以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、実施形態1のろ過装置を左方から視た側面図である。図2は、実施形態1の土台部と支持板を上方から視た平面図である。図3は、実施形態1の回転基部を前方から視た正面図である。図4は、実施形態1の土台部と支持板と密閉容器を前方から視た正面図である。図5は、実施形態1の密閉容器の断面図である。図6は、実施形態1の支持板と動力伝達部とモータを前方から視た正面図である。図7は、実施形態1の昇降部を右前方から視た斜視図である。図8は、実施形態1のろ室にスラリーを導入しろ過し始めた状態を示す図である。図9は、図8の状態から脱液してウェットケークが生成された状態を示す図である。図10は、図9の状態に洗浄液を導入しウェットケークを洗浄し始める前の状態を示す図である。図11は、図9の状態から支持板を回動させて密閉容器を傾けた状態を示す図である。図12は、図11の状態から撹拌翼を下げて駆動させた状態を示す図である。図13は、図12の状態から密閉容器に排出口を開放させて固体ケークを排出した状態を示す図である。図14は、実施形態1の密閉容器でウェットケークを乾燥させる状態を示す図である。図15は、実施形態1の密閉容器で溶媒置換を行っている状態を示す図である。図16は、実施形態2のろ過装置を有する天然色素抽出システムの全体構成を示す図である。図17は、実施形態2のろ過装置で天然色素を抽出する工程を示すフロー図である。図18は、実施形態3のろ過装置の密閉容器の断面図である。図19は、実施形態3のろ過装置で天然色素を抽出する工程を示すフロー図である。図20は、実施形態1のろ過装置の蒸気回収工程を示す図である。
(実施形態1)
図1に示すように、ろ過装置100は、土台部1と、支持板2と、密閉容器3と、撹拌用軸4と、撹拌翼5と、動力伝達部6と、モータ7と、昇降部8と、ジャケット90と、ジャケット90に温水を供給する温水供給装置(不図示)と、を備える。
土台部1は、地面101から上方に延在する複数の柱10と、柱10の上部同士を連結する水平部11と、水平部11の上面に固定された回転基部12と、回転基部12に支持された回動軸13と、支持板2の上面に固定された支持板固定部14と、回動軸13の一端に固定された支持片15と、複数の固定ピン16と、を備えている。
柱10は、上下方向に延在し、下部が地面101に固定されている。図2に示すように、柱10は、4つ設けられている。4つの柱10のうち2つは、支持板2の前方に配置され、互いに左右方向に離隔して配置されている。4つの柱10のうち残りの2つは、支持板2の後方に配置され、互いに左右方向に離隔して配置されている。よって、4つの柱10は、平面視で四角形の角部に位置するように互いに離隔して配置されている。
水平部11は、水平方向に延在する部材である。なお、水平部11は、断面形状がL字状を成している(図1参照)。水平部11は、2つ設けられている。1つの水平部11は、支持板2よりも前方に配置された2つの柱10の上部に固定され、2つの柱10の間を左右方向に延在している。残りの水平部11は、支持板2よりも後方に配置された2つの柱10の上部に固定され、2つの柱10の間を左右方向に延在している。これにより、2つの水平部11は、前後方向に互いに離隔しながら、左右方向に平行に延在している。
なお、回転基部12、回動軸13、支持板固定部14、支持片15、及び固定ピン16は、2つの水平部11にそれぞれ設けられ、互いに同じ構成となっている。よって、回転基部12、回動軸13、支持板固定部14、支持片15、及び固定ピン16の説明は、支持板2よりも前方に配置された方を代表例として説明し、支持板2よりも後方に配置された方の説明を省略する。
回転基部12は、水平部11の上面であって左右方向の中央部に固定されている。図3に示すように、回転基部12の中央部には、前後方向に貫通する円形状の貫通孔12aが設けられている。また、貫通孔12aの内周面には、軸受12bが設けられている。本開示において軸受12bの種類は特に限定されないが、高荷重に耐える例えばメタル軸受などが挙げられる。回転基部12の前面12cは、支持片15(図1参照)と対向している。前面12cには、複数の固定穴12dが設けられている。この固定穴12dは、前面12cから後方に窪む穴であり、貫通孔12aの中心に周方向に離隔して配置されている。なお、本実施形態では、30°間隔で12個の固定穴12dが設けられている。
回動軸13は、軸Oが前後方向(水平方向)に延在する円柱状の部材である。回動軸13は、回転基部12の貫通孔12aに挿入され、軸受12bに回転自在に支持されている。図2に示すように、回動軸13の後端部は、回転基部12よりも後方に延出し、平面視で支持板2と重なる程度に延出している。また、回動軸13の前端部は、回転基部12の前面12cよりも前方へ突出している。
支持板固定部14は、回転基部12と前後方向に対向するように配置されている。支持板固定部14は、前後方向に貫通する貫通孔14aを有し、内周面に軸受(不図示)が嵌合している。回動軸13の後端部は、支持板固定部14の貫通孔14aに挿入され、軸受(不図示)に回転自在に支持されている。これにより、支持板2は、回動軸13周りに回転可能となっている。
支持片15は、回転基部12の前方に配置される本体部15aと、本体部15aから左方に延出する腕部15bと、腕部15bから後方に延在する屈曲部15cと、を備えている。図4に示すように、本体部15aは、前方から視て円形状を成している。本体部15aの中央部は、回動軸13の前端部が貫通している。また、本体部15aと回動軸13は、相対回転しないように固定されている。本体部15aには、前後方向に貫通し、固定ピン16の軸部が挿入される4つの貫通孔(不図示)が設けられている。この貫通孔(不図示)は、回動軸13の軸Oを中心に90°間隔で配置されている。腕部15bは、水平方向に延在している。腕部15bの左端部の下側には、屈曲部15cが連結している。図2に示すように屈曲部15cは、水平部11の上方を通過しつつ、腕部15bから後方に延在している。そして、屈曲部15cの後端部15dは、支持板2と連結している。以上から、回動軸13と支持片15と支持板2は、供回りするようになっている。
