以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
図1は本発明の一実施形態に係る給紙装置を備える印刷装置の概略構成を示す説明図、図2は図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明において、ユーザが位置する図1の紙面表方向を前方とする。また、図1に示すように、ユーザから視て、上下左右を上下左右方向とする。また、図1において太線で示す経路が、印刷媒体である用紙Pが搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける上流、下流を意味する。
図1に示すように、印刷装置1は、用紙搬送部2と、印刷部3とを備えている。また、図2に示すように、印刷装置1は、用紙搬送部2及び印刷部3の動作を制御する制御部4をさらに備えている。
用紙搬送部2は、給紙部5と、斜行補正部6と、検出部7とを備えている。
給紙部5は、印刷部3に用紙Pを給紙する。給紙部5は、図1に示すように、給紙台11と、給紙ローラ12と、中間搬送ローラ15とを備えている。また、図2に示すように、用紙搬送部2は、給紙モータ14と、中間搬送モータ16とをさらに備えている。
図1に示す給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものであり、その上側に給紙ローラ12が配置されている。図3は用紙搬送部2の概略構成を示す説明図である。なお、図3では、搬送経路Rの中間搬送ローラ15の部分の図示を省略している。
図3に示すように、給紙ローラ12は、スクレーパローラ12aとピックアップローラ12bとを有している。スクレーパローラ12aは、給紙台11に積載された用紙Pの最上部に接触し、回転して用紙Pを給紙台11から送り出す。ピックアップローラ12bは、スクレーパローラ12aが給紙台11から送り出した用紙Pを捌き板12cと協働して1枚ずつピックアップし、搬送経路Rに送り出す。
給紙ローラ12は、図2の給紙モータ14により回転される。詳しくは、給紙モータ14は、軸間にタイミングベルト(図示せず)が架け渡された図3のスクレーパローラ12a及びピックアップローラ12bを同期して回転させる。給紙モータ14は、図示しないワンウェイクラッチによりスクレーパローラ12a及びピックアップローラ12bに接続されている。このワンウェイクラッチは、用紙Pを搬送経路R側に送り出す方向の回転だけを、給紙モータ14からスクレーパローラ12aやピックアップローラ12bに伝達する。
図1に示す中間搬送ローラ15は、給紙ローラ12の下流側に一対配置されている。両中間搬送ローラ15は、給紙台11から給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)により搬送経路Rに送り出し中の用紙Pの先端をニップして、搬送経路Rの下流側のレジストローラ17に送り出す。中間搬送ローラ15の一方は、図2の中間搬送モータ16により回転される。
なお、本実施形態では説明を容易にするために、給紙部5が、給紙台11や給紙ローラ12、中間搬送ローラ15を1組有している場合について説明する。しかし、本発明は、給紙部5が、給紙台11や給紙ローラ12、中間搬送ローラ15を複数組有している場合にも適用可能である。
斜行補正部6は、給紙部5により印刷部3に給紙される用紙Pの斜行を補正し、印刷部3における画像形成のタイミングに合わせて用紙Pを印刷部3に送り出す。斜行補正部6は、レジストローラ17と、図2に示すレジストモータ18とを備えている。
図1に示すレジストローラ17は、中間搬送ローラ15の下流側に配置されている。レジストローラ17は、中間搬送ローラ15により搬送されてきた用紙Pを一旦止め、用紙Pにたるみが形成された後、印刷部3へ搬送する。レジストローラ17は、図2のレジストモータ18により回転される。
図1に示す検出部7は、レジストローラ17の上流側の検出箇所Dにおいて用紙Pを検出する。検出部7は、レジストセンサ19を備えている。
レジストセンサ19(請求項中の検出部に相当)は、検出箇所Dにおいて用紙Pを検出したときに、検出信号を制御部4へ出力する。レジストセンサ19は、発光素子及び受光素子を有する光学式センサからなる。
図1に示す印刷部3は、給紙された用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに印刷を行う。印刷部3は、用紙搬送部2の下流側に配置されている。印刷部3は、本実施形態では、ベルト搬送部21と、インクジェットヘッド部22とを備える。
