
・衝撃軸に沿ったハンマーウエイトの移動距離は、ウエイト自体の長さよりも大きい。したがって、シールは、収容面に配置されるならばウエイトの移動距離にわたって延びる必要がある一方で、ウエイト上に配置されるシーリングは、衝撃軸の周りの単一の位置にのみ配置されればよい。
・ハンマーウエイトの移動経路に沿って収容面上に位置するシーリングは、衝撃吸収および耐摩耗の能力を備えないならば、ウエイトの横移動によって損傷を被り易い。対照的に、ハンマー上のシーリングは、横方向の衝撃吸収またはセンタリングの能力を用意することも必要とせずに、横方向のウエイトの移動を受け入れるように構成することが可能である。
・ウエイトをハウジングから取り外すことができるため、磨耗したシールの交換がより容易である。
・シールは、本質的に柔軟であり、通常はハウジングとは異なる材料で製作される。典型的には、衝撃ハンマーが使用され得る広い範囲の周囲温度および動作温度が存在する。シーリング材料およびハウジングの熱膨張係数は、典型的にはきわめて異なり、種々の温度においてそれらの形状を変化させる。この形状変化は、物理的に管理することが困難であり、シールがハウジングまたはハンマーウエイトのいずれかに良好に適合していないときは常に、シールの品質が損なわれる。
ハンマーウエイトとともに含まれるシーリングの性能特性は、ウエイトの質量、サイズ、衝撃軸に沿った速度、衝撃軸からの横方向の移動の程度、衝撃軸の向き、収容面の均一性、精度、および表面仕上げ、などにも依存し得る。
一態様によれば、ハンマーウエイトは、下部衝撃面と、上面と、少なくとも1つの側面とを含む。円柱形のハンマーが、ただ1つの「側」面を含むことを、理解すべきである。
ストライカピンを備える衝撃ハンマーの実施形態においては、下部衝撃面が使用時にストライカピンに衝突する一方で、非ストライカピンの衝撃ハンマーの実施形態においては、下部衝撃面が使用時に作業面に衝突することを、理解できるであろう。
また、ハンマーウエイトが、立方体、直方体、細長い実質的に矩形/直方体のプレートまたはブレードの構成、角柱、円柱、平行六面体、多面体、などを含む任意の好都合な形状をとり得ることも、理解できるであろう。
一態様によれば、上部真空シーリングは、ハンマーウエイトの側面を巡って周囲に位置する1つ以上のシールを含む。
好ましくは、シールは、ハンマーウエイトを横方向に包囲する少なくとも1つの実質的に中断のないシーリングを形成する。好ましくは、シーリングは、当接し、重なり合い、境界を共有し、噛み合い、嵌合し、さらには/あるいは近接する隣接したシールから形成されてよい。複数のシールを利用する実施形態において、1つ以上のシールが、異なる構成または寸法とされてよく、さらには/あるいはシーリングの提供に加えて別の機能または能力を備えてもよいことを、理解できるであろう。
一態様によれば、シールは、
・クッションスライド、
・中間要素への取り付け、保持、または付着、
・ハンマーウエイト、クッションスライド、および/または中間要素の凹部、ボイド、空間、開口部、または溝、などにおける保持、
・側面への直接取り付け、ならびに/あるいは
・上記の任意の組み合わせまたは順列
によってハンマーウエイトに結合される。
一態様によれば、シールは、可撓エラストマーから形成される。
さらなる態様によれば、シールは、プレロードによって収容面に接触するように付勢された剛体または弾性材料から形成される。プレロードは、これらに限られるわけではないが、圧縮性媒体、ばね、エラストマー、バッファ、などを含むいくつかの形態をとることができる。
一実施形態においては、保持によってハンマーウエイトに結合されたシールを、収容面と密に接触するように付勢することができる。この付勢は、ばねまたは同等物、圧縮性媒体、エラストマー、バッファ、などによってもたらすことができ、シールに衝撃軸から横方向外側および/または円周方向に作用することができる。
円柱形のハンマーウエイトを利用する実施形態において、円周方向の付勢は、隣接するシール間の1つ以上の交差部を介して加えられる。好ましくは、補助フィレットが、シールの交差部の間に気密の連続性をもたらすことで、収容面とハンマーウエイトとの間の実質的に連続的なシーリングを維持する。
2つ以上の頂点において接合された複数の側面を有するハンマーウエイトを利用する実施形態においては、円周方向の付勢を、頂点の間の交差部を介して加えることができる。
使用時に、衝撃ハンマーが非鉛直な向きにて動作させられる場合、保持によってハンマーウエイトに結合されたシーリングを、たとえハンマーウエイトが衝撃軸に対して横方向に変位したとしても収容面に密に接触するように依然として付勢することができる。
一態様によれば、シールの少なくとも一部が、一方向ベントをもたらすように構成される。さらなる実施形態においては、シールの大部分または全体が、一方向ベントをもたらすように構成される。一実施形態において、シールは、少なくとも1つの一方向ベントを含む。
好ましくは、クッションスライドは、複合クッションスライドである。
一態様によれば、ハンマーウエイトに、ハンマーウエイトの外面に位置する少なくとも1つの複合クッションスライドが取り付けられ、このクッションスライドは、
・コンポーネントの往復運動の際に装置の収容面と少なくとも部分的な摺動接触を行うように構成および配置された外面を備えて、所定の摩擦および/または耐摩耗の特性の材料から形成された外側の第1の層、および
・第1の層と往復運動コンポーネントとの間に位置し、所定の衝撃吸収特性を有する衝撃吸収材料で少なくとも部分的に形成された内側の第2の層
を含む。
好ましくは、第2の層は、第1の層に接続された少なくとも1つの表面と、ハンマーウエイトに接続された内面とを有する。
第1の層の外面は、好ましくは、第2の層よりも低摩擦の表面である。
本明細書において使用されるとき、「接続され」という用語は、第1および第2の層に関して、接続のための任意の可能な機構または方法を指し、これらに限られるわけではないが、付着、取り外し可能な接続部、嵌合する外形または造作、入れ子、クリップ、ねじ、ねじ山、カップリング、などを含む。
またさらなる態様によれば、上部真空シーリングは、少なくとも部分的または全体的に、クッションスライドによって直接もたらされる。
一態様によれば、1つ以上の中間要素が、衝撃面の下方および/または上面の上方においてハンマーウエイトに結合し、この中間要素は、使用時に中間要素が上部真空シーリングの少なくとも一部を形成するように、この中間要素の周縁を巡って位置する1つ以上のシールを収容面に密に接触させて含んでいる。中間要素は、プレート、ディスク、環状リング、などを含む種々の形態で構成することが可能である。衝撃面の下方のハンマーウエイトに結合した中間要素が、ハンマーウエイトとストライカピンとの間の妨げのない接触を可能にする中央開口を備えて構成されることは、容易に理解されるであろう。
中間要素のハンマーウエイトへの結合は、可撓性(ストラップ、ライン、リンク装置、カップリング、などを含む)であってよく、さらには/あるいは衝撃軸に対して平行な方向において実質的に剛直である一方で、衝撃軸に対して横方向に摺動可能であってよい。このような結合の構成は、例えば可撓リンク装置の形態のカップリングが移動の方向およびハンマーウエイトに対する中間要素の相対位置に応じてハンマーウエイトの移動によって往復運動経路に沿って押し引きされるなど、中間要素がハンマーウエイトの横方向移動に影響されることなく収容面との有効なシーリングを維持することを可能にする。
好ましくは、真空ピストン面は、ハンマーウエイトの一部分によって形成される。一実施形態において、真空ピストン面は、ハンマーウエイトの衝撃面を含む。クッションスライドを含むハンマーウエイトに取り付けられた可動シールが、真空ピストン面の一部を形成してもよいことを、理解できるであろう。
代案の実施形態によれば、真空ピストン面は、ハンマーウエイトの一部として一体的に形成されてもよく、あるいはハンマーウエイトの付属物を含んでもよい。好ましくは、真空ピストン面は、往復運動経路あるいは往復運動経路に平行または同軸な経路に沿って移動可能である。
使用時に、真空チャンバが上昇行程において膨張するとき、真空チャンバへの大気の進入が、シールまたは収容面の不完全、磨耗、または損傷、空中の残留デブリからの干渉、材料または設計の特性または限界、などに起因するシーリングの漏れによって生じ得る。限られた程度の漏れの存在は、実際には、要求される性能と製造および/または動作の現実性との間のバランスのとれた妥協点をもたらすために、意図的に取り入れられることもある。シーリングの漏れは、とりわけ典型的に関係する真空の持続時間がきわめて一時的(例えば、2〜4秒)であることに鑑みて、上昇行程の際に発生する真空の大きさに必ずしも大きな影響を有さない。たとえシーリングの漏れによって真空のレベルに例えば60%の低下などの大きな低下が生じたとしても、残りの40%の衝撃ハンマーへの真空のアシストは、以前として意味のある性能上の利点をもたらすと考えられる。
また、ハンマーウエイトの動きが届くことのないボイドの存在など、さまざまな理由で、上昇行程の開始前に真空チャンバ内に残留空気が存在する可能性がある。さらに、このような高速かつ高エネルギーの往復運動において完全に通過不能な真空チャンバのシールを達成することはきわめて困難であり、したがって、上昇行程において、上部真空シーリングおよび/または下部真空シーリングは、或る程度の空気が真空チャンバへと通過して真空チャンバの圧力を上昇させることを許すことができる。このような空気漏れの量は、シーリングの有効性、シーリングの面積、真空チャンバと大気との間の圧力差、およびシーリングに圧力差が印加される曝露時間を含むいくつかのパラメータに依存する。
より多くのシールおよびより柔軟なシールを使用することによって、漏れを最小限に抑えることができるが、これは本質的に摩擦を増加させ、そのような高速な往復運動において、このようなシールは、早期に損傷したり、あるいはハンマーウエイトの動きを妨げたりする可能性がある。したがって、シーリング効果と摩擦との間にバランスが必要である。好ましい実施形態において、ハンマーウエイトは、ゴムまたは他の「ソフト」なシールなどのきわめて有効なシールが、早期に損傷して機能できなくなるような速度および力で運動する。したがって、たとえ真空チャンバへの空気の漏れが多くなる可能性があるとしても、あまり効果的ではないが大きな摩擦荷重に耐えることができる「ハード」なシールを使用することが好ましい。
しかしながら、下降行程における真空チャンバの内部の空気の存在は、衝撃ハンマーによって達成可能な衝撃力に有害である。真空チャンバ内の空気は、圧力差を小さくし、下降行程の際にどんどん圧縮されることで、ハンマーウエイトの運動に対して減速力を加えるとともに、空気の圧縮に起因するかなりの有害な加熱効果をもたらす。
本発明は、真空チャンバに少なくとも1つの下降行程ベントを組み込むことによって、この重大な問題に対処する。下降行程ベントは、下降行程の少なくとも一部分において空気の排出を可能にするとともに、好ましくは上昇行程の少なくとも一部分、より好ましくは上昇行程の大部分または全体において、空気の進入を防止し、あるいは少なくとも制限する。