固定ピン16の軸部は、本体部15aの貫通孔15e(図2参照)に挿入されている。また、固定ピン16の軸部の先端部は、回転基部12の固定穴12dに挿入されている。よって、回動軸13と支持片15と支持板2は、軸Oを中心に回転しないように複数の固定ピン16に規制されている。また、固定ピン16の軸部は、本体部15aの貫通孔15eに対し、摺動自在に嵌合している。よって、固定ピン16を前方に引くことで、固定穴12dから固定ピン16の先端部が抜け、回動軸13と支持片15と支持板2が回転可能となる。
図2に示すように支持板2は、水平方向に延在する板状の部品である。支持板2は、平面視で四角形状を成し、右辺の中央部に切り欠き2aが設けられている。この切り欠き2aは、撹拌用軸4など、上下方向に延在する部品を配置させるための空間である。支持板2の下面には、下方に延在する支持軸20が設けられている。支持軸20の左側面には、凹面21が設けられている。そして、凹面21には、上下方向に図示しないラックが設けられている。
図5に示すように、密閉容器3は、連結部29と、上蓋部30と、筒部31と、下蓋部32と、ろ板33と、を備える。連結部29は、支持板2の下方に配置された部品である。連結部29は、支持板2を貫通するボルトに締結され、支持板2と一体化している。上蓋部30と下蓋部32は、筒部31の上下の開口を閉塞している。これにより、密閉容器3の内部にろ室Sが形成される。上蓋部30は、図示しないボルトにより、連結部29の下側に固定されている。筒部31は、ろ室Sの側壁を構成する。
筒部31及び下蓋部32は、それぞれアーム部22を介して支持軸20と連結している。アーム部22は、筒部31の左壁部又は下蓋部32の下壁部から左方に延びている。アーム部22は、前後方向に互いに対向する一対の板部材22aから構成される(なお、図5において一方の板部材22aのみを図示)。アーム部22の左端部には、ピニオン23が回転自在に支持されている。ピニオン23は、支持軸20のラックと歯合している。一対の板部材22aの間には、支持軸20の右側面に当接する突起24を有している。そして、ピニオン23と突起24で、左右方向から挟持することで、支持軸20に対し、アーム部22が上下方向に移動自在に連結している。そして、下蓋部32が下方に移動することで、筒部31の下側が開放される(図13参照)。さらに、筒部31が下方に移動することで、筒部31の上側が開放される。このため、上蓋部30と、筒部31と、下蓋部32のそれぞれが分離可能となっている。このような構造によれば、上蓋部30と、筒部31と、下蓋部32の洗浄が容易となる。また、アーム部22には、ピニオン23の歯に係合する爪(不図示)が設けられ、ラチェット機構となっている。よって、爪によりピニオン23の回転が規制されることで、筒部31及び下蓋部32が上下方向に位置決めされる。
ろ板33は、下蓋部32の上面32aに配置され、水平方向に延在する板状の部材である。ろ板33には、上下方向に貫通する複数の孔33aが設けられている。ろ板33の上面には、下方に窪む凹部33bが設けられている。この凹部33bには、ろ材34が配置される。以上から、ろ室Sにスラリーが導入されると、液体は、ろ材34及びろ板33の孔33aを通過して下蓋部32の上面32aの方に流れる。一方で、固体は、ろ材34の上方に堆積する。
下蓋部32の中央部には、液体を外部に排出するための開口部32bが設けられている。開口部32bには、排出管35が接続している。なお、下蓋部32の上面32aには、開口部32bに繋がる図示しない排水溝が設けられている。よって、下蓋部32の上面32aに流れた液体は、開口部32bから排出管35に流れて外部に排出される。
また、密閉容器3には、導入管36と、洗浄液供給管(不図示)と、加圧管37と、排気管(不図示)とが設けられている。導入管36は、上蓋部30の上壁を貫通し、スラリーをろ室S内に供給するための管である。洗浄液供給管は、ろ室S内に洗浄液を供給するための管である。加圧管37は、ろ室Sと外部空間とを連通する配管である。本実施形態では、連結部29の外表面に供給口37aが設けられている。よって、この供給口37aに、空気や不活性ガスなどの気体を供給する加圧装置を取り付けることで、ろ室Sに空気等を供給することができる。図示しない排出管は、ろ室S内の気体を外部に排出するための管である。
ジャケット90は、密閉容器3の外周側に装着される密閉容器用温度調節手段である。ジャケット90は、内部に熱媒体が流れる流路を有している。流路を流れる熱媒体が加温されたものである場合、ジャケット90は密閉容器3を加熱し、流路を流れる熱媒体が冷却されたものである場合、ジャケット90は密閉容器3を冷却する。なお、本実施形態においては、温水供給装置から温水が供給されるため、ジャケット90は密閉容器3を加熱する。また、ジャケット90は、下蓋部32の下面に装着される第1ジャケット91と、筒部31の側壁の外周面に装着される第2ジャケット92と、を備える。
撹拌用軸4は、上下方向(鉛直方向)に延在する軸部材である。図5に示すように、撹拌用軸4は、密閉容器3の連結部29と上蓋部30とを貫通し、撹拌用軸4の下部41がろ室Sに配置されている。また、上蓋部30には、撹拌用軸4が貫通する穴部を封止するシール40が設けられている。
撹拌翼5は、撹拌するための部材である。実施形態の撹拌翼5は、撹拌用軸4の下部41が嵌合する有底筒状の中心部50と、中心部50から水平方向に延在し、その端部から上方に延在するL字状の複数の羽根部51と、を備える。よって、羽根部51は、ろ室Sの底部であるろ材34の上方と、ろ室Sの側面である筒部31の側壁と、を沿うように回動する。このような羽根部51によれば、羽根部51の上端部52が比較的上方に位置し、筒部31の側壁の上方も撹拌できる。また、羽根部51には、円弧状の切り欠き53が設けられ、撹拌時の抵抗が低減するようになっている。なお、本実施形態の撹拌翼5は、いわゆる碇形状とも呼ばれる。また、本開示において、撹拌翼の形状は、碇形状のものに限定されない。よって、本開示においては、パドル型など従来からある撹拌翼を使用してもよい。