ベルト搬送部21は、レジストローラ17により搬送されてきた用紙Pをベルト上に吸着保持して搬送する。ベルト搬送部21のベルトが掛け渡されたローラが図示しないモータにより駆動されることにより、ベルトが回転し、ベルト上の用紙Pが搬送される。
インクジェットヘッド部22は、ベルト搬送部21の上方に配置されている。インクジェットヘッド部22は、用紙Pの搬送方向と略直交する方向(前後方向)に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッド部22は、ベルト搬送部21により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を印刷する。
制御部4は、印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
具体的には、制御部4は、用紙搬送部2の給紙部5により用紙Pを印刷部3へ給紙し、印刷部3においてベルト搬送部21により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド部22によりインクを吐出して用紙Pに印刷を行うよう制御を行う。
給紙部5の中間搬送ローラ15によるレジストローラ17への給紙動作において、制御部4は、中間搬送ローラ15が搬送する用紙Pがレジストローラ17に突き当たって用紙Pの先端側に規定たるみ量のたるみが形成されると、中間搬送ローラ15を減速、停止させた後、レジストローラ17を駆動させる。
また、制御部4は、レジストセンサ19による用紙Pの検出に基づいて、給紙モータ14の駆動を制御する。
図4(a)は制御部4が行う給紙部の駆動制御の概要を示す説明図、(b)は用紙の搬送率毎の制御部4による駆動制御内容を示す説明図である。これらの図において、棒グラフの横軸は、給紙台11からの用紙Pの搬送距離を示している。
但し、レジストローラ17よりも図中右側の部分は、停止したレジストローラ17に用紙Pの先端が突き当たった後の、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送量を示している。
図2の制御部4は、印刷ジョブの発生等に伴い、用紙搬送部2により用紙Pを給紙台11から印刷部3に搬送させる制御を行う。その際、制御部4は、まず、給紙部5の給紙モータ14を駆動させて、給紙台11から用紙Pが送り出される方向に給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)を回転させる。
その際、制御部4は、図4(a)の加速区間において、給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)の回転速度が、用紙Pの搬送速度に応じた所定速度V1に達するまで、給紙モータ14の回転速度を一定時間加速させる。この加速が終了すると、制御部4は、図4(a)のV1(高速)区間において、用紙Pの搬送速度が所定速度V1に保たれるように給紙モータ14を等速回転させる。
なお、V1(高速)区間の制御が制御部4により行われている間に、給紙ローラ12が送り出している用紙Pの先端は中間搬送ローラ15に到達してニップされる。そこで、制御部4は、給紙ローラ12と同じ所定速度V1で中間搬送ローラ15が用紙Pを搬送する速度に、中間搬送モータ16の回転速度を前もって加速させておく。したがって、中間搬送ローラ15にニップされた用紙Pは、中間搬送ローラ15とにより、所定速度V1でレジストローラ17側に搬送される。
また、用紙Pが中間搬送ローラ15にニップされると、給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)による用紙Pの送り出しは不要になる。そこで、制御部4は、例えば給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)を通過した用紙Pの先端が中間搬送ローラ15によりニップされた後のタイミングにおいて、給紙モータ14を回転させる制御を終了する。
給紙モータ14を回転させる制御を制御部4が終了すると、給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)は、用紙Pの後端が通過するまで、中間搬送ローラ15によりレジストローラ17側に搬送される用紙Pに連れ回されて従動回転する。
この従動回転は、用紙Pの後端が給紙ローラ12のピックアップローラ12bを通過するまで継続される。用紙Pが通過した後の給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)の回転は、給紙ローラ12に加わる負荷によって停止する。