ベントは、好ましくは、下降行程において真空チャンバからの空気の排出を可能にするように動作することができる一方向弁として構成される。
好ましくは、弁は、フラップ弁あるいは閉じ方向に付勢されたフラップまたは同等の機構を有する同様の弁であり、この弁は、付勢を超える力を加えてフラップまたは同等の機構を開くために充分な大気との差圧が形成されるような超大気圧に真空チャンバ内の空気の圧力が達したときに開くことができる。自動であっても、受動的であってもよい他の種類の弁も、上昇行程において空気の進入を制限または防止し、下降行程の少なくとも一部において空気の排出を可能にする限りにおいて、利用可能であることを、理解できるであろう。
下降行程ベントは、真空チャンバと流体連通している限りにおいて、必ずしもハウジング内またはハウジング上に位置する必要はない。したがって、一実施形態においては、下降行程ベントを、真空チャンバに接続された導管に接続されたポートによって形成することができる。
好ましくは、少なくとも1つのダウンストロークベントが、
・収容面、
・上部真空シーリング、
・下部真空シーリング、
・ノーズブロック、および/または
・ハンマーウエイト
に形成または配置され、あるいはこれらを通って形成または配置される。
ベントを、例えばV字形の外側断面、外方向へとテーパ状の外縁、またはリップ状の可撓な外縁など、シール自体の形状に取り入れることができ、これらは、より高圧の空気がシールの縁部を収容面から持ち上げるように一方側から通過することを可能にする。反対に、反対側のより高い圧力の空気は、外縁を収容面へとますます押し付ける。
ベントを、一方向性の自動シーリング弁またはシールを有するハウジングまたはハンマーウエイトを通るポートとして形成することができる。弁は、弾性またはばねでの付勢によるフラップまたは可撓ポペット(または、マッシュルーム)弁、剛体ポペット弁、および横開きフラップ弁、あるいはその他の種類の好都合な一方向弁であってよい。
閉鎖時(例えば、上昇行程の最中および下降行程の少なくとも一部分)、ベントは、真空チャンバへの流体の進入を防止または制限する。下降行程ベントが(例えば、真空チャンバ内の流体の圧縮によって圧力が大気圧レベルを上回って上昇する下降行程において)開くとき、圧縮された流体を、ベントに直接隣接する大気へと直接排出することができ、あるいはより遠方の場所へと導管を介して排出することができる。導管は、剛体、可撓性、またはこれらの組み合わせであってよく、ハウジングの内部または外部に通すことができる。
一実施形態においては、導管を、真空チャンバからハンマーウエイトの上方の位置の収容面までの流体通路を提供するように通すことができる。さらなる実施形態においては、往復運動経路に沿ったハンマーウエイトの動きを、上昇行程および下降行程のそれぞれにおいてベントを開閉して一方向弁の役割をもたらすために使用することができる。
さらなる実施形態においては、往復運動の動作サイクルの全体において残留空気を除去し、さらには/あるいは真空チャンバ内の真空を維持するために、真空ポンプをベントまたはポートに接続することができる。
下降行程ベントを、
・真空チャンバと大気との間の圧力差の大きさ、
・真空チャンバと下降行程ベントに流体連通した導管との間の圧力差の大きさ、
・下降行程におけるハンマーウエイトの位置、
・下降行程における真空チャンバの温度、
・下降行程におけるハンマーウエイトの移動の経過時間、
・これらの任意の組み合わせまたは順列
を含む種々さまざまなパラメータに応じて開くように構成できることを、理解できるであろう。
したがって、一実施形態においては、下降行程において、ハンマーウエイトは、重力ならびにハンマーウエイト上面に作用する大気圧と真空チャンバ内の圧力との間の圧力差の作用のもとで降下する。ハンマーウエイトが作業面に向かって移動するにつれて、以前の往復運動および/または真空シーリングの漏れからの真空チャンバ内の残留空気が、圧縮される。これにより、真空チャンバ内の圧力が、大気圧に等しくなるまで上昇する。したがって、ハンマーウエイトのさらなる下降行程の移動は、ベントが生じない限り、真空チャンバ内に超大気圧を生じさせる。
下降行程ベントを、上述したように、下降行程の最中の任意の段階で開くように構成することができる。好ましくは、一実施形態において、下降行程ベントは、真空チャンバにおける超大気圧の発生と実質的に同時に開くように構成される。
上述したように、本発明の一態様によれば、ハウジングと、衝撃軸に沿って移動することができる往復運動ハンマーウエイトとを含んでいる上述のとおりの衝撃ハンマーであって、
・被駆動端および衝撃端と、被駆動端と衝撃端との間を延びる長手軸とを有しており、衝撃端がハウジングから突出するようにハウジング内に位置することができるストライカピンと、
・ストライカピンに結合された衝撃吸収装置と
をさらに含み、
ストライカピンの長手軸に実質的に同軸な衝撃軸に沿ってストライカピンの被駆動端に衝撃をもたらす衝撃ハンマーが提供される。
好ましくは、衝撃吸収装置は、リテーナによってストライカピンに結合させられ、リテーナは、ストライカピンの長手軸に沿い、あるいはストライカピンの長手軸に平行にハウジングの内部に配置された第1および第2の衝撃吸収アセンブリ(上側および下側衝撃吸収アセンブリとも称される)の間に介装され、第1の衝撃吸収アセンブリは、リテーナとハンマーウエイトとの間に位置する。
好ましくは、第1の衝撃吸収アセンブリは、非弾性層によって交互にされた少なくとも2つの弾性層を含む複数の非結合層から形成される。
一実施形態によれば、第2の衝撃吸収アセンブリは、非弾性層によって交互にされた少なくとも2つの弾性層を含む複数の非結合層から形成される。あるいは、第1および第2の衝撃吸収アセンブリのいずれかまたは両方を、単一の弾性層などの単一の衝撃吸収層またはバッファから形成してもよい。
好ましくは、ストライカピンは、摺動可能な結合によってリテーナに結合させられる。好ましくは、摺動可能な結合は、ストライカピンの長手軸と同軸または平行なストライカピンとリテーナとの間の相対運動を可能にする。
衝撃ハンマーのうちの作業面に近い領域は、当然ながら、塵埃、岩石、コンクリート、鋼片、土、デブリ、および破砕作業の他の副生成物にきわめて近接する。したがって、下部真空シーリングの構成が、ストライカピンの周囲の領域を介した異物の進入を軽減することを、確実にすることが望ましい。上部真空シーリングとは対照的に、下部真空シーリングは、隣接するシーリング面の間の大きな相対移動を被ることはない。上部真空シーリングは、往復運動軸に沿ったハンマーウエイトの移動の全範囲にわたるハンマーウエイトの動きに対応することが必要とされる。対照的に、ストライカピンの構成の下部真空シーリングは、衝撃吸収装置に対するストライカピンの比較的小さな移動しか被ることがない。
好ましい実施形態において、ストライカピンとリテーナとの間の相対移動は、保持位置内での摺動可能な結合の移動からもたらされる。好ましくは、保持位置は、ストライカピンの被駆動端に対して、近位側の移動ストッパおよび遠位側の移動ストッパによって境界付けられる。
一実施形態において、リテーナ(「リコイルプレート」としても知られる)は、ストライカピンを少なくとも部分的に取り囲む剛体プレートとして形成され、第1および/または第2の衝撃吸収アセンブリのそれぞれの弾性層に隣接して接触する平坦かつ平行な下面および上面を有する。一実施形態によれば、衝撃吸収装置は、衝撃吸収アセンブリの間に配置されたリテーナを含む。
本明細書において使用されるとき、「摺動可能な結合」という用語は、ハウジングおよび/またはリテーナに対する少なくとも或る程度のストライカピンの長手軸方向の移動を許容する任意の可動または摺動可能な結合または係合あるいは構成を含む。好ましくは、作業における使用時に、摺動可能な結合が近位側または遠位側のいずれかの移動ストッパに係合することで、衝撃吸収装置へと力が伝達される。好ましくは、作業における使用時に、摺動可能な結合が遠位側および近位側の移動ストッパに係合することで、それぞれ第1および第2の衝撃吸収アセンブリへと力が伝達される。
好ましい実施形態において、摺動可能な結合は、リテーナまたはストライカピンのいずれか一方を少なくとも部分的に通過し、リテーナまたはストライカピンの他方の長手方向の凹部へと少なくとも部分的に突出する1つ以上の保持ピンを含む。好ましくは、長手方向の凹部は、保持位置である。簡単さを助け、説明を明確にするために、保持位置の長手方向の凹部は、本明細書においてはストライカピン上に位置するものとして説明されるが、これに限られるわけではない。
ストライカピンのハウジングからの突出の最大および最小範囲は、ストライカピンの長さ、凹部の位置および長さ、ならびに解放可能な保持ピンの位置によって定められる。第1の衝撃吸収アセンブリへの衝撃の伝達に加えて、近位側の移動ストッパは、使用中にストライカピンがハウジングから脱落することを防止する。遠位側の移動ストッパは、跳ね返りの衝撃を第2の衝撃吸収アセンブリに伝達する他に、作業者がストライカピンをプライム位置に配置するときにストライカピンがハウジングの内部へと完全に押し込まれてしまうことを防止する。
第1および第2の衝撃吸収アセンブリ(リテーナまたは「リコイルプレート」が間に挟まれている)は、好ましくは、ハウジングの一部分(本明細書において、「ノーズブロック」と称される)の内部に、ノーズブロックの内壁とストライカピンの外壁の一部分とによって互いに密接に保持された要素の集合として収容される。一実施形態において、リテーナを含むノーズブロック内の衝撃吸収アセンブリのすべての要素は、互いに非結合である。
本明細書において使用されるとき、「非結合」という用語は、接着されておらず、一体的に形成されておらず、接合されておらず、取り付けられておらず、あるいは物理的接触以外のいかなるやり方でも接続されていない2つの表面の間のあらゆる接触を含む。
ノーズブロックは、第1および第2のそれぞれの衝撃吸収アセンブリのために、ストライカピンのための開口が設けられた下側および上側の実質的に平坦な境界を提供し、これらの平坦な境界の各々は、ストライカピンの長手軸に対して直角に向けられている。ノーズブロックの上側および下側境界は、必要な丈夫さおよびメンテナンスのアクセスの能力を提供する任意の好都合な形態をとることができる。
一実施形態において、ノーズブロックの上側境界は、好ましくは平坦な下面とストライカピン用の開口とを有する堅固なキャッププレートによってもたらされる。
ノーズブロックの下側境界は、一実施形態においては、好ましくは平坦な上面とストライカピン用の開口とを有する堅固なノーズプレート(「ノーズコーン」とも呼ばれる)によってもたらされる。リテーナならびに第1および第2の衝撃吸収アセンブリは、ノーズブロックの側壁によって囲まれてキャッププレートとノーズプレートとの間に積み重ねられて一体に位置する。ノーズブロックおよび/またはノーズプレート/コーンを、対応する形状の側壁によって境界付けられた円形、正方形、長方形、多角形、などの任意の好都合な横断面にて形成することができる。