図6に示すように、撹拌用軸4は、支持板2の切り欠き2aを通過し、支持板2よりも上方に延出している。動力伝達部6は、モータの出力軸70の回転運動を減速させる減速機である。動力伝達部6は、本体部60と、駆動軸筒61と、伝達軸筒62と、を備える。本体部60は、支持板2の上方に配置され、図示しないボルトにより支持板2に固定されている。本体部60の右方には、モータ7が固定されている。モータ7の出力軸70は、本体部60の内部に挿入されている。本体部60は、出力軸70から伝達される回転力を減速し、さらに撹拌用軸の向きを上下方向に変換し、駆動軸筒61に伝達している。
駆動軸筒61は、上下方向に延在する筒状の部品である。駆動軸筒61は、本体部60に回転自在に支持されている。また、駆動軸筒61は、本体部60を上下方向に貫通している。また、駆動軸筒61は、平面視で、支持板2の切り欠き2aと重なるように配置されている。そして、駆動軸筒61は、支持板2の切り欠き2aを通過し、駆動軸筒61の下端61aが支持板2の下面よりも下方に位置している。そして、撹拌用軸4は、駆動軸筒61の内部を通過することで、本体部60よりも上方に延出している。なお、駆動軸筒61の内周面と撹拌用軸4の外周面は、離間している。よって、駆動軸筒61から撹拌用軸4には、直接動力は伝達しない。一方で、駆動軸筒の上部61bは、本体部60よりも上方に突出している。
伝達軸筒62は、上下方向に延在する筒状の部品であり、本体部60に設けられた台座63により回転自在に支持されている。伝達軸筒62の下部62aは、駆動軸筒61の外周側に嵌め込まれている。伝達軸筒62の内周面と駆動軸筒61の外周面の間には、キー64が設けられている。キー64は、伝達軸筒62と駆動軸筒61とを周方向に相対回転不能に連結している。よって、伝達軸筒62は、駆動軸筒61と供回りする。
伝達軸筒62の上部62bは、駆動軸筒61よりも上方に突出している。このため、伝達軸筒62の上部62bの内周面は、撹拌用軸4の外周面と対向している。撹拌用軸4の上部の外周面には、上下方向に延在するスプライン溝42が周方向に等間隔で複数設けられている。また、伝達軸筒62の上部62bの内周面には、上下方向に延在し、かつスプライン溝42に対向する複数のボール保持溝65が設けられている。ボール保持溝65には、複数のボール66が配置されている。このボール66は、スプライン溝42にも入り込んでいる。よって、伝達軸筒62が回転すると、ボール66が周方向に移動し、撹拌用軸4が回転する。一方で、撹拌用軸4が上下方向に移動した場合、ボール66がスプライン溝42を転動する。以上から、撹拌用軸4の上下方向への移動は、動力伝達部6によって妨げられないようになっている。
図7に示すように、昇降部8は、本体部60の上面に固定された2つの固定部80と、固定部80から上下方向に延在する2つの脚部81と、脚部81を案内する2つのローラ82と、脚部81から水平方向に延在する2つの水平部83と、水平部83に支持される第1支持部84と、第1支持部84の上方に配置される第2支持部85と、を備える。
固定部80は、水平方向に延びる板状部材である。固定部80は、上下方向に貫通する穴部80aが設けられている。また、図2に示すように、2つの固定部のうち1つは、撹拌用軸4に対し、左前方に位置するように配置されている。2つの固定部のうち残りの1つは、撹拌用軸4に対し、右後方に位置するように配置されている。よって、2つの固定部80、2つの脚部81、2つのローラ82、及び2つの水平部83は、撹拌用軸4を挟んで対角線上に配置されている。
脚部81の外側面(撹拌用軸4を向く面と反対面)には、ローラ82が転動する凹面81aが設けられている。ローラ82は、固定部80の上面に設けられた支持片82aにより回転自在に支持されている。ローラ82の端面には、ハンドル82bが設けられている。よって、ハンドル82bを把持してローラ82を回転させると、ローラ82に当接する脚部81が上下方向に移動する。なお、本開示は、ローラがピニオン、脚部81の凹面81aがラックとなっていてもよい。つまり、ラック&ピニオンにより脚部81が昇降するようにしてもよい。
また、脚部81には、ローラ82の軸と平行な方向に貫通する貫通孔81bが上下方向に複数設けられている。また、支持片82aには、脚部81の貫通孔81bと対向する貫通孔(不図示)が設けられている。そして、支持片82aには、支持片82aの貫通孔と脚部81の貫通孔81bとを貫通する固定ピン82cが設けられている。これにより、脚部81が上下方向に移動しないように規制される。なお、固定ピン82cは、支持片82aの貫通孔と脚部81の貫通孔81bとに対し、摺動自在に嵌合している。よって、固定ピン82cを抜くことで、脚部81が上下方向に移動できる。
水平部83は、脚部81の上部と、第1支持部84と、を連結する部材である。第1支持部84は、筒状の部品である。第1支持部84の内周面には、軸受84aが設けられている。よって、第1支持部84は、撹拌用軸4を回転自在に支持している。第1支持部84の上面84bには、撹拌用軸4を貫通する固定ピン86が当接している。よって、撹拌用軸4は、固定ピン86を介して第1支持部84の上面84bに吊るされた状態となっている。よって、脚部81が上下方向に移動すると、第1支持部84の上面84bに当接する固定ピン86も脚部81に合わせて上下動し、撹拌用軸4が昇降する。
第2支持部85は、第1支持部84の上方に固定された有底筒状の部品である。第2支持部85の下面には、円形状の凹部85aが設けられている。凹部85a内には、固定ピン86が配置されている。この第2支持部85によれば、固定ピン86が第1支持部84の上面84bから大きく上方に離隔する、ということが回避される。
以上から、実施形態1のろ過装置100によれば、支持板2を回動させることで、密閉容器3と撹拌用軸4と撹拌翼5と動力伝達部6とモータ7と昇降部8が一体に回動する。よって、密閉容器3と動力伝達部6とモータ7と昇降部8のそれぞれを傾けることができる(図11から図14参照)。
なお、図2、図4に示すように、支持片15の屈曲部15cが水平部11の上方を延在している。よって、支持板2の回転方向は、ろ過装置100を正面した場合、右回り方向(図4の矢印Aを参照)に限定される。