そして、中間搬送ローラ15によりレジストローラ17側に搬送された用紙Pの先端がレジストセンサ19により検出されると、制御部4は、図4(a)の減速区間の開始時点(V1(高速)区間の終了時点)を決定する。この減速区間は、用紙Pの先端がレジストセンサ19を過ぎてレジストローラ17の一定距離手前に到達する位置まで用紙が搬送されると終了する。
減速区間の開始時点が決定されると、制御部4は、減速区間が終了して用紙Pの先端がレジストローラ17の一定距離手前に到達するまでの間に、用紙Pの搬送速度を一定の加速度で減速させる。この減速により、用紙Pの搬送速度は減速区間の終了地点で、所定速度V1それよりも低い定速の低速度V2に減速される。この減速区間が終了すると、制御部4は、図4(a)のV2(低速)区間において、用紙Pの搬送速度が低速度V2に保たれるように中間搬送モータ16を等速回転させる。
なお、V2(低速)区間の制御が制御部4により行われている間に、中間搬送ローラ15が送り出している用紙Pの先端はレジストローラ17に到達して突き当てられる。用紙Pがレジストローラ17に突き当てられると、その後に継続される中間搬送ローラ15の回転により、用紙Pの先端側に斜行補正用のたるみが形成される。そこで、制御部4は、用紙Pの先端がレジストローラ17に突き当たった後、レジストローラ17が回転し始める前のタイミングにおいて、中間搬送モータ16を回転させる制御を終了する。
そのために、制御部4は、レジストセンサ19により用紙Pの先端が検出されると、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送速度を低速度V2からゼロ(停止)に減速する停止区間の開始時点(V2(低速)区間の終了時点)を決定する。
停止区間の開始時点が決定されると、制御部4は、停止区間が終了して中間搬送ローラ15の回転が停止するまでの間に、用紙Pの搬送速度を一定の加速度で減速させる。この減速により、用紙Pの搬送速度は停止区間の終了地点でゼロとなる。この停止区間が終了すると、制御部4は、用紙Pの搬送に関する1サイクルの制御を終了する。
ところで、図2の給紙ローラ12(スクレーパローラ12a及びピックアップローラ12b)によって給紙台11の用紙Pを1枚ずつ送り出す際には、給紙ローラ12と用紙Pとの間の滑り等により送り出しに要する時間がばらつくことがある。
給紙ローラ12と給紙台11の用紙Pとの間に生じる滑りにばらつきがあると、給紙台11からの送り出しの初期における用紙Pの搬送量にばらつきが生じる。すると、例えば図4(a)の加速区間において用紙Pが搬送される距離にもばらつきが生じる。
この加速区間における用紙Pの搬送距離のばらつきを考慮せずに、V1(高速)区間以降の用紙Pの搬送を行うと、用紙Pの先端がレジストローラ17に突き当たるタイミングや、レジストローラ17に突き当たった用紙Pに必要なたるみが形成されるタイミングにも、ばらつきが生じる。
その場合は、送り出し初期の用紙Pの搬送量が少なく、用紙Pの先端がレジストローラ17に突き当たるタイミングが遅い場合でも、レジストローラ17が回転し始める前に、レジストローラ17に突き当たった用紙Pに必要なたるみを形成するために、印刷物の生産性を犠牲にしてでも、レジストローラ17の回転開始を遅らせなければならない。
そこで、本実施形態では、制御部4が、レジストセンサ19により用紙Pの先端が検出されるタイミング、つまり、用紙Pが給紙台11から送り出されてレジストセンサ19に先端が到達するまでの所要時間に基づいて、V1(高速)区間以降の用紙Pの搬送パターンを決定する。
なお、給紙台11からレジストセンサ19までの搬送に時間がかかった用紙Pは、時間がかかっていない用紙Pよりも、図4(a)の加速区間における搬送距離が短いことになる。
そこで、制御部4は、図4(a)の加速区間における用紙Pの搬送距離のばらつきをV1(高速)区間以降の用紙Pの搬送中に吸収するための搬送パターンを決定する。この搬送パターンには、加速区間における用紙Pの搬送距離に応じた、減速区間の開始時点(V1(高速)区間の終了時点)や停止区間の開始時点(V2(低速)区間の終了時点)が含まれる。
例えば、図4(b)の説明図に示す、給紙台11から送り出す用紙Pと給紙ローラ12との間の滑りが多く、用紙Pの送り出しの初期における搬送率が低い場合は、加速区間における用紙Pの搬送距離が短くなる。この場合は、加速区間における搬送距離不足を補うように、V1(高速)区間以降の用紙Pの搬送距離を増やす必要がある。