本発明の一態様によれば、キャッププレートおよびノーズプレートは、ストライカピンの長手軸に平行な細長いノーズブロックボルトによって、第1および第2の衝撃吸収アセンブリを一緒にノーズブロック側壁の内側に固定する。好ましくは、ノーズブロックは、平面図の断面において正方形または円形であり、ストライカピンが、衝撃吸収アセンブリおよびリテーナを貫いて中央を通過している。
代案の実施形態においては、ノーズブロックおよびノーズコーンを、単一の連続的な剛体構造から少なくとも部分的に形成することができる。
このように、ノーズブロックの上側および下側境界の平坦な表面ならびにリテーナの平坦な表面が、衝撃吸収アセンブリの弾性層に隣接する4つの堅固な非弾性の表面を提供することを、理解できるであろう。したがって、実施形態において使用される弾性層および非弾性層の数に応じて、個々の弾性層を、
・ノーズブロックの上側境界と非弾性層、
・ノーズブロックの下側境界と非弾性層、
・2つの非弾性層、または
・非弾性層とリテーナ
のいずれかの堅固かつ平坦な非弾性の表面によって挟むことができる。
上記の構成の各々において、弾性層は、ストライカピンの長手軸に直交する隣同士の堅固な非弾性の表面の平行な平坦面の間に挟まれる。
このように、ストライカピンを備える本発明による衝撃ハンマーを、
・キャッププレートと、
・第1の(または、上側の)衝撃吸収アセンブリと、
・リテーナと、
・第2の(または、下側の)衝撃吸収アセンブリと、
・ノーズコーンと
を含むノーズブロック構成要素を、実質的にストライカピンの周囲で、ストライカピンの被駆動端と衝撃端との間に、衝撃軸に対する上述の順序で配置して構成できることを、理解できるであろう。
下部真空シーリングは、上記のノーズブロック構成要素の並びにおけるいくつかの代案の位置または累積的位置に配置されたシールを含むことができる。
一態様によれば、下部真空シーリングは、
・キャッププレートとストライカピンとの間、
・第1の(または、上側の)衝撃吸収アセンブリとストライカピンとの間、
・リテーナとストライカピンとの間、
・リテーナとノーズブロック内側側壁との間、
・第2の(または、下側の)衝撃吸収アセンブリとストライカピンとの間、および/または
・ノーズコーンとストライカピンとの間
に位置する1つ以上のシールを含む。
別の態様によれば、上記に加え、あるいは上記に代えて、下部真空シーリングは、
・ノーズコーンと下側の衝撃吸収アセンブリとの間、
・第1の(または、上側の)衝撃吸収アセンブリとキャッププレートとの間、および/または
・キャッププレートとハンマーウエイトの下部衝撃面の下方移動限界との間
に位置してストライカピンを横から囲む個々の独立した層として形成された1つ以上のシールによってもたらされる。
一実施形態によれば、個々の独立した層は、可撓ダイアフラムを含む。好ましくは、可撓ダイアフラムのうちのストライカピンに当接してシールを形成する部分が、衝撃軸に沿ったストライカピンの動きとともに自由に動く。
さらなる態様によれば、個々の独立した層は、ダイアフラムとノーズブロック内壁との間の少なくとも1つの固定シールをさらに含む。
下部真空シーリングのシールは、上部真空シーリングに関して本明細書で説明した形態などの種々の形態をとることができる。
したがって、下部真空シーリングのシールは、
・可撓エラストマー、
・プレロードまたは密な嵌まり合いによってストライカピンおよび/またはノーズブロック内側側壁に接触するように付勢された弾性または非弾性材料、
・少なくとも1つの一方向ベント、および/または
・上記の任意の組み合わせまたは順列
を含むことができる。
少なくとも1つの衝撃吸収アセンブリに位置するシールは、
・弾性層の一体の一部分、
・衝撃吸収アセンブリの弾性層に隣接して配置された別個の弾性シール、
・衝撃吸収アセンブリの非弾性層内に形成された弾性または非弾性シール、
・衝撃吸収アセンブリの非弾性層内に配置され、もしくは衝撃吸収アセンブリの非弾性層に隣接して配置された弾性または非弾性シール、
・衝撃吸収アセンブリの非弾性層とストライカピンとの間の密な嵌まり合い、および/または
・上記の任意の組み合わせまたは順列
として形成されてよい。
一実施形態において、弾性層は、エラストマーなどの実質的に非圧縮性の材料から形成される。そのような実施形態においては、衝撃吸収装置が使用中に圧縮力を被るとき、非圧縮性の弾性層について唯一の許される撓み方向は、ストライカピンの長手軸に直交する横方向である。この形状の変化は、以下では横「撓み」と称され、同等の膨張、変形、歪み、広がり、などを含む。したがって、弾性層のこの横撓みを受け入れるために、弾性層の縁とノーズブロックの壁および/またはストライカピンとの間に、充分な側方の容積が存在することが不可欠である。
すでに述べたように、衝撃ハンマーは、使用中に、弾性層がストライカピンの長手軸に関して非弾性層に対して横方向に移動可能であるように構成される。本明細書において使用されるとき、用語「移動可能」が、あらゆる動き、変位、撓み、並進、拡大、広がり、膨出、膨張、収縮、追尾、などを含むことを、理解すべきである。
さらに、弾性層が2つの非弾性表面の間で圧縮されているとき、弾性材料は、横方向に撓み、あるいは「広がる」ことを、理解できるであろう。隣接する弾性表面と非弾性表面とは互いに非結合であるため、弾性材料は、非弾性表面を横切って横方向に摺動することができる。ストライカピンを横方向において取り囲むように構成された弾性層を有する実施形態において、弾性材料は、圧縮時にヌル位置から外側および内側の両方に移動する。非弾性層に結合した弾性層を有する従来技術の衝撃吸収装置は、上述のような横方向に移動が不可能である。
さらに、弾性層が撓むとき、弾性層と非弾性層との間にかなりのレベルの摩擦が生じる。摩擦は、弾性層の撓みに対抗し、したがって、結合多層または一体の衝撃吸収装置と比べて、衝撃吸収能力を劇的に改善する。
好ましくは、第1および/または第2の衝撃吸収アセンブリは、ノーズプレートおよび/またはキャッププレートの磨耗を補償するために、横「すき間」を備えて構成される。一実施形態において、第1および/または第2の衝撃吸収アセンブリの非弾性層は、ストライカピンとの心出しの係合を除いて、ノーズブロック内で横方向について拘束されておらず、横すき間は非弾性層の側縁とノーズブロック内壁との間に形成される。さらなる態様によれば、第1および/または第2の衝撃吸収アセンブリの弾性層は、ノーズブロック内壁によって心出しされ、横すき間は衝撃吸収アセンブリの側縁とストライカピンとの間に設けられる。
一実施形態によれば、少なくとも1つの弾性層および/または非弾性層が、ストライカピンの長手軸の周囲で実質的に環状および/または同心である。本明細書において使用されるとき、弾性層を、30ギガパスカル(GPa)未満のヤング率を有する任意の材料から形成できる一方で、非弾性層は、30GPaよりも大きい(好ましくは、50GPaよりも大きい)ヤング率を有する任意の材料を含むと定義される。このような定義は、材料を弾性または非弾性に分類するための定量化可能な境界を提供するが、最適なヤング率が必ずやこれらの値の近くにあると指示するものではない。好ましくは、非弾性および弾性層のヤング率は、それぞれ>180×109Nm−2および<3×109Nm−2である。
好ましくは、非弾性層は、鋼板(典型的には、約200GPaのヤング率を有する)または高い応力および圧縮荷重に耐えることができ、好ましくは比較的低い摩擦の程度を示す同様の材料から形成される。弾性材料は、或る程度の弾性を呈する種々の材料から選択可能であるが、ポリウレタン(0.02×109Nm−2よりも大きいヤング率を有する)が、この用途に理想的な特性を提供することが判明している。
圧縮荷重の際に、ゴム材料などは、体積が減少し、さらには/あるいは良好でない熱、弾性、荷重、および/または回復特性を示す可能性がある。しかしながら、ポリウレタンなどのエラストマーポリマーは、本質的に非圧縮性流体であり、したがって圧縮荷重の際に体積ではなく形状を変化させようとする一方で、所望の熱、弾性、荷重、および回復特性も示す。したがって、好ましい実施形態において、弾性層は、剛体表面間の対向する実質的に平行な平面に挟まれたエラストマー層として形成され、したがってエラストマー層の平面に対して実質的に直角に加わる圧縮力が、非結合のエラストマーを横方向に撓ませる。横方向の撓みの程度は、自由に膨張することができる荷重が加わっていない表面の総面積に対する1つの荷重が加えられた表面の面積の比によって与えられる経験的に得られた「形状係数」に依存する。
平行な非弾性剛体平面の間に配置された実質的に平坦なエラストマー層が、圧縮下でエラストマーを横方向に撓ませ、あるいは「広げる」とき、正味の効果は、有効荷重支持面積の増加である。非弾性層をもたらす鋼板をポリウレタンで形成された弾性層の間に介装して有する衝撃吸収アセンブリは、単一の一体の弾性材料で達成できるよりもはるかに大きな圧縮強度をもたらす構成を提供することが、判明している。これは、主に弾性層の「形状係数」に起因し、すなわち、厚さに対する直径の比が大きくなると、荷重支持能力が指数関数的に向上し、結果として、複数のより薄い層は、同じ空間において使用される単一のより厚い層と比べてはるかに大きい荷重能力を有することに起因する。
以下で詳述されるように、衝撃吸収装置の各層などのノーズブロックの内部コンポーネントの容積効率を最大にすることが、きわめて有利である。複数の薄い層を、同じ全体としての体積を有する単一のより厚い層の代わりに使用することは、大きな荷重能力をもたらす一方で、個々の弾性層が被る撓みは、管理可能な程度の撓みでしかない。一例として、各々が30%、すなわち18mmの撓みを呈する30mmのポリウレタンの2つの別個の層は、18mmの撓みを呈する単一の60mmの層の2倍の荷重支持能力を有する。これは、先行技術に対して顕著な利点を提供する。試験において、本発明が、単一の一体の弾性層を有する同等の衝撃吸収装置の2倍の荷重に耐え、同じ体積のハンマーノーズブロック内の衝撃吸収装置によって2倍の衝撃荷重を阻止することを可能にすることが、明らかになっている。
撓みの程度は、弾性層の厚さの変化に正比例し、弾性層の厚さの変化は、ハンマーウエイトの減速の速度に影響し、全体の厚さの変化が小さいほど、減速はより激しくなる。したがって、弾性材料のいくつかのより薄い層を使用することにより、ハンマーウエイトの減速の速度をハンマーの特定のパラメータに合わせて効果的に調整することも可能になるが、これは単一の一体的な弾性コンポーネントでは実現できないと考えられる。
負荷表面の状態の変化は、弾性層の剛性に重大な結果的変動を引き起こし、例えば、潤滑された表面は、横方向の移動に対して実質的に抵抗をもたらさない一方で、清浄な乾燥した負荷表面は、より大きな摩擦抵抗を提供する。しかしながら、先行技術の解決策で使用されているように弾性材料と非弾性材料とを互いに結合させることは、弾性層と非弾性層との間の界面における横方向の動きを有害に妨げると考えられる。したがって、弾性層と両側の隣接する堅固な非弾性表面との間に非結合の界面を設けることで、結合した界面と比べて大きな利点がもたらされると理解することができる。