次に実施形態1のろ過装置100の使用方法の一例について図面を参照しながら説明する。
図8に示すように、ろ過装置100において脱液処理工程を行う場合、支持板2が水平状態となるように予め準備する。つまり、密閉容器3のろ板33とろ材34は水平方向に延在した状態とする。そして、導入管36からスラリー110をろ室Sに導入し、ろ材34の上方にスラリー110を堆積させる。次に、撹拌翼5を駆動させてスラリー110の上面を均して厚みが均一な層を形成し、その後に通気脱液を行う。通気脱液は、加圧管37を介してろ室S内であって、スラリー110の上方(ろ室Sの上方)に気体を供給する。これにより、供給された気体は、スラリー110の全体を通過し、さらにろ材34及びろ板33を通過し、排出管35側に向かう。ここでスラリー110を通過する気体は、スラリー110の粒子間に含まれる液体を排出管35側に運ぶキャリアとして作用する。これにより、スラリー110が脱液される。そして、一定時間経過すると、ろ材34の上方には、図9に示すように、含水率が、例えば20%から30%のウェットケーク120が堆積する。スラリー110がウェットケーク120の状態になった後、洗浄処理又は粉体化処理を行うことができる。以下、洗浄処理工程、粉末化処理工程の順で説明する。なお、上記した通気脱液は、密閉容器3が水平状態(支持板2が水平状態)で行われているが、スラリー110が均一層となっていればよく、密閉容器3は、例えば45°や90°など任意の角度に傾いていてもよい。なお、本開示において、スラリーに含まれる固体は、無機物であっても有機物であってもよく、特に限定されない。
洗浄処理工程は、いわゆる溶媒洗浄ともいい、密閉容器3の内部にスラリーと、スラリーに含まれる溶媒と異なる新規洗浄溶媒と、を導入し、溶媒洗浄する処理であり、本実施形態においてはウェットケーク120に含まれる固体を洗浄する。具体的に、図10に示すように、洗浄液供給管(不図示)からろ室Sに洗浄液130を供給する。次に、撹拌翼5を駆動させ、洗浄液130でウェットケーク120の固体を洗浄する。これによれば、ウェットケーク120は、洗浄液130を吸収してスラリーとなる。そして、所定時間経過したら、撹拌翼5の回転を停止し、さらに撹拌翼5を上昇させる。その後、加圧管37を介してろ室Sに気体を供給する。これにより、スラリーに含まれる液体は、ろ材34とろ板33を通過して排出管35から排出される。そして、ろ材34の上方には、洗浄されたウェットケークが堆積される。なお、本開示において、洗浄回数は特に限定されない。また、実施形態の洗浄処理工程は、密閉容器3が水平状態(支持板2が水平状態)で行われているが、密閉容器3は、例えば45°や90°など任意の角度に傾いていてもよい。また、脱液処理工程及び洗浄処理工程において、ろ室S内にあるスラリー110及びウェットケーク120に含まれる液体分の吸引は、排出管35側を真空減圧による吸引排気としてもよい。若しくは、真空乾燥により液体分の吸引をしてもよい。
粉末化処理工程は、脱液処理により生成されたウェットケーク120や、洗浄処理により生成されたウェットケークから、乾燥した粉末を生成する工程である。具体的には、最初に、図11に示すように、支持板2を回転させて密閉容器3を傾ける。これによれば、ウェットケーク120は、重力によって、ろ材34上から筒部31の右側壁の方に流動する。
次に、図12に示すように、撹拌翼5を下方に移動し、撹拌翼5を駆動させる。撹拌翼5は、ウェットケーク120の一部を上方(筒部31の左側壁の方)に持ち上げる。そして、撹拌翼が最上方(筒部31の左側壁部の方)に到達したあたりで、持ち上げられたウェットケークが重力により下方(筒部31の右側壁一側面の方)に落下する。これにより、落下したウェットケーク120と、下方に配置されるウェットケーク120とが衝突し、粉砕される。そして、ウェットケーク120は、このような操作を何度も繰り返し粉砕されることで微細化し、最終的に乾燥した粉末が生成される。そのほか、本開示において撹拌翼5の回転速度については特に限定されない。また、ろ室S内に発生するケークに含まれていた液分が蒸発した蒸気の排気は、ろ室S内を通気換気としても、排出管35側を真空減圧による吸引排気としてもよい。
また、上記した粉末化処理工程においては、ジャケット90(第1ジャケット91、第2ジャケット92)に温水を供給する。これにより、ジャケット90が装着される筒部31の側壁と下蓋部32の下壁が加熱される。粉末化処理工程において、ウェットケーク120は筒部31の右壁部の方に移動し、右壁部との接触面積が増加している。よって、筒部31の右壁部によって加温されるウェットケーク120の量が増加し、粉末化処理工程の処理時間が短縮する。
また、本実施形態の撹拌翼5は、羽根部51が筒部31の側壁に沿って延在している。よって、多くのウェットケーク120を持ち上げる(撹拌する、落下する)ようになっている。このため、乾燥する粉末を得るまでの時間が短縮される。そのほか、密閉容器3自体が傾いているため、ろ材34の一部(左側)にウェットケーク120が堆積されていないため、目詰まりし難い。
なお、本例と異なり支持板2が水平の場合、ウェットケーク120はろ材34上に堆積する。このような状態で撹拌翼5を駆動させた場合、ウェットケーク120が撹拌翼5と供回りする。このため、支持板2が水平の場合、ウェットケーク120は粉末化が進行せず、一塊となった固体ケークとなる。これに対し、本実施形態で示すように、密閉容器3を傾斜させて乾燥させた場合、ウェットケーク120は粉末への粉末化が促進され、乾燥効率が向上する。
次に、粉末化処理が終了したら、図13に示すように、筒部31の右壁部の下方に容器150を準備する。次に、下蓋部32を下方に移動させ、筒部31と下蓋部32を上下に離隔させる。これにより、ろ材34の上の方から筒部31の右側壁の方に堆積する粉末140は、重力によって筒部31と下蓋部32の間を通過し、ろ室Sの外部に排出され、容器150に回収される。よって、粉末140を排出する作業が容易となる。なお、この粉末140の排出の際、支持板2を回転させて、粉末140の排出し易い角度に変更してもよい。