また、用紙Pの送り出しの初期における搬送率が低い場合は、図5(a)のグラフに示すように、給紙台11から送り出された用紙Pが、加速区間及びV1(高速)区間において給紙ローラ12や中間搬送ローラ15により搬送されて、レジストセンサ19により検出されるまでにかかる時間Taが長くなる。
この場合には、レジストセンサ19による用紙Pの検出からレジストローラ17の回転が開始されるまでの残り時間(Td−Ta)が短くなる。このため、給紙台11の用紙Pを送り出してから、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送を停止させるまでの、給紙部5による用紙Pのレジストローラ17への一次給紙(時間Tc)を、レジストローラ17の回転開始前に終えるためには、V2(低速)区間をなるべく短くする必要がある。
そこで、制御部4は、図4(b)に示すように、減速区間の開始時点をなるべく遅らせてV1(高速)区間を長くすることで、V1(高速)区間中の用紙Pの搬送距離を稼ぐようにしている。また、制御部4は、減速区間の開始時点をなるべく遅らせて減速区間を短くするようにしている。
なお、減速区間の開始時点を遅らせると減速区間が短くなるので、減速区間中に一定の加速度で減速される用紙Pの搬送速度の減速幅が小さくなる。すると、減速区間の終了後に移行するV2(低速)区間における用紙Pの搬送速度(低速(V2c))が高くなる。そこで、制御部4は、停止区間の開始時点をなるべく早めて用紙Pの搬送速度(低速(V2c))のゼロに向けた減速を早く始めるようにする。
一方、給紙台11から送り出す用紙Pと給紙ローラ12との間の滑りが少なく、用紙Pの送り出しの初期における搬送率が高い場合は、加速区間における用紙Pの搬送距離が長くなる。この場合は、加速区間において用紙Pの搬送距離を稼いでいるので、V1(高速)区間以降の用紙Pの搬送距離は短くてもよい。
また、用紙Pの送り出しの初期における搬送率が高い場合は、図5(b)のグラフに示すように、給紙台11から送り出された用紙Pが、加速区間及びV1(高速)区間において給紙ローラ12や中間搬送ローラ15により搬送されて、レジストセンサ19により検出されるまでにかかる時間Taが短くなる。
この場合には、レジストセンサ19による用紙Pの検出からレジストローラ17の回転が開始されるまでの残り時間(Td−Ta)が長くなる。このため、V2(低速)区間を長くしても、給紙部5による用紙Pのレジストローラ17への一次給紙(時間Tc)を、レジストローラ17の回転開始前に終えることができる。
そこで、制御部4は、図4(b)に示すように、減速区間の開始時点をなるべく早めることで、減速区間を長くして、減速区間中に一定の加速度で減速される用紙Pの搬送速度の減速幅を大きくするようにしている。
なお、減速区間中の用紙Pの搬送速度の減速幅が大きくなると、減速区間の終了後に移行するV2(低速)区間における用紙Pの搬送速度(低速(V2a))が低くなる。すると、停止区間において中間搬送ローラ15を停止させるのに必要な減速量が減る。そこで、制御部4は、停止区間の開始時点をなるべく遅らせて用紙Pの搬送速度(低速(V2a))のゼロに向けた減速を遅く始めるようにする。
給紙台11から送り出す用紙Pと給紙ローラ12との間の滑りが標準的で、用紙Pの送り出しの初期における搬送率が中レベルである場合は、加速区間における用紙Pの搬送距離が標準的な長さとなる。この場合は、加速区間における用紙Pの搬送距離が標準的な距離であるので、V1(高速)区間以降の用紙Pの搬送距離も標準的な距離でよい。
そこで、制御部4は、図4(b)に示すように、減速区間の開始時点を通常のタイミングとすることで、減速区間を標準的な長さとして、減速区間中に一定の加速度で減速される用紙Pの搬送速度の減速幅を標準的な減速幅としている。
なお、減速区間中の用紙Pの搬送速度の減速幅が標準的な減速幅であることから、減速区間の終了後に移行するV2(低速)区間における用紙Pの搬送速度(低速(V2b))も標準的な速度となる。このため、停止区間において中間搬送ローラ15を停止させるのに必要な減速量も標準的な量となる。そこで、制御部4は、停止区間の開始時点を通常のタイミングとして用紙Pの搬送速度(低速(V2b))のゼロに向けた減速を通常のタイミングで始めるようにする。
以上に説明した制御部4の制御は、制御部4のCPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで実現される。以下、制御部4による用紙Pの給紙台11からの送り出しからレジストローラ17への突き当て後に搬送を停止するまでの一次給紙に関する処理の手順を、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、制御部4のCPUは、給紙部5の給紙ローラ12により給紙台11の用紙Pを1枚ずつピックアップさせ(ステップS1)、給紙ローラ12による用紙Pの搬送速度を一定時間に亘り一定の加速度で加速させる(ステップS3)。