ハウジングのノーズブロック内の空間の容積は限られており、したがって空間の節約は、軽量化および/またはより強力でより能力の高いコンポーネントを収めることを可能にし、結果として性能を向上させることができる。本発明は、より軽量なキャリアを輸送/作業に使用することを可能にするために充分なハンマーノーズブロック軽量化(典型的には、10〜15%)を可能にすることができる。例として、36トンのキャリア(典型的な先行技術の重力のみの衝撃ハンマーに使用される)から30トンのキャリアへの削減は、運用および保守のコストを下げつつ効率を向上させることに加え、約37500ユーロ(約6.25ユーロ/kgとする)の購入節約をもたらす。さらに、36トンのキャリアを輸送することは、はるかに現実的である30トンのキャリアと比較して、運転者にとって高価かつ困難な負担である。
前述のように、2つの剛体平行非弾性表面の間で荷重を被るエラストマーなどの弾性層は、外側へと撓む。弾性層が、ストライカピンを横方向において取り囲む実質的に環状の構成にて構成されている場合、弾性材料は、開口の中心に向かって内側にも撓む。この反対向きの横方向の同時移動は、衝撃吸収アセンブリの剛体要素(すなわち、非弾性層および/またはリテーナ)を、ストライカピンの周囲に心出しされた状態のままとどまる一方で、弾性層が依然として内縁および外縁の全体において自由に撓むことができるように、慎重に管理することを必要とする。弾性および非弾性プレートならびにリテーナからなる衝撃吸収アセンブリの全体が、ストライカピンの長手軸に平行または同軸に自由に動くことができ、横方向においてはハウジングの壁および/またはストライカピンに衝突する弾性層による直接接触が最小限または皆無であることが、重要である。
衝撃吸収の用途において、衝撃吸収アセンブリは、ストライカピンの長手軸に平行に移動する。したがって、弾性層が直接的にノーズブロックの壁および/またはストライカピンに知覚できるほどに衝突すると、弾性層が接触点において変形または損傷する可能性がある。しかしながら、衝撃吸収装置は、移動の際にノーズブロック内の中心にとどまる必要もあり、したがって弾性層の何らかの形態の整列または心出しが望ましい。
一実施形態においては、1つ以上のボイド低減物体が、ハンマーウエイトの下部衝撃面とノーズブロックとの間に配置される。一態様によれば、ボイド低減物体は、球、互いに噛み合う形状、膨張可能な発泡体、などのうちの少なくとも1つを含む。
ハンマーウエイトと収容面との間の望ましくない接触は、衝撃印加の動作の周期的なプロセスの3つの別々の段階において生じる可能性があり、そこでは、ハンマーウエイトが、
・上昇行程の最中にハウジングの収容面に対して引き摺りを生じ、
・下降行程において斜めに接触し、あるいは跳ね返って収容面に接触し、
・とりわけ装置が鉛直から傾けられている場合に、下降行程においてハンマーウエイトがハウジングに沿って摺動するときに収容面に横接触し、
・駆動機構によって加えられる力によって収容面に横接触し、さらには/あるいは
・作業面との衝突後にハウジングの内側側壁へと跳ね返る
ことを、理解できるであろう。
上述したハンマーウエイトと収容面との間の接触は、装置の設計、衝撃印加の作業時の装置の傾き、および作業面の仕様に応じて、継続時間、衝突角度、および大きさがさまざまであり得る。出願人自身の破砕機におけるハンマーウエイトの速度は、駆動式ハンマーでは8ms−1に達し、重力のみの衝撃ハンマーでは最大10ms−1に達することができる。重力のみの衝撃ハンマーは、ハンマーウエイトがハウジングの側壁に支えられるため、鉛直から約30°傾けられたときにピークPV(圧力×速度)となる。
装置の設計に関して、関連するパラメータとして、ハンマーウエイトのサイズおよび形状ならびにハンマーウエイトの側縁と収容面との間の横すき間の程度が挙げられる。
すでに述べたように、収容面は、材料の進入に対する障壁として機能するとともに、収容面の横境界内のハンマーウエイトの動きを制限または案内する。先行技術の装置において、ハンマーウエイトと収容面との間のすき間は、競合する因子間の妥協点であり、すなわち
・すき間が小さいと、ハンマーウエイトにとって横方向の加速のための空間が最小になるため、収容面への衝撃力は小さくなるが、製造時に高い精度が必要になり、
・すき間が大きいと、製造時に必要とされる精度は低くて済むが、ハンマーウエイトがより長い時間にわたって横方向の力の成分の作用のもとで加速でき、結果として収容面への衝撃力が大きくなる。
衝撃ハンマーの動作効率を最大にするために、ハンマーウエイトの上昇時に、磨耗を増加させ、装置のサイクル時間を遅くしかねないハウジングによって引き起こされる障害、妨害、または引き摺りを最小にすることが望ましい。同様に、下降行程におけるハンマーウエイトの通過に対するこのような障害は、作業面にもたらされるはずのエネルギーを消散させてしまう。したがって、ハンマーウエイトは、典型的には、例えばハンマーウエイトの上部中央に取り付けられた環索を介して、ハウジングへの過度の接触圧力を回避するように設計されたやり方で駆動機構によって持ち上げられる。
収容面はハンマーウエイトの経路を制限するが、ウエイトの経路に対して継続的、積極的、または直接的な方向の制御をもたらすという意味ではハンマーウエイトを常には案内しないことを、理解できるであろう。しかしながら、ハンマーウエイトの経路に隣接するハウジングの内側側壁は、依然として横方向についてハンマーウエイトの経路を所定の境界の内側にとどめ、実質的にガイドとして作用する。
したがって、分かり易くするために、ハンマーウエイトの経路に隣接する収容面を、本明細書においてハウジングの内側側壁と呼ぶこともできる。
衝撃ハンマーなどの機械式の破砕装置は、衝突の瞬間の大きなハンマーウエイトの急激な減速によって達成される作業面への大きな衝撃力の印加によって動作する。したがって、ハンマーウエイトの下向きの加速によって生じる高エネルギーの運動力の避けられない結果として、ハウジングの内側側壁との衝突により、相当の衝撃力および騒音が引き起こされる。さらに、作業面が破壊されず、あるいは衝撃エネルギーのすべてを完全に消散させるには不充分な様相で変形する場合、跳ね返るハンマーウエイトの運動の横方向の成分が、ハンマーウエイトとハウジング内側側壁との間の衝突を生じさせ、やはり高いレベルの衝撃および騒音を発生させる。
本発明の実施形態は、往復運動するハンマーウエイトにクッションスライドを設けることによって、これらの困難に対処する。クッションスライドをハウジングの内側側壁の動くことがない表面に配置することも考えられるが、これは、いくつかの理由により、あまり実用的でなく、経済的でもない。
第1に、ハンマーウエイトの往復運動経路の長さ全体に、クッションスライドの保護が必要になる。これと比較して、ハンマーウエイトの比較的小さな部分だけをクッションスライドで覆えばよく、したがって材料コストの節約になる。
第2に、ハウジング(収容面を含む)は、きわめて丈夫でなければならないため、典型的には鍛造による鋼の細長い通路として形成され、したがって収容面に取り付けられるクッションスライドを追加し、維持し、あるいは交換することがきわめて難しい。
第3に、細長いクッションスライドにハンマーウエイトが繰り返し衝突/接触する結果として、第1および第2の層に波打ちが生じ、落下するハンマーウエイトの経路へと変形し、最終的に破損に至る。
最後に、ハンマーウエイトへのクッションスライドの配置と比べ、上述の欠点を埋め合わせる本質的な利点をもたらさない。当然ながら、クッションスライドに使用される材料の特性が、それらが首尾よく機能するために重要である。
上述したハンマーウエイトと収容面との間の接触の種類は、高い速度およびきわめて大きい衝撃力を特徴とする。残念なことに、低い摩擦係数を有する材料は、典型的には、衝撃吸収性が高くない。逆に、衝撃吸収性の高い材料は、典型的には、高い摩擦係数を有する。したがって、単一の材料から効果的なクッションスライドを生成することは、実現可能でない。
さらなる困難として、衝撃ハンマーのウエイトの表面にクッションスライドを取り付け、あるいは形成するという実際的な課題が挙げられる。作業面に(直接またはストライカピンを介して)衝突するときに必然的に伴う大きな衝撃力および往復運動するハンマーウエイトのほぼ瞬時の減速に起因して、きわめて大きい荷重(例えば、2000G)が、スライドをハンマーウエイトに固定するために用いられる取り付けシステムに加わる。したがって、クッションスライドを、そのような荷重を最小にするために可能な限り軽くすることが望ましい。
第1の層の外面は、好ましくは、所定の低摩擦特性の材料、ならびにハウジングの内側側壁との繰り返しの高速接触(例えば、最大10ms−1)において摩擦の最小化および耐摩耗性の最大化を可能にする適切な材料で形成される。一態様によれば、第1の層は、
・超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、Spectra(登録商標)、Dyneema(登録商標)、
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、
・ポリアミドイミド(PAI)、
・ポリベンズイミダゾール(PBI)、
・ポリエチレンテレフタレート(PET P)、
・ポリフェニレンスルフィド(PPS)、
・Nylatron(商標)NSMまたはNylatron(商標)GSM(登録商標)などの潤滑剤および/または強化充填ナイロンを含むナイロン、
・Orkotなどの複合材料
・上記の任意の組み合わせまたは順列
を含むエンジニアリングプラスチックのグループから形成される。
上記の列挙は限定を意味せず、フィラー、補強材料、およびポリマー鎖の架橋のための照射などの形成後の処理の改変による上記材料の改変を含むと解釈されるべきである。第1の層の材料の望ましい特性として、軽さ、中程度〜高い速度および圧力のもとでの高い耐磨耗性、耐衝撃性、低い摩擦係数、および衝撃時の騒音レベルを最小にする低い硬度が挙げられる。
より丈夫な材料が必要とされる場合、第1の層に金属を使用することも可能であり、一実施形態において、第1の層は、
・鋳鉄、および/または
・鋼(鋼の任意の合金および/または熱処理を含む)
から形成される。
金属板の重量は、大部分の用途では大きすぎる可能性があり、したがって第1の層に使用される場合、好ましくは、単位面積当たりの質量を低減するために中空化などの軽量化手段が利用される。
グラフェンなどの新材料は、現時点においては商業的に実行可能でないが、近いうちに上記のプラスチック材料または金属材料の有用な代替物となる可能性があり、第1の層の物理的要件を満たし、あるいは超えるならば、本発明における使用に好適となり得る。
好ましくは、第1の層の所定の低摩擦特性は、潤滑なしでの摩擦係数が、表面粗さRa0.8〜1.1μmの乾いた鋼において0.35未満である。
好ましくは、第1の層の所定の耐摩耗性は、ASTM D4060からメートル法換算を使用して10×10−5m2/N未満の磨耗率である。
好ましくは、第1の層は、
・20MPaを超える引っ張り強さ、および30MPaを超える10%撓み時の圧縮強度と、
・55を超えるショアD硬度と、