なお、上記した粉末化処理の際、図11、図12の支持板2の回転角度は、45°程度となっているが、本開示はこれに限定されない。撹拌翼5でウェットケーク120を持ち上げて重力で下方に落下できる角度であれば特に限定されない。よって、図14に示すように、支持板2を90°回転させて、筒部31の右側壁が水平方向に延在するようにしてもよい。但し、図14に示す状態だと、ウェットケーク又は粉末がシール40の間に進入する可能性がある。よって、支持板2の回転角度をシール40の方にウェットケーク又は粉末が飛散しない角度に制限することが好ましい。
そのほか、ろ過装置100は、溶媒を置換することが可能である。図15に示すように、例えば、スラリー中の溶媒と置換したい新規の置換溶媒を導入管36から導入し、スラリーに含まれていた最初の溶媒の濃度を下げる。そして、加圧管37の供給口37aからろ室Sに気体を供給する。これにより、溶媒がろ材34を通過し、ろ室S内の溶媒の量が減る。再度、新規の置換溶媒を導入管36から導入し、さらに最初に含まれていた最初の溶媒の濃度をさらに下げる。そして、加圧によりろ室S内の溶媒の量を減らす。このような工程を繰り返し行うことで、溶媒の比率は、新規の置換溶媒の比率が次第に高くなり、最終的に溶液中の溶媒が新規の置換溶媒に置き換わる。また、このような溶媒置換を行う場合、密閉容器3は、図15に示すように傾斜させてもよい。これによれば、固体160の一部は、筒部31の右側壁の方に流動する。このため、ろ材34の一部は、固体160に覆われなくなり、ろ過抵抗が小さくなる。つまり、ろ材34のうち固体160に覆われていない部分から溶媒が円滑に排出され(図15の矢印B参照)、置換作業の時間を短縮化する。また、溶媒置換処理における密閉容器3の好ましい傾斜角度は、図15に示すように90°である。この角度によれば、固体160は密閉容器3の筒部31の右側壁に堆積し、ろ材34のうち固体160によって覆われる面積が最も小さくなる。よって、溶媒の排出が最も円滑に行われる。なお、溶媒置換後は、上記した脱液処理工程を経たケークは、粉末化処理工程を行ってもよい。また、溶媒置換だけでなく溶媒洗浄を行ってもよい。
以上、実施形態1のろ過装置100は、土台部1と、土台部1に支持された支持板2と、支持板2の下方に配置され、内部に水平方向に延在するろ板を有する密閉容器3と、密閉容器3の内部から密閉容器3の外部であって支持板2の上方へ延びる撹拌用軸4と、撹拌用軸4の下部に固定された撹拌翼5と、動力を生成するモータ7と、支持板2の上方に配置されるとともに撹拌用軸4に貫通され、動力を撹拌用軸4に伝達する動力伝達部6と、動力伝達部6から上方に突出する撹拌用軸4の上部を支持し、撹拌用軸4を昇降させる昇降部8と、を有する。動力伝達部6は、動力により回転する筒状の駆動軸筒61を有する。撹拌用軸4は、駆動軸筒61の内部を貫通するとともに、駆動軸筒61に対して上下方向に移動自在であり、かつ相対回転不能に連結する。撹拌用軸4は、昇降部8に対して相対回転可能であり、かつ上下方向に相対移動不能に連結する。支持板2は、水平方向に延在する軸回りに回動可能に土台部1に支持される。密閉容器3と動力伝達部6と昇降部8は、支持板2に支持され、支持板2と供回りする。ろ過装置100は、密閉容器3の外周面に装着された密閉容器用温度調節手段(ジャケット90)を備える。また、実施形態1のろ過装置100を用いた処理方法は、密閉容器3の内部でスラリーを脱液し、ウェットケークを生成する脱液処理工程と、密閉容器3を傾けて撹拌翼5を駆動し、ウェットケークを撹拌しつつ乾燥させる粉末化処理工程と、を行うことができる。また、粉末化処理工程は、密閉容器用温度調節手段(ジャケット90)でウェットケーク120を加熱することができる。実施形態1のろ過装置100を用いた処理方法によれば、脱液処理工程の後であって粉末化処理工程の前に、密閉容器3の内部でウェットケークを洗浄する洗浄処理工程を行うことができる。また、実施形態1のろ過装置100を用いた処理方法によれば、脱液処理工程の前に、密閉容器3を傾けて密閉容器3の内部に新規置換溶媒を導入し、密閉容器3の内部のスラリーに含まれる溶媒を前記新規置換溶媒に置換する溶媒置換工程を行うことができる。
以上の実施形態1によれば、密閉容器3が水平状態から傾いた状態で撹拌翼5が駆動すると、ろ室S内でウェットケークから粉末が生成される。なお、従来のろ過装置の内部では粉末を生成できず、ろ過装置から固体ケークを搬出し、粉砕装置で粉砕していた。また、ケークを一時的に保管するため、例えばバッファタンクが必要となる場合があった。よって、従来は、ろ過装置以外の設備や設置スペースが必要であった。一方で、実施形態1のろ過装置100は、密閉容器3内で、投入したスラリーから排出する粉末までを一貫して生成できる、いわゆる、パイプレスプラントである。このため、ろ過装置以外の設備や設置スペースが不要となり、コストが大きく削減される。そのほか、粉体を生成した後に種類の異なる粉体を生成する場合、粉体の生成に使用した設備の分解洗浄が必要となる。よって、従来では、ろ過装置以外にバッファタンク、粉砕装置、及び搬送装置のそれぞれの分解洗浄が必要であり、多大な労力を要していた。一方で、実施形態1によれば、分解洗浄対象物はろ過装置100のみとなる。よって、コンタミネーションが低減し(分解洗浄する対象が低減し)、労力が大きく低減する。また、実施形態1のろ過装置100によれば、溶媒置換の処理時間を短縮化できる。また、密閉容器3を傾けることで重力により粉末140をろ室Sの外部に排出することができる。よって、粉末140を排出する作業の労力を削減できる。さらには、粉末化処理工程において、ジャケット90に温水が供給され、密閉容器3の傾きによりろ材34から筒部31の右側壁に流動したウェットケーク120が加温される。よって、短時間で粉末140を生成することができる。
以上、実施形態1について説明したが、本開示のろ過装置において、脱液処理工程後に、密閉容器3を水平状態にしたままさらに乾燥させて固体ケークを生成することも可能である。つまり、本開示のろ過装置は、必要に応じて粉末又は固体ケークを生成することができる。
(実施形態2)