そして、CPUは、給紙ローラ12及び中間搬送ローラ15により用紙PをV1(高速)で等速搬送するV1(高速)区間を開始させた後(ステップS5)、レジストセンサ19が用紙Pの先端を検出したか否かを確認する(ステップS7)。
用紙Pを検出していない場合は(ステップS7でNO)、検出するまでステップS7をリピートする。また、用紙Pを検出した場合は(ステップS7でYES)、CPUは、時間T1,T2、低速度V2を決定する(ステップS9)。
ここで、低速度V2は、用紙Pがレジストローラ17に突き当てられるV2(低速)区間のときの用紙Pの搬送速度である。図4(b)に示した低速(V2a)、低速(V2b)、低速(V2c)はいずれも、ステップS9で決定される低速度V2に該当する。
時間T1は、レジストセンサ19が用紙Pの先端を検出してから、V1(高速)区間を終了する時点までの時間である。つまり、時間T1は、V1(高速)区間に続く減速区間の開始時点を定義する変数である。
また、時間T2は、V2(低速)区間の長さを示す時間である。V2(低速)区間の開始時点(減速区間の終了時点)は、用紙Pの先端がレジストセンサ19とレジストローラ17との間の定速移行箇所C(図1、図3参照)に到達した時点で終了する。
この定速移行箇所C(請求項中の所定箇所に相当)は、用紙Pがレジストローラ17に突き当てられる直前の固定の位置である。したがって、時間T2は、V2(低速)区間に続く停止区間の開始時点を定義する変数ということになる。
なお、定速移行箇所Cへの用紙Pの到達時点は、用紙Pの先端をレジストセンサ19が検出した時点とそれに基づいて決定した低速度V2とから、計算によって求めることができる。
ステップS9で時間T1,T2、低速度V2が決定されると、CPUは、レジストセンサ19が用紙Pの先端を検出してから時間T1が経過したか否かを確認する(ステップS11)。
用紙Pを検出してから時間T1が経過していない場合は(ステップS11でNO)、経過するまでステップS11をリピートする。また、時間T1が経過した場合は(ステップS11でYES)、CPUは、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送速度の減速区間を開始させる(ステップS13)。
続いて、CPUは、用紙Pの先端が定速移行箇所Cに到達した時点であるか否かを確認する(ステップS15)。定速移行箇所Cに到達していない場合は(ステップS15でNO)、到達するまでステップS15をリピートする。
また、定速移行箇所Cに到達した場合は(ステップS15でYES)、中間搬送ローラ15により用紙Pを低速度V2で等速搬送するV2(低速)区間を開始させた後(ステップS17)、時間T2が経過したか否かを確認する(ステップS19)。
V2(低速)区間の開始から時間T2が経過していない場合は(ステップS19でNO)、経過するまでステップS19をリピートする。また、V2(低速)区間の開始から時間T2が経過した場合は(ステップS19でYES)、CPUは、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送の停止区間を開始させる(ステップS21)。
続いて、CPUは、用紙Pの搬送の停止区間が終了したか否かを確認する(ステップS23)。停止区間が終了したことは、給紙台11の用紙Pを送り出してから、中間搬送ローラ15による用紙Pの搬送を停止させるまでの、給紙部5による用紙Pのレジストローラ17への一次給紙に要する時間Tcが経過したことによって、確認することができる。
そして、停止区間が終了していない場合は(ステップS23でNO)、終了するまでステップS23をリピートする。また、停止区間が終了した場合は(ステップS23でYES)、給紙部5による用紙Pのレジストローラ17への一次給紙に関する一連の処理を終了する。
以上の説明からも明らかなように、本実施形態では、図6のフローチャートにおけるステップS9が、請求項中の減速パターン決定部及び停止パターン決定部に対応する処理となっている。また、本実施形態では、図6中のステップS11乃至ステップS21が、請求項中の減速制御部に対応する処理となっている。さらに、本実施形態では、図6中のステップS21及びステップS23が、請求項中の停止制御部に対応する処理となっている。