・例えば3000を上回る高いPV(圧力x速度)値と
をさらに有する。
摩擦係数が低い材料が、必ずしも高い耐摩耗性を有するとは限らず、逆もまた然りであることを、当業者であれば理解できるであろう。UHMWPEの使用は、より低い速度および圧力における低摩擦および耐摩耗性の両方に関して特定の性能上の利点をもたらす。UHMWPEは、高い靭性を有し、経済的に使用することができ、第2の層をより薄い層および/またはそれほど複雑でない層として形成することを可能にする。より高い速度および圧力のために、Nylatron(商標)NSMなどの高いPVを有するが靭性は低くなる他のより高価なプラスチックを第1の層に使用し、第2の層を単位面積当たりでより多くの衝撃吸収が可能であるように形成することができる。
鋼などの高密度材料の使用は、衝撃印加の作業中にハンマーウエイトから外れることがないことを保証するために、適切に設計された取り付けを必要とする。
一実施形態においては、第1の層の外面に、噴き付けグラファイト、テフロン(登録商標)、または二硫化モリブデンなどの乾燥潤滑剤を適用することができ、さらには/あるいは第1の層に、二硫化モリブデンなどの乾燥潤滑剤を埋め込むことができる。
第1の層の外面について選択される材料の選択は、クッションスライドの有効性にとって重要であり、往復運動するコンポーネントのサイズ、関与する力、および動作環境に応じて選択される。低摩擦材料においては、第2の層によって行われる衝撃吸収の後に残る衝撃力に対して充分な耐衝撃性を有さないきわめて低摩擦の材料(例えば、PTFE)において磨耗と耐衝撃性との間で行われるトレードオフが多くの場合に存在する。1つの好ましい実施形態において、第1の層の材料は、可能な限り低い摩擦係数を有しつつ、おおむねRa=0.8〜3μmの表面粗さを有する鋼のハウジング内側側壁において使用されたときに、0.05MPaを超え最大4MPaまでの摺動圧力において、5ms−1を超え最大10ms−1までの瞬間摺動速度に、1メートルの移動につき0.01cm3以下の磨耗率で耐えることができるように選択される。第1の層の材料は、好ましくは、恒久的な変形を伴うことなく0.3MPaを超え最大20MPaまでの衝撃圧力に耐えることができる。
第2の層は、好ましくは所定の衝撃吸収特性を有する材料から形成され、金属製のウエイトおよび第1の層に取り付けることが可能であり、可撓で衝撃吸収性であることが必要である。
第2の層の衝撃吸収特性は、より高い衝撃力を吸収することができる材料を選択することによって、または単純に同じ材料のより厚い層を作製することによって改善することができる。しかしながら、より厚い層は、次の衝撃に備えて元の形状に戻るためにより長い時間を要し、自身の形状を維持せず、過熱する可能性もある。一実施形態において、第2の層は、複数のサブ層から形成される。第2の層に複数のサブ層を設けることにより、同じ厚さの単一層の欠点を伴わずに、衝撃吸収特性を改善することができる。したがって、本明細書における第2の層への言及は、潜在的に複数のサブ層を含み、単一の一体的な層に限定されないと解釈されるべきである。
一実施形態によれば、第2の層は、エラストマー層を含み、好ましくはポリウレタンを含む。
好ましくは、エラストマーは、40〜95のショアA尺度値を有する。
クッションスライドにおいて第1および第2の層の特性を組み合わせることにより、第1の層を損傷させ、あるいは破壊する大きな衝撃荷重が防止され、容易に磨耗する第2の層について、ハウジングの内側側壁との繰り返しの摺動接触による損傷または摩滅が防止される。
第1および第2の層の異種材料を互いに成功裏に組み合わせることは、衝撃印加の作業において加わる荷重に耐えることができる丈夫な構造を必要とする。好ましくは、第1および第2の層は、互いに取り外し可能に取り付けられる。この取り外し可能な取り付けは、クリップ、ねじ、協働する結合部品、逆皿穴、または入れ子の形態をとることができる。一実施形態において、取り外し可能なア取り付けは、ハウジングの内側側壁が往復運動コンポーネントにおけるソケット内の所定の場所に層を保持するような入れ子配置であってもよい。別の実施形態においては、第1および第2の層が、一体的に形成され、あるいは結合され、もしくは何らかの他のやり方で取り外し不可能である。しかしながら、第1の層を第2の層から取り外しできるように構成することで、磨耗の期間の後にクッションスライド全体の交換を必要とすることなく層を交換できることを、理解できるであろう。
圧縮荷重が第2の層を形成するエラストマーに加わるとき、エラストマーは、衝突点から遠ざかるエラストマーの体積の変位によって衝撃を吸収する。エラストマーが堅固な境界によって取り囲まれている場合、これによりエラストマーの体積の変位の方向が、制限されていない境界で生じる。したがって、エラストマーが上面および下面において堅固な表面によって境界付けられている場合、エラストマーは、圧縮時に堅固な層の間で横方向に変位する。しかしながら、エラストマーが自由に変位できない場合、エラストマーは、閉じ込められた非圧縮性液体のように作用し、結果として、大きな潜在的に破壊的な圧力を周囲に加える。周囲の構造が充分に丈夫であれば、エラストマー自体は機能しなくなる。
衝撃吸収装置として効果的に機能するために、エラストマーは、圧縮の作用のもとで変位した体積が進入することができるボイドを必要とする。
したがって、本発明のさらなる態様によれば、クッションスライドおよび/またはクッションスライドに隣接する往復運動コンポーネントの一部分に、圧縮時に変位した第2の層の一部分を受け入れるように構成された少なくとも1つの変位用ボイドが設けられる。
一実施形態においては、変位用ボイドを、
・第1の層、
・第2の層、
・往復運動コンポーネント、または
・上記の組み合わせ
に形成することができる。
変位用ボイドは第1の層に形成されてよいが、これらは、典型的には、第1の層の材料(例えば、UHMWPE、ナイロン、または鋼)の構造への機械加工を必要とする。さらに、圧縮用ボイドは、ハンマーウエイトに機械加工または他のやり方で直接形成されてよいが、ハンマーウエイトの表面における不連続による応力割れの発生を回避するように注意する必要がある。
したがって、第2の層に少なくとも1つの変位用ボイドを形成することが、製造および取り付けを容易にするいくつかの利点を提供する。したがって、本発明のさらなる態様によれば、クッションスライドは、少なくとも1つの変位用ボイドを備えて形成される。好ましくは、ボイドは、
・第2の層を貫いて延びる開口、
・第1の層および/または往復運動コンポーネントに接触する第2の層の少なくとも1つの面に付与された繰り返される波状、畝状、ビーズ状、鋸歯状、および/または城郭状のパターン、
・スカラップ状または他の凹状の側縁部、
・上記の任意の組み合わせまたは順列
として形成される。
好ましくは、第1および第2の層は、実質的に平行である。好ましくは、第2の層は、往復運動コンポーネントの外面に実質的に平行である。したがって、衝撃力は、通常は、第2の層の大部分に対して垂直に作用する。
一実施形態において、第1および第2の層は、互いに非結合であり、好ましくはクリップ、ねじ、ねじ山、カップリング、などによって互いに接触した状態に保持される。対照的に、エラストマーを接着剤などによって第1の層に取り付けると、外縁を除くエラストマーの圧縮下での横方向変位が妨げられる。これは、結果として、エラストマーの衝撃吸収能力を低下させるだけでなく、2つの層が相互の結合を引き裂くように作用するため、高荷重下での損傷の可能性を増大させる。
衝撃印加の作業に伴う激しい減速によって発生する大きな力は、静止時のハンマーウエイトおよびハンマーウエイトに取り付けられたコンポーネントによって加えられる重力に対して1000倍もの増加(1000G)を生じさせることが、実務において明らかになっている。したがって、重さわずか0.75kgのクッションスライドは、2000Gに曝されたときに750kgの衝撃荷重を発生させる。
一実施形態において、本発明は、クッションスライドをハンマーウエイトまたは往復運動コンポーネントにおけるソケットに配置することによって、クッションスライドへのこのような大きいG力に耐えるという問題に対処する。
一態様によれば、クッションスライドは、往復運動コンポーネント上で少なくとも1つのソケット内に位置し、往復運動コンポーネントは、下部衝撃面および少なくとも1つの側面を有し、ソケットは、少なくとも1つの畝、段部、突起、凹部、リップ、突出部、または下部衝撃面と往復運動コンポーネントの側壁上のソケット内に位置するクッションスライドの少なくとも一部分との間の堅固な保持面を呈する他の構造を備えて形成される。
あるいは、往復運動コンポーネントが下部衝撃面および少なくとも1つの側面を有する場合に、クッションスライドは、側面の外面において往復運動コンポーネント上に位置し、側面に、少なくとも1つの畝、段部、突起、凹部、リップ、突出部、または下部衝撃面と往復運動コンポーネントの側壁上に位置するクッションスライドの少なくとも一部分との間の堅固な保持面を呈する他の構造が形成されている。
一実施形態において、保持面は、
・クッションスライドの側縁、
・クッションスライドを貫く内側開口部、および/または
・クッションスライドの凹部
の付近に位置したクッションスライドの周囲に位置する。
保持面は、往復運動コンポーネントが作業面/ストライカピンおよび/またはハウジング内側側壁に衝突したときにクッションスライドが往復運動コンポーネントから外れることを防止するための支持を提供する。保持面を、往復運動コンポーネントの表面の側壁に実質的に直交する突起または凹部をそれぞれ形成する外側または内側に延びる壁として形成することができる。
また、保持面に、やはり往復運動コンポーネントの側壁に実質的に直交する力の成分からクッションスライドを往復運動コンポーネントの側壁に固定するための種々の保持造作を形成することもできる。そのような保持造作として、これらに限られるわけではないが、逆テーパ、上部リップ、Oリング溝、ねじ山、入れ子、または往復運動コンポーネントに取り付けられたクッションスライドを保持するための他の噛み合い造作を挙げることができる。
一実施形態においては、保持面を、少なくとも第2の層の開口を通過し、随意により第1の層の開口も通過する少なくとも1つの位置決め突起を形成する壁として形成することができる。
一実施形態においては、クッションスライドの第1の層の位置決め部分が、第2の層を通って往復運動コンポーネントの側壁の凹部へと延びることにより、この凹部は位置決め部分に対する保持面を呈する。
位置決め部分および/または位置決め突起の使用が、クッションスライドを、クッションスライドの外周全体を囲む保持面を必要とすることなく、往復運動コンポーネントの側壁の遠位端に配置できるようにすることを、理解できるであろう。
さらに、第1の層を、逆テーパ、上部リップ、Oリング溝、ねじ山、クリップ、入れ子、あるいは他の噛み合いまたは相互結合の構成を含む種々の固定用の造作によって第2の層へと解放可能に固定することができる。