次に実施形態2のろ過装置100Aについて説明する。実施形態2では、ろ過装置100Aが天然色素抽出システム1000に用いられた例を挙げて説明する。天然色素抽出システム1000は、微細藻類の細胞内に含まれる天然色素や油を抽出するためのシステムである。図16に示すように、天然色素抽出システム1000は、ろ過装置100Aと、ろ過液槽200と、溶剤再生装置300と、各種の配管と、を備える。なお、実施形態2のろ過装置100Aは、実施形態1のろ過装置100と同一である。
図16に示すように、実施形態2において、密閉容器3の加圧管37の供給口37aには、配管400が接続されている。配管400(供給口37a)の下流側は、加圧装置95が合流する。また、溶剤再生装置300に接続している。配管400には、図示しない切り替えバルブが設けられている。切り替えバルブを操作することで、バルブの下流側においてろ室S内に供給する対象を、加圧装置95の気体(例えば窒素)に、又は溶剤再生装置300から供給される溶媒に選択することができる。
実施形態2のろ過装置100Aは、実施形態1のろ過装置100と同様に、脱液処理、洗浄処理、溶媒置換等、粉末化処理を行うことができるが、本システムにおいては、微細藻類の細胞から天然色素等を溶媒に溶出させる天然色素抽出処理を行っている。以下、具体的な処理方法について説明する。
図17に示すように、天然色素抽出方法は、微細藻類投入工程S1と、溶媒投入工程S2と、加温撹拌工程S3と、脱液処理工程S4と、粉末化処理工程S5と、粉末回収工程S6と、を有している。
微細藻類投入工程S1は、導入管36を通じて微細藻類乾燥粉末500をろ室S内に導入する。これにより、ろ材34の上に微細藻類乾燥粉末500が堆積する。微細藻類乾燥粉末500は、微細藻類を乾燥させた粉末である。微細藻類の種類としては、例えばスピルリナなどが挙げられる。また、微細藻類投入工程S1の開始時点において、支持板2とろ材34とろ板33は、水平方向に延在している。
溶媒投入工程S2は、加圧管37を通じて溶媒510をろ室S内に導入する。溶媒510は、微細藻類の細胞内から天然色素や油を抽出可能な極性溶媒であり、例えばエタノールなどの有機溶剤が挙げられる。微細藻類乾燥粉末500に対する溶媒510の投入比は、例えば1:10の割合であるが、本開示において特に制限はない。また、配管400を介して供給される溶媒510は常温である。よって、本工程の段階では、細胞内の天然色素や油は、溶媒510に十分には溶出しない。
加温撹拌工程S3は、ジャケット90(第1ジャケット91、第2ジャケット92)に温水を供給する。また、加温撹拌工程S3は、撹拌翼5を下げて撹拌翼5を駆動させる。ジャケット90への温水供給により、筒部31の側壁と、下蓋部32の下壁が加熱される。これにより、ろ室Sの溶媒510の温度が上昇し、細胞内の天然色素や油が溶媒510に溶出し易くなる。この加温撹拌工程S3を抽出工程と呼ぶ場合がある。なお、細胞内の天然色素や油が溶媒に溶出し易い温度は、60℃から80℃である。ただし、溶媒510としてエタノールを使用する場合、エタノールは78℃程度で気化する。よって、エタノールを溶媒510として利用する場合、溶媒510の温度を例えば60℃〜70℃にするのが好ましい。また、撹拌翼5の駆動により、溶媒510が撹拌されて微細藻類乾燥粉末500が分散するが、加熱時間は特に限定されない。この加温撹拌工程S3は、凡そ20分から25分程度行う。これによれば、細胞内にある多くの天然色素や油が溶媒510に溶出する。なお、本実施形態の加温撹拌工程S3は、密閉容器3が水平状態としているが、特に密閉容器3の角度は限定されない。つまり、密閉容器3は、例えば45°や90°など任意の角度に傾いていてもよい。
脱液処理工程S4は、撹拌翼5の駆動を停止して撹拌翼5を上昇させる。また、脱液処理工程S4は、加圧装置95からろ室S内に気体を供給し、ろ室Sの気圧を上昇させる。これによれば、溶媒510がろ材34及びろ板33を通過し、排出管35から溶媒510が排出される。また、このような状態を暫く継続すると、ろ材34の上に含水率が例えば20%から30%のウェットケーク520が堆積する。ウェットケーク520は、溶媒510を含んだ微細藻類である。なお、ろ室S内の溶媒510の吸引に関し、排出管35側を真空減圧による吸引排気としてもよい。
粉末化処理工程S5は、支持板2を回動させて密閉容器3を傾ける。また粉末化処理工程S5は撹拌翼5を駆動させる。さらに粉末化処理工程S5は、ジャケット90に温水を供給する。密閉容器3の傾きにより、ウェットケーク520の一部は、ろ材34の上から筒部31の右側壁の方に流動する。そして、ウェットケーク520の一部は、駆動する撹拌翼5により持ち上げられて最上方に移動した後、重力で落下して粉砕される。また、ウェットケーク520は繰り返し粉砕されて乾燥した粉末となる。また、密閉容器3の傾きにより、ウェットケーク520は加熱された筒部31の右壁部に接触するようになる。よって、ウェットケーク520は加温されるため、乾燥時間が短くなる。なお、ろ室S内に発生するウェットケーク520含液分が蒸発した蒸気の排気は、ろ室S内を通気換気としても、排出管35側を真空減圧による吸引排気としてもよい。
粉末回収工程S6は、粉末530をろ室Sの外部に排出する工程である。密閉容器3の傾いた状態を維持しつつ、下蓋部32を下方に移動させ、筒部31と下蓋部32を上下に離隔させる。これにより、粉末530は、重力によって筒部31と下蓋部32の間を通過し、ろ室Sの外部に排出される。そして、粉末530は、下方に配置された容器150に回収される。以上で、天然色素抽出方法の各工程が終了となる。
なお、上記した天然色素抽出方法は一例である。例えば、微細藻類から溶媒510に溶出する天然色素等の量が少ない場合、脱液処理工程S4後に、溶媒投入工程S2と加温撹拌工程S3を再び行ってもよい(図17のS4からS5に向かう矢印のうち分岐してS2に向かう方を参照)。これによれば、微細藻類から回収される天然色素や油を多くすることができる。なお、溶媒投入工程S2と加温撹拌工程S3と脱液処理工程S4との繰り返し工程は、2回に限らず、3回〜6回程度行ってもよい。
そして、ろ過装置100Aの排出管35から排出された液体(以下、使用済み溶媒540と呼ぶ)は、図16に示すように、ろ過液槽200に貯留される。そして、ろ過液槽200に貯留された使用済み溶媒540は、配管410を介して、溶剤再生装置300に供給される。