以上に説明した本実施形態の給紙装置によれば、制御部4が、給紙部5により給紙台11から送り出されて搬送経路Rを搬送されている用紙Pの先端をレジストセンサ19が検出したタイミングに基づいて、そのタイミングから、定速移行箇所Cへの用紙Pの到達により終了する減速区間の開始時点までの、時間T1を決定するようにした。
また、本実施形態の給紙装置によれば、制御部4が、用紙Pの先端をレジストセンサ19が検出したタイミングに基づいて、減速区間に続くV2(低速)区間の長さを示す時間T2と、V2(低速)区間のときの用紙Pの搬送速度である低速度V2(V2a,V2b,V2c)とを決定するようにした。
このため、例えば、給紙部5による用紙Pの送り出し初期の用紙搬送量が多く、レジストセンサ19が早いタイミングで先端を検出した用紙Pの搬送速度を、減速区間において、レジストセンサ19が遅いタイミングで先端を検出した用紙Pよりも長い期間減速させることができる。
よって、減速後の用紙Pがレジストローラ17に突き当てられるまでの間に用紙Pの搬送速度をより多く減速させて、用紙Pがレジストローラ17に突き当たるときの衝撃音をより低減させることができる。
また、例えば、給紙部5による用紙Pの送り出し初期の用紙搬送量が少なく、レジストセンサ19が遅いタイミングで検出した用紙Pの搬送速度の減速区間を、早いタイミングでレジストセンサ19が検出した用紙Pよりも遅い時点で開始させて、減速区間に移行する前に用紙PがV1(高速)区間の所定速度V1で搬送される期間を長くすることができる。
よって、用紙Pがレジストローラ17に突き当たるときの衝撃音を低減させるためにレジストローラ17に突き当たる前の減速区間において用紙Pの搬送速度を低速度V2に落としても、レジストローラ17が用紙Pを斜行補正するのに十分間に合うペースで用紙Pを回転を開始する前のレジストローラ17に到達させることができる。
以上から、本実施形態の給紙装置によれば、レジストローラ17の手前で用紙Pの搬送速度を減速してレジストローラ17における用紙Pの衝突音を低減する場合に、給紙台11からの送り出し初期の用紙搬送量にばらつきがあっても、印刷物の生産性を落とさずにレジストローラ17に対する用紙Pの衝突音を低減することができる。
なお、本実施形態では、V2(低速)区間を終了して停止区間を開始する時点を、制御部4が、用紙Pの先端をレジストセンサ19が検出したタイミングに基づいて決定した時間T1,T2、低速度V2に応じて決定した。しかし、停止区間の開始時点をそのように決定するか否かは任意である。
また、本実施形態では、制御部4が、用紙Pの先端をレジストセンサ19が検出したタイミングに基づいて減速区間の開始地点を定める時間T1を決定する際に、V2(低速)区間の時間T2をさらに決定した。しかし、V2(低速)区間の時間T2をそのように決定するか否かは任意である。
さらに、本実施形態では、給紙ローラ12がスクレーパローラ12aとピックアップローラ12bとを有している場合について説明したが、単一のローラで給紙ローラ12が構成されている場合にも本発明は適用可能である。
また、本実施形態では、給紙部5が給紙ローラ12と中間搬送ローラ15とを有している場合について説明したが、中間搬送ローラ15を省略する構成の給紙装置でも、本発明は適用可能である。その場合は、給紙ローラ12が中間搬送ローラ15を兼ねて、レジストローラ17に到達した用紙Pの先端にたるみが形成されるまで、用紙Pを搬送することになる。
さらに、本実施形態では、印刷装置1をインクジェット方式の印刷装置として説明したが、これに限定されず、給紙台に積載した用紙を1枚ずつ供給する給紙装置であれば、例えば電子写真方式や孔版印刷方式、熱転写式等、インクジェット方式の印刷装置の給紙装置にも、本発明は適用可能である。
また、本実施形態では、印刷装置内に一体に組み込まれた給紙装置を例に取って説明したが、本発明は、印刷装置から独立した給紙装置にも適用可能である。
このように、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
そして、以上に説明した実施形態によって、以下に示す各態様の発明が開示される。
まず、第1の態様による発明として、
給紙部により給紙された用紙を斜行補正して画像形成部に送り出す斜行補正部の手前で検出部が用紙を検出したタイミングに基づいて、前記検出部と前記斜行補正部との間の所定箇所における前記給紙部による用紙の搬送速度を、前記検出部による用紙の検出前よりも低い定速に減速させる給紙装置において、