一実施形態において、第2の層は、往復運動コンポーネントの側壁の表面に直接結合したエラストマー層である。当業者であれば精通しているとおり、ポリウレタンなどのエラストマーの表面は、高度に付着性であり、直接接触して形成されることによって鋼製のハンマーウエイト往復運動コンポーネントに結合することができる。
クッションスライドのサイズ、位置、および形状は、往復運動コンポーネントの形状に明らかに依存する。ストライカピンへの衝突に使用される矩形/正方形断面のブロック状ハンマーウエイトとして形成された往復運動コンポーネントの場合に、4つの側面および角のいずれも、潜在的にハウジング内側側壁に接触し得ることを、理解できるであろう。
往復運動コンポーネントが下方に移動するとき、往復運動コンポーネントの経路および/またはハウジング内側側壁の向きの完全な鉛直方向からの逸脱は、相互の接触につながる可能性がある。そのような接触の初期の衝突点は、主に、例えば側面の間の角部など、往復運動コンポーネントの「頂部」のうちの1つの付近である。この衝突が、往復運動コンポーネントにモーメントを加え、正反対に位置する頂部において衝突が生じるまで、往復運動コンポーネントを回転させる。したがって、クッションスライドは、好ましくは、往復運動コンポーネントの遠位端に向かって配置される。本明細書において言及されるとき、往復運動コンポーネントの「頂部」は、正方形または長方形断面の角あるいは往復運動コンポーネントの2つの面の間の接合部など、往復運動コンポーネントの側方の点または縁を指す。
したがって、一態様によれば、第1の層は、クッションスライドに隣接する往復運動コンポーネントの側壁の外縁を越えて突出するように形成される。
一態様によれば、往復運動コンポーネントは、横断面が正方形または長方形であり、実質的に平坦な側壁が4つの頂部によって接続されており、クッションスライドは、少なくとも2つの側面、2つの頂部、ならびに/あるいは1つの側面および1つの頂部に位置する。好ましくは、クッションスライドは、少なくとも2対の対向する側壁および/または頂部に配置される。
上述したクッションスライドの横方向の配置に加えて、(細長い往復運動コンポーネントの長手軸に対する)クッションスライドの長手方向の位置は、装置の動作特性によって影響される。クッションスライドの適切な長手方向の配置は、以下の分類へと細分化することができる。
・例えばストライカピンに衝撃を加えるために使用される単一のハンマーウエイトおよびウエイトなど、一方向。
・例えば反転させることができるハンマーの両端の衝撃ツール端を有する単一のハンマーウエイトならびに/あるいはレバリング作業およびレーキ作業にも使用される一方向ハンマーなど、双方向。
特許文献10に記載されているような衝撃ハンマーも、ハンマーハウジングから延びるハンマーチップを用いて岩石などのレーキ作業およびレバリング作業を行うために使用される。作業面のこのような操作は、きわめて摩耗性があり、作業面がハンマーウエイトのうちのクッションスライドを有する部分に接触することは、クッションスライドを損傷させるため、回避されなければならない。したがって、2つの反対向きのツール端を有する反転させることができるハンマーと組み合わせて使用される場合、クッションスライドは、いずれの向きにおいてもハンマーによる損傷を避けるために、露出したハンマーツール端から充分に遠く等距離に配置される必要がある。
反転させることができるハンマーとともに使用されるクッションスライドの実施形態は、好ましくは、細長い実質的に矩形/直方体のプレートまたはブレードの構成として形作られ、1対の幅広い平行な長手方向の面を1対の平行な狭い側面でつないで有している。このような構成は、短い側面に配置されたクッションスライドが、ハンマーウエイトの側面に事実上巻き付いて両方の広い側面にクッションをもたらすように充分に広がることを、容易にすることができる。このような構成は、2つのクッションスライドを用いるだけで、4つの側面のすべてについて衝撃からの保護を可能にする。
したがって、一態様によれば、本発明は、矩形断面の往復運動コンポーネントの反対向きの面に配置された少なくとも2つのクッションスライドを含み、これらのクッションスライドは、1対の隣接する頂部の周りを延びるような構成および寸法を有する。
典型的な砕石機の往復運動サイクルは、衝撃行程の前にハンマーウエイトを持ち上げることを含む。ハンマーウエイトは、1つまたは2つのハウジング側壁に沿ってハウジング内を落下し、岩石の表面またはストライカピンに衝突して跳ね返り、他の側壁に衝突し得る。この後続の側壁との衝突が、大きな騒音を発生させる。上述したように、ハンマーウエイトとハウジング内側側壁との衝突から生じる得る衝撃力および騒音は、ハンマーウエイトとハウジング内側側壁との間の隔たりが大きいほど、ハンマーウエイトにとって相対速度を高めるための距離が大きくなるがゆえに増大する。しかしながら、壁に対する「すき間」を減少させるためには、ハウジングおよびハンマーウエイトをより精密に製造する必要がある。
さらなる実施形態によれば、クッションスライドは、第1の層をハウジングの側壁に向かって付勢するための少なくとも1つのプリテンション造作または「プレロード」を含む。
1つの好ましい実施形態において、プリテンション造作は、
・第1の層の下面、
・第2の層の上面、
・第2の層の下面、
・第2の層のサブ層の表面、および/または
・第2の層の下側に隣接する往復運動コンポーネントの側壁面
のうちの少なくとも1つに形成されたプリテンション表面造作であってよく、
プリテンション造作は、少なくとも1つのプリテンション造作が設けられた表面と、プリテンション造作に接触する隣接面とを、離すように付勢する。
プリテンション造作は、好ましくは、第2の層よりも容易に圧縮されるような形状およびサイズとされた表面造作である。
一実施形態において、プリテンション造作は、第2の層の材料よりも低い弾性率を有する材料から形成される。
別の実施形態において、プリテンション造作は、第2の層またはそのサブ層を付勢をもたらすように作り上げ、好ましくはクッションスライドを往復運動コンポーネントに組み付けるときに緊張させることによって形成される。
このようにして、プリテンション造作は、第1の層をハウジングの側壁に向けて付勢して、往復運動コンポーネントをハウジングの側壁から明らかに離間させることができる。したがって、プリテンション造作は、クッションスライドとハウジング側壁との間のすき間をなくし、あるいは少なくとも減らすことによって、生じ得る横方向の衝突の騒音を低減することができる。さらに、プリテンション造作は、磨耗による第1の層の厚さの減少を補償する。また、プリテンション造作は、往復運動コンポーネントが鉛直でなく、あるいは横すき間が変化するハウジングを通って移動するときに、往復運動コンポーネントの心出しを補助することができる。
好ましくは、少なくとも1つのプリテンション造作を備えたクッションスライドを有する往復運動コンポーネントは、少なくとも1つのクッションスライドが往復運動コンポーネントの往復運動の最中にハウジング内側側壁に継続的に接触するような構成および寸法とされる。好ましくは、プリテンション造作は、弾性的である。
一実施形態においては、プリテンション造作を、往復運動コンポーネントがハウジング内側側壁の内側で横方向に等距離に位置するときに、あらかじめ緊張させることができる。
したがって、ハウジングが実質的に鉛直であるとき、クッションスライドの第1の層の外面が、ハウジングの内側側壁に軽く接触するように付勢される。使用時に、往復運動コンポーネントが往復運動するとき、往復運動コンポーネントが被る力の横成分が、プリテンション造作を圧縮するように作用する。このようにして、プリテンション造作は、それ以上の圧縮力が加わると先の実施形態において上述したように第2の層のエラストマーが撓む時点まで、圧縮される。プリテンション造作の形状および付勢ならびに第2の層のエラストマーを適切に選択することにより、第1の層を、往復運動の最中の脱落を防止するが、第2の層の衝撃吸収能力を妨げることはない充分な付勢で、ハウジング内側側壁に接触した状態に保つことができる。
一実施形態において、プリテンション造作は、第2の層に形成されたスパイク、フィン、ボタン、などを含む。
またさらなる態様によれば、クッションスライドは、磨耗バッファを含む。例えば、衝撃ハンマーがかなりの傾きで長期間使用された場合、力は最下部のハウジング内側側壁および下部側壁に面するクッションスライドに生じる。そのような長期間の使用は、該当のクッションスライドのエラストマーに過度の応力を作用させ、不具合を生じさせる可能性がある。エラストマーは、過度の応力の強度および/または持続時間が特定の限界を超えないならば、弾性能力を回復することができる。したがって、磨耗バッファは、所定のしきい値を超えて第2の層のエラストマーを圧縮することを防止する手段を提供する。一実施形態において、磨耗バッファは、第2の層および第1の層の開口を通過する少なくとも1つの位置決め突起を形成する壁として構成された保持面によってもたらされる。上述のように、位置決め突起は、衝撃力のもとでの往復運動コンポーネントの側壁にクッションスライドを固定する手段である。しかしながら、位置決め突起は、磨耗バッファとして構成される能力も提供し、第2の層のエラストマーの撓みが所定の点を超えてエラストマーの厚さを減少させた後に、位置決め突起が第1の層の開口を通ってハウジング内側側壁に接触するように充分に延びる。したがって、鋼製のハウジング側壁が位置決め突起に当接し、エラストマーの第2の層のさらなる圧縮または損傷を防止する。これは、騒音の発生を或る程度増加させるが、それはバッファがまったく存在しない場合よりも大幅に少ないと考えられる。
別の実施形態において、クッションスライドは、第2の層がその通常の動作限界(典型的なエラストマーにおいて、典型的には30%)を超えて圧縮されたときに、クッションスライドを収容する凹部を取り囲む往復運動コンポーネントの表面がハウジング内側側壁に当接するような寸法にて構成される。
さらなる態様によれば、本発明は、装置内の往復運動コンポーネントに取り付けられるクッションスライドを提供し、
往復運動コンポーネントは、装置の少なくとも1つの収容面に少なくとも部分的に接触して往復運動経路に沿って移動可能であり、
クッションスライドは、外側の第1の層と、内側の第2の層とを備えて形成され、
・第1の層は、所定の低摩擦特性の材料から形成され、コンポーネントの往復運動の最中に収容面と少なくとも部分的に接触するように構成および配置された外面を備えて形成され、
・第2の層は、所定の衝撃吸収特性の材料から形成され、
第1の層に接続された少なくとも1つの表面と、往復運動コンポーネントに接続可能な少なくとも1つの内面とを備えて形成される。
さらなる態様によれば、往復運動コンポーネントを組み立てる方法が提供され、この方法は、上述のクッションスライドを往復運動コンポーネントに取り付けるステップを含む。
すでに述べたように、本発明は、衝撃ハンマーまたは他の砕石装置に限定されず、装置の部品間の多数の相互衝突を含む往復運動コンポーネントを有する任意の装置に適用可能である。
したがって、本発明は、衝撃性能の改善、ならびに製造コスト、騒音、および維持費の低減の点で、先行技術に対して顕著な利点を提供する。