溶剤再生装置300は、使用済み溶媒540から天然色素や油を分離させて溶媒510を回収するための装置である。溶剤再生装置300は、槽310と、加温部320と、空冷コンデンサー330と、第1回収タンク340と、第2回収タンク350と、を備えている。
槽310には、使用済み溶媒540が貯留される。槽310の上部は閉塞部材311によって閉塞され、蒸気が外部に排出されない。槽310内の上部には、蒸気取入れ口312が設けられている。蒸気取入れ口312は、配管313の流入口であり、配管313の流出口は、第2回収タンク350に接続している。加温部320は、槽310内の使用済み溶媒540を加温する装置である。加温部320は、溶媒510の蒸発温度に到達するように、使用済み溶媒540を加温する。なお、エタノールを溶媒510として使用する場合、110°程度に加温する。これによれば、使用済み溶媒540に含まれる溶媒510は、蒸発して蒸気取入れ口312に流入し、配管313を流れる。溶剤再生装置300においては、使用済み溶媒540の加温を一定時間実施すると、溶媒510の割合が減少し、槽310の底部に粘性の液体550が堆積する。粘性の液体550を、槽310の図示しない排出口から排出し、第1回収タンク340に流入させる。これにより、天然色素や油分を含む粘性の液体550が回収される。
空冷コンデンサー330は、冷却ファン331を有している。冷却ファン331は、配管313の外表面に送風している。よって、配管313を流れる蒸気(溶媒510)は、冷却されて液体の状態となって、第2回収タンク350に回収溶媒510Aとして回収される。そして、第2回収タンク350に貯留された回収溶媒510Aは、配管400の図示しないポンプに吸い上げられ、ろ過装置100Aのろ室S内に供給される。よって、溶剤再生装置300によれば、溶剤を繰り返し使用することができる。なお、コンデンサーは水冷式でも冷媒式でもよい。
以上、実施形態2のろ過装置100Aにおいて、脱液処理工程S4の前に密閉容器3の内部で微細藻類と所定温度の極性溶媒とを撹拌翼5で撹拌し、微細藻類の細胞に含まれる要素を極性溶媒(溶媒510)に溶出させる抽出工程(加温撹拌工程S3)を行っている。よって、抽出工程(加温撹拌工程S3)において、ジャケット90に温水を供給すると、密閉容器3に導入された溶媒510は加温され、細胞内の天然色素が溶出し易くなる。また、粉末化処理工程S5において、ジャケット90に温水を供給すると、密閉容器3の傾きによりろ材34から筒部31の右側壁に流動したウェットケーク520が加温される。よって、粉末化処理工程S5の乾燥時間が短縮化する。
以上、実施形態1、実施形態2について説明したが、本開示は実施形態で説明した例に限定されない。また、実施形態2の天然色素抽出システム1000において、被抽出物として微細藻類を例として挙げたが、本開示は、例えば培養細胞や微細バイオマスの細胞から抽出するために適用してもよい。そして、抽出の際に使用される溶出用溶媒として極性溶媒を例として挙げているが、本開示は極性溶媒に限定されるものではない。例えば、ヘキサンやアセトンなどの非極性溶媒、若しくは、極性溶媒と非極性溶媒を混合した溶媒など、被抽出物に対応して適宜選択してもよい。具体的には、微細バイオマスが被抽出物である場合、抽出用の溶媒として混合溶媒(極性溶媒(例えばエタノール)と非極性溶媒(例えばヘキサン)とを混合したもの)を使用することで、微細バイオマスの細胞内の水溶性物質と油溶質物質を同時に抽出することができる。このように、被抽出物(微細藻類、培養細胞、及び微細バイオマスのうちいずれか1つ)に対応して、溶出用溶媒を、極性溶媒、非極性溶媒、及び前記極性溶媒と非極性溶媒とを混合して成る混合溶媒、のうちいずれか1つを適宜選択してよい。
なお、実施形態1のろ過装置100及び実施形態2のろ過装置100Aは、温水供給装置(不図示)を備え、ジャケット90に温水を供給し、加温するようになっているが、本開示においては、温水以外に冷水を供給してろ室S内を冷却してもよい。または、熱媒体を供給してろ室S内の温度を保持するようにしてもよい。そのほかに、ジャケット90に供給する熱媒体は、液体(温水、冷水)に限定されず、蒸気やガスであってもよい。また、実施形態1のろ過装置100及び実施形態2のろ過装置100Aは、ジャケット90を備えているが、本開示において密閉容器3を加温又は冷却できる密閉容器用温度調節手段であればよく、ジャケットに限定されない。つまり、本開示のろ過装置は、密閉容器3に装着可能なヒータを備えていてもよい。
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るろ過装置100Bを説明する。図18に示すように、実施形態3のろ過装置100Bは、撹拌用軸4と撹拌翼5の内部に熱媒体が流れる流路(44、45、50a、50b、55)が設けられている点が、実施形態2のろ過装置100と相違する。
撹拌用軸4は、特に図示しないが、内管と、内管の外周を囲む外管と、を有する二重管構造となっている。よって、撹拌用軸4は、内管の内部にある供給路44と、外管と内管との間にある排出路45と、を備える。供給路44には、温水供給装置(不図示)から供給された熱媒体が流れる。排出路45は、撹拌翼5のそれぞれから回収された熱媒体が流れる回収路となっている。また、供給路44の入口と排出路45の出口は、撹拌用軸4の上端に設けられている。そして、温水供給装置(不図示)から撹拌用軸4の上端に温水が供給されて供給路44に温水が流れる。また、排出路45を流れる温水は、撹拌用軸4の上端から温水供給装置(不図示)に循環される。
撹拌翼5の羽根部51は、3つの鋼板を重ねられて成る。3つの鋼板のうち1つの鋼板には、厚み方向に貫通する切り欠きが設けられている。また、切り欠きは、鋼板の面方向に連続している。そして、切り欠きが設けられた鋼板は、残り2つの鋼板に挟まれている。これにより、切り欠きは、2つの鋼板により厚み方向から閉塞され、循環路55を成している。撹拌翼5の中心部50は、循環路55の流路の一端と、撹拌用軸4の供給路44と、を連通する連通穴50aが設けられている。また、中心部50は、循環路55の流路の他端と、排出路45と連通する連通穴50bが設けられている。これにより、撹拌用軸4の供給路44に供給された熱媒体は、撹拌翼5の循環路55を流れる。そして、熱媒体は、循環路55から排出路45に戻るようになっている。