前記給紙部による給紙開始から前記検出部による用紙の検出までの時間の長さに基づいて、前記所定箇所への用紙の到達を終了時点とした用紙の搬送速度を減速させる減速区間の開始時点を含む減速パターンを決定する減速パターン決定部と、
前記減速パターン決定部が決定した前記減速パターンで前記給紙部による用紙の搬送速度を前記定速の搬送速度に減速させる減速制御部と、
を備える給紙装置の発明が開示される。
そして、第1の態様による発明の給紙装置によれば、斜行補正部の手前で検出部が用紙を検出したタイミングに応じて、用紙が検出部と斜行補正部との間の所定箇所に到達する時点を終了時点とする、用紙の搬送速度を定速の搬送速度に減速させる減速区間の開始時点を含む減速パターンが決定される。
このため、例えば、給紙部による用紙の送り出し初期の用紙搬送量が多く検出部が早いタイミングで検出した用紙の搬送速度を、減速区間において、検出部が遅いタイミングで検出した用紙よりも長い期間減速させることができる。これにより、減速後の用紙が斜行補正部に到達するまでに搬送速度をより多く減速させて、用紙が斜行補正部に到達するときの衝撃音をより低減させることができる。
また、例えば、給紙部による用紙の送り出し初期の用紙搬送量が少なく検出部が遅いタイミングで検出した用紙の搬送速度の減速区間を、早いタイミングで検出した用紙よりも遅い時点で開始させ、減速前に用紙が高速で搬送される期間を長くすることができる。これにより、用紙が斜行補正部に到達するときの衝撃音を低減させるために斜行補正部に到達する前の減速区間において用紙の搬送速度を定速に落としても、斜行補正部が用紙を斜行補正するのに十分間に合うペースで用紙を斜行補正部に到達させることができる。
次に、第2の態様による発明として、
前記減速パターン決定部は、前記減速区間に続き定速の搬送速度で用紙を搬送する定速区間の開始時点及び終了時点と、前記定速の搬送速度とを含む前記減速パターンを決定する給紙装置の発明が開示される。
そして、第2の態様による発明の給紙装置によれば、斜行補正部の手前で検出部が用紙を検出したタイミングに応じて、減速区間に続き用紙が定速で搬送される定速区間の開始時点及び終了時点と、定速の搬送速度とを含む減速パターンが決定される。
このため、減速区間の開始地点の違いによりその後の定速区間における用紙の搬送速度(定速の搬送速度)が異なっても、斜行補正部が用紙の画像形成部に対する送り出しを開始する前の同じタイミングで給紙部による用紙の搬送が停止されて、用紙に形成されるたるみの量が一定となる搬送速度と期間で、定速区間における用紙の搬送を実行させることができる。
続いて、第3の態様による発明として、
前記減速パターン決定部は、前記減速区間において用紙の搬送速度が予め定められた加速度で減速されることを前提に、前記減速パターンを決定する給紙装置の発明が開示される。
そして、第3の態様による発明の給紙装置によれば、減速区間において用紙の搬送速度が予め定められた加速度で減速される。このため、検出部が用紙を検出したタイミングに応じて減速区間の開始時点を決定することで、給紙部による用紙の送り出し初期の用紙搬送量に応じて、減速前の用紙の搬送量を調整することができる。
次に、第4の態様による発明として、
前記減速パターン決定部が決定した前記減速パターンに基づいて、到達した用紙を前記斜行補正部が前記画像形成部に送り出す前に停止される前記給紙部による用紙の搬送速度を、前記定速の搬送速度からゼロに減速させる停止区間の開始時点を含む停止パターンを決定する停止パターン決定部と、前記停止パターン決定部が決定した前記停止パターンで前記用紙の搬送速度を前記定速の搬送速度から減速させる停止制御部とをさらに備える給紙装置の発明が開示される。
そして、第4の態様による発明の給紙装置によれば、減速後に定速で斜行補正部に到達する用紙の搬送を、レジストローラの回転開始前に定速から停止させる停止区間の長さが、減速パターン決定部が決定した減速パターンに基づいて決定される。このため、斜行補正部に到達する際の用紙の搬送速度(定速)が速いか遅いかに応じて、用紙の搬送を停止させるのに適した長さに停止区間の長さを設定することができる。
さらに、第5の態様による発明として、
前記停止パターン決定部は、前記停止区間において用紙の搬送速度が予め定められた加速度で減速されることを前提に、前記停止パターンを決定する給紙装置の発明が開示される。
そして、第5の態様による発明の給紙装置によれば、停止区間において用紙の搬送速度が予め定められた加速度で減速される。このため、減速パターン決定部が決定した減速パターンに応じて停止区間の開始時点を決定することで、斜行補正部に到達する際の用紙の搬送速度(定速)に応じて、用紙の搬送速度の減速量を停止に必要な量に調整することができる。