本発明は、本出願の出願人の重力衝撃ハンマーにおいて、15dBAの騒音低減を達成することが明らかになっている。これは、きわめて大きな運用の改善をもたらす。初期の衝撃ハンマーは、使用時に30mで90dBAを発生させたが、本発明は、30mでわずか75dBAしか発生させない。さらに、市街地の近くでのこのような機械の運転に関して一般的な55dBAという法律上の騒音制限に、以前は1700mで達していたが、今や300mでなければこのような値に達せず、これは5倍超の改善である。
衝撃ハンマーウエイトの典型的な摩擦による力の損失は、おおむね12〜15%である。鋼における鋼の摩擦係数が0.35である一方で、鋼におけるUHMWPEまたはナイロンは、0.20未満である。したがって、クッションスライドの第1の層としてUHMWPEを使用する本発明は、これらの損失を約40%〜7〜9%低減することが明らかになっている。したがって、ハンマー駆動機構は、3〜5%重いハンマーウエイトを持ち上げることができ、下方駆動ハンマーの場合には、ハンマーウエイトを3〜5%少ない損失で下方へと駆動でき、破壊効果を相応に改善することができる。
衝撃を吸収する第2の層ゆえに装置へと加わる衝撃荷重が低減されることで、装置の稼働寿命を延ばすことができ、あるいはより軽量で安価な構成のハウジングを製造できるようになる。
さらに、上述のクッションスライドの使用は、装置をより広い公差で製造することを可能にすることで、コストをさらに低減する。これは、ハンマーウエイトとハウジングハンマーウエイトガイド(ハウジングの内側ガイド壁)との間の鋼対鋼の接触が、低摩擦の第1の層(例えば、UHMWPE)の鋼製のハウジングハンマーウエイトガイドとの接触に変更されることで達成可能である。鋼/鋼の接触は、衝撃および騒音のレベルを可能な限り最小にするために、高水準の加工精度および小さい公差を必要とする。さらに、ハウジングケーシングは、典型的には、正確な公差へと製造することが困難な機械加工によらない溶接物であり、不正確である場合、困難であって時間がかかり、非標準部品を必要とするハンマーウエイトの機械加工を必要とする。
対照的に、前述のクッションスライドを使用することにより、クッションスライドを配置するためにハンマーウエイト側面の比較的小さな部分を正確に機械加工する前に、ハンマーウエイトを粗い公差で製造することができ、あるいは粗く鋳造または鍛造することができる。ハンマーウエイトの必要な幅のいかなる不一致も、典型的には第1の層の調整を介してクッションスライドの厚さを調整するだけで対応することができる。
本発明に関連するストライカピンの構成の詳細が、以下でさらに深く検討される。
使用時に、ストライカピンは、作業者がストライカピンの衝撃端を作業面に当接させ、あるいは可能な限り作業面に近付けて配置することにより、プライム位置に配置される。作業面に当接して配置された場合、ストライカピンは、保持ピンが遠位側の移動ストッパと係合することによって拘束されるまで、ハウジング内に押し込まれる。衝撃ハンマーは、このようにして、ハンマーウエイトからの衝撃を受け取って作業面に伝えるように準備される。
ハンマーウエイトがストライカピンへと落下するとき、ストライカピンは、作業面が砕けない場合を除き、ハンマーウエイトに最も近い摺動結合用凹部の端部に位置する近位側移動ストッパに保持ピンが接触することによってさらなる移動が阻止されるまで、作業面へと押し込まれる。衝撃後に作業面が砕けず、あるいはストライカピンが貫通するほどには充分に変形しない非有効な打撃の場合、ストライカピンは、ストライカピンの軸に沿って逆方向に跳ね返り、遠位側の移動ストッパを保持ピンに当接させる。
作業者が衝撃端を作業面に接触させることなくハンマーウエイトをストライカピンの被駆動端へと落下させる場合に、「ミスヒット」が生じる。ミスヒットの場合、ハンマーウエイトの衝撃は、近位側の移動ストッパを摺動可能に結合した保持ピンに当接させる。
打撃後に作業面が首尾よく砕けたとしても、衝撃が、ストライカピンおよびマスの運動エネルギーの一部しか吸収しない可能性もある。「オーバーヒット」として知られるそのような場合には、衝撃ハンマーへの結果としての影響は、「ミスヒット」に直接匹敵する。
したがって、保持ピンが遠位側または近位側のいずれかの移動ストッパに係合しているときの衝撃印加の動作において、残りのストライカピンの運動量は、リテーナに伝達され、リテーナが、衝撃吸収システムに作用する。
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つの衝撃吸収アセンブリが、ストライカピンの周りでハウジング内に摺動可能に保持され、衝撃ハンマーは、衝撃印加の動作の最中に衝撃吸収アセンブリの弾性層に心出し効果をもたらすように構成されたガイド要素を、ノーズブロック内に配置して備える。
本発明は、上述の細長いスライドに加えて、多数の異なる構成のガイド要素の使用を可能にする。物理的形態および実装の違いにもかかわらず、すべてのガイド要素の実施形態は、弾性層とハウジングおよび/またはストライカピンとの相対位置を維持するという共通の目的を共有している。衝撃吸収装置は、ガイド要素がなくても機能することができるが、ハウジングおよび/またはストライカピンの壁と干渉することなく各々の弾性層について最大の当接面を取り入れるために利用することができる使用可能容積を最大にするために、ガイド要素を備えることが有利であることを、理解できるであろう。
本明細書において使用されるとき、用語「センタリング」または「心出し」は、衝撃印加の動作の最中に長手方向の衝撃軸から遠ざかろうとする衝撃吸収アセンブリの横変位に対して復帰または矯正効果を少なくとも部分的に加える任意の構成または配置を含む。衝撃軸とストライカピンの長手軸とは、通常は実質的に同軸であるが、ストライカピンによるノーズブロックの磨耗が、ストライカピンの長手軸のずれを生じさせる可能性があることを、理解できるであろう。そのようなずれにより、衝撃吸収装置アセンブリがノーズブロックの側壁に不利に干渉する可能性があるため、復帰センタリング作用によって衝撃吸収装置の整列を許容限界の範囲内に保つ必要がある。
さらに、本明細書のどこかでさらに詳しく検討されるとおり、衝撃吸収アセンブリの弾性層は、非弾性層、隣接するノーズブロックの下側および上側の平坦な境界、ならびに/あるいはリテーナに接着されたり、あるいは取り付けられたりすることなく、圧縮時に横方向に自由に撓むように構成される。したがって、ノーズブロック内の弾性層の横方向の整列が、ストライカピンの表面、ノーズブロックの側壁、および/またはノーズブロックのボルトとの破壊的な干渉を防止するために、許容可能なレベルに維持されなければならず、すなわち心出しされなければならない。
さらなる態様によれば、衝撃吸収アセンブリの弾性層の整列は、弾性層の一部として形成された下部真空シーリングによってもたらされるが、この整列を、非弾性層によって直接もたらすこともでき、その場合、下部真空シーリングは、非弾性層によって形成され、非弾性層に形成され、あるいは非弾性層に隣接して形成される。
一態様によれば、ガイド要素は、ハウジングの内壁に配置され、ストライカピンの長手軸に平行に向けられた細長いスライドの形態で設けられ、細長いスライドは、弾性層の縁の協働する形状の部分に摺動可能に係合するように構成される。一実施形態において、細長いスライドガイド要素は、長手方向の凹部を備えて形成され、弾性層の形状の部分は、賞賛の突起として形成される。別の実施形態においては、細長いスライドが、長手方向の突起にて形成され、弾性層の形状の部分が、突起の断面に賞賛の凹部として形成される。別の実施形態においては、ガイド要素を、ストライカピンの外側に配置された細長いスライドの形態で設けることができる。弾性層の縁とストライカピンとの間の摺動可能な係合を、細長いスライドであるガイド要素の凹部と弾性層の縁の突起、あるいはこの逆によって形成できることも、理解できるであろう。
好ましくは、突起は、相補的な形状の凹部または溝において摺動する実質的に丸みを帯び、あるいは湾曲した先端の三角形の構成である。このようにして、上述の実施形態は、衝撃吸収の衝撃によって生じる長手方向の運動の最中に弾性層の位置決めまたは「センタリング」を提供し、弾性層の横方向に変位した/撓んだ部分がハウジングおよび/またはストライカピンの壁に衝突することを防止する。
圧縮サイクルにおいて、弾性層の縁部は、サイズおよび形状の大きな変化を被る。縁部における過度の急激な幾何学的不連続は、ゆるやかな不連続よりも著しく高い応力を被る。したがって、弾性層は、好ましくは、いずれも強い応力集中および結果としての割れを引き起こしかねない鋭い半径、小さな穴、細い突起、などを持たない実質的に滑らかな環として形成される。したがって、エラストマー層上に直接形成される非支持の安定化の造作は、首尾よく実装することが困難であり、細長いスライドガイド要素が堅固な材料から形成されたならば急速に磨耗しかねず、引きちぎられてしまうことすら考えられる。したがって、さらなる態様によれば、細長いスライドガイド要素は、半剛体または少なくとも部分的に可撓性の材料から形成される。
大型および/または非支持の安定化造作が形成された場合、対応する衝撃吸収アセンブリの側縁を出る地点に沿って破損する危険性がある。
ポリウレタンなどの弾性層が堅固な表面によって局部的に拘束される(すなわち、特定の方向の膨張が防止される)地点において、ポリウレタンなどの弾性層は、その位置において非圧縮性となり、加えられた圧縮力によって引き起こされる強力な自発的発熱によってすぐに破壊される。したがって、弾性層は、圧縮サイクルの全体にわたって、少なくとも1つの方向に自由に、または比較的自由に膨張することができなければならない。これは、弾性層の横方向の寸法を過度に控えめに抑えることによって単純に達成することができる。しかしながら、そのような手法は、ノーズブロック内の利用可能な断面積を衝撃の吸収に効率的に使用していない。したがって、弾性層の完全性を危うくすることなく、利用可能な横方向の領域を最大限に使用することが有利である。ガイド要素の組み込みは、このような効率を達成する手段を提供する。
弾性層はストライカピンに向かって内側にも膨張するが、ストライカピンとの接触は、負荷された衝撃吸収アセンブリ(すなわち、衝撃吸収時の圧縮中の衝撃吸収アセンブリ)とストライカピンとが実質的に同時に長手方向に移動するがゆえに問題にならないことを、理解すべきである。本発明の一態様によれば、細長いスライドの形態のガイド要素は、弾性層よりも弾性が大きい(すなわち、より柔らかい)材料から形成される。結果として、弾性層が使用時に圧縮下で横方向に膨張し、突起がガイド要素との接触を増すように移動するとき、2つの異なる種類の相互作用機構が生じる。最初に、突起が、ガイド要素がストライカピンの長手軸に平行に弾性要素と一緒の移動を開始する点に接触圧力が達するまで、ストライカピンの長手軸に平行に摺動する。このようにして、細長いスライドガイド要素は、弾性層の突起に最小限の摩耗または移動の抵抗を提供する。さらに、突起が局部的に非圧縮性になることを防止することに加えて、弾性層の突起と比べてガイド要素の柔らかさを増すことにより、磨耗をガイド要素がもっぱら受け持つという効果が生じる。これにより、衝撃吸収アセンブリを取り外して分解する必要なく、ガイドを容易に交換できるため、保守の負荷が低減される。