以上、実施形態3のろ過装置100Bによれば、温水供給装置(不図示)から温水が供給されると、撹拌用軸4と撹拌翼5が加温される。よって、撹拌用軸4と撹拌翼5に接触する溶媒やウェットケークを加温することができる。また、実施形態3のろ過装置100Bは、実施形態1、2のろ過装置100、100Aと同様に、脱液処理、洗浄処理、溶媒置換等、粉末化処理を行うことができる。さらには、実施形態3のろ過装置100Bは、実施形態2の天然色素抽出システム1000に用いることができる。つまり、実施形態3のろ過装置100Bを用いて天然色素抽出方法を実施できる。以下、実施形態3のろ過装置100Bを用いた天然色素抽出方法を説明する。
図19に示すように、ろ過装置100Bを用いた天然色素抽出方法は、微細藻類投入工程S1と、溶媒投入工程S2と、加温撹拌工程S3と、脱液処理工程S4と、粉末化処理工程S5と、粉末回収工程S6と、を有している。
微細藻類投入工程S1は、導入管36を通じて微細藻類乾燥粉末500をろ室S内に導入する。また、微細藻類投入工程S1の開始時点において、ろ過装置100Bは、支持板2とろ板33とろ材34が水平方向に延在した状態である。
溶媒投入工程S2は、加圧管37を通じて常温の溶媒510をろ室S内に導入する。
加温撹拌工程S3は、撹拌翼5を下げて撹拌翼5を駆動させる。また、温水供給装置(不図示)から撹拌用軸4と撹拌翼5とに温水を供給する。併せて、温水供給装置(不図示)からジャケット90(第1ジャケット91、第2ジャケット92)にも温水を供給する。これにより、撹拌用軸4と撹拌翼5と密閉容器3が加温される。このため、ろ室Sの溶媒510が加温され、細胞内の天然色素や油が溶媒510に溶出し易くなる。
脱液処理工程S4は、撹拌翼5の駆動を停止して撹拌翼5を上昇させる。また、加圧装置95からろ室S内に気体を供給する。これによれば、溶媒510がろ材34及びろ板33を通過し、排出管35から溶媒510が排出される。この結果、ろ材34の上に含水率が例えば20%から30%のウェットケーク520が堆積する。
粉末化処理工程S5は、支持板2を回動させて密閉容器3を傾ける。また、粉末化処理工程S5は、撹拌翼5を下降して撹拌翼5を駆動させる。さらに粉末化処理工程S5は、ジャケット90と撹拌用軸4と撹拌翼5に温水を供給する。これによれば、ウェットケーク520は、撹拌翼5により持ち上げられた後、重力で落下して粉砕され、乾燥した粉末となる。また、ウェットケーク520は、密閉容器3の傾きによりろ材34から筒部31の右側壁に流動する。筒部31の右側壁は、ジャケット90(特に第2ジャケット92)に加温されているため、ウェットケーク520が加温される。また、ウェットケーク520と接触する撹拌用軸4及び撹拌翼5が加温されているため、さらにウェットケーク520は加温される。また、撹拌翼5で撹拌しつつウェットケーク520に熱を伝達するため、ウェットケーク520の全体が均一に加温される。よって、実施形態3の粉末化処理工程S5の処理時間(乾燥時間)は、実施形態2の粉末化処理工程S5の処理時間(乾燥時間)よりも、大きく短縮する。
粉末回収工程S6は、粉末530をろ室Sの外部に排出する工程である。密閉容器3の傾いた状態を維持しつつ、下蓋部32を下方に移動させ、筒部31と下蓋部32を上下に離隔させる。これにより、粉末530は、重力によって筒部31と下蓋部32の間を通過し、ろ室Sの外部に排出される。そして、粉末530は、下方に配置された容器150に回収される。以上で、天然色素抽出方法の各工程が終了となる。
なお、実施形態3のろ過装置100Bを用いた天然色素抽出方法においても、実施形態2で説明したように脱液処理工程S4後、溶媒投入工程S2と加温撹拌工程S3を再び行ってもよい(図19のS4からS5に向かう矢印のうち分岐してS2に向かう方を参照)。これによれば、微細藻類から回収される天然色素や油を多くすることができる。
なお、実施形態3のろ過装置100Bを説明したが、本開示においては、撹拌用軸4と撹拌翼5に冷水を供給してよい。または、撹拌用軸4と撹拌翼5に供給する熱媒体は、液体(温水、冷水)に限定されず、蒸気やガスであってもよい。また、実施形態3では、撹拌用軸4と撹拌翼5に流路(44、45、50a、50b、55)が設けられているが、撹拌用軸4と撹拌翼5の内部にヒータを設けてもよい。つまり、本開示において撹拌用軸4と撹拌翼5の温度を調節できるろ室内用温度調節手段であれば、上記したものに限定されない。
以上、実施形態のろ過装置について説明したが、粉末化処理工程後、ろ室S内には、ウェットケーク120から蒸発した大量の蒸気が発生する。単にろ室S内に連続する排気管(不図示)から蒸気を吸引排気しようとすると、ろ室S内に飛散する粉末の微粒子が蒸気と同伴し、ろ室Sの外部に排出される。そして、微粒子を回収するためのバグフィルタ等が通常必要となる。一方で、図20に示す方法によれば、微粒子がろ室Sの外部に排出されない。以下、蒸気回収工程について説明する。
図20に示すように、蒸気回収工程は、前工程である粉末化処理工程の状態、つまり、ろ室Sが傾いた状態を維持する。これにより、粉末140が筒部31の右壁部の方に流動し、ろ板33及びろ材34のうち筒部31の左壁部に近い部分は、粉末140が堆積しなくなる。次に、加圧管37からろ室Sの内部に空気や不活性ガスなどのキャリアガス(図20の矢印Cを参照)を供給する。また、排出管35側を真空減圧による吸引排気を行う(図20の矢印Dを参照)。これによれば、ろ室S内の蒸気は、ろ板33及びろ材34のうち筒部31の左壁部に近い部分(粉末140が堆積していない部分)を通過して(図20の矢印Eを参照)、排出管35から排出される。そして、蒸気と同伴して移動する微粒子は、ろ材34に回収され、ろ室Sの外部に排出しない。つまり、ろ板33及びろ材34のうち筒部31の左壁部に近い部分(粉末140が堆積していない部分)を、微粒子を回収するためのフィルタとして利用しており、バグフィルタ等が不要となる。