さらなる態様によれば、少なくとも1つの突起は、突起の頂部に実質的に凹状の凹部を含む。好ましくは、凹部は、幾何学的な回転軸を弾性層の平面内に位置させた部分円柱の断面として構成される。圧縮荷重下で、弾性層の中心は、外側へと最大限に変位する。突起の頂部からの材料の除去による凹部または「スクープ」は、突起の中心を弾性層の縁を超えて横方向に膨出させることなく、弾性層が外側へと広がることを可能にする。凹部の容積および形状は、弾性層の縁が弾性層および非弾性層の平坦な表面に垂直であったならば隣接する非弾性層を超えて外側へと突出することになるであろう弾性層の逆または反転の形状および容積と実質的に同等である。
凹部を形成するための材料の除去は、衝撃吸収によって弾性層の圧縮が引き起こされる際に、弾性層の縁がガイド要素および/またはノーズブロックの側壁に接触することによって被る圧力を(そのような凹部を持たない弾性層と比べて)減少させる。圧縮された弾性層の周縁部が実質的に単一の表面を有するガイド要素および/またはノーズブロックの側壁に接触するとき、表面積は、凹部を持たない弾性層において生じる膨出部の接触点のより小さい表面積と比べて大きくなる(したがって、圧力は小さくなる)。
弾性層の縁とガイド要素および/またはノーズブロックの側壁との間の接触圧を低減するための代案の方法は、弾性層および非弾性層の周縁部の輪郭の変化によって達成することができる。一実施形態によれば、周縁部に隣接する弾性層の厚さが、テーパ部分を形成するように減少させられる。別の実施形態によれば、周縁部に隣接する非弾性層の厚さが、テーパ部分を形成するように減少させられる。効果的なことに、どちらの実施形態も、弾性層の周縁部または非弾性層の周縁部のいずれかの体積を、全体としての層の体積または厚さには無視できる影響しか及ぼさずに減少させることによって、圧縮下で弾性層の縁に加わる圧力を低減するための手段を提供する。
上述の実施形態における弾性層がガイド要素に作用させる圧力の低減は、衝撃吸収装置アセンブリの圧縮時のガイド要素の機能または完全性への悪影響を防止するというさらなる利点を有する。
別の実施形態において、ガイド要素は、弾性層の内縁と外縁との間に配置され、ストライカピンの長手軸に実質的に平行に個々の衝撃吸収アセンブリの各々の弾性層を通過するように向けられ、各々の弾性層を横方向について位置決めする位置決めピンとして形成される。好ましくは、ピンは、非弾性層に取り付けられ、非弾性層の平坦な表面から直角に延び、弾性層を通過する。一実施形態において、非弾性層の反対向きの平坦な面上の位置決めピンは、同軸に整列させられ、随意により単一の連続的な要素として形成され、少なくとも2つの弾性層および1つの非弾性層を通過する。別の実施形態において、ピンは、非弾性層の反対向きの面に同軸に取り付けられるペアにて配置される。しかしながら、非弾性層の各側の位置決めピンが、必ずしも整列している必要はなく、あるいは同じ数である必要はないことを、理解できるであろう。
弾性層は、圧縮下で、ノーズブロックの壁に向かって外側へと撓むとともに、ストライカピンに向かって内側へと撓むが、内縁と外縁との間に静止しているヌル点位置が存在することを、容易に理解できるであろう。このヌル点位置は、衝撃吸収の際に横方向に移動することがないため、弾性層と弾性層を通過する位置決めピンガイド要素との間に相対運動が存在せず、したがって両者の間に引っ張りも圧縮も生じない。したがって、別の代案の実施形態において、位置決めピンは、対応する弾性層のヌル位置に対応する位置において非弾性層上に配置される。おおむね環状の弾性層のヌル位置は、弾性層の内周と外周との間に位置するおおむね環状の経路であることを、理解できるであろう。
好ましくは、4つの位置決めピンが、非弾性層の各側に用いられ、ストライカピンの周りに等距離に放射状に配置される。しかしながら、2つ以上のピンを使用して弾性層のセンタリングを保証できることを、理解できるであろう。
またさらなる実施形態においては、ガイド要素の別の代案の構成が、弾性層と1つ以上のアンカー点とを囲む張力バンドの形態で設けられる。一実施形態において、アンカー点は、ノーズブロックの壁の各面の中心に等距離で配置された4つのノーズブロックボルトによって提供される。好ましくは、各々の弾性層に別々の張力バンドが設けられる。しかしながら、張力バンドは、ノーズブロックボルトならびに/あるいはノーズブロック側壁の他の部分またはノーズブロック側壁への取り付け物を含むさまざまな数のアンカー点の周囲を通過するように構成されてよいことを、理解できるであろう。
張力バンドを、エラストマーなどの弾性材料で形成することも可能である。一態様によれば、張力バンドのうちのノーズブロックボルトの周りを通過する部分が、隣接するノーズブロック側壁の浅いくぼみを通過することで、使用時にバンドをノーズブロックボルト上で上下に摺動することがないように固定する。張力バンドは、必ずしもノーズボルトの回りを通過する必要はなく、代わりに、側壁の一部および/または何らかの他のフィッティングなどの他のアンカー点の周囲を通過しても、あるいはそのようなアンカー点を通過してもよい。張力バンドによって弾性層に加えられるセンタリング力は、バンドが2つのアンカー点の間の直接の直線経路から弾性層の外縁によってどの程度変位させられたかに比例する。したがって、張力バンドによって加えられ得る復帰のセンタリングのポテンシャル力を、異なる張力バンド材料の選択、アンカー点の隔たりおよび位置、弾性層の形状および寸法、ならびに連続するアンカー点の間のバンド部分の弾性層による撓みの程度によって変えることができることを、理解できるであろう。
すでに述べたように、弾性層の縁に直接形成される非支持の安定化造作は、成功裏に実装することが難しく、堅固でない細長いスライドの形態のガイド要素とともに使用されない限り、使用時に急速に磨耗し、機能できなくなる可能性すらある。しかしながら、別の実施形態においては、ノーズブロックの側壁に接触するように弾性層の外縁から直接突出した被支持安定化造作の形態のガイド要素のさらなる別の構成が提供される。好ましくは、弾性層上の被支持安定化造作は、対応する形状の隣接する非弾性層によって少なくとも1つの平面上に支持される。一実施形態において、非弾性層は、実質的に正方形または長方形の平面を有して形成され、隣接する弾性層の対応する安定化造作の形状および/または位置に実質的に対応するように形作られた少なくとも1つのタブ部を外周に配置して有している。好ましくは、タブ部は、非弾性層の各々の頂部に位置し、隣接するノーズボルトの間をノーズブロック側壁のすぐ近くまで通過するように形作られる。
使用の不可避の結果として、衝撃ハンマーは、当然ながら、磨耗および割れを被る。ストライカピンの浸食磨耗に加えて、ストライカピンの側面が、ノーズプレートおよびキャッププレートを貫く開口の側面を磨耗させる。この磨耗により、ストライカピンの長手軸が衝撃軸からずれてしまい、結果として、ストライカピンを取り囲む衝撃吸収アセンブリがノーズブロックの壁により近付く。ストライカピンと非弾性層の内縁との間あるいはノーズブロックの側壁と非弾性層の外縁との間のいずれかに或る程度の横すき間を取り入れることで、これに相当する程度の磨耗を首尾よく許容することができる。一貫したすき間による隔たりを維持するために、弾性層の上述のセンタリングに加えて、非弾性層の対向する側縁も、何らかの形態のセンタリングを必要とする。非弾性層は、当然ながら圧縮されても横方向に広がったり、撓んだりしないが、衝撃印加における使用の最中に横方向の整列が変化すると、ノーズブロックの壁ならびに/あるいはノーズブロックボルトなどのノーズブロックの内部の他の構造との干渉を引き起こす可能性がある。
一実施形態において、非弾性層は、非弾性層の外縁とノーズブロックの壁との間にすき間を空けつつ、内縁がストライカピンにすぐ隣接して位置するように構成される。
代案の実施形態において、非弾性層は、非弾性層の内縁とストライカピンとの間にすき間を空けつつ、外縁がノーズブロックの壁の少なくとも一部分および/またはノーズボルトにすぐ隣接して位置するように構成される。前者の実施形態では、非弾性層がストライカピンへの近接によって心出しされた状態を維持するが、非円形の非弾性層がストライカピンを中心にして回転し、ノーズブロックの側壁および/またはノーズブロックボルトに不都合にも干渉する可能性が残る。
したがって、本発明は、ノーズブロック内壁の周りに配置され、非弾性層の回転を妨げるような配置および寸法とされる一方で、長手方向の衝撃軸に平行な移動は許容する1対の拘束要素を備える。一実施形態において、拘束要素は、ノーズブロック側壁に位置する1対のノーズボルトの間においてノーズブロック内壁に隣接して配置され、ノーズブロック側壁に位置する1対のノーズボルトを超えてストライカピンに向かって横方向内側に延びている1対の実質的に細長い直方体を備える。
一実施形態において、用語「ハウジング」は、ハンマーウエイトと、装置の一部であるならばストライカピンとを、設置および固定するために使用される衝撃ハンマーの任意の部分であって、任意の外ケーシングまたは保護カバー、ノーズブロック(ストライカピンを突出させる)、ならびに/あるいは保護カバーの内部または外部に位置し、ハンマーウエイトをストライカピンなどに接触させるように動作させ、さらには/あるいは案内するその他の付属品または機構などの部分を含むように使用される。ノーズブロックは、(ハウジングの残りの部分に取り付けられる)別個の品目として形成されても、一体的に形成されたハウジングの一部であってもよく、これらの両方のノーズブロックの構成の変種は、本明細書で定義されるとおりのハウジングの一部として含まれる。
このように、本発明の種々の実施形態は、これらに限られるわけではないが
・ハンマーウエイトの重量に対する断面の比に応じて、真空によってもたらされる総衝撃エネルギーの割合を容易に設定できる、
・真空アシスト衝撃ハンマーを同等のサイズの重力のみの衝撃ハンマーと比べて2倍の重量対衝撃エネルギーの比にて製造することを可能にするための充分な重量削減、
・同じ衝撃エネルギーにおいてより下位の掘削機重量クラスへの移動に充分であるだけでなく、掘削機の資本コストの低減が先行技術の重力式ハンマーの総コストを上回るような総ハンマー重量の削減を伴って構成された真空アシスト衝撃ハンマー
など、本明細書に記載のとおりの先行技術に対する多数の利点および利益を提供する。
本明細書の開示が、いずれかの実施形態または態様の特徴、構成要素、方法、または態様の任意の1つ以上を個別に、または部分的に、あるいは集合的に、その他の実施形態または態様のその他の特徴と任意のやり方で組み合わせることができる実施形態を包含し、本明細書の開示が、そのようでないと明示的に述べられていない限り、任意の可能な組み合わせを排除するものではないことを、理解すべきである。
本発明のさらなる態様および利点は、あくまでも例として添付の図面を参照して与えられる以下の説明から、明らかになるであろう。